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中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研究 : 日本語版SEMLI-Sの開発および因子分析・ラッシュモデルによる分析を用いて

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(1)Title. 中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研 究 : 日本語版SEMLI-Sの開発および因子分析・ラッシュモデルによる分 析を用いて. Author(s). 中町, 祥平; 古屋, 光一. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 67(1): 265-275. Issue Date. 2016-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7995. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研究 ― 日本語版SEMLI-Sの開発および因子分析・ラッシュモデルによる分析を用いて ―. 中町 祥平・古屋 光一* 北海道教育大学大学院理科教育研究室 *. 北海道教育大学旭川校理科教育研究室. A Study on Metacognition, Self-Efficacy and Learning Process in Junior High School Science ― Development of “The SEMLI-S Japanese Version”, and Using Factor Analysis and Rasch Analysis ―. NAKAMACHI Shohei and FURUYA Koichi* Department of Science Education, Graduate School of Education, Hokkaido University of Education *. Department of Science Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では,調査問題SEMLI-Sを日本語訳した日本語版SEMLI-Sによる質問紙調査を実施 し,開発した日本語版SEMLI-Sの信頼性と有用性を検討した。ここでの信頼性と有用性は, 授業者が学習者の実態を客観的に把握できることとし,検討には因子分析およびラッシュモデ ルによる分析を用いた。その結果,次の3点が確認された。⑴開発した日本語版SEMLI-Sでは, 「構成主義学習論における接続性」 「モニタリング・評価・学習計画」 「自己効力」 「集中の調節」 の4つの因子が抽出された。⑵4因子それぞれの相関関係を調べた結果,各因子は共通部分が ある一方で,メタ認知的学習の別々の面を評価していることを確認できた。さらに,日本語版 SEMLI-Sを活用することで,理科の学習者の実態を因子ごとに把握できた。⑶ラッシュモデ ルによる分析の結果,質問項目とラッシュモデルの適合性が確認できた。したがって,日本語 版SEMLI-S全18項目から得られる情報は,十分に信頼性と有用性がある。. 1.はじめに メタ認知は,生徒の学習過程とその結果として. の学習成果の改善を考慮する上で重要とされる, 構 成 概 念 で あ る。1970年 代 のFlavellやBrownの 研究以降,生徒のメタ認知を伸ばし,高め,測定. 265.

(3) 中町 祥平・古屋 光一. する方法への興味やそれらに関する研究は絶え間. は,構成概念に関連する多くの調査問題は測定方. なく行われてきた。この理由は,学習におけるメ. 法が不明瞭であることを指摘し,メタ認知研究の. タ認知を促進することが,きわめて効果的な学習. 課題として,測定のための方法論とデータ分析の. 支 援 法 と 考 え ら れ る た め で あ る(Thomas,. ガイドラインの確立を提案している。. Anderson, and Nashon, 2008)。それは,単に学. これらメタ認知研究の課題をふまえ,Thomas. 習法を教えるといった狭い意味合いのものではな. ら(2008)は,「妥当な心理測定の方法と,生徒. く, 学習に対する基本的な姿勢や考え方,感じ方,. の理科の学習に関係があるメタ認知と学習過程に. 動機づけなどに働きかけ,学習者が自分の意志と. 関連する要因を処理するもっともな調査問題の開. 選択によって学習に積極的にかかわることを可能. 発 」(Thomas et al., 2008: 1704) を 目 指 し て,. にする(三宮, 2008)。. 『Self-Efficacy and Metacognition Learning. 一方,メタ認知の考察や研究を続けていくこと. Inventory-Science(自己効力とメタ認知的学習. は,生徒の学習の改善に対する価値の高い見識を. の調査問題,以下SEMLI-S)』を開発した。そし. 提供したものの,そのような活動には大きく分け. て,その上で香港の高校生を対象とした調査およ. て2つの課題がある(Thomas et al., 2008)。. び因子分析を行い,SEMLI-Sの質問項目が5つ. 第1に,メタ認知は一貫性に欠けており,その. の因子(「構成主義学習論における接続性」「モニ. 定義や構成要素についての見解は必ずしも統一さ. タリング・評価・学習計画」「自己効力」「学習に. れていない曖昧な概念であることが指摘されてい. おけるリスク認識」「集中の調節」)によって規定. る(Veenman, Hout-Wolters and Afflerbach,. されることを示した。さらにラッシュモデルによ. 2006) 。Veenmanらは「メタ認知の重要性の認識. る分析を用いて,SEMLI-Sが客観的な調査問題. には一貫性があるが,構造の概念化には一貫性が. として活用できることを示し,教師や理科教育者. ない。 」 (Veenman et al., 2006: 4)と定義の曖昧. がSEMLI-Sを実施することで,生徒のメタ認知,. さ を 言 及 し て い る。 こ れ に 加 え,Veenmanら. 自己効力,学習過程に対する自己認識を客観的に. (2006)は自己調整,メタ認知的な意識,学習方. 把握できることを報告している。. 略のような用語は一般的にメタ認知と関連付けら. しかし,現在のところ国内でSEMLI-Sに関す. れていることも示し,メタ認知の構成要素は多岐. る研究は行われておらず,SEMLI-Sの日本語版. に わ た る と 述 べ て い る。 ま たSchraw, Crippen. やそれを活用した実践例は見当たらない。すなわ. and Hartley(2006)も,生徒が用いているメタ. ちThomasら(2008)やSchraw(2000)が指摘し. 認知と学習方略と学習過程は自己調整学習の一部. ているように,わが国ではメタ認知の測定に方法. であり,自己効力のような自己調整学習の他の要. が不明瞭であったり客観的でなかったりする調査. 素もまた,学習成果の決定に影響を与えると主張. 問題が使用されているのが現状である。. している。このようにメタ認知は他の様々な学習. そこで本研究では,最終的にSEMLI-Sを活用. の要素と相互に関連しているため,メタ認知のみ. した授業実践を行うために,SEMLI-Sを日本語. を独立して測定することは難しい。. 訳し,質問紙調査を行なった。そして,その調査. 第2に,メタ認知の測定には,インタビューや. 結果に対して因子分析およびラッシュモデルによ. 質問紙,発話思考,行動観察などの方法が用いら. る分析を行うことで,日本語訳したSEMLI-Sに. れてきた(手塚・片平, 2003, 星野・益田・半田,. 理科の学習者の実態を把握する調査問題としての. 2015)が,心理学概念は一般に,直接観測するこ. 信頼性と有用性があるかどうかを検討した。. とのできない構成概念であるため,測定にはいっ そうの困難さを伴うことが指摘されている (Schraw, 2000)。この点に関してSchraw(2000). 266.

(4) 中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研究. 2.研究の目的. Connectivity: CC)には「様々な理科の学習場面 において,情報と知識を相互に結びつけること」. Thomasらによって開発されたSEMLI-Sを日本. (Thomas et al., 2008: 1708)についての学習者. 語訳し,調査を実施する。そして,日本語訳した. の自己認識を問う項目が含まれる。Thomasら. SEMLI-Sに理科の学習者の実態を把握する調査. (2008)が開発した質問項目には「理科で実験・. 問題として,信頼性と有用性があるかどうかを,. 観察を行うとき,理科の課外活動(例えば山の中. 因子分析およびラッシュモデルによる分析を用い. を歩く,科学館を訪問するなど)から学習したこ. て検討する。. とと結び付けて考えようとします。(CC1)」や「学 校以外で科学的活動(例えば家族で動物園に行く,. 3.研究の方法 3. 1 調査問題SEMLI-Sの日本語訳. 夜に天体望遠鏡で空を見るなど)を行うとき,学 校の理科の授業から学んだことと結び付けて考え ようとします。(CC2)」などがある。. 調査問題SEMLI-Sの日本語訳を行なった。以 下,英語原文を「SEMLI-S」,日本語訳したもの. 3.3.2 モニタリング・評価・学習計画. を「日本語版SEMLI-S」と呼び区別する。なお,. モニタリング・評価・学習計画(Monitoring,. 日本語訳を行う際には,対象者に文意がしっかり. Evaluation & Planning: MEP)には「メタ認知能. と伝わるかなどを確認するため,大学生を対象と. 力に関係する,自らの学習状況をモニタリングし. した予備調査を行い,日本語訳が妥当であるかを. たり,評価したり,学習計画を立てたりすること」. 検討し修正した。これを用いて調査(本調査)を. (Thomas et al., 2008: 1708)についての学習者. 行なった。. の自己認識を問う項目が含まれる。Thomasら (2008)が開発した質問項目には「ある理科の勉. 3. 2 調査対象と調査時期. 強の内容が自分の思うように進まないとき,その. 本調査は2015年5月中旬に,新潟県内の中学校. 勉強の仕方を変えます。(MEP1)」や「ある理科. 2年生と3年生の計117名を対象に実施した。. の課題に取り組んだとき,それによって自分の学 力がどのくらい向上できたのかをチェックするよ. 3. 3 調査問題について. うにしています。(MEP2)」などがある。. SEMLI-Sは5つの因子で説明された計30項目 で構成されている。本研究で作成した日本語版. 3.3.3 自己効力. SEMLI-Sはこれに質問項目を5つ加え,計35項. 自己効力(Self-efficacy: SE)には「理科の学. 目で構成した。各質問項目では五件法(「決して. 習目標を達成するために必要な,準備や行動を行. しない, ほとんどない」 「多くの場合そうはしない」. う自信」(Thomas et al., 2008: 1708)についての. 「そうすることとそうはしないことが半分半分」. 学 習 者 の 自 己 認 識 を 問 う 項 目 が 含 ま れ る。. 「多くの場合そうする」 「ほぼ必ずそうする,い. Thomasら(2008)が開発した質問項目には「理. つもある」 )で生徒に回答を求め,順に1点から. 科の授業で先生からもらった資料について,とて. 5点の得点に換算して集計した。以下にThomas. も難しい内容でもよく読むと理解できる自信があ. ら(2008)が調査の結果を示した,5因子の質問. ります。(SE1)」や「今受けている理科の授業で. 項目について述べる。. 教えてもらった技能(例えば実験や観察の仕方な ど)を身に付けられる自信があります。(SE2)」. 3. 3. 1 構成主義学習論における接続性. などがある。. 構成主義学習論における接続性(Constructivist. 267.

(5) 中町 祥平・古屋 光一. 3. 3. 4 学習におけるリスク認識. Credit Model)を用いた。分析にはWINSTEPS. 学習におけるリスク認識( L e a n i n g R i s k s. ver. 3.91.0を使用した。. Awareness: AW)には「様々な状況の中で,学 習にとって不利益となりうる状況を認識するこ と」 (Thomas et al., 2008: 1708)についての学習. 4.結果と考察. 者の自己認識を問う項目が含まれる。Thomasら. 4.1 因子分析. (2008)が開発した質問項目には「難しい理科の. 4.1.1 質問紙集計および不良項目の確認. 課題を与えられたとき,それが難しい課題である. 調査対象による記入もれあるいはすべて同じ選. ことに気がつきます。 (AW1) 」や「ある理科の. 択肢などの作為的な回答を除いたところ,有効回. 課題を進めている途中で何をすればいいのかよく. 答者数は102名であった。. 分からなくなったとき,その課題の解決の見通し. 各項目の最小値・最大値・平均値・標準偏差・. がもてなくなったことに気がつきます。 (AW2)」. 選択割合を表1に示す。. などがある。. 不良項目として「最小値・最大値の幅が狭すぎ ないか」,「他と比べて小さすぎる(大きすぎる). 3. 3. 5 集中の調節. 標準偏差がないか」,「平均±標準偏差の値が尺度. 集 中 の 調 節(Control of Concentration: CO). の上限値・下限値を超えていないか(データ分布. には「様々な状況に応じて,集中状態を調節する. のゆがみである天井効果・フロア効果を診断する. こと」 (Thomas et al., 2008: 1708)についての学. 便宜的基準)」の3点を確認した(田中,2006)。. 習者の自己認識を問う項目が含まれる。Thomas. その結果,質問項目AW1・AW3において天井効. ら(2008)が開発した質問項目には「学習する環. 果,質問項目SE4においてフロア効果が見られた. 境が良くないとき(例えばうるさい音がするとき,. ため,AW1・AW3・SE4の3項目を以降の分析. 運動の後で疲れているときなど) ,意識していつ. から除外した。. もより集中しようとします。(CO1)」や「取り組 むべき理科の課題が難しいとき,意識していつも. 4.1.2 日本語版SEMLI-Sの因子構造. より集中しようとします。(CO2)」などがある。. 不良項目を除いた,残り32項目に対して最尤法 による因子分析を行なった。当初はThomasら. 3. 4 分析方法. (2008)の研究と同様の5因子構造を仮定してい. 3. 4. 1 因子分析. たが,固有値の減衰状況と因子の解釈可能性から. 今回作成した日本語版SEMLI-Sを用いて日本. 4因子を採用し,再度最尤法・Promax回転によ. の中学生を対象に調査・分析を行うと,SEMLI-S. る因子分析を行なった。その結果,因子負荷量の. と同様の5因子が確認できるか,またその因子構. 絶対値が0.40に満たない14項目を削除し,再び最. 造 が 妥 当 か ど う か を 調 査 す る た め, 最 尤 法・. 尤法・Promax回転を行なった。回転後の最終的. Promax回転による因子分析を行なった。なお,. な因子パターン,因子間相関を表2に示す。. 分析にはIBM SPSS Statistics 22を使用した。. これらの結果より,日本語版SEMLI-Sの因子 構造は,Thomasら(2008)が示した5因子から. 3. 4. 2 ラッシュモデルによる分析. 「学習におけるリスク認識」を除いた,4因子構. 調査問題の客観性を証明するため,質問項目お. 造(「因子1:構成主義学習論における接続性」 「因. よび被験者能力のラッシュモデルへの適合性の分. 子2:自己効力」 「因子3:モニタリング・評価・. 析を行なった。なお,ラッシュモデルによる測定. 学習計画」「因子4:集中の調節」)が妥当である. に パ ー シ ャ ル・ ク レ ジ ッ ト・ モ デ ル(Partial. と判断した。. 268.

(6) 中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研究. 表1 各 項 目 の 最 小 値・ 最 大 値・ 平 均 値・ 標 準 偏 差・選択割合 最小値 最大値 平均値. 標準偏差. 因子負荷量. 質問項目. 選択割合(%) 質問項目. 表2 因子分析の結果. 因子2. 因子3. 因子4. 0.844. 0.120. -0.144. -0.158. 0.820. -0.133. 0.274. -0.098. CC2. 0.753. 0.055. -0.112. 0.059. CC3. 0.676. -0.134. 0.017. 0.230. CC1. 0.590. -0.016. 0.179. -0.184. CC4. 0.570. 0.138. -0.135. 0.220. CC6. 0.566. 0.010. 0.011. 0.155. SE3. -0.086. 0.826. -0.067. -0.053. SE5. 0.110. 0.670. 0.213. -0.129. SE1. -0.020. 0.632. 0.216. 0.022. SE6. -0.060. 0.619. -0.018. 0.348. SE2. 0.193. 0.596. 0.008. 0.021. MEP7. -0.030. 0.086. 0.722. -0.013. MEP1. -0.033. 0.154. 0.558. 0.093. MEP8. 0.122. -0.066. 0.432. 0.147. CO2. -0.050. -0.123. 0.330. 0.748. CO3. 0.042. 0.193. -0.169. 0.652. CO4. -0.031. -0.043. 0.133. 0.646. ―. 0.54. 0.42. 0.49. ―. 0.37. 0.56. ―. 0.45. そうしない. どちらとも いえない. そうする. CC7 CC5. CC1. 1. 5. 2.38. 1.05. 55. 31. 14. CC2. 1. 5. 2.74. 1.36. 45. 23. 32. CC3. 1. 5. 2.98. 1.28. 36. 28. 35. CC4. 1. 5. 3.13. 1.25. 32. 29. 38. CC5. 1. 5. 2.58. 1.13. 52. 29. 19. CC6. 1. 5. 2.48. 1.22. 52. 26. 22. CC7. 1. 5. 2.61. 1.11. 44. 39. 17. CC8. 1. 5. 3.24. 1.28. 28. 33. 38. MEP1. 1. 5. 3.11. 1.06. 26. 40. 33. MEP2. 1. 5. 2.37. 1.21. 58. 25. 18. MEP3. 1. 5. 2.18. 1.06. 61. 30. 9. MEP4. 1. 5. 2.96. 1.07. 27. 48. 25. MEP5. 1. 5. 3.10. 1.16. 28. 37. 34. MEP6. 1. 5. 2.80. 1.07. 36. 38. 25. MEP7. 1. 5. 2.80. 1.13. 37. 39. 24. MEP8. 1. 5. 3.07. 1.09. 30. 31. 38. MEP9. 1. 5. 2.98. 1.19. 30. 38. 31. MEP10. 1. 5. 3.66. 1.00. 13. 25. 62. MEP11. 1. 5. 2.99. 1.00. 26. 48. 25. SE1. 1. 5. 2.49. 1.09. 52. 33. 15. SE2. 1. 5. 3.09. 1.10. 26. 38. 35. SE3. 1. 5. 2.27. 1.06. 62. 24. 15. SE4. 1. 5. 2.04. 1.07. 73. 18. 10. SE5. 1. 5. 2.18. 1.05. 65. 26. 9. SE6. 1. 5. 3.07. 1.11. 26. 42. 31. AW1. 1. 5. 4.14. 0.93. 5. 20. 75. AW2. 1. 5. 3.49. 1.09. 15. 38. 47. AW3. 2. 5. 4.26. 0.89. 5. 15. 80. AW4. 1. 5. 3.99. 0.92. 4. 27. 69. AW5. 1. 5. 3.52. 1.21. 20. 23. 58. 因子1. 因子1 因子間相関. 因子2 因子3 因子4. ―. ※因子負荷量の絶対値0.40以上を太字で表記. 表3 各因子の統計結果 Cronbach 弁別的 平均値 標準偏差 のα係数 妥当性. 因子名. 項目数. 構成主義学習論における 接続性(CC). 7. 0.88. 18.89. 6.37. 0.47. AW6. 1. 5. 2.87. 1.14. 38. 31. 30. CO1. 1. 5. 2.87. 1.28. 40. 30. 29. モニタリング・評価・ 学習計画(MEP). 3. 0.85. 8.98. 2.59. 0.45. CO2. 1. 5. 3.37. 1.14. 25. 27. 48. 自己効力(SE). 5. 0.69. 13.10. 4.29. 0.51. CO3. 1. 5. 3.59. 1.10. 17. 27. 56. CO4. 1. 5. 3.70. 1.16. 15. 27. 58. 集中の調節(CO). 3. 0.76. 10.66. 2.79. 0.49. ※「そうしない」=選択肢1「決してしない,ほとんどない」, 選択肢2「多くの場合そうはしない」 ※「そうする」=選択肢4「多くの場合そうする」,選択肢5「ほ ぼ必ずそうする,いつもある」. 目が同じ対象を測定しているなら,項目間の内的 整合性(内的一貫性)が高まるという装置であり, 基本的には0~1.0の値を示す。α係数がどの程度. なお,回転前の4因子で最終的に残った18項目. であれば,信頼性があるとしてよいのかという問. の全分散を説明する割合は64.30%であった。. 題は,一概にはいえず,研究分野や研究対象,項 目の数などで判断基準は変わるが,0.7~0.8以上. 4. 1. 3 信頼性と妥当性の検討. なら満足,0.3以下は明らかに低くて信頼性なし. 因子分析の結果から,日本語版SEMLI-Sの信. と判断することが多い。. 頼性と妥当性について検討する(表3)。. 表3より,本調査におけるCronbachのα係数. まずは信頼性の検討として,Cronbachのα係. は,因子2「自己効力」において0.69とやや基準. 数を求めた。Cronbachのα係数は,すべての項. よりも低い値であったが,他の因子では0.76~0.88. 269.

(7) 中町 祥平・古屋 光一. であり,一定の内的一貫性を確認できた。この結. の有用性について検討する(表5)。. 果から,日本語版SEMLI-Sは信頼性があると判 断した。. 表5 各学年の因子ごとの平均値. 次 に 妥 当 性 の 検 討 と し て,Kaiser-MeyerOlkin(以下,KMO)の標本妥当性を求めた。 KMOの標本妥当性の測定は,変数群に適切な共 通因子が存在するかどうかの判断に利用される数 値である。KMOは値が1.0に近づくほど適切な共 通 因 子 が 存 在 す る こ と を 示 す。 逆 に い う と,. 対象者 . 構成主義学習論における モニタリング・評価・ 自己効力 集中の調節 接続性(CO) 学習計画(MEP) (SE) (CO). 全体 (n=102). 2.70. 2.99. 2.62. 3.55. 2年生 (n=39). 2.99. 3.03. 2.81. 3.69. 3年生 (n=63). 2.52. 2.97. 2.50. 3.47. KMOの値が小さければ,変数群全体に共通する 関 連 性 は 乏 し い と 考 え ら れ る。 具 体 的 に は,. 表5は各学年の各因子における項目の平均値を. KMOが0.5未満であれば因子分析の適用は不適切. 示している。この結果に対し,各因子で分散分析. であると解釈される。. を行なった結果,「構成主義学習論における接続. 本調査におけるKMOの標本妥当性の値は0.86. 性」と「自己効力」において2年生の平均値が3. であり,適切な共通因子が存在することが示され. 年生の平均値に比べて有意に高いことが示された. た。この結果から,日本語版SEMLI-Sの妥当性. (構成主義学習論における接続性:F(1,712)=. を確認することができた。. 25.7,p< .001, 自 己 効 力:F(1,508)=8.40,p<. 各因子と他の3つの因子との相関係数の平均値. .01)。これらのことから「構成主義学習論におけ. を算出した弁別的妥当性は,0.45~0.51であり,. る接続性」と「自己効力」については3年生に対. それぞれ中程度の正の相関が見られた。さらに因. して支援を試みる必要性が示された。その具体的. 子ごとの項目間の相関分析の結果,すべての項目. な支援のあり方については今後検討していく必要. 間においても中程度の正の相関が見られた (表4) 。. があるが,日本語版SEMLI-Sを実施したことで 各因子における生徒の実態を垣間見ることがで. 表4 項目間の相関係数 因子名 構成主義学習論における 接続性(CC) モニタリング・評価・ 学習計画(MEP). き, 日本語版SEMLI-Sは有用性があると判断した。. 構成主義学習論における モニタリング・評価・ 自己効力 集中の調節 接続性(CO) 学習計画(MEP) (SE) (CO) 1. 4.2 ラッシュモデルによる分析. .402**. .547** .462**. ラッシュモデルとは,測定結果の客観性を保証. 1. .454** .483**. するための数学的モデルである。このラッシュモ. 自己効力(SE). 1. .535**. デルは,項目の難度推定値と被験者の能力推定値. 1. を同じ次元の対称の変数と考え,2つの値を間隔. 集中の調節(CO) **. 相関係数は1%水準で有意(両側)である。. 尺度上の値で表すことができる。ラッシュモデル は測定結果の客観性を想定して開発された数学的. つまり今回日本語版SEMLI-Sで確認できた各. なモデルであるため,調査による測定結果がラッ. 因子は,完全に独立したものではなく,互いに関. シュモデルに適合する場合,調査問題の客観性を. 連していることが示された。これはThomasら. 証明することができる。. (2008)の研究においても,同様の結果が報告さ れている。. 4.2.1 質問項目のラッシュモデルとの適合性 日本語版SEMLI-S18項目とラッシュモデルの. 4. 1. 4 日本語版SEMLI-Sの有用性の検討. 適合性を調べるためには,MODEL.S.E.(以下,. 調査の結果から,開発した日本語版SEMLI-S. S.E.),INFIT・OUTFIT MNSQ,INFIT・. 270.

(8) 中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研究. OUTFIT Zstdの5つの値について分析する必要. 解が分かれ,一概には定まっていないが,本研究. がある。. では多肢選択式の質問項目で最も一般的な0.7~. 以下,表6のS.E.,INFIT・OUTFIT MNSQ,. 1.3の範囲を基準とする(靜, 2007)。. INFIT・OUTFIT Zstdについて順に述べる。. 表6より項目全体のINFIT MNSQの平均値は 0.99である。また,INFIT MNSQの最大値と最小. 4. 2. 2 MODEL.S.E.(model standard error). 値より,18項目それぞれのINFIT MNSQは0.75~. S.E.は,項目難度の推定誤差の標準偏差を表し. 1.22の間の数値をとることがわかる。よって,全. ている。このS.E.のおおよその基準値は,次に示. 項目が許容範囲である0.7~1.3内にあることが確. すWright(1977)の式によって求めることがで. 認できた。. きる。この式で得られる値を超えるS.E.を示した. OUTFIT MNSQの許容範囲も,INFIT MNSQ. 項目はその正答者の割合が15%以下,あるいは. と同様に,一概には定まっていないが,本研究で. 85%以上であり,被験者集団に対してその項目が. は多肢選択式の質問項目で最も一般的な0.7~1.3. 難しすぎ, あるいは簡単すぎることを表している。. の範囲を基準とする(靜, 2007)。. つまり,基準値を超える項目から得られる情報は. 表6より項目全体のOUTFIT MNSQの平均値. 誤差が大きく,信頼性がないことを意味する。式. は1.03で あ り, 許 容 範 囲 内 に あ る。 一 方,. 中のNは被験者数を表す。. OUTFIT MNSQの最大値と最小値より,18項目. S.E.=. 2.5 √N ̅. それぞれのOUTFIT MNSQは0.75~1.35の間の数 値をとることがわかる。よって,いくつかの項目. 被験者102名の場合,基準値は0.25である。表. が許容範囲(0.7~1.3)外にあることが判明した。. 6より項目全体のS.E.の平均値は0.11である。ま. 表7は18項目の測定結果を項目難度の高い順番. たS.E.の最大値と最小値より,18項目それぞれの. に並べた表である。表7より,項目ごとのOUTFIT. S.E.は0.11~0.12の間の数値をとることがわかる。. MNSQを調査すると,18番の項目(OUTFIT MNSQ. よって,全項目が基準値である0.25を下回ること. =1.35)を除く17項目がラッシュモデルに適合し. が確認できた。. て い る こ と が 分 か っ た。 ま た,18番 の 項 目 の OUTFIT MNSQは1.35であり,わずかではある. 4. 2. 3 INFIT・OUTFIT MNSQ(information-. が許容範囲より上(1.3<1.35)に外れていた。. weighted・outlier-sensitive mean square fit statistics). 4.2.4 INFIT・OUTFIT Zstd. データがラッシュモデルに適合しているかどう. INFIT・OUTFIT Zstdは,それぞれのMNSQ. かは,各被験者の各項目に対する残差をみて判断. にWilson-Hilfery変換を加え,t分布をする変数. する。残差を使用した適合度指標(fit index)の. に変換した値である。平均が0.00,標準偏差が1. 一つがMNSQである。MNSQは,標準化した残. であり,モデルに適合していればt分布に従うた. 差の平方和の平均を表している。MNSQの期待. め,許容範囲はいずれも-2.0から2.0の間である. 値は1.0であり,理論的には0.0から無限までの間. (Linacre, 2002)。. の値をとる。このMNSQの値には許容範囲が設定. 表6より項目全体のINFIT Zstdの平均値は-0.1. されており,許容範囲外の項目はラッシュモデル. であり,許容範囲内にある。またINFIT Zstdの. に 不 適 合(misfit) で あ る こ と を 意 味 す る。. 最大値と最小値より,18項目それぞれのINFIT. MNSQは, 使 用 す る「 平 均 」 の 種 類 に よ っ て. Zstdは-2.0~1.6の間の数値をとることがわかる。. INFITとOUTFITの2種類に分かれる。. よって,全項目が許容範囲(-2.0~2.0)内にある. INFIT MNSQの許容範囲は専門家の間でも見. ことが確認できた。. 271.

(9) 中町 祥平・古屋 光一. 表6 ラッシュモデルによる分析結果の概要(項目難度) Summary of 18 Measured Items. INFIT. OUTFIT. TOTAL SCORE. COUNT. Measure. MODEL S.E.. MNSQ. ZSTD. MNSQ. ZSTD. Mean. 292.6. 102.0. 0.00. 0.11. 0.99. -0.1. 1.03. 0.1. S.D.. 43.4. 0.0. 0.53. 0.00. 0.16. 1.2. 0.18. 1.3. Max.. 377.0. 102.0. 0.89. 0.12. 1.22. 1.6. 1.35. 2.2. Min.. 222.0. 102.0. -1.03. 0.11. 0.75. -2.0. 0.75. -2.0. REAL RMSE. 0.12. TRUE SD. 0.52. Separation. 4.49. Item Reliability. 0.95. MODEL RMSE. 0.11. TRUE SD. 0.52. Separation. 4.65. Item Reliability. 0.96. S.E. of Item Mean=. 0.13. 表7 ラッシュモデルによる項目ごとの分析結果 ENTRY TOTAL TOTAL. MODEL. NUMBER SCORE COUNT MEASURE. INFIT. OUTFIT. PTMEASUR-AL EXACT MATCH. S.E.. MNSQ. ZSTD. MNSQ. ZSTD. CORR.. EXP.. OBS%. EXP%. Item SE5. 13. 222. 102. 0.89. 0.12. 0.80. -1.5. 0.86. -1.0. 0.68. 0.61. 52.0. 43.1. 9. 232. 102. 0.75. 0.12. 1.19. 1.4. 1.19. 1.3. 0.51. 0.62. 44.1. 42.2. SE3. 1. 243. 102. 0.60. 0.11. 1.10. 0.8. 1.22. 1.5. 0.50. 0.62. 39.2. 42.1. CC1. 17. 253. 102. 0.48. 0.11. 1.11. 0.9. 1.23. 1.6. 0.62. 0.62. 42.2. 41.8. CC6. 3. 254. 102. 0.46. 0.11. 0.82. -1.4. 0.92. -0.5. 0.66. 0.62. 50.0. 41.8. SE1. 12. 263. 102. 0.35. 0.11. 0.78. -1.8. 0.79. -1.6. 0.70. 0.62. 51.0. 41.6. CC5. 14. 266. 102. 0.31. 0.11. 0.94. -0.4. 0.94. -0.4. 0.62. 0.62. 47.1. 41.0. CC7. 4. 279. 102. 0.16. 0.11. 1.22. 1.6. 1.18. 1.3. 0.67. 0.62. 35.3. 41.4. CC2. 7. 286. 102. 0.07. 0.11. 1.15. 1.1. 1.20. 1.5. 0.52. 0.62. 40.2. 40.8. MEP7. 8. 304. 102. -0.14. 0.11. 1.05. 0.4. 1.04. 0.3. 0.68. 0.62. 37.3. 40.3. CC3. 5. 313. 102. -0.25. 0.11. 1.16. 1.2. 1.23. 1.6. 0.48. 0.61. 36.3. 40.8. MEP8. 15. 313. 102. -0.25. 0.11. 0.75. -2.0. 0.75. -2.0. 0.70. 0.61. 42.2. 40.8. SE6. 6. 315. 102. -0.27. 0.11. 0.76. -1.9. 0.76. -1.9. 0.68. 0.61. 51.0. 40.8. SE2. 2. 317. 102. -0.30. 0.11. 0.96. -0.3. 0.96. -0.3. 0.55. 0.61. 41.2. 40.9. MEP1. 10. 319. 102. -0.32. 0.11. 0.95. -0.3. 0.94. -0.4. 0.70. 0.61. 46.1. 40.7. CC4. 11. 344. 102. -0.62. 0.11. 0.92. -0.6. 0.92. -0.5. 0.63. 0.60. 43.1. 40.8. CO2. 16. 366. 102. -0.89. 0.11. 0.96. -0.2. 0.98. -0.1. 0.59. 0.59. 36.3. 41.4. CO3. 18. 377. 102. -1.03. 0.11. 1.19. 1.4. 1.35. 2.2. 0.54. 0.58. 40.2. 41.8. CO4. MEAN. 292.6. 102.0. 0.00. 0.11. 0.99. -0.1. 1.03. 0.1. 43.0. 41.3. P.SD. 43.4. 0.0. 0.53. 0.00. 0.16. 1.2. 0.18. 1.3. 5.3. 0.7. また,表6より項目全体のOUTFIT Zstdの平. 4.2.5 被験者能力のラッシュモデルとの適合性. 均 値 は0.1で あ り, 許 容 範 囲 内 に あ る。 一 方,. 18番の項目とラッシュモデルが適合していな. OUTFIT Zstdの最大値と最小値より,18項目そ. かったが,その原因は質問項目そのものにあるの. れぞれのOUTFIT Zstdは-2.0~2.2の間の数値を. ではなく,ごく少数の被験者の得点によるもので. とることがわかる。よって,いくつかの項目が許. ある可能性もある。そこでこの項では,被験者と. 容範囲(-2.0~2.0)外にあることが判明した。. ラッシュモデルの適合性について分析していく。. 表7より,項目ごとのOUTFIT Zstdを調査す. 被験者102名のラッシュモデルへの適合性を調べ. ると,18番の項目(OUTFIT Zstd=2.2)を除く. る た め に は, 先 ほ ど の 質 問 項 目 と 同 様,S.E.,. 17項目がラッシュモデルに適合していることが分. INFIT・OUTFIT MNSQ,INFIT・OUTFIT. かった。また,18番の項目のOUTFIT Zstdは2.2. Zstdの5つの値について分析する必要がある。表. であり,わずかではあるが許容範囲より上(2.0. 8は被験者102名の分析結果の概要を示した表で. <2.2)に外れていた。. ある。. 272.

(10) 中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研究. 以下,適合性を示すための5つの値について順. INFIT・OUTFIT Zstdの許容範囲はいずれも. に述べる。. -2.0から2.0の間である(Linacre, 2002)。. まずS.E.はWright(1977)の式より,18項目の. 表8より被験者全体のINFIT Zstdの平均値は. 場合,基準値が0.59である。. -0.2である。一方,INFIT Zstdの最大値と最小値. S.E.=. より,被験者102名それぞれのINFIT Zstdは-4.0. 2.5 √N ̅. ~3.7の間の数値をとることがわかる。よって,. 表8より被験者全体のS.E.の平均値は0.27であ. いくらかの被験者が許容範囲(-2.0~2.0)外にい. る。一方,S.E.の最大値と最小値より,被験者. ることが判明した。. 102名それぞれのS.E.は0.25~0.71の間の数値をと. OUTFIT Zstdの平均値は-0.2である。一方,. ることがわかる。よって,いくらかの被験者が基. OUTFIT Zstdの最大値と最小値より,被験者102. 準値である0.59を上回ることが判明した。. 名それぞれのOUTFIT Zstdは-3.9~4.5の間の数. INFIT MNSQの許容範囲は多肢選択式の質問. 値をとることがわかる。よって,いくらかの被験. 項目で最も一般的な0.7~1.3の範囲を基準とする. 者が許容範囲(-2.0~2.0)外にいることが判明し. (靜, 2007) 。. た。. 表8より被験者全体のINFIT MNSQの平均値. ここまでに述べたようにS.E., INFIT・OUTFIT. は1.01である。一方,INFIT MNSQの最大値と最. MNSQ,INFIT・OUTFIT Zstdの被験者全体の. 小値より,被験者102名それぞれのINFIT MNSQ. 平均値は,いずれも基準値以下あるいは許容範囲. は0.20~2.57の間の数値をとることがわかる。よっ. 内であった。一方,各値の最大値と最小値より,. て,いくらかの被験者が許容範囲(0.7~1.3)外. 被験者102名のうち何名かが許容範囲外の値を示. にいることが判明した。. していることが判明した。. OUTFIT MNSQも,INFIT MNSQと同様に,. 4.2.3と4.2.4において,質問項目とラッ. 多肢選択式の質問項目で最も一般的な0.7~1.3の. シュモデルの適合性を調査した結果,18番の項目. 範囲を基準とする(靜, 2007)。. のOUTFIT MNSQとOUTFIT Zstdが許容範囲を. 表8より被験者全体のOUTFIT MNSQの平均. わずかに超えていたことについて述べた。18番の. 値 は1.03で あ る。 一 方,OUTFIT MNSQの 最 大. 項目が許容範囲を超えたのは,質問項目そのもの. 値と最小値より,被験者102名それぞれのOUTFIT. に原因があるのではなく,ごく少数の被験者の得. MNSQは0.21~3.20の間の数値をとることがわか. 点によるものである可能性もある。そのため今後. る。よって,いくらかの被験者が許容範囲(0.7. は,許容範囲外の値を示している被験者一人ひと. ~1.3)外にいることが判明した。. りの回答結果を検討する必要がある。. 表8 ラッシュモデルによる分析結果の概要(被験者能力) Summary of 102 Measured Person (Students). INFIT. OUTFIT. TOTAL SCORE. COUNT. Measure. MODEL S.E.. MNSQ. ZSTD. MNSQ. ZSTD. Mean. 51.6. 18.0. -0.15. 0.27. 1.01. -0.2. 1.03. -0.2. S.D.. 12.7. 0.0. 0.93. 0.05. 0.54. 1.7. 0.59. 1.8. Max.. 88.0. 18.0. 3.64. 0.71. 2.57. 3.7. 3.20. 4.5. Min.. 27.0. 18.0. -2.08. 0.25. 0.20. -4.0. 0.21. -3.9. REAL RMSE. 0.30. TRUE SD. 0.88. Separation. 2.88. Person Reliability. 0.89. MODEL RMSE. 0.28. TRUE SD. 0.89. Separation. 3.22. Person Reliability. 0.91. S.E. of Person Mean=. 0.09. 273.

(11) 中町 祥平・古屋 光一. 4. 2. 6 日本語版SEMLI-S18項目の客観性の 検討. 5.まとめ. ある質問項目でMNSQやZstdの数値が許容範. 本研究において作成した日本語版SEMLI-Sで. 囲より下に外れている場合,その質問項目には. は,「構成主義学習論における接続性」「モニタリ. ラッシュモデルで期待する以上の弁別力があり. ング・評価・学習計画」 「自己効力」 「集中の調節」. (over fit) ,上に外れている場合,その質問項目. の4つの因子が抽出された。これら抽出された4. はラッシュモデルが期待する以上にランダム性が. 因子それぞれの相関関係を調べた結果,各因子は. 強いこと(under fit)を意味する。質問項目の弁. 共通部分がある一方で,メタ認知的学習の別々の. 別力とは,被験者の能力の高低を見分ける力のこ. 面を評価していることを確認できた。さらに,こ. とであり,これが期待する以上に高いということ. の日本語版SEMLI-Sを活用することで,因子ご. は,質問項目の内容が他の項目に依存しすぎてい. とに学年間の実態の違いを把握できた。. る可能性がある。例えば,他の項目に正答した場. また,ラッシュモデルによる分析の結果,質問. 合にのみこの項目に正答できるような仕組みだ. 項目とラッシュモデルの適合性が確認できた。. と,これに近いパターンが生じる(靜, 2007)。. 以上の結果から,日本語版SEMLI-S全18項目. over fitは通常は問題とはしない。これはその. から得られる情報は,十分に信頼性と有用性があ. 項目独自の貢献がなく,すでに他の項目が明らか. ると判断できた。. にした能力情報をほとんどなぞっているというこ. し か し, 本 研 究 に お い て 作 成 し た 日 本 語 版. とであるため, テストにとってやや余分な存在(な. SEMLI-Sでは,Thomasら(2008)が確認した5. くてもよい)かもしれないが,有害な存在(あっ. 因子のうち,「学習におけるリスク認識」を確認. てはならない)ではないからである。これに対し. することができなかった。この原因として次の2. て顕著なunder fitは基本的には有害なため,削除. 点が考えられる。. を検討する場合がある(静, 2007)。 分析において,許容範囲を超えていた18番の項 目について検討する。. ①日本語訳した質問項目の文意が回答者にしっか りと伝わらなかったこと。. 18番の項目のOUTFIT MNSQが許容範囲をわ. ②本 研究の調査対象者は,Thomasら(2008)で. ずかに超えていた。しかし,その値は1.35と許容. 確認された因子「学習におけるリスク認識」を. 範囲の上限である1.3に非常に近い値であること,. 持ち合わせていないこと。. また選択した数値が予想外に低かった被験者1名 を分析から外すと, 許容範囲内に収まる (OUTFIT MNSQ=1.0)ことから,全体の測定に大きな影. 6.今後の課題. 響を与えているとはいえない。. 6.1 質問項目の再検討. 18番の項目のOUTFIT Zstdが許容範囲をわず. 今回の調査では因子「学習におけるリスク認識」. かに超えていた。しかし,その値は2.2と許容範. が確認できなかったことをふまえ,SEMLI-Sの. 囲の上限である2.0に近い値であること,また先. 日本語訳が妥当であったかを再検討し,その上で. ほどと同じ被験者1名を分析から外すと,許容範. 質問項目の文言の見直し・改善を行う。また,改. 囲内に収まる(OUTFIT Zstd=0.1)ことから,. 善後の日本語版SEMLI-Sを実施し,因子分析を. 全体の測定に大きな影響を与えているとはいえない。. 行うことで,Thomasら(2008)と同様の5因子. これらのことから,18番の項目を含む日本語版. が改善後の日本語版SEMLI-Sでも確認できるか. SEMLI-S全18項目は,ラッシュモデルに適合し. どうかについて調査する。. ていると判断した。. 274.

(12) 中学校の理科学習におけるメタ認知,自己効力,学習過程についての研究. 6. 2 日本語版SEMLI-Sを活用した指導方略の. Wright, B.D. (1977). Solving measurement problems with the Rasch model. Journal of Educational. 検討 今回の調査結果をふまえた, 「構成主義学習論 における接続性」 「自己効力」の向上に関する指 導方略を作成・実施し,その効果を検証する(指 導後の日本語版SEMLI-Sの再実施や生徒へのイ. Measurement, 14⑵, 97-116.. (中町 祥平 北海道教育大学大学院生) (古屋 光一 北海道教育大学旭川校教授). ンタビュー等を通して)必要がある。. 引用文献 星野沙織・益田裕充・半田良廣(2015)「理科授業の構造 化と「主体的な問題解決」を支えるメタ認知の育成に 関する研究」 『日本科学教育学会研究会研究報告』29 ⑺,39-42. Linacre J.M. (2002). What do Infit and Outfit, Meansquare and Standardized mean?. Rasch Measurement Transactions, 16⑵, 878, Retrieved from http://www. rasch.org/rmt/rmt162f.htm 三宮真智子(2008)『メタ認知-学習力を支える高次認知 機能-』北大路書房,1-37. Schraw, G. (2000). Assessing Metacognition: Implications of the Buros Symposium. Issues in the Measurement of Metacognition, 297-322. Schraw, G., Crippen K., & Hartley K.D. (2006). Promoting Self-Regulation in Science Education: Metacognition as Part of a Broader Perspective on Learning. Research in Science Education, 36⑴, 111139. 靜哲人(2007) 『基礎から深く理解するラッシュモデリン グ-項目応答理論とは似て非なる測定のパラダイム-』 関西大学出版社 田中敏(2006)『実践心理データ解析-問題の発想・デー タ処理・論文の作成-』新曜社 手塚基子・片平克弘(2003)「メタ認知能力の視点から探 るイオン概念獲得に関する研究-「化学変化とイオン」 の学習にみられる個々の中学生の変容過程を事例に-」 『理科教育学研究』44⑴,29-37. Thomas, G.P., Anderson, D., & Nashon, S. (2008). Development of an Instrument Designed to Investigate Elements of Science Students’ Metacognition, Self-Efficacy and Learning Processes: The SEMLI-S. International Journal of Science Education, 30⒀, 1701-1724. Veenman, M.V.J., Hout-Wolters, B.H.A.M., Afflerbach, P. (2006). Metacognition and learning: conceptual and methodological considerations. Metacognition Learning, 1⑴, 3-14.. 275.

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参照

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