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研究業績・活動報告2001

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(1)東 北 大 学 多 元 物 質 科 学 研 究 所. 研 究 業 績・活 動 報 告 2001 年(平成 13 年)12 月. Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials Tohoku University Sendai, Japan.

(2) 多 元 物 質 科 学 研 究 所. 研 究 業 績・活 動 報 告 目. 次. 研究活動報告-------------------------------------------------------------------------- 1. 研究会報告---------------------------------------------------------------------------- 114. 学会発表講演目録------------------------------------------------------------------- 138. 研究業績目録------------------------------------------------------------------------- 228. 著者索引------------------------------------------------------------------------------- 297.

(3) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 物理機能設計研究分野. 教. 授:齋藤文良. 助. 手:加納純也,張 其武. (2001.1∼2001.12). 博士研究員:水上浩一 研 究 生:宮崎幸,井上毅(積水化学工業(株)) 杉野昌美(旭化成メタルズ(株)),王軍(中国) 大 学 院 生:李載寧(韓国,D3),佐伯周(D2),三尾浩(D1) 清野恵一(D1,鶴岡高専),田中泰光(D1,(株)ソニー)伊藤貴裕(D 1,日鉄鉱業(株)),中川貴雄(M2,現NEC(株))松本弘樹(M2,現(株) 日立製作所),盧金鳳(中国,M2)山元一生(M2),吉川祥平(M2), 稗田真人(M2) 三橋克則(M1),今井亮(M1) 学 部 学 生:東条孝俊(B4),森洋人(B4) 海外長期出張:加納助手(平成13年1‐3月,コロンビア大学(USA)研究員),齋藤教授(平成13年4 ‐12月,Ecole des Minesd’Albi(France)客員教授),水上博士研究員(平成13年9月‐平成14年2月, Ecole des Mines d’Albiポスドク).国際会議出張:齋藤教授(ISMIP-4(5.14-16, Toulouse, France), 7th AGGLOS(5.29-31, Albi, France),IFPRI Annual Meeting(6.3-8, Gainesville, USA)),齋藤教授, 張助手(SECOTOX‐2001(8.19-23, Krakow, Poland)).受賞関係:加納助手(青葉工学会研究奨励賞). 本研究グループの2001年に実施した研究活動の概略は以下のとおりである. 1. メカノケミカル(MC)法を利用した材料開発 (1) MC法による酸弗化希土類の合成と特性評価 希土類(La, Sm, Nd, Pr)酸化物と同弗化物,あるいは希土類酸化物とフッ素樹脂(PDVF, PTFE)をMC 処理し,それぞれの系から触媒や電磁気材料として有望視されている酸弗化希土類並びにその固溶体 を直接合成する手法を見出し,合成物の材料科学的特性を明確にする研究を実施した. (2) ぺロブスカイト型複合酸化物のMC合成 酸化物を出発原料にして,例えば,貴金属触媒の代替品となりうるLaMnO3,La1-xSrxMnO3,LaCrO3など のぺロブスカイト型複合酸化物を乾式粉砕法(MC法)により合成することを試み,合成機構を明確に した.また,MC合成に及ぼす出発物質の結晶構造依存性についても明確にしつつ,合成物の触媒特性 評価についても実験的検討を進めている((株)本田技術研究所との共同研究). (3) PVC廃棄物の有効利用に関する研究 PVC廃棄物を利用として,例えば,貴金属を含む廃棄物から貴金属を回収する新しいMCソフトソリ ューションプロセスの開発研究を実施し,含まれる貴金属を非加熱で回収できることを示した.同様 の手法で希土類磁石廃棄物などから有価希土類が回収可能である.一方,PVCの非加熱脱塩素法で生成 するろ液から,ヒドロキシアパタイトが合成できることを示し,ろ液が河川や湖沼のリン酸塩の低減に 有効であることを示唆する研究も実施した.なお,この本研究の一部は,ENSTIMAC(Ecole des Mines d’Albi(France))との国際共同研究である. (4)難燃性ポリマーおよびハロゲン含有有害有機廃棄物の非加熱処理・無害化法の開発 PTFE,HBB等の難燃性ポリマーや有機塩素系廃棄物に適宜添加剤を加えMC処理(但し,脱ハロゲン剤 は異なる)することにより,非加熱で脱ハロゲン化あるいは有害物の無害化が達成できることを明確 にした.このプロセスを実用化するには反応機構解明と反応効率支配因子を明確にする必要があり, 多研究分野ならびにENSTIMACとの共同研究によって目的達成を図っている. (5)メカニカルアロイング(MA)による水素吸蔵合金(Mg2Ni)の合成とその特性評価.

(4) 研 究 活 動 報 告. 金属MgとNiを出発物質として,微量の金属を添加してArガス雰囲気下で遊星ミルによる乾式粉砕 (MA)を行い,Mg2Ni系合金を直接合成し,その水素吸蔵特性(PCT特性曲線)を測定・評価している.本 年は,合成した合金の電気化学的水素吸蔵特性評価と負極材料の製造に関する研究を実施した((株)本 田技術研究所との共同研究). (6) 焼却煤中の酸化物のMC硫化に関する研究 焼却煤中には大量の非鉄金属(Pb,Zn,Cu)酸化物が含まれ,その量は膨大なもので,それらは重要 な金属資源と見なせるが,その回収にはあまり注目されていない.本研究ではこれらの非鉄金属酸化 物を回収するために,酸化物をMC硫化し,磁選あるいは浮選によって回収する新しい手法を開発する 研究を実施した.本研究は平成13年度産業技術研究助成事業であり,日鉱テクノサービス(株),秋田 大学との共同研究となっている. (7)メカノケミストリーの食品,化粧品への応用 セルロース,グルコースなどは食品,化粧品原料として多用されており,その製造プロセスでは粉 砕処理が行われる.粉砕処理過程でのこれらの物質の結晶構造変化,他の物質との混合粉砕における MC効果を明確にすると共に,計算化学的手法による最弱結合の探索と切断結合への付加反応の可能性 を追及している(ENSTIMACとの国際共同研究). 2.離散要素法によるボールミルシミュレーションと計算化学による分子シミュレーション (1)乾式媒体型粉砕機の最適設計・スケールアップ法開発 媒体粉砕機を対象として,離散要素法(DEM)を基本としたモデルを用いて,粉体共存下での媒体の 運動の3次元解析(ボールミルシミュレーション)を行い,媒体の衝突運動エネルギーを求める手法を 提案しているが,この衝突運動エネルギーは,実測した砕料の粉砕速度の支配要因であることを確認 し,粉砕機のスケールアップの設計指針となりうることを明確にした.なお,本法は,粉砕機のみな らず,ボールを媒体とする回転ロータ型複合化・混合装置についても適用可能であり,その実証をも 行っている. (2)湿式粉砕機内の媒体運動の表示と粉砕現象の予測 湿式粉砕機内における媒体運動をDEMによって表示し,非粉砕物の粉砕速度などの粉砕現象を理解す るための検討を進めている.本年は,特にDEMモデルに粘性抵抗ならびに媒液の浮力を導入し,媒体運 動を正確に表示できるようにした.その結果,湿式粉砕における媒体運動エネルギーが計算でき,試 料の粉砕速度との良好な相関性を導出することができた. (3)MC反応の予測手法への適用 MC反応収率の処理時間による変化の実験結果に基づき,処理時間を粉砕機内媒体運動の衝突エネル ギーを求め,上記2(1)で示した検討を行い,これより反応予測の支配要因を明確にし,ミル(MC反応 機)のスケールアップ法や最適操作要因を明確にしている. (4)MC効果・反応への計算化学的アプローチ 容易に実験できないような毒性の強い物質を取扱う場合の反応過程や処理過程で不安定な,あるいは 短寿命な中間物質の物性や反応性を予測する手法として計算化学を取り入れ,メカノケミカル効果や 反応の予測を行う研究を実施している.本年は,物質間でのMC反応の未解明な反応機構の解明の他, 新たに食品,化粧品,医薬品原料へのMC分子設計,MCナノテクノロジーへの計算化学によるシミュレ ーション研究に取り組んだ. 3.アークプラズマ法による複合化超微粒子の直接製造 金属をターゲットとして各種ガス雰囲気下でアークプラズマを照射してナノスケールの複合化超微 粒子を作製する研究を実施している.本年度は,Cu−TiO2系からCuを芯粒子,TiO2を被覆相とする微粒 子で,平均粒径が約20nmとなるものを作製できることを明らかにした(日清エンジニヤリング(株)と の共同研究). 4.その他 紙面の関係で記載できなかったが,その他数件,学内外との共同研究を実施した..

(5) 研 究 活 動 報 告. 化学機能設計研究分野 (2001.1∼2001.12). 【研究活動報告】 教. 授:楠. 勲. 助 教 授:高見知秀 (2001.3.15-2001.3.31) 助. 手:高岡. 毅、高見知秀. 技. 官:猪狩佳幸. 大学院生:稲村美希、阿部. 積、柳町悟司、日下寛信. 本研究分野では固体表面における化学反応の微細機構の解明について研究活動を行っている.2000 年の研究活動としては,以下のように概括される. 1. 分子線と赤外反射分光を組み合わせた表面反応解析装置の開発と,それを利用した衝突誘起表面 化学に関する研究 本研究は,固体表面の化学的機能をデザインするために,表面化学反応素過程の詳細を明らかにする ことを目的にして,気相から表面に衝突する分子の空間的,時間的,運動量およびエネルギー的制御 が可能な分子線技術と,表面の吸着分子の状態分析が可能な赤外反射分光法を組み合わせた新しい表 面化学の研究方法の展開を行っている. 固体表面に吸着している分子が,気相から衝突してくる分子によって,どのように影響を受けるかを 調べるために,超高真空下で清浄化したNi(100)表面に種々の分子を吸着させ,シード法で加速したXe 原子線(運動エネルギー: 0.4 - 3.6 eV) を照射し,その効果を調べた.これまでに研究した系につ いて簡単に結果を述べる. (a). N2/Ni(100)表面におけるXe照射. 窒素分子(N2)の単分子膜を成長させたNi(100) 表面において実験を行った.窒素分子を被覆率0.5 だけ吸着させたNi(100)表面に,Xe原子線を照射することによって表面に吸着していた窒素分子が脱離 (衝突誘起脱離)したことがわかった.このとき照射したXeの運動エネルギーに依存して衝突誘起脱 離確率が変化すること,および,しきい値があり0.84eV以上で衝突誘起脱離が起こることがわかった. この値は,剛体球が弾性衝突するモデルで説明できた. (b) ベンゼン/Ni(100)表面におけるXe照射 ベンゼン多層吸着膜を成長させたNi(100)表面において実験を行った.十層程度ベンゼン多層膜を成 長させた表面に2eVのXe原子線を照射したが,上記のN2の場合に見られたような脱離は観測されなかっ た.これは,Xeの運動エネルギーがベンゼン多層膜内に分散してしまったためであると考えられる. 表面の固さがXe原子線照射効果に影響を及ぼすことがわかった. (c) CO/H/Ni(100)表面におけるXe照射 2種類の吸着種からなる薄膜を成長させたNi(100)表面において実験を行った.水素原子,および, CO分子を吸着させたNi(100)表面にXe原子線を照射したところ,CO吸着位置の変化が観測された.これ は,吸着していたCOの一部が脱離し,局所的な密度が変化したためであると考えられる.Xe原子線照 射により表面吸着状態の変化が誘起されることがわかった. 2. 気相成長法で作成したダイヤモンド表面の構造に関する研究 ダイヤモンド表面にMP-CVD法によりp型半導体ダイヤモンド薄膜を成長させる技術は,かなり確立し つつある.しかし,半導体シリコンで得られるような広い領域で平滑な表面を得ることは未だ困難で ある.ダイヤモンド基板上でのホモエピタキシャル成長では,かなり良質の膜が得られることが昨年.

(6) 研 究 活 動 報 告. 度までの研究で調べられたが,この場合に基板の研磨が問題になる事が明白になった.ダイヤモンド は最も硬い物質であるから,研磨は容易でなく,専門家に依頼しても,我々が望むような平滑面を得 ることは不可能であった.基板の凹凸はそのままエピタキシー膜にも転写され,AFM/STMで観測される. 我々は,RHEED・STM/AFM複合分析装置を用いて,基板の凹凸とCVD成長ダイヤモンド膜の表面形状の関 係を調べ,水素プラズマ処理による平滑化を調べた.AFM像では,この処理により,かなり平滑な面が 得られる事が判明した.これに対して,シリコン等の表面上にヘテロエピタキシーで成長したダイヤ モンド薄膜では,成長メカニズムを反映して,指向性はあるものの凹凸の激しい多結晶膜が得られる. これらの成長メカニズムを解明するために,上記の表面複合分析装置に放電型原子線発生装置を取り 付けた装置を完成させて,研究を開始しているが,成長機構を完全に解明するための十分な実験デー タを得ていない. 3. 窒素イオンビームによるグラファイトおよびダイヤモンドの窒化反応の研究 窒化炭素は,ダイヤモンドよりも硬いことが理論的に予想されて以来,多くの研究者によって合成 が試みられているが,まだ実現していない.我々は,窒素イオンビームをグラファイトおよびダイヤ モンド表面(室温)に照射して窒化反応を起こさせ,窒化膜の形状,組成および電子状態を,STM/AFM およびX線光電子分光(XPS)を用いて詳細に調べた.AFM像は膜が島状成長していることを示した.こ の物質のXPSスペクトルの解釈は混乱を極めており,窒化物の同定にC1s とN1sスペクトルの複数ピー クの帰属は重要課題である.我々はC1sスペクトルを3成分(A, B, C)に,N1sスペクトルを4成分(D, E, F, G)に分割し,窒化過程中の各スペクトル成分の変化,Siの窒化スペクトルとの比較,窒化後の アニーリングによる効果,各成分の結合エネルギー値,他者の実験データと考察などを参考にして, それぞれの成分の帰属を行った.窒化膜の組成分析も行ったが,一部のフェーズでは,極めて化学量 論的組成 C3N4 に近い物が得られている.しかし,その結晶構造はアモルファスに近く,期待されてい るβ-C3N4 ではない.スペクトルのBとE成分を与える物質は,温度を上げると真空中で気化する.他者 の観測によると,C2N2分子が真空中に脱離している.我々はXPSスペクトルの解釈について,決定的な 結論を出すに至らなっかたが,錯綜した議論に有力な指針を示し得た. 4. アルミニウム表面の窒化反応機構に関する研究 窒化アルミニウムはワイドギャップ半導体として,種々のデバイスへの応用が考えられ,各所で研 究が進められている.しかし,アルミニウム表面を直接に窒化する研究は極めて少ない.本研究では, Al (100) 表面を超高真空下で清浄化し,良く制御された条件下で,NH3分子線およびN2+イオンビーム を照射し,窒化反応の進行過程をX線光電子スペクトル(XPS) で追跡した.NH3との反応ではAl基板温 度を400°C程度に上げないと反応は進行しないが,500 eVのN2+イオンビームでは基板は室温でも反応す る.最終的にはいずれの方法でも3nm程度の化学量論的なAlN膜が得られるが,反応の進行過程の顕著 な違いが,XPSスペクトルの時間発展に見られる.我々は反応機構の違いを議論した..

(7) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 表面機能設計分野(2001.1~2001.12). 教. 授:一色 実. 助. 手:三村耕司、王 吉豊、石川幸雄. 特別研究員:Tamas Kekesi 受託研究員:長田純一、打越雅仁、竹中伸也、内田隆治 研究留学生:朱 永福 大 学 院 生:米倉 洋、宋 士恵、金 秉冑、中條宏紀、林 載元 呉. 忠奉、飯島 純、嘉数 良、河合浩太郎. 升潟大介、岩崎由寛、佐藤善昭、杉山栄二 研. 究 生:Georgi Maximov Larev、裵. 俊佑. 本研究分野では,金属および化合物半導体を対象に,主として超高純度素材の作製,新しい精製プ ロセスの開発,高純度素材の特性解明,薄膜およびバルクの特性に与える不純物効果等の研究を行っ ている。2001年の研究活動の概略を以下に述べる. 1. 陰イオン交換法を主体とした半導体用超高純度鉄の作製プロセスの開発 現在,耐環境性に優れたFeSi2が次世代オプトエレクトロニクス用材料として注目され,半導体グ レードの超高純度鉄が必要とされているが,そのような高純度鉄は存在しない.本研究では,実用化 に耐えられる99.9999%相当の超高純度鉄の作製プロセスの構築を行った. 2. 銅の水素プラズマゾーンメルティング 当研究室で開発した水素プラズマゾーンメルティングの銅の精製効果を調べた.特に,他の方法で 除去し難い,非金属不純物元素の除去に極めて有効であることが明らかとなった. 3. 非質量分離型イオンビームデポジション法によるCu/Ta/Si薄膜の作製と評価 銅はULSIの配線材として注目されているが,Siとの反応を避けるためバリア層の挿入が不可欠で ある.本研究では,Ta薄膜のバリア材としての評価を行った.基板バイアス等の最適化により,6 50℃まで安定な構造を実現した. 4. 高純度銅の自然酸化膜と高温酸化 銅の酸化機構の解明を目的として,大気中の自然酸化膜の成長と高温酸化挙動を調べた.酸化速度 は試料純度に依存することがわかった.また,高温酸化の純度依存性を説明可能なモデルを提案した. 5. ブリッジマン法による無双晶P型ZnSe単結晶の成長 密封型るつぼを用いたブリッジマン法により,原料のZnおよびSe組成比を変化させることでP 型ZnSeの作製に始めて成功した.キャリア濃度を大きくする目的でSb添加を行い,成長後の雰 囲気処理効果を明らかにした. 6.高濃度アクセプタ―のZnSe:N薄膜の作製 Bridgman法で育成したTwin-free ZnSe単結晶の(110)ウェハを基板として,MOVPE法により窒素ドー プZnSeホモエピタキシャル膜を成長し,高温アニールにより窒素の活性化率を高め,キャリア濃度を 上げるための条件を明らかにした.この結果からアニールすることにより,p型伝導を示し,最高アク セプター濃度として6.7×1017 cm-3のものが得られた.この値は,従来報告されている値に比べて高い ものである.また,窒素アクセプタ―準位をPLスペクトルの温度依存性から109 meVと求めた..

(8) 研 究 活 動 報 告. 7.超高純度CdTe単結晶の成長とフォトルミネッセンス 素材Cdに加え,Teの高純度化を施すことによって,これまでにない超高純度CdTe単結晶の 成長に成功した.また,その後の不純物添加,雰囲気処理およびガンマ線照射により,不純物,固有 欠陥およびそれらの会合欠陥に関連した発光スペクトルを明らかにした. 8. その他 上記研究に加え,都市ごみ焼却灰の熱プラズマ溶解処理,高純度鉄およびCdTeの自己拡散,Ⅱ ―Ⅵ族化合物半導体の光物性,銅合金の内部酸化,超高純度コバルト,鉄,白金族元素,マンガン等 の高純度化に関する共同研究を行っている..

(9) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 光機能設計研究分野(2001.1∼2001.12). 教 授: 助 教 授: 助 手: 機 関 研 究 員: 博 士 研 究 員: 大 学 院 生 :. 伊藤 攻 小野寺 信治 藤塚 守 羅 紅霞 荒木 保幸 Mohamed E. El-Khouly, 今井 健、牧野島 高史、中村 國枝 良太、武山 洋子、山中 健一 研 究 留 学 生 : Atula Sandanayaka. 巧、. 本研究分野では,超短パルスレーザーを用いた高速分光法を主に用いることによって,新規機能性 物質の光機能を評価することにより,更なる物性の向上を目指すとともに,高効率な光反応を開発す ることを研究の目的としている.本研究分野における2001年の研究活動としては,以下のように概括 される. 1. フラーレン・ドナー結合分子の光誘起電荷分離に関する研究 アクセプターとドナー分子を共有結合で結合することにより,高速かつ高効率に電荷分離状態を生 成させることができる.フラーレンをアクセプターとして用いた場合には特に長寿命の電荷分離状態 が実現することをすでに見出しているが,この長寿命電荷分離状態は光起電デバイスへの応用にも適 切である.われわれの研究室ではレチニルをドナーとした連結分子において室温で20マイクロ秒にも 及ぶ長寿命電荷分離状態を実現している. Et. 本年度は,ドナーとしてアズレンと長鎖パイ電子共. Me t-Bu. 役系であるチエニレンエチニレンを用いた(右図参照).. Me. S. N. N. アズレンとフラーレンの連結分子の場合には励起フ ラーレンからアズレンへの高速なエネルギー移動が. S. t-Bu. 効率的に起こるため電荷分離収率が抑えられた.この 結果は光エネルギー伝達システムを実証したもので. Et. S Et. n. アズレンおよびチエニレンエチニレンと フラーレンの結合分子. ある.一方,チエニレンエチニレンとフラーレンの結 合分子の電荷分離過程は1011s-1オーダーであり,長鎖パイ電子共役系分子ワイヤーの導入により高効率 な電荷分離過程を実現した.さらに,オリゴチオフェンとフラーレン結合分子の超微粒子の評価から, 固体状態では1ピコ秒以内で電荷分離が起こることを見出した.電荷分離速度は結晶状態に依存するこ とが示唆された. 2.. フラーレンデンドリマーの光励起緩和過程に関する研究 フラーレンC60にベンジルエーテル型のデンドリマー基を導入し,その光反応性の検討を行った.励. 起一重項状態および三重項状態の寿命はデンドリマー基の導入により変化しなかったが,光誘起電子 移動やエネルギー移動はデンドリマー部位の世代の増加により反応速度の減少を示すことが明らかに なった.この速度減少はデンドリマー部位の立体障害に起因する.この立体障害はフラーレンに生じ たイオン状態の保持においても有効である.実際に,化学反応により生じたフラーレンアニオンはデ ンドリマー部位の世代の増加とともに安定に存在することが確認された. また,水溶性デンドリマー基を有するフラーレンを用いることによって,核酸塩基に対し活性な一 重項酸素を水溶液中で発生させることができることを見出した.この結果はフラーレンの生体分野へ.

(10) 研 究 活 動 報 告. の応用を可能とするものとして,更なる検討を加えている. 3.. フラーレンオリゴマーの光励起緩和過程に関する研究 フラーレンC60は光照射や高圧下でフラーレンポリマーを生成することが知られている.本研究では,. フラーレンのオリゴマーの光物性を求めることにより,フラーレン結合体の物性を明らかにすること を目的としており,これまで二量体C120やC120Oの物性を明らかにしてきた. 本年度はフラーレン三量体C180の光物性を明らかにした.今回測定に用いたC 180. は右図のような三角形の構造をもっていることがSTM観察より明らかになっ. ている.C180の励起三重項状態の生成収率はC60よりも低く,C120とほぼ同等であ ることが明らかになった.そのスペクトルはブロードであり,フラーレン間の. C180. 相互作用が示唆された.また,吸光係数がC60やC120に比べて低いことが明らかとなり,フラーレンポ リマーとC60の中間的な物性であることが確認された. さらに,フラーレンの炭素を窒素に置換したアザフラーレンの二量体C118N2はC120に比べ,フラーレ ン間の相互作用が強いため,励起三重項状態のスペクトルが大きく単量体C59NHから変化することを見 出した. 4.. フルオレセイン増感二酸化チタン太陽電池の反応過程の解明 湿式太陽電池では電極上の二酸化チタン微結晶に色素を結合することにより,光増感型の電荷分離. を起こし,効率的に外部回路に電荷を供給している.本研究では色素として可視域に高い吸光度を有 するフルオレセインを用い,レーザーフラッシュホトリシス法により反応速度の導出を行った.特に 二酸化チタン微粒子をアモルファスにすることにより結晶状態より3-5倍ほど高効率な電荷分離が起こ ることを見出した.さらに,媒体のpH制御により系の最適化が可能であることを明らかにした. 5. 時間分解円二色性測定装置の開発および応用に関する研究. 生体系では不斉の制御はきわめて重要であることはよく知られているが,近年では超分子による不 斉発現も検討されており,その反応ダイナミクスは分子認識の観点からも興味深い.このため,本研 究分野では時間分解円二色性測定装置の開発を行った.ナノ秒波長可変レーザーを励起光源とし,プ ローブ光として楕円偏光を用いることにより,高感度な測定装置の開発に成功した.実際にポルフィ リン二量体に不斉を有するアミン化合物を配位した超分子系において,励起三重項状態の円二色性を 観測することに成功した.さらに,励起三重項状態においてアミン化合物の脱離による不斉の消失か ら,超分子系の分子内反応を明らかにした. 6. その他 本研究分野では,この他にも国内外の研究グループとの共同研究も活発に取り組んでおり,その成果はいく つかの論文として発表している..

(11) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 電子機能設計研究分野 (2001.1∼2001.12). 教. 授:梅津良昭. 助. 手:西村忠久,亀田知人. 共同研究:岡部 徹(東京大学生産技術研究所) 研究支援:橋本裕之 大学院生:竹田 修,蛭子健太,Abdul Hapid 学部学生:加藤秀幸,齋藤慎吾,齊藤大未 本研究分野では,素材プロセシングに由来する環境の汚染および生産される素材の汚染に対する防御 技術の開発・改善に関する基礎研究を進めている.水溶液系に対しては,排水中の無機および有機の 微量有害物の除去,水溶液中の酸化・還元‐析出反応の制御による複合酸化物の生成,層状構造を有 する複合水酸化物の化学修飾および機能化素材の水浄化への応用,電解による高純度金属の製造等に ついて研究を進めている.また,溶融金属を抽出媒体として用いた磁石合金スクラップからのレアア ース金属の回収という新しい概念のプロセスに関する基礎研究も展開しつつある. 1. 水溶液中のアンチモンイオン種の水酸化鉄との共沈除去および加水分解 アンチモンは水溶液中で3価および5価の酸化状態をとり,水溶液からの除去のための水酸化鉄と の共同沈殿や加水分解によるアンチモン含水酸化物の析出などにおいて非常に複雑な挙動を示す. 排水中のアンチモンイオン種の除去を目的として,水溶液中の Sb(Ⅲ)および Sb(Ⅴ)を Fe(OH)3 と 共沈させ,水溶液中に残留するアンチモンイオン種の濃度の時間に伴う変化を追跡し,Sb 初期濃度, Fe/Sb モル比,pH,温度などが共沈反応の進行に及ぼす影響を明らかにした.Sb(Ⅲ)の共沈はpH の設定後速く進行し,時間経過および最終到達濃度の両面で再現性が良好である.一方,Sb(Ⅴ)イ オン種の共沈においては,中性溶液中で時間の経過とともに緩やかに反応が進行してアンチモン濃度 が長時間にわたって下がり続けることを観察した.この現象は,水溶液中のアンチモンの除去プロセ スの開発に関する試験において,これまでに大きなバラツキが見られてきた主要な原因の一つである と考えられる. 塩化物共存の下にアンチモンイオン種を加水分解−析出させ,その反応経路を追跡した. 析出粒子が溶液pH,出発溶液のアンチモン濃度,温度によってその形状を大きく変え,X 線回折か ら同定される化合物も異なることが明らかになった.反応の途中でオキシクロライドが生成し,加水 分解の進行,生成物の形状(成長しやすい結晶面)を変えることを示した. 2.溶融銀およびマグネシウムを抽出溶媒とする磁性合金スクラップからのネオジムの回収 Nd-Fe-B 磁性合金は強い磁性を示す合金材料として需要が伸びつづけている.しかし,その優れた磁 気特性とともに,化学的に活性であり,特に酸素による汚染を受けやすいという特徴を有している. 磁性材料の製造過程で生じるプロセス内スクラップや使用済み材料の再生には,合金の酸素による汚 染を最小にして,再生の歩留まりを高める技術が必要である. 合金中のネオジムとの親和力が大きく,共存する鉄に対する溶解度が十分に小さい抽出媒体が使用 できれば,ネオジムを選択的に浸出して鉄と分離し,合金の原料としての再利用が可能になると期待 される.熱力学的データを比較した結果,銀およびマグネシウムがこの目的に好ましい特性を有する ことが明らかになった. 溶融銀を抽出媒体として用いて,Fe-Nd-B 系合金スクラップからのネオジムのを選択抽出を試みる実 験を行った.1273K 程度の温度で,ネオジムの抽出が速く進行し,90∼95%に至る抽出率が得られるこ とを示した.ここでは,合金中の B は大部分が鉄中に残ることが観察された.また,Fe-Nd2元合金を 用いた抽出実験の結果および Ag-Nd2元系の熱力学的データに基づいて,Fe-Ag=Nd3元系状態図を推定 し,溶融銀中へのネオジムの抽出限界について平衡論的に検討した. また,スクラップ中のネオジムを抽出した溶融 Ag-Nd 合金は 50mass%以上のネオジムを含み,この.

(12) 研 究 活 動 報 告. ネオジムは酸化吹錬によって酸化物として銀と分離する.この過程でにおいて銀は酸化を受けず,そ のまま抽出工程への循環再使用が可能であることを示した. 3.硝酸銅水溶液の電解による超高純度銅の電析 超高純度の銅を電解によって直接生産する場合には,電解液中のアニオン成分による電析金属の汚 染の除去が大きな課題である.すなわち,硫酸銅溶液を電解液とする場合には,硫酸イオンに由来す るいおうによる汚染が問題となる.そこで,電解後の溶解過程の温度において分解が容易な硝酸イオ ンを含む電解浴,硝酸銅溶液を用いた電解を試み,溶液組成,電解温度,電流密度等が銅の電析に及 ぼす影響を調べた.電解液の硝酸塩および硝酸の濃度比,電流密度が電解の進行に大きな影響を及ぼ すことが明らかになった.特に,硝酸濃度が高く,電流密度が高い電解浴では,カソードにおける硝 酸イオンの還元が銅の電析反応と並行して電流効率の低下を招き,亜硝酸イオンの濃度の増加ととも にこの傾向が著しく加速されて,最終的には銅の電析がおこらなくなることを示した. 4.機能化した層間化合物を利用する水質汚濁物質捕集方法の開発に関する研究 層状構造をもつ化合物(いわゆる層間化合物)の一つである層状複水酸化物(LDH),特にハイドロ タルサイトは,種々のアニオンの取り込み反応(インターカレーション)を起こすという特性を有す る鉱物として知られている.この特性を利用した機能付与が可能な素材として注目を集めている.本 研究では,LDH の層間を有機アニオンで化学修飾し,イオン性および非イオン性の有機汚染物質の捕捉 機能を与え,これを極微量の水質汚濁物質(重金属イオン,内分泌かく乱物質等の難分解性有害有機 物質)の捕集に利用するプロセスの可能性を検討している.重金属イオンに対しては,キレート生成 機能を有するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を LDH の層間に含ませ,重金属イオンとの錯体形成に 基づいた捕捉を試みている.重金属イオンとして銅,カドミウムを対象とし,それらの捕捉に及ぼす EDTA 型 LDH 量,溶液 pH,重金属イオン濃度,時間等の影響について明らかにしている.難分解性有機 物質は,層間に固定した有機アニオンとの疎水結合による会合体の形成により捕集することを試みる. 難分解性物質としてビスフェノール A をとりあげ,これを捕捉する有機アニオンとしてドデシル硫酸 ナトリウム(SDS)イオンを使用し,ビスフェノール A の捕集に及ぼす SDS 型 LDH 量,溶液 pH,ビスフ ェノール A 濃度,時間等の影響について検討している.また,素材としての利用を可能にするために, 特性制御された化学修飾 LDH 粒子の合成プロセスの開発を目的として,炭酸イオン型 LDH 粒子の生成 に及ぼす合成方法,合成条件の影響について検討している..

(13) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 生体機能設計研究分野 (2001.1∼2001.12). 教 授:袖岡幹子 助 手:馬場良泰, 濱島義隆 技 官:田中禮子 研 究 員:加藤美穂(科学技術振興事業団) 大学院生:蛭川望,川崎秀和,どど孝介,照井有希子,住吉紘一, 堀田大道 学部学生:生越洋介,影山路人 本研究分野では,有機合成化学を基盤として,新しい生物活性物質の創製と効率的合成の為の方法 論の開発を目指した研究活動を行っている.2001年の研究活動としては,以下のように概括される. 1.. 蛋白質のリン酸化レベルを制御する分子の開発研究. 癌や糖尿病など現代の難治疾患の多くは,生体内の恒常性を制御する細胞内情報伝達の "乱れ" が 関与している.細胞内情報伝達の基本的なしくみに蛋白質のリン酸化-脱リン酸化による情報伝達のス イッチのon-offがあげられる.本研究分野ではこの蛋白質のリン酸化を制御する分子の創製を目指し た研究を行っている. プロテインホスファターゼ阻害剤の開発研究 そのひとつがプロテインホスファターゼ(蛋白質脱リン酸化酵素)の選択的阻害剤の開発研究であ る.具体的ターゲットとして,セリン/スレオニンについたリン酸をはずすタイプのホスファターゼの 一種で,臓器移植の際の拒絶反応に重要な役割をはたしている細胞性免疫活性化の鍵酵素であるカル シニューリン(PP2B)の高選択的阻害剤の設計と合成研究を行った.現在までに類縁酵素であるPP1, PP2Aを全く阻害することなくカルシニューリンを選択的に阻害しうる化合物の創製に成功している. 本年度はさらにより阻害活性の強い誘導体の設計と合成研究を行った.また,当分野で開発された化 合物の細胞レベルでのT細胞増殖抑制試験なども行い,同化合物が弱いながらも細胞レベルでも有効 であることを確認することができた. さらにチロシンについたリン酸をはずすタイプのホスファターゼ (PTP) の阻害剤の研究も行ってい る.細胞増殖や癌化に関係していると考えられている VHRやCdc25などの酵素に対する阻害剤の開発に 既に成功しており,より強力で選択性の高い化合物の開発に取り組んでいる.また,糖尿病における インスリンシグナルの抑制に関わっているとされるPTP-1Bの阻害剤の創製研究も行っている. プロテインキナーゼ阻害剤の開発研究 プロテインキナーゼ(蛋白質リン酸化酵素)の阻害剤の開発研究も行っている.具体的なターゲッ トとしては,発癌プロモーションに重要な働きをしていると考えられる鍵酵素であるプロテインキナ ーゼC(PKC)の阻害剤の開発研究を行った.本年度は新しいPKC結合分子を設計し,その種々の誘導 体の合成と評価を行った. 2.. 細胞死抑制剤に関する研究. アルツハイマー病やパーキンソン病といった様々な神経変性疾患や,脳梗塞や心筋梗塞といった虚 血性障害において,“必要な細胞の死“が症状の発生や悪化に深く関わっている.従ってこの細胞の 死を抑制する化合物はこれらの疾患に対する医薬として期待される.しかし一方で不要になった細胞 の死は生体にとって必要なものであり,この機能に異常がおきると癌や自己免疫疾患などの疾病を引 き起こす.従って,これらの病的な傷害性の細胞死と生理的細胞死を区別して傷害性の細胞死だけを.

(14) 研 究 活 動 報 告. 選択的に抑制するような化合物を開発することができれば,画期的医薬となるとともに,細胞の死と いう生物学における基本的問題の詳細な分子機構の解明にもつながる.本研究分野では,既に生理的 な細胞死に特徴的なアポトーシスを抑制することなく,傷害性の細胞死(ネクローシス)を選択的に 抑制する化合物の開発に成功しており,本年度はそのさらなる構造展開ならびにその化合物の誘導体 をプローブとして用いた作用機序の解明研究を行い,標的蛋白質の同定に成功した. 3.. 触媒的不斉マイケル付加反応の開発研究. 光学異性体の片方だけを効率良く合成する不斉合成の方法論の開発は,医薬や農薬,液晶材料など の生産の為に非常に重要である.本研究分野では遷移金属錯体を触媒として用いる新規不斉合成反応 の開発に取り組んでいおり,既に不斉アルドール反応,不斉マンニッヒ型反応などの開発に成功して いる.本年度は光学活性パラジウム触媒を用いた新規不斉マイケル付加反応(β-ケトエステルのエノ ンへの選択的1,4-付加反応)の開発に成功した.さらにβ-ケトエステルの不斉フッ素化反応,アルド ール型反応等の検討も行った. 4.. 固相担持活性エステルを用いたカーバメートの新規合成法の開発研究. 近年,優れた医薬や材料,触媒など様々な高機能性化合物の開発のために,コンビナトリアルケミ ストリーとハイスループットスクリーニングを組み合わせたアプローチが多用されるようになってき ている.その場合に律速段階となるのが高純度の化合物の合成と精製操作である.本研究分野では固 相担持活性エステルを用いる,カラムなどの精製操作を必要としないアミドの合成法の開発に既に成 功しているが,本年度はさらにこの手法を拡張し,多種類のカーバメート化合物を簡便に合成する方 法論を確立することができた..

(15) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 物理プロセス設計研究分野. (2001.1∼2001.12). 教 授: 助 教 授: 助 手: 技 官: PD研 究 員 : 大学院生:. 岡 泰夫 村山 明宏 高橋 昌明 佐藤 敏雄,相馬 出 M.C. Debnath,Z.H. Chen 斉藤 毅,柴田 勝弘,井加田 拓素,萱沼 健太郎 白鳥 聡志,仲山 英次,佐久間 実緒,櫻井 秀樹 学 部 学 生 : 植竹 理人,内田 智之. 本研究分野では,「半導体ナノ構造の光物性,光機能性」について研究活動を行っている.2000年 の研究活動としては,以下のように概括される. 1.. 磁性半導体量子ドットの作製と新磁気光学機能の開発. Cd1-xMnx SeおよびZn1-x MnxSe量子ドットおよびZn1-xMnx Seマトリ クス中のCdSe量子ドットを作製した.Mnは,融点が高いためド ット内にMnを取り込むことは困難とされるが,表面原子層にの みMnを含ませた原子層エピタキシー法と自己組織化により,直 径4∼6 nmの磁性半導体量子ドットの系統的な作製を行った. また,電子線リソグラフィー法により,30 nmのZn1-x-yCdxMnySe 量子ドットの制御された配列の作製に始めて成功した.(図1) Cd1-xMnxSe,Zn1-xMnxSe量子ドットにおいて,外部磁場により励起. 100 nm. 子発光強度を顕著に増大させることを可能にした.これは,磁 性半導体量子ドットにおいて,励起子の非発光緩和過程を外部 磁場で抑制することができるためである.この原因は,励起子 ボーア半径が磁場により収縮し,ドット表面での非発光確率が. 図1. リソグラフィー法で作製し たZn 0.69 Cd0.23 Mn 0.08 Se量子ドッ ト配列.直径30 nm.. 減少するためと,ドット内における励起子からMnイオンへのオ ージエ過程が磁場により抑制されるためであることを明らか にした.この結果は,磁性半導体量子ドットの持つ新しい磁気 光学機能性を示している. 2.. Zn0.69Cd0.23Mn0.08Se 20 nm QWRs. 磁性半導体量子細線の作製と磁気光学機能の開拓. 電子線リソグラフィー法により,2 種類の磁性半導体量子細 線を作製した.第 1 は,MBE 法で作製した 2 次元量子井戸に. 100 n. 細線描画を行い,量子細線を作製する方法である.第 2 は,基 板の GaAs にリソグラフィー法によりメサ構造加工を行い,こ のメサ上に MBE 法により磁性半導体層を成長させ,量子細線 を形成させる方法である.これらの方法により,Cd1-xMnxSe,. 図2. Zn 0.69 Cd0.23 Mn0.08 Se量子細 線.線幅20 nm.. Zn1-x-yCdxMnySe などを用いて,世界的に最も細い 20 nm の幅の 磁性半導体量子細線の作製に成功した. (図 2)作製した Cd0.90Mn0.10Se,Zn0.69Cd0.23Mn0.08Se 量子細線に は,磁性イオンの影響を強く受けた量子細線巨大磁気光学特性が発現した.細線幅を 20 nm まで狭く すると,量子細線中の励起子は高エネルギーシフトし,その発光が細線の長さ方向に直線偏光して 1.

(16) 研 究 活 動 報 告. 次元量子閉じ込め効果の特長を示す.励起子の大きさに迫る磁性半導体量子細線の形成が可能となっ たため,1 次元巨大磁気光学機能性が得られた. 3.. 磁性半導体量子井戸の作製と光スピン機能の開発. 磁性半導体 2 次元量子井戸については,MBE 法によ. 2.42. り CdTe/Cd1-xMnxTe,Cd1-xMnxTe/Cd1-yMgyTe,Zn1-xMnxTe/ 「スピン分離型量子井戸」の系統的な作製を行った.こ れらの系の格子整合性を最適にして巨大磁気光学特性 を示す量子井戸の作製技術を新たに開発した. CdTe/Cd1-xMnxTe 系の「2 重量子井戸」において,励 起子スピントンネルおよび励起子スピン輸送・注入に成 功し,トンネル過程とスピン注入過程の機構解明を行っ た. Cd1-xMnxTe 磁性量子井戸で生成されスピン分極し た励起子が,CdTe 非磁性量子井戸に高いスピン分極を 保ったまま注入され,発光する励起子スピン輸送・注入 過程が確認され,スピン制御デバイスの基礎技術が確立 できた.Cd1-xMnxTe/Cd1-yMgyTe 系,Zn1-xMnxTe/ZnTe 系量. 4.2 K 2.41. Photon Energy (eV). ZnTe および Cd1-xMnxSe/Zn1-yCdySe 系の「2 重量子井戸」 ,. Zn0.97Mn0.03Te. σ+. 2.40 2.39. ZnTe. 2.38 2.37 2.36. 0. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. Magnetic Field (T) 図3. ZnTe/Zn 0.97 Mn 0.03Teスピン 分離型量子井戸の実現.. 子井戸においては,磁場を加えると,上向きと下向きの 電子正孔スピンの状態が井戸層と障壁層に空間的に分離される「スピン分離型量子井戸」が実現され ていることが,円偏光発光スペクトルより確認された.また,磁場の大きさにより,上向きと下向き スピン状態を 2 つの層で入れ替えることもできる.(図 3)これらの結果,「電子・正孔スピンを空間的 に制御する技術」が確立できた. 4. 半導体・磁性薄膜複合構造の作製とその磁気光物性 MBEにより,Si再配列表面に膜厚が1∼10原子層のCo磁性超薄膜を作製し,その磁気光物性をスピン 波ブリルアン散乱により研究した.膜厚1∼5原子層のAuバッファー膜を用いることにより,実用的に 有用な高い垂直磁気異方性を持つhcp-(0001)単結晶構造Coのエピタキシャル成長に成功した.また, Au/Co界面格子不整合歪の制御により界面垂直磁気異方性の大きさを制御した.さらに超高真空下に おけるブリルアン散乱測定系の開発により,Co表面の一軸性磁気異方性は膜面内にあり,わずか1原 子層のCuオーバーレイヤーによりCo表面の電子構造が変化し,強い表面垂直磁気異方性が誘起される ことを明らかにした.今後は,高い発光効率を持つ化合物半導体や希薄磁性半導体の磁性複合構造を 作製し,新しいスピン光機能性を開拓していく..

(17) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 化学プロセス設計研究分野(2001.1∼2001.12). 教 授:秋葉健一 講 師:三村 均 助 手:伊藤勝雄, 津吉 玲 大学院生:太田 洋,細田明広, 折谷貴幸 学部学生:横田健志, 酒井孝明 本研究分野では,溶液内の化学平衡を基礎として,化学的相互作用の差異を利用する高度分離精製 プロセスを開発し, 無機素材の高純度化に寄与すべく研究活動を行っている. さらに, 放射性核種の 分離回収により, 有効利用と安全な処理処分への寄与を図っている. 2001 年の研究活動としては, 以 下のように概括される. 1. 向流クロマトグラフィーの金属イオンの分離濃縮定量への展開に関する研究 多様な試料中の微量元素の分析においては,予備濃縮・粗分離等の前処理が必要となることが多い. 本研究では,小容量(10 cm3)のカラムを装着した向流クロマトグラフィー(CCC) により,酸性有機リ ン化合物のヘキサン溶液を固定相として,コバルト(Ⅱ),銅(Ⅱ),亜鉛(Ⅱ)について, カラムの固定 相への選択的濃縮, 移動相によるクロマトグラフィー分離, さらに得られたピークからの金属イオン の定量について基礎的検討をした. 希薄な金属イオンを含む試料溶液50 cm3を送液し, カラムの固定相に濃縮した. 移動相のpHを変化 させて各金属イオンを分離し, 比色試薬である4-(2-pyridylazo)resorcinol (PAR)とのポストカラム 反応を利用して,波長500 nmの吸光度を測定することによってクロマトグラムを得た.ピーク面積は 金属イオン濃度に対して直線関係を示し, 検量線が得られた.単一カラムを用いることにより, 試料 の損失や操作過程での汚染が避けられる. CCCによりsub-ppbの希薄溶液から金属イオンの濃縮ならび に分離定量への展開が可能となった. 2. 向流クロマトグラフィーによるレアアースの分離精製 コイル状チューブからなるカラム(内容積290 cm3)に, 重いランタノイドに対して大きな分離係数 を示すCYANEX 272を固定相成分として用いた. ゼノタイムからの粗分離試料について, イットリウム と共存するランタノイドとの分離に適用した. イットリウムと重いランタノイドの分離を図るために, これらの分離係数(α)および分離度(Rs)を調べると, イットリウムとホルミウム間の分離が特に 難しいことが分かった. ゼノタイムから得られた混合レアアースの試料を10 M 硝酸に溶解し, 0.1 M (DTMPPA)2-トルエン溶液に抽出して粗分離した後, CCC分離に供した. この試料はイットリウムを主成 分とし, 重いランタノイドを含んでいる. 移動相のpHを段階的に下げることにより, 共存するランタ ノイドは原子番号の増す順に溶出する. 主成分のイットリウムはホウルミウムとエルビウムの間のい くつかのフラクションに分離回収できた. 溶媒抽出により濃縮後, ICP-AESにより定量した結果, イッ トリウムの純度は99∼99.9%であった. 3. アルギネートゲルポリマーによるルテニウムの吸着分離および回収 高レベル放射性廃液中には有価金属であるルテニウムが含有されており, これを選択的に分離し回 収することは核種の有効利用の点から重要である. 本研究ではバイオポリマーの一種であるアルギネ ートゲルを用いてルテニウムの吸着分離および回収について検討した. バリウムアルギネート(BaAL G)へのRuNO3+の分配係数(Kd)は, 6.7 M HNO3共存下でも52.0 cm3/gの比較的高い値を示した. ルテニウ ムはゲル粒子内で均一に分布し, 最大吸着量は1.30 mmol/gであった. RuNO3+はBaALG充填カラムによ り効率的に吸着でき, 高濃度の硝酸溶液により溶離できた. 4.. フライアッシュのアルカリ水熱処理によるゼオライト化およびセシウムの吸着特性.

(18) 研 究 活 動 報 告. 石炭火力発電所から大量に副生される石炭灰の有効利用の一環として, KOH溶液を用いた水熱処理 により, K-Hゼオライト(K2Al2Si4O12. nH2O)を合成した. K-Hゼオライト生成の最適な条件は, 160℃, 3 日, 1 M KOHおよび液固比15 cm3/gであった. 最適条件で得られた生成物へのCs+の分配係数は104 cm3/ g以上である. Cs+の吸着はラングミューア吸着等温式に従い, 最大吸着容量は3.34 mmol/gである.生 成物-アルギネートゲルポリマーの粒状複合体を充填したカラムにより, Cs+ の連続的な除去が可能で ある. 5. ヘテロポリ酸塩−アルギネート複合体によるセシウムの選択的分離回収 微結晶粉末である無機イオン交換体を造粒複合化できれば, 充填カラムを用いて放射性廃液から特 定の核種を分離回収するのに好都合である. 本研究では, モリブドリン酸アンモニウム(AMP)交換体 の微細結晶のCs選択性を評価するとともに, 包括固定化担体としてカルシウムアルギネート(CaALG) を用いて造粒複合化を行い, 複合体へのCsの吸着特性および充填カラムにおけるCsの破過および溶離 特性について検討した. AMP-CaALG複合体へのCs+の分配係数(Kd,Cs)は, 硝酸濃度10-2∼5 Mの広い領域 で104 cm3/g程度であったが, 他核種(Na+, Sr2+, Co2+, Eu3+およびAm3+)は102 cm3 /g以下であった. Kd,Cs 値は, 共存イオンがH+ > Na+ > K+ > NH4+の序列で低下した. Cs+の吸着はラングミューア吸着等温式に 従い, 最大吸着容量は複合体に包括固定されたAMPの含量とともに増大した. 4.5 M NaNO3-1 M HNO3共 存下で, トレース量の137 Csは複合体カラムに選択的に吸着した. NH4 Cl溶液によるCs+の溶離では, 保 持体積とKd,Cs値との間に直線関係が認められた. AMP-CaALG複合体はHNO3およびNaNO3を含む廃液中の放 射性セシウムの選択的分離回収に有効である. 6 .低レベル放射性廃液の蒸発処理 パラジウム, モリブデン, テルルおよびアンチモンなどの核分裂生成物は核分裂収率が大きいが放 射能寄与が小さいためあまり研究されていない. 核燃料サイクルのプロセス効率を高めるためこれら FPの蒸発挙動を調べた. 単独のPd, Mo, Te, Sbなどを含む希硝酸溶液および硝酸ナトリウム溶液を真 空条件下薄膜式蒸発器で蒸発濃縮した. 薄膜式蒸発器に新たに150メッシュのスプラッシュガ−ドを取 り付けることにより, FPの除染係数(DF)を103から105程度に向上できた. また, 硝酸濃度および 硝酸ナトリウム濃度が増加してもDFに相違はないこと, 元素の種類による相違も認められないことな どから蒸留液中への移動は化学的作用ではなく, 突沸や攪拌によって生じた飛沫などの移動による物 理的現象であることが分かった..

(19) 研 究 活 動 報 告. 表面プロセス設計研究分野(2001.1. 【研究活動報告】 教. 授:栗原和枝. 助. 手:宮原隆, 水上雅史. 2001.12). 博士研究員:中井康裕 大 学 院 生:村瀬靖幸,. Marinov G. Simeonov, 森勝弘, 鈴木武博,. 河田暁, 松永佳明 学 部 学 生:清水裕一郎, 中川泰宏 本研究分野では,表面力測定を中心とする固 液界面ならびに分子組織体の評価,分子間相互作用の 解明,ならびに得られた知見に基づく材料設計について研究活動を行っている.2001年の研究活動と しては,以下のように概括される. 1.固-液界面における水素結合によるマクロクラスターの形成に関する研究 当研究分野では表面力測定,全反射赤外吸収分光法を中心手段としてシクロヘキサン アルコール, カルボン酸2成分液体中のシリカ表面に水素結合により厚さ数10 nmのクラスター(固-液界面マクロ クラスター)の形成を見いだし,固-液界面における液体の構造化の分子レベルでの研究を展開してき た.本年は温度制御機構を組み込み,温度依存性を検討した.その結果,温度上昇に伴いこれらマク ロクラスターの厚さは減少し,マクロクラスターの厚さを温度により制御可能なことが示された. またこの現象の応用として水素結合性モノマーの固-液界面クラスターを光照射によりその場で 重合する新規な薄膜調製法を開発し,アクリル酸,メタクリル酸およびアクリルアミドの高分子ナノ 薄膜調製に成功した.これらの重合膜は分子 レベルで平滑な表面(3 x 3. m2中の平均粗. さ0.2 nm程度)と規則構造をもち,欠陥がな く,厚さが20. 30 nm程度であり,方法の簡便. さや低コストな点から様々な応用が期待され る. 2.ナノ共振ずり応力測定による微細空間における液晶の配向構造化の研究 当研究分野では2つの表面間の距離をサブミクロンから接触まで連 続的に変えながら,表面の間の液体の配向構造化挙動,摩擦・潤滑特 性を測定可能なナノ共振ずり応力測定装置を開発し(図),微細空間 での液晶 (6CB, 4-cyano-4’-hexyl biphenyl)の配向構造化挙動を研 究してきた.本年はこの装置に温度制御機構を組み込み,液晶相(2 4, 26 ℃)および等方相(28, 33, 40 ℃)における構造化挙動を調べた.液晶相において雲母表面間 の6CB(表面に平行に配向)は,表面間距離12 nm以下で著しい粘度上昇を示し,3.9 nm(8分子層)内 の6CBは非常に強く固定化され表面間から排出されないことが分かった.一方,等方相では粘度上昇は 5.3 nm以下で急激に起こり,液晶相と同様に3.5 nm(7 8分子層)内の6CBの排出は見られなかった..

(20) 研 究 活 動 報 告. これらの結果は分子サイズの数倍の厚さでは,等方相においても液晶相と同程度の構造化が起こるこ とを示しており,微細空間における構造化を理解する上で重要な知見である. また6CBが表面に対して垂直に配向する界面活性剤修飾表面においても同様の測定を行っている.. 3.高分子電解質ブラシの構造と相互作用に関する研究 高分子電解質は,基礎科学的にも,また工学,生物学との関連からも重要な物質である.本研究は, 高分子電解質を二次元的にブラシ状に並べ,表面力測定によりブラシ層の厚み,圧縮弾性率などの特 性を調べ,対イオンの浸透圧により構造が決定されることを測定結果およびモデル解析により示した.. 4.タンパク質分子間の相互作用の直接測定に関する研究 生体内のタンパク質は互いに相互作用し機能を発現しており,相互作 用の起源,機構について直接的な情報を得ることは重要である.本研究 では,LB法を用いタンパク質分子を二次元配向させた表面を調製し,そ の間の相互作用をコロイドプローブ原子間力顕微鏡を用い評価した.タ. 表面力 結合力. ンパク質の相互作用を評価する新規な手法を確立し,生体分子間の相互 作用について新しい知見を得ることを目的としている.. 図 相互作用測定の模式図. 転写調節因子Spo0AのDNA結合部位であるSpo0A-DBとDNA間の相互作用 研究を行い,特異的に相互作用すると考えられている塩基配列を持つDNAとSpo0A-DB間に,平均的な膜 電荷では説明できない付加的な結合力が働いていることを見出した.その結合力が,任意の配列を持 つDNAよりも強いことを確認した.また,ヘプタプレニル二リン酸合成酵素のサブユニットI, IIが基 質とMg2+が存在するときのみ会合体を形成することを初めて直接的に明らかにし,その結合力の大きさ がMg2+と基質の濃度に依存することを示した.相互作用を分子レベルで研究するための新しい方法論で ある.. 5. 二次元分子鋳型法による機能性LB膜の調製法の開発の研究 界面での分子間相互作用を利用する二次 :親和性分子 :非親和性分子 S : 鋳型分子 元分子鋳型法を用い,鋳型分子に対して親 1) 重合 和性の高い単分子膜を調製した(図).本手 法は,アッセイ基板,センサー,ナノパタ S S 2) - S 水 ーン等の新規作製法として期待される. 親水末端にボロン酸とカルボン酸をそれ 図.二次元分子鋳型法の模式図 ぞれ有する重合性両親媒性分子1と2の混合 単分子膜(1:2)を,糖誘導体3 (p-nitrophenyl glycopyranoside)の水溶液の表面上に調製した.ボロ ン酸は糖などのジオール化合物と強く結合することが知られ ている.鋳型効果の評価は,基板に累積した単分子膜を,鋳型 表. 単分子膜への3の相対吸着量 として用いた3の溶液に浸漬し,吸着量を紫外可視吸収より定 糖誘導体3 α-Man α-Glc β- Glc β-Gal 量することにより行った. 相対吸着量 1.35 1.25 1.48 1.27 3非存在下で調製した単分子膜上への3の吸着量を1とした相 対吸着量を表に示す.いずれの糖誘導体に対しても鋳型効果が 観察され,二次元分子鋳型法の有用性が示された..

(21) 研 究 活 動 報 告. 【研究活動報告】. 量子プロセス設計研究分野(2001.1∼2001.12). 教 授:溝口庄三 助 教 授:中島敬治,佐藤俊一 助 手:長谷川一 研究留学生:カ タ リ ン ル ク レ ス ク , 王 立 峰, サ ゴ ン 大 学 院 生 :鍋嶋良径,深谷勇次,川崎正樹,三宅英和. カムコール. 本研究分野では,レーザー光を用いた新しい超高純度素材精製プロセスの基礎研究を主たる研究テ ーマとしている.また同時に,レーザー光による新素材創製プロセスや素材評価法の開発も行ってい る.本年度の主な研究成果は以下の通りである. 1.. レーザークーリングに基づく新しい精製プロセスの基礎研究. 素材の高純度化は最先端技術の開発には必須の要素であり,将来的にはテンナイン程度の超高純度化 が求められようとしている.しかしながら,従来の手法ではこのような純度を得ることは極めて難し いものと考えられている.従って,全く新しい原理に基づく精製プロセス開発の研究が急務とされて おり,本研究分野ではレーザーを用いた新しい超高純度素材精製プロセスの開発研究を行っている. その試みの一つとして,本研究者らはレーザー光と原子の相互作用に基づく新しい精製プロセスを提 案し,現在その実現のために必要な要素技術の確立を試みている. 本年度はレーザー光によって気体原子の運動速度を減速させ,その過程において不純物を分離するた めに必要なレーザー光源の開発を進めた.従来の減速法ではレーザー周波数を周期的に変化させる方 法が用いられていたが,この方法では原子ビームがパルス状になってしまい,定常的な低温原子ビー ムの実現が困難であるという問題点があった.そこで,前年度は周波数変調半導体レーザーを試作し 原子の速度制御を行ったが,本年度は新たに周波数シフト帰還外部共振器型半導体レーザーを用いる ことによって,定常的にスペクトルの広い光源を作った.線幅は数100GHzにまで広がることが確 認された.また,線幅は回折格子とエタロンを用いることによって数100MHzの間で可変であるこ とも確認された.さらに,周波数変調型レーザーと比較すると波長の時間安定性に優れていることが 認められている.現在原子速度の制御実験を進めており,速度分布幅の狭線化を試みている. 2. Ⅱ-Ⅵ属半導体結晶の光学的評価 Ⅱ-Ⅵ属半導体は直接遷移のワイドバンドギャップ半導体であり,レーザーおよび光デバイスとして の応用が期待されている.現在のところ,いくつかの研究グループが光デバイス化に成功しているが, 実用化のためには半導体の結晶性の向上がキーポイントの一つと考えられている.本研究では,ZnSe が光学的に極めて良質の結晶であり,またバンドギャップが大きいことを利用して,その結晶性を線 形・非線形光学現象に基づいた手法で評価することを試みている. 具体的には低温から室温付近までの広い温度範囲で観測される非線形な青色発光の起源を探ってい る.発光ピークエネルギーと励起光強度に対する発光強度変化の温度依存性を測定し,励起子が関与 している可能性を確認した.また同時に,時間分解スペクトル測定を行ない,ピコ秒領域での寿命を 確認している.さらにパルス励起の影響を探るため,連続波励起によるスペクトルとの差異を検討し ており,時間領域での励起および発光機構を明らかにしつつある..

(22) 研 究 活 動 報 告. 3.光誘導ドリフトによるリチウムの同位体分離 光誘導ドリフト効果によって特定の同位体を移動できることが知られており,本研究分野ではこの 効果を同位体分離に応用する試みを行っている.これまでに融点が低く取扱いの容易なルビジウムに 対して実験的研究を行ってきた.現在,この技術を発展させ,核融合の燃料として用いられることが 期待されているリチウム原子の同位体分離を試みている.レーザー波長は671nmであり,リング型色素 レーザーおよび半導体レーザーを用いている.リチウムは他のアルカリ金属よりもドリフトが観測し にくいため,レーザー光の強度に対する発光強度の観測を通じて現象の発現を確認する作業を行って いる.その結果,レーザー波長によって発光強度が変化することが見出され,この変化が理論的に予 想されるものとほぼ一致していることが確認された.このことは,リチウムの光誘導ドリフトの発現 を初めて実験的に確認したものであると考えられる.また,ガス依存性や発光の空間分布の測定を行 い,ドリフト効果の詳細を明らかにした. この結果をもとに,新たに反応セルの設計を行い,実用化に向けた研究の進展を図っている.具体 的には,リチウム蒸気分布の均一化を図り,高効率同位体分離を目指している. 4.高強度フェムト秒レーザー光を用いたアブレーションと薄膜作製 近年のレーザー技術の進歩によって,ごく最近ペタワットという極めて高強度のレーザー光が得ら れるようになり,レーザー加速,電子−陽電子対生成,X線レーザー,ガンマ線レーザーなどへの応用 が期待されている.この中でも,レーザーアブレーションの研究においては,高いプラズマ温度の実 現や高エネルギーイオンビームの生成が予想され,薄膜状の新しい物質精製の手法として大いに期待 されている.本研究分野においては,高強度フェムト秒レーザーシステムを用いたレーザーアブレー ションの研究を開始しており,超硬薄膜と期待される窒化ボロン(BN)薄膜の作製とプルームの分光 学的測定を行った. プルーム発光の分光については,新たに時間分解分光を導入することによって,位置,波長に時間 の因子を加えた分光を行い,発光測定からボロンと窒素原子およびイオンの時間空間的挙動を解析し た. 薄膜については前年と同様にナノ秒レーザーとフェムト秒レーザーによる薄膜作製を計測して行い, XPS,電子顕微鏡などで膜の特性を調べた.できるだけ同一条件下で特性を比較するために,新たに基 板上に回転マスクを取り付け,異なる実験パラメータでの薄膜を同時に得るようにした.レーザーの フルーエンスとともに大きな粒子が多くなり,XPSの結果を合わせて考えると,ターゲット材料である 六方晶窒化ボロンがそのまま基板に付着していることが示唆された.これに対して,フルーエンスが 1J/cm2程度の時には,フラグメントの少ない良質の膜が得られており,また立方晶窒化ボロンも含ま れていることが認められた.フルーエンスをさらに小さくすると膜厚が極端に薄くなるもののフラグ メントの極めて少ない膜が得られるため,より繰り返し周波数の高いレーザーを利用することによっ てこの問題が解決できると考えられた. また,前年度に得られたフェムト秒レーザーの第2高調波を用いたアブレーションの実験を進め, プルームの分光学的研究と薄膜作製を行った.第2高調波の波長ではターゲットの吸収が大きくなる ため,フラグメントの発生が抑制されるものと期待される.実験では,実際にフラグメント密度の低 下や粒子径の現象が認められており,波長効果によるものと考えている.さらに,より波長の短い第 3高調波での実験も計画しており,現在その発生実験を進めているが,変換効率が十分ではないため, 遅延線の効率化および簡素化を行っており,1mJ程度のエネルギーの実現を目指している..

(23) 研 究 活 動 報 告. 生体プロセス設計研究分野(2001.1∼2001.12) 教 授:中西八郎(兼) 助 教 授:及川英俊, 岡田修司 博士研究員: 李鉄生 研究留学生: Abd El-Karim Mohamed Abou El Wafa 大 学 院 生:小菅博明, 梅澤洋史, 松尾春美, 片山宏一. 【研究活動報告】. 本研究分野では,高性能二次非線形光学材料の合成,固相重合による次元性を拡張したπ共役高分 子の合成,動的光散乱法によるPBLGのゾル ゲル転移の解析 等について研究活動を行っている.2001 年の研究活動としては,以下のように概括される. 1.. 高性能二次非線形光学材料の合成に関する研究. レーザーの波長変換に有用な,可視域に吸収が無いにもかかわらず大きな分子超分極率βを有する 分子種の探索,電気光学効果による通信用レーザーの変調などに有用な,近赤外域にまで吸収が許容 でかつ巨大なβを有する分子種の探索,および,それらの分子種の非中心対称構造化に関して検討を 行っている. 波長変換用分子種としては,これまでに4-置換ピリジニウム系化合物が有用であることを示し,種々 の対イオンを導入した場合の非中心対称構造発現の可能性や対イオンの形態について検討をしてきた. 金属ハライドアニオンの場合,ヨウ化カドミウムに対してヨウ化4-置換ピリジニウムを1:2のモル比 で混合すると通常1:2錯体が得られるが,4-カルバモイル体のみ二次非線形光学活性な1:1錯体が得ら れた.そこでこの化合物について結晶構造解析を行った.対イオンは,カドミウムを中心としヨウ素 を頂点に有する四面体が2つの頂点をそれぞれ別の四面体と共有するという珍しい1次元構造[CdI3 -]n であり,この構造が二次非線形光学活性な構造発現に有利である可能性が高いことがわかった. 一方,電気光学効果用の化合物として,これまでにスチルバゾリウム系化合物が有用であり,特にp -トルエンスルホン酸1-メチル-4-(2-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)ビニル)ピリジニウム(DAST)は, 有望な単結晶材料であることを示した.このDAST骨格において通信用波長の光の伝播損失を減少させ ることを目的として,骨格中の水素のフッ素への置換を試みた.その結果,ベンゼン環部分のフッ素 化物の合成は比較的容易に誘導体の合成が可能であったが,ピリジニウム環部分のフッ素化は,フッ 素化したピリジン環へのN-メチル化が非常に困難であることがわかった. その他,イオン性色素を分散したポリマーのポーリング挙動に関する初期検討も開始した. 2.. 固相重合による次元性を拡張したπ共役高分子の合成に関する研究. 大きな三次非線形光学光学効果を示すことで知られるポリジアセチレンは,単結晶として得られる 唯一のπ共役高分子である.これまでに,その性能向上を目的として,側鎖共役置換基を導入したモ ノマーやユニット当たり2本のポリジアセチレンを形成しうるモノマーなどの合成とその固相重合性 を検討してきた. 特に,モノマーにおいて5および6個アセチレンが共役したモノマーでは,2本のポリジアセチレン 主鎖が繰り返しユニットごとにエチニレンもしくはブタジイニレンで結合したラダーポリマーが生成 しているものと考えてきたことから,さらに共役を延ばした系の合成を検討した.まず,6,8,10,12,1 4,16,18,20-ヘキサコサオクタイニレンビス(N-ブトキシカルボニルメチルカルバミン酸)の合成を試 みたが,合成中間体の溶解度の小ささや重合性の高さなどから単離までには至らなかった.そこで, 溶解度を向上させるためにアセチレンとウレタン結合の間の側鎖メチレン鎖数を5から9へ長くした誘 導体の合成を試みたところ,少量ではあるが単離することができた.吸収スペクトルの測定から,近.

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