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「失われた十年」の原因は何か : GDP ギャップと潜在成長率の観点から

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(1)

「失われた十年」の原因は何か : GDP ギャップと

潜在成長率の観点から

著者

村田 治

雑誌名

経済学論究

64

3

ページ

35-66

発行年

2010-12-25

URL

http://hdl.handle.net/10236/7274

(2)

「失われた十年」の原因は何か

GDP ギャップと潜在成長率の観点から

The Cause of the Lost Decade of Japan

村 田   治  

In this paper, we examine the cause of the Lost Decade of Japan from the view point of the output gap and the potential growth rate of GDP. First of all, we investigate output gap on the grounds of

the production function and trend approach. Secondly, we measure

the potential growth rate of GDP by the use of the full employment GDP and Okun’s Law. Thirdly, we divide the GDP growth rate into two components, those being supply side factor, which is the potential growth rate of GDP, and demand side factor, which is the change rate of the output gap. The conclusion of this paper is that the cause of the Lost Decade of Japan is partly due to the supply side factor and partly due to the demand side factor.

Osamu Murata

  JEL:E23, E30

キーワード:失われた十年、GDP ギャップ、潜在成長率

Key words: the Lost Decade of Japan, the output gap, potential growth rate of GDP

1991年のバブル崩壊以後、わが国のGDP成長率は年率平均で1%台に低 下している。このことは、平成不況や1997年の金融危機、さらには2008年 のリーマンショックなどによるGDPの落ち込みが一因であると同時に、潜在 GDPの成長率である潜在成長率の低下がもたらしたと考えられる1) 本稿では、1991年以降のいわゆる「失われた十年」について、GDPギャッ 1) 同様の GDP 成長率の低下は、高度成長期の終わりの 1970 年代初期にも生じている。

(3)

プと潜在成長率の2つの観点から考察していく。まず、GDPギャップの推計 については生産関数アプローチ、トレンドアプローチなどいくつかの推計方法 を用いる。同様に、潜在成長率についても、GDPギャップの推計の基礎とな る潜在GDPやオーカン法則によるアプローチなどを用いて推計を行う。さら に、GDPギャップと潜在成長率の関係を考察することによって、1991年以降 のGDP成長率の低下要因を需要要因と供給要因に分けて考察する。本稿の構 成は以下のとおりである。 第1節では、コッブ=ダグラス型生産関数の推計を行う。次に、第2節で は、第1節の推計に基づいた生産関数アプローチによるGDPギャップや固定 係数型生産関数によるGDPギャップを求める。また、トレンドアプローチに よるGDPギャップの推計も行おう。続く第3節では、潜在GDPやトレンド アプローチ、あるいは、オーカン法則を用いて潜在成長率を推計する。第4節 では、GDPギャップと潜在成長率の関係を明らかにしながら「失われた十年」 の原因を探る2)。その際、 GDP成長率を供給要因(潜在成長率)と需要要因 (GDP成長率の潜在成長率からの乖離)に分解し、1991年以降のGDP成長 率の低下要因について考察する。さらに、潜在成長率の低下の原因についても 言及しよう。

1. 生産関数の推計

本節では、生産関数の推計を行う。まず、推計に必要となる生産要素の推移 を見ていこう。資本投入に関しては全産業の稼働率が、労働投入に関しては失 業率と労働時間の推移が必要となってくる。 (1) 稼働率と総実労働時間指数の推移 ここでは、稼働率と労働時間の推移について見ておく3)。通常、稼働率は製 造業稼働率が用いられるが、本稿では鎌田・増田(2000)にしたがい非製造業 2) GDP ギャップと潜在成長率の関係を明らかにすることによって、水準指標である GDP ギャッ プと変化率指標である潜在成長率を同じ次元で論じることが可能となる。 3) データに関しては補注 A を参照されたい。 — 36 —

(4)

稼働率を求め製造業稼動率との加重平均値を全産業における稼働率と考える4) いま、製造業稼働率をep、非製造業稼働率をeN、製造業資本ストックをKp、 非製造業資本ストックをKN、全産業の資本ストックをKとすると、全産業 稼働率eは製造業稼働率と非製造業稼働率の加重平均値として e = (epKp+ eNKN)/K (1) と定義できる。これを図示したのが第1図である。 第 1 図 全産業稼働率の推移 㪍㪇 㪎㪇 㪏㪇 㪐㪇 㪈㪇㪇 㪈㪈㪇 㪈㪉㪇 㪈㪊㪇 㪈㪐㪌㪌 ᐕ 㪈㪐㪌㪍 ᐕ 㪈㪐㪌㪎 ᐕ 㪈㪐㪌㪏 ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉 ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍 ᐕ 㪈㪐㪍㪎 ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪇 ᐕ 㪈㪐㪎㪈 ᐕ 㪈㪐㪎㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊 ᐕ 㪈㪐㪎㪌 ᐕ 㪈㪐㪎㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏 ᐕ 㪈㪐㪏㪇 ᐕ 㪈㪐㪏㪈 ᐕ 㪈㪐㪏㪉 ᐕ 㪈㪐㪏㪊 ᐕ 㪈㪐㪏㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏 ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪌 ᐕ 㪈㪐㪐㪍 ᐕ 㪈㪐㪐㪎 ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪉㪇㪇㪇 ᐕ 㪉㪇㪇㪈 ᐕ 㪉㪇㪇㪉 ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍 ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇㪏 ᐕ 次に、労働時間の完全利用水準を求めよう。本稿では、労働時間に関して は総実労働時間指数を用いる。この指数は1960年のピークの後低下し、1975 年∼1989年にかけて横ばいに推移し、その後低下し1994年以降は再び横ば いとなっている。そこで、全期間を1955年第Ⅰ四半期∼1960年第Ⅳ四半期、 1975年第Ⅰ四半期∼1988年第Ⅳ四半期、1994年第Ⅰ四半期以降の3つに区 分し、それぞれの期間について総実労働時間指数の平均値を求め、各期間の間 については内挿法によって接続している。このようにして求めた平均労働時間 指数を労働時間の完全利用水準と定義する。この平均労働時間指数を完全利用 労働時間指数と考えて総実労働時間指数とともに描いたのが第2図である。 4) ただし、データの関係上、1982 年以前の非製造業の稼働率は 100 と仮定している。

(5)

第 2 図 総実労働時間指数の推移 㪏㪇 㪐㪇 㪈㪇㪇 㪈㪈㪇 㪈㪉㪇 㪈㪊㪇 㪈㪋㪇 㪈㪌㪇 㪈㪐㪌㪌ᐕ 㪈㪐㪌㪍 ᐕ 㪈㪐㪌㪎 ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉 ᐕ 㪈㪐㪍㪊 ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍 ᐕ 㪈㪐㪍㪎ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎㪇ᐕ 㪈㪐㪎㪈ᐕ 㪈㪐㪎㪉 ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋 ᐕ 㪈㪐㪎㪌ᐕ 㪈㪐㪎㪍 ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏 ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏㪉 ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋 ᐕ 㪈㪐㪏㪌 ᐕ 㪈㪐㪏㪍 ᐕ 㪈㪐㪏㪎 ᐕ 㪈㪐㪏㪏 ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋 ᐕ 㪈㪐㪐㪌 ᐕ 㪈㪐㪐㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎 ᐕ 㪈㪐㪐㪏 ᐕ 㪈㪐㪐㪐 ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈 ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪋 ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍 ᐕ 㪉㪇㪇㪎 ᐕ 㪉㪇㪇㪏ᐕ 㪉㪇㪇㪐 ᐕ ✚ታഭ௛ᤨ㑆ᜰᢙ ቢో೑↪ഭ௛ᤨ㑆ᜰᢙ (2) 自然失業率の推移 次に、自然失業率の推計を試みる。第3図は1956年第Ⅰ四半期∼2009年 第Ⅱ四半期の完全失業率と消費者物価伸び率の関係としてフィリップス曲線を 図示したものである。 第 3 図 フィリップス曲線(1955-2009) 㪄㪌 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌 㪇 㪈 㪉 㪊 㪋 㪌 㪍 ቢోᄬᬺ₸ ᶖ⾌⠪‛ ଔિ䈶₸ このグラフからわかるように、フィリップス曲線にシフトが生じ3つの部 分に分かれていると考えられる。まず、1つ目は消費者物価伸び率が15%を 超えて上昇する前までであり、1956年第Ⅱ四半期∼1973年第Ⅲ四半期の期間 — 38 —

(6)

に当たる。2つ目は、消費者物価伸び率が15%を下回り、また、完全失業率 が3.0%未満であった1975年第Ⅰ四半期∼1995年第Ⅳ四半期の期間である。 3つ目は、完全失業率が3.5%を超える1997年第Ⅳ四半期以降の期間である。 フィリップス曲線をこのように3つの部分にわけて、それぞれの期間の失業率 の平均値を完全雇用に対応する自然失業率と定義する。このようにして求めた 自然失業率と完全失業率を図示したのが第4図である5) 第 4 図 失業率の推移 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪐㪌 㪍ᐕ 㪈㪐㪌 㪎ᐕ 㪈㪐㪌 㪏ᐕ 㪈㪐㪌 㪐ᐕ 㪈㪐㪍 㪇ᐕ 㪈㪐㪍 㪈ᐕ 㪈㪐㪍 㪉ᐕ 㪈㪐㪍 㪊ᐕ 㪈㪐㪍 㪋ᐕ 㪈㪐㪍 㪌ᐕ 㪈㪐㪍 㪍ᐕ 㪈㪐㪍 㪎ᐕ 㪈㪐㪍 㪏ᐕ 㪈㪐㪍 㪐ᐕ 㪈㪐㪎 㪇ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐㪎 㪉ᐕ 㪈㪐㪎 㪊ᐕ 㪈㪐㪎 㪋ᐕ 㪈㪐㪎 㪌ᐕ 㪈㪐㪎 㪍ᐕ 㪈㪐㪎 㪎ᐕ 㪈㪐㪎 㪏ᐕ 㪈㪐㪎 㪐ᐕ 㪈㪐㪏 㪇ᐕ 㪈㪐㪏 㪈ᐕ 㪈㪐㪏 㪉ᐕ 㪈㪐㪏 㪊ᐕ 㪈㪐㪏 㪋ᐕ 㪈㪐㪏 㪌ᐕ 㪈㪐㪏 㪍ᐕ 㪈㪐㪏 㪎ᐕ 㪈㪐㪏 㪏ᐕ 㪈㪐㪏 㪐ᐕ 㪈㪐㪐 㪇ᐕ 㪈㪐㪐 㪈ᐕ 㪈㪐㪐 㪉ᐕ 㪈㪐㪐 㪊ᐕ 㪈㪐㪐 㪋ᐕ 㪈㪐㪐 㪌ᐕ 㪈㪐㪐 㪍ᐕ 㪈㪐㪐 㪎ᐕ 㪈㪐㪐 㪏ᐕ 㪈㪐㪐 㪐ᐕ 㪉㪇㪇 㪇ᐕ 㪉㪇㪇 㪈ᐕ 㪉㪇㪇 㪉ᐕ 㪉㪇㪇 㪊ᐕ 㪉㪇㪇 㪋ᐕ 㪉㪇㪇 㪌ᐕ 㪉㪇㪇 㪍ᐕ 㪉㪇㪇 㪎ᐕ 㪉㪇㪇 㪏ᐕ 㪉㪇㪇 㪐ᐕ 䋦 ⥄ὼᄬᬺ₸ ቢోᄬᬺ₸ (3) 生産関数の推計 ここで、生産関数の推計式について考えよう。GDPをY、資本ストックを K、稼働率をe、労働人口をL、完全失業率をu、総実労働時間(指数)をh、 技術水準(全要素生産性TFP)をAとすると、コッブ=ダグラス型生産関数 は次のように表わされる。 Y = A(eK)α((1− u)hL)1−α (2) さらに、技術進歩率については、TFP伸び率をgとし A = A0exp(gt)、 ただし、A0=一定 (3) 5) 実際、1956 年第Ⅱ四半期∼1973 年第Ⅲ四半期の自然失業率は 1.47%、1975 年第Ⅰ四半期∼ 1995 年第Ⅳ四半期の自然失業率は 2.40%、1997 年第Ⅳ四半期以降の自然失業率は 4.56%と 求まる。さらに、第 4 図では、それぞれの期間の自然失業率の違いが段階的に生じていると仮 定して内挿法により補間している。

(7)

と仮定する。(2)式に(3)式を代入し、対数変換を施し整理すると

ln(Y )− ln((1 − u)hL) = ln(A0) + gt + α(ln(eK)− ln((1 − u)hL)) (4) を得る。これより推計式は次式のようになる。

ln(yt) = α0+ α1t + α2ln(kt) + εt (5)    ただし、y = Y /(1− u)hL、 k = eK/(1− u)hL

この(5)式の推計結果をまとめたのが第1表である6) 第 1 表 生産関数の推計結果 推計期間 α0 α1 α2 R 2 1955Ⅱ∼1975Ⅳ −1.4157 0.0108 0.3714 (−7.933) (6.740) (6.437) 0.996 1970Ⅰ∼1996Ⅳ −0.8234 0.00257 0.3882 (−12.84) (5.709) (12.76) 0.995 1987Ⅰ∼2009Ⅰ −0.6731 0.00154 0.3567 (−12.34) (3.972) (8.260) 0.971

2. GDP ギャップの推計

本節では、生産関数アプローチ、トレンドアプローチなどを用いてGDP ギャップの推計を行う7) (1) 潜在GDPによるGDPギャップの推計 ここでは、第1節での生産関数の推計結果を用いて潜在GDPを求め、現実 のGDPとの乖離を計算することによりGDPギャップを求める。いま、全産 業稼働率、完全利用労働時間指数、自然失業率、および潜在GDPをそれぞれ e∗h∗u∗Y∗で表すと、以下の関係が成立する。 Y∗= A(e∗K)α((1− u∗)h∗L)1−α (6) 6) データに関しては補注 A を参照されたい。 7) 生産関数アプローチとは、生産関数の変形式やの生産関数の推計結果を用いる方法である。 — 40 —

(8)

上式に前節で求めた推計値を代入し潜在GDPを求め、現実のGDPとともに 半対数図に描いたのが第5図である8) 第 5 図 現実の GDP と潜在 GDP 㪈㪇 㪈㪇㪅㪌 㪈㪈 㪈㪈㪅㪌 㪈㪉 㪈㪉㪅㪌 㪈㪊 㪈㪊㪅㪌 㪈 㪐 㪌 㪌 ᐕ 㪈 㪐 㪌 㪎 ᐕ 㪈 㪐 㪌 㪏 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪇 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪉 ᐕ 㪈㪐㪍 㪋ᐕ 㪈㪐㪍 㪌ᐕ 㪈㪐 㪍㪎ᐕ 㪈㪐 㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐 㪎㪉ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪋 ᐕ 㪈㪐 㪎㪍ᐕ 㪈㪐 㪎㪏ᐕ 㪈㪐 㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏 㪈ᐕ 㪈㪐 㪏㪊ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪌 ᐕ 㪈㪐 㪏㪍ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪏 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪇 ᐕ 㪈㪐 㪐㪉ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪊 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪌 ᐕ 㪈㪐㪐 㪎ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪐 ᐕ 㪉㪇㪇 㪇ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪉㪇 㪇㪋ᐕ 㪉㪇 㪇㪍ᐕ 㪉㪇㪇 㪎ᐕ ⃻ታ䈱㪞㪛㪧ኻᢙ୯ ẜ࿷㪞㪛㪧ኻᢙ୯ 次に、GDPギャップを GDPギャップ= (Y − Y∗)/Y∗ (7) と定義しよう。現実のGDPと潜在GDPの値からGDPギャップを求めて、 景気基準日付とあわせて図示したのが第6図である。 この第6図からわかるように、GDPギャップの動きは景気基準日付と極め て一致した動きをしていると言える9)。つまり、景気拡張期にはGDPギャッ プが増加し、景気後退期にはGDPギャップが低下している10)。また、第 5図 8) 全産業稼働率に関しては、稼働率が 100 である場合を完全利用度と考える。また、上で求めた 全産業稼働率の 1955 年第Ⅱ四半期∼2009 年第Ⅰ四半期の平均値は 100.26 となっている。 9) 1975 年第Ⅰ四半期∼1977 年第Ⅳ四半期の第 8 循環は唯一例外的に GDP ギャップの動きは 景気基準日付と一致していない。 10) このことと、GDP ギャップが総需要(= 現実の GDP)と潜在 GDP の乖離を表す指標であ ることを考えるなら、景気基準日付による景気拡張期と景気後退期は総需要の変化に対応して生 じていると考えられる。

(9)

第 6 図  GDP ギャップの推移 㪈㪐㪌 㪌ᐕ 㪈㪐㪌 㪍ᐕ 㪈㪐㪌 㪎ᐕ 㪈㪐㪌 㪏ᐕ 㪈㪐㪌 㪐ᐕ 㪈㪐㪍 㪇ᐕ 㪈㪐㪍 㪈ᐕ 㪈㪐㪍 㪉ᐕ 㪈㪐㪍 㪊ᐕ 㪈㪐㪍 㪋ᐕ 㪈㪐㪍 㪌ᐕ 㪈㪐㪍 㪍ᐕ 㪈㪐㪍 㪎ᐕ 㪈㪐㪍 㪏ᐕ 㪈㪐㪍 㪐ᐕ 㪈㪐㪎 㪇ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐㪎 㪉ᐕ 㪈㪐㪎 㪊ᐕ 㪈㪐㪎 㪋ᐕ 㪈㪐㪎 㪌ᐕ 㪈㪐㪎 㪍ᐕ 㪈㪐㪎 㪎ᐕ 㪈㪐㪎 㪏ᐕ 㪈㪐㪎 㪐ᐕ 㪈㪐㪏 㪇ᐕ 㪈㪐㪏 㪈ᐕ 㪈㪐㪏 㪉ᐕ 㪈㪐㪏 㪊ᐕ 㪈㪐㪏 㪋ᐕ 㪈㪐㪏 㪌ᐕ 㪈㪐㪏 㪍ᐕ 㪈㪐㪏 㪎ᐕ 㪈㪐㪏 㪏ᐕ 㪈㪐㪏 㪐ᐕ 㪈㪐㪐 㪇ᐕ 㪈㪐㪐 㪈ᐕ 㪈㪐㪐 㪉ᐕ 㪈㪐㪐 㪊ᐕ 㪈㪐㪐 㪋ᐕ 㪈㪐㪐 㪌ᐕ 㪈㪐㪐 㪍ᐕ 㪈㪐㪐 㪎ᐕ 㪈㪐㪐 㪏ᐕ 㪈㪐㪐 㪐ᐕ 㪉㪇㪇 㪇ᐕ 㪉㪇㪇 㪈ᐕ 㪉㪇㪇 㪉ᐕ 㪉㪇㪇 㪊ᐕ 㪉㪇㪇 㪋ᐕ 㪉㪇㪇 㪌ᐕ 㪉㪇㪇 㪍ᐕ 㪉㪇㪇 㪎ᐕ 㪉㪇㪇 㪏ᐕ 㪉㪇㪇 㪐ᐕ 㪄㪈㪉 㪄㪐 㪄㪍 㪄㪊 㪇 㪊 㪍 㪐 㪈㪉 䋦 からわかるように、GDP対数値には2つの屈折点が見て取れる。本稿では、 村田(2009)に倣って、1つ目のトレンド屈折点を1971年第Ⅳ四半期、2つ目 の屈折点を1991年第Ⅰ四半期としよう。その上で、1955年第Ⅱ四半期∼1971 年第Ⅳ四半期を高度成長期、1972年第Ⅰ四半期∼1991年第Ⅰ四半期を安定成 長期、1991年第Ⅱ四半期∼2009年第Ⅱ四半期を低成長期と名づけよう11)。さ らに、それぞれの期間のGDPギャップの平均値を求めると、高度成長期が 1.57%、安定成長期が0.96%、低成長期が-0.60%と計算される。このことから、 高度成長期に比べ安定成長期はGDPギャップが小さくなっており、さらに、 低成長期に入ってはGDPギャップの平均値がマイナスとなっていることがわ かる。これは、1991年第Ⅱ四半期以降の低成長期では、総需要が潜在GDPを 平均的に下回っていることを意味している。 (2) 分配率データによるGDPギャップの推計 次に、潜在GDPを求めずにGDPギャップを推計する方法について考察し よう。(2)(6)式から、Y /Y∗を求めると Y /Y∗= (e/e∗)α((1− u)h/(1 − u∗)h∗)1−α (8) となり、さらに、 11) バブル崩壊後の「失われた十年」の原因を探るのが本稿の目的であるので、1991 年第Ⅰ四半期 を屈折点とするのは妥当であろう。 — 42 —

(10)

ln Y − ln Y∗= α(ln e− ln e∗) + (1− α)(ln(1 − u)h − ln(1 − u∗)h∗) (9) を得る。ここで、資本分配率αについて生産関数の推計値を用いず、労働 分配率1− αをSNAデータから求めて利用する。労働分配率についてはいく つかの定義が考えられるが、本稿では鎌田・増田(2000)にしたがって、次式 の定義を採用する12) 労働分配率=雇用者所得/国民所得 この定義にしたがって、1955年第Ⅱ四半期∼2009年第Ⅱ四半期の労働分配率 を求め図示すると第7図のようになる。この1955年第Ⅱ四半期から2009年 第Ⅱ四半期にかけての労働分配率の平均値は63.4%であり、また、高度成長期 の平均は53.1%、安定成長期の平均は66.6%、低成長期の平均は70.0%となっ ている13) 第 7 図 労働分配率の推移 㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪌㪇 㪍㪇 㪎㪇 㪏㪇 㪐㪇 㪈㪇㪇 㪈㪐㪌 㪌ᐕ 㪈㪐㪌 㪍ᐕ 㪈㪐㪌 㪎ᐕ 㪈㪐㪌 㪏ᐕ 㪈㪐㪌 㪐ᐕ 㪈㪐㪍 㪇ᐕ 㪈㪐㪍 㪈ᐕ 㪈㪐㪍 㪉ᐕ 㪈㪐㪍 㪊ᐕ 㪈㪐㪍 㪋ᐕ 㪈㪐㪍 㪌ᐕ 㪈㪐㪍 㪍ᐕ 㪈㪐㪍 㪎ᐕ 㪈㪐㪍 㪏ᐕ 㪈㪐㪍 㪐ᐕ 㪈㪐㪎 㪇ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐㪎 㪉ᐕ 㪈㪐㪎 㪊ᐕ 㪈㪐㪎 㪋ᐕ 㪈㪐㪎 㪌ᐕ 㪈㪐㪎 㪍ᐕ 㪈㪐㪎 㪎ᐕ 㪈㪐㪎 㪏ᐕ 㪈㪐㪎 㪐ᐕ 㪈㪐㪏 㪇ᐕ 㪈㪐㪏 㪈ᐕ 㪈㪐㪏 㪉ᐕ 㪈㪐㪏 㪊ᐕ 㪈㪐㪏 㪋ᐕ 㪈㪐㪏 㪌ᐕ 㪈㪐㪏 㪍ᐕ 㪈㪐㪏 㪎ᐕ 㪈㪐㪏 㪏ᐕ 㪈㪐㪏 㪐ᐕ 㪈㪐㪐 㪇ᐕ 㪈㪐㪐 㪈ᐕ 㪈㪐㪐 㪉ᐕ 㪈㪐㪐 㪊ᐕ 㪈㪐㪐 㪋ᐕ 㪈㪐㪐 㪌ᐕ 㪈㪐㪐 㪍ᐕ 㪈㪐㪐 㪎ᐕ 㪈㪐㪐 㪏ᐕ 㪈㪐㪐 㪐ᐕ 㪉㪇㪇 㪇ᐕ 㪉㪇㪇 㪈ᐕ 㪉㪇㪇 㪉ᐕ 㪉㪇㪇 㪊ᐕ 㪉㪇㪇 㪋ᐕ 㪉㪇㪇 㪌ᐕ 㪉㪇㪇 㪍ᐕ 㪉㪇㪇 㪎ᐕ 㪉㪇㪇 㪏ᐕ 㪉㪇㪇 㪐ᐕ 䋦 さらに、この労働分配率の値と前節で求めた稼働率と労働時間の完全利用水 準、自然失業率などの推計値を(9)式に代入してGDPギャップを求め、生産 関数の推計に基づいたGDPギャップとあわせて図示すると第8図のように描 ける。 12) 鎌田・増田(2000、図表 14)においては、これ以外の定義の分配率についても計算されている。 13) 第 1 表の生産関数の推計から得られた労働分配率の 1955 年第Ⅱ四半期から 2009 年第Ⅰ四半 期にかけての平均値は 62.7%となり、実際の労働分配率とほぼ等しい値となっている。

(11)

第 8 図 分配率推計による GDP ギャップ 㪄㪈㪉 㪄㪏 㪄㪋 㪇 㪋 㪏 㪈㪉 㪈 㪐㪌㪌 ᐕ 㪈 㪐㪌㪍 ᐕ 㪈㪐 㪌㪎 ᐕ 㪈㪐㪌 㪏ᐕ 㪈㪐 㪌㪐 ᐕ 㪈 㪐㪍㪇 ᐕ 㪈 㪐㪍㪈 ᐕ 㪈㪐 㪍㪉 ᐕ 㪈㪐㪍 㪊ᐕ 㪈㪐 㪍㪋 ᐕ 㪈㪐 㪍㪌 ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐 㪍㪎 ᐕ 㪈 㪐㪍㪏 ᐕ 㪈 㪐㪍㪐 ᐕ 㪈㪐 㪎㪇 ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐 㪎㪉 ᐕ 㪈㪐 㪎㪊 ᐕ 㪈㪐 㪎㪋 ᐕ 㪈㪐 㪎㪌 ᐕ 㪈㪐㪎 㪍ᐕ 㪈 㪐㪎㪎 ᐕ 㪈㪐 㪎㪏 ᐕ 㪈㪐 㪎㪐 ᐕ 㪈㪐 㪏㪇 ᐕ 㪈㪐㪏 㪈ᐕ 㪈㪐 㪏㪉 ᐕ 㪈㪐 㪏㪊 ᐕ 㪈 㪐㪏㪋 ᐕ 㪈㪐 㪏㪌 ᐕ 㪈 㪐㪏㪍 ᐕ 㪈㪐 㪏㪎 ᐕ 㪈 㪐㪏㪏 ᐕ 㪈 㪐㪏㪐 ᐕ 㪈㪐㪐 㪇ᐕ 㪈 㪐㪐㪈 ᐕ 㪈 㪐㪐㪉 ᐕ 㪈㪐㪐 㪊ᐕ 㪈㪐 㪐㪋 ᐕ 㪈㪐㪐 㪌ᐕ 㪈㪐 㪐㪍 ᐕ 㪈 㪐㪐㪎 ᐕ 㪈㪐 㪐㪏 ᐕ 㪈㪐 㪐㪐 ᐕ 㪉 㪇㪇㪇 ᐕ 㪉㪇 㪇㪈 ᐕ 㪉㪇㪇 㪉ᐕ 㪉㪇 㪇㪊 ᐕ 㪉㪇 㪇㪋 ᐕ 㪉 㪇㪇㪌 ᐕ 㪉㪇 㪇㪍 ᐕ 㪉㪇㪇 㪎ᐕ 㪉㪇 㪇㪏 ᐕ 㪉㪇㪇 㪐ᐕ 䋦 ᥊᳇ᓟㅌᦼ ಽ㈩₸ផ⸘䈮䉋䉎㪞㪛㪧䉩䊞䉾䊒 ↢↥㑐ᢙផ⸘䈮䉋䉎㪞㪛㪧䉩䊞䉾䊒 この第8図からわかるように、分配率の推計によるGDPギャップは生産関 数による推計値とほぼ同じような動きをしていると言える14)。また、生産関 数推計の場合と同様に、高度成長期、安定成長期、低成長期でのGDPギャッ プの平均値を計算すると、それぞれ0.87%、0.94%、−0.76%と求まる。ここ でも。低成長期に入ってからGDPギャップがマイナス傾向になっていること が窺える。 (3) 固定係数型生産関数によるGDPギャップの推計 生産関数アプローチの3番目として固定係数型生産関数を前提としたGDP ギャップの推計を行おう。これまでと同様に、GDPをY、資本ストックをK、 稼働率をeとし、必要資本係数をv、必要資本ストックをKW としよう。ま ず、必要資本ストックKW は、生産量と必要資本係数vによって KW = vY (10) と表される。この必要資本ストックKW に比べて実際の資本ストックKが過 剰である場合には資本ストックの稼働率を下げて、また、不足している場合に は稼働率を上げて生産が行われていると考えられるので、必要資本ストックと 現実の資本ストック、稼働率の関係は、 KW = eK (11) 14) 実際、両者の相関係数は 0.79 と求まる。 — 44 —

(12)

と表される。上式を(10)式に代入するなら、固定係数型生産関数 Y = eK/v (12) を得る。次に、資本ストックを完全利用、言い換えれば、稼働率の完全利用水 準e∗での潜在GDPを、これまでと同様にY∗とすると、 Y∗= e∗K/v (13) と表される。よって、(7)(12)(13)式より、 GDPギャップ= e/e∗− 1 (14) と求まる。完全利用の稼働率指数を100とし、前節で求めた全産業稼働率指数 を用いて、コッブ=ダグラス型生産関数による推計とともにGDPギャップを描 くと第9図のようになる。この第9図から、固定係数型生産関数によるGDP ギャップは1987年以降、コッブ=ダグラス型生産関数によるGDPギャップ と大きく乖離して変動が大きくなっていることが読み取れる15)。それにもかか わらず、高度成長期、安定成長期、低成長期の固定係数型生産関数によるGDP ギャップの平均値を求めてみると、それぞれ、1.97%、2.09%、−3.27%と計算 される。これより、固定係数型生産関数を用いたGDPギャップも、低成長期 において平均でマイナスとなっていることがわかる。 第 9 図 固定係数型生産関数による GDP ギャップ 㪈㪐㪌 㪌ᐕ 㪈㪐㪌 㪍ᐕ 㪈㪐㪌 㪎ᐕ 㪈㪐㪌 㪏ᐕ 㪈㪐㪌 㪐ᐕ 㪈㪐㪍 㪇ᐕ 㪈㪐㪍 㪈ᐕ 㪈㪐㪍 㪉ᐕ 㪈㪐㪍 㪊ᐕ 㪈㪐㪍 㪋ᐕ 㪈㪐㪍 㪌ᐕ 㪈㪐㪍 㪍ᐕ 㪈㪐㪍 㪎ᐕ 㪈㪐㪍 㪏ᐕ 㪈㪐㪍 㪐ᐕ 㪈㪐㪎 㪇ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐㪎 㪉ᐕ 㪈㪐㪎 㪊ᐕ 㪈㪐㪎 㪋ᐕ 㪈㪐㪎 㪌ᐕ 㪈㪐㪎 㪍ᐕ 㪈㪐㪎 㪎ᐕ 㪈㪐㪎 㪏ᐕ 㪈㪐㪎 㪐ᐕ 㪈㪐㪏 㪇ᐕ 㪈㪐㪏 㪈ᐕ 㪈㪐㪏 㪉ᐕ 㪈㪐㪏 㪊ᐕ 㪈㪐㪏 㪋ᐕ 㪈㪐㪏 㪌ᐕ 㪈㪐㪏 㪍ᐕ 㪈㪐㪏 㪎ᐕ 㪈㪐㪏 㪏ᐕ 㪈㪐㪏 㪐ᐕ 㪈㪐㪐 㪇ᐕ 㪈㪐㪐 㪈ᐕ 㪈㪐㪐 㪉ᐕ 㪈㪐㪐 㪊ᐕ 㪈㪐㪐 㪋ᐕ 㪈㪐㪐 㪌ᐕ 㪈㪐㪐 㪍ᐕ 㪈㪐㪐 㪎ᐕ 㪈㪐㪐 㪏ᐕ 㪈㪐㪐 㪐ᐕ 㪉㪇㪇 㪇ᐕ 㪉㪇㪇 㪈ᐕ 㪉㪇㪇 㪉ᐕ 㪉㪇㪇 㪊ᐕ 㪉㪇㪇 㪋ᐕ 㪉㪇㪇 㪌ᐕ 㪉㪇㪇 㪍ᐕ 㪉㪇㪇 㪎ᐕ 㪉㪇㪇 㪏ᐕ 㪉㪇㪇 㪐ᐕ 䋦 㪄㪉㪋 㪄㪈㪏 㪄㪈㪉 㪄㪍 㪇 㪍 㪈㪉 ᥊᳇ᓟㅌᦼ ࿕ቯଥᢙဳ↢↥㑐ᢙ 䉮䉾䊑䋽䉻䉫䊤䉴ဳ↢↥㑐ᢙ 15) 実際、1955 年第Ⅱ四半期∼1986 年第Ⅳ四半期の両者の相関係数は 0.79 と求まり、1955 年第 Ⅱ四半期∼2009 年第Ⅱ四半期の相関係数は 0.67 となっている。

(13)

(4) Bayoumiの方法によるGDPギャップの推計 Bayoumi(1999)は、GDP対数値の変動をタイムトレンドと総需要の過不 足指標xtの2つの変数で説明している。本稿では、タイムトレンドとして2 次多項式を仮定し、以下のように定式化しよう。 ln GDPt= α0+ β1t + β2t2+ γ1xt+ εt (15) したがって、潜在GDPとGDPギャップは ln潜在GDPt= β0+ βt + β2t2+ εt (16) GDPギャップt= (exp(α0− β0+ γ1x)− 1) × 100 (17) と表される16)。さらに、総需要の過不足指標x tとして、Bayoumi(1999)は、 失業率、有効求人倍率、稼働率を採用している。本稿では、トレンド除去後の 累積DIと全産業稼働率を採用しよう17) まず、潜在GDPを表している2次多項式を推計すると以下のような結果を 得る。 ln潜在GDP (1023.6)   = 10.68 + (114.97)   0.0254t− ( (−65.89)6.5E−05)t2 (18) R2= 0.995 さらに、ln GDPから上式の推計値を差し引いた残差をトレンド除去後の累積 DIに回帰させると、 ln GDP− ln潜在GDP = (0.0727)   0.00021 + ( (9.633)   9.71E−05)累積DI (19)   R2= 0.301 となる。同様に、ln GDP− ln潜在GDPを全産業稼働率に回帰させると以下 の結果を得る。 16) (15)(16) 式より、ln GDP− ln 潜在 GDP = α0− β0+ γ1xtと求まり、GDP ギャップの 定義 (7) 式から (17) 式を得る。 17) このトレンド除去後の累積 DI 指標は景気基準日付と極めて整合的な動きをしている。ただし、 トレンド線は 3 次多項式を適用した。推計結果は以下のとおりである。また、括弧内の値は t 値である。   累積 DI = (−4.233)− 187.23 + (60.5)   34.69t (−29.03)− 0.05801t2 + ( (19.35)   3.81E− 05)t3、 R2 = 0.985 — 46 —

(14)

ln GDP− ln潜在GDP = (−8.87)− 0.554 + (8.87)   0.00551全産業稼働率 (20)   R2= 0.267 上の(19)(20)式から計算されるGDPギャップを描いたのが第10図である。 この第10図から明らかなように、累積DIを用いたBayoumiによるアプロー チは、GDPギャップの変動が景気基準日付と極めて整合的となっているのが 特徴である。 第 10 図  Bayoumi のアプローチによる GDP ギャップ 㪈㪐㪌㪌ᐕ 㪈㪐㪌㪍ᐕ 㪈㪐㪌㪎ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐㪍㪎ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎㪇ᐕ 㪈㪐㪎㪈ᐕ 㪈㪐㪎㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋ᐕ 㪈㪐㪎㪌ᐕ 㪈㪐㪎㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏㪉ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋ᐕ 㪈㪐㪏㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋ᐕ 㪈㪐㪐㪌ᐕ 㪈㪐㪐㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪈㪐㪐㪐ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪋ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇㪏ᐕ 㪄㪈㪉 㪄㪏 㪄㪋 㪇 㪋 㪏 㪈㪉 䋦 ᥊᳇ᓟㅌᦼ 㪙㪸㫐㫆㫌㫄㫀㩷䋨Ⓙ௛₸䋩 㪙㪸㫐㫆㫌㫄㫀㩷䋨⚥Ⓧ㪛㪠䋩 さらに、高度成長期、安定成長期、低成長期におけるGDPギャップの平均 値を計算すると、Bayoumi(累積DI)の場合はそれぞれ、−0.32%0.78%−0.56%となり、また、Bayoumi(全産業稼働率)の場合は、それぞれ、0.83%、 0.86%、−1.82%と求まる。このBayoumiの方法においても、低成長期にお いては平均GDPギャップがマイナスとなっていることが読み取れる。

3. 潜在成長率の推計

本節では、生産関数アプローチ、トレンドアプローチ、オーカン法則を用い て潜在成長率を求める。

(15)

(1) 生産関数アプローチによる潜在成長率の推計 まず、コッブ=ダグラス型生産関数の推計によって求めた潜在GDPから潜 在成長率を求めよう。第5図に描かれている潜在GDPの推移から潜在成長率 を求め図示すると第11図のようなる。この第11図からもわかるように、戦後 の潜在成長率は1971年∼1972年と1990年∼1992年にかけて急激な減少を 経験している。そのため、高度成長期(1956年第Ⅱ四半期∼1971年第Ⅳ四半 期)、安定成長期(1972年第Ⅰ四半期∼1991年第Ⅰ四半期)、低成長期(1991 年第Ⅱ四半期∼2009年第Ⅰ四半期)における平均潜在成長率を計算すると、そ れぞれ8.89%、4.09%、1.42%と求まる。これを図示したのが第11図の潜在 成長率トレンドである。 第 11 図 生産関数の推計による潜在成長率 㪄㪈㪇 㪄㪏 㪄㪍 㪄㪋 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪉 㪈㪋 㪈㪍 㪈㪐㪌㪍 ᐕ 㪈㪐㪌㪎 ᐕ 㪈㪐㪌㪎 ᐕ 㪈㪐㪌㪏 ᐕ 㪈㪐㪌㪐 ᐕ 㪈㪐㪍㪇 ᐕ 㪈㪐㪍㪇 ᐕ 㪈㪐㪍㪈 ᐕ 㪈㪐㪍㪉 ᐕ 㪈㪐㪍㪊 ᐕ 㪈㪐㪍㪊 ᐕ 㪈㪐㪍㪋 ᐕ 㪈㪐㪍㪌 ᐕ 㪈㪐㪍㪍 ᐕ 㪈㪐㪍㪍 ᐕ 㪈㪐㪍㪎 ᐕ 㪈㪐㪍㪏 ᐕ 㪈㪐㪍㪐 ᐕ 㪈㪐㪍㪐 ᐕ 㪈㪐㪎㪇 ᐕ 㪈㪐㪎㪈 ᐕ 㪈㪐㪎㪉 ᐕ 㪈㪐㪎㪉 ᐕ 㪈㪐㪎㪊 ᐕ 㪈㪐㪎㪋 ᐕ 㪈㪐㪎㪌 ᐕ 㪈㪐㪎㪌 ᐕ 㪈㪐㪎㪍 ᐕ 㪈㪐㪎㪎 ᐕ 㪈㪐㪎㪏 ᐕ 㪈㪐㪎㪏 ᐕ 㪈㪐㪎㪐 ᐕ 㪈㪐㪏㪇 ᐕ 㪈㪐㪏㪈 ᐕ 㪈㪐㪏㪈 ᐕ 㪈㪐㪏㪉 ᐕ 㪈㪐㪏㪊 ᐕ 㪈㪐㪏㪋 ᐕ 㪈㪐㪏㪋 ᐕ 㪈㪐㪏㪌 ᐕ 㪈㪐㪏㪍 ᐕ 㪈㪐㪏㪎 ᐕ 㪈㪐㪏㪎 ᐕ 㪈㪐㪏㪏 ᐕ 㪈㪐㪏㪐 ᐕ 㪈㪐㪐㪇 ᐕ 㪈㪐㪐㪇 ᐕ 㪈㪐㪐㪈 ᐕ 㪈㪐㪐㪉 ᐕ 㪈㪐㪐㪊 ᐕ 㪈㪐㪐㪊 ᐕ 㪈㪐㪐㪋 ᐕ 㪈㪐㪐㪌 ᐕ 㪈㪐㪐㪍 ᐕ 㪈㪐㪐㪍 ᐕ 㪈㪐㪐㪎 ᐕ 㪈㪐㪐㪏 ᐕ 㪈㪐㪐㪐 ᐕ 㪈㪐㪐㪐 ᐕ 㪉㪇㪇㪇 ᐕ 㪉㪇㪇㪈 ᐕ 㪉㪇㪇㪉 ᐕ 㪉㪇㪇㪉 ᐕ 㪉㪇㪇㪊 ᐕ 㪉㪇㪇㪋 ᐕ 㪉㪇㪇㪌 ᐕ 㪉㪇㪇㪌 ᐕ 㪉㪇㪇㪍 ᐕ 㪉㪇㪇㪎 ᐕ 㪉㪇㪇㪏 ᐕ 㪉㪇㪇㪏 ᐕ 䋦 㪞㪛㪧ᚑ㐳₸ ẜ࿷ᚑ㐳₸ ẜ࿷ᚑ㐳₸䊃䊧䊮䊄 次に、分配率データによるGDPギャップから潜在成長率を推計しよう。 (3)(6)式から、潜在GDPは Y∗= A0exp(gt)(e∗K)α((1− u∗)h∗L)1−α (21) と表される。これより、潜在成長率Y˙/Y ˙ Y∗/Y∗= g + α ˙K/K + (1− α)˙h/h (22) と求められる18)。ただし、 TFP成長率を表すgに関しては g = ˙Y /Y − α(( ˙e/e) + ˙K/K)− (1 − α)˙h/h (23) 18) 潜在 GDP の場合、稼働率は 100 に固定されている。 — 48 —

(16)

から求めている。実際には、(23)式から計算された時系列データの各期間につ いての平均値を求めている19)。この (23)式と分配率データを用いて潜在成長 率を求め、生産関数の推計から求めた潜在成長率とあわせて図示すると第12 図のように描ける20)。さらに、高度成長期、安定成長期、低成長期の平均潜在 成長率を潜在成長率トレンドとして示している。分配率データから求めた高度 成長期、安定成長期、低成長期の潜在成長率トレンドは、それぞれ、9.04%、 4.39%、1.39%となっている21) 第 12 図 分配率データによる潜在成長率 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪉 㪈㪋 㪈㪐㪌㪍ᐕ 㪈㪐㪌㪎ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐㪍㪎ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎㪇ᐕ 㪈㪐㪎㪈ᐕ 㪈㪐㪎㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋ᐕ 㪈㪐㪎㪌ᐕ 㪈㪐㪎㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏㪉ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋ᐕ 㪈㪐㪏㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋ᐕ 㪈㪐㪐㪌ᐕ 㪈㪐㪐㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪈㪐㪐㪐ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪋ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇㪏ᐕ 㪉㪇㪇㪐ᐕ 䋦 ಽ㈩₸䊂䊷䉺䈮䉋䉎ẜ࿷ᚑ㐳₸ ↢↥㑐ᢙផ⸘䈮䉋䉎ẜ࿷ᚑ㐳₸ ẜ࿷ᚑ㐳₸䊃䊧䊮䊄 (2) トレンドアプローチによる潜在成長率の推計 まず、タイムトレンドとして2次多項式を仮定するBayoumiの方法を用い て潜在成長率を求めよう。潜在GDPは、第2節の(16)式のように、 ln潜在GDPt= β0+ βt + β2t2+ εt (16) と表される。第2節で求めた2次多項式の回帰分析の推計結果から潜在成長 率を計算し図示すると第13図のようになる。また、高度成長期、安定成長期、 19) この結果、平均 TFP 成長率は高度成長期で 3.54%、安定成長期で 1.61%、低成長期で 0.78%と 計算される。 20) 生産関数推計による潜在成長率との相関係数は 0.996 ときわめて高い。 21) 高度成長期、安定成長期、低成長期の潜在成長率トレンドは、生産関数の推計から求めた潜在成 長率トレンドに比べ、それぞれ 0.15%ポイント、0.30%ポイント、−0.03%ポイント大きいが ほとんど同じ値になっている。

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低成長期の潜在成長率トレンドとして平均潜在成長率を計算すると、それぞ れ、9.44%、4.15%、1.53%と求まる22) 第 13 図  Bayoumi アプローチによる潜在成長率 㪄㪍 㪄㪋 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪉 㪈㪋 㪈㪍 㪈㪐㪌㪍ᐕ 㪈㪐㪌㪎ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐㪍㪎ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎㪇ᐕ 㪈㪐㪎㪈ᐕ 㪈㪐㪎㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋ᐕ 㪈㪐㪎㪌ᐕ 㪈㪐㪎㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏㪉ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋ᐕ 㪈㪐㪏㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋ᐕ 㪈㪐㪐㪌ᐕ 㪈㪐㪐㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪈㪐㪐㪐ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪋ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇㪏ᐕ 䋦 ẜ࿷ᚑ㐳₸ ↢↥㑐ᢙ䈮䉋䉎ẜ࿷ᚑ㐳₸ ẜ࿷ᚑ㐳₸䊃䊧䊮䊄 次に、GDP成長率の屈折トレンドを前提とした潜在成長率を求める。第5 図からわかるように、実質GDPの対数値の推移には2つの屈折点があるこ とが読み取れる。ここでも、1つ目のトレンド屈折点を1971年第Ⅳ四半期、2 つ目の屈折点を1991年第Ⅰ四半期とし、1956年第Ⅱ四半期∼1971年第Ⅳ四 半期、1972年第Ⅰ四半期∼1991年第Ⅰ四半期、1991年第Ⅱ四半期∼2008年 第Ⅰ四半期のGDP成長率の平均値を潜在成長率トレンドとして求めよう23) このようにして求めた潜在成長率を現実の成長率と合わせて描いたのが第14 図である。さらに、第14図における潜在成長率は、高度成長期が9.42%、安 定成長期が4.60%、低成長期が0.94%と求まる。 22) 第 13 図には、生産関数推計による潜在成長率があわせて描かれている。このグラフから明らか なように、Bayoumi の方法による潜在成長率は、生産関数による潜在成長率に比べて大きく変 動している。これは、(16) 式からわかるように、潜在 GDP の推計における撹乱項の動きを反 映していると考えられる。 23) 一つ目の屈折点の他の候補としては、第 6 循環の景気の山である 1970 年第Ⅲ四半期と第 7 循 環の景気の山である 1973 年第Ⅳ四半期が考えられる。副島(1994)においても、1970 年第 Ⅳ四半期から 1973 年第Ⅳ四半期にかけて屈折点のある可能性が指摘され、1971 年第Ⅲ四半期 を屈折点として採用している。本稿の屈折点も、この点を考慮して、1971 年第Ⅳ四半期を採用 した。二つ目の屈折点は、「失われた十年」の始まった 1991 年第 1 四半期としている。 — 50 —

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第 14 図 屈折トレンドによる潜在成長率 㪄㪈㪇 㪄㪌 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪈㪐㪌 㪍ᐕ 㪈㪐㪌 㪎ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍 㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐㪍 㪎ᐕ 㪈㪐㪍 㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎 㪇ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐㪎 㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋ᐕ 㪈㪐㪎㪌ᐕ 㪈㪐㪎 㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏 㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏 㪉ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋ᐕ 㪈㪐㪏 㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏 㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐 㪇ᐕ 㪈㪐㪐 㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋ᐕ 㪈㪐㪐㪌ᐕ 㪈㪐㪐 㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪈㪐㪐㪐ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇 㪋ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇 㪍ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇 㪏ᐕ 㪉㪇㪇㪐ᐕ 㪞㪛㪧ᚑ㐳₸ ẜ࿷ᚑ㐳₸ (3) オーカン法則による潜在成長率の推計 次に、オーカン係数の推計から潜在成長率を求めよう。Okun(1962)は3つ の方法でGDPギャップと失業率の関係であるオーカン法則を求めているが、 ここでは、現実のGDPが潜在GDPに平均的にほぼ等しいことを前提として いるGDP成長率と失業率の前期差との関係から潜在成長率を求めよう。具体 的には、t期のGDPをYt、潜在GDPをYt∗、GDP成長率をgt、潜在成長率 をg∗t、失業率をutとするなら、オーカン法則は次式のように表される24)。 gt− g∗t = β(ut− ut−1)、β < 0 (24) 実際の推計式は gt= gt∗+ β(ut− ut−1) + εt (25) となる。これまでと同様、高度成長期、安定成長期、低成長期の3つの期間を 分けて上式の推計を行った。推計結果は第2表のように示される25)。この第 2表の推計結果より、高度成長期、安定成長期、低成長期の潜在成長率トレン ドは、それぞれ、9.06%、4.70%と1.39%であることがわかる。この潜在成長 率トレンドを実際のGDP成長率とともに図示したのが第15図である26) 24) ただし、gt= (Yt− Yt−1)/Yt−1、g∗t = (Y t − Y t−1)/Yt∗−1である。また、(24) 式の導出に ついては補注 B を参照されたい。 25) 実際の推計においては、四半期データを用い、GDP 成長率に関しては前年同期比を、失業率に 関しては前年同期差を採用している。 26) また、第 2 表から、戦後のわが国のオーカン係数は、3.60∼4.21 であることがわかる。

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第 2 表 オーカン法則の推計結果 推計期間 g∗ β R2 1956Ⅱ∼1971Ⅳ 9.063 −4.21 (24.55) (−2.70) 0.092 1972Ⅰ∼1991Ⅰ 4.697 −3.78 (17.40) (−3.20) 0.108 1991Ⅱ∼2009Ⅱ 1.388 −3.60 (6.453) (−6.67) 0.376 第 15 図 オーカン法則による潜在成長率 㪄㪈㪇 㪄㪏 㪄㪍 㪄㪋 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪉 㪈㪋 㪈㪍 㪈㪐㪌㪍ᐕ 㪈㪐㪌㪎ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐㪍㪎ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎㪇ᐕ 㪈㪐㪎㪈ᐕ 㪈㪐㪎㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋ᐕ 㪈㪐㪎㪌ᐕ 㪈㪐㪎㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏㪉ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋ᐕ 㪈㪐㪏㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋ᐕ 㪈㪐㪐㪌ᐕ 㪈㪐㪐㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪈㪐㪐㪐ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪋ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇㪏ᐕ 㪉㪇㪇㪐ᐕ 䋦 㪞㪛㪧ᚑ㐳₸ ẜ࿷ᚑ㐳₸

4. 「失われた十年」の原因は何か

本節では、これまでの分析結果から、「失われた十年」の原因を探っていく。 (1) GDPギャップ平均値と潜在成長率トレンド まず、高度成長期、安定成長期、低成長期における、推計方法ごとのGDP ギャップ平均値と潜在成長率トレンドについてみてみよう。まず、GDPギャッ プ平均値について表にまとめたのが第3表である27) この第3表からもわかるように、1991年第Ⅱ四半期以降の低成長期におい ては、どの推計方法においてもGDPギャップの平均値はマイナス値となって いる。これは、低成長期に入ってから平均的に総需要が総供給(潜在GDP) 27) 第 3 表の最下段の平均値はさまざまな推計方法にわたっての単純平均であり、あくまでも一つ の目安に過ぎない。 — 52 —

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第 3 表 推計方法による GDP ギャップ平均値の比較 推計方法 高度成長期 安定成長期 低成長期 1956Ⅱ∼1971Ⅳ 1972Ⅰ∼1991Ⅰ 1991Ⅱ∼2009Ⅱ 生産関数による推計 1.57% 0.96% −0.60% 分配率による推計 0.87% 0.94% −0.76% 固定係数型生産関数 1.97% 2.09% −3.27% Bayoumi(累積 DI) −0.32% 0.78% −0.56% Bayoumi(稼動率) 0.83% 0.86% −1.82% 平均 0.984% 1.126% −1.402% を下回っていることを意味する。この結果からは、「失われた十年」の原因の 一つは需要不足と考えることができる。 次に、生産関数アプローチ、トレンドアプローチ、オーカン法則によって求 められた潜在成長率トレンドに関する比較を行おう。これを表にしたのが第4 表である28)。この第 4表から、高度成長期の潜在成長率トレンドは8.89%∼ 9.44%、安定成長期の潜在成長率トレンドは4.10%∼4.70%、低成長期の潜在 成長率トレンドは0.94%∼1.53%であることがわかる。この事実からは、「失 われた十年」の原因は供給要因であると言うことができる。 第 4 表 推計方法による潜在成長率トレンドの比較 推計方法 高度成長期 安定成長期 低成長期 1956Ⅱ∼1971Ⅳ 1972Ⅰ∼1991Ⅰ 1991Ⅱ∼2009Ⅱ 生産関数による推計 8.89% 4.09% 1.42% 分配率による推計 9.04% 4.39% 1.39% Bayoumi 推計 9.44% 4.15% 1.53% 屈折トレンド 9.42% 4.60% 0.94% オーカン法則による推計 9.06% 4.70% 1.39% 平均 9.17% 4.39% 1.33% 28) 第 4 表の最下段の平均値もさまざまな推計方法の結果の単純平均であり、あくまでも一つの目 安に過ぎない。

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つまり、第3表からは「失われた十年」の原因はマイナスのGDPギャップ に示される総需要不足として捕らえることができ、第4表からは潜在成長率の 低下が原因であると考えることができる。言い換えれば、「失われた十年」の 原因は需要不足とも供給能力の低下のどちらの要因も関係していると言える。 しかしながら、GDPギャップと潜在成長率は異なる指標であるために、「失わ れた十年」に関する分析結果に相違が生じている可能性もある。この点を詳し く見るために、以下ではGDPギャップと潜在成長率の関係を見ていく。 (2) GDPギャップと潜在成長率の関係 GDPギャップは基本的にGDPの水準値から求められる指標であるが、潜 在成長率はGDPの変化率指標である。この指標の違いによって、「失われた 十年」の原因に対するGDPギャップと潜在成長率の結果に相違が生じている ことも考えられため、GDPギャップと潜在成長率の関係を明らかにし、両者 を同じ変化率指標で捉えることにしたい。 そこで、GDPギャップと潜在成長率の関係を見るために、GDPギャップ をγとすると、 GDPギャップ= (Y − Y∗)/Y∗= γ (26) と表せる。第2節でも述べたように、GDPギャップがプラスの場合は総需要 (現実のGDP)が総供給(潜在GDP)を上回っており、逆に、マイナスの場 合は総供給が総需要を上回っていると考えられる。したがって、 γQ 0 ⇔総需要Q総供給 (27) の関係が成立する。さらに、(26)式より Y = (1 + γ)Y∗ (28) となり、時間で微分して整理すると、 ˙ Y /Y − ˙Y∗/Y∗= ˙γ/(1 + γ) (29) を得る。上式と(26)式より、GDP成長率と潜在成長率との乖離は、GDPギャッ プγの変化率、言い換えれば、総需要と総供給の乖離の変化率と捉えること — 54 —

(22)

ができる。この総需要と総供給の乖離の変化率であるGDP成長率と潜在成長 率との乖離を示したのが第16図である。第16図には、潜在成長率を生産関 数、屈折トレンド、オーカン法則、Bayoumiの方法で求めた場合の乖離が描 かれている。この第16図からもわかるように、Bayoumiのアプローチを除い て、GDP成長率と潜在成長率の乖離はほとんど同じ動きを示している。つま り、潜在成長率をどのように求めようが、GDPギャップの変化率(あるいは、 GDP成長率と潜在成長率の乖離)の推移にはそれほど大きな影響を与えない と言える29) 第 16 図  GDP 成長率と潜在成長率の乖離 㪄㪈㪇 㪄㪏 㪄㪍 㪄㪋 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪐㪌 㪍ᐕ 㪈㪐㪌 㪎ᐕ 㪈㪐㪌 㪏ᐕ 㪈㪐㪌 㪐ᐕ 㪈㪐㪍 㪇ᐕ 㪈㪐㪍 㪈ᐕ 㪈㪐㪍 㪉ᐕ 㪈㪐㪍 㪊ᐕ 㪈㪐㪍 㪋ᐕ 㪈㪐㪍 㪌ᐕ 㪈㪐㪍 㪍ᐕ 㪈㪐㪍 㪎ᐕ 㪈㪐㪍 㪏ᐕ 㪈㪐㪍 㪐ᐕ 㪈㪐㪎 㪇ᐕ 㪈㪐㪎 㪈ᐕ 㪈㪐㪎 㪉ᐕ 㪈㪐㪎 㪊ᐕ 㪈㪐㪎 㪋ᐕ 㪈㪐㪎 㪌ᐕ 㪈㪐㪎 㪍ᐕ 㪈㪐㪎 㪎ᐕ 㪈㪐㪎 㪏ᐕ 㪈㪐㪎 㪐ᐕ 㪈㪐㪏 㪇ᐕ 㪈㪐㪏 㪈ᐕ 㪈㪐㪏 㪉ᐕ 㪈㪐㪏 㪊ᐕ 㪈㪐㪏 㪋ᐕ 㪈㪐㪏 㪌ᐕ 㪈㪐㪏 㪍ᐕ 㪈㪐㪏 㪎ᐕ 㪈㪐㪏 㪏ᐕ 㪈㪐㪏 㪐ᐕ 㪈㪐㪐 㪇ᐕ 㪈㪐㪐 㪈ᐕ 㪈㪐㪐 㪉ᐕ 㪈㪐㪐 㪊ᐕ 㪈㪐㪐 㪋ᐕ 㪈㪐㪐 㪌ᐕ 㪈㪐㪐 㪍ᐕ 㪈㪐㪐 㪎ᐕ 㪈㪐㪐 㪏ᐕ 㪈㪐㪐 㪐ᐕ 㪉㪇㪇 㪇ᐕ 㪉㪇㪇 㪈ᐕ 㪉㪇㪇 㪉ᐕ 㪉㪇㪇 㪊ᐕ 㪉㪇㪇 㪋ᐕ 㪉㪇㪇 㪌ᐕ 㪉㪇㪇 㪍ᐕ 㪉㪇㪇 㪎ᐕ 㪉㪇㪇 㪏ᐕ 㪉㪇㪇 㪐ᐕ 䋦䊘䉟䊮䊃 ↢↥㑐ᢙ ዮ᛬䊃䊧䊮䊄 䉥䊷䉦䊮ᴺೣ 㪙㪸㫐㫆㫌㫄㫀 (3) GDP成長率の要因分解 このように、GDP成長率と潜在成長率との乖離は総需要と総供給の乖離の 変化率と見なすことができる。これは逆に言うと、GDP成長率を次のように 分解できることを意味している。 GDP成長率=潜在成長率(供給要因) +総需要と総供給の乖離の変化(需要要因) (30) 29) 実際、潜在成長率を生産関数で求めた場合と屈折トレンドで求めた場合の GDP 成長率残差の 相関係数は 0.94、屈折トレンドとオーカン法則の間では 0.99、生産関数とオーカン法則の間で は 0.96 となっている。

(23)

このGDP成長率の供給要因と需要要因への分解を、生産関数による推計につ いて図示したのが第17図である。第17図からわかるように、GDP成長率の 変動の基本的要因は供給要因であり、また、二度にわたるGDP成長率の低下 は潜在成長率の低下によって生じている可能性が高い。この点を詳しく見るた めに、高度成長期、安定成長期、低成長期のそれぞれの期間における需要要因 と供給要因の寄与度の平均値を求めたのが第5表である30) 第 17 図 生産関数推計による GDP 成長率の要因分解 㪄㪈㪇 㪄㪏 㪄㪍 㪄㪋 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪉 㪈㪋 㪈㪍 㪈㪐㪌㪍ᐕ 㪈㪐㪌㪎ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐㪍㪎ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎㪇ᐕ 㪈㪐㪎㪈ᐕ 㪈㪐㪎㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋ᐕ 㪈㪐㪎 㪌ᐕ 㪈㪐㪎㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏㪉ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋ᐕ 㪈㪐㪏㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋ᐕ 㪈㪐㪐㪌ᐕ 㪈㪐㪐㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪈㪐㪐㪐ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪋ᐕ 㪉㪇㪇㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇㪏ᐕ 㪉㪇㪇㪐ᐕ 䋦 㔛ⷐⷐ࿃䋨ẜ࿷ᚑ㐳₸䈎䉌䈱ਵ㔌䋩 ଏ⛎ⷐ࿃䋨ẜ࿷ᚑ㐳₸䋩 㪞㪛㪧ᚑ㐳₸ 第 5 表 生産関数推計による GDP 成長率の寄与度分解 高度成長期 安定成長期 低成長期 1956Ⅱ∼1971Ⅳ 1972Ⅰ∼1991Ⅰ 1991Ⅱ∼2009Ⅱ GDP 成長率トレンド 9.42% 4.60% 0.94% 供給要因の平均寄与度 8.89% 4.09% 1.42% 需要要因の平均寄与度 0.53% 0.51% −0.48% この第5表から、バブル崩壊後のGDP成長率トレンドは、それ以前と比べ て平均で3.66%ポイント低下している。それに対して、供給要因と需要要因は それぞれ、2.67%ポイントと0.99%ポイントの低下となっている。これより、 バブル崩壊後の「失われた十年」のGDP成長率トレンドの低下の約73%は供 給要因であり、約27%が需要要因であると言える31)。したがって、1991年第 30) ここで、GDP 成長率トレンドは、各期間における GDP 成長率の平均値によって求めている。 また、低成長期の需要要因の平均寄与度がマイナスになっていることに注意すべきであろう。 31) この値は次のようにして求まる。(2.66%ポイント÷ 3.66%ポイント)× 100%=73.2%、(0.98% ポイント÷ 3.66%ポイント)× 100%=26.8%。同様の計算を高度成長期から安定成長期への — 56 —

(24)

Ⅱ四半期以降のGDP成長率トレンドの低下の原因としては、需要要因以上に 供給要因である潜在成長率の低下が大きく関与していると言える。同様の分析 を、潜在成長率の他の推計方法にも当てはめたのが第6表である32) 第 6 表  1991 年以降の GDP 成長率トレンド鈍化の要因分解 推計方法 供給要因 需要要因 生産関数による推計 73.2% 26.8% 分配率による推計 82.0% 18.0% Bayoumi 推計 71.6% 28.4% オーカン法則による推計 91.8% 8.2% 平均 79.6% 20.4% この第6表から、1991年以降のGDP成長率トレンドの鈍化の原因の約 70%∼90%が供給要因であり、残りの10%∼30%が需要要因であることがわか る。このことから、「失われた十年」の主な原因は供給要因であると見なし得る が、供給要因である潜在成長率トレンドの鈍化については注意を必要とする。 潜在成長率を規定する要因はTFP成長率、資本ストック成長率、完全利用 労働(人×時間)成長率であるが、このうち、資本ストック成長率は設備投資 の大きさに依存していることに注意すべきである。なぜなら、設備投資自体は 景気の好不況に最も敏感に反応する経済変数であるため、好況期には資本ス トック成長率は大きくなり、不況期には小さくなる傾向がある。同様に、完全 利用での労働成長率に関しても、不況期においては労働者の労働市場からの退 出によって労働力人口の減少が生じるため、労働成長率の鈍化が生じると考え られる。したがって、潜在成長率を規定する要因のうち、景気の好不況(需要 要因)の影響を受けないのはTFP成長率のみと言える。このことから、GDP 移行に関して計算すると、供給要因が 99.6%、需要要因が 0.4%と求まる。つまり、高度成長 期から安定成長期にかけての GDP 成長率の低下については、供給要因がほぼ 100%を占めて おり需要要因はほとんど影響を与えていないと言える。その意味では、バブル崩壊後の GDP 成長率の低下に対する需要要因の影響は大きなものであると言えよう。 32) 第 6 表の最下段の平均値はさまざまな推計方法にわたっての単純平均であり、あくまでも一つ の目安に過ぎない。

(25)

成長率トレンド鈍化の原因を供給要因か需要要因かのどちらであるかを厳密に 分析するためには、需要要因とTFP要因との比較を行うことが1つの方法と 考えられる。以下では、生産関数の推計データを用いて、潜在成長率をTFP 成長率、資本ストック成長率、労働成長率に分解する。 (4) 潜在成長率の要因分解 ここでは、潜在成長率の低下に関して、生産関数の推計データを用いて、 TFP、資本ストック、労働要因などへの寄与度分解を行う。(22)式と第1表 の資本分配率αの推計結果を用いるなら、潜在成長率はTFP、資本ストック、 および労働要因の寄与度に分解することができる。これを図示したのが第18 図である。 第 18 図 潜在成長率の要因分解 㪄㪋 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪉 㪈㪐㪌㪍ᐕ 㪈㪐㪌㪎ᐕ 㪈㪐㪌㪏ᐕ 㪈㪐㪌㪐ᐕ 㪈㪐㪍㪇ᐕ 㪈㪐㪍㪈ᐕ 㪈㪐㪍㪉ᐕ 㪈㪐㪍㪊ᐕ 㪈㪐㪍㪋ᐕ 㪈㪐㪍㪌ᐕ 㪈㪐㪍㪍ᐕ 㪈㪐㪍㪎ᐕ 㪈㪐㪍㪏ᐕ 㪈㪐㪍㪐ᐕ 㪈㪐㪎㪇ᐕ 㪈㪐㪎㪈ᐕ 㪈㪐㪎㪉ᐕ 㪈㪐㪎㪊ᐕ 㪈㪐㪎㪋ᐕ 㪈㪐㪎㪌ᐕ 㪈㪐㪎㪍ᐕ 㪈㪐㪎㪎ᐕ 㪈㪐㪎㪏ᐕ 㪈㪐㪎㪐ᐕ 㪈㪐㪏㪇ᐕ 㪈㪐㪏㪈ᐕ 㪈㪐㪏㪉ᐕ 㪈㪐㪏㪊ᐕ 㪈㪐㪏㪋ᐕ 㪈㪐㪏㪌ᐕ 㪈㪐㪏㪍ᐕ 㪈㪐㪏㪎ᐕ 㪈㪐㪏㪏ᐕ 㪈㪐㪏㪐ᐕ 㪈㪐㪐㪇ᐕ 㪈㪐㪐㪈ᐕ 㪈㪐㪐㪉ᐕ 㪈㪐㪐 㪊ᐕ 㪈㪐㪐㪋ᐕ 㪈㪐㪐㪌ᐕ 㪈㪐㪐㪍ᐕ 㪈㪐㪐㪎ᐕ 㪈㪐㪐㪏ᐕ 㪈㪐㪐㪐ᐕ 㪉㪇㪇㪇ᐕ 㪉㪇㪇㪈ᐕ 㪉㪇㪇㪉ᐕ 㪉㪇㪇㪊ᐕ 㪉㪇㪇㪋ᐕ 㪉㪇㪇 㪌ᐕ 㪉㪇㪇㪍ᐕ 㪉㪇㪇㪎ᐕ 㪉㪇㪇㪏ᐕ 㪉㪇㪇㪐ᐕ 䋦 ഭ௛ⷐ࿃ ⾗ᧄ䉴䊃䉾䉪 㪫㪝㪧 ẜ࿷ᚑ㐳₸ さらに、高度成長期、安定成長期、低成長期の各期間におけるTFP、資本 ストック、労働要因の平均寄与度をまとめて表にすると第7表ようになる。 この第7表からはわかるように、バブル崩壊後の低成長期においては労働 要因の平均寄与度がマイナスとなっている。このことは、1991年第Ⅱ四半期 以降、労働要因の寄与度がマイナスとなる期間が相対的に長いことからも確認 される。実際、1991年第Ⅱ四半期∼2009年第Ⅱ四半期では、労働要因の寄与 度がマイナスとなっている期間は全体の約78%となっている。さらに、労働 要因に関してもう一点指摘しておきたい。それは、潜在成長率の二度にわたる 鈍化の際に、労働要因の寄与度が一定期間大きくマイナスの値をとっているこ — 58 —

(26)

第 7 表 潜在成長率トレンドの寄与度分解 高度成長期 安定成長期 低成長期 1956Ⅱ∼1971Ⅳ 1972Ⅰ∼1991Ⅰ 1991Ⅱ∼2009Ⅱ 潜在成長率トレンド 8.89% 4.09% 1.42% TFP の平均寄与度 4.40% 1.03% 0.617% 資本ストックの平均寄与度 4.19% 2.70% 1.02% 労働要因の平均寄与度 0.30% 0.37% −0.225% とである。これは、労働市場における構造変化が生じ、その結果、失業率の増 加や総実労働時間の減少が生じていることによると考えられる。 (5) 「失われた十年」の原因は何か 最後に、「失われた十年」の原因を探るために、バブル崩壊後のGDP成長率 の低下要因について分析しよう。上でも述べたように、バブル崩壊後の1991 年第Ⅱ四半期以降のGDP成長率低下の約27%が需要要因で、約73%が供給要 因である33)。以下では、この点をさらに詳しく見るために、供給要因を TFP、 資本ストック、労働要因に分けて、バブル崩壊後のGDP成長率トレンド低下 幅の要因ごとの寄与度と寄与率を見てみる。これを表にしてまとめたのが第8 表である。第8表には、比較のために、高度成長期から安定成長期への移行期 についても掲載している。 この第8表からわかるように、バブル崩壊後の「失われた十年」における GDP成長率の低下の原因は資本ストックと需要要因であり、この二つでGDP 成長率の低下幅の約73%を説明できる34)。この点は、高度成長期から安定成 長期への移行時とは対照的である。1971年以降のGDP成長率の鈍化に関し ては、TFPの低下でGDP成長率の低下幅の約70%を、また、TFPと資本ス 33) 第 6 表の生産関数による推計を参照されたい。 34) 第 8 表からわかるように、GDP 成長率トレンド低下に最も大きく影響を与えているのが資本 ストックであり、次いで需要要因となっている。また、資本ストックと需要要因の寄与率はそれ ぞれ−45.7% と −26.8% である。

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第 8 表  GDP 成長率トレンド低下の要因分解 高度成長期∼安定成長期 安定成長期∼低成長期 GDP 成長率トレンドの変化 −4.820% ポイント −3.658% ポイント−100.0%)−100.0%) 需要要因の変化 −0.024% ポイント −0.982% ポイント (寄与率) (−0.5%)−26.8%) TFP の変化 −3.364% ポイント −0.417% ポイント (寄与率) (−69.8%)−11.4%) 資本ストックの変化 −1.492% ポイント −1.672% ポイント (寄与率) (−30.9%)−45.7%) 労働要因の変化 0.0645% ポイント −0.594% ポイント (寄与率) (+1.3%) (−16.2%) トック要因でGDP成長率の低下幅のほぼ100%を説明することができる35) このことからも、1991年のバブル崩壊後のGDP成長率の鈍化においては、需 要要因が大きな役割を果たしていると言えよう。さらに、上でも述べたように、 需要要因の影響を受けていない供給要因はTFP成長率のみであると考えられ るので、このTFP要因と需要要因を比較してみると、1991年以降のGDP成 長率トレンドの鈍化においては、TFP要因は11.4%の寄与率しかなく、需要 要因の26.8%に比べると小さいと言えよう36) これまで見てきたように、GDPギャップで見ると「失われた十年」の原因 は需要不足として解釈され、潜在成長率で見ると供給要因と見なすことができ る。しかしながら、水準指標であるGDPギャップを潜在成長率と同じ変化率 指標に変換しGDP成長率の要因分解を行うと、バブル崩壊後のGDP成長率 の鈍化は需要要因と資本ストック要因によって説明できる。上でも述べたよ うに、資本ストック成長率は景気の好不況の影響を受けるため厳密な意味で 35) 吉川(2003)においても、二度にわたる GDP 成長率低下の要因は TFP と資本ストック要因 であることが指摘されている。ただし、吉川(2003)においては、GDP 成長率と潜在成長率 の区別がないため需要要因には言及されていない。 36) 他方、高度成長期から安定成長期にかけての GDP 成長率トレンド鈍化は TFP 成長率の鈍化 によって約 70%が説明されるのである。 — 60 —

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の供給要因とは言えない。他方、純粋な供給要因であるTFP成長率の鈍化は GDP成長率トレンドの低下の11%程度を説明するにすぎない。以上のことか ら、「失われた十年」の原因は需要要因と供給要因の両方であると考えるのが 妥当であると思われる37)

結 語

以上の分析から次のことが言えよう。まず、コッブ=ダグラス型生産関数か らBayoumiアプローチまでいくつかの方法によってGDPギャップを推計し た。その結果、GDPギャップの推計からは、1991年以降の「失われた十年」 の原因として、GDPギャップ平均値がマイナス、言い換えれば、平均的に総 需要が総供給を下回っていることが明らかになった。他方、潜在成長率の推計 からは、1991年以降においては、潜在成長率トレンドが4%程度から1%程度 に低下していることが示された。このことは、「失われた十年」の原因が供給 要因であることを意味している。 このように、GDPギャップの推計からは需要要因が、潜在成長率の推計か らは供給要因が「失われた十年」の原因として浮き彫りにされた。GDPギャッ プは基本的にGDPの水準値から求められる水準指標であるが、潜在成長率は 変化率指標である。この指標の違いによって、「失われた十年」の原因に対す るGDPギャップと潜在成長率の推計結果に相違が生じていることも考えられ ため、GDPギャップと潜在成長率の関係を明らかにし、両者を同じ変化率指 標で捉えることにした。その上で、GDP成長率を供給要因(潜在成長率)と 需要要因(GDPギャップ変化率)に分解し、GDP成長率の低下要因を考察 した。その結果、約70%∼90%が供給要因であり、10%∼30%が需要要因であ るという結果が得られた。 さらに、1991年以降のGDP成長率トレンドの低下要因をさらに細かく分 析を行ったところ、資本ストック成長率の低下と需要要因でGDP成長率低下 の約73%を説明できるという結果が得られた。しかしながら、資本ストック成 37) 吉川(2003、p.38)においても、「失われた十年」の原因は需要不足と供給面の両方であると述 べられている。

(29)

長率は景気の好不況(需要要因)の影響を受けるため純粋な供給要因と見なす ことはできない。その点、TFP成長率は純粋な供給要因と見なすことができ る。このTFP成長率についてみると、1991年以降のGDP成長率トレンド鈍 化に関しては11%の寄与率しかない38)。これらのことから、「失われた十年」 の原因は需要面と供給面の双方が関係していると考えられる。

補注 A  データの出所と加工

ここでは、本稿の推計に用いたデータについて説明する。 ① GDPデータ 内閣府ホームページの「国民経済計算関連統計」に掲載されている季節調整 済四半期データを利用した。この統計表には、68SNA平成2年基準では1955 年第Ⅱ四半期∼2001年第Ⅱ四半期までのデータが、また、93SNA平成12年 基準では1994年第Ⅰ四半期∼2010年第Ⅰ四半期までのデータが掲載されて いる。本稿では、両データの重複している1994年第Ⅰ四半期∼2001年第Ⅱ四 半期までの季節調整済実質GDPの比率の平均値を用いて両データの接続を行 なった。また、GDP成長率に関しては、このデータの前年同期比によって求 めている。 ② 資本ストック 内閣府ホームページの「国民経済計算関連統計」の民間企業資本ストック 統計の取り付けベースでの民営化修正済みデータを利用している。この統計表 も、68SNA平成2年基準では1955年第Ⅰ四半期∼2000年第Ⅱ四半期までの データが、また、93SNA平成12年基準では1994年第Ⅰ四半期∼2009年第 Ⅱ四半期までのデータが掲載されている。本稿では、両データの重複している 1980年第Ⅰ四半期∼1983年第Ⅳ四半期までの民間資本ストックの比率の平均 値を用いて両データの接続を行なった。 ③ 全産業稼働率 まず、製造業稼働率は経済産業省ホームページの製造工業稼働率指数を用 38) それに対して、需要要因の寄与率は 28%である。 — 62 —

(30)

いた。また、非製造業稼働率の代理変数としては、財務省の法人企業景気予測 調査の設備判断BSIを用いた。このデータは2004年第Ⅱ四半期から存在する が、それ以前のデータとしては、法人企業統計調査の設備判断BSIが1983年 第Ⅱ四半期から利用できるので接続している。この設備判断BSIを稼働率に 変換するために、製造業稼働率と製造業設備判断BSIの関係を求め、それを 用いて非製造業設備判断BSIから非製造業稼働率を推計した。 実際に、製造業稼働率と製造業設備判断BSIの関係は次のように推計され る。ただし、推計値の下の括弧内の数値はt値である。 製造業稼働率= (209.8)   98.081 + (12.58)   0.6613×製造業設備判断BSI (A-1) R2= 0.602 上式に、非製造業設備判断BSIの値を代入し非製造業稼働率を推計し、本文 の(1)式を用いて製造業稼働率との加重平均値を求めている。 ④ 労働力人口、完全失業率 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の月次統計から3ヶ月平均値を求め、2 月、5月、8月、11月の値を四半期データとした。 ⑤ 総実労働時間指数 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の四半期データを用いた。ただし、全産 業の指数データの総実労働時間指数については1970年以降しかない。他方、 製造業のデータは1955年以降からあるので、1970年以降の全産業の総実労働 時間指数を製造業の総実労働時間指数に回帰させて、1969年以前の全産業の 指数を推計している。具体的な推計式は次のとおりである。 全産業総実労働時間= (−8.411)− 39.41 + (31.59)   1.437×製造業総実労働時間 (A-2)   R2 = 0.864 ⑤ 消費者物価伸び率 消費者物価伸び率のデータは次のようにして作成した。まず、1971年以降 は、総務省統計局の消費者物価指数の月次データから前年同期比データを作成 した後3ヶ月平均値を計算し、2月、5月、8月、11月の値を四半期データと した。次に、この1971年以降の消費者物価指数伸び率データに1971年以降

(31)

の民間最終消費支出デフレータ(以下、消費デフレータ)前年同期比伸び率四 半期データを回帰させ、その結果から、1970年以前の消費者物価伸び率を推 計している。具体的な推計式は次のとおりである。 消費者物価指数伸び率= (−1.535)− 0.1187 + (85.81)   1.057×消費デフレータ伸び率   R2= 0.985 (A-2)

補注 B  オーカン法則 (24) 式の導出

以下では、GDP成長率と失業率の前年同期差の関係として表されているオー カン法則(24)式を導出しよう39)。本来、オーカン法則は現実の失業率と自然 失業率(完全雇用失業率)u∗の乖離とGDPギャップとの関係を示したもの で、次式のように表される。 (Yt− Yt∗)/Yt∗= β(ut− u∗)、  β < 0 (B-1) ここで、上式のGDPギャップを、 (Yt− Yt∗)/Yt∗= γt (B-2) とおくと、 ˙ Y /Y − ˙Y∗/Y∗= ˙γ/(1 + γ) (B-3) を得る40)。さらに、上式を離散型で表すと、 gt− g∗t = (γt− γt−1)/(1 + γt) (B-4) となる。また、(B-1)(B-2)式を考慮すると、 γt= β(ut− u∗) (B-5) となり、 γt− γt−1= β(ut− ut−1) (B-6) を得る。よって、(B-4)(B-6)式から 39) Okun(1962)やいくつかの先行研究においても、(24) 式の定式化が用いられているが、本来 のオーカン法則 (B-1) 式からの理論的導出は必ずしも明らかではない。 40) 本文第 4 節第 2 項を参照されたい。また、(B-3) 式は本文の (29) 式と同じものである。 — 64 —

(32)

gt− g∗t = (β/(1 + γt))(ut− ut−1) (B-7) が求まる。ここで、1 + γtは平均ではほぼ1に等しい、言い換えれば、現実の GDPが平均的に潜在GDPに等しいと考えると、 gt− g∗t = β(ut− ut−1)、  β < 0 (B-8) を得る。 参考文献 廣瀬康生・鎌田康一郎(2001)、「潜在 GDP とフィリップス曲線を同時推計する新 手法」、Working Paper Series 01-7、日本銀行調査局、pp.1-42。

岩田規久男・宮川 努(2003)、『失われた 10 年の真因は何か』、東洋経済新報社。 鎌田康一郎・増田宗人(2000)、「マクロ生産関数に基づくわが国の GDP ギャップ

 ─ 統計の計測誤差が与える影響 ─」、Working Paper Series 00-15、日本銀 行調査局、pp.1-31。 鎌田康一郎・廣瀬康生(2003)、「潜在 GDP とフィリップス曲線を同時推計する新 手法」、『金融研究』、日本銀行金融研究所、pp.13-34。 黒田佳央(1988)、『マクロ経済学と日本の労働市場』、東洋経済新報社。 宮川 努・真木和彦(2001)、「GDP ギャップ計測の課題と新たな方向性」、Working Paper Series 01-15、日本銀行調査局、pp.1-48。 宮尾龍蔵(2001)、「GDP ギャップの推計と供給サイドの構造変化」、Working Paper Series 01-18、日本銀行調査局、pp.1-33。 日本銀行調査局(1989)、「マクロ需給ギャップの計測について ─ 「輸入安全弁」 を考慮した生産関数アプローチ ─」、『日本銀行調査月報』、日本銀行調査局、 pp.31-39。 西崎健司・中川裕希子(2000)、「わが国における構造的財政収支の推計について」、 Working Paper Series 00-16、日本銀行調査局、pp.1-47。

原田 泰・吉岡真史(2004)、「日本の実質経済成長は、なぜ 1970 年代に屈折した のか」、ESRI Discussion Paper Series No.119、内閣府経済社会総合研究所。 肥後雅博・中田(黒田)祥子(1998)、「経済変数から基調的変動を抽出する時系列

的手法について」、『金融研究』、日本銀行金融研究所、pp.39-97。 廣松 毅・浪花貞夫・高岡 慎(2006)、『経済時系列分析』、多賀出版。 副島 豊(1994)、「日本のマクロ変数の単位根検定」、『金融研究』、第 13、巻第 4

参照

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