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10年間の喫煙が大血管スティフネス指標である上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)に及ぼす影響

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(1)原 著. 人間ドック 35:578-585,2020. 10 年間の喫煙が大血管スティフネス指標である 上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)に及ぼす影響 福井敏樹 山内一裕 松村周治 丸山美江 岡田紀子 佐々木良輔 要 約 目的:我々はこれまで種々の生活習慣病関連因子と大血管のスティフネス指標である上腕足首間脈 波伝播速度 (brachial-ankle pulse wave velocity: baPWV)の関連について報告を続けてきた.喫煙は 動脈硬化の危険因子であるが,baPWV に対する喫煙の影響についての縦断解析的な報告はまだほ とんどみられない. 方法:これまで baPWV を測定した男性 7,251 名,女性 2,707 名のなかで,10 年間の喫煙状況の推 移を把握し得た非喫煙継続者 (非喫煙群)および 10 年間喫煙継続者(喫煙群)である男性 419 名,女性 38 名を抽出した.女性は抽出された喫煙者が非常に少なく,今回は男性のみを対象とした.そし て,10 年の経過中で禁煙を開始した者,禁煙と喫煙を繰り返していた者は除外し,さらに baPWV に最も影響を与える血圧の影響を除外するために,10 年間の経過のなかでの高血圧治療薬服用者を 除外した男性 274 名を今回の解析対象者とした. 結果:解析対象者男性 274 名のうち非喫煙群は 181 名,喫煙群 93 名であった.両群の初年度およ び 10 年後の年齢,BMI,血圧,生活習慣病関連因子のなかで,有意差を認めたものは HDL コレス テロールと中性脂肪のみであった.10 年間の baPWV の変化量は,非喫煙群 128cm/sec,非喫煙群 200cm/sec と喫煙群の方が有意に大きかった.また初年度,3 年後,5 年後,7 年後,10 年後のすべ ての測定結果がそろっている者による解析では,3 年後以降の喫煙群において baPWV 変化量が有 意に大きかった. 結論:喫煙による大血管の動脈硬化の進展への影響を,経年的な baPWV 変化量で把握できること が初めて示された. キーワード 上腕足首間脈波伝播速度 (baPWV),喫煙,動脈硬化,スティフネス. 緒 言. と考えられており,心血管性動脈硬化病変の発症.  喫煙は高血圧,糖尿病,脂質異常症,肥満など. や生命予後への関与などについて数多くの結果が. の生活習慣病と並ぶ,動脈硬化の危険因子であ. 蓄積されてきており,従来の動脈硬化性血管病変. る.そして動脈硬化の進行を経年的に把握し,治. のリスク因子とは独立した予後規定因子であるこ. 療介入等への指標とし,動脈硬化性血管病変の発. とが示されている 2-5).. 症を未然に防ぐことは,人間ドックなどの健診に.  我々もこれまで baPWV の有用性について多く. おける非常に大きな役割の一つである.. の結果を報告してきた.そのなかで,高血圧,糖.  我が国で開発され測定可能となった上腕足首間. 尿病,脂質異常症,肥満といった動脈硬化の危険. 脈波伝播速度 (brachial-ankle pulse wave velocity:. 因子を重ね持つことにより,危険因子の数の重積. baPWV)は,非侵襲的に比較的短時間で再現性よ. に伴い baPWV が上昇することを報告した 6).そ. く検査結果が得られること,足関節上腕血圧比. の一方で,血圧や心拍数の変動により baPWV が. (ankle-brachial index: ABI)も同時に測定できる. 影響を受けやすいことなど,検査実施に際しての. ことで,保険適用もあり,人間ドックなどの健診. 注意点などについても言及してきた.そして喫煙. 1). で広く汎用されるようになっている .baPWV. も動脈硬化の危険因子の一つであるが,横断的解. は主に大血管のスティフネスを測定しているもの. 析では,喫煙の baPWV への影響については検出. 医療法人如水会 オリーブ高松メディカルクリニック 予防医療センター. 46 ( 578 ). 連絡先:〒 760-0076 香川県高松市観光町 649-8 Tel:087-839-9620 E-mail:[email protected]. 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年.

(2) できないということも報告した 7).. 時の年齢が最も若い時の結果を解析に用い,同一.  さらに最近,10 年以上蓄積された我々の施設で. 者が重複して解析対象とされることがないように. の baPWV の測定結果を改めて解析することで,. した.. 生活習慣病関連因子の重積と 10 年間の baPWV の.  最終的な解析対象者男性 274 名のうち非喫煙群. 変化量について検討し,継続的な人間ドックや健. は 181 名,喫煙群 93 名となり,10 年間の喫煙の. 診の受診により生活指導を受け続けることの重要. 影響を baPWV 値変化で検討した.. 性と,より若年からの動脈硬化対策の必要性につ.  解析対象から解析期間中の高血圧治療薬服用者. 8). いて報告した .また,内臓脂肪蓄積,高尿酸血. はすべて除外されているが,糖尿病および脂質異. 症が baPWV の経年変化に与える影響についての. 常症の治療薬服用者はそれぞれ 8 名 (非喫煙群 2. 解析結果も報告した. 9,10). .. 名,喫煙群 6 名) ,21 名 (非喫煙群 12 名,喫煙群 9.  喫煙は動脈硬化の危険因子であるが,喫煙の. 名) が含まれていた.. baPWV に対する経年的な影響についての検討報.  さらに,今回の解析対象者男性 274 名のなか. 告はまだほとんどみられない.. で,初年度,3 年後,5 年後,7 年後,10 年後のす.  以前の我々の横断的解析では喫煙の baPWV 値. べての baPWV 値測定結果がそろっている 178 名. に対する影響を検出できなかったが,今回 10 年. (非喫煙群 116 名,喫煙群 62 名)について,継続. 以上蓄積された baPWV の測定結果を解析するこ. 喫煙が baPWV 値へ与える経年的な変化について. とにより,動脈硬化の危険因子としての 10 年間. も検討した.. の継続喫煙が baPWV 値の変化へ与える影響につ.  統計解析ソフトは SPSS ver 21 for Windows (日. いて経年的な変化を検討することを研究の目的と. 本アイ・ビー・エム,東京) を使用,有意差は t 検. した.. 定あるいは Mann-Whitney U 検定を用い,有意水 準は,p < 0.05 を有意差ありとした.. 対象および方法.  なお,本研究は後ろ向きのデータ解析であり,.  対象は,我々の施設で問診上の喫煙記録が追跡. 個人名と特定されない匿名で,健診結果を研究報. 可能である 2005 年 4 月以降に血圧脈波検査装置. 告等に使用することがあることを当施設内に文書. BP-203RPEIII form(フクダコーリン,東京)を用 い て baPWV 値 を 測 定 し た 男 性 7,251 名, 女 性 2,707 名である.そのなかで,受診時問診から 10 年間の喫煙状況を把握し得た 10 年間非喫煙継続 者 (非喫煙群)および 10 年間喫煙継続者 (喫煙群) の男性 419 名,女性 38 名を抽出した.そして 10. で掲示,また人間ドック受診案内書および口頭で も説明し,同意されない方のデータは削除してい る.また今回はすべて非侵襲的な検査データのみ を用いての研究ではあるが,今回論文として報告 することを施設内倫理委員会の承認を得たうえで 実施している.. 年の経過中で禁煙を開始した者,禁煙と喫煙を繰 り返している者は除外し,さらに baPWV 値に最. 結 果. も影響を与える血圧の影響を除外するために,10.  対象者男性 274 名の非喫煙群と喫煙群における. 年間の経過のなかでの高血圧治療薬服用者を除外. 初年度および 10 年後各々の身体計測値および生. した男性 274 名を解析対象者とした.女性は抽出. 活習慣病関連因子の比較を表 1 に示す.初年度対. された解析対象者が 35 名と非常に少なく,35 名. 象者の平均年齢は非喫煙群 46 歳,喫煙群 45 歳と. 中継続喫煙者が 4 名とさらに少ないため,今回の. 有意差はなかった.体重,BMI や血圧にも有意差. 解析対象は男性のみとした.. なく,HDL コレステロールのみ喫煙群で有意に.  また,解析対象者において,受診初年度と 10. 低値であった (p < 0.01) .中性脂肪は喫煙群で高. 年後,1 年後と 11 年後,2 年後と 12 年後と複数の. 値を示す傾向はあったが有意差は認めなかった.. 10 年間の経過を把握し得た場合には,初回検査. 10 年後の非喫煙群,喫煙群はともに初年度よりそ. 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年. 47 ( 579 ).

(3) 表 1 初年度および 10 年後各々における非喫煙群と喫煙群各々の各種背景因子の比較 初年度 非喫煙群 (n = 181). 喫煙群 (n = 93). 46 ± 7 体重 (kg) 67.6 ± 10.0 BMI(kg/m 2) 23.4 ± 2.9 収縮期血圧 (mmHg) 117 ± 11 拡張期血圧 (mmHg) 74 ± 8 HbA1c(NGSP( )%) 5.6 ± 0.5 空腹時血糖値 (mg/dL) 97 ± 12 HDL-C(mg/dL) 58 ± 15 TG(mg/dL) 129 ± 82. 45 ± 6 68.0 ± 9.7 23.3 ± 3.2 116 ± 9 73 ± 8 5.6 ± 0.6 98 ± 17 53 ± 12 156 ± 140. 年齢 (歳). 10 年後 p  0.06  0.75  0.93  0.55  0.22  0.50  0.56 < 0.01  0.08. 非喫煙群 (n = 181). 喫煙群 (n = 93). 57 ± 7 67.4 ± 11.0 23.5 ± 3.2 125 ± 13 79 ± 9 5.7 ± 0.7 103 ± 10 59 ± 15 116 ± 67. 56 ± 6 68.3 ± 10.3 23.7 ± 3.4 128 ± 15 80 ± 11 5.9 ± 1.0 115 ± 25 53 ± 13 142 ± 105. p  0.06  0.51  0.80  0.19  0.59  0.18  0.08 < 0.01 < 0.05. (mean ± SD). 表 2 非喫煙群と喫煙群各々における初年度と 10 年後の各種背景因子の比較 非喫煙群 (n = 181) 初年度 年齢 (歳). 46 ± 7 体重 (kg) 67.6 ± 10.0 BMI(kg/m 2) 23.4 ± 2.9 収縮期血圧 (mmHg) 117 ± 11 拡張期血圧 (mmHg) 74 ± 8 HbA1c(NGSP( )%) 5.6 ± 0.5 空腹時血糖値 (mg/dL) 97 ± 12 HDL-C(mg/dL) 58 ± 15 TG(mg/dL) 129 ± 82. 10 年後 57 ± 7 67.4 ± 11.0 23.5 ± 3.2 125 ± 13 79 ± 9 5.7 ± 0.7 103 ± 10 59 ± 15 116 ± 67. 喫煙群 (n = 93). p < 0.01  0.25  0.69 < 0.01 < 0.01 < 0.01 < 0.01  0.08 < 0.05. 初年度. 45 ± 6 68.0 ± 9.7 23.3 ± 3.2 116 ± 9 73 ± 8 5.6 ± 0.6 98 ± 17 53 ± 12 156 ± 140. 10 年後 56 ± 6 68.3 ± 10.3 23.7 ± 3.4 128 ± 15 80 ± 11 5.9 ± 1.0 115 ± 25 53 ± 13 142 ± 105. p < 0.01  0.07  0.12 < 0.01 < 0.01 < 0.01 < 0.01  0.95  0.07. (mean ± SD). れぞれ 10 歳加齢しているが,10 年後においても.  しかしながら,baPWV 測定値の 10 年間の増加. 体重や血圧に有意差はなかった.HbA1c にも有. 量 は, 非 喫 煙 群 128 ± 136cm/sec, 喫 煙 群 200 ±. 意差はなく,HDL コレステロールは喫煙群にお. 152cm/sec と喫煙群で有意に大きかった(p < 0.01) いて有意に低値 (p < 0.01)で,中性脂肪は有意に (図 2) . 高値 (p < 0.05)  解析対象者 274 名のなかで,初年度,3 年後,5 であった.  非喫煙群と喫煙群各々における初年度と 10 年 年後,7 年後,10 年後のすべての baPWV 値測定 後の比較を表 2 に示す.両群ともに 10 年間に体 結果がそろっている非喫煙群 116 名,喫煙群 62 重,BMI に変化を認めなかったが,両群ともに 名による解析では,両群ともに 10 年後では初年 度と比較して有意に baPWV 値が増加していたが 10 年後では収縮期血圧,拡張期血圧,HbA1c は 有意に増加 (p < 0.01) (両群ともに p < 0.001) していた.一方両群におい ,非喫煙群では 7 年後以 ,喫 煙群では 5 年後以降 (5 年後:p て HDL コレステロールは変化を認めなかったが, 降 (p < 0.01) 中性脂肪は非喫煙群においてのみ 10 年後に有意 < 0.05,7 年後:p < 0.001)においてそれぞれの に低下 (p < 0.05) 群の初年度と比較して有意に baPWV 値が増加し を認めた.  初年度 baPWV 測定値は,非喫煙群 1,343 ± 174  ていた (図 3) .baPWV 測定値の初年度からの増 cm/sec,喫煙群 1,307 ± 155cm/sec と両群間で有 加量の比較では,3 年後以降において喫煙群で有 意差が認められず,10 年後の baPWV 測定値も非 意に大きかった (図 4) . 喫煙群 1,471 ± 212cm/sec,喫煙群 1,507 ± 228cm/ sec と両群間で有意差は認められなかった(図 1).. 48 ( 580 ). 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年.

(4) n.p.. n.p.. 1471. 1343. 1507. 1307. 図 1 男性対象者における初年度と 10 年後の非喫煙群と喫煙群における baPWV の比較. 400. p <0.01. baPWV変化量 (cm/sec). 300. 200. 200 128. 100. 0 10年連続喫煙あり. 10年間喫煙なし. 図 2 男性対象者における非喫煙群と喫煙群における 10 年間の baPWV 変化量の比較. 喫煙群(n=62). 非喫煙群(n=116) p <0.001. 1800. p< 0.001 p< 0.001. 1800. p <0.01. p< 0.05. 1600. n.p.(p=0.998). 1400. 1482±226 1200. 1396±192. baPWV (cm/sec). baPWV (cm/sec). n.p.(p=0.752). 1400. 1200. 1342±171 1339±174 1327±145. 1000. n.p.(p=0.063). 1600. 1552±251 1445±202 1381±161 1376±174 1321±157. 1000. 初年度. 3年. 5年. 7年. 10年. 初年度. 経過年数. 3年. 5年. 7年. 10年. 経過年数. 図 3 経年的な baPWV 測定値がすべてそろっている男性対象者の非喫煙群と喫煙群における baPWV の経年変化の推移. 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年. 49 ( 581 ).

(5) p< 0.05. ⾮喫煙群(n=116) baPWV変化量 (cm/sec). 喫煙群(n=62) p< 0.005. p< 0.05. p< 0.01. 203±158 153±165 126±122. 62±110. 57±118 11±121. 67±135. 13±123. 経過年数. 図 4 経年的な baPWV 測定値がすべてそろっている男性対象者の非喫煙群と喫煙群における baPWV 経年変化量の推移. 考 察.  我々も,その有用性と同時に,結果の解釈の注.  喫煙が動脈硬化の危険因子であることは,これ. 意点についても言及してきた.最も重要な知見. までの数多くの疫学的な研究によって明らかにさ. は,血圧,糖代謝,脂質代謝,肥満という四つの. れており,喫煙の動脈硬化性血管病変への影響に. 動脈硬化危険因子の重積と baPWV が非常に顕著. .しかしながら,喫煙. な相関を示すことであった 6).この四つの危険因. が動脈硬化にどのように関与するのか,詳細なメ. 子の重積による baPWV への影響については横断. カニズムについては,まだ十分に解明されていな. 的な解析だけでなく,我々の施設で蓄積された測. い.過去の多くの基礎的研究からは,喫煙の血管. 定結果を縦断的に解析した 10 年間の baPWV 変化. への影響は,血管内皮への障害を中心とする慢性. 量の検討でも報告している 8).. 的な原因によるものと血栓の形成など急性的な原.  また baPWV は主に動脈壁のスティフネスを測. 因の二つの側面からの影響を考慮すべきであろう. 定しており,頚動脈エコーのように,動脈壁の粥. ついて報告されている. と考えられている. 11-13). 14). 状硬化などの形態的変化をみる検査や FMD (flow. ..  脈波伝播速度 (pulse wave velocity: PWV)は動. mediated dilatation)のように動脈の血管拡張機. 脈壁の硬化 (スティフネス) を反映する指標とされ. 能・内皮機能を測定する検査との違いを理解した. ており,欧米では従来から頚動脈−大腿動脈間. うえで使用するべきであり,お互いに補完して使. PWV(carotid-femoral PWV: cfPWV)が測定されて きており,PWV のスタンダードとなっている 15). 一方我が国では,より簡便に測定可能な baPWV. 用されるべきであるとも述べてきた 18,19).. 測定装置が開発されて以来,数多くの研究が報告 され,現在ではいずれの検査法によっても動脈硬. baPWV によって本当に検出可能であるかどうか についても検討した.baPWV は多くの報告が示. 化性血管病変の予後規定因子であることが示され. しているように,種々の因子によって影響を受け. ている. 2-5).  喫煙も動脈硬化の危険因子であることから,喫 煙の動脈硬化への影響が動脈壁硬化の指標である. る.以前の我々の報告が示すように,血圧や性. ..  現状,約 1,400cm/sec 以上が動脈硬化ありと判 16,17). 別,年齢など強い影響を受けるものもあれば,心. ,約 1,800cm/sec 以上が. 拍数や糖および脂質代謝因子,肥満のように弱い. 心血管疾患発症を予測するカットオフ値として考. 影響を受けるものもある.そこで影響因子をでき. 断する一つの基準で 4). えられている .. 50 ( 582 ). るだけ排除して,喫煙のみの影響について検討す. 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年.

(6) るため,動脈硬化の危険因子である高血圧,糖尿. り,さらに問診上は,喫煙と禁煙を繰り返してい. 病,脂質異常症,肥満をまったく持たない 50 歳代. る者も多くみられたため,本研究期間である 10 年. を中心とした男性のみ 500 名以上を抽出して検討. 以上の喫煙継続が明らかな者と 10 年以上非喫煙. を試みた.結果から示唆されたことは,喫煙の影. が明らかな者のみを抽出して解析対象者とした.. 響は baPWV が主に測定している大血管の動脈壁.  さらに喫煙の影響が経年的な baPWV 測定に. 硬化に対してはそれほど大きなものではなく,横. よって可能であることが示されたうえで,継続的. 断的な解析では喫煙の影響を baPWV 値で検出す. な喫煙が何年程度で baPWV に有意な影響を及ぼ. 7). ることは困難だということであった .ただし, 20). すのかについても検討したが,今回の対象者にお. が. いては,baPWV 変化量は 3 年後から有意に大き. 1,000 を 超 え る ヘ ビ ー ス モ ー カ ー で は 有 意 に baPWV の上昇が認められた.しかしながら,加. くなっていた.しかしながら,対象者数が少ない. 齢の影響を越えて,喫煙の影響を検出できたとは. があると思われる.また,女性の喫煙者はどうし. 我々の結果でも,喫煙のブリンクマン指数. 7). ので,今後さらに対象者を増やして検討する必要. いえない結果でもあった .. ても少ないこと,また我々の施設のように人間.  解析期間中の高血圧治療薬服用者は解析対象か. ドック健診契約先との交渉のなかであらかじめ人. らすべてあらかじめ除外したが,糖尿病および脂. 間ドックの基本検査項目として baPWV 測定を組. 質異常症の治療薬服用者は少数含まれていた.し. み込んでいないと,オプション検査として baPWV. かしながらもとより糖尿病や脂質異常症の baPWV. 測定しているだけでは経年的な測定結果の蓄積が. への影響は血圧に比べて小さいので解析結果への. できず,今回のような検討は難しい.その意味で. 影響は認められなかった.. も多施設における前向き共同研究も今後検討して.  今回の我々の結果から分かったことは,主に 40. いきたいと考えている.. 歳代半ばの男性が 10 年間喫煙を続けた場合には, 非喫煙者と比較して,有意に baPWV の変化量が. 結 語. 大きかったということである.以前の我々の横断.  喫煙の影響が経年継続的な baPWV 変化量の解. 的な解析では,喫煙の baPWV への影響は検出が. 析により検出可能であることが初めて明らかと. 難しいと結論付ける結果となり,今回の結果から. なった.経年的に baPWV 測定することの意義が. も 10 年間の経過が蓄積された解析対象者の初年. 改めて示された.. 度どうし,10 年後どうしの baPWV 測定値には有 意差が認められなかった.その意味では,以前の. 利益相反. 我 々の 報 告 と同 様 に 横 断 的 な 調 査 で は 喫 煙 の.  本論文に関連する開示すべき利益相反はない.. baPWV への影響を検出できなかったが,10 年以 上の測定結果の蓄積から初めて検出可能であると.  また本論文の要旨は,2018 年度日本人間ドッ. 示せたことが,本研究の最大の知見である.. ク学会学術委託研究の多施設による研究の先行研.  これまで冨山らは,平均 5∼6 年間の喫煙影響. 究として実施したものである.. について前向きに検討し,1 日 20 本以上喫煙者に おいて,baPWV の変化量が有意に大きいことを報 告している.この報告のなかでは,1 日 20 本以下 の喫煙者や禁煙者では変化を認めていなかった 21).  今回の我々の検討では受診者の自己申告の問診 を解析しているため,1 日の喫煙本数についての 違いを検討できていない.また禁煙の効果につい ても,禁煙開始してからの年数にもばらつきがあ. 文 献 1)Yamashina A, Tomiyama H, Takeda K, et al: Validity, reproducibility, and clinical significance of noninvasive brachial-ankle pulse wave velocity measurement. Hypertens Res 2002; 25: 359-364. 2)Vlachopoulos C, Aznaouridis K, Stefanadis C: Prediction of cardiovascular events and all-cause mortality with arterial stiffness: a systematic review and meta-analysis. J Am Coll Cardiol 2010; 55: 1318-1327. 3)Vlachopoulos C, Aznaouridis K, Terentes-Printzios D, et. 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年. 51 ( 583 ).

(7) al: Prediction of cardiovascular events and all-cause mortality with brachial-ankle elasticity index: a systematic review and meta-analysis. Hypertension 2012; 60: 556562. 4)Ninomiya T, Kojima I, Doi Y, et al: Brachial-ankle pulse wave velocity predicts the development of cardiovascular disease in a general Japanese population: the Hisayama Study. J Hypertens 2013; 31: 477-483. 5)Ohkuma T, Ninomiya T, Tomiyama H, et al: Brachialankle pulse wave velocity and the risk prediction of cardiovascular disease: an individual participant data metaanalysis. Hypertension 2017; 69: 1045-1052. 6)Fukui T, Momoi A, Yasuda T: Attention for the interpretation of measurements of brachial-ankle pulse wave velocity. Ningen Dock 2005; 19: 29-32. 7)福井敏樹,桃井篤子,安田忠司:喫煙の影響は脈波伝播 速度で検出可能か.人間ドック 2006;21:58-62. 8)Fukui T, Yamauchi K, Maruyama M, et al: Ten-year longitudinal study on brachial-ankle pulse wave velocity ( baPWV )in middle-aged Japanese males; analysis of relationship with clustering of atherosclerosis risk factors. Ningen Dock International 2015; 2: 70-75. 9)福井敏樹,山内一裕,丸山美江ほか:内臓脂肪が血管ス ティフネスに及ぼす影響―5 年間の縦断解析から―.人 間ドック 2016;31:174. 10)福井敏樹,山内一裕,丸山美江ほか:高尿酸血症が血圧 脈波検査値(baPWV)における動脈スティフネスに及ぼ す影響.人間ドック 2017;32:189. 11)Jonas MA, Oates JA, Ockene JK, et al: Statement on smoking and cardiovascular disease for health care professionals. Circulation 1992; 86: 1664-1669. 12)Cullen P, Schulte H, Assmann G: Smoking, lipoproteins and coronary heart disease risk: data from the Münster. 52 ( 584 ). Heart Study(PROCAM). Eur Heart J 1998 ; 19 : 1632 1641. 13)Price JF, Mowbray PI, Lee AJ, et al: Relationship between smoking and cardiovascular risk factors in the development of peripheral arterial disease and coronary artery disease: Edinburgh Artery Study. Eur Heart J 1999 ; 20 : 344-353. 14)Ambrose JA, Barua RS: The pathophysiology of cigarette smoking and cardiovascular disease: an update. J Am Coll Cardiol 2004; 43: 1731-1737. 15)Lehmann ED: Clinical value of aortic pulse-wave velocity measurement. Lancet 1999; 354:528-529. 16)Yamashina A, Tomiyama H, Arai T, et al: Brachial-ankle pulse wave velocity as a marker of atherosclerotic vascular damage and cardiovascular risk. Hypertens Res 2003; 26: 615-622. 17)Tomiyama H, Matsumoto C, Yamada J, et al: Predictors of progression from prehypertension to hypertension in Japanese men. Am J Hypertens 2009; 22: 630-636. 18)福井敏樹:人間ドック健診における動脈硬化診断の重要 性と新しい検査方法について.人間ドック 2010;24: 1288-1293. 19)福井敏樹:人間ドック健診における動脈硬化対策に実施 するべき検査.人間ドック 2016;30:809-821. 20)Brinkman GL, Coates EO Jr: The effect of bronchitis, smoking, and occupation on ventilation. Am Rev Respir Dis 1963; 87: 684-693. 21)Tomiyama H, Hashimoto H, Tanaka H, et al: Continuous smoking and progression of arterial stiffening: a prospective study. J Am Coll Cardiol 2010; 55: 1979-1987. (論文受付日:2020.5.26 論文採択日:2020.6.23). 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年.

(8) Effects of Smoking for 10 Years on Brachial-Ankle Velocity (baPWV), a Large Arterial Stiffness Index Toshiki Fukui, Kazuhiro Yamauchi, Syuji Matsumura, Mie Maruyama, Noriko Okada, Ryousuke Sasaki Center for Preventive Medical Treatment, Olive Takamatsu Medical Clinic Abstract Objective: Here, we continue to report the relationship between various factors associated with lifestyle-related disease and brachial-ankle pulse wave velocity (baPWV), which is a stiffness index of large arteries. Although smoking is a risk factor for arteriosclerosis, there are few longitudinal analysis reports related to the effects of smoking on baPWV. Methods: Overall, 419 men and 38 women who smoked continuously for 10 years (smoking group) and those who did not smoke continuously (nonsmoking group) were selected from among 7,251 men and 2,707 women who underwent health checkups and for whom baPWV was measured at our facility. As very few female smokers could be included and to exclude those who quit and re-started smoking in the course of 10 years and also exclude the effect of blood pressure that greatly affected baPWV, 274 men, i.e., 181 nonsmokers and 93 smokers, who had never been on antihypertensive drugs were included in this analysis. Results: Among age, BMI, blood pressure, and various lifestyle-related disease factors, HDL cholesterol and triglyceride levels were significantly different between the first year and tenth year in both groups. The increase in baPWV during the 10-year period was significantly greater in the smoking group (200 cm/sec) than in the nonsmoking group (128 cm/sec). In addition, among the analyzed subjects who had all measurement results, in the first year, after 3 years, after 5 years, after 7 years, and after 10 years, the change in baPWV was significantly greater in the smoking group from after 3 years and above. Conclusion: Our findings suggest for the first time that the effects of smoking on the progression of the stiffness of large arteries can be detected by changes over years in baPWV. Keywords: brachial-ankle pulse wave velocity (baPWV), smoking, atherosclerosis, arterial stiffness. 人間ドック Vol.35 No.4 2020 年. 53 ( 585 ).

(9)

図 1  男性対象者における初年度と 10 年後の非喫煙群と喫煙群における baPWV の比較n.p.n.p.1343130714711507 図 2  男性対象者における非喫煙群と喫煙群における 10 年間の baPWV 変化量の比較128200010020030040010年間喫煙なし10年連続喫煙ありbaPWV変化量(cm/sec)p &lt;0.01 非喫煙群( n=116 ) 喫煙群( n=62 ) 10001200140016001800 初年度 3 年 5 年 7 年 10 年baPWV (c

参照

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