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高分子水溶液の結合水に関する研究(Ⅷ) 高分子電解質水溶液の結合水量と粘度と解離度との関係について

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(1)

 高分子水溶液の結合水に関する研究(皿)

高分子電解質水溶液の結合水量と粘度と解難度との関係について

       ・ ,  西   内   豊   道

       (教育学部職業科教室)

Studies

on Bound

Water

in Aqueous

Solution

of Polymers.

(M)

    On

the relationamong the Bound Water contentand the viscosity

      and the degreeof dissociation

in Polyelectrolyte

solutions.

      Toyomichi NiSHIUCHI (Laboratory of Poりmer Chemistry、E<i≪catio7i Faculり、Kochi Universiり)  中和度を異にするポリアクリル酸ソーダの数種濃度水溶液の結合水量y,と粘度-iitp/cと解離度αを測定し, 高分子電解質水溶液のこれら物理化学的性質の間の一般的関係を検討して次の結果を得た.  佃 ポリアクリル酸水溶液の希釈系列におけるyとαとの間には(p = K―n log(寸)(K,n定数)なる関 係式か成立する.  (2)Vtplcの増大にはS,の増加による因子よりも,解離度の増加に基づく高分子の形状の変化,即ち延伸によ る分子相互のからまりの因子がはるかに多く寄与している.  (3)ポリアクリル酸水溶液のT)≪P/c及びψは中和度の増大と共に増加するが,濃度略々0.7%以下の溶液では, 中和度約80%のところで最大となる.

      1. 緒     言

 すでによく知られているように,高分子電解質塩の水溶液は非常に大きな粘性を示し,工業的に

も糊料等として利用されているか,この高粘性の生ずる理由として二つの事柄が考えられる.即ち

一つは,その大きな解離性にもとづき高分子鎖上に生ずる多数の近接せる同種電荷によって高分子

骨格の延伸が強く起り,従って分子のからまりが増加して粘度の上昇を起すという因子であり,他

の一つは,その大きな解離性に起因して水溶液中の高分子は多量の結合水量を吸着し,従って流動

溶質粒子の容積は大きなものとなり,相互の摩擦の増大により粘度が上昇するという因子である.

これら二つの因子か高分子電解質水溶液の粘性に各々どの程度影響を及ぼしているかを明かにする

ことは興味かおる.

 次に高分子弱電解質水溶液の希釈系列における見掛けの解離度αと粘度Vtplcとの関係について

はすでに広田(1)が報告しており,その粘度と結合水量り(高分子1g当りの結合水量g)との関

係についてはすでに著者(2)が報告した.然しその結合水量9,と解離度αとの関係は未だ充分明ら

かにされていない.

 上記の如く一般に粘度と解離度と結合水量とは相互に深い関聯を持つ性質であるので,これらの

相互の関係を明らかにすることは学術的にも工業的にも意義のあるところである.それゆえ本報

においては,ポリアクリル酸及びそのNa塩を用いてこれらの問題について検討した結果を報告す

る.

       2. 実  験  方  法  2. 1.試 料  既報(2)において使用した東亜合成化学工業KK製アロン(粗Na-PA(L))を メタノールを用いて常法により精製し,次いでイオン交換樹脂処理を行なってポリアクリル酸

(2)

 12      高知大学学術研究報告 第11巻  自然科学 n 第3号

(PAA)とし,この水溶液をNaOHで適宜中和して種々の中和度のポリアクリル酸ソーダ(Na-PA)水溶液を調製し試料とした.

 2. 2.装置及び測定法  結合水量は既報(2)のディラトメーターを使用して全く同様にディラ

トメトリック法によって測定した.解離度は東亜電波工業KK製HM−5A型ガラス電極pH計を

使用し,25°±0.02°CでPAA水溶液の希釈系列についてpHを測定し,これから見掛けの解離度

αを算出した.

      ろ.実験結果及び考察

 3. 1.中和度を異にするポリアクリル酸ソーダ水溶液希釈系列のpH  PAA及び各種中和度

のNa・PA水溶液の希釈系列におけるpH測定値と濃度との関係は,表I及び図1に示した.(各

種中和度Na-PAの濃度∼pH測定値は既報(2)の第6表∼第8表参照).

        表1 ポリアクリル酸水溶液希釈系列におけるpH,解離度及び結合水量

    濃   度 ⇒  (g/100cc)(jiこeq_\   0.16    0.022   0.32    0.044   0.65    0.090   1.31    0.182   2.62    0.364 pH 3.29 3.03 2.84 2.65 2.45 Ch 5。13×10-" 9.33×// 1.45×10-3 2.24×〃 3.55×〃 8   6 14 a   2   0 、       100%中和Na-PA  ●-●       ●● `c∼゜∼一口        70%中和Na--PA `゜--ぺ^ "0%'迎吃二公上゜ ̄ 0 0.4 0.8   │.2 1.6 2.0 2.4 2.8 3. 濃 度(g/IOOcc) α 0. 0233 0.0212 0.0160 0.0122 0.0098 1・、(午)ぺ罷け)  1.62      19.40  1.66      □、00  1.79     13.55  1.91       9.15  。2.00       4.92 6 図1.・中和度を異にするNa-PA水溶液希釈系別のpH  図を見るに何れも濃度の濃い領域では濃 度によるpHの変化は殆んど無いが,希く なると(特に大体0.4 (g/lOOcc)以下にな ると)上昇する.この場合100%中和Na-PA水溶液では濃度によるpHの変化が他 のものに較べて小さい.特にPAAの0.4 (g/!00cc)以下では比較的大きい..これら については次のように考察した.即ち高分 子強電解質であるNa-PAは希釈されるに 従って水相中のNa゛の濃度は減少してゆ

くが,一方希釈によるエンロピーの増加のために高分子アニオンにより固定されていたNa勺ま次

第に水相中に流出し,水相中のNa゛濃度は増加する.従って結局水相中のNa゛濃度は希釈によっ

てあまり変化がなく,pHも変化かない.然しPAAは弱電解質で解離度は小さく,微量のH゛の

殆んどが水相中に流出しており,希釈によって水相中のH゛濃度は減少するか,この程度の濃度で

は未だ解離度は小さくH゛濃度の減少の方が大きくてpHは上昇する.次に部分中和Na・PAでは

Na゛は水相中に流出するかH゛は解離度が小さく且つ流出Na゛により反撥されると共に高分子ア

ニオン電荷に吸引されて高分子相中に固定され,従って希釈により水相中のH゛濃度は減少し,

pHは上昇する.

 ろ.2.ポリアクリル酸水溶液の希釈系列における解離度と結合水量との関係

図IIに示した.

 即ち高分子弱電解質であるPAA水溶液の希釈系列においては結合水量9と

結果は表I及び

1・1 ( 1−α トエo この式       ’    ̄χ α グラフは直線となり,従って9=K−nlog〔(1-a)/α〕(K,nは定数卜なる式が成立する.

(3)

高分子水溶液の結合水に関する研究 (VⅢ). (西内) は一般に高分子電解質水溶液の解離性について, Kem(s),香川(4),Katchalsky(5)等によって呈出され た式pH=pK-n log〔(1−α)/α〕〔K,n定数,n≒1〕 と良く似ている.なお図より本実験式のK,nの値を 求めると K = 78, n=37.71 となる.ここにK は α=0.5の時の9の値であり,nはこの直線グラフの 傾斜である.  5.ろ.ポリアクリル酸水溶液の中和度と粘度及び結 合水量との関係  高分子弱酸水溶液の中和度と粘度 Tjsp/C及び結合水量y,との関係を検討した結果を表2 及び図3に示した.  図より明らかなように,先ずPAA水溶液の'7s}'/c 及びy)は中和度の増大と共に増加するが,濃度か略 ぶ │.6 1.7 1.8 1.9 2.0

log(廿)

1 ろ 図2. PAA水溶液の希釈系列における  解離度と結合水量との関係 表2.ポリアクリル酸水溶液の中和度,粘度及び結合水量

⊇いこじ

0.4・(g/lOOcc)

1.0 (g/lOOcc)・

?  ∠d<p* ηsμc ∠郎pノc* yフ ■flsplc  0  40  70 100 15.95   )0. 7 25.20   )0. 2 29. 15   ド3 21.80 2.9  ) 15 48.3  レ2 58.4  ト0.05 54,8 10.98 11.45 12.32 11.15  1.8 35.4. 44.7 46.7  註)∠f*:¥,及びηsJi/cの上昇度 々0.7%以下の溶液では中和度約80 %のところで最大となる.(但し? は0.7%以上の濃度においても僅か ながら中和度80%のところで最大と なる.)このように薄い溶液で100% 中和Na・PAのVspIc及びy)が80% 中和のものより低いのは矢張り対イ オン固定現象により高分子スケルト ンの延伸作用が抑制されるためと考 えられる.濃い溶液では水相領域が 少なく,中和度に拘わらず高分子の 相互作用か複雑且つ大きくなりこの ような現象は見られない.  次にすでに前述した如く高分子電 解質水溶液の粘度の増加には互いに 関聯をもつ二つの因子がある.即ち 中和度(解離度)の増大にもとづく 高分子延伸のための相互のからまり の増加の因子と同じく中和度増大に 6 0 5 0 4Q 3 0 o / i J ≫ / i 2 0 1 0 3 0 ( V V d   8 / 3 ︶ ” ^         2 0 1 0  0    20    40    60    80    100     ●       中和度(%) 図3.PAA水溶液の中和度と粘度及び結合水mとの関係 ●

(4)

●  14       高知大学学術研究報告第11巻 自然科学n 第3t もどづく結合水量増加のための溶質流動容積の膨大による相互作用の増大の因子かある.この場合 後者の因子に依って,即ち結合水量S,の僅かな増加によって粘度VspIcが大きく増加することは当 然考えられるが,それにしても図3に見る如くVtvlcの増加が大き過ぎるように思われる.そこで 表2の0. 4 Cg/lOOcc)溶液の・如及び向,./cを対比してみると■ PAA,を40%中和することにより 而,./cが∠吋)に較べて非常に大きくなり,また40%中和物を70%まで中和した場合には向,./cと jS‘フは全く同じで・さらに100%まで中和した場合は-n,vlcの減少はSpの減少に較べて小さい.即ち 高分子弱酸を40%まで部分中和すると解離度が増し高分子鎖は同種電荷の反撥に延伸し,そのから まりによる粘度の増加は結合水量の増加による粘度の増大に較べてはるかに大きく,専ら前者の因 子が粘度上昇に影響を及ぼしていることか考えられる.然し部分中和度を40%から70%まで上げた 場合のritplcの増加は解離度増加にもとづく結合水豆kの増加のための分子相互作用の増加による と・即ち専ら後者の因子によっていると思われる. 1.0 (g/lOOcc)溶液の場合についても同様に考 察出来る.(昭和37年4月,日本化学会第15年会講演発表)  本研究を行うに当り御指導戴いた名古屋大学香川咄美教授,永沢満教授,及び高橋彰助教授並びに試料アロン の提供を受けた東亜合成化学工業株式会社に深く感謝します.また実験に協力願った脇房子,平井愛子氏等に感 謝します. (1) (2) (3) (4) (5)       文      献 広田 致,工化64, 1481 (1961). 西内豊道,高知大学教育学部研究報告, No. 14, 67 (1962). W. Kern, Biochem. Z. 301, 338 (1939). 香川喊美,津村健児,工化, 47, 435, 574 C1944).

A. Katchalsky, P, Spitnik, J. Polymer Sci. 2, 432 (1947)

参照

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