1′ol・2,No・1,63‑70,(1995)
塩溶液中の溶解性シ リカの平衡濃度 と重合速度 について Sol ubi l i t yandpol ymer i 2 : at i onofs i l i c ai ns al ts ol ut i ons 杉田 創 ( Ha j i meSug it a) * ・山本 雅弘 ( Mas ahi r oYamamo t o) * *
ThesolubilityofamorphousSilicawasdeterm inedinsodiumchloride,pobSSiumchloride,magnesium chlorideandcalciumchloride801ution8from0.01tolmoVlandattemperatures0f21,36,50and65°C.The SetchenowequationwasappliedtothereSultB,Whichenabledu8tOeStimatetheeqllilibriumconcentration of"dissolvedSilica"(molybdate‑reactivesilica)inthestudiedchloridesolutions.
Next,theefrectBOfpH,8uperSaturationofSilicaandsaltconcentrationonthepolym erizabonrateof Silicawereinvestigatedat35oC.InthepHrangefrom6.4to7.9,themaximumpolym eriza也onrateincreased w
i thincreasingpH.Themaximaoccurredwhendi880lvedSilicadecreasedby25% oftheinitial super8aturationconcentrationsirrespectiveofpH・Thepolym erizationratewasfoundtobedependenton the8uPerSaturationdegreeratherthanonthe8uPer8aturationconcentrationofSilica.ThereBult8in magnesiumchloridesolutionBSugge8tthatmagnesiumionsmayacta8nucleiintheform ationofcolloidal silicaingeothermalwaters.
Keywords:amorphousSilica,solubility,polym erization
1 .
はじめに近年、地球環境問題に関心が寄せ られ、地球にやさ しいクリーンエネルギーとして地熱発電の開発に力が 注がれている。地熱地域では、地表か ら地下に浸透 し てきた水は地下深部のマグマによって熱せ られ、地熱 水 として不透水層で覆われた地熱貯留層内に蓄えられ る。地熱発電所では、地熱水を噴出させて発電に利用 するが、利用後の地熱水は、地下に還元 される。
地熱水は、シリカを多量に溶存 してお り、地表に噴 出すると気液分離と温度降下によってシリカについて 過飽和状態 とな り、この シリカの一部が重合 して、最 終的には、 シリカスケール として析出 して くるため、
地熱水を輸送 したパイプや還元井には、この シリカス ケールが付着 し、短期間で これ らを閉塞 させて しま い、大きな問題 となっている。シリカスケ‑ルの発生 過程や抑制手段を考えるには、まず、制御 された条件 下でシリカの重合に関する実験を行 うことが重要であ
る。
種々の塩溶液中のアモルファスシリカの溶解度につ いて詳細な研究がMarshal】らによって行われているが
(Marshall,1980a;Marshal】andWarakomski,1980;
Marsha】1,1980b;ChenandMarshall,1982など)、ほと んどはlmol/l以上の高塩濃度でのデータであるため、
実際の地熱水の塩濃度が、NaCl換算で約0.01‑0.3mo】/ 1と低濃度であるので,地熱水への適用は難 しいと思
われる。そのため、本研究では、まず、lmo】n以下の 比較的低濃度の塩化物溶液中の溶解性 シリカの平衡濃 度を求めた。ここでいう溶解性 シリカとは、シリカモ ノマーの定量には、モ リブデ ンイエロー法が用い られ るが、実際には、この方法ではモノマーの他に、ダイ マーや トリマーなどの低量体のシリカの一部 も定量 さ れるため、これ ら定量にかかるシリカの全てを指 して 用い られる用語である。
シリカの重合について も、これまで多 くの研究者に よって様々な実験 ・考察が行われてきた (Rothbaum andRohde,1979;Makrideseta】.,1980;Boll】mallneta】., 1980;Wereseta】.,1981;C血an,1989)が、得 られた実 験結果や経験式などの整合性は必ず しも満足できる状 態ではない。そこで、本研究では、まだ、基本的な系 におけるシリカの重合に関する実験が必要であると考
'名古屋大学工学部分子工学科、〒464‑01名古屋市千種区不老町
**岡山大学理学部地球科学科、〒700岡山市津島中3‑1‑1
*DepartmentofChemicalEngineering,NagoyaUniversity,Chiku8a‑ku,Nagoya464101,Japan
**DepartmentofEarth ScienceS,OkayamaUniversity,3‑1‑1,TBu8himanaka,Okayama,700,Japan
64 杉田 ・山本 え、各種の塩化物溶液においてpH、シ リカの過飽和濃 度 または過飽和度、及び塩化物の種類及び濃度の シリ カの重合速度への影響を調べ、その結果を従来の研究 結果 と比較 ・検討 した。
2.実験方法 2.1 各形状のシ リカの定量方法
シ リカの定量方法はJISKOIOl(モ リブデ ンイエ ロー法)に準 じたが、一部改訂 した。
2.1.1 溶解性シ リカの定量
50mlメスフラスコに塩酸(1:1)1mi、蒸留水約30d、
試料液1m】を取 る。モ リブデ ン酸ア ンモニ ウム溶液 (10091)2mlを加え、標線 まで蒸留水を加 える。これを 約20℃の温浴中に15分間放置 した後、分光光度計を 用いて、420mmで吸光度を測定 し、別に作成 した検量 線か ら、溶解性 シ リカの濃度を求める。
2.1.2 全 シ リカの定量
試料水lmlをポ リ四 フ ッ化エチ レンビーカーに取 り、炭酸水素ナ トリウム0.2gと蒸留水約20m】を加え 時計皿 (非ガラス製)でふたを して、ホ ッ トプ レー ト 上 (約200oC)で20分間煮沸 した後、塩酸(1:1)1・5ml
を加える。放冷後、50mlメスフラスコに移 し、以下、
上記に従 って定量する。
一般に全 シリカの定量には試料をアルカ リ融解する 方法が用い られるが、本研究で行われたような比較的 低温 (約35℃)における重合速度実験では重合反応初 期 (実験開始2時間程度 まで)の コロイ ド状 シ リカは、
上記の方法で十分に解離することを予備実験で確認 し た。また、試料溶液中に塩化マグネ シウムあるいは塩 化 カル シウムが含まれる場合は、炭酸水素ナ トリウム を加えずに煮沸 した後、定量 した。これは、水に難溶 な炭酸塩の形成を防 ぐためであ り、アルカ リ性に しな くて も、煮沸によ り、コロイ ド状 シ リカが十分に解離 す ることを、予備実験で確認 した。
2.2 平衡濃度美顔
試薬Si02を炭酸ナ トリウム融解 した後、蒸留水 に溶 解 し、塩酸で酸性に した後、煮沸 して炭酸を除去 した。
放冷後、pHを約6.0に調整 してか ら蒸留水で希釈 して 700mgSi0㌔の シ リカ溶液を作 った。100mJのポ リエチ レン容器 に、塩化ナ トリウム、塩化カ リウム、塩化マ グネシウムあるいは塩化カル シウムを所定の濃度にな るように取 り、先のシ リカ溶液を加え全量を100mlに
した。
上記で調製 した塩の種類及び濃度の異なる試料をそ れぞれ21℃で7日間放置 した後、試料 中の溶解性 シ リ カ濃度を定量 した。 これ らの試料をさらに順次、36、 50、65℃で6‑7日間ずつ放置 し、それぞれの温度で、
試料 中の溶解性 シリカ濃度を定量 した。
2.3. 重合速度実額
重合速度実験は、三種類 に分け られる。第一は、初 期 シリカ濃度を約700mgSi0㌔ と一定 に して、出発pH のみを変化 させた実験(pH実験 )、第二は、出発pHを ある程度の範巨削こ限定 し、初期 シ リカ濃度を変えるこ とによって初期過飽和濃度を変化 させた実験(過飽和 濃度実験)、第三は、塩溶液を添加 した実験である (塩 添加実験)。実験は、すべて約 35℃で行い、pH測定 も pHメーターを この温度で校正 してか ら行 った。
2.3.1 pH*#
試薬Si02を炭酸ナ トリウム融解 した後、蒸留水 に溶 解 し、濃度を調整 して1000mgSiO2/1の シ リカ溶液を 作 った。
塩酸(1:1)(通常は2ml)を入れた ど‑カーに、約35
℃にあらか じめ温めておいた蒸留水を最終的に全量が 200mlになる量を加え、同 じく予熱 しておいた上記の
シリカ溶液を適量 (通常は140ml)取 り、同様 に加え た後、水酸化ナ トリウムを加えて所定のpHに調整 し た。pHメータ‑が、おおよそ安定 したところをその実 験の出発pHとした。また、pH調整用の水酸化ナ トリ
ウム溶液を加え始めてか ら、pHを調整 し終わるまで 約1分か ら3分の時間を要するため、実験の開始時間 は、通常はpHメーターが安定 した時刻 にこの調整時 間を加えた時間とした。
pH調整後、直ちに250mlのポ リエチ レン容器に移 し 換え、35±ZoCの温浴中に浸 し、所定の時間ごとに試 料 中の溶解性 シリカ及び全 シリカ濃度を定量 した。
2.3.2 過飽和濃度東嶺
上記の シリカ溶液の量を130‑160mは で変え、それ に応 じて蒸留水の量を変えた。その他の操作は、pH実 験 と同様である。
2,3.3 珪藻加美境
上記の シ リカ溶液 と塩化 ナ トリウム、塩化 カ リウ ム、塩化マグネシウムあるいは塩化カル シウムの1M または0.1M溶液を適量加えて、所定の シ リカ濃度 と 塩濃度を もつ試料溶液を調製 した。その他の操作は、
pH実験 と同様である。
(lJ6uJ)
uO!)tEJluOUUODe3≡SP
O
>[O
SS!Q
uO!tt?)tUaUuOUt20!l!SPa^lOSS!C)300 250
200
150 100
50 0
I
a 事 l ● l
65C○ 5360C
○ C
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 NaCl(mol/I)
000000050505322(一T6LU「
C ■ l 65○lC l
】 536○210○CC
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 M9C12(mo附)
(I
J6u)uO!tt2)lUaUu
OU
t20!I!SPa^fOSS!Q UO!tt?))UOOuOOt20ニJSPe^一OSS!Q300 250 200 150
100
50 0
b ■ l l65○C l 50○C とゝ
36○C 0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 KCHmo川)
0000005050322(lTBuJ)1 005
d ■ l 65○tC F
50○C 36○C
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 CaC12(mol川
Fig・1a‑dDissolvedsilicaconcentrationinchloridesoluhonS・a:NaCl,b:KCl,C:MgCl2,andd:CaCl2・
3.
実験結果 と考察 3.1 平衡濃度について得 られた結果を塩の種類 ごとに分け、Fig.la‑dにプ ロッ トした。なお、全ての試料について、21℃で7日 間放置後
、p H
を測定 したが、全てp H6 ・ 0‑7 ・ 0
であ り、シリカの溶解度への
p H
の変動による影響はないと考 え られる。どの塩について も、わずかな量の塩の添加で明らか な溶解性 シリカの平衡濃度の減少を示 し、塩濃度が増 加するほど減少量 も大き くなる。また、同 じモル濃度 に対する減少量は、塩化カ リウム、塩化ナ トリウム、
塩化マグネシウムそ して塩化カル シウムの順で大きく なる。この傾向は、MarshallandWarakomski(1980)ち
どの結果 と一致する。
本研究における塩の添加による溶解性 シリカ濃度の 減少は、塩析効果のためと考え られ、この塩析効果に つ いて は、下 記 のSetchenowの式が適 用 で きる (Marshall,1980b)。
log(SO/S)=D ・M (1)
(1)式におけるSOとSはそれぞれ純水中と塩溶液中に おける溶解性 シリカの平衡濃度であ り、Dは温度 と塩 の種類によって決まる定数で塩析係数 と呼ばれる。M は塩の容量モル濃度である。
今回の実験の試料中には、シリカ溶液の調製におい て炭酸ナ トリウムが使用 されてお り、全ての試料中に は、約0・05mol刀のナ トリウムが含まれる。塩析効果に ついて加法法則が成 り立つ と仮定す る (Marshalland Olen,1982)と、その影響を補正することができる。し か し、実際には、Marsha】1らの実験においては、塩濃 度がOM付近では、異なるシリーズの実験間の一致の 程度はよ くな く、MarshaHらは、SOの値を添加する塩 ごとに補正 している。つまり実際には、補正項Fを加 えた (2)式を採用 している。
log
( S O / S ) =
D ・M +F (二) 今回結果の得 られたそれぞれの塩溶液について、塩 無添加のブランク溶液中の溶解性 シ リカ濃度をSOと6 6 杉田 ・山本
し、任意の濃度の塩溶液中の溶解性 シリカ濃度をSと して、log(SO/S)を計算 した。一例 として各塩溶液の36
℃のデータをFig.2に示 した。各塩溶液の】og(SO/S)の 値は、塩濃度
O M
においてすべて0
に集束するはずで あるが、予想 されたように本実験において も一致の程(sJos)601
‑ 亡トー一一NaCl
+ KCl
一一一一一O‑ M9C12
‑‑‑→一一一一CaCt2 l】 ll
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Saltconcentration (mol/り
Fig12log(SO/S)vsmolarityplotsforNaCl,KCl,MgC12
andCaCl280lutionsat36oC・
度はあまりよくない。
直線の勾配は、塩化カ リウム、塩化ナ トリウム、塩 化マグネシウムそして塩化カルシウムの順で大きくな る。これは、他の温度の結果でも同様である。一般に 溶媒中の溶質の溶解度は、イオ ン強度で説明できると されているが、同 じ一価の塩である塩化ナ トリウムと 塩化カ リウムでさえ、同 じ塩濃度における溶解性 シリ カの平衡濃度が違 うことか らもイオ ン強度のみでは説 明できないことは明 らかである。また、塩析効果には、
陽イオ ンの水和数が関係すると考え られる (Marshall andWarakonlSki,1980)が、本研究の結果は、水和数の 大きいマグネシウムを含む溶液 よりも水和数の小さい カル シウムを含む溶液の方が塩析効果が大きく、解釈 が困難である。
それぞれの塩について計算 した、(2)式のパラメー タDとFの値をTablelに載せた。これ らのパラメータ を用いて計算されたそれぞれの試料中での溶解性 シリ カ濃度 と実測値の差は平均1%以下である。これ らの パラメータの使用によって、任意の塩濃度の溶解性 シ
リカの平衡濃度を求めることが可能 とな り、これ らの データは後述する重合速度実験における溶解性 シリカ の過飽和濃度および過飽和度を見積 もるために使われ る。
また、上記のパラメータを用いた計算によって求め た純水中の溶解性 シリカ濃度 (アモルファスシリカの 溶解度)を、他の研究者の値 とともにTable2に載せた。
Table1ValuesoftheDandFparameters+
T(cc) NaCI KCI MgCl2 CaC12
D
21 0.1075 0.0589 0.2895 0.3368 36 0.0980 0.0493 0.2718 0.3155 50 0.0992 0.0435 0.2433 0.2859 65 0.0854 0.0427 0.2237 0.2627
F
21 0.0110 0.0036 0.0088 0.0125 36 0.0154 0.0122 0.0194 0.0265 50 0.0171 0.0123 0.0209 0.0296 65 0.0251 0.0201 0.0321 0.0407
■See軸 uation(2)inthetext.
Table2 Comparisonof也esolubility ofamorphous S止ica
T(℃) F& R' MarshallHn iswork (mgSiO㌦)
21 108 120 126 36 143 163 164 50 181 207 207 65 228 261 258 +FoumierandRowe(1977)
**Marshall(1980a)
この純水 中での溶解性 シ リカの平衡 濃度 の値 は、
Marshall(1980a)の実験式か ら求めた値とよ く一致す るが、2loCの本研究の値はMarshal】(1980a)か ら求め たものより若干高い値を示 し、完全に平衡値に運 して いないためである可能性 もある。
3.2 重合速度について 3.2.1 pHの影響
得 られた結果をFig・3に示す。実験を行 ったpHの範 囲はpH6・13か ら8.11である。どのpHで行 った実験で も時間の経過 とともに溶解性 シリカ濃度は減少する。
また、溶解性 シリカ濃度の減少は、pHが高 くなるに し たがって、速 くなる。
溶解性 シリカの過飽和濃度と重合速度の関係につい て考察するために、重合速度を過飽和濃度の減少率に 対 してプロッ トした (Fig.4)。この図か ら明 らかなよ うに、重合速度は、溶解性 シリカ濃度の単純な関数で は表す ことができない。多 くの場合、初期過飽和濃 度が約25%減少 したときに重合速度は最大になる。こ の結果は、RothbatJm andRohde(1979)の結果に一致す る。ただ し、PHS.11の結果は、この傾向か ら外れる。
これは、平衡濃度がpH8以上になると若干高 くなるた めと思われる。また、pH6.13で行 った実験では、濃度
uO!)eJlUODuOOeO"A.SPO>10SSI.Q
0 20 40 60 80 100 120 140 Time(¶in.)
Fig・3Changesindi8801vedSilicaconcentrationwith timeinthepHrangefrom6・13to8・11・
の減少が遅 く、今回の実験時間内では重合反応が十分 に進んでいなか った。
pH実験において得 られた最大重合速度の対数をpH に対 してプロッ トすると (Fig・5)、ほぼ直線の関係、
つ まり(3)式が成 り立つ ことがわかる。
logR
=
kl・pH+a (3)ここでRは最大重合速度である。最小 自乗法により求 めたklとaの値はそれぞれ0・632
± 0 ・
00Zと‑3・40±
0・01 である。シリカの重合反応においては、水酸化物イオンが、触媒の役割を果たす と考え られてお り、pHが高 くなるに したが って最大重合速度が増加するのは、水 酸化物イオ ン濃度が高 くなるためであると考え られ る。
3.2.2 過飽和濃度実境について
過飽和濃度実験では、初期 シリカ濃度を変えること によって初期過飽和濃度を変化 させた。この実験にお ける試料の初期 シリカ濃度は、約650か ら810mgSiOJ
(u!uJJIJ6∈)alt2JuO!lt2Z!Jau
jA
一Od20 40 60 80 (ト(C‑Co)/(Co‑Ce)IX100(%)
100 Fig・4Polym erizabonratevsthepercentdecreasein
BuperSaturationconcentrahonplot・
86420861111100(ett2JuO!teN!Je∈^10dEnuJl
.
Xt2m)60ll l l
bgR
=
0.632pH‑3.40 ●○
○○
○ ○
○ ○
○
06
6.5 7.0 7.5 8.0
pH
Fig.5Maximum polym erizationratevspHplot.
1である。これは、過飽和濃度に換算すると約490か ら 650mgSiOJlに相当する。初期 シリカ濃度が高いもの ほど溶解性 シリカ濃度の減少が速 くなる。また、pH実 験同様に初期過飽和濃度が約25%減少 したときに重合 速度の最大値を取 り、その値は初期 シリカ濃度が高い
ほど大きい。
3.2.3 塩添加実集について
塩化ナ トリウム、塩化カ リウムそ して塩化カル シウ ムを添加 した実験においては、塩無添加の場合 と同様 に、初期過飽和濃度が約25%が減少 したときに最大重 合速度を取 り、同 じpHな らば塩濃度が高いほど大き な値を取る。また、塩濃度が同じときにはpHが高い ほど大きな値を取る。
しか し、塩化マグネシウムを添加 したものは、極初 期に最大重合速度を取る(Fig.6)。特に比較的高pH高 塩濃度(pH6.93、0.1mo】刀)の塩化マグネシウムを添加 した実験では、初期過飽和濃度の減少率に対する重合 速度のプロッ トは、ほぼ直線を示す。Fleming (1986)
によれば、コロイ ド状のアモルファスシリカを種結晶 としてシリカ溶液に添加することによって核形成過程 を取 り除いた重合実験では、その重合速度は濃度の一 次式で表 される。このことか ら、塩化マグネシウムを 添加 した実験においては、シリカモノマー同士の反応 を経ずに重合が進み、つ まり、マグネ シウムが核 と なって、コロイ ド状 シリカが形成 されたことを示唆す る。低濃度のマグネシウム溶液では反応初期には、高 濃度のときと同様に直線的に反応が進むが、途中か ら は、三次曲線的な反応になる。これは、マグネ シウム と結合 していたシリカの一部の再溶解のためと考え ら れる。
一国 (1983)によると地熱水か らシリカスケール中
68
(uI.uJJIJ6uJ)ott2JuOl
I
teZ1.JOLUAJOd 505050332211 0 本山田杉0 20 40 60 80 100
11‑(C‑Ce)/(Co‑Ce)IX100(%)
Fig.6Polym erizationratevsthepercentdecreasein supersaturationconcentrationinMgC12
solutions.
に取 り込まれる元素の分配比は、アルカ リ金属では原 子番号が大きいほど大きい。また、西 (1991)はアル カ リ土類金属について も同様の傾向が見 られるが、マ グネシウムのみは、この傾向か ら外れ、かな り高い分 配比を もつ と述べている。この理由として今回の実験 結果か ら、シリカスケールの生成過程で生 じるコロイ ド状 シリカの一部にマグネシウムが核として含まれる 可能性が考え られる。
3. 2.
4 最大重合速度への過飽和度の影響次に塩溶液を添加 したシリカ溶液中の重合速度が過 飽和濃度の関数であるか、それとも過飽和度の関数で あるかを調べるために塩添加実験で得 られた最大重合 速度の値を前述の (3)式によってpH6・80に換算 して か ら、過飽和濃度 と過飽和度についてそれぞれプロッ
トした (Fig.7a,b)。ただ し、塩化マグネシウムを添加 したものは除いた。また、塩溶液を添加 していないブ ランク溶液での値 も図中にプロッ トした。過飽和濃度 に対 してプロッ トしたものは、ブランクよりかな り大 きな最大重合速度を取る。しか し、過飽和度に対 して プロッ トしたものは、ほぽこのブランクの値を結んだ 線上付近にプロッ トされる。つまり、最大重合速度は、
過飽和度の関数であると考え られる。
初期 シリカ濃度を変えた実験における最大重合速度 の値をpH6.80に換算 し、過飽和度か ら1を引いた値 すなわち、相対的過飽和濃度に対 して両対数プロッ ト
した (Fig.8)。 この直線か ら(4)式が導かれる。
】ogR‑k
2
・】ogf(CJCe)‑I)+b (4)oltuuO葛Z!JauJ^IOduJnuJ!xt2m 050
21(u!∈JIJ6uI)
a
l 1 ○ I◇
Na ○△ K ○
○
C a
○‑+ Blank Os
◇◇ △
◇ く勉
◇
[コ pH6.80
450 500 550 600 650
CかCe(mg/l)
Fig・7aMaximum polymerizationratev88uper‑ 8aturationconcentration.
0502」uluJJr
J6
uJTalt?iuO!tt2N!jOuJ^10dLunLu!Xe王 (olt2JuOこeZ!J0∈ゝrOd∈n
∈ !x
eM)60Ib
■
■ l ■ ○◇
Na O含 覧 ○ ○
一一一一.{]‑ Blank ○○○
◇ ◇ △
△ ○◇
□ 郡
◇
pH6.804.0 4.2 4.4 4.6 4.8 5.0
Co/Ce
Fig・7bMaximum polym erizationratevssuper‑ 8aturationdegree.
3210987‑1111000
l l Ol
b9R=3.73logt(Co/Ce)‑1) ○
‑1.04
①
♂
○
0.45 0.50 0.55 0.60 0.65
IogI(Co/Ce)Ill
Fig・8Maximum polym erizationratevsrelative supersaturationconcentration.
また、(3)式と(4)式か ら溶解性 シリカの最大重合 速度は、次式のように表す ことができる。
】ogR
=
kl
・PH+k 2
・logi(CJC) ‑1l+k, (5)R :最大 重合速度 (mg/)/mi n) C。:初期溶解 性 シ リカ濃度 (mg/1) Ce :溶解性 シ リカの平衡 濃度 (mg/1) kl=0・632± 0・002
k
2=
3・73±
0・01 k3=‑5・33±
0・114.
まとめ4.1 平衡濃度 につ いて
塩 の添加 による溶解性 シ リカの平衡 濃度 の減少 は、
塩析 効果 の ためで あ り、その 関係 は次式の よ うに表す ことがで きる。
log(so/S)=D ・M +F
上記 の式 によ って0.01‑1mol/1の塩化 ナ トリウム、
塩化 カ リウム、塩化 マ グネ シウム及 び塩化 カル シウム 溶液 中の21‑35℃ における溶解性 シ リカの平衡濃度の 値 を求め る ことが で きた。
4.2重合 速度 につ いて
(1) 溶解性 シ リカの重合速度 は、pH(6・4‑7・9)や 過飽和 濃度 (490‑650mgA)に関係 な く、初期過飽和 濃度 が約25%減 少 した ときに最大値 を取 る。
(2) 塩化 ナ トリウム、塩化 カ リウム及 び塩化 カル シ ウムの添加 の重合速度へ の影響 は、溶解性 シ リカの平 衡 濃度 の減少 による過飽和度の増加 によって説 明され る。
(3) 溶解性 シ リカの重合速度 はpH(または水酸化 物 イオ ン濃度 )と シ リカの過飽和度 の関数 であ る と考 え られ 、特 に最大重合速 度 につ いては次式の よ うに表 す ことが で きる。
logR‑k
l
・pH+k 2
・】og((CJC)‑1)+k, 初期 シ リカ濃度 ・.650‑810mgSiOJl、pH l.6・4‑7・9、温 皮 :35±
2oCの条件 において、kl=01632±0・002,㌧=3・73± 0・01,k3
=
‑5・33±
0・11(4)塩化 マグネ シウムを添加 した重合速度実験 にお いて、マ グネ シウムを核 とす る コロイ ド状 シ リカの形 成 を示 唆す る結 果 が得 られ た。 この こ とは シ リカ ス ケール ー地熱水 間のマ グネ シウムの高い分配比 と密接 な 関係が あ ると考 え られ る。
謝 辞
本論文は岡山大学に提出した杉田の修士論文の一部であ る。研究に当たり多 くの御助言をいただいた地球化学講座の 松田敏彦並びに岡野修先生に深 く感謝申し上げます。 また、
資料提供及び技術指導 していただいた三菱マテ リアル中央研 究所の上田晃氏、窪田研究室並びに高橋研究室の皆様に、そ して、様々な形で御協力、衡助言をいただいた地球化学講座 の学生の皆様に厚 く卸礼申し上げます。
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