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高機能電子顕微鏡による準結晶およびその近似結晶の構造に関する研究

ドキュメント内 研究業績・活動報告2001 (ページ 56-59)

種々の電子顕微鏡法をもちいて準結晶およびその近似結晶の構造に関する研究を行ってきた.高角 散乱暗視野法によりAl73Ni22Fe5デカゴナル準結晶のクラスター構造およびその配列を調べた結果,この 準結晶が直径約2nmの鏡映対称クラスターからなり,その配列はほぼ完全な準周期秩序をもつことを明 らかにし,この準結晶がAl72Ni20Co8に次いで二例目の極めて完全性の高い準結晶であることを見出した.

鏡映対称クラスターからなるAl72Ni20Co8デカゴナル準結晶を電子顕微鏡中で加熱し,そのクラスター構 造の変化を高分解能その場観察した結果,クラスターの一部が五回対称クラスターに変化することを 見出した,このことから鏡映対称クラスターと五回対称クラスターは非常に近い構造を有することを 初めて明らかにした.  収束電子回折法による構造精密化手法をAl13Co4近似結晶に対して適応し,原 子位置,占有率および温度因子の精密化を行い,これまでのX線による解析と同程度の精度で原子位置 を決定できることを示した.すなわち,この精密化手法が独立な原子数が20個程度の複雑な構造をも つ結晶に対して適用可能であることを示し,さらに構造の複雑な準結晶への適用に対する指針を与え た.準結晶のケミカルオーダーの解明に必要な電子チャンネリング法の導入を行った. 

   

h‑BN の 

X線発光スペクトル 

【研究活動報告】

 

光機能解析研究分野

(2001.1〜2001.12) 

教   授:手老  省三  助  教  授:秋山  公男 

助   手:生駒  忠昭, 小堀  康博 

大 学 院 生 :立川貴士,矢後友暁,  伊藤冬樹,  直原一徳,  保国裕美,    山道桂子,  橋本信二 

       

本研究分野では,光機能発現に重要な電子やエネルギー移動反応のダイナミックス,これらの反応 過程に関与する短寿命種の電子状態と溶媒などの環境場効果を解明することを目的として,レーザー と同期した種々の時間分解スペクトロスコピー(時間分解EPR,パルスEPR,過渡吸収,発光分光)を 用いて研究活動を行っている.2001年の研究活動としては,以下のように概括される. 

 

1.   励起状態の電子構造に関する研究 

  三重結合共役分子は,有機分子の中で基本的なグループの一つであり,有機機能性材料においても クロモフアなどを連結する重要な役割を果たしている.それにもかわらず,その励起状態の電子構造 についてはこれまでほとんど不明であった.本研究は,三重結合が6までのジフエニルポリインについ て,時間分解EPR,パルスEPR,発光分光スペクトルを観測し,三重結合数と励起状態の電子構造の性 質について系統的な研究を行った.ジフエニルポリインの零磁場分裂定数は共役が長くなるほど大き な値を示すことを見出し,スピン軌道相互作用が励起状態間相互作用に重要な役割を果たしているこ とを明らかにした.また,近接励起状態間振電相互作用が励起状態のポテンシャルを歪ませているこ とを明らかにし,励起状態における反応性との関連から注目される結果を得た. 

 

  2.光誘起電子移動反応によって生成するラジカルイオン対の再配向エネルギーの決定 

  光エネルギー変換において,電荷分離状態を効率よく行うために溶媒再配向エネルギーは自由エネ ルギー変化と共に重要な因子である.本研究では,時間分解EPR法により個々の電子供与体―受容体系 に固有な溶媒再配向エネルギーを決定する独自の方法を提案し,光化学や溶液化学の分野に重要なこ とから注目されている.本方法で求められる溶媒再配向エネルギーは,ラジカル間距離が1.2 nmの溶 媒和ラジカルイオン対を選択的に測定していることを,理論計算から明らかにした.電子供与体―受 容体の分子サイズ効果およびマーカス理論における連続誘電体から導かれる溶媒再配向エネルギーと の対応を求め,非常に良い相関があることを明らかにした. 

 

  3.光化学反応における短寿命活性種のダイナミックスと反応環境場効果に関する研究 

  三重項エキシマーは,種々の光化学反応過程において生成することが提案されてきたが,発光を示さず,そ の直接観測手法は少ないために不明な点が多い.本研究分野では,電子供与体または受容体に重原子を含 む光誘起電子移動反応系に特有な電子スピン分極を見出し,短寿命三重項エキシマー中間体生成の証明を 与えることを明らかにした.さらに,その溶媒依存性の解析から,三重項エキシマー零磁場分裂定数が決定で き,電子構造解明に有用性を示した.

  逆ミセルのウオータープールを反応場として,水溶性アントラキノン−ヒドロキノン間の電子移動,

プロトン移動反応を研究し,均一溶媒とは全く異なる反応機構の解明を行った.スピン相関ラジカル 対が生成することを見いだし,反応ダイナミックスおよび対ラジカル間距離がウオータープールサイ ズに著しく依存することを時間分解EPR線形から明らかにした.   

  ラジカル反応の環境場効果を明らかにするために,超臨界二酸化炭素中におけるラジカル対のダイ ナミックスを測定し,超臨界点近傍でラジカル収率や電子スピン分極が圧力に著しく依存することを 見出し,局所密度のゆらぎがラジカル反応に著しい効果を示すことを明らかにした. 

 

  4.機能性材料中の活性サイトの電子構造 

  電子受容体をドープしたポリビニルカルバゾール薄膜の電荷移動吸収帯の選択的レーザー励起によ りスピン相関ラジカルイオン対に由来する時間分解EPRスペクトルを検出した.線形解析から,スピン 双極子相互作用,電子スピン交換相互作用を求め,ラジカル間距離0.8 nmを決定した.本研究は,均 一な誘電媒体を仮定して得られたこれまでの結果と比較すると,はるかに短い距離にラジカルイオン 対が数マイクロ秒の寿命で存在することを示した始めての結果であり,また,光導電性固体薄膜にス ピン分極をもったスピン相関ラジカルイオン対を始めて検出した例である. 

 

  5.共同研究 

  当研究分野では,以下に示すように種々の時間分解分光法を用いて学外および学内の研究室との共 同研究を活発に行っている. 

(1)光誘起電子移動反応の磁場と重原子による制御研究 

    −U. E. Steiner (Konstanz Univ., Germany),  勝木研(信州大) 

(2)光合成モデル分子の光誘起電子移動反応過程で生成するラジカルイオン対の電子構造研究      −福住・今堀研究グループ(阪大院工) 

(3)溶媒和ラジカルイオン対の溶媒再配向エネルギーの理論研究      −平田・佐藤研究グループ(分子研) 

(4)光誘起電子移動反応による結合開裂および転移反応制御の研究      −宮仕研(東北大院理),長谷川研(新潟大理) 

(5)リグニンの光化学反応と坑酸化性  −三重県工業技術センター 

(6)微結晶シリコン,鉄シリサイトにおける常磁性サイトの構造研究 

    −恵原研(石巻専修大),  末沢研(東北大金研),横山研(多元研) 

(7)長寿命発光種の活性サイトの電子構造研究  −黒川研(東北大院工) 

(8)エンジイン型抗がん剤の活性種の構造と反応ダイナミックス  −平間研(東北大院理) 

(9)メカノケミカル反応におけるラジカル種の研究  −齋藤(良)研(多元研) 

(10)π−共役ラダーポリマー中の常磁性サイトの構造研究  −中西研(多元研) 

(11)金属酸化物微粒子の光励起による一重項酸素発生機構の研究  −佐藤(次)研(多元研) 

           

O x y

z

y

O

x z

  図2.  MnF2の核密度分布(下)と  スピンをになう電子密度分布(上) 

【研究活動報告】

 

電子機能解析研究分野

(2001.1〜2001.12) 

  教  授:野田幸男 

  助  手:渡邊真史, 木村宏之    研究学生:菖蒲敬久(2001.3終了) 

  大学院生:張  洛賢,界  隆史(2001.3卒),鬼柳亮嗣,福田義和,小宮山聡    学部学生:小宮山聡(2001.4進学),望月桂介 

       

  本研究分野ではX線・中性子を使用して,物性の構造的起源(構造物性)についての研究活動を行っ ている.2001年の研究活動としては,以下のように概括される. 

 

ドキュメント内 研究業績・活動報告2001 (ページ 56-59)