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<原著>2型糖尿病患者における起床から朝食までの時間及び夕食から就寝までの時間と血糖コントロール指標との関係 利用統計を見る

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I.はじめに  平成 19 年度の国民健康・栄養調査では,「糖 尿病が強く疑われる人」あるいは「糖尿病の可 能性が否定できない人」が合わせて約 2,210 万 人と推定されている1)。糖尿病は我が国の主要 な死亡原因である脳卒中や虚血性心疾患などの 危険因子であり,また,透析導入や視覚障害の 主要な原因疾患でもある。よって,その予防や 治療を十分に行うことが重要である。  現在,我が国では日本糖尿病学会が作成した 「糖尿病治療ガイド 2010」に基づいて治療が行 われている2)。成人で発症する糖尿病の大半は 2 型糖尿病であるが,「治療ガイド」では 2 型 糖尿病患者の治療において,服薬治療とともに 食事療法や運動療法といった生活習慣の改善が 重要とされている。食事療法の指導としては, 臨床の現場では主に適正なエネルギー摂取量の 指示やバランスのとれた食品構成についての患 者教育が行われている。  一方,糖尿病の危険因子でもある肥満につい ては,就寝直前の夕食が肥満の発症に影響を与 えるという報告があり3),肥満の予防・改善の ための指導として食事の内容についてだけでな く,食事の摂取時間についての教育も行われて

2 型糖尿病患者における起床から朝食までの時間及び

夕食から就寝までの時間と血糖コントロール指標との関係

真 野 芳 彦

1)

,田 中 太一郎

2)

,保 坂 嘉 之

3)

,山 縣 然太朗

4) 1)山梨大学大学院医学工学総合教育部 2)東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野 3)医療法人芙蓉会 保坂内科クリニック 4)山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座 要 旨:山梨県内の A 診療所で加療中の 2 型糖尿病患者 382 名を対象に,起床から朝食までの時間 (起床−朝食時間)及び夕食から就寝までの時間(夕食−就寝時間)と血糖コントロール指標(グ リコアルブミン値,ヘモグロビン A1C 値)との関連を Pearson の相関係数を算出して検討した。起 床−朝食時間とグリコアルブミン値との間には有意な相関が認められた(r = 0.12,p 値= 0.04*)。 層別の検討では罹患年数 10 年以上の集団で有意な相関が認められた(r = 0.18,p 値= 0.02*)。夕 食−就寝時間とグリコアルブミン値の間には有意な相関は認められず,層別の検討では服薬状況が 単剤の集団において有意な相関が認められた(r =− 0.26,p 値= 0.04*)。一方で起床−朝食時間, 夕食−就寝時間と HbA1c 値の間には有意な相関が認められなかった。起床−朝食時間と GA 値の間 以外には,統計学的に有意な相関が認められなかったが,これは本研究の対象が糖尿病で治療中の 者であり,薬物療法の効果のために,生活習慣が血糖コントロールに与える影響が明らかとなりに くかったと考える。 キーワード 糖尿病,食事摂取時刻,起床時刻,就寝時刻,グリコアルブミン,HbA1c

原  著

〒 409-3898 山梨県中央市下河東 1110 番地 受付:2012 年 1 月 12 日 受理:2012 年 12 月 6 日

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いる。しかし,糖尿病については,就寝直前の 夕食が睡眠時の血糖値やエネルギー代謝に影響 を与えるという報告はあるが,夕食から就寝ま での時間,あるいは起床から朝食までの時間が 糖尿病患者の血糖コントロールに与える影響に ついては検討されておらず,食事療法の患者教 育を行う際にもこのような生活リズムに関する 指導は行われていない。  そこで,今回,起床から朝食までの時間(起 床−朝食時間),あるいは夕食から就寝までの 時間(夕食−就寝時間)とヘモグロビン A1C (HbA1c)やグリコアルブミン(GA)といった 血糖コントロール指標との関連について明らか にすることを目的として研究を行った。なお, 本研究の実施により,糖尿病患者の療養指導に おいて,生活リズムの指導に『規則正しい生活』 という抽象的な助言ではなく時間的要因が示さ れ,より詳細な生活習慣の見直しに役立つと思 われる。また,新たな糖尿病予防の視点と成り 得ることが期待される。 II.対象と方法 1)研究対象  本研究の対象は,山梨県内の A 診療所に平 成 22 年 3 月から 6 月の間に受診した 75 歳未満 の糖尿病患者 382 名である。なお,研究への参 加の呼びかけは対象者全員に対して行い,382 名全員から参加の同意が得られた。 2)研究方法  研究デザインは横断研究である。日常診療の 中で行われる療養指導の際に,調査担当者が対 象者に対して調査票を用いて生活習慣等の聞き 取りを行なった。聞き取りは,A 診療所のスタッ フ計 4 名で実施した。調査項目は,起床及び就 寝時刻,各食事時刻,食事に掛る時間,仮眠習 慣の有無と時刻及び時間,間食習慣の有無と時 刻,飲酒習慣の有無と頻度と飲酒量,運動習慣 の有無と時刻及び時間,運動頻度と種目,喫煙 習慣の有無と喫煙数,生活活動強度(軽労作, 普通労作,重い労作から選択),糖尿病薬の服 薬の有無と飲み忘れ頻度,睡眠の質(良好,入 眠困難,中途覚醒,早朝覚醒,何らかの不眠: 小路ら糖尿病における睡眠障害を参考4)),睡 眠に関する服薬の有無と薬剤名である。また, カルテから,年齢,性別,糖尿病罹患年数,身長, 体重,BMI,指示エネルギー,服薬状況等の 情報を得た。なお,調査では,担当者に最近 1 ヶ 月の生活習慣として聞き取るように定めた。  メインアウトカムとしては血糖コントロール 指標の GA と HbA1c(JDS:次項以降の表示は 省く)を用いた。GA は調査日の検体を用いて 測定し,HbA1c は調査日の翌月に測定したも のを解析に利用した。なお,各検査法は GA が 酵素法,HbA1c が HPLC 法である。 3)解析方法  糖尿病患者における起床−朝食時間および夕 食−就寝時間と GA 値および HbA1c 値の関連 を調べるために相関係数を算出した。また,性, 年齢階級(64 歳以下,65 歳以上),服薬状況 (服薬なし,単剤,多剤,インスリン投与),罹 病年数(10 年未満,10 年以上)によっても層 別化して検討を行った。なお,1 型糖尿病患者 (5 名),血糖コントロールに影響を与える睡眠 剤または安定剤の服用者(50 名),特殊な生活 リズムの夜型勤務および早朝勤務者(9 名)は すべての解析対象から除外した。また,朝食欠 食者(8 名)と早朝覚醒として 4 時台までに起 きる者(25 名)は起床−朝食時間の解析から, GA がアウトカムとなる解析で GA30%以上の 者(1 名),HbA1c がアウトカムとなる解析で HbA1c8.5%以上の者(8 名)を対象から除外 した。  また,サブ解析として夕食時刻や朝食時刻, 就寝時刻,起床時刻と GA 値,HbA1c 値との 相関についても検討した。統計解析には JMP8 を用いた。 4)倫理的配慮  本研究の実施にあたっては,山梨大学医学部

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倫理審査委員会の承認を得た。本研究は調査票 に基づき聞き取り調査を行ったが,対象者の データは匿名化して解析した。なお,調査票 は山梨大学医学部社会医学講座で厳重に保管 した。 III.結  果  分析対象者の年齢階級別・服薬状況別・罹病 年数別人数,血糖コントロール指標の平均値を 表1に,起床・就寝時刻,睡眠時間,朝食・夕 食時刻,起床−朝食時間,夕食−就寝時間の分 布を表 2 に示す。対象者は 318 名,GA 値の平 均 17.8%(SD:2.64),HbA1c 値の平均 6.5%(SD: 0.67)であった。また,夕食時刻が 22 時以降 の者はおらず,睡眠時間が 7 ∼ 8 時間の者は 222 名(69.8%)だった。  起床−朝食時間と血糖コントロール指標の関 連について検討した結果を表 3 に示す。起床− 朝食時間と GA 値の間の相関係数は r = 0.12(p 値= 0.04*)であり,統計学的に有意な相関関 係が認められた。層別して検討をしたところ, 罹患年数 10 年以上の集団において,r = 0.18 (p 値= 0.02*)と有意な相関が認められた。一 方,起床−朝食時間と HbA1c 値の間には有意 な相関関係が認められず(r =− 0.03,p 値= 0.676),層別化の検討でも有意な相関は認めら れなかった。  夕食−就寝時間と血糖コントロール指標との 関連について検討した結果を表 4 に示す。夕 食−就寝時間と GA 値の間の相関係数は r = − 0.02(p 値= 0.78)であり,有意な相関関係 は認められず,層別化の検討では,服薬状況単 剤の集団において有意な相関関係が認められた 表 1. 対象者の年齢階級別・服薬状況別・罹病年数別人数,血糖コントロール 指標の平均値±標準偏差 男性 女性 全体 全体(人) 203 115 318 年齢階級(人(%)) ∼ 39 歳 6(3.0) 4(3.4) 10(3.1) 40 ∼ 49 歳 23(11.3) 7(6.1) 30(9.4) 50 ∼ 59 歳 70(34.5) 37(32.2) 107(33.6) 60 ∼ 69 歳 84(41.4) 51(44.3) 135(42.5) 70 ∼ 74 歳 20(9.9) 16(13.9) 36(11.3) 64 歳以下 140(69.0) 71(61.7) 211(66.4) 65 歳以上 63(31.0) 44(38.3) 107(33.6) 服薬状況(人(%)) 服薬なし 17(8.4) 12(10.4) 29(9.1) 単剤 34(16.7) 23(20.0) 57(17.9) 多剤 107(52.7) 51(44.3) 158(49.7) インスリン 45(22.2) 29(25.2) 74(23.3) 罹病年数(人(%)) 10 年未満 88(43.3) 59(51.3) 147(46.2) 10 年以上 115(56.7) 56(48.7) 171(53.8) グリコアルブミン(%) 17.5 ± 2.6 18.2 ± 2.8 17.8 ± 2.6 ヘモグロビン A1c(%) 6.3 ± 0.6 6.7 ± 0.8 6.5 ± 0.7 BMI(kg/m2 25.0 ± 3.4 25.3 ± 4.1 25.1 ± 3.7

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表 2. 対象者の起床・就寝時刻,睡眠時間,朝食・夕食時刻,起床−朝食時間, 夕食−就寝時間の分布(人数(%))(1) 男性 女性 全体 全体(人) 203 115 318 起床時刻 ∼ 4 時 19(9.4) 5(4.3) 24(7.5) 5 ∼ 6 時 54(26.6) 24(20.9) 78(24.5) 6 ∼ 7 時 78(38.4) 56(48.7) 134(42.1) 7 ∼ 8 時 42(20.7) 22(19.1) 64(20.1) 8 ∼ 9 時 9(4.4) 5(4.3) 14(4.4) 9 ∼ 10 時 1(0.5) 2(1.7) 3(0.9) 10 ∼ 11 時 0(0) 1(0.9) 1(0.3) 就寝時刻 19 ∼ 20 時 4(3.4) 0(0) 4(1.3) 20 ∼ 21 時 7(12.3) 2(9.6) 9(2.8) 21 ∼ 22 時 25(27.1) 11(22.6) 36(11.3) 22 ∼ 23 時 55(32.5) 26(30.4) 81(25.5) 23 ∼ 0 時 66(17.2) 35(24.3) 101(31.8) 0 ∼ 1 時 35(3.4) 28(4.3) 63(19.8) 1 ∼ 2 時 7(2.0) 5(5.2) 12(3.8) 2 ∼ 3 時 4(0) 6(0.9) 10(3.1) 3 ∼ 4 時 0(0) 2(0.9) 2(0.6) 睡眠時間 6 時間以下 26(12.8) 22(19.1) 48(15.1) 7∼ 8 時間 142(70.0) 80(69.6) 222(69.8) 9 時間以上 35(17.2) 13(11.3) 48(15.1) 朝食時刻 5 ∼ 6 時 15(7.4) 3(2.6) 18(5.7) 6 ∼ 7 時 45(22.2) 10(8.7) 55(17.3) 7 ∼ 8 時 91(44.8) 64(55.7) 155(48.7) 8 ∼ 9 時 42(20.7) 32(27.8) 74(23.3) 9 ∼ 10 時 7(3.4) 4(3.5) 11(3.5) 10 ∼ 11 時 3(1.5) 2(1.7) 5(1.6) 夕食時刻 16 ∼ 17 時 1(0.5) 2(1.7) 8(2.5) 17 ∼ 18 時 7(3.4) 7(6.1) 14(4.4) 18 ∼ 19 時 62(30.5) 41(35.7) 103(32.4) 19 ∼ 20 時 92(45.3) 52(45.2) 144(45.3) 20 ∼ 21 時 24(11.8) 10(8.7) 34(10.7) 21 ∼ 22 時 17(8.4) 3(2.6) 20(6.3) 起床−朝食時間 ∼ 2 時間 156(76.8) 81(70.4) 237(74.5) 2 ∼ 3 時間 27(13.3) 25(21.7) 52(16.3) 3 ∼ 4 時間 11(5.4) 6(5.2) 17(5.3) 4 ∼ 5 時間 3(1.5) 0(0) 3(0.9) 朝食欠食 6(3.0) 3(2.6) 9(2.8)

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表 3. 起床から朝食までの時間(起床−朝食時間)とグリコアルブミン(GA), ヘモグロビン A1c(HbA1c)との相関関係 + Pearson * p < 0.05 人数 相関係数+ p 値 GA 全体 286 0.12 0.04* 年齢階級 64 歳以下 191 0.09 0.24 65 歳以上 95 0.12 0.24 性 男性 179 0.08 0.28 女性 107 0.16 0.10 服薬状況 服薬なし 25 -0.07 0.10 単剤 47 0.14 0.33 多剤 144 0.08 0.31 インスリン 70 0.18 0.13 罹病年数 10 年未満 129 0.04 0.66 10 年以上 157 0.18 0.02* HbA1 全体 280 -0.03 0.67 年齢階級 64 歳以下 127 -0.04 0.60 65 歳以上 153 0.06 0.59 性 男性 177 0.003 0.97 女性 103 -0.13 0.18 服薬状況 服薬なし 25 -0.20 0.33 単剤 47 0.05 0.75 多剤 141 -0.03 0.74 インスリン 67 -0.08 0.53 罹病年数 10 年未満 127 -0.12 0.18 10 年以上 153 0.04 0.65 表 2. 対象者の起床・就寝時刻,睡眠時間,朝食・夕食時刻,起床−朝食時間, 夕食−就寝時間の分布(人数(%))(2) 夕食−就寝時間 ∼ 2 時間 41(20.2) 6(5.2) 47(14.8) 2 ∼ 3 時間 42(20.7) 17(14.8) 59(18.6) 3 ∼ 4 時間 61(30.0) 39(33.9) 100(31.4) 4 ∼ 5 時間 41(20.2) 26(22.6) 67(21.1) 5 時間∼ 18(8.9) 27(23.4) 45(14.2)

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(r =− 0.26,p 値= 0.04*)。一方,夕食−就 寝時間と HbA1c 値の間には有意な相関関係が 認められず(r =− 0.03,p 値= 0.18),層別 化の検討でも有意な相関が認められなかった。  なお,サブ解析で行なった夕食時刻や朝食時 刻,就寝時刻,起床時刻と GA 値,HbA1c 値 の相関の検討については,いずれも有意な関連 が認められなかった。また,起床−朝食時間と 夕食−就寝時間の間には統計学的に有意な相関 関係が認められなかった。 表 4. 夕食から就寝までの時間(夕食−就寝時間)とグリコアルブミン(GA), ヘモグロビン A1c(HbA1c)との相関関係 + Pearson * p < 0.05 人数 相関係数+ p 値 GA 全体 318 -0.02 0.78 年齢階級 64 歳以下 209 -0.03 0.65 65 歳以上 109 0.05 0.63 性 男性 203 -0.09 0.19 女性 115 0.02 0.81 服薬状況 服薬なし 29 0.17 0.37 単剤 57 -0.26 0.04* 多剤 158 0.03 0.72 インスリン 74 -0.07 0.56 罹病年数 10 年未満 147 0.004 0.96 10 年以上 171 -0.02 0.81 HbA1 全体 311 0.08 0.18 年齢階級 64 歳以下 204 0.05 0.48 65 歳以上 107 0.09 0.34 性 男性 201 -0.03 0.62 女性 110 0.12 0.20 服薬状況 服薬なし 29 0.27 0.16 単剤 57 -0.15 0.26 多剤 154 0.13 0.10 インスリン 71 0.05 0.68 罹病年数 10 年未満 145 0.12 0.16 10 年以上 166 0.06 0.45

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IV.考  察  本研究では起床−朝食時間及び夕食−就寝時 間と GA 値,HbA1c 値の関係を検討した。そ の結果,集団全体を対象とした解析では,起床 から朝食までの時間と GA 値の間に統計学的に 有意な相関関係が認められ,起床から朝食まで の時間が長いと GA 値が高くなる可能性が示さ れた。しかし,夕食から就寝までの時間と GA 値,起床から朝食までの時間や夕食から就寝ま での時間と HbA1c 値の間には統計学的に有意 な相関関係が認められなかった。  起床から朝食までの時間,あるいは夕食から 就寝までの時間と血糖コントロール状況に関し ては,今までほとんど検討されていない。しか し,先行研究において,朝食を欠食させた群と 摂取した群で昼食摂取後の血糖値を比較する と,朝食欠食群で有意に高くなることが明らか にされている5)。また,別の先行研究では,睡 眠時に末梢組織での糖利用とインスリンの感受 性が低下することが明らかにされており6),そ のことより,夕食直後の睡眠が血糖値上昇をよ り増加させる可能性がある。以上のことより, 本研究では「夕食から就寝までの時間が短いほ ど,血糖コントロール状況が悪い」あるいは「起 床から朝食までの時間が長いほど,血糖コント ロール状況が悪い」という仮説を立て,検討を 行った。  本研究では,起床から朝食までの時間が長い と GA 値が高くなる可能性が示された。これに は暁現象が関係していると考えられる。暁現 象(Dawn Phenomenon)とは,午前 3 ∼ 4 時 頃以降に成長ホルモンやコルチゾール,グルカ ゴンなどの血糖上昇ホルモンの分泌が活発とな り,インスリン感受性が低下するために,早朝 空腹時の時間帯に血糖値が上昇するという現象 である7)。この現象は早朝から経時的に血糖値 が高くなるため,食前血糖値は起床から朝食ま での時間が短い方より起床から朝食までの時間 が長い方が高値になることが考えられる。食前 血糖値が高ければ食事を摂ることで更に食後血 糖値が高くなることは予測できる。また,食後 高血糖に GA 値は影響を受けるが,HbA1c 値 は影響を受けにくいと言われている8)。そのた め,起床から朝食までの時間と GA 値との間の みで相関関係が認められた可能性がある。  一方,起床−朝食時間と HbA1c 値,夕食− 就寝時間と GA 値や HbA1c 値との間には明ら かな相関関係が認められなかった。その理由と しては,本研究の対象者が糖尿病で内服治療 中の者であるということが考えられる。「糖尿 病治療ガイド」では HbA1c 値等について目標 値が設定されており,目標値以下となるように 薬物療法が行われている2)。また糖尿病患者の 生活習慣が望ましくない場合も,その条件下で HbA1c 値や GA 値といった血糖コントロール 指標が目標値以下となるように薬物治療が行わ れている。薬物療法が血糖コントロール状況に 与える影響が大きいために,起床−朝食時間と HbA1c 値,夕食−就寝時間と GA 値や HbA1c 値との間に相関関係が認められなかった可能性 がある。よって,今後,糖尿病でない者,ある いは薬物療法を行っていない耐糖能異常者を対 象にさらに検討を行う必要がある。  本研究にはいくつかの限界がある。一つは, 本研究の対象者の多くが月 1 度の療養指導を受 け,生活リズムの改善が進んでいたことが考え られる。糖尿病患者における望ましい夕食摂取 時刻は明らかにされていないが,肥満の予防や 改善のためには,22 時以降の食事摂取が望ま しくないとされている。仮に,糖尿病患者にお ける適切な夕食時刻を肥満の場合と同様に 22 時までにすると,本研究対象者においては夕食 時刻が 22 時以降の者はいなかった。また,睡 眠時間と糖尿病・耐糖能異常との関連に関する 研究では,糖尿病・糖代謝異常の発症リスクは 睡眠時間が 7 ∼ 8 時間の場合に低くなることが 明らかにされているが9),本研究対象者では睡 眠時間が 7 ∼ 8 時間の者が 69.8%を占めた。以 上のことから,本研究の対象者では食事摂取時 間や睡眠時間が理想的な時間となっている者が 多く,そのことが結果に影響を与えている可能

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性が考えられる。  また,糖尿病の生活習慣の問題点は,食習慣 や運動習慣,睡眠の質など多岐にわたり,社会 背景によるストレスや糖尿病患者ゆえのストレ ス等も関わっている10)。そのため,生活習慣 の問題点が複雑化しているので,本研究では, 一つの生活習慣が血糖コントロールに与える影 響を明らかにすることが困難であった。  本研究は,起床前時間と GA 値の間のみに有 意な結果が得られたのみであったが,『規則正 しい生活』という曖昧な助言を明確にするため の調査としては,今までにない視点からの取り 組みだと思われる。本研究で得られた課題を考 慮して今後の研究を検討したい。 謝  辞  本研究において真野と田中は研究の実施, データの解析,論文の執筆等に関して同等の役 割を果たしており,本論文はダブルファースト オーサーの論文である。また,本研究をすすめ るにあたり,ご協力頂きました生活習慣病治療 施設:保坂内科クリニック院長保坂嘉之先生と スタッフの皆様,ご指導頂きました社会医学講 座の山縣然太朗教授はじめ山梨大学大学院社会 医学講座の皆様に心より感謝致します。 参考文献 1) 国民健康・栄養の現状−平成19年厚生労働省国 民健康・栄養調査報告より−,第一出版株式会 社,44–45,2010. 2) 社団法人糖尿病学会 糖尿病治療ガイド2010, 株式会社文光堂,24–25, 27–30,2010.

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参照

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