真
言
密
教
に
お
け
る
コ事
」を
め
ぐ
る
問
題
佐
藤
隆
賢
一 真 言密教における 「箏」 を め ぐる問題 (佐藤) 教 法 を所
証
の 理、 能 証 の智
と 分 別 し 、 さ ら に諸
法 を 事 と し て と ら え 、 そ の 相 互 関 係 を論
じ て 仏 教 の 世 界 観 を 哲 学 的 に 究 明 し 、 或 い は真
理 性 を 内 在 す る 人格
形 成 を 通 し て 、 主 体 的実
践 を 提 唱 す る 仏 教 の綱
格
と し て 展 開 さ れ て い る が、 殊 に真
言密
教 に お い て 「 愚相
即道
」 と か 門 即 事 而真
」 と表
現 せ ら れ る と こ ろ の 「稽
」 と か 「事
」 に つ い て 、 こ れ ら の語
が と ら え ん と す る と こ ろ の も の 、 強 調 せ ん と し て い る も の を 把 握 す べ く 、 こ れ ら の 点 に 問 題 を 絞 っ て考
察
し て み た い 。興
教 大 師 は 髄 顕 蜜 不 同 頌 』 顕 ノ 理ハ海
生。 シ テ 末 顕 ノ 理ハ 無 ニ シ 亠 ハ根
一 顕 ノ 理 ハ 鉦 簡 ニ シ 六 培 空 に お い て 、密
ノ事
ハ 能 生一 曇 ア 源 す 密ハ 見 ニ ル 之 ヲ 四身
一 }密
ハ 照 ニ ス 之 , 三 金 一57
一NII-Electronic Library Service 顯 m ノ 理^ 鉦 … ニ シ 論 ハ
識
一顕
ハ 説分
. 理秘
一 ヲ顕
ハ 以 〆. ア 事 ヲ 帰 理 。顕
ハ 理 一 . ン テ事
異
ナ リ 顕 . 理ハ無
凝 用顕
, 理 ハ 有 為 . 事 顕ハ 事劣
理勝
簡
に し て要
を 得 た句
に 、 華 厳 、 に は 、或
は 嬰 … 海 の 性 徳 、顕 密 の 理 、
真
言 の 教 理 を釈
覇 す る に、密
ハ知
之 . 種 智一 、 密ハ 事 理 倶 .密
ナ リ 密ハ 事 理 不 二 す 密ハ 事 理 平 等 す 密 ノ如
ハ 具 ニ ス 三 大 一 ヲ 密 .事
ハ無
為 . 理 ナ リ 密. 共 . 居 二 。 殊 特 事 に 対 す る 異見
を み せ て い る が 、 さ ら に 頼 瑜 が 、 諸 宗 輝 ち法
相 、 三論
、の 理 、 智、 事 に
対
す る そ れ ぞ れ の 相 異 を開
陳
さ れ て い る 『 諸 宗 教 理 同 異 釈 』 天 台 、 の 一 段六 大 三 密 、 無 尽 荘
厳
の 縁 起 に 鑿 む れ ば 、若
く は華
厳
の無
尽縁
起
、 若 く は 天台
の 一 心 即 三 千 は随
縁 に し て 皆果
海 従 り 起 る 因 分 の 法 門 な る が 故 に 、真
如
縁 起 と 云 う な り 。 ・ ・…
次 に真
言 宗 の意
は 、 性 徳 輪 円 の妙
理 を 明 し 、 無 尽 荘 厳 の 本 具 を 顕 は す な り 。 謂 は ゆ る 本有
の 六 大 は是
れ 理、法
然 の 四曼
は 即 ち事
な り 。 或 は 六 大 の 中 に 五 大 は 是 れ 理 、 識 大 は 邸 ち智
な り 。或
は 六 大 四曼
は是
れ 理 、 五智
三 密 は 即 ち智
な り 。或
は皆
理 な り 、皆
智 な り 、 理 々 無 辺 な り 、 智 々無
数
な り 。 是 の 如 く の 六 大 四 曼 等 は皆
是
れ 顕 家 の 寂 滅絶
離 の 一 心 無相
の 極 理 に 於 て 、 自性
法 身 が如
義 を 以 て説
き た も う 所 の本
具 輪 円 の徳
な る が 故 に 、 永 く 諸 宗 の 理 と 異 る の み 。 諸 教 の絶
離
が 密 蔵 の 本 分 と は 即 ち 此 の 意 な り 。続 い て 『 雑 問 答 』
第
十 六 よ り 引 証 し て 、 此 の 教 の 意 は 無 尽 荘 厳 蔵 の 本 具 を 明 す が 故 に 、自
心 の実
際
を証
す る 時、 万 徳 荘厳
自 ら 呉 す 。 こ の よ う に他
宗 が 如 何 に 理 智 事 の 無 礙 円 融 を 説 こ う と も 、 因分
の 位 に し て 、 そ の 極 限 は 寂滅
絶 離 無 相 の 境 で あ っ 一58
一 N工工一Electronlc Llbrary真言密教に おけ る 「事」をめ く“る 問 題 (佐藤) て 、 こ れ に 比 し て 真 言 宗 の 立
場
は 、 そ の 果 分 の 世 界 を 開 示 し て 、 理智
不 二 、 事 理 平 等 で あ り 、 ま た 事 を 能 生 の 源 と し て 、 六 大 ( 理 ) 、 四 曼 (事
) 、 三 密 (智
) を み 、 法 身 説 法 を証
し 、法
爾 自 然 の 法 門 な る こ と を 論 ず る に 、無
尽 荘厳
蔵 、 性 徳 輪 円 の 本 具 な る 徳 、 万 徳 荘 厳 と 表現
せ ら れ る 。 こ σ 性 徳 、 万 徳 荘 厳 、 無 尽 荘 厳、 本 具 の 徳 こ そ 弘 法 大 師 が 開 顕 せ ら れ た真
言 密 教 の 事 の 世界
で あ り 、 法 身 説 法 が 常 恒 に 現 出す
と 実 認 せ ら れ る 深 密 の 世 界 で あ る と 説 か れ る 。 さ て次
に こ の よ う な証
文 を宗
祖
大 師 に み る な ら ば 、『 即 身 成 仏 義 』 に
密
教
に は 則 ち 此 を 説 い て如
来
の 三昧
耶 身 と 為 す 。 四 大 等 心 大 を離
れ ず、 心 色 異 な り と 雖 も 其 の 性 即 ち 同 な り 。 色 即 ち 心 、 心 即 ち 色 、無
障
無 礙 な り 。智
即 ち 境、 境 即 ち 智 、智
即 ち 理、 理 即 ち 智、無
礙 自 在 な り 。 能 所 の 二 生あ
り と 雖 も 都 て能
所 を絶
せ り 。 即 ち 法 界 法身
の 体 を 六 大 を 以 て 明 か し て 理 、智
、 事 無 礙 円 融 な る こ と が 説 か れ て い る が 、 特 に 事 を 強 調 せ ら れ て い る こ と は 、次
に 相 、 用 を 論 ぜ ら れ て い る当
論
の 主 旨 か ら も 窺 う こ と が で き る 。 こ の 点 を 『 二 教 論 』 に お け る ( 瑜 祗 経 引 証註
解
段 )此 の 文 は 『 十
住
心論
』 に お け る (第
十 秘密
荘 厳 住 心 ) にあ
る も の と 同文
に は 、 そ の 巻 頭 の 句 を 註
解
し て 、 一時
薄 伽梵
金
剛 界 遍 照 如来
。 此 は 総 句 を 以 て 、 諸 尊 の 徳 を歎
ず 。 不壊
金剛
光
明 心 殿 中 。 謂 く 不 壊 金 剛 と は総
じ て 諸尊
の 常 住 の 身 を歎
ず 。光
明 心 と は 心 の 覚 徳 を 歎ず
。 殿 と は身
心 互 に能
住 所 住 と な す こ と を 明 す 。 中 と は 語 密 亦離
辺 の 義 な り 。 此 は 是 れ 三密
な り 。 彼 の 五 辺 百 非 を 離 れ て 独 り 非 中 の 中 に 住 す 。 等 覚十
地 も見
聞 す る能
はず
。 所謂
法 身 自 証 の 境 界 な り 。亦
是 れ 成 所 作 智 な り 。 三 密 の業
用
皆 此 従 り 生ず
。 已 上 五 句 は総
じ て 住 処 を 明 す 。 住 処 の 名 は 則 ち 五 仏 の秘
号妙
徳
な り 。 密 意 知 り ぬ 可 し 。 各於
五智
光
明 峯 杵 。 出 現 五 億倶
胝 微 細 金 剛 。 遍満
虚 空 法 界 。諸
地 菩 薩無
有 能 見 。倶
不覚
知 。熾
然 光 明 自在
威
力 。 一59
一NII-Electronic Library Service こ れ は 三 十 七
尊
の 根 本 の 五 智 に 各 恒 沙 の 性 徳 を 旦 ハ す る 事 を 明 す 。 若 し 次 第 に 約 す れ ば 出 現 の 文 あ り 。若
し 本有
に 拠 ら ば 倶 時 に是
の 如 く の 諸 徳 を 円 満 す 。 と あ り 、 続 い て 五 印 四 徳 を 示 す 文 中 、 特 に 四 徳 を 註 解 し て 救 度 有 情 。 大 慈悲
の 徳 な り 。 演 金 剛 乗 。 説 法 の 智 徳 。 唯 一 金 剛 。 円 満 壇 の 徳 智 慧 な り 。 能 断煩
悩 。 利 智 の 徳 な り 。 さ ら に 唯 此 仏 刹 。 尽 以 金 剛 自 性 清浄
所 成 密 厳 華厳
。 に つ い て は 、 謂 く 密 と は 、 金 剛 の 三密
な り 。華
と は 開敷
せ る覚
華 な り 。 厳 と は 種 々 の 徳 を 具 す 。 言 く 恒 沙 の 仏 徳 、 塵 数 の 三密
を 以 て 身 土 を 荘 厳 す る こ れ を曼
茶 羅 と 名 つ く 。 又 金 剛 は 智 を 表 し 、 清 浄 は 理 を 表 し 、 自 性 は 二 に 通 ず 。 言 く 彼 の 諸尊
に 各 自 然 の 理 智 を 具す
。 と あ る が 、当
段 は 前撃
で に 論 証 し て き た 顕 密 二 教 の 教 判 に 続 い て ・真
言 密 教 の 法 身 説法
の 相 を 明 か す に ・ 『勳
祗 経 』 の 句 を引
証 し、 註 解 さ れ て い る と こ ろ で あ る 。 こ こ に重
ね て 表 現 し て あ る 「 徳 」 は 、 こ れ を 既 に述
べ て き た 「 事 」 に 置 き か え て み る と き 、「
事
」 即 ち 「 徳 」 を 通 し て 大 師 の 世 界観
な る も の が如
何
な く 表 明 さ れ て い る の を知
る こ と が で き る 。 理智
を 相 対 的 な位
置 に お い て 論 理 的 に 展 開 す る の で な く 、 理智
不 二 、 円 融 無 礙 の 世 界 を 人 間 的 、 主 体 的 に表
現 す る 。 そ れ は 飽 迄宗
教 的 と 云 う か 、 信 と 行 の 宗 教 経 験 を基
礎 と し た 仏 教 の 正 意 を直
裁 に 標 榜 し て い る と 云 い 得 る 。 何 故 な ら ば 理 智 に 対 す る 事 の 世 界、 殊 に 無 礙 円 融 を 説 い た に せ よ 、 そ れ だ け で は表
現 し 尽 す こ と の で き な い 経験
界 の 状 況 を、 さ ら に は真
言密
教 が表
顕 せ ん と す る 果 の 世 界 を 実 の如
く 示 す 語 と し て 、「 徳 」 或 い は 「 無 一一
60
一 N工工一Electronlc Llbrary翼 言密 教に おけ る 「事」 をめ く“る問題 (佐 藤 ) 尽 荘
厳
」 と い う 語 を 理 解 で き る の で あ っ て 、 こ れ は 個 と普
遍 の 関 係 の 上 に 思 弁 的 に考
察
し て 理智
事
円 融 を 展 開 し よ う と す る姿
で は な く し て 、 個 人 が 行 ( 真 言宗
に 規 定 せ ら れ る 事 相、 行 法 ) の 上 に 実 現 す る 世 界ー
仏 徳 を 個 人 の徳
が感
得
す る 世 界i
を 表 明 し て い る も の と解
す こ と が でき
る 。従
っ て そ の 基 底 に 信決
定
が前
提 せ ら れ る 。 こ の 信 につ い て は
芙
蓉 良 順先
生 が 、 「 仏 教 に お け る 儒 の 問 題 」 ( 真霄
密
教 の 儒 に つ い て ) な る論
文 に お い て詳
述
さ れ て い る 。 今 は特
に 「 事 」 に置
き か え ら 、 れ て強
調 さ れ て い る 「 徳 」 に つ い て 金 山穆
韶 師 の 著 「真
言密
教
の 教 学 」 に 述 べ ら れ て い る次
の 謡 に 注 音 心 し た い 。 ( 四 密[ 教 の 正 音 心 ) 即 ち 顕 教 は 因 縁 生 の 俗諦
に は 十界
の 差別
を 存 し、 仏 あ り 衆 生 あ り 、 迷 悟 、真
妄 の 医 別 を 観 る も 、 無 自 性 無相
の真
諦 に は 仏 な く 衆 生 な き 一味
平 等 の 理 な り と 説 く も の な る が 、弘
法 大 黼 の宗
教 は 一味
平 等 の 理 な り と観
る 顕教
の真
諦 に、 仏 あ り衆
生 あ り 、 此真
諦 の仏
と 衆 生 と の感
応 道交
の秘
趣
を 賜 か し 衆 生 の 身 心 に 即 し て 仏 身 無 限 の 霊徳
を 顕 得 す る 郷 身 成 仏 の旨
を 開 示 す るも
の で あ る 。 と し て 無 自 性 法 性 に本
来 具 有 せ る 無 漏 の 性功
徳
蔵
を 開見
す
る こ と こ そ 、 仏 身 無限
の 霊 徳 を 顕得
す
る 顯 身 成 仏 の 教 義 が成
立 せ ら れ る根
拠 で あ る と 説 か れ て い る 。 さ ら に 那 須 政 隆 先生
に は 、 こ の 関 係 を 理 、智
、 事 の 上 に と ら え つ ・ 次 の よ う に 詳 論 せ ら れ て い る 。 「智
山 学 報 」第
一輯
( 大 β 経 の 教 主 論 に つ い て ) こ の 一 大 曼 荼 羅 を 法 界法
身或
は 自 性法
身 摩 訶毘
盧
遮那
如来
と称
す る 。 こ れ を裏
か ら い え ば宇
宙 法界
の 無 尽 荘 厳 は自
性 法 身 大 毘 盧 遮 那如
来 の功
徳 相 に 他 な ら な い の で あ る 。法
身
如 来 は宇
憲 法 界 の無
尽 荘厳
蔵
な る功
徳 飆 を 具有
せ ら れ て い る 宇 宙 身 で あ り 、 霊 体 で あ る 。 そ れ で 宇 宙 に お け る 万 物 が 法界
法 身 の 三 密 で あ る と い う こ と に な る 。…
一 般仏
教
で は 法 (真
理 ) を ば 抽象
的 に 把 握 し 、存
在 か ら離
れ た も の と す る か ら 勢 い 無 色 無 形 の 純 理 法 身 と な ら ざ る を 得 な い 。 一 般 仏教
と い え ども
法 を 証 す る は法
と 一 体 に 成 る こ と で あ る と し 、 法 を 証 し た自
内証
で は 一61
一NII-Electronic Library Service 理 と 智 と が 一
体
不 二 と な っ て い る と す る が 、 そ の 一 体 不 二 な る 劇 証 に於
て 理 と 智 と を 分離
し 、 理 の み を 取 り あげ
て 理 法 と い う も の を 考 え る か ら 理 法 身 が無
色 無 形 の純
理法
身 と な る の で あ る 。 と こ ろ が わ が宗
祖
は 事 実 か ら離
れ た 理 と い う も の は あ h.得
な い 、 事 の存
す る と こ ろ に は 必 ず 理 があ
り 、 理 が あ れ ぽ 必ず
事 に 即 し て い る と い う事
理 不 二 の 立 場 を 堅持
し 、 法 と 存 在 と は常
に 一 体 不 二 で あ る と い う 人 法 一 体 の 思想
に 徹 せ ら れ た 。 ・…
理 智 事 の 三 点 は常
に 一体
に し て 法 身 は 三 密 活 動 を 為 し 、 そ の 三 密 活 動 を 法身
の 説 法 と い う の で あ る 。 理 は所
証
の 法 であ
り 、智
は 能 証 の 自 受 用 智 で あ り 、 こ の能
所 証 の 理智
が 冥 合 一致
し て 正覚
を 成 じ た 仏身
そ の も の が 事 で あ る 。 ・ ・…
六 大 四 曼 三 密 が 郢 ち 法 そ の も の で あ る 。 従 っ て 自 性身
は 諸 法 万 徳 輪 円 の 体 、 鄰 ち 理智
具 足 の 事体
で あ る 。 こ の 入 法 一 体 、 理 智 具 足 の事
体
こ そ 無 尽 な る 荘 厳 蔵 、功
徳 相 で あ り 、 こ 玉 に に 仏 教 本来
の 主 旨 に沿
っ て 、寧
し ろ よ り徹
底
し た 形 に お い て 知 る こ と ( 智解
) を 超 え て 成 る こ と ( 悉 地 ) を 主 体 的 に解
明 し て い る姿
と し 「 事 」 か ら 「徳
」 へ の超
畄 を 見 る の で あ る 。 一62
一N工工一Electronlc Llbrary Servlce
以 上 の こ と か ら
真
言 密 教 に お い て 説 か れ る 「 事 」 の 世 界 は 、 こ れ を 「 徳 」 と し て 理解
す る こ と が 許 さ れ る も の で あ る な ら ば、 さ ら に 「徳
」 の 形 成 、 内 容 を吟
味
す る こ と に よ っ て、 儒 を 基 盤 と す る宗
教 が 求 め ん と す る 人 間 像 の 一 つ と し て の 、 真 言 密 教 の 人 間矇
を も 描 出 す る こ と が で き る 訳 で あ る 。 宗 祖 大 師 は 真 言 密 教 に お け る 徳 の 形成
i
成 か 仏ー
を 、 『 即 身義
隠 に 三 密 加 持 を 以 つ て 示 さ れ て い る が 、 そ こ に は 四 つ の引
証
経文
が あ り、 そ の う ち 『 五秘
密儀
執 』 の 一 段 に は 次 の よ う に あ る 。 若 し 毘 盧 遮 那 仏 自受
用
身 所 説 の内
証
自 覚 聖智
の 法、 及 び 大 普賢
金 剛薩
壥 の 他 受 用 身 の 智 に依
ら ば 、 羅 ち 現 生 に 於 て曼
荼 羅 阿 閣 梨 に 遇 逢 い 曼 荼 羅 に 入 る こ と を得
。 為 く 羯 磨 を 旦 ハ 足 し 普 賢一 二 摩 地 を 以 て 金 鰯薩
唾 を 引 入 し て 其真言密 教における
r
事」 をめ く“る問題 (佐藤 ) ト し ト ト ト身
中 に 入 る 。 加 持 の威
徳 力 に藉
る が故
に 。 須 臾 の 頃 に 於 て 当 に 無 量 の 三 昧 邸 無 量 の 陀羅
尼 門 を 証 す べ し 。 不 思議
の法
を 以 て 能 く 弟 子 の 倶 生我
執
の 種 子 を変
易 し て、 時 に 応 じ て 身 中 に 一 大 阿 僧 祇劫
の 所集
の福
徳
智慧
を 集 得 す 。 ・ ・…
三密
の 金 剛 を 以 て増
上 縁 と な し て 能 く 毘 盧遮
那 三身
の 果 位 を 証 す 。 さ ら に宗
糧
大
師 が 『秘
蔵
記 』 に 、 こ の 三 密 を も と に し て 三 平 等 観 を 説 か れ て い る 一 段 に は 、 田 成 の如
来 の 因 よ り果
に 向 う其
の中
間 に お い て 、 修 す る所
の功
徳 乃 ち 以 て 煩 悩 を 浄 め 、 正 覚 を 成 じ て後
衆 生 を度
す る 。 利 他 の 功徳
広 大無
辺 な り 。 一 仏 の功
徳 す ら 広 大 無 辺 な り 、 况 や 無 数 の 如 来 の功
徳
は 不 可 説 不 可 説 な り 。 斯 の 不 可 説 不 可 説 の功
徳
を 以 て 、 吾 が 身 に 入 る れ ば 、諸
仏
法
界
蔵 を開
い て 無 量 の 功 徳 を 以 て我
に施
与 し給
う 。 吾 が 本 来 本有
の功
徳 と 此 の 生 の 所修
の 功 徳 と を 、 諸 仏 の身
に 入 る れ ば 吾 れ 諸 仏 を 供養
す 。 ・ ・…
諸 仏 は 万 徳 円満
し て 眷 属 囲 繞 せ り 。 吾 も 亦 万 徳 円満
し て 眷 属 囲 繞 せ り 。 ・ ・…
入 我 我 入 の 故 に 諸 仏 の 三無
数 劫 の中
に 修集
す る 所 の功
徳 、我
が 身 に 具 足 し ぬ 。 又 一 切衆
生 の身
中
の 本 来 自 性 の 理 と 、吾
れ 及 び 諸 仏 の自
性 の 理 と 平 等 に し て差
別 な し 。 而 も 衆 生 は 覚 せず
生 死 に輪
廻 す 。 茲 に 因 て 我 衆 生 の 為 に 悲 愍 を 発 し て 、修
す
る 所 の 功 徳 自 然 に 一 切衆
生 の 所 作 の功
徳 と 成 る 。 是 れ 則 ち真
言 行 老 の利
他 の 行 な り 。 郷 ち 行 者 の 三 業 が 常 に 教法
に 指 晦 さ れ 、 よ り 深く
理 解 し 、実
践
行
に 努 力精
進 す と こ ろ に 、冷
ら 仏 の 功 徳カ
ー
時 窒 を 超 え た 無 限 な る 力i
は 行 者 に 具 現 し 、 行者
( 徳 ) を媒
介 と し て 他 に 影 響 を 及 ぼ す こ と に な る 。 こ 瓦 に 仏 徳 顕現
の 世 界 が現
出 せ ら れ る 。 従 っ て こ 玉 に 云 う 「 徳 」 は 、 倫 理 上 に み る 社会
的 な 、 或 い は あ る 人 間 関 係 の枠
内 に の み 限定
せ ら れ る も の で は な く し て 、絶
対 的 な 徳 、 無 限 な る 徳 と し て 、無
始 よ り 本来
あ る と こ ろ の も の と し て肯
定 さ れ 、 そ こ か ら 出発
す る と こ ろ に 法 身 説 法 や 、 事 教 二 相 の 修 習 を 強調
す る 真 言密
教 の 立 場 も 成 立 す る こ と に な る わ け であ
り、 い わ ぽ讃
仰 し 、 行 を修
し て初
め て体
得
(自
他 と も に認
め る ) ・ー
徳
の形
成−
があ
り 、 徳 は さ ら に 信 を 増進
し 、 影響
力も
増
大 し て 益 々 堅 固 な も の と な る 。 即 ち 具 体 的 現象
1
…
欄i
−
を 逓 じ て 、 自覚
酌 に実
践
さ れ る と き 、 そ の 個 が も つ影
響 力 こ そ 徳 で あ り 、徳
の 内 容 を 示 す も の で あ る 。 換 言 す れ ば 、 こ の 自 覚 的実
践ー
如
法 …−
こ そ 法 の 一63
一NII-Electronic Library Service 具 現 で あ り 、 い わ ば こ の 具 現 の 可
能
母 体 と し て 肯 定 さ れ る 必 然 性 が 認 め ら れ 、 そ こ に 徳 の 総 体 と し て の 法 界 法 身 の 出 現 が要
請 せ ら れ る 。 『 大 日 経 疏 』 ( 住 心 品 ) に は、「
薄
伽 梵 」 を 釈 す る 段 に薄
伽 梵 と は 、 こ れ 能 破 の義
な り 。 人 の 利 器 を 執 持 し て 摧 伏 す る 所 多 し 。 そ れ 本 よ り未
だ こ の 名 有 ら ざ れ ど も 、 世 議 っ て 其 の 事 迹 を 観 る が 故 に 、 号 し て能
破 者 と す る が如
く、 世尊
も 亦 爾 り 。 大智
の 明 を 以 て 一 切 識 心 の無
明 煩 悩 を 破 し た ま ふ 。 こ れ 等 は 本 よ り 無 生 に し て ま た 相 貌 も な し 。 然 れ ど も 慧 日 出 つ る 時 に 暗惑
自 ら 除 く 。 是 の 故 に 義 を 以 て 名 け て 破 と す 。 と 能 破 の 義 に と る 例 を さ ら に 『智
度 論 』 よ り 示 し た後
に 、 今 の 義 と は 全 く 逆 な 一面
を把
え て釈
さ れ て い る 。 又薄
伽
梵
と は 即 ち有
の 声 を 帯 す 。 人 の多
く資
財 を 有 す る を ば 持 資 財 者 と 名 け 、 金 を有
す る を 以 て 持 金 者 と 名 く る が如
く 、 如 来 は 殊 勝 の 徳 を 具 す る を 以 て の 故 に 持 衆 徳 者 と 名 く 。 こ れ も 前 例 の よ う に 『 智 度 論 』 よ り 、 婆 伽婆
を釈
す る 文 を引
証
し て 有 徳 、 有 名声
な る を 明 か し て い る 。 そ し て 他 に 例 を 示 し な が ら 、 尊 者 を さ す 場 合 に は 、 直 接 そ の 名 を 呼 ば ず 、 そ の功
徳 を 嘆 ず る の が 常 で あ り 、経
の 中 に 多 く 出 て く る 世尊
な る 称 号 も 、歎
徳 の 総 称 と し て 用 い ら れ る代
表 的 な語
で あ る こ と を 説 い て い る 。 続 い て 「 法 界宮
」 を 釈 し て 法 界 と は 、 広 大 金 剛 の 智 体 な り 。 此 の 智 体 と は 、 謂 ゆ る如
来 の実
相 智 身 な り 。 加 持 を 以 て の 故 に 、 即 ち 是 れ真
実 の 功 徳 に 荘 厳 せ ら る 鼠 処 の 妙 住 の 境、 心 王 の所
都 な る が 故 に 宮 と 日 ふ 。 ・ ・…
如 来 有 応 の 処 に 随 て 、 此 の 宮 に非
ざ る は 無 し 、 独 り 三 界 の 表 に 在 る に あ ら ず 。 こ x に 理 、智
、 事 の 関係
の 上 に 理 解 す る 哲 学 的 な領
域
を 超 え た、 宗 教 の 世界
、 即 ち 個 が実
認 す るi
自覚
ー
こ と に よ っ て の み 個 に 生 き 、 個 を 生 か す も の と し て 、 徳 の 世 界 の 実 証 を み る の で あ る 。 い わ ば 「事
」 に 則 し て 「 徳 」 を 証 認 す る とき
、 無 量 無 辺 な る 「 事 」 の 展 開 が 、「 徳 」 の 具
象
化 と し て 、 個 に お い て 「徳
」 が 顕 現 す る こ と に な る 。 こ の 事実
を 明 確 に 表 は し て い る も の と し て如
来 の 十 号 を あ げ る こ と が で き よ う 。 こ 九 に つ い て は 既 に 『疏
』 の 「薄
一64
一 N工工一Electronlc Llbrary真言密教に おける 「事」 をめ ぐる問 題 (佐藤 ) 伽 梵 」 を 釈 す る 文 を 示 し た 中 に 、 『 智 度 論 』 の 「
婆
伽 婆 」 釈 論 の 一 部 を み た よ う に 当 論 に詳
述 さ れ て い る が 、 さ ら に 加 え る な ら ば 、 問 う て 曰 く 、婆
伽婆
は 止 だ 此 の 一 名 の み有
り や 、 更 に 余 名 有 り や 。 答 へ て 曰 く 、仏
の功
徳 は 無 量 な れ ぽ 、名
号 も 亦 た 無 量 な り 。 此 の 名 は其
の 大 な る 者 を 取 る 、 人 多 く 識 る を 以 て の 故 に 。 と し て 十 号 を 初 め 、 さ ら に 大 徳 、 厚 徳 、 無等
等
の如
き 多 く の尊
号 を あげ
た の ち 無 量 の功
徳
蔵 あ り 。 是 の 如 き 等 の 無 数 の希
有
の 功 徳 力 あ り 。 師 子 の 畏 る x こ と無
き が 如 く 、 諸 の 外道
の 法 を 破 り 、 無 上 の梵
輪 を 転 じ て 、諸
の 三 界 を 度 脱 し た ま ふ 。 是 を 名 け て婆
伽婆
と 為 す 。婆
伽 婆 の 義 は無
量 な り 。 若 し広
く 説 か ば 、則
ち 余事
を 廃 せ ん 。是
を 以 て の 故 に 略 説 せ り 。 こ の よ う に 歴 史 的 個 の 人 格 の 上 に 、 普 遍 な る徳
の 顕 現 を如
何 な く発
揮 し て い る 事実
を 認 め る の で あ る が、 そ こ に 釈尊
の 自 覚−
自 他 の要
請
へ の 応 えを み る と と も に 、
個
の 人 格 を 通 し て 具 象 化 さ れ た 徳 の 母体
と し て の 、 普 遍 な る 徳 の 総 体 と し て の 法 身 を認
め る こ と が で き よ う 。 従 っ て 徳 の 内 容 も こ れ ら の 徳 相 を 検 討 す る こ と に よ っ て 理解
し 得 る 訳 で あ る 。 こ の 徳 相 の 最 も 具 体 的 な 例 と し て 仏 の 三 十 二 相 を あげ
る こ と が で ぎ よ う 。『 智 度 論 』 に は 三 十 二 相 を 詳 説 し た の ち 問 う て 曰 く 、
菩
薩 は 何 を 以 て の 故 に 相 を 以 て 身 を厳
る や 。 答 へ て 曰 く 、 人 仏 の身
相 を見
た て ま つ ら ば 、 心 に浄
信 を 得 る あ り 、 是 を 以 て の 故 に 相 を 以 て身
を 厳 り た ま ふ 。復
次 に 、諸
仏 は 一 切 の 事 勝 る る を 以 て の 故 に 身 色 、威
力 、 種姓
、 家 属、智
慧 、禅
定 、解
脱
の 衆 の 事 み な 勝 れ た り 。 若 し仏
、 身 相 を 荘 厳 し た ま は ず ん ば 、是
の事
便 ち 少 し 。 復 次 に 、有
人 は 言 ふ 阿 縟 多 羅 三藐
三 菩提
は 是 の 一65
一NII-Electronic Library Service 身 に 住 す 。 若 し 身 相 、
厳
な ら ざ れ ば 瓢 阿 褥 多 羅 三藐
三 菩 提 は 此 の 身 中 に 住 せず
と 。 譬 へ ば 人 の 豪 貴 の 家 の 女 を娶
ら ん と 欲 す る が 如 し 。其
の 女 使 を 遣 は し て 、 彼 の 人 に 語 げ て 言 く 、 「 若 し 我 を娶
ら ん と 欲 せ ば 、 当 に先
つ 房室
を 荘 厳 し 、 汚穢
を 除 却 し 、 香 薫 を 塗 治 し 、 ・ ・…
華 香 を も て 必 ず 厳 飾 せ し む べ し 。 然 る 後 我当
に 汝 が 舎 に 到 る べ し 」 と 。 阿 耨 多羅
三 藐 三 菩 提 も 亦 復 是 の如
し 、 智 慧 の使
を 遣 は し て 、未
来 世 の 中 の 菩 薩 の所
に 到 っ て 言 く 、「 若 し 我 を 得 ん と
欲
せ ば 、 先 づ 相 好 を 修 め 、 以 て 自 ら 荘 厳 せ よ 。 然 る後
我 当 に 汝 が身
中 に 住 す べ し 。 若 し 身 を 荘 厳 せ ず ん ば 我 は住
せ ざ る な り 」 と 。 是 を 以 て の 故 に菩
薩 は 三 十 二 相 を 修 し て 自 ら身
を 荘厳
す 。 阿 褥 多 羅一 三 貌 三 菩 提 を 得 ん が 為 の 故 な り 。 こ れ は従
来 述 べ て き た 徳 の 形 成過
程 と 全 く 逆 の 論 理 表現
を 以 て 、 正 覚 成 就 の た め に は、 徳 相 具 足 の 必 要 が述
べ ら れ て い る が 、 こ れ は 教 法 が 客 観 的 に 独 立 し て存
在 仙 値 を有
す る の で な く 、 こ の 世 の も の と し て 、 人 間 の 生 命 に 生 き 、 生 活 を 規 定 し、 相 を も 変 容 せ し む る 具 体 性 を も っ た と き 、 初 め て 法 が教
と し て 個 に 生 き 、 個 を 生 か し 、 ま た個
が 法 に お い て 自 覚 的 に 生 き る 姿 と し て 、 教 法 た る 実力
教
化 力を 発
揮
す る も の で あ り 、 こ x に お い て の み 仏 教 が も つ 価 値 性 は 問 は れ ね ば な ら な い 。真
言 密 教 に お け る 法 身 説 法も
か 玉 る 意 味 に お い て 、 い わ ば 仏 教 の 真 意 を 最 も 深 秘 な 立 場 で自
得
し 、 而 も 具体
的 な 人 間 的 な 関 係 の 上 に 把 握 せ し め る と こ ろ に 、 そ の 意 義 が存
す る の で あ り 、 歴 史 性 の 中 に 、 常 に 超 歴 史 性 を 見 、 永 遠 性 も 歴 史 的 な 現 実 身 の 上 に 、自
か ら 特 殊 相 を 現 ず る こ と を 示 す も の で あ る 。 い ま こ れ ら の 流 れ の 一 端 を 、原
始 経 典 を 中 心 に 検 討 せ ら れ て い る 中村
元 博 士 著 「 ゴ ー タ マ ・ ブ ッ ダ 」(
第
三 章 人 間 ゴ ー タ マ の 神格
化 ) に み る な ら ば 、, ま た 経 典 で は 釈
尊
に 呼 び か け る と き に 「尊
師 よ 」 ( σ ず p 臓 p く 叫 ) と い う こ と が多
い 。 バ ガ ヴ ァ ー ( 語 基 は パ ガ ヴ ァ ッ ト ) と い う の は 、 ヴ エ ー ダ 聖 典 に お い て も 、 叙事
詩 に お い て も 、 弟 子 が師
に 対 し て 「 先 生 ! 」 と 呼 び か け る と き の こ と ば で あ る が 、 仏教
は そ れ を 採 用 し た の で あ る 。最
古 の 詩 に お い て は や は り バ ラ モ ソ 学 生 が 師 に 対 一 66 一 N工工一Electronlc Llbrary真言 密教における 「事」 をめ く“る問題 (佐 藤) し 「 先 生 ! 」 と 呼 び か け る の と 嗣 じ 意 昧 で
使
わ れ て い る 。 仏 教 で こ の呼
称 は 非常
に古
く か ら用
い ら れ て い る が 、 ジ ャ イ ナ教
で も 開祖
マ ハ ー ヴ ィ ー ラ を バ ガ ヴ ァ ッ ト と よ ぶ こ と は 、 非常
に 古 い 時 代 か ら 現 代 に 至 る ま で 行 わ れ て い る 。 し か し ゴ ー タ マ ・ ブ ツ ダ が神
格
化 さ れ る に つ れ て 、 こ の バ ガ ヴ ァ ッ ト と い う 語 も い じ る し く 宗 教 的意
味
の も の と な り 、漢
訳仏
典 で は 、 門 世尊
」 と 訳 さ れ て い る 。 或 る 場 合 に は仏
の 現実
的 な自
体
( 色 身 ) で は な く 、 そ れ を 超 え た絶
対
者
( 法 身 に 当 る も の ) が 意味
さ れ て い る こ と も あ る 。 〔 そ の 語 源 は 恐 ら く 「 主 」 を意
味
す る の であ
ろ う と 考 え ら れ て い る 。 冒 そ う し て や が て釈
尊
を 通 し て そ の奥
に あ る仏
そ の も の を 儒 ず る こ と と な る 。 そ う し て究
極
の 仏 が人
間 の か た ち を と っ て 現 れ た と 考 え る 。 こ の 考 え か た は 原 始 仏 教 に 萠 し 、 大 乗 仏教
で 発 展 し 、 日 本 で は 本 地 垂 迹 の 説 と な る が 、 そ こ に は 一貫
し た 思惟
方 法 が 認 め ら れ る 。 ・ ・…
さ て こ の よ う に し て 、以
上 の 諸 名 称 が 一 ま と め に さ れ て 仏 の 十 号 が 成 立 し た 。 〔 ナ 号 と は 普 通 に如
来 ・ 応 供 ・ 正 遍 知 ・明
行 足 ・善
逝 ・ 世 間解
・ 無 上 士 ・ 調御
丈
夫 ・天
人 師 ・仏
世尊
を い う 。 凵 仏 の十
号
は 詩 の う ち に は 現 れず
、 散 文 に な っ て か ら現
れ 出 て い る 。 た だ し如
来 が加
わ っ た の は後
の こ と で あ る ら し い 。 そ う し て 他方
で は 、 ゴ ー タ マ ・ ブ ッ ダ に対
し て用
い る こ と の 許 さ れ て い た よ う な 呼 称 が、後
世 に は禁
止 さ れ る よ う に な る 。 ・ ・…
か く し て聖
典 は 次第
に ブ ッ ダ を神
格的
存
在
と み なす
よ う に な る 。特
に仏
數
が 発 展 し 、 マ ウ ジ ヤ 王 朝 時代
に 殆 ん ど 国教
と も い う べき
地 理 を 占 め る と 、 ゴ ー タ マ は も は や 人 間 で は な く て 、 超自
然 的 な 神 的 存在
と 考 え ら れ 、 神 格 化 さ れ る に 至 っ た 。 ゴ … タ マ を 門 超 神 」 ( Φ 臨締
く 渺 ) と 呼 び 、 ま た 「神
々 の 神 」 (審
く 9 儀奏
) と 陣 ぶ に 董 る 。後
世 に は 「神
々 を 超 え た神
」 (結
く 倒 鉱 像 Φ 〈 蝉 ) と 呼 ば れ る こ と さ え も あ る 。 そ う し て ブ ッ ダ は 、 人 間 で は な い と 考 え ら れ た 。 ・ ・…
少
し 以前
ま で は 、 ブ ッ ダ を尊
敬崇
拝
す る こ と が 行 わ れ て い た け れ ど も 、 そ れ は 『 人 間 と し て の覚
者 を拝
す る 』 の で あ っ た 。 と こ ろ が 今 や 人 間 な ら ざ る 仏 を拝
す る こ と と な っ た の で あ る 。 ・ ・…
そ し て ブ ッ ダ の身
体
は普
通 人 の 身 体 と は 異 っ た 生 理 的特
徴
を 呉 え た も の で あ る と考
え ら れ る よ う に な っ た 。 ・ ・…
こ の よ う に し て考
え ら れ た幾
多 の身
体
的特
徴
が 一 ま と め に さ れ て 、 や が て 三 十 二相
と い う こ と が 説 か れ る よ う に な っ た の で あ る 。 一67
一NII-Electronic Library Service 以 上 歴 史 的 実
在
者 で あ る釈
尊 に 、 仏 陀 と し て の教
化 力 ( 自 覚覚
他 の カ 所有
者−
仏 身 成就
) が 、 徳 相 と し て 具 足 し 、 次 第 に 法 身 化 す る 過 程 を 解 せ ら れ て い る の で あ る が 、 真 言密
教 に お け る事
教 二 相 に わ た る 教 門 の 成 立 は 、 こ の 過 程 の 上 か ら み れ ば 、 実 に終
局 を 出発
点
と す る の で あ っ て 、 こ れ は 歴 史 的事
実
を 否 定 し 、資
料 を 無 視 す る こ と に よ っ て で は な く 、寧
し ろ 資 料 の 背 後 に 、 歴 史 的 事実
を あ ら し め 、 な ら し め る無 始 無 終 に
ー
も の を 認 め る こ と に よ っ て の み 存 す る と 云 わ ね ば な ら な い 。 こ 玉 に 求 めず
し て 得 る こ と な く 、求
め て な る こ と な き 徳 の 深 秘 性 が あ り 、 法 と と も に 滅 す る こ と な き徳
の 絶 対 性 が 存 す る 。 こ の 絶 対 性 を 証 す る も の こ そ 理 、智
、 事 の 関 係 で あ り 、 法 性 た ら し む る も の で あ る 。 真 暑 . 口 密教
に お い て は 、 こ の 法 性 の 上 に 体 相 用 の 三 大 を み、 法 性 如 来 の 徳 の 顕 現 と し て 事 々 一 切諸
法 を み る の であ
る 。 こ れ は 分析
的 な 結 論 、 論 理 追 求 の 結 果 で は な く 、 徳 の 相 互 作 用 で あ り 、 経 験 の 上 に 把 握 さ れ る 主 体 的 認 識 であ
る 。 い ま こ の 関 係 を 示 す も の と し て 、『 大 乗 起
信
論 』 の第
二 段 立義
分 に は 、 摩 訶 衍 を 法 、 義 の 二 面 か ら分
説 し、 法 と は 一 切世
間 法 と 、 出 世 間 法 と を 摂 す る 衆 生 心 を さ す と し、 次 に義
を 説 い て 言 ふ 所 の 義 に は 則 ち 三種
あ り 。 云 何 が 三 と為
す 。 一 に は 体 大、 一 切 法 の 真 如 を 謂 ふ 、 平 等 に し て増
減
せ ざ る が 故 な り 。 二 に は 相 大 、如
来 蔵 を 謂 ふ 、 無 量 の 性 功 徳 を 具 足 す る が 故 な り 。 三 に は 用 大 、 能 く 一 切 の 世 間 と 出 世 間 と の 善 の 因 果 を 生 ず る が 故 な り 。 『 釈 論 』解
釈 分 に は 、 こ の 相 大 に 当 る 面 に 、 「如
来 蔵 功徳
相 大 摩 訶 衍 、 具 足 性 功 徳 相大
摩 訶 衍、 如 来 蔵 功 徳 相 大 門 、 具 足 性 功徳
相 大 門 」 の 前 重 二 法 二 門 を 示 し 、 「如
来 蔵 功徳
摩 訶 衍 、 具 足 性功
徳摩
訶 衍如
来 蔵 功 徳 門 、 具 足 性功
徳 門 」 の 後 重 二法
二 門 を 示 し て い る 。 こ の 如 来 蔵 、 功 徳 相 、 具 足 性 に つ い て 、 『 大 乗 起 信 論 』 に次
の 如 く あ る 。 復 次 に 、 真 如 の 自 の 体 と 相 と は 一 切 の 凡 失 と声
聞 と 縁覚
と 菩薩
と 諸 仏 と に も 増 減す
る こ と あ る こ と な く 、前
際
に 生ず
る に も 非 ず 、 後際
に 滅 す る に も 非 ず し て 、 畢竟
し て 常 恒 な り 。 本 よ り 巳 来 、 性 に 自 ら 一 切 の 功 徳 を 満 足 す 。 謂 ふ 所 は 自 体 に 大 智 慧光
明 の 義 あ る が故
に 、 遍 照 法界
の 義 あ る が 一一68
一 N工工一Electronlc Llbrary真 言密 教に おける
r
事」をめ ぐる問題 (佐藤) 故 に真
実
識
知
の義
あ る が 故 に 、 常 楽 我淦
の 義 あ る が 故 に 、清
涼
不 変自
在
の義
あ る が 故 に 、是
の如
き
恒沙
に 過 ぎ た る 不離
不断
不 異 不 思議
の 仏 法 を 具 足 し 、 乃 至 、 満 足 し て 、少
く所
あ る こ と な き 義 な る が 故 に、名
づ け て 如 来 蔵 と 為す
、亦
如来
の 法 身 と も 名 つ く る な り 。 こ れ を 『 釈論
』 に お い て は 六 種 性 義 と し て 次 の如
く 釈 さ れ て い る 。 円 満功
徳
門
と は そ の 相 い か ん 、 調 く 真体
の中
に は 、 一 切 の 功 徳 を 門 満 し て 少 け た る 所 無 き が 故 に 、 何 等 の功
徳 ぞ 、所
調 六 種 性 義 の功
徳 な り 、 云何
が 六 と な す 。 一 つ に は 大 智 慧光
明 の 義 、 本 覚 の 般若
は 、能
く無
明 の 闥 夜 を 除く
が 故 に 、契
経 の 中 に 於 て は 、広
大 円 満 殊勝
般
若実
智光
明 性義
と名
く 、 二 つ に は 遍 照 法 界 の義
、 本覚
の般
若 は 、 一 法 界 の 源 を 照達
す る が 故 に 、契
経 の中
に 於 て は 、 周 遍 通達
一 法 界 蔵 自 然 性 義 と 名 く 、 三 つ に は 真 実識
知 の 義 、 本覚
の般
若 は 、虚
仮 の解
量 を 遠離
す る が 故 に 、 契結
の 中 に 於 て は 、 離 妄 想解
決定
了 知実
際
実
性 性義
と 名 く 、 四 つ に は 自 性清
浄
心 の 義 、 本覚
の 般 若 は 、 無 量 の 性功
徳 、 自 然本
有
に し て 他力
を 得 る に 非ず
、塵
累 を 遠離
し て 中実
に契
ふ が 故 に 、契
経 の 中 に 於 て は 、 本有
明 白離
辺 中 々 性義
と名
く
、 五 つ に は 常 楽 我浄
の義
、 本 始 の 二 覚 は 、無
始 よ り こ の か た 、 四障
を 遠離
し て 四 種 の 自 然 の 徳 を 円 満 す る が故
に 、契
経 の 中 に 於 て は 、如
来 正覚
自 然 徳遠
離
炎 幻 不修
行 性 義 と 名 く 、 六 つ に は 清 涼 不 変 自在
の 義 、 二種
の 本覚
は 、 譬 へ ば 明鏡
の 南 北 の 絹 の 随 違 を 具す
る が 如 く な る が 故 に 、契
経 の 中 に於
て は 、 具 足 随 順 逆 違 無 凝陀
羅尼
全 遍 性 義 と名
く 、 是 を 名 け て 六 と す、…
是
の如
き の 諸 徳 は 、無
始
よ 参 こ の か た 、 自 然 本 有 に し て 、縁
力
を 仮 っ て 而 も建
立 す る に 非 ざ る が 故 に 、 こ れ・ り 珊 大 乗 編隔 信「 論 』 や・ 『 釈 瓢 瀰 』 に み ら れ る 如繭 米蔵
、 加 朋 来 法身
と 亠 ハ 種 性 蕪 帆 即 ち 、 大智
彗 働光
明 β の 蕪 姻 、遍
照 法 細 介 の 義 、真
実
識
知
の義
、 自 徃清
浄
心 の義
、常
楽 我 浄 の義
、 清 涼 不 変 自 在 の 義 と 、 前 述 し た 如来
の 十 号 、 さ ら に は 三 十 二 椙 と の 関連
を 考察
す れ ば 、真
言密
教
が蓑
徳 的 な 立 場 を 強 く 打 ち 出 し て い る 堅 圃 な る 基盤
と し て こ れ を 理解
す る こ と が で き よ う 。 実 に仏
教 が そ の 起 源 と と も に 一貫
し て 探 求 し て き た も の が 、 よ り 強 く 描 出 さ れ 、 璽 確 化 さ れ て い る とい わ ね ば な ら な い 。 こ の こ と を 明
瞭
に し め し て い る も の と し げ 上 二 力 ( 三種
加
持
) が あげ
ら れ よ う 。 即 ち 『 大 日 経 瞼 一69
一NII-Electronic Library Service 悉 地 出 現 品、 或 い は 供 養