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構築主義的観点からの接触場面における相互行為プロセスの分析 : 接触場面の新たな分析観点と意義の提案

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Academic year: 2021

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構 築 主 義 的 観 点 か ら の 接 触 場 面 に お け る 相 互 行 為 プ ロ セ ス の 分 析

― 接 触 場 面 の 新 た な 分 析 観 点 と 意 義 の 提 案 ―

北 出 慶 子

要 旨

近 年 、 第 二 言 語 習 得 及 び 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 分 野 に お い て そ れ ま で 個 人 の 認 知 的 発 達 だ け が 強 調 さ れ て い た 反 動 か ら 構 築 主 義 的 な 理 論 的 枠 組 み が 注 目 さ れ て き て い る 。 し か し 、 構 築 主 義 が 提 案 す る 外 国 語 に お け る 「 相 互 行 為 能 力 」 の 実 態 や そ の 目 標 と す る 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お け る 「 共 通 認 識 の 形 成 」 プ ロ セ ス に つ い て の 研 究 は 未 開 拓 な 部 分 が 多 い 。 そ こ で 本 稿 で は 構 築 主 義 的 観 点 の 中 で も 特 に 言 語 社 会 化(language socialization)の 観 点 を 取 り 入 れ 、や や 長 期 的 に 参 与 者 間 双 方 向 か ら 接 触 場 面 を 言 語 指 標 に よ り 分 析 す る こ と で 、「 共 通 認 識 の 形 成 」プ ロ セ ス の 解 明 を 試 み た 。結 果 と し て ま だ 中 間 報 告 の 形 で は あ る が 、 接 触 場 面 に お け る 共 通 認 識 は 、 各 参 与 者 間 で ダ イ ナ ミ ッ ク か つ 非 暗 示 的 に 、 時 に は 長 期 的 に 形 成 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ の 結 果 に よ り 、 接 触 場 面 の 長 期 的 な 分 析 、及 び「 母 語 話 者 」「 非 母 語 話 者 ・ 学 習 者 」と い う 一 方 だ け の 言 語 推 移 で は な く 双 方 向 か ら 捉 え た 分 析 視 点 の 重 要 性 が 明 ら か と な っ た 。 ∗ 立 命 館 大 学 言 語 教 育 情 報 研 究 科 准 教 授

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0. は じ め に コ ー パ ス デ ー タ と し て 日 本 語 母 語 話 者 同 士 に よ る 自 然 会 話 や イ ン タ ビ ュ ー を 収 録 し た も の は 近 年 増 加 し 、 日 本 語 教 育 お よ び 日 本 語 言 語 研 究 分 野 に 貢 献 し て い る 。 し か し 日 本 語 学 習 者 の デ ー タ は 少 な く 、 ま し て や 日 本 語 学 習 者 と 日 本 語 母 語 話 者 と の 接 触 場 面 を 縦 断 的 に 扱 っ た コ ー パ ス は 極 め て 少 な い 。 縦 断 的 デ ー タ は 極 め て 貴 重 で あ り 、 近 年 の 第 二 言 語 学 習 分 野 に お け る 実 際 の 対 話 を 対 象 と し た 研 究 の 分 析 ア プ ロ ー チ の シ フ ト と い う 意 味 に お い て も 非 常 に 意 義 が 高 い と 考 え ら れ る 。 本 稿 は 、 こ の よ う な 接 触 場 面 の 縦 断 的 コ ー パ ス の 意 義 を 説 明 し 、 例 と し て 一 つ の 分 析 視 点 を 提 供 す る こ と に よ り 本 コ ー パ ス の 活 用 及 び 今 後 の 第 二 言 語 習 得 や 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 分 野 に お け る 接 触 場 面 研 究 へ の 貢 献 を 目 的 と す る 。 本 稿 前 半 で は ま ず 今 回 の 試 み の 理 論 的 背 景 を 説 明 し 、 後 半 で 本 コ ー パ ス を 活 用 し た 分 析 視 点 の 一 例 を 中 間 報 告 と し て 述 べ た い 。 1. 日 本 語 学 習 者 と 母 語 話 者 の 接 触 場 面 会 話 の 縦 断 的 コ ー パ ス と そ の 分 析 意 義 接 触 場 面 の 会 話 及 び 日 本 語 学 習 者 の 縦 断 的 デ ー タ を 扱 っ た 分 析 お よ び コ ー パ ス は 重 要 で あ り な が ら 、 実 際 に は 長 期 的 デ ー タ の 収 集 は 容 易 で は な い こ と も あ り 未 だ に 研 究 例 が 極 め て 少 な い 。 し か し 、 接 触 場 面 に お け る 縦 断 的 な デ ー タ は 、 第 二 言 語 学 習 お よ び 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 分 野 の 最 近 の ア プ ロ ー チ に お い て 非 常 に 重 要 な 意 義 を 持 っ て い る 。 本 稿 で は 近 年 の 外 国 語 ・ 第 二 言 語 学 習 及 び 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 研 究 分 野 の 新 た な 理 論 的 枠 組 み の 流 れ と 接 触 場 面 研 究 の 関 わ り を 述 べ 、 そ の 中 で も 特 に 言 語 社 会 化(language socialization (e.g., Shiefflin & Ochs, 1986)の 観 点 に お い て こ の よ う な 長 期 的 接 触 場 面 デ ー タ 分 析 の 意 義 と そ の 可 能 性 に つ い て 述 べ る 。 1. 1 構 築 主 義 的 観 点 か ら の 第 二 言 語 習 得 研 究 に お け る 接 触 場 面 の 再 考 ま ず 、 接 触 場 面 デ ー タ の 意 義 や 分 析 方 法 の 変 遷 に つ い て 、 構 築 主 義 的 観 点 が 顕 著 に な る 以 前 と 以 後 の 特 徴 を 述 べ 、 今 回 の 接 触 場 面 デ ー タ 分 析 観 点 の 背 景 に つ い て 説 明 す る 。 外 国 語 学 習 お よ び 第 二 言 語 習 得 分 野 の 対 話 デ ー タ を 分 析 し た 研 究 に お い て 、90 年 代 後 半 か ら 理 論 的 枠 組 み の シ フ ト が 顕 著 に 見 ら れ る 。Gee(2000)は 、1960∼ 70 年 代 の 個 人 の マ イ ン ド の み を 重 視 し た 認 知 改 革 や 行 動 主 義 の 考 え 方 か ら 近 年 、 社 会 的 、 文 化 的 、 コ ン テ キ ス ト で の 意 味 を 重 視 し た 実 践(practice)重 視 の 考 え へ 変 化 し て き て い る と 指 摘 し て い る 。こ の 社 会 文 化 や コ ン テ キ ス ト 重 視 の 流 れ が 第 二 言 語 習 得 分 野 に 顕 著 に 表 れ た の は 個 人 の 認 知 だ け に 偏 っ た そ れ ま で の 研 究 へ の Firth & Wagner (1997, 1998)に よ る 指 摘 に 始 ま り 、 こ の 新 し い 流 れ を 代 表 し た 考 え と し て 、Vygotsky (1978) に 影 響 を 受 け た 構 築 主 義 的 学 習 の 捉 え 方 (constructivist view, e.g., Wertch, 1997)、そ れ を 第 二 言 語 学 習 に 応 用 し た 社 会 文 化 的 ア プ ロ ー チ(sociocultural approach) (e.g., Lantolf, 2000)、 ま た 実 践 共 同 体 ・ 実 践 コ ミ ュ ニ テ ィ の 学 び(community of practice) (e,g., Lave & Wenger, 1991)、 社 会 認 知 ア プ ロ ー チ (sociocognitive approach) (e.g., Atkinson, Nishino, Churchill, & Okada, 2007)、 言 語 社

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会 化(language socialization) (e.g., Shiefflin & Ochs, 1986)等 が 挙 げ ら れ る 。 こ の よ う な 構 築 主 義 的 観 点 を 取 り 入 れ た 流 れ を く む 研 究 に お い て 、 接 触 場 面 に お け る 分 析 対 象 デ ー タ お よ び 分 析 視 点 に は 以 下 の 2 点 の よ う な 特 徴 が 挙 げ ら れ る 。

ま ず 一 つ 目 の 特 徴 と し て こ れ ら の 考 え に 共 通 し て い る の は 、そ れ ま で「 母 語 話 者(native speaker)」 と 「 非 母 語 話 者 (non-native speaker)」 と い う カ テ ゴ リ ー 分 け 、 ま た は expert と novice を 静 的 な も の と 捉 え て 分 析 し 、学 習 者 個 人 の 認 知 発 達 の み が 分 析 さ れ て き た こ と へ の 疑 問(Firth & Wagner, 1997)で あ る 。 個 人 の 認 知 発 達 の み を 分 析 対 象 と し た 場 合 、 接 触 場 面 に お い て 「 母 語 話 者 」 の 言 動 は 「 学 習 者(非 母 語 話 者 )」 に と っ て 絶 対 的 な 目 標 ま た は イ ン プ ッ ト の リ ソ ー ス で あ り 、 接 触 場 面 は 母 語 話 者 と の 意 味 交 渉 や フ ィ ー ド バ ッ ク の 機 会 提 供 と 捉 え て い た 。し か し 、構 築 主 義 的 パ ラ ダ イ ム(特 に 社 会 認 知 ア プ ロ ー チ 、言 語 社 会 化 、実 践 共 同 体・実 践 コ ミ ュ ニ テ ィ の 学 び)で は 、各 対 話 コ ン テ キ ス ト の 社 会 的 要 因 が 様 々 に あ る 中 で 「 母 語 話 者 」 や 「 非 母 語 話 者 」 な ど の 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ は 「 相 互 」 調 節 さ れ て い く 動 的 な も の で あ り 、動 的 な 複 数 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ が そ の 対 話 の 中 で 形 成 さ れ 、 対 話 活 動 が 形 成 さ れ て い く も の で あ る と 捉 え て い る 。 二 つ 目 は 、 第 二 言 語 ・ 外 国 語 教 育 が 目 標 と す る 能 力 に つ い て の 捉 え 方 へ の 疑 問 で あ る 。 行 動 主 義 か ら コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ ・ ア プ ロ ー チ へ の 転 換 時 に は ア メ リ カ を 中 心 に 「 プ ロ フ ェ ッ シ ェ ン シ ー 」(ACTFL/ETS Proficiency Guidelines, 1986)の 向 上 や そ の た め の カ リ キ ュ ラ ム が 重 視 さ れ て き た 。 し か し 、 構 築 主 義 的 観 点 か ら は プ ロ フ ェ ッ シ ェ ン シ ー 中 心 主 義 へ の 批 判 か ら 「 相 互 行 為 能 力(interactional competence)」 (Kramsch, 1986)の 重 要 性 が 叫 ば れ て い る 。Kramsch (1986)は 、プ ロ フ ェ ッ シ ェ ン シ ー 中 心 主 義 の 考 え で は 言 語 の 行 動 的 機 能 や 語 彙 的 ・ 文 法 的 形 式 が 注 目 さ れ 内 容 の 静 的 な 側 面 が 強 調 さ れ 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 動 的 な プ ロ セ ス で あ る こ と が 忘 れ ら れ て し ま う と 指 摘 し て い る 。 あ ら ゆ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 一 方 的 な も の で は な く 、 話 し 手 、 聞 き 手 、 コ ン テ キ ス ト の 三 者 関 係 の 中 で 創 り 出 し て い く 協 働 作 業 で あ る 。 従 っ て 、 相 互 行 為 能 力 は 一 般 化 で き る よ う な も の で は な く 、 具 体 的 な 実 践 に 固 有 の も の と 捉 え る べ き で あ る と し て い る 。 そ れ ゆ え 、 相 互 行 為 能 力 の 育 成 に は 外 国 語 ・ 第 二 言 語 教 育 の 中 で の 実 践 経 験 が 必 要 と な る 。 特 に 外 国 語 で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 異 文 化 間 で 行 わ れ る こ と が 多 く 、 学 習 者 の 異 文 化 に お け る 相 互 行 為 能 力 育 成 の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 こ の よ う に 、 構 築 主 義 的 観 点 か ら の 研 究 に お い て は 各 実 践 場 面 に お け る ダ イ ナ ミ ッ ク な 相 互 行 為 プ ロ セ ス を 観 察 対 象 と し 、 理 論 的 枠 組 み の シ フ ト 以 前 と 以 後 で は 分 析 デ ー タ と そ の 手 法 の 多 様 性 に 大 き な 違 い が 見 ら れ る 。 分 析 対 象 は 以 前 の よ う な 一 般 化 や 脱 コ ン テ キ ス ト を 狙 っ た デ ー タ で は な く 、 特 定 の 場 面 に お け る 相 互 行 為 の マ イ ク ロ レ ベ ル の 分 析 が 重 視 さ れ る よ う に な っ た 。ま た 構 築 主 義 的 観 点 か ら の 分 析 対 象 は「 非 母 語 話 者 」や「 母 語 話 者 」 の 一 般 的 な 言 動 で は な く 、 あ る 特 定 の 話 者 間 で お 互 い に ど の よ う に 調 整 を 行 い 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 及 び そ れ を 通 し た 活 動 を 創 り 上 げ て い る の か と い う プ ロ セ ス で あ る 。Vygotsky の 流 れ を く ん だ “Micro genesis analysis” (Wertch, 1993)で は 、 結 果 と し て の 産 物 を 分 析

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す る だ け で は な く 、 結 果 に 至 る ま で の プ ロ セ ス 自 体 を マ イ ク ロ に 観 察 す る こ と の 重 要 性 を 強 調 し て い る 。 こ の よ う に 特 定 の 場 面 を 観 察 対 象 と す る た め 、 数 量 だ け に 頼 っ た 分 析 手 法 の み で は な く 、 エ ス ノ メ ソ ド ロ ジ ー 的 な Sacks, Schegloff, & Jefferson(1974)の 流 れ を 組 む 会 話 分 析 や 、 エ ス ノ グ ラ フ ィ ッ ク な 流 れ を 組 む 談 話 の 分 析 、 観 察 ノ ー ト 、 イ ン タ ビ ュ ー な ど か ら 総 合 的 に 分 析 す る 手 法 、 な ど の 意 義 が 再 認 識 さ れ て き た 。 特 に 接 触 場 面 と い う 発 話 者 間 の 文 化 的 違 い が 比 較 的 大 き い 場 合 の 相 互 行 為 観 察 に は 、 一 時 的 な も の で は な く や や 長 期 な 縦 断 的 デ ー タ 分 析 が 必 要 と な る 。 な ぜ な ら 、 短 時 間 の 表 面 的 な 対 話 、 ま た は 表 面 的 で 事 務 的 な 情 報 交 換 に 留 ま る こ と を 前 提 と し た 場 合 で は ア イ デ ン テ ィ テ ィ や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス タ イ ル の 調 整 、 共 通 知 識 や 言 語 レ パ ー ト リ ー や デ ィ ス コ ー ス の 構 築 ま で 至 る と は 限 ら な い か ら で あ る 。 実 践 共 同 体 ・ 実 践 コ ミ ュ ニ テ ィ の 学 び (Community of practice, e.g., Lave & Wenger, 1991)で は 、 コ ミ ュ ニ テ ィ 形 成 に は 「 言 語 的 ル ー チ ン の 回 帰 」や「 繰 り 返 さ れ る 相 互 行 為 パ タ ー ン 」が 鍵 と な る と 考 え ら れ て い る が 、 こ れ ら は 継 続 的 な 相 互 行 為 の 上 に 成 り 立 つ も の で あ る 。 従 っ て 、 一 時 的 な 接 触 だ け で は コ ミ ュ ニ テ ィ 及 び 人 間 関 係 形 成 の 分 析 を す る こ と は 難 し く 、 よ り 長 期 的 な デ ー タ の 分 析 が 必 要 と な る 。 1. 2 構 築 主 義 的 観 点 か ら の 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 再 考 上 述 の 第 二 言 語 習 得 ・ 学 習 分 野 研 究 に お け る 対 話 分 析 の 理 論 的 枠 組 み シ フ ト の 流 れ に 見 ら れ る 「 相 互 行 為 」 と い う 観 点 は 、 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 分 野 に お い て も 同 様 に 重 要 視 さ れ 始 め て い る 。 異 文 化(間 )コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 分 野 に お い て も 、 個 人 の 認 知 発 達 の み に 焦 点 を 置 い た 研 究 で は 、 個 人 が 外 界 か ら の 異 文 化 の 影 響 に 対 し て ど の よ う に 適 応 し て い く の か と い う 異 文 化 適 応 モ デ ル(Bennett, 1993)が 90 年 代 ま で 強 調 さ れ て い た 。 ま た 国 や 言 語 を 単 位 と し た 文 化 比 較 、 特 に 語 用 論 研 究 に お い て は 謝 罪 、 依 頼 、 誘 い な ど の 言 語 間 の ス テ レ オ タ イ プ 比 較 研 究 が 90 年 代 を 中 心 に 盛 ん に 行 わ れ た 。 し か し 、90 年 代 以 降 か ら グ ロ ー バ ル 化 に 対 応 し た 多 文 化 共 生 の た め の 第 二 言 語 教 育 の 重 要 性 が 徐 々 に 浸 透 し 、ヨ ー ロ ッ パ 共 通 参 照 枠 の Byram(e.g.,1997)に 代 表 さ れ る よ う に「 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 」 が 再 考 さ れ た 。 こ れ に よ り 、 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 は 以 前 の よ う な 言 語 間 の ス テ レ オ タ イ プ 的 違 い と い う cross-cultural な 知 識 が 必 要 な だ け で は な く 、inter-cultural な 異 文 化 間 の 違 い を 実 際 に 乗 り 越 え る た め の 対 応 技 能 や 態 度 も 必 要 で あ る こ と が 強 調 さ れ 始 め た 。 つ ま り 、 実 際 に 異 文 化 の 相 手 と 平 和 的 に 対 話 を 行 い 、対 等 で 長 期 的 な 共 生 関 係 を 築 く た め の 能 力 や そ の 育 成 が 重 要 視 さ れ 始 め た の で あ る 。 こ の よ う な グ ロ ー バ ル 化 に 伴 っ た 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 再 考 は 、 外 国 語 ・ 第 二 言 語 学 習 に お け る 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 重 点 化 に も 影 響 を 与 え て い る 。2000 年 に 入 り 、 外 国 語 ・ 第 二 言 語 教 育 に お い て 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 必 要 性 が さ ら に 高 ま り 、 ヨ ー ロ ッ パ 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 韓 国 等 の 学 校 教 育 に お け る 外 国 語 ・ 第 二 言 語 学 習 の 基 本 的 方 針 や 基 軸 に 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 育 成 が 明 確 に 記 載 さ れ る よ

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う に な っ た 。

ま た こ の よ う な 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 再 考 の 背 景 に は 、 構 築 主 義 的 観 点 と 70 年 代 の 文 化 実 践 理 論(The practice theory of culture, Bourdieu, 1972/1977)の 流 れ の 組 み 合 わ せ に よ り 、「 文 化 」自 体 も 静 的 な も の で は な く 、動 的 に 発 話 者 間 で 新 た な 価 値 観 = 文 化 を 形 成 し て い く と い う 考 え 方(Ess & Sudweeks, 2005; Hewling, 2005; Scollon & Wong-Scollon, 2001)が 注 目 さ れ る よ う に な っ た こ と も 影 響 し て い る 。 こ こ で い う 「 文 化 」 と は 国 、地 域 、民 族 と い う 単 位 で は な く 、個 人 の 持 つ 価 値 観 や 習 慣 を 指 し て お り 、そ の 個 々 の 文 化 は 固 定 的 な も の で は な く 他 者 と の 関 わ り の 中 で 再 構 築 さ れ 続 け る 。 多 文 化 共 生 を 念 頭 に お い た 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 目 指 す も の に つ い て 、八 代 、町 、小 池 、磯 貝(1998) は 、「 自 分 と 相 手 の 共 生 共 栄 と 相 互 尊 重 の た め に 行 う 情 報 交 換 、情 報 共 有 、共 通 の 意 味 形 成 行 為 」(p.29)と し て い る 。 つ ま り 、 理 想 と す る 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 、 一 方 的 な も の で は な く 発 話 者 間 の 双 方 向 性 と 共 通 の 意 味 形 成 行 為 で あ り 、 上 述 の 外 国 語 ・ 第 二 言 語 教 育 に お け る 「 相 互 行 為 能 力 」 の 流 れ と の 一 致 が こ こ で も 読 み 取 れ る 。 以 上 の よ う に 構 築 主 義 的 観 点 か ら 見 る と 、 接 触 場 面 は 単 に 「 学 習 者 」 が 「 母 語 話 者 」 か ら 学 ぶ 機 会 と 捉 え る の で は な く 、 相 互 理 解 や 共 通 の 意 味 形 成 行 為 の 場 で あ る と 捉 え る こ と が で き る 。 第 二 言 語 学 習 者 が 目 標 言 語 の 母 語 話 者 の 価 値 観 や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス タ イ ル に 一 方 的 に 合 わ せ て い く の で は な く 、 母 語 話 者 も ま た 自 己 と 異 な る 文 化 の 相 手 に 調 整 し て い く と い う 双 方 向 か ら み た 分 析 が 必 要 と な る 。こ れ は 多 文 化 共 生 の た め の 日 本 語 、「 共 生 日 本 語 」(岡 崎 , 2003)と い う 日 本 語 教 育 に お け る 母 語 話 者 側 の 日 本 語 分 析 に 注 目 し た 流 れ と 共 通 の 部 分 が 見 ら れ る 。 し か し 、 共 生 日 本 語 に 関 す る 研 究 で は 逆 に 母 語 話 者 側 の 調 整 ス ト ラ テ ジ ー だ け に 焦 点 が お か れ た 研 究 が 多 い 。 双 方 向 で 捉 え た 研 究 と し て は 、 エ ス ノ メ ソ ド ロ ジ ー 的 な 会 話 分 析 か ら の 母 語 話 者 と 非 母 語 話 者 の 権 力 作 用(杉 原 , 2010)な ど が あ る が 、 そ れ 以 外 の 手 法 で は こ の よ う な 相 互 調 整 プ ロ セ ス を 分 析 し た 研 究 自 体 が 非 常 に 少 な い 。 上 述 の よ う に 第 二 言 語 学 習 お よ び 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 理 論 上 は こ の よ う な 相 互 調 整 能 力 や 共 通 の 意 味 形 成 が 求 め ら れ る と し て い る も の の 、 実 際 に は ど の よ う な 調 整 が ど の よ う な プ ロ セ ス で 行 わ れ て い る の か は ま だ 十 分 に 解 明 さ れ て い な い 。 本 稿 で は 、 接 触 場 面 を 発 話 者 ど ち ら か 一 方 の 観 点 か ら 分 析 す る の で は な く 、 双 方 向 か ら の 調 整 プ ロ セ ス を 分 析 対 象 と し 、 一 時 的 で は な く や や 長 期 的 な 対 話 を 縦 断 的 に 分 析 す る こ と で 、 各 接 触 場 面 に お け る 調 整 プ ロ セ ス お よ び そ の 要 因 を 言 語 的 側 面 か ら 分 析 す る 。 そ れ に よ り 、 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お け る 共 有 意 味 形 成 プ ロ セ ス 及 び こ れ か ら の 第 二 言 語 ・ 外 国 語 教 育 に 必 要 と な る 相 互 行 為 能 力 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。 1. 3 言 語 社 会 化 の 観 点 を 取 り 入 れ た 接 触 場 面 分 析 本 稿 で は 、 相 互 調 整 プ ロ セ ス の 分 析 と し て 構 築 主 義 的 観 点 に 大 き く 影 響 を 与 え た Hymes(1972)の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の エ ス ノ グ ラ フ ィ ー (ethnography of communication) の 流 れ を 受 け 、 言 語 と 文 化 の 関 係 を 分 析 対 象 と し て い る 言 語 社 会 化(e.g., Ochs, 2002;

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Shieffelin & Ochs, 1986)の 観 点 を 取 り 入 れ 接 触 場 面 の 分 析 を 試 み る 。言 語 社 会 化 は 、人 類 学 、 発 達 心 理 学 、 社 会 言 語 学 な ど の 流 れ を 組 む 学 際 的 な 理 論 的 枠 組 み を 持 ち 、 あ る 特 定 の 社 会 的 グ ル ー プ の 中 で 共 有 さ れ て い る 価 値 観 、信 念 、期 待 な ど に つ い て novice が ど の よ う に そ の グ ル ー プ メ ン バ ー と 相 互 行 為 を 行 う 中 で 社 会 化(socialize)さ れ て い く の か と い う プ ロ セ ス を 研 究 対 象 と し て い る 。 も と も と は 第 一 言 語 習 得 に お け る 社 会 化 が 分 析 焦 点 で あ っ た が 、 近 年 の 言 語 社 会 化 研 究 は そ の 対 象 を 広 げ 、 人 が あ ら ゆ る 新 し い 社 会 文 化 的 、 言 語 的 な 環 境 に 入 れ ば そ こ で ま た 新 た な 社 会 化 が 起 こ る と し 、 複 数 の 言 語 や 文 化 の 接 触 場 面 や 第 二 言 語 習 得 も 分 析 対 象 と し て 広 げ て き た(e.g., Watson-Gegeo, 2004)。 Shi (2006)は 、 言 語 社 会 化 の 理 論 的 枠 組 み が 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お け る 異 文 化 間 の 変 容 (transformation)プ ロ セ ス の 分 析 に 有 意 義 な 側 面 を 持 つ と 主 張 し て い る 。 具 体 的 に は 、 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 理 論 は 上 述 の よ う に 個 人 の 異 文 化 理 解 の 認 知 発 達 の 理 論 に 偏 り 、 デ ー タ に 基 づ い た 実 証 が 不 足 し て お り 、 双 方 向 的 な プ ロ セ ス が 明 ら か に さ れ て こ な か っ た 。 し か し 言 語 社 会 化 の デ ー タ 実 証 型 手 法 が こ の 異 文 化 間 に お け る 双 方 向 か ら の 変 容 プ ロ セ ス の 解 明 に 貢 献 で き る と 述 べ て い る 。本 稿 で は 、言 語 社 会 化 の 特 徴 点 2 つ を 取 り 上 げ 、 こ の 観 点 が 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で あ る 接 触 場 面 の 分 析 研 究 に も た ら す 意 義 に つ い て 述 べ る 。 上 述 の よ う な 参 与 者 間 の 調 整 行 為 は 言 語 社 会 化 で は 第 二 言 語 学 習 者 や novice だ け に 限 ら ず 、 母 語 話 者 や expert を 含 め た 双 方 向 の 調 整 を 観 察 対 象 と し て い る 。 こ の 点 は Duff & Talmy (in press)も 指 摘 し て い る よ う に 他 の 類 似 し た 社 会 ・ 文 化 的 側 面 を 重 視 し た ア プ ロ ー チ に 比 べ 、 言 語 社 会 化 の 特 徴 と も 言 え る 。 例 え ば 、 社 会 認 知 的(sociocognitive) ア プ ロ ー チ で は こ の よ う な 調 整 は alignment と 呼 ば れ 分 析 さ れ る が 、中 心 と な る の は 第 二 言 語 学 習 者 の 目 標 言 語 で の 使 用 変 化 の 長 期 的 分 析 で あ る(e.g., Atkinson et al, 2007)。ま た 、社 会 文 化 的(sociocultural)ア プ ロ ー チ で は 、 expert や peer が ど の よ う に 学 習 者 に 足 場 作 り (scaffolding)を 行 い 、 ダ イ ナ ミ ッ ク に 社 会 的 に 調 整 さ れ た 対 話 に 携 わ る こ と で 学 習 者 が ど の よ う に 学 習 し て い く か と い う 過 程 を 分 析 対 象 と し て い る た め 、 接 触 場 面 の 場 合 、 母 語 話 者 と の 調 整 は あ く ま で も 学 習 者 の 言 語 学 習 を ど の よ う に 支 援 し て い る か と い う 視 点 か ら の 分 析 と な る 。こ の よ う な 流 れ を く む 長 期 的 な 接 触 場 面 コ ー パ ス 使 用 研 究 と し て Vyatkina & Belz (2006)が 挙 げ ら れ る 。こ の 研 究 で は ド イ ツ 語 母 語 話 者 と 学 習 者 の 長 期 的 な ネ ッ ト 媒 介 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン コ ー パ ス を 分 析 し て い る が 、 学 習 者 が ド イ ツ 語 に お け る モ ダ リ テ ィ を 表 す 助 詞 の 使 い 分 け を 母 語 話 者 か ら の イ ン プ ッ ト で 学 ぶ 、 ま た は 母 語 話 者 か ら の メ タ な 指 摘 に よ っ て 学 ぶ と い う 点 か ら 分 析 し て い る 。 し か し 、 母 語 話 者 側 が 学 習 者 を 相 手 に 果 た し て 母 語 話 者 同 士 の 時 と 同 じ よ う な 言 動 を と っ て い る の か ど う か 、 ま た 個 人 差 や 各 オ ン ラ イ ン グ ル ー プ で ど の よ う な 共 通 認 識 が 形 成 さ れ て い っ た の か に つ い て は 見 て い な い 。 一 方 、 言 語 社 会 化 で は 個 々 の 対 話 に よ っ て 個 々 の 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ や 活 動 (activity)が ダ イ ナ ミ ッ ク に 形 成 さ れ る と 見 て お り (Ochs, 1993)、 双 方 向 か ら の 調 整 を 観 察 対 象 と し て い る 。 言 語 社 会 化 は 生 涯 (lifelong)の プ ロ セ ス で あ り 、 新 し い コ ミ ュ ニ ケ ー シ

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ョ ン が 始 ま り 、 新 し い 人 間 関 係 が 発 生 す れ ば 毎 回 新 し く そ の 場 特 有 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 実 践 さ れ る と み て い る(Garrett & Baquedano-Lopez, 2002)。「 実 践 共 同 体 ・ 実 践 コ ミ ュ ニ テ ィ の 学 び(Community of practice)」 の 影 響 を 受 け 、言 語 社 会 化 で は 相 互 行 為 ・ 共 有 実 践 に よ り 社 会 的 メ ン バ ー シ ッ プ 、 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 、 知 識 、 つ ま り は 共 通 認 識 で あ る 文 化 が 参 与 者 間 で 構 築 さ れ て い る と し て い る 。 そ し て そ の 構 築 プ ロ セ ス の 鍵 と な る の が 、 参 与 者 間 の 使 用 言 語 で あ る 。 言 語 社 会 化 の も う 一 つ の 重 要 な 特 徴 と し て 、 言 語 の 指 標 性(language indexicality)が 挙 げ ら れ る 。 言 語 の 指 標 的 機 能 は 、 言 語 は 命 題 内 容 を 示 す 機 能 だ け で は な く 文 脈 内 の あ る 局 面 を 指 標 す る 機 能 を 持 っ て い る と い う Silverstein (1976, 1993)の 考 え に 基 づ い て い る 。言 語 社 会 化 で は 特 に こ の 言 語 の 指 標 性 に よ り 言 語 は 話 し 手 と 聞 き 手 の 人 間 関 係 を 創 り 出 す 、 ま た は 現 在 の 関 係 を 表 出 す る こ と が で き る と 見 て い る 。Hymes(1972)の 言 語 と 文 化 の 双 方 向 的 関 係 の 考 え に 基 づ き 言 語 社 会 化 で は 、 あ る 特 定 の ス ピ ー チ ・ コ ミ ュ ニ テ ィ の 使 用 言 語 は そ の コ ミ ュ ニ テ ィ の 文 化 を 反 映 し 、 ま た 逆 に そ の コ ミ ュ ニ テ ィ の 文 化 は そ の 使 用 言 語 に よ っ て 形 成 ・ 再 形 成 さ れ て い く と 捉 え て い る 。 つ ま り 、 個 々 の コ ミ ュ ニ テ ィ の 言 語 使 用 を 観 察 す る こ と は 、 そ れ ぞ れ の コ ミ ュ ニ テ ィ の 価 値 観 や 共 通 認 識注 1さ ら に は そ の 形 成 ・ 再 定 義 の プ ロ セ ス を 観 察 す る こ と に も な る 。 具 体 的 に は 、Ochs (2002)は 個 々 の 相 互 行 為 に お い て 参 与 者 が 使 用 す る 言 語 は 、そ の コ ミ ュ ニ テ ィ に お け る 各 参 与 者 の 「 社 会 的 行 動 」 や 「 心 理 的 ス タ ン ス 」 を 指 標 し て お り 、 そ の ス タ ン ス や 行 動 が さ ら に そ の 場 に お け る 「 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ(人 間 関 係 も 含 め )」 や そ の「 社 会 的 活 動(activity)」を 形 成 、ま た 再 形 成 し て い く と し て い る 。Ochs (2002)は「 社 会 的 行 動 」を「 目 標 に 方 向 づ け ら れ た も の と 社 会 的 に 認 識 さ れ た 行 動(例 と し て 、質 問 に 答 え る 、 明 確 化 へ の 依 頼 な ど)」 (p.109)、「 心 理 的 ス タ ン ス 」 に つ い て は 「 関 心 の 中 心 に 向 け た 情 的 、エ ピ ス テ ミ ッ ク な 方 向 づ け 」(p.109)と し て い る 。情 的 ス タ ン ス は 、感 情 的 激 し さ と 同 じ く 人 の ム ー ド 、 態 度 、 感 情 、 性 質 な ど も 含 む 。 ま た 、 エ ピ ス テ ミ ッ ク な ス タ ン ス は 知 識 の 源 と 真 実 性 と 主 張 の 明 確 さ を 含 め た 知 識 や 信 念 を 指 し て い る 。 さ ら に 「 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 」 は 「 社 会 的 役 割 、 地 位 、 関 係 、 コ ミ ュ ニ テ ィ 、 機 関 の 、 民 族 的 な 、 社 会 経 済 的 な 、 性 差 的 な 、 ま た そ の 他 の グ ル ー プ ア イ デ ン テ ィ テ ィ な ど を 含 め た 複 数 の 社 会 的 人 格 」(p. 109)を 指 し て い る 。 最 後 に 最 重 要 部 分 と し て い る 「 社 会 的 活 動 」 に つ い て は 、「 一 人 ま た は 複 数 の 人 間 に よ っ て 表 示 さ れ た 最 小 で も 2 つ 以 上 の 調 和 さ れ た 行 動 と 、ま た は ス タ ン ス 」(p.109)と し て い る 。そ し て こ の「 行 動 」、「 ス タ ン ス 」、「 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 」、「 活 動 」 は 相 互 依 存 し て お り 、 言 語 の 指 標 性 に よ り 複 数 の 「 行 動 」 と 「 ス タ ン ス 」 を 観 察 す る こ と で 相 互 行 為 に よ っ て 構 築 さ れ 再 構 築 さ れ る 「 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 」 と 「 活 動 」 が 見 え て く る と 述 べ て い る 。 言 語 社 会 化 の 「 双 方 向 性 」 と 「 言 語 の 指 標 性 」 と い う 観 点 は 、 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 及 び 相 互 行 為 の プ ロ セ ス を 分 析 す る 上 で 非 常 に 重 要 な 意 味 を 持 つ 。Shi (2006)は 、 こ れ ま で の 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 で は 接 触 場 面 に お け る 問 題 列 挙 や 変 数 の 一 時 的

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な 分 析 が 中 心 で あ っ た が 、 言 語 社 会 化 の 観 点 か ら 分 析 す る こ と に よ り 長 期 的 な 変 化 プ ロ セ ス の 解 明 が 可 能 に な る と 述 べ て い る 。 接 触 場 面 は 、 普 段 の 対 話 と 比 べ 話 者 間 の 共 有 認 識 が 少 な く 、 対 話 を 通 じ て 新 た に 話 者 間 の 共 有 認 識 を 形 成 し て い く 必 要 性 が 高 い 。 従 っ て 、 接 触 場 面 を 言 語 社 会 化 の 観 点 で 分 析 す る こ と に よ り 、 接 触 場 面 で 異 な る 価 値 観 が ど の よ う に 衝 突 し 、 お 互 い に 共 有 認 識 を 創 り だ し て い く の か と い う プ ロ セ ス を 見 る こ と が で き る 。 こ の 考 え 方 は 、 共 生 文 化 、 共 生 言 語 の 形 成 プ ロ セ ス 分 析 へ と つ な が る 。 単 に 接 触 場 面 を 一 方 的 な 母 語 話 者 の 日 本 語 イ ン プ ッ ト を も ら う 場 、 ま た は 母 語 話 者 自 身 の 共 生 日 本 語 の た め の 調 整 ス ト ラ テ ジ ー を 分 析 す る 場 、 と 捉 え る だ け で は な く 双 方 向 か ら 捉 え 相 互 理 解 の プ ロ セ ス を 解 明 す る こ と は 、 相 互 理 解 の た め の 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 、 す な わ ち 近 年 、 外 国 語 ・ 第 二 言 語 能 力 に お い て 重 点 化 が 叫 ば れ て い る 部 分 の 具 体 的 解 明 に 繋 が る 。 対 等 な 共 通 意 味 形 成 が 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 理 想 と さ れ て い る が 、 実 際 の 接 触 場 面 で こ れ は ど の よ う に 遂 行 さ れ て い る の だ ろ う か 。 使 用 言 語 の 能 力 差 は こ の プ ロ セ ス に 影 響 し な い の か 。ま た お 互 い に 無 意 識 ・ 意 識 的 に 保 持 し て い る「 母 語 話 者 」「 学 習 者 」そ の 他 の 社 会 的 役 割 ま た は 相 手 へ の 他 の 期 待 要 因 や 概 念 が こ の プ ロ セ ス に ど の よ う に 影 響 す る の か 。 本 研 究 で は 、 上 述 の よ う な 言 語 社 会 化 の 観 点 か ら や や 長 期 的 な 接 触 場 面 に お け る 参 与 者 の 使 用 言 語 推 移 を 分 析 す る こ と で 、 そ れ ら が 指 標 す る ス タ ン ス と 行 動 、 さ ら に は そ の 場 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ や 活 動 が ど の よ う に 参 与 者 間 で 調 整 、 再 調 整 さ れ 、 共 有 さ れ て い く の か と い う プ ロ セ ス を 明 ら か に す る こ と を 試 み る 。 以 上 に よ り 、 本 研 究 で は 接 触 場 面 に お け る 参 与 者 間 の 言 語 使 用 推 移 を や や 長 期 的 デ ー タ で 分 析 す る こ と に よ り 相 互 行 為 能 力 お よ び 多 文 化 共 生 の プ ロ セ ス を 解 明 す る こ と を 目 的 と し 、 具 体 的 に は 以 下 の 点 を 研 究 課 題 と す る 。 研 究 課 題 : 初 対 面 の 接 触 か ら 接 触 回 数 を 重 ね る ご と に 参 与 者 の 言 語 (「 で す ・ ま す 体 」 お よ び 「 ね 」 の 使 用 )、 お よ び そ れ ら が 指 標 す る ア イ デ ン テ ィ テ ィ 及 び 活 動 へ の ス タ ン ス や 行 動 は 変 化 す る の か 。「 で す ・ ま す 体 」 と 「 ね 」 の 出 現 頻 度 の 推 移 、 談 話 デ ー タ 分 析 及 び 参 与 者 の イ ン タ ビ ュ ー か ら 以 下 の 点 を 分 析 す る 。 a. 変 化 の プ ロ セ ス は ど の よ う な も の か 。 b. そ れ は ペ ア に よ っ て ど の よ う に 異 な る の か 。 c. ど の よ う な 要 因 が 共 通 認 識 形 成 プ ロ セ ス に 影 響 す る の か 。 1. 4 相 互 調 節 プ ロ セ ス 分 析 の た め の 言 語 指 標 的 機 能 言 語 社 会 化 に お け る 言 語 の 指 標 機 能 か ら 日 本 語 の 対 話 を 分 析 し た 先 行 研 究 で は 、「 で す ・ ま す 体 」、「 非 で す ・ ま す 体 」(e.g., Cook, 2008)や 終 助 詞 (e.g., Yoshimi, 1999; Ohta, 1999; Cook, 2008)な ど 、 文 末 の ス ピ ー チ レ ベ ル に 注 目 し た も の が 多 い 。 本 稿 で は 、「 で す ・ ま す 体 」 と 終 助 詞 の 「 ね 」 を 試 験 的 に 候 補 と し て 取 り 上 げ 、 分 析 を 試 み る 。

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a.「 で す ・ ま す 体 」 の 指 標 的 機 能 上 述 の よ う な 指 標 的 機 能 が 顕 著 に 表 れ る 項 目 の 一 つ と し て 文 末 の 「 で す ・ ま す 体 」 が 、 言 語 社 会 化 の 観 点 分 析 に お い て も 注 目 さ れ て い る(e.g., Cook 2008; 岡 本 , 1997)。「 で す ・ ま す 」 形 の 指 標 す る 内 容 と し て 、 岡 本(1997)は 、 熊 取 谷 (1994)を 参 考 に 「 対 人 関 係 規 定 」 の 内 容 と「 状 況 規 定 」の 内 容 に 分 け 、前 者 は 聞 き 手 と の 心 的 距 離 を お き た い 、「 ウ チ 」扱 い し な い と い う 態 度 、 ま た は そ の よ う な 日 本 語 運 用 方 法 を 話 者 が わ き ま え て い る こ と を 示 し て い る と し て い る 。 ま た 後 者 は 、 話 者 が そ の 発 話 コ ン テ キ ス ト を フ ォ ー マ ル な 場 と 捉 え て い る こ と を 示 し て い る 。 「 で す ・ ま す 体 」 は あ ら ゆ る 発 話 に お い て 「 非 で す ・ ま す 体 」 と の 選 択 が 迫 ら れ る と い う 点 で 上 述 の よ う な 指 標 性 が 表 出 す る 。ス ピ ー チ レ ベ ル の 研 究 で は 、「 敬 体(対 常 体 )」や「 丁 寧 体(対 普 通 体 )」、ま た は 英 語 で 書 か れ た 研 究 に お い て は “masu-form”(Cook, 2008)と も 呼 ば れ る が 、「 で す・ま す 体 」か「 非 で す・ま す 体 」と い う 区 分 け を し て い る 研 究注 2が 多 い 。 「 で す ・ ま す 体 」 使 用 及 び ス ピ ー チ レ ベ ル の 選 択 に つ い て の 研 究 で は 、 上 下 関 係 を 扱 っ た も の(宇 佐 美 , 1998, 2001; 金 , 2002)と 上 下 に 加 え て 親 疎 関 係 を 扱 っ た も の (大 浜 ・ 鈴 木 ・ 多 田, 1998;森 , 2005)が あ る 。し か し 、こ れ ら は 人 間 関 係 が 相 互 構 築 さ れ る と い う 点 か ら の 分 析 で は な く 、 そ れ ゆ え 長 期 的 な デ ー タ も 扱 わ れ て い な い 。 日 本 語 会 話 の ス ピ ー チ レ ベ ル を 概 観 し た 宮 武(2009)も 指 摘 し て い る が 、 親 疎 関 係 は 接 触 回 数 や 時 間 、 ま た 話 者 の 心 理 的 変 化 に よ っ て 変 化 す る も の で あ り 、 ま た そ れ を 反 映 す る ス ピ ー チ レ ベ ル の 選 択 も 変 化 す る は ず で あ る 。 こ の よ う な 親 疎 関 係 を 分 析 す る に は 長 期 的 な 対 話 デ ー タ が 必 要 と な る 。 ま た 接 触 場 面 に お け る ス ピ ー チ レ ベ ル 使 用 を 見 た 研 究 も 近 年 増 え て き て い る が 、 学 習 者 の 発 話 の 特 徴 や 問 題 点 に 焦 点 を 絞 っ た 分 析(金 , 2002; 林 , 2005)や 母 語 話 者 と の 比 較 (陳 , 2003, 2004)が 中 心 で あ る 。し か し 上 述 の 第 二 言 語 学 習 の パ ラ ダ イ ム シ フ ト で 述 べ た よ う に 、 「 母 語 話 者 モ デ ル に 近 づ く 」 と い う 考 え で は な く 「 目 標 言 語 を 使 用 し て 相 手 と の 相 互 理 解 を 図 る 」 こ と を 目 標 と す る 言 語 教 育 に 活 か す の で あ れ ば 、 相 手 で あ る 母 語 話 者 の 言 語 行 動 に も 注 目 し 、 相 互 調 整 行 為 と し て の 観 点 か ら の 分 析 も 必 要 と い え る の で は な い だ ろ う か 。 b. 終 助 詞 「 ね 」 の 指 標 的 機 能 日 本 語 の 終 助 詞 は 、 聞 き 手 、 話 の 内 容 、 そ の 他 の ス ピ ー チ 場 面 に 対 す る 話 し 手 の 伝 達 態 度(特 に エ ピ ス テ ミ ッ ク 及 び 感 情 的 な 態 度 )を 示 す 機 能 を 持 っ て い る (Cook, 2008)。 そ れ ゆ え 、 こ れ ら の 対 人 関 係 機 能 と し て は 、 ポ ラ イ ト ネ ス 理 論(Brown & Levinson, 1987)の 観 点 か ら 述 べ れ ば ポ ジ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ ト ネ ス に も ネ ガ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ ト ネ ス に も 使 わ れ る 。 例 え ば 「 の 」 や 「 ね 」 な ど の よ う に 共 有 知 識 や 感 情 を 示 す 、 あ る い は 引 き 出 す 機 能 を 持 つ 終 助 詞 は 、 ポ ジ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ ト ネ ス ス ト ラ テ ジ ー と し て 協 調 的 関 係 を 築 く た め に 使 用 で き る 。一 方 、終 助 詞 が 躊 躇 、不 確 か さ 、間 接 的 な 意 味 を 持 っ て 使 用 さ れ る 場 合 は ネ ガ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ ト ネ ス の ス ト ラ テ ジ ー と し て 用 い ら れ る 。「 ね 」は 上 述 の よ う に 話 者 間 の 共 有 認 識 の 提 示 お よ び 形 成 に 使 用 さ れ る こ と が で き る 。ま た「 よ 」注 3に 関 し て は Cook (1992)は 話 し

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手 の 発 話 に 聞 き 手 の 注 意 を ひ く た め に 使 用 さ れ る と 述 べ て い る 。 こ の よ う な 意 味 を 持 つ こ と か ら 、「 よ 」 は 話 し 手 の 断 定 的 な 態 度 を 強 調 す る と も 言 わ れ て い る 。 「 ね 」 は 特 に 言 語 社 会 化 の 分 析 に 重 要 な エ ピ ス テ ミ ッ ク 的 ま た は 感 情 的 な 話 者 の ス タ ン ス を 指 標 し て い る た め 、 話 者 の 態 度 の 観 察 に 重 要 な 手 掛 か り と な る 。 実 際 に 日 本 語 の 言 語 社 会 化 研 究 で は 、「 ね 」が 話 し 手 と 聞 き 手 の 間 に 調 和 、協 力 、共 感 を 生 み 出 す 機 能 を 持 つ た め 、 感 情 的 な 共 通 認 識 を 表 す 、 ま た 引 き 出 す 目 的 で 使 わ れ る と 述 べ て い る(Cook, 1992/Yoshimi, 1999)。ま た 、Ohta (1999)は 、「 ね 」が 共 感 や 配 慮 の 表 現 と し て の ア セ ス メ ン ト 的 発 話(例 え ば「 そ れ は 、残 念 で す ね 」)が 話 し 手 と 聞 き 手 の 間 に 感 情 的 (affective)な ア ラ イ メ ン ト(調 整 )に 使 わ れ て い る こ と を 指 摘 し 、 日 本 語 学 習 者 が ア セ ス メ ン ト の パ タ ー ン を 繰 り 返 す 中 で 「 ね 」 の 機 能 を 認 識 し て い く と 考 察 し て い る 。 ま た 「 ね 」 や 「 よ 」 と い う 終 助 詞 の 付 加 は ス ピ ー チ レ ベ ル ・ シ フ ト の 研 究 に お い て も 含 め ら れ る 場 合 が あ る 。 日 本 語 学 習 者 と 母 語 話 者 の ス ピ ー チ レ ベ ル 待 遇 レ ベ ル 認 識 の 違 い に つ い て 調 査 し た 佐 藤 ・ 福 島(1998)は 、「 ね 」「 よ 」 が 付 加 さ れ た 場 合 の 方 が 母 語 話 者 に は 待 遇 レ ベ ル が 低 い と 認 識 さ れ る と 述 べ て い る 。 ま た 、「 ね 」「 よ 」 が 付 加 し た も の と 中 途 終 了 型 発 話 を 橋 本(2006)は 「 中 間 的 な ス ピ ー チ レ ベ ル 」 と し 、 丁 寧 体 と 普 通 体 の 「 よ そ よ そ し い 」 ま た は 「 な れ な れ し い 」 と い っ た 負 の 効 果 を 緩 和 す る 働 き が あ る と し て い る 。 こ の よ う に 、「 で す ・ ま す 体 」と「 ね 」を 分 け て 分 析 す る だ け で な く 総 合 的 に 分 析 す る 意 義 も 示 さ れ て い る こ と か ら 、 本 稿 に お い て も 総 合 的 分 析 も 適 時 含 め る こ と と す る 。 2. サ ン プ ル デ ー タ の 分 析 (中 間 報 告 ) 本 稿 で は 今 回 の 接 触 場 面 コ ー パ ス の 活 用 例 と し て 「 で す ・ ま す 体 」 及 び 「 ね 」 の 使 用 を 接 触 回 数 に よ り 縦 断 的 、 ま た ペ ア 間 を 比 較 す る こ と に よ り 横 断 的 に 分 析 を 行 っ た 。 現 段 階 で は ま だ コ ー パ ス 及 び そ れ 以 外 の デ ー タ も 作 成 途 中 に あ り 、 本 稿 で は 中 間 報 告 の 形 で 結 果 を 述 べ る 。 2. 1 デ ー タ と 分 析 方 法 今 回 の 会 話 デ ー タ注 4は 、 同 大 学 に 在 籍 す る 留 学 生 と 日 本 人 学 生 の ペ ア で 4 組 の 自 由 会 話 を 各 60 分 で 約 3 週 間 お き に 5 回 収 録 し た 。収 録 さ れ た デ ー タ は 、文 字 化 し 、現 段 階 (2011 年 3 月 15 日 )で 各 収 録 の 10 分 目 ∼ 20 分 目 を タ グ 付 き デ ー タ と し て サ ン プ ル注 5が 完 成 し て い る 。 参 加 者 に は 「 日 本 人 学 生 と 留 学 生 の 継 続 的 会 話 デ ー タ を 作 成 す る 」 と 募 集 し 、 協 力 者 に は 謝 礼 金 が 支 払 わ れ た 。 留 学 生 参 加 者 は 全 員 が 短 期 留 学 生 で 、 来 日 後 1 カ 月 後 か ら 第 一 回 目 の 収 録 を 開 始 し た 。 そ の 後 、 留 学 生 は 半 年 ま た は 一 年 の 滞 在 予 定 で あ っ た 。 参 加 者 は ラ ン ダ ム に そ れ ぞ れ 留 学 生 1 名 と 日 本 人 学 生 1 名 の ペ ア に 分 け ら れ た 。会 話 収 録 は 参 加 者 ペ ア の 日 時 調 整 後 、 学 内 の 小 教 室 で 行 い 、 第 1 回 目 の 会 話 前 に ビ デ オ と IC レ コ ー ダ ー で の 録 画 ・ 録 音 を す る こ と や 個 人 情 報 に つ い て の 説 明 を 行 っ た 。 発 話 者 情 報 と し て 以 下 の 表 1

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の よ う な 情 報 と 接 触 場 面 に 関 す る 経 験 ( 資 料 1 参 照 ) を 記 入 し て も ら っ た 後 、「 自 由 に 会 話 を し て く だ さ い 。60 分 後 に 戻 っ て き ま す 。」 と 伝 え 、 リ サ ー チ ア シ ス タ ン ト は 教 室 を 出 て 、60 分 間 は デ ー タ 提 供 者 2 名 だ け で 会 話 を 行 っ た 。今 回 の デ ー タ 収 録 と い う 出 会 い を 参 加 者 ペ ア の 間 で ど の よ う に 位 置 づ け て い く の か と い う 点 も 今 回 の 分 析 視 点 に 重 要 な 点 で あ る こ と か ら 、 こ の よ う に 自 由 な 会 話 と い う 設 定 を 意 図 し た 。 会 話 話 者 年 齢 性 別 出 身 国 ・ 地 域 母 語 日 本 語 能 力 初 回 会 話 ま で に 外 国 人 ・ 日 本 人 と 日 本 語 で 話 し た 経 験 01 21 女 台 湾 と カ ナ ダ 中 国 語 2 級 相 当 0 1 02 19 男 日 本 日 本 語 母 語 0 03 22 女 韓 国 韓 国 語 2 級 7 時 間 2 04 20 男 日 本 日 本 語 母 語 10 時 間 05 23 男 台 湾 と カ ナ ダ 中 国 語 N1 200 時 間 3 06 20 女 日 本 日 本 語 母 語 100 時 間 07 20 女 韓 国 韓 国 語 2 級 相 当 無 回 答 4 08 22 女 日 本 日 本 語 母 語 24 時 間 表 1. 話 者 情 報 分 析 方 法 は 、 検 索 ツ ー ル ( 本 論 集 の 田 中 の 論 文 参 照 ) に よ り 各 会 話 の サ ン プ ル デ ー タ の 第 1 回 目 ~5 回 目 に つ い て 、 そ れ ぞ れ 「 で す ・ ま す 体 」 及 び 終 助 詞 「 ね 」 の 出 現 数 を 数 え 、 各 話 者 の 各 回 の 発 話 数 か ら そ れ ぞ れ の 頻 度 を 割 り 出 し た 。 次 に 、 各 ペ ア に お け る 話 者 別 出 現 頻 度 の 推 移 に つ い て ペ ア 間 で 比 較 及 び ペ ア 内 の 推 移 傾 向 を 見 た 。 今 回 は 終 助 詞 使 用 も 分 析 対 象 と す る こ と か ら 「 発 話 」 の 単 位 は メ イ ナ ー ド(1993)に 倣 い 、 PPU (Pause-bounded Phrasal Unit)に 従 っ た 。 PPU は 、「 ポ ー ズ に よ っ て 区 切 ら れ る 語 句 と い う 単 位 」 (p.96)で あ り 、 客 観 的 に 判 断 が 可 能 な 発 話 の 区 切 り で あ る 。 一 人 の 会 話 参 加 者 が 話 し 始 め て か ら 話 し 終 え る 、 ま た は 1 秒 以 上 停 止 す る ま で を 1 発 話 と し た 。 今 回 の 分 析 項 目 で あ る 「 で す ・ ま す 体 」 や 「 ね 」 は あ い づ ち に も 出 現 す る 可 能 性 が あ る こ と か ら 、「 そ う 」「 そ う で す ね 」 な ど の あ い づ ち は 発 話 数 に 含 め た が 、「 う ん 」「 は い 」 な ど の 応 答 詞 だ け の あ い づ ち や 笑 い 声 、「 あ ー 」、「 へ ー 」な ど の 感 嘆 詞 だ け の も の は 頻 度 を 割 り 出 す 際 の 発 話 数 か ら は 除 外 し た 。 各 会 話 に お け る 各 話 者 の 発 話 数 に つ い て は 、 資 料 2 に 示 す 。 ま た 、言 語 指 標 推 移 の 要 因 を 探 る た め 、5 回 目 の 会 話 終 了 4~6 週 間 後 に フ ォ ロ ー ア ッ プ・ イ ン タ ビ ュ ー を 行 っ た 。 イ ン タ ビ ュ ー は ペ ア で は な く 個 別 で 一 人 に つ き 35 分 ∼ 45 分 程 度 で 行 わ れ 、 協 力 者 に は 上 記 の 会 話 デ ー タ と は 別 に 謝 礼 金 が 支 払 わ れ た 。 イ ン タ ビ ュ ー で は 半 構 造 化 の 形 を と り 、 主 に 以 下 の 表 2 の 質 問 を 中 心 に 尋 ね た 。

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1 今 回 の 会 話 初 回 が 始 ま る 前 は 、 ど ん な 気 持 ち で 臨 み ま し た か 。 会 話 を 進 め る に つ れ て 、 そ の 気 持 ち は 変 化 し ま し た か 。 そ れ と も 同 じ で し た か 。 2 5 回 の 会 話 を 終 え 、 今 回 の 会 話 に つ い て ど う 思 い ま す か 。 3 今 回 の 会 話 を 行 う に あ た り 、 何 か 気 を つ け て い た こ と や 心 配 な こ と が あ り ま し た か 。 4 今 回 の 会 話 で 大 変 だ っ た こ と が 何 か あ り ま し た か 。 5 初 回 の 会 話 前 に 、 今 回 協 力 し よ う と 思 っ た 動 機 は 何 で し た か 。 そ の 動 機 は 変 化 し ま し た か 。 6 今 回 の 会 話 相 手 に つ い て 、 ど ん な 人 だ と い う 印 象 を 持 っ て い ま す か 。 ま た そ れ は 変 化 し ま し た か 。 7 今 回 の 会 話 相 手 の 言 動 で 何 か 違 和 感 を 感 じ た こ と が あ り ま し た か 。 ま た そ れ に つ い て ど の よ う に 対 応 し ま し た か 。 8 初 対 面 の 人 と の 会 話 に つ い て ど う 思 い ま す か 。 表 2. イ ン タ ビ ュ ー の 質 問 例 イ ン タ ビ ュ ー の 結 果注 6 は 、 主 に 各 ペ ア 内 で の 接 触 を 重 ね る 中 で の 各 参 与 者 の ス タ ン ス 推 移 の マ イ ク ロ な 部 分 を 総 合 的 に 分 析 す る た め に 用 い た 。 2. 2 分 析 結 果 分 析 結 果 と し て 、 ま ず は 「 で す ・ ま す 体 」、「 ね 」 の 出 現 頻 度 推 移 に つ い て 各 ペ ア の 結 果 を 示 す 。 そ の 後 、 各 ペ ア 内 で の 推 移 に つ い て 、 よ り マ イ ク ロ な レ ベ ル の 分 析 結 果 を 談 話 分 析 及 び イ ン タ ビ ュ ー デ ー タ か ら 述 べ る 。 2. 2. 1「 で す ・ ま す 体 」 使 用 の 分 析 結 果 「 で す ・ ま す 体 」 の 使 用 に つ い て 各 ペ ア の 第 一 回 目 ∼ 五 回 目 ま で の 会 話 に お け る 推 移 を 以 下 の 図 1∼ 図 4 に 示 す 。「 で す ・ ま す 体 」 に は 、「 で し ょ う 」 も 含 め た 。 ま た 、 引 用 の 形 で「『 ∼ で す 』っ て い う 」の よ う に「 で す ・ ま す 」が 引 用 部 分 に 使 わ れ て い る 場 合 は 話 者 自 身 の ス タ イ ル と し て の 選 択 で は な い の で 別 扱 い と し た 。 縦 軸 は 「 で す ・ ま す 体 」 の 各 会 話 サ ン プ ル に お け る 使 用 頻 度(出 現 数 /発 話 数 )、 横 軸 は 何 度 目 の 会 話 で あ る か を 示 し て い る 。 折 れ 線 の 数 字 は 話 者 ナ ン バ ー で あ る 。「 で す ・ ま す 体 」 の 出 現 数 に つ い て は 、 資 料 3 を 参 照 の こ と 。

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図 1. ペ ア 1「 で す ・ ま す 体 」 頻 度 図 2. ペ ア 2「 で す ・ ま す 体 」 頻 度 図 3. ペ ア 3「 で す ・ ま す 体 」 頻 度 図 4. ペ ア 4「 で す ・ ま す 体 」 頻 度 ペ ア に よ っ て 「 で す ・ ま す 体 」 の 頻 度 は 異 な り 、 特 に 1∼ 5 回 の 推 移 の 方 向 は 、 ペ ア に よ っ て 異 な る 。 増 え て い く ペ ア(ペ ア 1 と ペ ア 4)、 減 っ て い く ペ ア (ペ ア 2)、 変 化 が あ ま り み ら れ な か っ た ペ ア(ペ ア 3)が 見 ら れ る 。 ペ ア 内 で は 相 互 調 整 の 傾 向 が 推 測 さ れ る 。 特 に ペ ア 2 と 3 は 、 ペ ア 内 で 「 で す ・ ま す 体 」 の 使 用 頻 度 の 差 が 縮 ま る 傾 向 が う か が え る 。 こ れ に つ い て は 、 表 3 が 示 し て い る 。 ペ ア 1 ペ ア 2 ペ ア 3 ペ ア 4 1 回 目 使 用 の 差 0.03 0.1 0.07 0.16 5 回 目 使 用 の 差 0.27 0.04 0.02 0.15 表 3. ペ ア 内 に お け る 「 で す ・ ま す 体 」 頻 度 の 差 し か し 、ペ ア 1 に 関 し て は 1 回 目 (0.03)よ り も 5 回 目 の 方 (0.27)が ペ ア 間 で の 差 の 開 き が 大 き い 。 今 回 の 会 話 は ど の ペ ア も 同 じ 大 学 の 留 学 生 と 日 本 人 学 生 と い う 類 似 し た 条 件 の 中 で 、 ど う し て こ の よ う な 違 い が 表 れ た の だ ろ う か 。 ペ ア 1 に つ い て は 後 に 詳 し く 会 話 例 と イ ン タ ビ ュ ー か ら ペ ア 内 の 推 移 を 考 察 す る 。 2. 2. 2 終 助 詞 「 ね 」 の 分 析 結 果 「 ね 」 の 使 用 に つ い て 、 各 ペ ア の 使 用 推 移 を 図 5∼ 図 8 に 示 す 。 縦 軸 は 「 ね 」 の 各 会 話 サ ン プ ル に お け る 使 用 頻 度(出 現 数 /発 話 数 )、 横 軸 は 何 度 目 の 会 話 で あ る か を 示 し て い る 。

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「 ね 」 以 外 に も 終 助 詞 と し て 使 用 さ れ て い る 場 合 、「 ね ぇ 」、「 ね ー 」 も 含 め た 。「 ね 」 の 出 現 数 に つ い て は 、 資 料 4 を 参 照 の こ と 。 図 5. ペ ア 1「 ね 」 頻 度 推 移 図 6. ペ ア 2「 ね 」 頻 度 推 移 図 7. ペ ア 3「 ね 」 頻 度 推 移 図 8. ペ ア 4「 ね 」 頻 度 推 移 図 5∼ 8 が 示 す よ う に 、 ペ ア ま た は 個 人 に よ っ て 「 ね 」 の 使 用 頻 度 は 異 な る 。 ペ ア 間 の 類 似 点 と し て 、 全 て の ペ ア に お い て 留 学 生 側 の 「 ね 」 の 使 用 は 相 手 の 日 本 人 学 生 よ り も 低 い こ と が 挙 げ ら れ る 。留 学 生 話 者 の 中 で も 3, 5, 7 の 話 者 は 継 続 的 に 一 回 の サ ン プ ル 会 話 に つ き 7 回 以 下 の 使 用 回 数 で あ る 。「 で す ・ ま す 体 」 の 推 移 と 比 較 す る と 、 あ る 程 度 類 似 し て い る よ う に 見 え る が 、 ペ ア 4 の 話 者 7 だ け は 「 で す ・ ま す 体 」 と 異 な り 「 ね 」 の 使 用 頻 度 が 一 貫 し て 低 い 。 1 回 目 と 5 回 目 の ペ ア 内 で の 差 を 比 べ る と 、表 4 が 示 す よ う に 1)回 数 を 重 ね て 差 が 縮 ま っ た ペ ア(ペ ア 2)、 2)回 数 を 重 ね て 差 が 広 が っ た ペ ア (ペ ア 1 と 4)、 3)回 数 を 重 ね て も 変 化 が な く ペ ア 内 で 類 似 し て い た ペ ア(ペ ア 3)が あ る 。 こ の 結 果 は 、「 で す ・ ま す 体 」 の 推 移 と 類 似 し て い る 点 が あ る 。 ペ ア 1 ペ ア 2 ペ ア 3 ペ ア 4 1 回 目 使 用 頻 度 の 差 0.01 0.22 0.01 0.09 5 回 目 使 用 頻 度 の 差 0.08 0.03 0.01 0.15 表 4. ペ ア 内 に お け る 「 ね 」 使 用 頻 度 の 差

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ま ず 、ペ ア 1 は「 で す・ま す 体 」の 時 と 同 様 、初 回 (0.01)よ り 5 回 目 の 方 (0.08)が ペ ア 内 で の 「 ね 」 の 使 用 頻 度 の 差 が 広 が っ て い る 。 反 対 に 、 ペ ア 2 は 初 回 の 0.22 か ら 最 終 回 の 0.03 へ と 差 が 大 き く 縮 ま っ て お り 、こ れ は「 で す ・ ま す 体 」に お け る 推 移 と 同 様 の 傾 向 で あ る 。 話 者 3 は 「 で す ・ ま す 体 」、「 ね 」 の 使 用 頻 度 、 ど ち ら に お い て も 3 回 目 の 会 話 か ら 減 少 し 、そ の 後 は 話 者 4 と 類 似 傾 向 に あ る 。こ の 動 き が「 ね 」に お い て は 特 に 顕 著 で あ り 、 一 回 目 と 二 回 目 は 45 回 、 39 回 の 使 用 で あ っ た の が 、 3 回 目 ∼ 5 回 目 の 会 話 に お い て は 、 7 回 、6 回 、 7 回 の 使 用 へ と 減 少 し た 。 さ ら に 、 ペ ア 3 に お い て は 「 で す ・ ま す 体 」 と 同 様 に「 ね 」の 使 用 頻 度 も 両 話 者 共 に 低 い 値 で 初 回 か ら 5 回 目 ま で わ ず か な 変 化 は あ る も の の 、 一 貫 し て い る 。 以 上 「 で す ・ ま す 体 」 と 「 ね 」 の 使 用 頻 度 推 移 を 見 た が 、 ペ ア 内 に お け る 推 移 と そ の 要 因 に つ い て の よ り 詳 細 な 分 析 が 必 要 で あ る 。 今 回 は 中 間 報 告 と し て 、 ペ ア 1 と ペ ア 2 を 取 り 上 げ 、 上 記 の 「 で す ・ ま す 体 」 と 「 ね 」 が 指 標 す る 各 話 者 の ス タ ン ス を 考 察 し 、 各 ペ ア で ど の よ う な 共 通 認 識 が ど の よ う な 過 程 を 経 て 形 成 さ れ て い く の か を 見 て い く 。 2. 2. 3 ペ ア 1 に お け る 相 互 行 為 プ ロ セ ス こ こ で は 、 今 回 の 中 間 報 告 と し て ペ ア 1 を 取 り 上 げ 、 数 字 だ け で は 把 握 で き な い 話 者 の ス タ ン ス と そ の 変 化 に つ い て 詳 し く 分 析 し て い く 。表 3, 4 で 示 し た よ う に 他 の ペ ア が「 で す ・ ま す 体 」 や 「 ね 」 の 使 用 に お い て 相 互 調 整 の 結 果 、 類 似 し て い く 傾 向 が 見 ら れ る 中 、 ペ ア 1 だ け は 会 話 回 数 を 重 ね る 中 で 特 に 4 回 目 、 5 回 目 に 見 ら れ る よ う に ペ ア 内 で の 差 が 初 回 よ り も 広 が っ て い る こ と が 分 か る 。1 回 目 か ら 5 回 目 の 推 移 か ら み る と 、「 で す・ま す 体 」 に つ い て 図 1 が 示 す よ う に 話 者 2 は 4 回 目 と 5 回 目 に か け て 頻 度 が 高 く な る 。 話 者 1 は 2 回 目 と 4 回 目 で 下 が る に も か か わ ら ず 、 5 回 目 で 話 者 2 に 合 わ せ て 高 く な っ て い る 。 「 ね 」の 頻 度 に お い て も 、図 5 が 示 し た よ う に 初 回 よ り 5 回 目 の 会 話 の 方 が 話 者 2 の 使 用 が 高 く な る こ と で 差 が 広 が っ て い る 。 こ こ で は 、 話 者 2 の 「 で す ・ ま す 体 」 使 用 が 4 回 目 か ら 増 加 す る こ と か ら 、ペ ア 1 の 第 3 回 目 の 会 話 と 5 回 目 の 会 話 を 比 較 す る 。ま ず は 3 回 目 の 会 話 を 以 下 の 会 話 例 1 注 7に 示 す 。「 で す ・ ま す 体 」 部 分 は 太 字 で 示 し て い る 。< >内 の 数 字 は 、 話 者 ナ ン バ ー を 示 す 。 会 話 例 1 ペ ア 1 の 3 回 目 会 話 (26 分 ∼ 28 分 ) 日 本 の 部 活 に お け る 先 輩 後 輩 の 話 か ら 敬 語 使 用 の 話 に な り 、 話 者 1 が 日 本 人 が 留 学 生 に 話 し か け て く る 時 は 敬 語 で は な い 形 に な る こ と を 述 べ 、 話 者 1 が そ の 疑 問 に 答 え て い る 。 1 <2> なんか、自 分 の感 覚 としては・・・欧 米 人 はでも、た、普 通 に喋 れるんすよなんか、 タメ口 で、でもアジア人 って、やっぱ年 上 にはなんか、敬 語 使 ってしまうんすよね、 なん[か] 2 <1> [ふ∼]ん・・・じゃ白 人 を見 るとすぐ、普 通 の喋 り方 3 <2> はできますね、多 分

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4 <1> 多 分 [hhhhh] 5 <2> [はい多 分 ]・・ 6 <1> hhh・ 7 <2> そぉっすねあーでもどうやろ、わかんないっすねでも、 8 <1> 外 国 人 たちは、会 ってすぐ、普 通 の喋 り方 で喋 りますけど、日 本 人 やったら どうすればいいかわかりません 9 <2> えでもそれは大 丈 夫 ですよ、外 国 人 、が・ 10 <2> その、普 通 に喋 ってきても、なんか受 け入 れます、 11 <1> あ、外 国 人 だから 12 <2> っていう、なりますかね、 13 <1> ま、でも、アジア人 も、外 国 人 ですか、 14 <2> そうですよね[、だから]、多 分 、えなんか、いきなり日 本 人 が、馴 れ馴 れしく喋 ってきたら、 なんかちょっと・・ 15 <1> [hhhhh] 16 <2> 違 和 感 がありますけど 17 <1> ん∼ん 18 <2> わ、日 本 人 じゃなかったら、違 和 感 ないですよ、多 分 、普 通 に喋 ってきても・・ あ、でも違 和 感 あるかなぁ∼、hhh、つ外 国 人 で、いきなりそのしゃべってきたら、なんか、 おもしろいなっていう感 じになります、多 分 [、]なんか大 阪 弁 とかしゃべってきて、 なにしてん[の、そうそう、そやったら]、あ、面 白 い人 やなってなりますちょっとなんか 19 <1> [あ∼] 20 <1> [わからへ∼ん、hhhhh] 確 かに 21 <2> だから道 聞 かれてとかに、ここどうやって行 くんですかとか言 われたらあれですけど、 ここどうやって行 くんとか・言 われたらなんか・・ あでも違 和 感 ありますかねやっぱ[、hhhh]h・・・・ 22 <1> [hhhhh] 23 <1> 前 、に、あの白 人 のぉー女 の子 が、あかぁん、アホっ、って言 ってえっ[hhhhhh]・ 24 <2> [hhhhh] 25 <1> おもし、確 かに[、おもしそう(おもしろい)だった] 26 <2> [確 かに、変 ですよね、]確 かに、欧 米 でも変 ですかねぇやっぱ・・・・ 27 <1> 方 言 、を使 う外 国 人 は、珍 しい、だね、hh こ こ で は 、 図 1 で も 示 し た よ う に 話 者 1 と 話 者 2 の「 で す ・ ま す 体 」使 用 の 差 が 見 ら れ る 。 こ の 会 話 に 見 ら れ る よ う に 、 話 者 1 に は 「 で す ・ ま す 体 」 (8、 13 行 目 )と 「 非 で す ・ ま す 体 」(25、27 行 目 )の 混 合 が 見 ら れ る 。し か し 、話 者 2 に は 話 者 1 の よ う な「 非 で す ・ ま す 体 」 の 使 用 は 見 ら れ な く 、 相 手 の ス ピ ー チ レ ベ ル に 合 わ せ よ う と す る ペ ア 2 の 話 者 4

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の よ う な 変 化 は 見 ら れ な か っ た 。 話 者 2 は 関 西 弁 の 使 用 (「 ∼ や ろ 」 7 行 目 )、「 で す ・ ま す 体 」の 少 し 砕 け た 形 で あ る「 ∼ す 」(2, 7 行 目 )や 終 助 詞「 ね 、よ 」と の 併 用 、「 ∼ け ど 」(16 行 目)の よ う な 言 い 淀 み 型 を 使 用 し 、「 で す ・ ま す 体 」 姿 勢 の 中 で も 比 較 的 心 理 的 距 離 を 縮 め た 形 を 使 用 し て い る も の の 、「 で す ・ ま す 体 」 使 用 を 基 調 と し て い る 。 ま た 会 話 例 1 は 、話 者 1 と 2 の「 で す ・ ま す 体 」使 用 の 違 い と い う ス タ ン ス 上 の 違 い だ け で な く 、 話 題 も 敬 語 使 用 に つ い て の メ タ 言 語 的 と 内 容 と な っ て お り 、 こ の 話 題 へ 導 入 し た 話 者 1 の 今 回 の 会 話 に お け る 敬 語 使 用 に つ い て の 困 惑 が 見 ら れ る 。個 別 イ ン タ ビ ュ ー で 今 回 の 会 話 の 感 想 と し て こ ち ら 側 か ら 質 問 す る 前 に 話 者 1 も 2 も 挙 げ て い た の が 、敬 語 使 用 に つ い て の 困 惑 で あ っ た 。 話 者 1 は 、「 自 分 が 日 本 人 で は な い の で 」 今 ま で 会 っ た 日 本 人 学 生 も 留 学 生 も 皆 、 初 対 面 か ら 「 非 で す ・ ま す 体 」 で 話 し て き た の で 、 今 回 の 会 話 相 手 の 話 者 2 は 「 で す ・ ま す 体 」 で 話 し て き た こ と に 困 惑 し た と 述 べ て い る 。 3 回 目 の 会 話 で 会 話 例 1 の よ う に 敬 語 使 用 の 話 題 に な っ た の は 、こ の よ う な 話 者 1 の 困 惑 の 表 れ の 可 能 性 も あ る 。 こ の 「 で す ・ ま す 体 」 使 用 が 示 す ペ ア 1 に お け る 話 者 間 の ス タ ン ス 及 び 解 釈 の 相 違 は 、 イ ン タ ビ ュ ー か ら 更 に 明 ら か に な っ た 。 イ ン タ ビ ュ ー に お い て 話 者 2 も 今 回 の 会 話 で 一 番 困 惑 し た 事 は 敬 語 使 用 だ と 述 べ た 。ま ず 相 手 が 留 学 生 で あ る こ と か ら の 戸 惑 い が 大 き か っ た が 、会 話 例 1 に お け る 話 者 1 の 答 え か ら も 分 か る よ う に 相 手 が 「 ア ジ ア 系 」 の 留 学 生 な の で 日 本 と 同 じ く 上 下 関 係 を 重 ん じ る と 判 断 し 、 相 手 は 年 上 な の で 敬 語 を 使 用 し よ う と 思 っ た と 述 べ て い る 。 も し 相 手 が 「 欧 米 系 」で あ れ ば 、「 フ レ ン ド リ ー 」に た め 口 の 方 が よ い と 思 っ た と 述 べ て い る 。こ の「 ア ジ ア 系 」 と い う 判 断 は 、 相 手 の 留 学 生 は カ ナ ダ 国 籍 で あ る が 幼 い こ ろ 台 湾 で 育 っ た こ と 、 見 た 目 が ア ジ ア 系 で あ る こ と を 理 由 と し て 挙 げ て い た 。 ま た 話 者 2 が 以 前 の 短 期 海 外 研 修 で 出 会 っ た ア ジ ア 系 欧 米 人 と の 接 触 経 験 か ら 「 ア ジ ア 系 」 の 人 は 自 分 と 共 有 す る 文 化 が 多 く 安 心 で き る と 述 べ て い る 。実 際 に こ の ペ ア の 会 話 に は 、日 本 と 他 の 国 だ け で な く「 ア ジ ア 人 」 と 「 欧 米 人 」 と い う 比 較 の 話 題 が 多 く み ら れ た 。 自 分 達 は 「 ア ジ ア 系 」 で 「 欧 米 系 」 の 文 化 や 体 質 と 異 な る と い う 話 題 も あ り 、 共 通 し て 「 ア ジ ア 系 」 で あ る と い う ス タ ン ス の 強 調 が 両 者 に 見 ら れ た 。 こ の よ う な 背 景 が 話 者 2 の 「 ア ジ ア 系 だ か ら 日 本 人 と 同 じ よ う に 話 そ う 」 と い う 判 断 を 強 め た 可 能 性 が あ る 。 さ ら に 話 者 2 は 、 今 回 相 手 が 全 て 「 た め 口 」 で 話 し た と し て も 、 自 分 は 年 下 な の で 敬 語 を 使 用 す る つ も り だ っ た と 述 べ て お り 、 相 手 に 「 で す ・ ま す 体 」 を 期 待 し て い た わ け で は な か っ た 。 話 者 2 は 体 育 会 系 ク ラ ブ に 所 属 し て い る こ と も あ り 、 年 齢 に よ る 上 下 関 係 と そ れ を 示 す 敬 語 使 用 は 、 重 要 な わ き ま え(井 出 , 2006) で あ る 可 能 性 が あ る 。 こ の 「 ア ジ ア 系 留 学 生 は 日 本 人 と 同 じ 文 化 を 共 有 し て い る 」 と い う 話 者 2 の 経 験 に 基 づ く 判 断 と 、 年 上 で あ れ ば 敬 語 は 絶 対 で あ る と い う 話 者 2 の 価 値 観 が 、 話 者 2 の 一 貫 し た 「 で す ・ ま す 体 」 基 調 の 姿 勢 に 影 響 し た よ う で あ る 。 話 者 1 は 、 話 者 2 の 「 で す ・ ま す 体 」 使 用 に 驚 き 、 話 者 2 に つ い て 「 失 礼 に な り た く な い 人 」で あ る と い う 印 象 を 受 け た と 述 べ て い る 。ま た 、そ れ と 同 時 に 、「 で す ・ ま す 体 」と い う 「 フ ォ ー マ ル 」 性 に 緊 張 し 、 仲 良 く な れ な い と 感 じ た と 述 べ て い る 。 こ こ で 非 常 に 興

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味 深 い の は 、 話 者 1 が 意 図 し た 「 で す ・ ま す 体 」 指 標 の 意 味 と 話 者 2 の 受 け 取 っ た 意 味 が 異 な る こ と で あ る 。 話 者 1 は 年 齢 か ら く る 先 輩 ・ 後 輩 関 係 お よ び そ の 礼 儀 わ き ま え を 意 図 し て い た が 、 話 者 2 は そ れ を 「 緊 張 す る 」「 フ ォ ー マ ル な 」 会 話 へ の ス タ ン ス と 受 け 取 っ て い た 。 話 者 2 は 話 者 1 が ア ジ ア 系 で あ る こ と か ら 年 齢 差 を 重 ん じ る と 推 測 し た が 、話 者 1 は 年 齢 差 が 話 者 2 の 「 で す ・ ま す 体 」 使 用 の 要 因 で あ る こ と は 認 識 し て い な か っ た 。 代 わ り に 、 話 者 1 は 話 者 2 が フ ォ ー マ ル な 活 動 創 り の ス タ ン ス で あ る と 解 釈 し た 。最 初 は 他 の 日 本 人 の 学 生 友 達 と の 会 話 と 同 じ よ う に 「 非 で す ・ ま す 体 」 に し よ う と 思 っ て い た が 、 相 手 が 丁 寧 で あ る の で そ れ に 合 わ せ て 自 分 も フ ォ ー マ ル に し 、 相 手 に 失 礼 に な ら な い よ う に し な け れ ば と い う 変 化 が あ っ た と い う 。以 下 の 会 話 例 2 は 、ペ ア 1 の 5 回 目 の 会 話 で あ る が 、 こ の 会 話 か ら も 話 者 1 の ス タ ン ス の 変 化 が 読 み 取 れ る 。 会 話 例 2 ペ ア 1 の 5 回 目 会 話 (18 分 ∼ 19 分 )冬 休 み の 旅 行 の 話 の 後 、話 者 2 が 初 詣 の 話 題 を 切 り 出 し た 。 1 <2> うんー、す、初 詣 は行 きました 2 <1> うん 3 <2> 初 詣 4 <1> 初 詣 5 <2> あのー、1 月 つい、あっ、1 月 にー、神 社 に 6 <1> 行 きました 7 <2> あっ行 ったんですか、人 多 かったですか 8 <1> 人 いっぱい、いました 9 <2> どこ行 きました 10 <1> その、金 閣 寺 とか・ 11 <1> 他 はどこ、神 社 の名 前 忘 れ、てしまいましたけど、いっぱい 12 <2> ですよね h・ 13 <1> 他 の所 行 き、た、く、い、行 きたいけど・ 14 <1> 1ー月 1 日 だから、全 部 [、]詰 まっていました[、]結 局 、めく、マクド行 きました[hh]h、f 15 <2> [あー] 16 <2> [そうっす] 17 <2> [hh] 18 <2> あの 1 月 1 日 は・ 19 <2> 休 みの欲 しいですけどね 20 <1> そうですね 会 話 例 2 に お い て も 、話 者 1 も 2 も「 で す・ま す 体 」だ け を 使 用 し て い る わ け で は な い 。

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