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動的粘弾性に基づく石炭加熱時の軟化および固化現象に関する研究

ドキュメント内 研究業績・活動報告2001 (ページ 103-106)

加熱時における石炭の軟化溶融および固化現象は,その後の炭化すなわちコークス化過程と深く関 わるので,この現象を理解することは製鉄用コークスの品質制御に役立つ.石炭の軟化はガス発生な どの化学反応を伴う過渡的な現象であり,合成高分子の場合とは異なり,昇温速度などの操作条件の 影響を受けるものと考えられる.軟化した石炭は一種の高分子分散系であり,粘弾性体として振る舞 う.そこで本研究では,石炭の軟化溶融特性を記述する物性として粘弾性に着目し,石炭の動的粘弾 性を温度の関数として測定し,結果に及ぼす昇温速度の影響を検討した.その結果,石炭の軟化溶融 は石炭構成分子の融解により発現する物理現象であるが,軟化溶融後の固化過程は操作条件の影響を 受ける化学反応を伴う過程であることを明らかにした.また,等温下で固化過程における石炭の動的 粘弾性パラメーターを測定し,固化過程の活性化エネルギーを導出した. 

 

                                                         

【研究活動報告】

 

炭素系巨大分子変換研究部

(2001.1〜2001.12) 

OHTSUKA Group  助 教 授:大塚康夫 

助  手:坪内直人 

大学院生:B. Enkhsaruul,新井  貴,孔  大鵬,高崎  智  学部学生:富樫孝幸 

研 究 生:王  延輝   

  本研究分野では,規則正しいナノスペースを与えるメソポーラス物資や,ナノスケールの金属・金 属酸化物微粒子等を用い,合成ガス,天然ガス,石炭,重質油をクリーンエネルギーや高価値化学原 料に効率よく変換できる触媒プロセスの開発と基盤技術の確立を目的としており,2001年の研究活動 は以下のように概括される. 

 

1.メソポーラス物質を利用した資源変換 

フィッシャー・トロプッシュ(FT)反応は,石炭や天然ガスから得られる合成ガス(CO + H2)を液 状炭化水素に変換する方法であり,最近,硫黄や芳香族を含まない高品位輸送用燃料の製造プロセス として注目されている.本研究では,日本学術振興会未来開拓学術研究の一環として,均一な細孔径 を持つメソポーラスシリカを触媒担体として用い,合成ガスからのディーゼル留分(C10〜C20パラフィ ン)の高収率製造を目指している.これまで,MCM‑41,FSM‑16,SBA‑15のメソポーラスシリカにCo触 媒を担持し,気相FT合成を行い,250°C,2.0 MPaでは,8.4 nmの細孔を持つSBA‑15担体が,最も高いC O転化率(75%)を与えることを明らかにした.そこで,さらに低い温度(230°C)におけるSBA‑15担 持Co触媒の性能向上を狙い,触媒調製法の最適化を図ったところ,Co硝酸塩を単独もしくは酢酸塩と 硝酸塩を共担持して用いた場合に,著しい触媒効果が出現することを見いだした.その結果,C10〜C20 留分の空時収率は,250 C‑g/kg・hという高い値を達し,メソポーラスシリカを用いることにより,デ ィーゼル燃料油の製造に適した高性能触媒の開発に成功した. 

メソポーラススペースは,ナノ微粒子の生成や大きな分子の反応制御に適していると考えられるの で,触媒成分を添加した石炭やSBA‑15を用いて,メソポア内部にナノ微粒子を担持し,炭素系巨大分 子の典型である石油系アスファルテンの軽質化を行い,その化学構造に適した反応場の構築を目指し ている. 

 

2.ナノ微粒子を用いる石炭由来窒素の無害化除去 

石炭中の窒素(fuel‑N)は燃焼時にNOxやN2Oとして排出され,これらの窒素酸化物は環境汚染の原因 となる.本研究では,燃焼の前段の熱分解過程でfuel‑Nを無害なN2として除去することを目的とし,低 炭化度石炭上に調製したナノスケールのFeやCaO粒子の脱N2性能と反応のダイナミックスを調べている.

Feナノ微粒子は700〜900°Cで触媒作用を示し,in situ XRD,XPS,TEMによる解析結果に基づき,N2の おもな生成ルートは,Fe,N,Cよりなる固溶体を中間体とする固相反応であると結論した.これに対 して,CaO微粒子は,Fe触媒の活性がレベルオフする1000°C以上で,fuel‑NからのN2生成を著しく促進 する.そこで,実際に近い加熱条件を実現できる装置を製作し,石炭を急速加熱した場合でも,CaO触 媒は大きな効果を発揮することを明らかにした.CaO粒子は,石炭チャーのマトリックス内を移動しな がら,チャー中に存在するピロール環やピリジン環の複素環構造窒素と反応し,N2生成に対し触媒作用 を示すものと推論される. 

石炭のガス化複合発電は,CO2排出量の削減に貢献できることから,次世代発電システムとして期待 されているが,高い発電効率を実現するためには,高温ガス精製法の開発が不可欠である.実際のガ ス化プロセスで生成する粗ガス中には数千ppmのNH3が含まれるので,本研究では,容易に入手できる触 媒ソースや石炭を原料として,高度に分散したナノ微粒子を含む炭素複合体を製造し,NH3の無害化分 解触媒の開発を目的としており,科研費・特定領域研究(B)(2)の一環として進められている.Feイオ

ンを担持した低炭化度炭の炭素化で得たFe微粒子は,活性炭に単にFe触媒を含浸したものに比べて大 きな効果を発揮し,2000 ppmのNH3を750°Cで完全に分解した.さらに興味深い点は,石炭中に元々存在 する微量な金属イオンより生成した10 nm前後の微粒子が,上記の触媒と同等の高いNH3分解活性を示す ことである.このような結果は触媒添加工程が不要であることを意味し,実用的観点から非常に画期 的な成果と言える. 

 

3.複合酸化物触媒上の二酸化炭素によるメタンのカップリング 

CH4とCO2の化学的変換は,多量のCO2を含む低品位天然ガスの高度利用法として重要である.そこで,

CO2によるCH4のカップリングに着目し,30種以上の金属酸化物を用いたパイオニア的研究により,本反 応に対する触媒の選択原理を確立した.これに基づき,酸化還元能を持つ酸化物(Mn,Cr,Ce)の粉 末を,アルカリ土類金属硝酸塩水溶液に含浸し,二元系酸化物を調製したところ,高いCO2分圧下のCa‑Mn,

Ca‑Cr,Ca‑Ce触媒上では,C2生成反応に対し著しい相乗効果が出現し,その結果,C2収率が飛躍的に向 上することを見出した.これに対して,Sr‑MnやBa‑Mnの複合酸化物は,上記の触媒系とは異なる性能 を示し,低いCO2分圧下でも高いC2選択率を与えることが明らかとなった.Transient kineticsやXPS測 定により触媒解析を行い,メカニズムの解明を進めている. 

                                                           

【研究活動報告】

  

再生物理プロセス研究部

(2001.1〜2001.12) 

NAKAMURA Group  教   授:中村  崇 

助  教  授:葛西栄輝  助   手:柴田悦郎 

研究留学生:S.Harjanto, S.V.Gnyloskurenko, 李  咸偉, S.Oleszek‑Kudlak  大 学 院 生:葛原俊介, 坂本和寛, 福田和博 

学 部 学 生:佐藤  寛, 二上  隆志, 藤岡  義彰, 松島  孝平   

本研究部は,資源変換・再生研究センターに属する研究部の一つであり,本年度は金属学特別コースの S. Oleszek‑Kudlak,博士課程前期の福田和博,学部学生の佐藤  寛,二上  隆志,藤岡  義彰,松島   孝平を新たにメンバーに迎えた.本研究センターでは,資源枯渇と大量廃棄物排出に伴う環境破壊 の進行を生む「資源→素材→材料→廃棄物」という一方向的な資源・物質利用の流れを,工学的立場 から合理的に改善するための基礎と応用研究を行っており,本研究部では,廃棄物の資源化および無 害化あるいは素材の高度分離法に関連する基礎科学および基盤技術の確立を目指した研究を展開して いる. 

2001年の研究活動としては,以下のように概括される. 

 

ドキュメント内 研究業績・活動報告2001 (ページ 103-106)