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塩酸水溶液による亜鉛の腐食速度(第1報)

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(1)

NDC 563.7

塩酸水溶液による亜鉛の腐食速度(第1報)

一溶存酸素の影響について一

長  船  忠  夫*

(昭和54年5月7日受理)

Corrosion Rate of Zinc in HCI aq. Solution (Part 1)

一 The effect o f dissolved oxygen 一

Tadao OsAFUNE

(Received May 7, 1979)

A large number of studies have been done about the corrosion rate of Zinc in HCI aq. solution.

Dissolved oxygen taking part in the reaction, significant tendency of Zinc corrosion is found.

ln this investigation, the effect of H+ ion and disselved oxygen on the rate of corrosion of Zinc was examined.

In this report, the following results can be summarized.

(1) From 1 to 5 of pH value of solution, the corrosion rate decreased rapidly.

(2) When the pH value is 1, dissolved oxygen affects the rate of corrosion, and then, the rate increased with  increasing DOC.

(3) At pH value above 2, dissolved oxygen does not affect the rate of corrosion up to 5 p.p.m. of DOC, but at the

 satuiated $tate of dissolved oxygen, it increased considerably.

        1.緒     言

 酸溶液中での亜鉛の腐食の進行速度は大きい。金属表面 でのアノード領域の反応は活発であるが,カソード反応,

すなわち,酸性液中での水素発生反応は,純亜鉛表面上で は水素過電圧が相当大きいために,それほど速くはない。

したがって,全体の反応としては,かなり顕著なカソード 支配盤で水素発生型の腐食反応である。亜鉛の腐食速度を 支配する環境因子として,酸水溶液中の水素イオン濃度の 影響は大きい。

 一方液中の溶存酸素もその腐食速度に大きな影響をおよ ぼす。亜鉛は溶存酸素を含む酸性液中では,一部,酸素消 費型の反応も同時に進行している。このため腐食反応速度 を考察する上で複雑さをましている。

 水素イオン濃度が亜鉛の腐食速度におよぼす影響につい ては古くから多くの研究が報告されている(1)・(2)。また鉄

の腐食に関しても多くの実験結果がみられる(3)・(4)・(5)。

 たとえば,亜鉛腐食について,液のpH値が4から10ま での領域とpH〈4の領域とでは,全く異ったものになる し,さらにpHが10以上となると,溶存酸素の影響をうけ て,不働態化の傾向がましてくる。さらに液が空気により 飽和されている場合か酸素分圧の高い場合などによって腐 食速度の状況は変ってくる。

 このような観点から,酸溶液中の亜鉛について,液中の 溶存酸素濃度が腐食速度にどのように影響をおよぼすかに ついて検討した。

*金属工学科

      2。装置および実験方法

 供試試料は,市販の純亜鉛インゴット(99.99%以上)を 適当な小塊に切り,磁性るつぼで加熱溶解して,鋼製の鋳 型に鋳込んで作成した。試料のサイズはタテ3 cm,ヨコ 1・2cm,厚さ0.5cmの直方体である。溶解のさい生じる酸 化皮膜が鋳込むときに,金属内部に巻き込まないよう,皮

一29一

(2)

津山高専紀要ee 17号 (1979)

膜の除去を充分行った。鋳型冷却後,試料表面をエメリー ペーパーで研磨して表面の不純物などをよく除いた。ま た,試料の保存はデシケーターを用いたが,自然に表面酸 化するのを避けられないため,使用直前に再び研磨した。

 腐食液は市販特級塩酸を純水で調合し,規定のpH値と した。pHメーターは東亜電波製HM−20B型を使用した。

液温は30℃とした。実験装置の概略図をFig・1に示した。

B c

A D

      G E  F

を用いた。

3.結果および考察

J K

H

A: nitrogen cylinder B: air compressor C: change valve D: temperature regulater E: outlet F: test piece G: censor H: DO meter 1: recorder J: water bath K : HCI solution

Fig.1 Experimental apparatus of natural corrosion

ガラス製の腐食反応容器を用い,腐食液量を11とし深さ を一定とした。反応容器の上部より,銅線を鋳込んだ試料 を吊して液中に浸した。液の強制撹伴は行っていない。腐 食月中の溶存酸素濃度の調節は,D・O・C. 一・ Oのときは, N2 ガスを上部の吹込み口よりグラスフィルターにより吹き込 んで飽和させ,溶存酸素計(東亜電波製DO−1B型)にて,

その濃度を確認した。D.0.Cが1〜5P,P.m.の濃度調整に ついては,溶存酸素計により所定の値を示すまで,あらか

じめN2ガスで飽和した液に空気を吹き込み,所定の値に 達した時点で吹き込みを止め,容器上部の空間部をN2ガ スで充満させた。なお,銅線は塗布して液と絶縁した。

 測定条件として,pH値は1,2,3,4,および5とし,

D.0.C・は0,3,5, p.pmおよび飽和状態とした。腐食時 閲は2時間とした。その間反応容器の蓋は密封した。なお 腐食反応による液中の酸素濃度の減少に対する酸素の補充 は行わず各反応開始時のD.0.C.をその濃度として用いた。

 反応終了後,試料表面を純水でよく洗い,さらに表面に 付着した反応生成物は,うすいシアン化ソーダ液で除去し た。腐食速度の決定は,腐食液中に溶出した亜鉛量および 試料表面に付着した反応生成物中の亜鉛の合計を分析し た。分析方法は原子吸光分析法とし,島津製AA−610S型

 金属亜鉛の水溶液中での腐食の型は大別して2つに分け られる。その1つは,水素発生型腐食である。腐食液の pH値が4以下では,試料表面の局部カソードでは,

   H++ e 一一ll−H2

        2

なる反応,すなわち,水素発生の速度が亜鉛の腐食反応速 度を大きく支配する。したがって,上記反応の過電圧が小 さければ,アノード側の反応

Zn一・Zn2+十2e

なる反応の分極曲線とカソード反応の分極曲線との交点が 大きくなる。したがって腐食電流は大となる。

 他の1つは,酸素消費型腐食である。pH値が4〜10の 範囲では,液中に溶けている酸素が腐食反応に関与してく る。カソード反応は次の二つが考えられる。カソード電位 が比較的低いと次の反応が起る。

02十4H+十4e一・2H20

カソード電位が水素還元電位より高いと,

02十2H20十4e→40H一

なる酸素還元反応のみが起る。上記の反応はいずれもその 反応速度を支配する毅階は,液中を酸素ガスが金属表面上 の反応点までいかに速く拡散するかに依存する。すなわち 拡散支配型の反応である。

 3.1pH値の影響

 以上の考え方を前提として,まず液中に酸素を溶存しな い状態で,亜鉛腐食速度は腐食液のpH値とどのような関 係があるかを検討した。

 Fig.2にその結果を示した。

 図からわかるように,pH 1から2へは急激に腐食速度 が減り,以後pH値の増加にともなって,その速度は低下 する。他の報告によれば(6),腐食速度はpH・12ぐらいま で減少し,pH・・12ぐらいの環境下では試料表面に腐食液 に対して安定な皮膜が生じて不働態状態となる。しかし,

さらにpH値が上ると,この皮膜が溶解して試料表面が液 中に露出して,腐食が急激に増してくる。pH値が低いと 腐食速度が大きいのは,H+イオンの放電反応の活発さに よるもので,H+イオンの減少とともに,水素過電圧が大 きくなる。

 3.2溶存酸素の影響

 腐食液のpH値を1に保って,自然腐食開始時の溶存酸 素濃度を変化させた場合の亜鉛の腐食速度の変動について

一30一

(3)

塩酸水溶液による亜鉛の腐食速報  長 船

L5      −o   Q5

剛主叱ヒ蔓Oε︼⊆O gつO﹄﹂OQ ↑O ①↑Oに

  o      l 2 3 4 5

       pH

Fig.2 Relation between corrosion rate and pH.

検討した。3.1項で述べたように,pH=1では亜鉛の腐 食速度はかなり大きいので,水素ガス発生が活発で試料表 面に酸化皮膜が安定に生成することはない。今回の実験で は腐食液の撹伴は強制的には行っていないので,液量の物 質の拡散移動は,水素ガスの発生による液の動きに助長さ れる度合が大きいと考えられる。溶存酸素濃度と腐食速度

との関係をFig.3に示した。

0   5   ρ   5ゑ       ロb︷喫ぎ﹈量8﹂﹄8

Lc

Q5

もΦもに

pH=1

e

     o

        O l 5 5 Sat        DOCCppm)

Fig.3 Relation between corrosion rate and DOC at pH 1.

 図からわかるように,D.O.C..の増加にともなって,腐 食速度の増加がみられる。

 酸性溶液中の鉄の腐食に関する報告にもあるが,低い pH値の溶液では,金属表面に生じる酸化物は溶解され,

酸素が表面に到達しやすくなるので,酸素による一極作用 が容易となる。したがって微量の酸素濃度に対して腐食速 度は敏感である。

 一方,別の観点からこの傾向を考察すると,pH=1の場 合には,亜鉛の腐食反応が活発であるから,当然,水素ガ スの発生が激しい。このガス発生により,腐食液の概伴が 局部的に行われ,溶存酸素の拡散がすみやかになる。した がって,たとえ微量の溶存酸素でも,試料表面へ速やかに 到達してくるため,酸素の腐食反応への関与が顕著に行わ れると考えられる。したがって腐食速度は液中の酸素濃度 に対して敏感に対応する。

 次に腐食液のpH値を2,3,4,5とそれぞれ一定に保持 し,それぞれについて,腐食開始時の溶存酸素濃度をO,

1,3,5・p.p.m.および飽和状態と変えたときの腐食速度の 変動について検討した。

 その結果をFig.4, Fig.5, Fig.6, Fig.7に示す。

 図からわかるように,pH値が2以上の場合にはいずれ もD.O.C.が飽和濃度に達するまでは,溶存酸素が腐食速 度に対して影響をおよぼさないといえる。飽和濃度に達し てはじめて,腐食速度が急に上昇していることが判る。

 前述のように,亜鉛の腐食はpH=1ぐらいまでは,か なり激しく水素発生がみられるが,pH=2以上となると 肉眼的にも水素ガスの活発な発生をともなわない。したが って液中の酸素の金属表面への移動がじゅうぶん行われな いので,酸素濃度の差が腐食速度に影響しうるだけの曳き

◎潔

p6 p5 p4

O2

ソ

雲℃毬占蛋ω︒ヒ8も・£︒に

pH=2

e

o  3, 5 Sat DOC (ppm)

Fig.4 Relation between corrosion rate and DOC at pH 2.

一31一

(4)

津:山高専紀要第17号(1979)

5        0       5       0﹄        ﹂        00     0 .   O団︷︒\9﹈S葱ヒ︒OもΦもに

pH=5

        O l 3 5 Sat

       DOC Cppm)

Fig.5 Relation between corrosion rate and DOC at pH 3.

 3         2 0       0 む        む旧ξ薫9﹈⊆28ヒ8

α01

ちΦもに

= O.05

占QO4

0

9C

co O.03

96

U O.02

.ptd O,Ol

o

    o

        O 1 5, 5 Sat        DOC (ppm)

Fig.6 Relation between corrosion rate and DOC at pH 4.

さをもたないと考えられる。しかし飽和濃度に達するとは じめて,その影響を認めることができると考えられる。

4.結

 塩酸酸性溶液中での亜鉛の腐食速度に関しては,今まで 多くの研究がなされてきた。

 特に下中の溶存酸素が反応に関与すると興味ある傾向が みられる。本実験では,門中の水素イオン濃度と溶存酸素 濃度とが亜鉛の腐食速度に対してどのように影響するかに

    o

        O 1 3 5 Sat

       DOC Cppm)

Fig.7 Relation between corrosion rate and DOC at pH 5.

ついて検討した。得られた実験結果に対して次のように考 察した。

(1)液中の溶存酸素濃度を0としたとき,pH値を1から 5まで変動させると,pH値の上昇にともなって,腐食速 度は急激に減少した。

② 腐食液にpH・=1.に保持して,液中酸素と腐食速度と の関係について検討した結果,溶存酸素の増加にともなっ て徐徐に腐食速度は増加した。これはpH =1の場合に は,水素ガスの発生が激しいので,酸素の拡散を助長し,

酸素濃度の差が腐食速度の差に現われるものと考えられ

る。

(3)pH値を2,3,4,5にそれぞれ保持した場合の腐食速 度と溶存酸素濃度との関係ではpH ・・ 1のときのような関 係はみられず,D・0・C・が0から5p・p・m・までは腐食速度 はほぼ,一定であった。しかしD.0.C.が飽和状態になっ てはじめて,その速度に上昇がみられた。

(1} Vondracek, R, and lzak−Krizko, J:Rec, Trav, Chim,

 44 376 (1925)

(2) Akimov, G. V,:Corrosion, 14 463t (1958)

(3) W. Whitman, R,Russell, V, Altieri; lnd, Eng, Chem, 16  665 (1924)

(4) G. Skaperdas, H. Uhlig; lnd, Eng. Chem, 34 748 (1942)

〈s) W. Whitman, R. Russell; lnd. Eng. Chem 17 348 (1925)

(6) B. E. Roetheli, G. L Cox and W. B. Littreal Metals &  Alloys March, 1932一 73

(7)H.H. Uhlig:腐食反応とその制御(S45)87産業図書

(8)伊藤伍郎:腐食科学と防食技術(S45)113コロナ社

一32一

参照

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