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その他の研究

ドキュメント内 研究業績・活動報告2001 (ページ 32-36)

3‑1  医薬品粒子のサイズ形態制御に関する研究 

本研究では,新規ドラッグ・デリバリーシステムへの応用や,薬剤放出特性の精密な制御を目的とし て,医薬品有機結晶粒子のサイズ・形態制御を行った.医薬品結晶の晶析時に,吸着剤や金属塩を反 応系内に投入することにより,生成する粒子のサイズ形態の制御が可能であることを確認し,現在さ らなる粒子のサイズ形態制御法について検討している. 

3‑2  水面におけるコロイド粒子間力の解明とその応用 

本研究では,レーザートラッピング技術を用いた水面における二体間でのコロイド粒子間力測定を 行うとともに,Langumuir troughを利用した多体間での粒子間力測定を試み,水面特有の粒子間力の 起源を明らかにすることを目的としている.現段階までに,水面特有の粒子間力は,粒子の帯電状態 に関係することを示唆する結果が得られている. 

【研究活動報告】  電子機能制御研究分野

(2001.1〜2001.12) 

   

教 授

     :早稲田嘉夫  助 教 授

     :井上博文,鈴木茂* 

助 手

     :柴田浩幸  大 学 院 生

     :大久保和也*,中村貴宏*,西剛史*, 

      平林一隆*,中山裕子*,牧原昌平* 

研究留学生:Pavlin D. Mitev*,Myagmarjan S.Sarantuya* 

 

本研究グループ員の主な移動は,以下の通りである.新日本製鉄(株)先端技術研究所主幹研究員 の鈴木茂博士が助教授として,11月1日付で着任した.大久保和也,中村貴宏,西剛史の3人は大学院 前期2年の課程を3月末に修了,大久保和也は企業に就職,中村貴宏,西剛史は博士過程後期3年の課 程に進学した.一方,平林一隆,中山裕子,牧原昌平の3人が大学院前期2年の課程院生として,モン ゴル大使館推薦で文部省の国費留学生に採用されたMs. M. S.Sarantuyaが研究生として,新たに研究 室メンバーとなった.金属学特別コース留学生のMr.P. Mitevは10月に学位を取得し,ブルガリアに帰 国した. 

本研究分野における2001年の活動を概括すると以下の通りである. 

 

1.高温融体系における各種物性評価に関する理論的検討 

半導体産業の最も基本的な素材であるシリコン単結晶は主として,シリカ坩堝中でシリコンを溶解C zochoralski法によって製造しているが,近年生産性の向上のため単結晶の大型化が図られている.こ のためには,溶融シリコンの諸物性を正確にコントロールすることが不可欠であり,例えば溶融シリ コンの粘性,表面張力,熱伝導率,シリカ坩堝からの酸素の溶解,微量不純物元素の拡散係数などの 正確な値が求められている.しかし,1500度の高温における実験は必ずしも容易ではなく,計算機シ ミュレーションに必要な値も不充分な現状である.昨年は,原子のサイズなどの物理的基礎パラメー ターのみで溶融シリコンの諸物性を予測する理論的検討を試み,酸素溶解度,自己拡散係数,不純物 の拡散係数を算出し,報告されている実験値をほぼ説明できることを確認した.本年度は,この手法 をより複雑な系に拡張することをめざし,理想的なイオン性融体と考えられるNaClやRbClと,逆に単 純なイオン性からのずれが予想されるCuBrやCuIについて,原子レベルの検討を行った.具体的には,

特異な構造を反映した結果である実験で求められた「部分構造因子」を基礎に,有効イオン間ポテン シャルを算出し,その情報を基礎に拡散係数,イオン輸送係数,粘性係数を求め,実験値との対応を 検討した.得られた結果は,国際会議,論文として公表した. 

 

2.X線異常散乱による各種無機物質の構造評価 

X線異常散乱は,各元素に固有のエネルギー(吸収端)近傍でのみ生ずる.この特徴を利用すれば,

原子番号が隣り合うような場合でも元素の識別が可能で,同時にそれぞれの元素を中心とする環境構 造を距離の関数として決定できる.本研究グループでは「新しい構造解析手段」として,X線異常散 乱法の開発に系統的かつ積極的に取り組んでいる. 

本年度は,鉄鋼表面に生成する「さび」を主たる対象に新しい取り組みを行った.錆びはFeO6八面 体を基本構造とする水酸化物が主たる成分と一般的に認められているが,その構造,形態,組成等は 様々で「非晶質さび」などと言う表現も使われている.しかし,このような結晶に比べ長距離的秩序 性に乱れがあるが,しかし典型的なガラス構造ほどランダムとは考えられない状態を,どのように記

述し,どのように評価するかは未確立な現状である.この研究上の支障を解決することも本プロジェ クトの目標として,本年度は幾つかの鋼について,数週間〜30年の腐食試験をした結果生成した錆び を対象に,X線異常散乱によるデータを収集,かつreverse Monte Carlo simulation法を組み合わせ て解析を行い,Fe(O,OH)6 ネットワークの構造ユニットの同定,ネットワーク構造の乱れの特定などを 定量的に見積もる新たな手法を開発した.その結果,腐食の過程でFe(O,OH)6 ネットワーク構造が発達 すること,クロムや銅などの微量添加元素により発達過程が変化し,最終的な錆び構造に影響を与え ることなども明らかになった.さらに,鉄鋼の「さび」形成に伴う合金元素分布の変化の特徴も明ら かにし,構造データとの関連について検討した.今後,「さび」について,系統的な解析を展開する 予定である. 

一方,イオン周囲の電子分布を実験的に求める手法の開発にも取り組み,異常分散効果を利用して 非晶質セレンの解析を試みた.従来は原子核に対する散乱の中性子回折と,原子核を取り巻く電子を 介した散乱のX線回折の差を応用していたが,分解能などが不十分な現状であった.これに対して,

X線異常散乱法は,全く同一試料で分解能などの条件も同じにできる利点がある.セレンの吸収端近 傍のエネルギーを利用した測定において散乱強度に差が認められたが,これは非晶質セレンと孤立セ レン原子との価電子分布の違いに相当する.そこで4つの4p電子を価電子とみなして,reverse Mont e Carlo法を併用して解析を試みた結果,中心Se4+イオン周囲に2個の非結合4p電子の分布および残り2 個の結合電子の分布に対応する情報が確認できた.しかもこれらの価電子分布は異方的な広がりを持 ち,非晶質セレンの鎖状構造の特徴を,価電子分布の視点からも捉えた点が新しい結果である.他の 元素への応用が期待できる. 

その他,これまで実績のあるX線異常散乱を利用する多成分非晶質系の環境構造解析を実施し,ミ クロな構造と注目すべき特性との相関解明なども継続した.なお,これまでの研究成果をまとめ,出 版することとし,それに必要な作業を進めた. 

 

3.レーザーフラッシュ法による融体を含む各種素材の高温における熱物性評価 

1000oCを越える高温における各種素材の熱拡散率・熱伝導率の値は,鋼の連続鋳造プロセス,各種 ガラスの製造プロセス等の精密解析に不可欠であるが,熱力学的物性値に比べデータが不足している.

本研究グループでは,測定時間が1,2秒という迅速測定が可能なレーザーフラッシュ法の特徴に着目 し,高温セルやデータ解析法の開発を含む系統的な試みを続け,特に高温金属融体を対象にプロジェ クトを推進している.試料の上部加熱/上部測温法に基づき開発した装置を用いて,純銅,純錫,耐 熱合金(INCONEL  601)の融体での熱拡散率測定を実施し,固体に比べて融体の熱拡散率が小さいこ とを定量的に明らかにした.得られた結果は国際会議,論文として発表した.これらの検討により,

金属融体用高温セルの改良が必要になったので,新規に高温セルを設計・試作し,汎用性のある高温 セルの開発を目指すとともに各種金属融体の系統的な測定を実施している.また,固体状態の鋼につ いてもこれまでデータがほとんど無かった固相線温度近傍までの熱拡散率を,試料の熱膨張と固相線 温度近傍で生じる試料の蒸発の影響を考慮して,正確に求めるとともに実験式を提案した. 

 

4.分光型レーザーフラッシュ法および低温型レーザーフラッシュ法の開発 

試料の絶対温度変化を非接触かつ高速に測定することができれば,さらに,レーザーフラッシュ法 の適用範囲を広げることができる.そこで,分光器を備えた温度測定装置を試作し測定原理の基本的 な検討を実施した.また,新規にMTC型の赤外線検出器を導入し,比較的低温でのレーザーフラッシュ 法を精度良く実施するための基本的な検討を行った.さらに,有機溶媒試料の熱拡散率を測定可能と するレーザーフラッシュ型熱拡散率測定装置を作製し,特型の液体試料セルの試作を行った. 

 

5.表面改質による超合金および金属間化合物の高温特性向上に関する研究 

ドキュメント内 研究業績・活動報告2001 (ページ 32-36)