• 検索結果がありません。

ホメ オボック ス遺伝子

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ホメ オボック ス遺伝子"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 歯 学 ) 太 田 裕 紀

学 位 論 文 題 名

ホメ オボック ス遺伝子 HOXD3 過剰 発現によ る 細胞運動性の増強に果たすインテグリング 3 の役割

学位論文内容の要旨

【緒言・目的】癌における転移の成立過程は,癌細胞の原発巣からの遊離に始まり,最終的には標的 臓器における増殖,すなわち転移巣の形成で完了する。この癌の転移という現象は,基本的には,癌細 胞の空間(位置)的移動と捉えることができる。細胞・組織の空間的移動は,胚発生時の形態形成過 程において最もダイナミックに起こる。転移という現象を発生学の立場からみると,癌細胞による形 態形成ブログ ラムの部分的な借用あるいは誤用と捉えることができる。動物胚の発生過程において 形態情報を位置情報に変換する遺伝子として,ホメオボックス遺伝子が知られている。ホメオボック ス遺伝子は.位置情報の最終的な担い手である細胞接着因子遺伝子の発現を調節しながら胚の形態形 成を進めていく。

  ホメオボッ クス遺伝子群は183塩基のホ メオボックスを共通にもつ転写調節因子遺伝子の集合体 で,ホメオボ ックス遺伝子にはいくつかのファミリ―が存在する。そのうち,ショウジョウバエの antenapaedia (Antp)に属するものはClass|ホメオボックス遺伝子(HOX)とよばれ,ヒトでは,現 在までに39個 同定されている。HOX遺伝子 は,胎生期の細胞に空間的位置情報を与え,形態形成の ブログラムを実行に移すマスター調節遺伝子として働くが,脊椎動物では出生後も発現しており,造 血組織,腎臓,肝臓,中枢神経などの組織で特徴的な発現バタ―ンがみられる。ー方,癌組織における HOX遺伝子の発現バターンはその発生母地 となった正常組織との間で異なることが最近明らかにさ れ ,HOX遺伝 子の発現 異常と発癌,転移・浸潤とを関連させて考えることが可 能になってきた。

  実 際 ,Hamadaら は ,HOX遺 伝 子 の ひ と つ で あ るHOXD3遺 伝 子を ヒト 肺癌 細胞A549に 導入 ・ 過剰発現させると,細胞運動能,浸潤能ならびに転移能が増強することを明らかにした。また,HOXD3 遺伝子の過剰 発現によって多くの遺伝子の発現が変化することも見いだしており,HOXD3過剰発現 によって.1)インテグリンロ3の発現を亢進すること;2)細胞間接着因子の―つであるE‐カド ヘリンの発現を消失させることを明らかにした。

  インテグリンは主として細胞外基質への細胞の接着を媒介する分子であり,Q鎖とロ鎖からなるへ テロ二量体を 形成する。インテグリンロ3鎖はal|b鎖あるいはav鎖とニ量体を形成するが,HOXD3 過 剰発 現A549細 胞に おい て はゼv鎖 とへ テロ 二量 体を 形 成す る。 インテグリ ンavロ3は,1)皮 膚原発の悪性 黒色腫が垂直方向への浸潤性増殖を示す時期に発現する;2)骨転移性乳癌で発現頻 度が高い;3)前立腺癌細胞の悪性度と相 関するなどの報告があり,インテグリンavロ3が癌の転 移・浸潤において何らかの役割を担っていると考えられている。

  今回,HOXD3過剰発現による細胞運動性の増強において,インテグリンロ3がどのような役割を担 っているのか検討した。

【 材料 と方 法・ 結果】A549細胞にH〇XD3遺伝子あ るいはインテグリンロ3遺伝 子の発現ベクタ―

を導入し,HOXD3過剰発現細胞ならびにイ ンテグリンロ3過剰発現細胞 を得た。対照としてネオマ イ シン (Neo)耐 性細 胞お よ びNeo/ハ イグ ロマ イシ ン(Hyg)両 耐性 細胞を用い た。フローサイ卜

‑ 595

(2)

メトリ―による細胞表面の接着分子の解析 から,インテグリンロ3過剰 発現細胞ではHOXD3過剰発 現細胞と同様にインテグリンロ3の発現が亢進し.インテグリンavロ3のへテロダイマーを形成し ていることが明らかとなった。また|ウエスタン・ブ口ッティング法による解析では,HOXD3過剰発 現細胞でみられたE‐カドヘリンの消失はインテグリンロ3過剰発現細胞では認められなかった。

  固相化した細胞外マトリクスに対する細胞遊走能(ハブ卜タキシス)および方向性をもたない細 胞運動能,いわゆるrandom motility(ファゴカイネシス)を調べた。その結果,インテグリンロ3過剰 発現細胞の運動性は,H〇XD3過剰発現細胞と同様に対照細胞のそれに比ぺて有意に高かった。また・

ファ ゴカ イネ ティ ック・アッセイ系に抗インテグリ ンavロ3抗体を加えてインテ グリンゼvロ3分 子の機能阻害を行ったところ,インテグリ ンロ3過剰発現細胞およびHOXD3過剰発現細胞の運動性 はほぼ完全に抑制された。

  細胞同士が接着した状態からの運動性を測定するin vitro wound healingアッセイでは,HOXD3過 剰 発 現 細 胞 > イ ン テ グ リ ン ロ3過 剰発 現細 胞> 対照 細胞 の順 序で 高い 運動 性が 認め られ た 。

【考 察】Hamadaら は, ヒト 肺 癌細 胞A549に ホメ オボ ック ス遺 伝子HOXD3を過剰 発現させると,

細胞の運動性が増強することを報告している。本研究では,3種類の細胞運動アッセイにより,この 細胞 運動 性の 増強 がHOXD3過 剰発 現に よっ て発現の 亢進したインテグリンロ3に よって引き起こ されることを明らかにした。

  イ ンテ グリ ンロ3過剰 発現 細胞 は,H○XD3過剰発 現細胞と同様に,インテグリンavロ3のへテ ロニ量体からなるインテグリン分子を細胞 表面に形成していた。インテグリンavロ3のりガンドで ある 細胞 外マ 卜リ クス に対 す るハ プト タキ シスは,インテグリンロ3過剰発現細胞およびHOXD3 過剰発現細胞でともに高かった。この事実 は,HOXD3過剰発現によるハブトタキシスの増強がイン テグリンavロ3によることを強く示唆している。2つめのファゴカイネティック・トラック・アッ セイで測定される方向性を持たない細胞運 動性もまた,インテグリンロ3過剰発現細胞ではHOXD3 過剰発現細胞と同様に対照細胞に比ぺて高 かった。この運動性は,抗インテグリンavロ3抗体で完 全に抑制されたことから,インテグリンゼvロ3依存性であることが明らかとなった。さらに,最後の In vitro wound healingアッセイの結果から,E‐カドヘリンを発現しているインテグリンロ3過剰発現 細胞の運動性は,対照細胞よりは高いが,E・カドヘリンを消失したHOXD3過剰発現細胞よりも低いこ とが明らかとなった。このアッセイは|コンフルエントになった状態の細胞に一筋の傷,すなわち woundをつけ, そのwound edgeからの細胞の遊離をみるもので,細胞間 の接着性が強ければwound edgeから遊走可能な細胞の供給は少ないと考えられることから,上述の結果Jま細胞間の接着性の差 違によるものと考えられた。

【ま とめ 】本 研究 の結果から,HOXD3過剰発現によって生じたヒト肺癌細胞A549の運動性の増強 は,HOXD3過剰 発現によって発現の亢進したインテグリンロ3によることが明らかとなった。また,

HOXD3過剰 発現 によ るE一カ ド ヘリ ンの 発現 消失は細胞集塊からの細胞の遊離を 容易にしている ものと推測された。

596

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ホ メオボック ス遺伝子 HOXD3 過 剰発現によ る 細胞運動性の増強に果たすインテグリンヶ 3 の役割

  審 査 は 、 審 査 員 全 員 出 席 の 下 に 、 申 請 者 に 対 し て 提 出 論 文 と そ れ に 関 連 し た 学 科 目 に つ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 、 以 下 の 通 り で あ る .

  こ れ ま で の 研 究 に よ り 、HOX遺 伝 子 の ひ と つ で あ るHOXD3遺 伝 子 を ヒ ト 肺 癌 細 胞 A549に 導 入 ・ 過 剰 発 現 さ せ る と 、 細 胞 運 動 能 、 浸 潤 能 な ら ぴ に 転 移 能 が 増 強 す る と と も に 、 イ ン テ グ リ ン ロ3を 含 め た 多 く の 転 移 関 連 遺 伝 子 の 発 現 が 変 化 す る こ と が 明 ら か さ れ て い る . 本 研 究 は 、HOXD3を 過 剰 発 現 さ せ たA549細 胞 の 細 胞 運 動 性 の 増 強 に イ ン テ グ リ ンfl3の 発 現 亢 進 が ど の よ う に 関 わ っ て い る の か を 検 討 し た も の で あ る .   ま ず 、 ヒ ト 肺 癌 細 胞A549細 胞 にHOXD3遺 伝 子 あ る い は イ ン テ グ リ ン ロ3遺 伝 子 の 発 現 ベ ク タ ー を 導 入 し 、HOXD3過 剰 発 現 細 胞 な ら び に イ ン テ グ リ ンp3過 剰 発 現 細 胞 を 得 た . 対 照 と し て ネ オ マ イ シ ン(Neo)耐 性 細 胞 お よ ぴNeopxイ グ ロ マ イ シ ン(Hyg) 両 耐 性 細 胞 を 用 い た . ま ず 、 フ ロ ー サ イ ト ヌ ト リ ー に よ り 細 胞 表 面 の 接 着 分 子 の 解 析 を 行 い 、 イ ン テ グ リ ン ロ3過 剰 発 現 細 胞 で はHOXD3過 剰 発 現 細 胞 と 同 様 に イ ン テ グ リ ンp3の 発 現 が 亢 進 し 、 イ ン テ グ リ ンav (33の へ テ ロ ダ イ マ ー を 形 成 し て い る こ と を 確 認 し た . ウ エ ス タ ン ・ ブ ロ ッ テ イ ン グ 法 に よ る 解 析 で は 、HOXD3過 剰 発 現 細 胞 で み ら れ たE‐ カ ド ヘ リ ン の 消 失 は 、 イ ン テ グ リ ンp3過 剰 発 現 細 胞 で は 認 め ら れ な か っ た .   次 に 、 得 ら れ た 細 胞 株 を 用 い て 、 固 相 化 し た 細 胞 外 マ ト リ ク ス に 対 す る 細 胞 遊 走 能

( ハ プ ト タ キ シ ス ) お よ ぴ 方 向 性 を も た な い 細 胞 運 動 能 、 い わ ゆ るrandom motility( フ ァ ゴ カ イ ネ シ ス ) を 調 べ た . そ の 結 果 、 イ ン テ グ リ ン ロ3過 剰 発 現 細 胞 の ピ ト ロ ネ ク チ ン と フ ィ プ リ ノ ー ゲ ン に 対 す る ハ プ ト タ キ シ ス お よ び フ ァ ゴ カ イ ネ シ ス は 、HOXD3過 剰 発 現 細 胞 と 同 様 、 親 株A549細 胞 や 対 照 細 胞 の そ れ に 比 ぺ て 有 意 に 高 か っ た . ま た 、 フ ん ゴ カ イ ネ テ イ ッ ク ・ ア ッ セ イ 系 に 抗 イ ン テ グ リ ン ぱvp3抗 体 を 加 え て イ ン テ グ リ ンavp3分 子 の 機 能 阻 害 を 行 っ た と こ ろ 、 イ ン テ グ リ ンp3過 剰 発 現 細 胞 お よ ぴHOXD3 過 剰 発 現 細 胞 の 運 動 性 は 親 株A549細 胞 や 対 照 細 胞 の レ ベ ル に ま で 抑 制 さ れ た .in vitro

則 郎

   

   

靖 健

塚 田

戸 柴

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

wound healing アッセイでは、HOXD3 過剰発現細胞>インテグリンp3 過剰発現細胞>

対照細胞の順序で高い運動性が認められた.

   以上の結果は次のように考察される.インテグリンp3 過剰発現細胞は、HOXD3 過 剰発現細胞と同様に、インテグリンav83 のへテロ二量体から毅るインテグリン分子 を細胞表面に形成していた.インテグリンぱvp3 のりガンドである細胞外マトリクス に対するハプトタキシスは、インテグリン p3 過剰発現細胞およぴHOXD3 過剰発現細 胞でともに高かった.この事実は、HOXD3 過剰発現によるハプトタキシスの増強がイ ンテグリンぱvp3 によることを強く示唆している.2 っめのフんゴカイネテイック・

トラック・アヅセイで測定される方向性を持たない細胞運動性もまた、インテグリン p3 過剰発現細胞ではHOXD3 過剰発現細胞と同様に対照細胞に比ぺて高かった.この 運動性は、抗インテグリンぱ vp3 抗体で完全に抑制されたことから、インテグリンav 83 依存性であることが明らかである.さらに、in vitro wound healing アッセイの結果 から、E .カドヘリンを発現しているインテグリンp3 過剰発現細胞の運動性は、対照細 胞よりは高いが、E‑ カドヘリンを消失したHOXD3 過剰発現細胞よりも低いことが明ら かとなった.このアッセイは、培養細胞がコンフルエントになった状態で一筋の傷を っけ、傷縁からの細胞の遊離をみるもので、細胞間の接着性が強けれぱ傷縁から遊走 可能な細胞の供給は少ないと考えられることから、上述の結果は細胞間の接着性の差 違によるものと考えられた.

   これらのことから、HOXD3 過剰発現によって生じたヒト肺癌細胞 A549 の運動性の 増強は、HOXD3 過剰発現によって発現の亢進したインテグリンp3 によることが明ら かとなった.また、 HOXD3 過剰発現によるE −カドヘリンの発現消失は細胞集塊からの 細胞の遊離を容易にしているものと推測された.

   論文の審査にあたって、論文申請者による研究の要旨の説明後、本研究ならぴに関連

する研究について質問が行われた.いずれの質問についても、論文申請者から明快な回

答が得られ、また将来の研究の方向性についても具体的に示された,本研究は、HOXD3

過剰発現細胞における運動性の増強はHOXD3 過剰発現によって発現の亢進したインテ

グリンロ3 によって引き起こされることを示し、癌細胞における形態形成遺伝子の発現

異常がその支配下にある細胞接着因子の発現を変化させ、転移形質のひとつである細胞

運動能を増強することを明らかにした点が高く評価された.本研究の業績は、口腔外科

の分野はもとより、関連領域にも寄与するところ大であり、博士(歯学)の学位授与に

値するものと認められた.

参照

関連したドキュメント

本研究は、tightjunctionの存在によって物質の透過が主として経細胞ルー

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

 当教室では,これまでに, RAGE (Receptor for Advanced Glycation End-products) という分子を中心に,特に, RAGE 過剰発現トランスジェニック (RAGE-Tg)

 1)血管周囲外套状細胞集籏:類円形核の単球を

不能なⅢB 期 / Ⅳ期又は再発の非小細胞肺癌患 者( EGFR 遺伝子変異又は ALK 融合遺伝子陽性 の患者ではそれぞれ EGFR チロシンキナーゼ