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博 士 ( 水 産 科 学 ) 境

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 境    磨      学 位論 文 題 名

海 洋生活 期にお けるサ ケ〇銘 c 〇伽刀 chzts 皰 施の 摂 餌 生 態 の 季 節 変 化 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  サケ(Oncorh ynchus  ke ta)は北太平洋・オホーツク海.べーリング海に分布し、海洋生 活期に大きく成長して母川に回帰する遡河性回遊魚である。本種の資源変動、回帰個体 の小型化および高齢化には、いずれも海洋生活期での成長が影響していると考えられて いる。海洋生活期における成長には、サケが回遊系路上にてどのような餌生物をどれだけ 捕食しているかが大きく影響すると考えられるが、これまでサケの海洋生活期を通した季節 的な摂餌生態を包括的に検討した研究は行われていない。

  日本に母川 を持っサケの回遊経路は、近年の遺伝学的手法を用いた研究により解明 が進んでいる。それによると、日本系サケは降海後、沿岸に滞留した後にオホーツク海へ 移動し、最初の越冬期は西部北太平洋に回遊するとされている。その後、夏季・秋季には べーリング海へ索餌回遊、冬季には東部北太平洋で越冬すると考えられている。本研究 では、これらの回遊経路に沿って本種の胃内容物を洋上調査にて採集し、胃内容物分析 により各季節・海域の食性を精査した。さらに、摂餌により得られるエネルギーの成長への 転換効率と消化速度を飼育実験により明らかにし、本種の各季節・海域における摂餌量 を定量的に評価した。また、摂餌量の季節変化が本種の成長に与える影響を検討するた め、定量化された摂餌量と成長量との関係を検討した。

【材料及び方法】

1.野外調査

  日本系サケの海洋生活期における食性を明らかにするため、2002年秋季のオホーツク 海、2002ー2003年夏季・秋季のべーリング海、および1992 ‑ 2006年冬季の西部・東部北 太平洋において、表層トロールにより採集したサケの胃内容物を分析した。胃内容物は可     ―1107―

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能 な限 り種 まで 査定 し、 各海 域・ 季 節・ 体長 群で乾燥重量組成を比較した。なお、べーリ ン グ海 につ いて は、 偶数 年と 奇数 年 での 比較 も行なった。また、摂餌強度の指標として胃 内容物重量一指数 (SCI)を、魚体特性の情報 として肥満度(CF)の比較も 併せて行なった。

2.飼育実験

サ ケ の 摂 餌 量の 定 量化 に資 する パラ メー タを 得る ため 、海 水飼 育し たサ ケ を用 いて 餌料 転 換 効 率 と 消 化 管 内 容 物 排 出 速 度 を 複 数 の 水 温 環 境 下 に て 調 べ た 。飼 育 実験 の餌 とし て 、ツ ノナ シオ キア ミを 用い た。 餌 料転 換効 率については、小型個体と大型個体による差 異も検討した。

3.数理モデル化

野 外 調 査 と 飼 育 実 験 の 結 果 に 基 づ き 、 各 海 域 ・ 季 節 ・ 体 調 群 で の 摂餌 量 を定 量化 する た め の 数 理 モデ ル を構 築し た。 一般 化線 形モ デル に基 づき 、算 出し た各 海 域・ 季節 等で の 胃 内 容 物 重量 指 数の 標準 化し た平 均値 、胃 内容 物の 単位 重量 あた りの カ ロリ ー価 、魚 体 の カ ロ リ ー価 を 入力 情報 とし て、 餌料 転換 効率 もし くは 瞬間 消失 係数 を 用い た摂 餌量 の 定量 化モ デル を試 作し た。 これ を 、既 往の 季節的な魚体サイズの統計値にあてはめて、

モ デル の妥 当性 の検 討お よび 補正 を 行な った 。構築したモデルから摂餌量を推定し、さら に生体エネルギー モデルを用いて潜在的な成長量を算出した。

【結果 と考察】

1.胃内容物分析結果

  サケ の海 洋 生活 期に おけ る食 性は 、季 節・ 海域で大きく 変化した。すなわち、秋季のオ ホーツ ク海および夏季のべーリング海では、動物プランクトン を主体とした餌生物が利用さ れ て い た 。 ー 方 、秋 季の べー リン グ海 およ び冬 季の 北 太平 洋で は、 主に 魚類 を捕 食す る 傾 向が 認め ら れた 。ま た、 同一 海域 ・季 節に おいても、体 長群により胃内容物組成の傾向 は 異 な り 、 動 物 プ ラ ン ク ト ン に っ い て は 、 小 型 の サ ケ ほ どNeocalanus属カ イア シ類 . Themisめ属 端 脚類 、大 型の サケ ほどTh ysan oessa属オキ アミが多い傾向にあった。魚類 にっい ては、主にハダカイワシ科魚類(特にコヒレハダカ)が捕食される傾向にあったが、秋 季のべ ーリング海では小型のサケでスケトウダラ稚魚、大型の サケでキタノホッケ未成魚の 捕食が 見られた。

2.飼育実験により得られた生体パ ラメータ

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  体 重 増 加 量 に 対 す る 餌 要 求 量 を 示 す 餌 料 転 換 効 率 に は 、 飼 育 水 温 と 飼 育 魚 の 魚 体 サイズ による 差異がみ られた 。すなわ ち、飼育 水温が高いほど転換効率が良いこと、およぴ 小型個 体のほ うが大型 個体よ りも転換 効率が良 い傾向が明らかとなった。このことは、サケ が 摂餌 に よ り得 たエネ ルギーを 成長に 使用する 効率には 、環境 水温と魚 体サイ ズがサケ の 代 謝に 影 響 し、 摂餌に よって得 られた エネルギ ーを成長 に使用 する効率 に差異 をもたら し た と考 え ら れた 。 消 化管 内 容 物 の排 出 速 度に っ い ても 、 飼 育水 温 によ る差異 が観察さ れ た 。 す を わち 、 胃 内容 物 が 飽食 状 態 から 半 減 す るの は 水 温7℃ で16時 間 後、 水 温10℃ で 10.1時 間後 、 水 温13℃ で6.6時 間後 で あ り、 水 温 が高 い ほ ど消 化 速度 が速い ことが明 ら か とな っ た 。胃 内 容 物の 瞬 間 消 失係 数 と 環境 水 温 の関 係 は 、指 数 関数 モデル で表現さ れ た。

3.摂餌量および潜在的成長量の推定

  胃 内 容 物分 析 結 果と 飼 育 実 験か ら 得 たパ ラ メ ータ を 用 いて 、 摂 餌量推 定モデ ルを構築 し た 。 餌 料 転 換 効 率 に 基 づ い た 摂 餌 量 推 定 モ デル で は 、非 現 実 的に 過 大 な日 間 餌 要求 量 が算 出 さ れた た め 、摂 餌 量 の 定量 化 へ の使 用 は 行な わ な かっ た 。過 大推定 の原因は 、 餌 料転 換 効 率の パラメ ータに含 まれる バイアス によるも のと考 えられた 。消化 管内容物 排 出 速 度 に 基 づ い た 摂 餌 量 推 定 モ デ ル で は 、 推 定さ れ た 日間 摂 餌 量を 生 体 エネ ル ギ ーモ デ ル に 組 み 入 れ 、 潜 在 成 長 量 の 推 定 も 行 っ た 。モ デ ル によ り 推 定さ れ た 潜在 的 成 長量 は 、既 往 の 統計 値 に 基づ い て 算 出さ れ た 観察 成 長 量に 対 し て低 い 値を 示した が、その 傾 向 には 一 貫 した 線形関 係が認め られた 。そのた め、モデ ル式の 中に補正 項を追 加するこ と で 、摂 餌 量 ・成 長量の 推定に供 した。 推定され た摂餌量 ・潜在 成長量と して、 冬季の北 太 平 洋で は 、 他の 季 節 ・海 域 と 比 べて 極 め て何 が 少 ない 値 が 示さ れ た。 冬季は 摂餌量の 低 下 のた め 、 摂餌 により 得られる エネル ギーは魚 体を維持 する代 謝量程度 に過ぎ ず、魚体 の 成 長に 配 分 でき る量は 少ないと 考えら れた。一 方、秋季 のオホ ーツク海 、夏季 ・秋季の べ ー リン グ 海 では 、冬季 の北太平 洋と比 べて高い 日間摂餌 量・潜 在成長率 を示し た。べー リ ン グ海 で は 、偶 数年と 比べて奇 数年で の摂餌量 ・潜在成 長率が 小さい結 果とな った。こ の 奇数年 におけ る成長の 低下の 度合いは 、夏季よ りも秋季で大きいことが明らかとなった。サ ケが夏 季から 秋季にか けて餌 生物を動 物プラン クトンから魚類ヘ大きく変化させることを考 慮すると、これらの結果は、動物プランクトンよりも魚類マイクロネクトンの利用において、サ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 種 間 の 密 度 効 果 に よ る 影 響 を 受 け や す い 可 能 性 が 示 唆 き れ た 。

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【総合考察】

  本研究で得られた知見を中心に、サケの海洋生活期を通した摂餌生態を概観すると、

その食性 は、環境 中に分布する餌生物の利用可能性を反映した季節変化を示すことが 明らかにできた。すなわち、北太平洋・オホーツク海・べーリング海では、一次生産の季節 変化に応答した動物プランクトンの豊度の季節的な増減を反映して、サケは春季〜夏季 に動物プランクトンを中心とした食性を示す。しかし、秋季〜冬季には、サケが分布する表 層域での動物プランクトン豊度が減少すると、ハダカイワシ科魚類等の魚類マイクロネクト ンヘ食性を変化させると考えられた。この主要餌生物の変化が起きる夏季〜秋季のべーリ ング海では、偶数年・奇数年での差異はみられるものの、越冬期の北太平洋と比べるとサ ケの摂餌による推定エネルギー摂取量が非常に多く、夏季・秋季の双方において高い成 長をすると考えられた。このことは、サケの高い成長が、外洋域の生態系の餌生物の季節 変化に非常に柔軟に対応していることを示唆している。このような餌環境の変化に柔軟な 食性は、サケに特定の餌生物に依存しない成長戦略をとることを可能にしていると考えら れた。

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学位 論文審査の要旨 主 査    教 授    桜 井 泰 憲 副 査    教 授    帰 山 雅 秀 副査    准教授   綿貫   豊

学 位 論 文 題 名

海洋生活期におけるサケ〇刀c 〇吻刀ch 勿s たぞ勿の      摂 餌 生 態 の 季 節 変 化 に 関 す る 研 究

【目的】

  サケ (Oncorh ynchusんta)は北太平洋,オホーツク海・べーリング海に分布し,海洋生 活 期に 大き く成長 して 母川 に回帰する遡河性回遊魚である。本種の資源変動,回帰個体の 小型化およぴ高齢化には,いずれも海洋生活期での成長が影響していると考えられている。

海 洋生 活期 におけ る成 長に は,サケが回遊系路上にてどのような餌生物をどれだけ捕食し て いる かが 大きく 影響 する と考えられるが,これまでサケの海洋生活期を通した季節的な 摂餌生態を包括的に検討した研究は行われていない。

  日本 に母 川を持 っサ ケの 回遊経路は,近年の遺伝学的手法を用いた研究により解明が進 ん でい る。 それに よる と, 日本系サケは降海後,沿岸に滞留した後にオホーツク海ヘ移動 し ,最 初の 越冬期 は西 部北 太平洋に回遊するとされている。その後,夏季・秋季にはべー リ ング 海ヘ 索餌回 遊, 冬季 には東部北太平洋で越冬すると考えられている。本研究では,

こ れら の回 遊経路 に沿 って 本種の胃内容物を洋上調査にて採集し,胃内容物分析により各 季 節・ 海域 の食性 を精 査し た。さらに,摂餌により得られるエネルギーの成長への転換効 率 と消 化速 度を飼 育実 験に より明らかにし,本種の各季節・海域における摂餌量を定量的 に 評価 した 。また ,摂 餌量 の季節変化が本種の成長に与える影響を検討するため,定量化 された摂餌量と成長量との関係を検討した。

【材料及び方法】

  日本系サケの各季節・海域での食性は,2002年秋季のオホーツク海,2002−2003年夏季・

秋季のべーリング海,および1992・ 2006年冬季の西部・東部北太平洋において,表層トロ ー ルに より 採集し たサ ケの 胃内容物分析によって明らかにした。胃内容物分析により得ら れ た結 果か ら日間 摂餌 量・ 成長量を推定するための数理モデルを構築した。数理モデルに

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使 用す る餌 量転 換効 率およ ぴ胃 内容 物排 出速度を推定するため,複数の水温環境下にて飼 育実験を行った。

【結果と考察】

  胃内 容物 分析 の結 果,サ ケは 秋季 オホ ーツク海・夏季べーリング海では,主に動物プラ ン クト ンを 捕食 する が,秋 季べ ーリ ング 海・冬季北太平洋では,魚類ヘ餌生物をシフトさ せ るこ とが 明ら かと なった 。ま た, 同一 海域・季節においても,体長群により胃内容物組 成 の傾 向は 異な り, 動物プ ラン クト ンに ついては,小型のサケほどNeocalanus属カイアシ 類 ・Themisめ属端脚類,大型のサケほどThysanoessa属オキアミが多い傾向にあった。魚類 については,主にハダカイワシ科魚類(特にコヒレハダカ)が捕食される傾向にあったが,

秋 季の べー リン グ海 では小 型の サケ でス ケトウダラ稚魚,大型のサケでキタノホッケ未成 魚 の捕 食が 見ら れた 。これ らの 季節 ・魚 体サイズでの食性の相違は環境中の餌生物の季節 的 なバ イオ マス の変 化と, サケ の成 長に 伴う利用可能な餌サイズの拡大を反映したものと 考えられた。

  飼育 実験 によ り, サケの 体重 増加 量に 対する餌要求量を示す餌料転換効率,およぴ消化 管 内容 物の 排出 速度 に対す る飼 育水 温の 影響を検討した。飼育水温が高いほど餌量転換効 率 が高 く, 胃内 容物 排出速 度が 速い こと が明らかになった。本研究では,これらの餌料転 換 効率 ,も しく は消 化管内 容物 のパ ラメ ータに基づき,摂餌量の定量化のための数理モデ ル を試 作し た。 餌料 転換効 率に 基づ ぃた 摂餌量推定モデルでは,非現実的に過大な日問餌 要求量が算出され,摂餌量の定量推定へは使用しがたいと判断された。過大推定の原因は,

餌 料転 換効 率の パラ メータ に含 まれ るバ イアスによるものと考えられた。消化管内容物排 出速度に基づぃた摂餌量推定モデルでは,推定された日間摂餌量を生体エネルギー.モデル に 組み 入れ ,潜 在成 長量の 推定 も行 った 。モデルにより推定された潜在的成長量は,既往 の 統計 値に 基づ ぃて 算出さ れた 観察 成長 量に対して低い値を示したが,その傾向には一貫 した線形関係が認められた。そのため,モデル式の中に補正項を追加することで,摂餌量・

成長量の推定に供し得ると判断した。

  補正 項を 含ん だ摂 餌量・ 成長 量推 定モ デルの推算結果より,秋季オホーツク海,夏季・

秋 季べ ーリ ング 海で は日間 摂餌 量と 成長 量が大きいことが考えられた。一方,冬季北太平 洋 では 摂餌 量が 小さ く,魚 体維 持に 必要 なエネルギーを除くとほとんど成長が見込めない と考えられた。べーリング海では,主要餌生物が動物プランクトンである夏季と,魚類である秋季 の双方にて高い成長率が推定された。このことは,サケが,外洋域の生態系の餌生物の季節変 化に非常に柔軟に対応して,高い成長を維持していることを示唆する。なお,同海域では,偶数 年 と比 べて 奇数 年で 摂餌量 ・成 長量 が低 く推定された。この奇数年における成長の低下の 度 合い は夏 季よ りも 秋季で 大き く, カラ フトマス豊度の隔年変動によるサケの摂餌生態へ の影響が,季節により異なる可能性が示唆された。

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以上のように,本研究ではサケの食性の季節変化を明らかにし,その海洋生活期を通し

た成長への影響を,初めて定量的に解明した。これはサケの海洋生活期を通した摂餌生態

の把握に大きく寄与するものと評価される。よって,審査員一同は申請者が博士(水産科

学)の学位を授与される資格のあるものと判定した。

参照

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