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『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係について

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Academic year: 2021

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(1)548(1). 泉. 基. 博. ﹃ 十訓抄﹄ におけ る片仮名本と平仮名 本 の関係 に ついて. じ め に. 平仮名本︶⋮ ⋮吉 本 o吉     彰 考 館 蔵 本 ⋮ ⋮彰 本 ・彰 学蔵本 ︵ 延宝六写︶⋮ ⋮名 本 ・名     士口田幸 一博 士 蔵 本 ︵. 吉 片    一 只都 大 学 蔵 本 ⋮ ⋮京 本 ・京     国会 図書 館 蔵 本 ⋮ ⋮ 国本 o国     天 理 大 学 蔵 本 ⋮⋮ 天本 o天    名 古 屋 大. 片仮名本、上巻欠︶⋮ ⋮吉 片 本 ・ 片 本     士口田幸 一博 士 蔵 本 ︵ 片仮名本 ・番号六五人四一し ︰⋮ 。 宮 内 庁書 陵 部 蔵 本 ︵. す こと にす る。 な お 、本 稿 では諸 本 の名 称 は以 下 に示す略称 を 用 いる こと にす る。. う と 思う 。 こ の稿 では対 立 本 文 であ る片 仮名 本 と 平 仮 名 本 の関係 に ついて見 てみよう と 思う 。 以 下 に使 用 本 文 を 示. が 現 状 であ る。 そ こで以 下 に 示 す 十 四本 の本 文 を 校 合 す る こと により 、 ﹃ 十 訓 抄﹄ の本 文系 統 の解 明 を 試 み て み よ. 十 訓抄﹄ の本 文 系 統 のす べてに ついては解 明 さ れ て いな い の 系 統 や諸 本 の性 格 に ついて解 明 し てき た 。 し か し、 ﹃. を も と に私 も ﹃ 十訓抄 [ 古典文庫 ・昭和五十 一年︶ の ﹁ 解 説﹂、 ﹃ 御 所 本 十 訓 抄   上 ・中 ・下﹄ 片 仮 名 本 ]上 ・下﹄ ︵ 解 説﹂ な ど で本 文 彰 考 館 蔵 十 訓 抄 第 三 類 本﹄ ︵ 解 説﹂、 ﹃ 笠間書院 ・昭和 五十八年︶ の ﹁ 和泉書院 ・昭和 五十九年︶ の ﹁ ︵. 岩波文庫 ・昭和十七年︶ の ﹁ 十訓抄﹄ ︵ 解説﹂ に始 ま る が 、 そ れ ﹃ 十 訓 抄﹄ の本 文 系 統 に つ い て は、永積 安 明 氏 の ﹃. は.

(2) (2)547 『十訓抄』における片仮名本 と平仮名本の関係について. 番号二 一二 異 本 十 訓 抄 ︵﹃ 新訂増補国史大系﹄ による、底本は東京大学国文学研究室蔵本︶⋮ ⋮ 異本 ・異     静嘉 堂 蔵 本 ︵. 内閣文庫、番号 番号二 〓 王ハ○︶⋮ ⋮静 2本 ・静 2    国 立 公 文 書 館 蔵 本 ︵ 七九︶⋮ ⋮ 静 1本 ・静 1    静 嘉 堂 蔵 本 ︵. 二六七 一二︶⋮ ⋮ 内 本 ・内     武 庫 川 女 子 大 学 蔵 本 ⋮ ⋮ 武 本 ・武     祐 徳 稲 荷神 社 蔵 本 ⋮ ⋮祐 本 ・祐. ま た 、 本 稿 で は片 本 o吉 片 本 は漢 字 片 仮 名 交 じり の表 記 であ る ので片 仮名 本 と し 、京 本 ・国本 ・天本 ・名 本 ・吉. 本 o彰 本 o異 本 ・静 1本 o静 2本 o内 本 ・武 本 ・祐 本 は漢 字 平仮 名 交 じり の表 記 であ る ので平仮 名 本 と す る こと に. 欠 文﹂・﹁ 欠 字﹂ の用 語 を 、 本 文 はあ るが本 文 の異 な る も の す る。 ま た 以 下 の考 察 にお いては 、 本 文 のな いも のは ﹁ 第 は ﹁ 本 文 異 同﹂ の用 語 を 用 いる こと にす る。 説 話 番 号 に ついて は片 本 のそれ によ る こと にす る。 ただ し 、 上巻 ︵ 一、第二、第三、第四︶に は 説 話 番 号 が 付 さ れ て いな い ので、上巻 に お いては 、片 本 で改 行 さ れ て いる説 話 は便 宜 的. 第 一の 二 一話﹂ には いく つも の説 話 が 十 訓抄 詳 解﹄ の ﹁ に 一説 話 と し 、 順 次 説 話番 号 を 付 す こと にす る。 そ れ は ﹃ あ る にも か か わ ら ず 、 ﹃ 十 訓 抄 詳 解﹄ では 一話 にし て いる から であ る。 そう す ると 、 第 一、 第 二、第 三 に お い ては. 説話番 号 が ﹃ 十 訓 抄 詳 解﹄ のも のと 一致 し な いも のが 出 てく る ので、 こ の稿 の末 尾 に両者 の対 照表 を 示 し てお く こ. 十 訓 抄 詳解﹄ のそ れ によ る こと にす る。 た だ し 、 と にす る。 な お 一説 話 にお け る追 い込 み書 き の認定 に つ いては ﹃. 伊勢大輔力墨 ス々 ⋮L ︶で改 行 さ れ、追 い込 み書 き に な っ 第 一の 一八話 ﹂ は 片 本 で は後 半 部 ︵﹃ ﹃ 十 訓 抄 詳 解﹄ の ﹁. て いる ので独 自 に認 定 す る こと にす る。 な お追 い込 み書 き に ついては 対 照表 では説 話 番 号 の上 に ※印 を 付 す こと に す る。.   祖本 に近 いのは片仮名本か平仮名本か︵1︶ 一一. 片 仮 名 本 が 祖 本 に近 いのか、 平 仮 名 本 が 祖 本 に近 い のかを 、 両者 の表 記 の相 違 か ら見 て みよう と 思う 。.

(3) 博 基. 546(3). 伊 成 モカ ク レ ノ方 ニテ コシ カ ラミ テ庭 ヘオ リ テ立 向 ニケ リ形 体抜 群 勇 力 軟 人鬼 王 ノ形 ア ラ ハレカ 士 ノ忽 二来 ル. ト覚 工弘 光 又 テキ タイ スル ニ ハチ ス ソ見 エケ ル                                          ︵ 第三の 一一話︶ 右 記 の傍 線 部 は平 仮 名 本 で は次 のよう にな って いる。 形 姿 はく ん に ぬけ て容力 人 に過 た り鬼 王 の形 を あ ら は し﹂ 京 ・国 ⋮ ⋮ ﹁. 天 ・異 o静 l o静 2 o内 ・武 ・祐 ⋮⋮ ﹁ 形 姿 く ん に ぬけ て容 力 人 に過 たり鬼 王 の形 を あ ら は し﹂ 形 姿 はく ん に ぬけ て容力 人 に過 た り鬼 の形 を あ ら は し﹂ 名 ⋮⋮ ﹁. 形 姿 ○ ん に ぬ け て容 力 人 に過 たり 鬼 王 の形 を あ ら は し﹂ ︵ 吉 ⋮⋮ ﹁ ○ 印 の箇 所 は判 読 でき な い。︶ 彰 ⋮⋮ ﹁ 形 姿 く ん に ぬ け て勇 力 人 に過 たり鬼 王 の形 を あ ら は し﹂. 国 司 ノ郎 等 云 此老 翁 何 不 下馬哉奇 怪 ナリト カ メオ ロ ス ヘシト 云                            ︵ 第三の 〓 一 話︶ な んそ 下馬 せ さ る や﹂ と あ る。 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮名 本 では ﹁. 養 生 経 二云 使 口如 鼻 終 身 勿事                                                             ︵ 第四の 一話︶. 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮 名 本 では ﹁口を し て鼻 のこと く せ し む れ は身 終 るま てこと な し﹂ と あ る。. 鶴 飛 千 里未 離 地                                                                       ︵ 第四の 一〇話︶. 右 記 の傍 線 部 は平 仮 名 本 では次 のよう にな って いる。 な お右 記 の傍 線 部 は漢 詩 の 一部 であ る 。 京 ・国 ・天 ・吉 ⋮ ⋮ ﹁つかと ふ千 里 いま た 地 を はな れす﹂ 名 ・異 ・静 l o内 o武 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁つると ふ千 里 いま た 地 を は な れす﹂. 彰 ⋮ ⋮ ﹁つる千 里 にと ふ いま た地 を はな れす﹂   静 2⋮ ⋮ ﹁つると ふ千 里 飛 いま た 地を は な れ す﹂. ラテ天台 座 主 二 其 詞 云若 破 戒 無 惑 . 任 セシ ムト                                                ︵ 第四の七話︶ 右 記 の傍 線 部 は、 平 仮 名 本 で は ﹁ 若 破戒無 暫 に し て天台 座 主 に任﹂ と あ る。.

(4) (4)545 『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係 について. 第六の 一四話︶ 古 墓 何 世 人 不知 姓 与 名 化 為 路傍 土 年 々春 草 生 ト ソ                                        ︵. 古 墓﹂ 右 記 の本 文 は吉 片 本 は片 本 に同 じ であ るが 、吉 片 本 に は返 り点 ・送 り 仮名 など があ る。 右 記 の傍 線 部 の ﹁. 生 ト ソ﹂ は、 古 キ墓 ハ﹂ と あ る。 ま た右 記 の傍 線 部 の ﹁ 古 き 墓 ﹂、 彰 本 で は ﹁ は 、 京 本 ・国 本 ・天 本 ・吉 本 で は ﹁. ︵第 一〇 の 一話 ︶. 古 墓﹂ の箇 所 は綴 じ込 ま れ て 生 た り と そ﹂ と あ る。 な お名 本 は ﹁ 異 本 o静 1本 ・静 2本 o内 本 o武 本 ・祐 本 では ﹁ いて読 む こと が でき な い。 所 二千 想 ・ 君 昏 ク臣 訳 テ無 レ 右 記 の傍線 部 は諸 本 では次 のよう にな って いる。 君 昏 臣 訣 無 所 千想﹂ 吉 片本⋮⋮ ﹁ 君昏 臣 話 てう た ふ る に所 な し﹂ 京 ・国 ・天 o名 ・吉 ・彰 ・内 ・武 ⋮ ⋮ ﹁ ヘ ツラ ヒ                ウ ツタ フ ル ニ. 君昏 臣 話 て こた ふ る に所 な し﹂ 君昏 臣 諮 て こた ふ る に所 な し﹂   静 l o祐 ⋮ ⋮ ﹁ 異 ⋮⋮ ﹁ 所 二千 想 己 君 昏 く 臣 訣 て無 レ 静 2⋮ ⋮ ﹁. *な お静 2本 の本 文 の性 格 に つ いては 別稿 で解 明 した い。. 以 上 の用例 か ら 、 平 仮 名 本 か ら片 仮 名 本 が出 てき た と は考 え る こと が でき な い。 ま た 以 上 の用 例 は片 仮 名 本 が平 仮 名 本 よ り も 祖 本 に近 い形 を 保 って いる ことを 示 し て いると 言 え る。 次 の用 例 も 片 仮 名 本 が祖 本 の形 を 保 って いる こと を 示 す 証 の 一つと 言え る。. 伊 通 公 ノ参 議 ノ時 大 治 五年 十 月 五 日 ノ除 ロ ニ参 議 四人 師 頼雛鰐長 実 瑚群卿宗 輔鯨離師 時雛鰐等 中 納 言 二任 ス. 第九 の 一一話︶ ︵. ︶にはす べてはな い。ただ し、名本 o彰本 には片本 静2本は片本と同じである。 右 記 の傍線部 の割り注 は平仮名本 ︵. 顕季子息﹂ とある。割り注 のあ るなしに ついてで の割り注 のす べてが傍注とし てあ るが、彰本は長実 に ついては ﹁.

(5) 名本 ・彰本 ・静2本は除く。こ2 二本 の本 あ る が 、 書 写者 が 本 文 中 にあ る割 り注 を 除 く のは簡 単 であ るが、 平 仮名 本 ︵. 文 の性格 に ついては、別稿 で解明した い。︶ のよう に傍 注 も な い状 態 か ら 片 仮 名 本 のよう に割 り 注 を 入 れ る こと は ほと. んど 不 可能 に近 いと 考 え ら れ る。割り 注 で は な く 、傍 注 であ れば 後 で加 え る こと も でき る であ ろう が 。右 記 の傍線 部 は片 仮 名 本 が祖 本 の形 を 保 って いる こと を 顕著 に示 し て いると 言え る。 次 に片 仮 名 本 と 平 仮 名 本 の書 写態度 か ら 見 て みよう と 思う 。. 大 中 臣 能 宣 父 頼 基 二語 テ云 ク過 タ ル頃 入 道 式 部 卿 宮 ノ御 子 日 ニヨ ロシキ 歌 ツカ マツリ テ侍 頼基 云如 何 千年 マテ. カ キ レ ル松 モケ フヨリ ハ君 ニヒカ レ テ万 代 ヤ ヘン世 ニモ ヨシト申 也 卜 云 父 頼 基 暫 ク ナ カ メ テ傍 ナ ル枕 ヲ取 テ能. 第 一2 二九話︶ ス ヘキ事 ナト ア マリ ニヤ ア ラム                                                          ︵. ルー                 ワカ レミヤ ノ子 日 ニカ ヽル歌 ヨムヤ ウヤ ハ有 ト ソ云 ケ ル能 宣 ニケ テ入 ニケ リ是 マテ用意. 宣 ヲウ チ テ云 思 ハサ ル ニ昇 殿 ヲモ ユリ テ主 上 ノ御 子 日 ア ラ ハ何 ナ ル歌 ヲ ヨム ヘキ ソヤ ワサ ハヒ ノ不覚 人 カ ナサ 博. あ る。 オ コ ツ ク ナ リ ケ リ 本ノ. 心 ツキ ナ クオ ホ エテ. ︵第 四 の 二話 ︶. も と﹂ と 本 ノ﹂ を 見 消 にし て ﹁ 別 当 のも と へ﹂ と な って いる。 な お片 本 で は ﹁ 右 記 の傍 線 部 は、 平 仮 名 本 では ﹁. 第四の 二話︶ 別 当 ノ本ノ  ヘ触 タ リ ツル請 文                                                            ︵. 後 の右 傍 に ﹁し や山﹂ と書 き入 れが あ る。. *な お片 本 で は右 記 の傍 線 部 の ﹁サ ルー ﹂ の後 は 八字 分 が空 白 にな って いる。 ま た片 本 に は ﹁サ ルー ﹂ のす ぐ. 彰 ・異 o静 1 ・静 2 ・内 ・武 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁さ る し や﹂. と さ か し や﹂ 京 ・国 ・天 o吉 ⋮ ⋮ ﹁さ か し や﹂   名 ⋮ ⋮ ﹁. 右 記 の傍 線 部 は平 仮 名 本 では次 のよう に な って いる。. 基 泉. 544(5).

(6) (6)543 『十訓抄』における片仮名本 と平仮名本の関係について. 本 ノ﹂ を 見 消 を こ つく な り け り 殿 さす か に心﹂ と な って いる。 な お片 本 では ﹁ 右 記 の傍 線 部 は、 平 仮 名 本 で は ﹁ に し て ﹁殿 さす か に﹂ と あ る。. 第四の 一七話︶ カ ク程 有 ヘシト ハ思 給 ハサ リケ レ ト モサ ハカ リ思 ハム本ノ    アル身 ニテ                    ︵ 右 記 の傍 線 部 は平 仮 名 本 では次 のよ う にな って いる。. 京 ・国 ・天 ・吉 o彰 ・静 1 ・内 ・武 ⋮ ⋮ ﹁お も ん は かり 有 身 ﹂   名 ⋮ ⋮ ﹁お も く 有 身﹂ 異 ・静 2 o祐 ⋮ ⋮ ﹁お も ひ はかり 有 身﹂ *な お 片 本 では ﹁ム本ノ    ﹂ を 見 消 に し て ﹁かり﹂ と あ る。. 本 ノ﹂ と し て いる こと は 、片 本 の書 写態 度 は親 本 に非 常 以 上 の用 例 か ら 、 片 本 は親 本 の不 明 箇 所 を 空 白 に し、 ﹁. 本 ノ﹂ の に忠 実 であ ると 言 え る。 ま た 、 これ ら の用 例 か ら片 本 は平 仮 名 本 か ら出 てき て いな いと 言え る。片 本 の ﹁. 見 消 と そ の書 き 入 れ に ついて であ るが 、 書 き 入 れ が平 仮 名 本 の本 文 と 一致す る こと か ら 、後 人 が平 仮名 本 と校 合 し たも の ︵ 書写者が片本を書写後にしたも のかも︶であ ると 言 え る。. 第 一〇2 〓ハ話︶ 用 光 今 ハ限 卜覚 エケ レ ハ涙 ヲ流 テロ出 キ 音 ヲ吹 出 テ本ノ吹 ス マシ タ リケ リ                  ︵ 右 記 の傍 線 部 は諸 本 で は次 のよう に な って いる。 吹 出 テ本ノ了 吹 ス マシ﹂、 見 消 も書 き 入 れ も な し 。 吉 片 本 ⋮⋮ ﹁ 吹 出 し て心 す ま した り け り ﹂ 京 ・国 ・天 ・名 ・吉 ・異 ・静 l o内 o武 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁ 吹 出 し て吹 す ま し た り﹂ 彰 o静 2⋮ ⋮ ﹁ 本 ノ﹂ を 見消 に し て いる。 *な お 片 本 では ﹁. 本 ノ﹂ ﹁ 本 ノ マ ヽ﹂ と し て いる こと は、片 仮 名 本 が 右 記 の用 例 か ら 、 片 仮 名 本 が 親本 の不 明 箇 所 を 空 白 に し 、 ﹁. 片本と吉片 十 訓 抄 ﹄ の祖 本 でな いこと を 示 し て いると 言 え る。 片 仮 名 本 と 祖 本 と の関 係 であ る が 、片 本 ・吉 片 本 ︵ ﹃.

(7) 博 基 泉. 542(7). 本が親子関係であそ つが兄弟関係 であそ つが︶と も に親 本 の不明 箇 所 を 空 白 にし て いる ので、 祖 本 と 片 本 ・吉 片 本 と の. 、 間 に 一伝 本 を 介 す ると いう 考 え 方 も でき るが 、 片 本 ・吉 片 本 あ る いはど ち ら か の親 本 にお いて 片 本 ・吉 片 本 の不. 明箇 所 が 虫 損 箇 所 であ った と す る考え 方 も でき る ので、祖 本 と 片 本 ・吉 片 本 と の間 に 一伝 本 を 介 す る こと は しな い でお く こと にす る。. 以 上 を ま と め て みると 、 片 仮 名 本 の書 写態 度 は親 本 に非 常 に忠 実 であ り 、 祖 本 に非 常 に近 い形 を 保 って いると 言. え る。 す な わ ち 、 片 仮 名 本 は平 仮名本 に先 行 す る も のであ ると 言え る。 し か し、 片 仮 名 本 と 平 仮 名 本 と が親 子 関係 翁片仮名本←平仮名本し にあ る のか、兄弟 関係 にあ る のか は判 断 でき な い。.   祖本 に近 いのは片仮名本 か平仮名本 か︵2︶ 〓一 片仮名本と平仮名本 の本文異同から見 てみようと思う。. 中山 ノ大臣卜聞 ヘシ人宰相成頼卜契 テ常 二出仕 ノ友 ナリケルカ宰相俄 二道心発 シテ出家 シテ高野 二籠居 セラレ. タリケ ル所 ヘオト ヽ外記太夫卜云者 ノ物 二心得 タルヲ使 ニテ出家 ノ哀サナムト云ヤ ルサ マニテ彼緬 ノ指図 ヲ委. クセラレケリサテ中山 ノ入 ニカタ/ヽ ノ山キ ハニ只 Ⅵ冽﹁﹁月羽回劃 ヲ作立 テ大臣 モ出家 シテ ソコニ住給 ケル. 第 五の五話︶ ニ                                                    ︵. 緬 ﹂、 ﹁ 庖 ﹂ は 片 本 の誤 庖﹂ は ﹁ 庵﹂ と あ る 。 ﹁ 緬﹂ は ﹁ 栖 ﹂、 ﹁ 太 夫﹂ は ﹁大 夫 ﹂、 ﹁ 右 記 の本 文 は 、 吉 片 本 で は ﹁ 写 で あ ろう 。. 、 右 記 の の 傍 線 部 は 平 仮 名 本 で は 次 の よ う に な って いる ︵ここでは漢字と仮名 の相違も問題にな る ので 両者 の相違もと 。 りあ げ ること にす る。︶.

(8) (8)541 『十訓抄』における片仮名本 と平仮名本の関係 について. 京 ・国 。天 ・吉 ⋮ ⋮ ﹁た き 所 のま ゝな る庵 室﹂   名 ⋮ ⋮ ﹁た ゝそ のま ゝな る庵 室﹂ ︱ た ゝ所 のま ゝな る庵 室﹂   異 ⋮ ⋮ ﹁た ゝと こ ろ のま ゝな る庵 室﹂ 彰 ⋮⋮ ﹁ たき と こ ろ のま ゝな る庵 室﹂ 静 l o静 2 o内 ・武 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁. 名本 の本文 の性格に ついては、別稿で解 右 記 の平 仮 名 本 の本 文 を 見 て み ると 、名 本 だ け が 片 仮 名 本 の本 文 と 一致 し ︵. 、 他 の平 仮 名 本 は す べて片 仮 名 本 の本 文 と 異 って いる。 京 本 ・国 本 o天本 ・吉 本 の ﹁ た き 所 のま ゝな る 明した い。︶. 庵 室﹂ で は意 味 が 通 じ な い。 し か し、 宰 相 が籠 も った 庵 室 の近 く に滝 があ った と す れ ば 、大 臣 が庵 室 を作 った のが. 滝 所﹂ と 解 せ な い こと も な い。 し か し、説 話 の た き 所﹂ を ﹁ 山 際 であ る か ら滝 が あ っても 不 思議 で は な い の で、 ﹁. 滝所﹂ と いう 言 葉 があ った かどう かも 問 題 文 意 か ら す ると こ の考 え 方 に は少 し無 理 が あ る よう に思え る し 、 ま た ﹁. ︱ ﹂ の箇 所 は、彰 本 の親 本 に お いて其 の箇 所 が ︱ た ゝ所 のま ゝな る 庵 室﹂ の ﹁ にな る 。 彰 本 に つ いて であ る が 、 ﹁. 判 読 でき な い状 態 にあ った の で こ のよう に し た のか 、あ る いは彰 本 の書 写者 の筆 ミ スか も し れな い。 いず れ に し て. ︱ ﹂ の箇 所 を 除 いた ﹁た ゝ所 のま ゝな る庵 室﹂ は意 味 が 通 じ る。 異 本 の ﹁た ゝと ころ のま ゝな る庵 室﹂ も彰 本 の ﹁. たき と こ ろ のま ゝな る庵 室﹂ は京 本 ・国本 ・天本 ・吉 本 も意 味 が 通 じ る。 静 1本 o静 2本 ・内 本 ・武 本 ・祐 本 の ﹁ と 同様 に考 え てよ い。. た ゝと こ ろ のま ゝな る た ゝ所 のま ゝな る庵 室﹂ ﹁ た き 所 のま ゝな る庵 室﹂ ﹁ それ で は ﹁ 只 ソノ マ ヽナ ル庵 室﹂ と ﹁. 名本は除く。︶の本 文 庵 室﹂ ﹁た き と こ ろ のま ゝな る 庵 室﹂ と の本 文 の関係 を 考 え て み よ う と 思う 。 ま ず 平 仮 名 本 ︵. た ゝ所 の﹂ か ら は ﹁只 ソノ﹂ が出 てく る可 か ら片 仮 名 本 の本 文 が出 てき た と 考え る のはど う であ ろう か 。 彰 本 の ﹁. 只 ソノ﹂ にな るか ら であ る。 し か し 、彰 所﹂ を 変 体 仮 名 の ﹁そ﹂ と 読 め ば ﹁ 能 性 は 十 分 にあ る。 ﹁た ゝ所 の﹂ の ﹁. ︱ ﹂ の箇 所 があ り 、 片 仮 名 本 が彰本 か ら 出 てき た のであ れば 、片 仮名 本 の 本 には ﹁ ︱ た ゝ所 のま ゝな る庵 室﹂ と ﹁. ︱ ﹂ の箇 所 に何 ら か の表 記 があ っても 書 写態 度 が 親 本 に非 常 に忠 実 であ る こと ︵二項参昭じ か ら 考 え て、彰 本 の ﹁.

(9) よ いはず であ る のに、 片 仮 名 本 に何 の表 記も な いと いう こと は. 、 片 仮名 本 は彰 本 か ら 出 てき た ので はな いと言え る。. 。 召 ハソ ノ﹂ か ら 彰 本 の. たき と こ ろ の﹂ から ﹁只 たき 所 の﹂ ﹁た ゝと こ ろ の﹂ ﹁ ﹁たき 所 の﹂ ﹁た ゝと こ ろ の﹂ ﹁た き と ころ の﹂ に つ いては、 ﹁ ソノ﹂ が 出 てき た と は考 え る こと ができ な い。. で は逆 に 片 仮 名 本 の本 文 か ら 平 仮 名 本 の本 文 が 出 てき た と 考 え る のはど う であ ろう か. 、 片 仮 名 本 から彰 本 が出. そ﹄ご で表 記 す れば ﹁た ゝ 所 ︵﹃ 只 ソ ノ﹂ の ﹁ソ﹂ を 変 体 仮 名 の ﹁ ﹁た ゝ所 の﹂ が 出 てく る 可 能 性 は 十分 にあ る。 ﹁. 所 の﹂ にな る か ら であ る。前 述 のよう に片仮 名 本 は彰 本 から出 てき た のではな いと な ると てき たと いう こと にな る。. た き と こ ろ の﹂ と いう こと にな る が 、 二 つの考 え 方 が でき ると 思う 。 たき所 の﹂ ﹁ ら れ な いので、 ﹁た ゝ所 の﹂ か ら ﹁. 只 ソノ﹂ か ら ﹁た き 所 の﹂ ﹁たき と こ ろ の﹂ は考え ﹁た ゝ所 の﹂ か ら ﹁ た ゝと こ ろ の﹂ は簡単 に出 てく る。 問 題 は ﹁. た ゝ所 の﹂、 た ヽと こ ろ の﹂ ﹁た き と こ ろ の﹂ は どう であ ろう か 。 召 ハソノ﹂ か ら ﹁ 召 ハソノ﹂ か ら ﹁たき 所 の﹂ ﹁ 博. 。 ﹁ た き 所 の﹂ と ﹁たき と ころ の﹂ の関 係 に つ いては、 こ こ では不明 な ので右 記 のよう にし た たき 所 の﹂ と書き 入 れ があ る *  国 本 に は ﹁. *. たの ←﹁ ︲ ■ ︲ 一 縛 牌 罐 札                     綿 一 ¨ ゎ 卜 ] ド ン 本 本 祐 武 ︶ ・ o ︶ 本 ︶ ︵. てき たと いう こと にな ると 思う 。 図式化 す ると 次 のよう にな る。. 、 たき 所 の﹂ ﹁た きと ころ の﹂ で は 説 話 の文 意 に無 理 があ る こと か ら 片 仮 名 本 か ら 平仮 名 本 が出 いず れ に し ても ﹁. たき と こ ろ の﹂ にな った と いう 考え 方 であ る。 たき 所 の﹂ ﹁ う 考 え 方 、 も つ 一つは単 純 に ﹁た ゝ所 の﹂ を 誤 読 し て ﹁. たき 所 の﹂ ﹁たき と こ ろ の﹂ にな った と い 片仮名こ と 誤読 し て ﹁ そ の 一つは ﹁た ゝ所 の﹂ の踊 り 字 ﹁止 を ﹁キ ︵. 基 泉. 540(9).

(10) (10)539. 『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係について. *  彰 本 の 写 本 で は ﹁た ゝ 一た ゝ所 一で示 し た 。. と あ り 、 ﹁た ゝ所﹂ 以 外 で 読 む こ と が でき な い の で、 彰 本 の ﹁ た ヽ所﹂ は. ︵第 六 の 三 二話 ︶. 。異 本 の ﹁ つの﹂ は意 味 が 通 ら な い ︵ 熊には角がな い。︶ 人 さ の への﹂ も 意 味が 通 らな い。 静 1本 ・内 本 ・祐 本 の ﹁ 人. で は静 2本 以 外 の十 一本 の本 文 に ついて見 て いく こと にす る。 京 本 ・国本 ・天本 ・名 本 ・吉 本 ・彰 本 の ﹁ くま の. モ ノ﹂ か ﹁ 鹿 ノ ツ ノ﹂ か は判 断 でき な いが 、   一応 ﹁ 杖 ノ頭 二鹿 ノ角 ヲ着 ケタ ル モノ﹂ と 推 定 し てお こう 。. 館︶ に は ﹁ 鹿 の角 を 上 端 に つけ た 杖﹂ と あ る が 、 ﹃ 十 訓 抄﹄ に お け る ﹁ワサ ツノ﹂ が ﹁ 杖 ノ頭 二鹿 ノ角 ヲ着 ケ タ ル. 海﹄ ︵ 一 口 田 山 房︶に は ﹁ 杖 ノ頭 二鹿 ノ角 ヲ着 ケ タ ル モ ノ ト 云 フ。 又鹿 ノ ワカヅ ノ。 日本 国 語 大 辞 典﹄ ︵ 小学 ﹂とあり、 ﹃. 鉢 叩 の歌 に よ め り 図 に棒 のさき に鹿 の角 を 立 た り わ さ は 今 も物 を 懸 る にわ さ にす ると い へり﹂ と あ り 、 ﹃ 新訂 大 言. キ テワサ角 ヲモチ テ念 佛 申 テ祭 ヲハワタ ル也﹂ と あ り 、 N 補倭 訓 栞 下巻 ﹄ ︵ 名著刊行会 ・昭和四十八年︶には ﹁ 職 人 歌合 に. 三 上 人 ト モノカ ハキ ヌヲ ナ ラセ給 シ 時 件 ノ鹿 ノ皮 ヲハ委 トンテタ テ マツリ角 ヲハ杖 ニツキ テサ ヽケ モチ ︵ 中略︶イ マノ世 一. リ ケ リ アリ カ タ キ 賓 物 ナ レ ハソ ノ角 ナ ラ ヒ ニ皮 ヲハ官 庫 ニオ サ メ ヲカ レ ニケ リ ︵ 中略︶皇 子 出 家 遁 世 シ給 テ頭 陀 ノ行 人ト. ル︵ 中略︶抑 カ ノ ヮサ ツ ノヲモ テ ルオ コリ ハ ︵ √イ アク セ /ヽ シ キ ワサ ツノ ア 中略︶七 啓 ナ ク シ カイ テ キ ニケ リ極 テ大 一. ﹁ヮサ ツ ノ﹂ に つ いて は、 ﹃ 名 語 記 ・巻 第 九﹄ ︵ 勉誠社 ・北野克 ・昭和 五十八年︶に は ﹁頭 陀 ノ上 人 ノ モチ テ祭 ヲワタ. 本 文 と 一致 し 、 他 の諸 本 はす べて片 仮 名 本 の本 文 と 異 って いる。. 右 記 の平 仮 名 本 の本 文 を 見 て み ると 、静 2本 ︵ 静 2本 の本文 の性格に ついては、別稿で解明す る。︶だ け が片 仮 名 本 の. 静 l o内 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁ 人 さ の つの﹂   武 ⋮ ⋮ ﹁ 人 ま の つの﹂   静 2・ ⋮︰ ﹁ わ さ つの﹂. 京 ・国 ・天 o名 ・吉 ・彰 ⋮ ⋮ ﹁ 人 さ の への﹂ く ま の つの﹂   異 ⋮ ⋮ ﹁. 右 記 の傍 線 部 は平 仮 名 本 で は次 のよう にな って いる。. 惟成 後 ニ ハ賀 茂 祭 日 ワサ ツ ノ持 テ 一条 大 路 ヲ ワタ リ ケ リ. 所ソ.

(11) 人 ま の つの﹂ も 意 味 が 通 ら な い。 こ のよう に見 てく ると 、 十 一本 のす べて さ の つの﹂ も 意 味 が 通 ら な い。 武 本 の ﹁. 人 さ の への﹂ ﹁ 人 さ の つの﹂ の本 文 は意 味 が 通 ら な いと いう こと にな る。 そ れ で は ﹁ワサ ツノ﹂ と ﹁ く ま の つの﹂ ﹁ ﹁人ま の つの﹂ と の関係 を ど う 解 す れば よ いのであ ろう か 。. ﹁ 人 さ の つの﹂ ﹁人 ま の つの﹂ から ﹁ワサ ツノ﹂ が出 てき た と は、考 え る こと が でき く ま の つの﹂ ﹁人 さ の への﹂ ﹁. な い。 す な わ ち 、 平 仮 名 本 の本 文 から片仮名 本 の本 文 が 出 てき たと は考 え る こと が でき な い のであ る。 ではそ の逆. はど う であ ろう か 。 ﹁ワサ ツノ﹂ から ﹁ く ま の つの﹂ が 出 てき た と は、 考 え る こと が でき な い。 ﹁ワサ ツ ノ﹂ か ら. ﹁ 人 さ の つの﹂ が出 て 人 さ の への﹂ ﹁ 人 ま の つの﹂ が出 てき たと も考 え る こと が でき な い。 では ﹁ワサ ツノ﹂ か ら ﹁. の﹂ ︵ わさ の つの﹄ の意識で︶と 表 記 し た と す れ ば ど う であ ろう か。 ﹁わ﹂ と ﹁は﹂ は仮 名 遣 いで よ く 誤 る 書写者は ﹃. 、 ﹁八 ︵ はじ さ の つ わさの つの﹄ にした。 わさ の つの﹄ にした。または単純に ﹃ の﹄を加え て ﹃ 変体仮名 の ﹃ い言葉なので ﹃ ︶. ワサ ツノ﹄が耳慣れな き たと す る のは ど う であ ろう か。 ﹁ワサ ツノ﹂ を 書 写者 が 頭 の中 で ﹁わ さ の つの﹂ と 改 作 し ︵﹃ 博. ﹁へ﹂ と 誤読 さ れ る こと は十 分 に考え ら れ、 ﹁ 人 さ の への﹂ が出 てく る。 こ のよう に ﹁ワサ ツノ﹂ か ら ﹁八 さ の つの. 人 さ の つの﹂ の ﹁つ﹂ は 草 書 体 の ﹁つ﹂ と ﹁へ﹂ の字 体 が よく 似 て いる こと か ら 、 ﹁つ﹂ が も考 え ら れ る。 ま た ﹁. と 誤読 さ れ る こと は 十 分 に考 え ら れ、 ﹁ く ま の つの﹂ は ﹁人 さ の つの﹂ か ら出 てき たと く ま の つの﹂ が 出 てく る。 ﹁. 人 ま の つの﹂ が出 てく る。 ﹁ 人 ま の つの﹂ の ﹁ 人﹂ は ﹁ 体仮名 ﹃ く﹂ 万﹄ご と 誤 読 さ れ る こと は十 分 に考 え ら れ 、 ﹁. 人 さ の つの﹂ の ﹁さ ︵ 変体仮名 ﹃ 変 左﹄と は ﹁ ま ︵ 誤 読 さ れ る こと は 十 分 に考 え ら れ 、 ﹁ 人 さ の つの﹂ が出 てく る。 ﹁. ﹁ は﹄と は ﹁ 人﹂ と はじ さ の つの﹂ の ﹁八 ︵﹃ 人 さ の つの﹂ ﹁ 人 ま の つの﹂ と の関 係 を 見 て いく こと に す る。 ﹁八 ︵﹃. ﹁ヮサ ツノ﹂ か ら ﹁八 ︵﹃ はじ さ の つの﹂ が 出 てき た と いう 考 え で、 ﹁ワサ ツノ﹂ と ﹁ 人 さ の への﹂ く ま の つの﹂ ﹁. はじ さ の つの﹂ 自 身 が 意 味 を な さ な いか ら 無 理 であ る。 さ の つの﹂ か ら ﹁ワサ ツ ノ﹂ はど う か と いう と 、 ﹁八 ︵﹃. はじ はじ さ の つの﹂ と表 記 す る こと は十 分 に考 え ら れ る。 こ の逆 ﹁八 ︵﹃ も の であ る か ら ﹁わ さ の つの﹂ を ﹁八 ︵﹃. 基 泉. 538(11).

(12) (12)537. 『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係について. 。 はさのつ はさの つの︶ ︵ ﹂ が 出 てき た と す る と す べてを う ま く 解 す る こと が でき る ﹁ワサ ツノ﹂ か ら ﹁八 さ の つの ︵. 、 人 ま の つの﹂ と の 人 さ の つの﹂ ﹁ 人 さ の への﹂ ﹁ く ま の つの﹂ ﹁ の︶ ﹂ が出 てき た と す る仮 定 か ら ﹁ワサ ツノ﹂ と ﹁. 関 係 を 見 てき た の であ るが 、 す べてが う ま く いく こと と 、 平 仮 名 本 か ら 片仮 名 本 が出 てき た と は考 え る こと が でき 。. な いこと ︵二項参 照︶と を 考 え 合 わ せ ると 、 こ の仮 定 も そ う 無 理 のあ るも のではな いと 言 え る の では な か ろう か 図式 化 す ると 次 のよう にな る。. ︲ ︲ っ ︲← ﹁八 さ の つの ︲ サッ 一 r一﹁﹄菊 %算 一             詢 程 本 ・彰本︶ 国本 ・天本 ・名本 二 日 上 静 本 o士 本︶.  一応右 記 のよう に し た 。 人 ま の つの﹂ か ら出 てき た と も 考 え ら れ る が、 * ﹁ く ま の つの﹂ は ﹁. 人さ の つの﹂ 以外 で読 む こと が でき な いの 人 さ の つの﹂ は、 そ れ ぞ れ の写本 で ﹁ *  静 1本 o内 本 ◆祐 本 の ﹁ で、 静 1本 o内 本 ・祐 本 の ﹁人 さ の つの﹂ は 一人 さ の つの 一で示 した。. タト ヘ ハ花 ノ ア タ リ ノ常 磐 木 ハウ チ ミ ル ニタト ヘナ クサ メ タ レ ト モ 春 ノ日数 ク レ峰 ノ嵐 スキ ヌル後 ニミト リ ハ. 第 一〇の序︶ ︵. カ リ残 リ テ カ リ ノ匂 卜 ヽマラサ ル カ コト シ サ レ ハ桃 李 ハ 一旦 ノ栄 花 ナリ松樹 ハ千 年 ノ貞 木 ナ リ ト云 リ 右 記 の傍線 部 は 平 仮 名 本 では次 のよ う にな って いる。 す さま しく さ た め た れ と も﹂ 京 ・国 ・天 ・名 ・吉 ・彰 ・武 ⋮ ⋮ ﹁ す さ ま しく さ た め な け れ と も﹂ 異 ・内 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁. ︲ たと へなくさめたれ ︶  静2⋮⋮ ﹁ 一 ぼ虫損。以下同じくする。 静1⋮⋮ ﹁ すさましくさためなけれ日 ︲百∩︱ ︱一 と も﹂.

(13) 静2本 の本文 の性格に ついては、別稿で解明する。︶だ け が片 仮 名 本 の 右 記 の平 仮名 本 の本 文 を 見 て み ると 、静 2本 ︵. 本 文 と 一致 し 、 他 の平 仮 名 本 はす べて片 仮名 本 の本 文 と 異 って いる。 片 仮名 本 の ﹁タト ヘナ ク サ メタ レト モ﹂ は意. 味 が よ く 通 じ るが 、京 本 ・国本 ・天本 。名 本 ・吉 本 ・彰 本 ・武 本 の ﹁ す さま しく さ た めた れ と も﹂ は全 く 意 味 が通. じ な い。 次 に異 本 ・内 本 ・祐 本 の ﹁ す さま しく さた め な け れ と も﹂ は、無 理をす れば意 味 は 通 じ な いこと も な いが. も う ひと つす っき り し な いと こ ろがあ る。 ﹁ す さま し く さ た め た れと も﹂ と ﹁ す さま しく さ た め な け れ と も﹂ と に. さ た め な け れと も﹂ と が 対 立 し て いるよう であ るが、 両 者 の関 係 はど う な って ついて は、 ﹁さた め た れ と も﹂ と ﹁ いる のだ ろう か 。. いて であ るが、 ﹁さ た め た れ と も﹂ の ﹁さ た め﹂ の ﹁ た﹂ を 除 け ば ﹁さ め た れと も﹂ と な り 片 仮 名 本 の本 文 と 一致. ﹁さ た め な け れと も﹂ と に は直 接 的 な 関 係を 求 め る こと は でき な い。 ﹁サ メタ レト モ﹂ と ﹁さ た め た れ と も﹂ と に つ. ﹁サ メタ レト モ﹂ ﹁さ た め た れ と も﹂ ﹁さ た め な け れ と も﹂ の三者 の関 係 に ついて であ る が 、 ﹁サ メタ レト モ﹂ と 博. と ら せさ 然 形 、 ﹁セ﹂ は助 動 詞 ︵ 使役︶﹁ す﹂ の連 用形 、 ﹁ 給 へ﹂ は補 助 動 詞 であ り 、う まく 説 明 が つく 。 し か し 、 ﹁. 取 る﹂ の未 右 記 の傍 線 部 は平 仮 名 本 では ﹁せさ せ給 へ﹂ と あ る。 ﹁ト ラセ給 へ﹂ であ れば、 ﹁ト ラ﹂ は 四段 動 詞 ﹁. 第ニ 天 話︶ ハの 一 モ テオ ハシ テト ラ セ給 へ                                                            ︵. 次 に文 法 から の考 察 を し て みよう と 思う 。. め な け れと も﹂ と 改 作 し た も のであ ろう 。 ﹁ す さま しく﹂ も ﹁タト ヘナ ク﹂ を改作 し たも の であ ろう 。. は ﹁さ た め た れ と も﹂ では全 く 意 味 が 通 じ な いので、 ﹁さ た め た れ と も﹂ の ﹁ た れ﹂ を ﹁ な け れ﹂ に変 え て ﹁さた. ﹁さ た め た れと も﹂ の ﹁さ た め﹂ の ﹁た﹂ は衛 字 であ ると 考 え る のが妥 当 であ ろう 。 そし て ﹁さ た め な け れ と も﹂. 除 いて ﹁サ メタ レト モ﹂ にな った と は、片 仮名 本 が平 仮 名 本 に先 行 す る こと ︵一一 項参昭じ か ら 、 考 え ら れ な いので、. す る。 し か し ﹁さ た め た れ と も﹂ では全 く意 味 が 通 じ な いこと か ら 、 ﹁さ た め た れと も﹂ の ﹁さ た め﹂ の ﹁た﹂ を. 基 泉. 536(13).

(14) (14)535. 『十訓抄』における片仮名本 と平仮名本の関係について. と ら﹂ は 四段 給 へ﹂ と 切 った 場 合 は 、 ﹁ と ら﹂ ﹁せ﹂ ﹁さ せ﹂ ﹁ と ら せ さ せ 給 へ﹂ を ﹁ せ給 へ﹂ は どう であ ろう か 。 ﹁. 使役︶﹁ す﹂ の連 用 形 と 説 明 が つく が、 ﹁さ せ﹂ は 助 動 詞 に し か取 る こと 取 る﹂ の未 然 形 、 ﹁せ﹂ は助 動 詞 ︵ 動詞 ﹁. が でき な いので、 ﹁さ せ﹂ は助 動 詞 ﹁さ す﹂ と いう こと にな る。 そ う す ると 、助 動 詞 ﹁さす﹂ は 四段 oナ変 ・ラ変. 助動詞と は助 動 詞 に助 動 詞 ﹁さす﹂ が接 続 し て いる 助動詞︶さ せ ︵ 以外 の動 詞 の未 然 形 だ け に接 続 す る の で、 ﹁せ ︵. 給 へ﹂ と 切 った と ら せ﹂ ﹁さ せ﹂ ﹁ と ら せ さ せ給 へ﹂ を ﹁ こと に な り 文 法 的 に説 明 が でき な く な って しま う 。 ま た ﹁. さす﹂ と いう こと にな る。 こう 考 え ると 取 ら す﹂ の未 然 形 、 ﹁さ せ﹂ は助 動 詞 ﹁ と ら せ﹂ は 下 三段 動 詞 ﹁ 場合 は 、 ﹁. 助 動 詞 ﹁さす﹂ の接 続 も う ま く いき 、 文 法 に適 合 す る よ う に見 え るけ れど も 、 こ の場合 の助 動 詞 ﹁さ せ﹂ は尊 敬 に. し か 取 る こと が でき な いの で、 ﹁さ せ 給 へ﹂ で 二重 敬 語 と いう こと にな る。 こ の箇 所 は尼 上 が 小 尼 上 に発 話 し て い. る場 面 であ り 、 尼 上 が 小 尼 上 に 二重 敬 語 ﹁さ せ給 へ﹂ を 使 用 し て いる こと になり 、待 遇表 現 と し て無 理 があ る。 こ. のよう に見 てく ると 、 平 仮 名 本 の ﹁せ さ せ給 へ﹂ は文 法 的 に誤 り と いう こと にな る。 平仮 名 本 に文 法 の誤 り があ る. と いう こと は、 平 仮 名 本 より 片 仮 名 本 が善 本 であ ると 言 え る。 そ し て平 仮名 本 の文 法 の誤 り が書 写 時 にお け る誤 写. あ る いは改 作 だ と す れ ば 、 これ も 片 仮 名 本 が 平 仮 名 本 よ り 先 行 す るも のであ ると 言え る。 次 の用 例 も そ れを 示 す も のと 言 え る。. 第九 の二話︶ タ ノ メ テ ン人                                           ︵. たの 静2本は片仮名本と同じ。静 2本 の本文 の性格 については、別稿で解明した い。︶で は ﹁ 右 記 の傍 線 部 は 平 仮 名 本 ︵. 頼 む﹂ の連 用形 、 ﹁テ﹂ は助 動 詞 ﹁つ﹂ め ら ん﹂ と な って いる 。 ﹁タ ノ メ テ ン﹂ であ れば 、 ﹁タ ノ メ﹂ は 下 三段 動 詞 ﹁. た のめ ら ん﹂ た のめ ら ん﹂ はど う であ ろう か 。 ﹁ の未 然 形 、 ﹁ン﹂ は 助 動 詞 であ り 、 う ま く 説 明 が つく 。 し か し 、 ﹁. ら ん﹂ と 切 った 場 合 は 、 ﹁ 頼 む﹂ は 四段 動 詞 と 下 三段 動 詞と があ るが、 四段 動 詞と す ると ﹁た のめ﹂ を ﹁た のめ﹂ ﹁. ら た のめ﹂ は終 止 形 でな いの で ﹁ は 終 止 形 で な いの で ﹁ら ん﹂ に 続 く こと が でき な いし 、 下 三段 動 詞 と し て も ﹁.

(15) 博 基. 534(15). ん﹂ に続 く こと が でき な い。 す な わち 、 ﹁た のめ ら ん﹂ を ﹁ た のめ﹂ ﹁ ら ん﹂ と 切 ると 、文 法 的 に説 明 が でき な く な. ってし ま う 。 こ のよう に見 てく ると、 平 仮 名 本 の ﹁ た のめ ら ん﹂ は文 法 的 に誤り と いう こと にな る。 これ は平仮名. 本 の書 写 者 が ﹁タ ノ メ テ ン人﹂ の ﹁テ﹂ を ﹁ラ﹂ と 誤読 し た も のと 思 わ れ る。 こ こでも片 仮 名 本 が 平 仮 名 本 より 先 行 す るも のであ ると 言え る。. 四 片仮名本と平仮名本 は親子関係か兄弟 関係か. 片 仮 名 本 と 平仮 名 本 と に は多 く の対 立 本 文 があ るが、 こ こ で は 大 き な視 野 か ら片仮名 本 と 平 仮 名 本 の関 係 に つい て見 て み よう と 思う 。 A  片 本 の本 文 が欠 文 にな って いて意 味 が通 じな いも の. 花 園 ノオ ト ヽイ マタ ツカ サ モ浅 ク オ ハシ ケ ル ニ文 御 師 ニテ博 士 敦 正 卜 云 ケ ル者参 ケ リ才 覚 イ ト シ ナ有 ケ ル ニヤ. 此 佐 実 花 園殿 二参 テ物 語 申 ケ ル次 二御 文 ノ事 候 ハン時 ハ佐 実 ヲ召 サ レ候 ヘキ物 ヲ敦 正 ニ ハヨ モ芥 り候 ハシト テ. 彼 力浅 事 共 ヲ申 ケ レ ハ心 得 ス覚 ナ カ ラ ア ヒシ ラ ヒ給 二実 ト ヤ 思 ケ ン恭 候 ト テイ ミシキ秀句 ヲ コ ソ思 寄 侍 レト聞. ユイ ト 興 ア ル事 哉 イ カ ニト 問給 二有 花 々 々敦 正 山 之春 霞 紅 卜 云 ア ルシ ノ殿笑 給 テイ ミシキ秀句 也 卜感 給 ケ レ ハ. オ コ ツク ナリ ケ リ                                                                         ︵ 第四2 二話︶. 平 仮 名 本 では右 記 の傍 線 部 の後 に ﹁しえ たり と 思 て罷 出 ぬ か く 云 は敦 正 か鼻 の赤 かり け れ は﹂ と あ る。 片 本 の本. 文 で は意 味 が 通 じ な い。 ﹁ け れ は﹂、 ﹁ 感 給 ケ レ ハ﹂ に ﹁ け れ は﹂ と あ る の で、 片 本 の書 写 者 の 赤 かり け れ は﹂ に ﹁. 目移 り に よ る欠 脱 であ ろう 。 な お片本 に は右 記 の傍 線 部 の後 に ﹁しえ たり と 思 てま かり 出 ぬかく いふ て敦 正 か鼻 の. あ か ゝり け れ は﹂ と 墨 書 の書 き 入 れがあ る ︵ 以後、書き入れに ついては墨書 の場合はそのつど墨書と注記せず、朱書 の場合.

(16) 。 にだけ注記することにする。︶ B  片 仮 名 本 の本 文 で は意 味 が 通 じ な いも の. 延 喜 ノ御 代 二貫 之 以 下 四人 ノ歌 仙 二仰 テ古 今 集 ヲ撰 シ テ後 又 新 撰 集 ヲ エラ ヒ テ奉 ル ヘキ由 貫 之 一人 綸 言 ヲ奉 リ. 第六の九話︶ タ リ ケ ル カ                                                                            ︵ 以後、吉片本 に ついては、片 う け給 た り﹂ と あ り 、 吉 片 本 は 片 本 と 同 じ であ る ︵ 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮 名 本 で は ﹁. 本と本文異同 のある場合にだけ吉片本 の本文を示すことにし、本文異同がな い場合には いち いち吉片本の本文を示さな いことに. 。 片 仮 名 本 の本文 で は 意 味 が通 じ な い。 片 仮 名 本 の誤 写 であ る。 なお片 本 o吉 片本 には書 き 入 れ は な い。 する。︶ C  平 仮 名 本 の本 文 が欠 文 にな って いて意 味 が 通 じな いも の. 俊 頼 朝 臣 ハ十 徳 ナ カ ラ ム人 ハ判者 ニアタ ハスト ソ書 レ ケ ル源 中 納 言 国信 家 ノ歌 合 ヲ俊 頼 ノ判 タ ル ヲ ハ若 狭 阿 闇. 十 徳 は彼等 以 下 のこと也﹂ 京 。国 o天 o名 ・吉 ・異 o静 l o静 2 o内 ・武 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁ 彰 ⋮ ⋮ ﹁十徳 は世 お ほえ 種 姓 高 貴 和 歌 才 覚 口き ゝお ほ へ等 以 下 の事 也﹂. の. ○ 話. モ ア ラ ソ ヒカ タ ク コ ソ有 ケ メト モ六 条 ノ御 息 所 ノ旧 キ 例 モ ヨシ ナ クヤ覚 工給 ケ ムサヤ ウ ノ心 ハセ情 フカ シ. 見 所 ヲ取 テ人 ヲ煩 ハサ シ ノ タ メ ニム ナ車 ヲ五両 立 ヲカ レタ リ ケ ル也 其頃 ノ内 府 ノキ ラ ニテ ハイ カ ナ ル車 ナ リト. ケ ラ レ ン スラ ント 人 々ロ ヲ ス マシ タ ル ニ或 便 宜 ノ所 ナ ル車 共 ヲ引 出 シケ ル ヲ見 レ ハ皆 人 モ乗 ヌ車 ナ リ ケ リ兼 テ. 小 松 内 府 賀 茂 祭 見 ムト テ車 四 五両斗 ニテ 一条 大 路 二出 給 ヘリ物 見 車 ハ立 ナ ラ ヘテ スキ マモナ シイ カ ナ ル車 カ ノ. ︶ の本 文 では意 味 が 通 じ な い。 彰本は除く。彰本の本文 の性格に ついては、別稿で解明したい。 右 記 の平 仮 名 本 ︵. 第. 梨 隆 源 左 衛 門佐 基 俊 ナ ト各 オ コツキ ヤ ウ /\ ノ事 共 書 付 タ リ ケ ル ニヤ是等 ハ世 オ ホ エノ スク ナ ク人 二用 ラ レ ヌ ス 所 也. 右 記 の傍 線 部 は、 平仮 名 本 で は次 のよう にな って いる。. カ イ タ. (16)533. 『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係について.

(17) 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮名 本 で は欠文 であ り 、 平 仮 名 本 の本 文 で は意 味 が 通 じ な い。. 第 一の〓一 六話︶ ︵. 国 司 ノ云 ク 一人当 千 ノ馬 ノ立 様 也 夕 ヽモ ノ ニアラ ス有 ヘカ ラ スト制 止 シ テウ チ過 ル間 三町 ハカ リ サ カ リ テ大 矢. 右 衛 門尉 致 経 数 多 ノ従 類 ヲ具 シ テ ア ヒタ リ弓 取直 シ テ国 司 二会 釈 之 間致 経 云愛 二老 翁 ヤ 一人 ア ヒタ テ マツリ テ. 候 ツラ ム ア レ ハ愚 父平 五大 夫 ニテ候 堅 固 ノ田舎 人 ニテ不知 子 細 サ タ メ テ無 礼 ヲ現 候 ラムト 云 ケ リ致 経 過 テ後 国. 司 サ レ ハ コ ソ致 頼 ニテ有 ケ リ ト云 ケ リ此 党 ハ頼 信保 昌維 衡 致 頼 ト テ世 二勝 タ ル四人 ノ武 士 也 両虎 夕 ヽカ フ時 ハ. 共 二死 セ スト 云事 ナ シ保 昌 彼 力振舞 ヲ見 知 テ更 ニアナ ツラ ス郎 等 ヲイ サ メ テ無 為 ナ リケ リイ ミ シキ高 名 也. 十 訓 抄﹄ 編 者 の言 葉 であ 此 党﹂ 以 下 が ﹃ 頼 に て有 けり 此 党﹂ と あ り 、 片 本 の ﹁国司﹂ ﹁卜 云 ケ リ﹂ が欠 け て いる。 ﹁. 後 さ れ は こそ 致 ︶で は ﹁ 彰本は除く。彰本 の本文 の性格に ついては、別稿 で解明した い。 右 記 の傍 線 部 は、 平 仮名 本 ︵. 第三の 三 話︶ ︵ 博. D  平 仮 名 本 の本 文 では意 味 が 通じ な いも の. 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮名 本 で は欠文 であ り 、 平 仮名 本 の本 文 で は意 味 が 通 じな い。. 第六2 一 6 話︶ 二行 テ苦 患 ヲ救 ヒ給 ニヨリ 父 得道 ノ由 遺 龍 夢 ノ告 ヲミ タ リ ケ リ                            ︵. 王 ノ勅 宣 ニヨリ テ心 ナ ラ ス法 華 八軸 ノ外 題 六 十 四字 ヲ書 ク ア ヒタ ニ其 字 六十 四体 ノ仏 卜成 テ鳥 龍 力落 所 ノ地 獄. ニケ リ カ ヽル不善 ノ モ ノナ レ ハ悪道 二落 テ大 苦 脳 ヲ受 タ リ ケ リ遺 龍 父 ノ遺 命 二随 テ深 ク仏法 ヲ背 トイ ヘト モ国. 遺 龍 卜 云 者 相 継 テイ ミ シ キ手 書也 ケ ル ヲ烏 龍 死 タ ル時 汝 穴賢 如 我 仏 法 ノ方 ノ物 卜 云 ハン 一文 モカ ク ナ ト 云 テ失. 天竺 二烏 龍 卜 云手 書 仏 法 ヲ背 ク者 ニテ多 ノ物 ヲ書 トイ ヘト モ仏法 ノ方 ニ ハ 一文 字 ヲモ不書 シ テヤ ミ ニケ リ其 子. お彰 本 の本 文 は 片 本 と 同 じ であ る。. 国 司﹂ ﹁卜 云 ケ リ﹂ が 欠 け て いると 意 味 が 通 じな い。 す な わ ち 、 平 仮 名 本 の本文 では意 味 が 通 じ な い。 な るか ら 、 ﹁. 基. 532(17).

(18) (18)531. 『十訓抄』 における片仮名本 と平仮名本の関係 について. 同 人播 磨 へ下 ケ ル ニ高 砂 ニシ テ各 歌 ヨム大 宮 先 生 義 定 卜 云 モ ノ ヽ歌 二我 ノミト 思 ヒ コシ カト タ カ サ コノオ ノ ヘ. 第三の四話︶ ノ松 モ マタ ヽテリ ケ リ人 々感 ア ヘリ良 遅 其 所 二有 テ妻 牛 二︵ ラ ラ易tじ→ζ7ツク ナト ソ云 ケ ル   ︵ 右 記 の傍 線 部 は 平 仮 名 本 で は次 のよう にな って いる。 腹 つかれ た る 日 から﹂ 京 。国 ・天 ・吉 o彰 ・異 ・静 1 ・内 ・武 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁. 腹 つか れ ぬ﹂ 腹 つか れ ぬ るか﹂   静 2⋮ ⋮ ﹁ 名 ⋮⋮ ﹁ 。 名本、静2本は除く。名本、静2本 の本文 の性格に ついては別稿 で解明した い ︶ の本 文 で は意 味 が 通 右 記 の平 仮 名 本 ︵ じ な い。. 鳥 羽院 御 代 相 撲 節 ノ後 帥 中 納 言 長 実 卿 ノ モロ 入 小 熊 権 守 伊 遠 卜 云 相 撲息 男 伊 成 ヲ具 テ参 タ リ サ ル ヘキ 方 へ召. 入 テ酒 ナ ト ス ヽメ ラ ル ヽ二弘 光 卜 云相 撲 又 来 ヌ同 召 加 盃酌 度 々 二及 間弘 光 酒 狂 ノ詞 ヲ出 スア マリ ニ亭 主 ノ卿 ニ. 向 テ申 近 代 ノ相 撲 ハ勢 ナ ト 大 二成 ヌレ ハ左 右 ナ ク本 手 ヲモ給 り其 ワキ ニモ マカ リ タ ツメリ昔 ハ雌 雄 ヲ決 シ テ芸. 能 ア ラ ハル ヽ二付 テ昇進 ヲ モ ツカ ウ マツリ シ カ ハ コソ傍 輩 ロ ヲ フサ キ世 ノ人 是 ヲ ユルシキ近 代 ハイ サ ミ ナ キ世. ニモ侍 カ ナ ト 申 伊 遠 少 シ 居 直 テ是 ハ偏 二伊 成 力事 ヲ申 候 也 不 肖 ノ身 今 度 既 二本 手 ノ腋 ヲ ユルサ レ ヌ誠 二申 サ. ル ヽ処 ノカ レ難 シ但 キ ト試 給 ヘカ シト申 二弘 光 ホ ヲ エミ テ只 道 理 ノ ヲス所 ヲ申 ハカ リ也 試 レ ン ハ又幸 也 ト テ左. 第一 一 あ 一一話 ︶ ︵. 手 ヲ出 テ手 ヲ コヒケ ル ヲ伊 成 ハ袖 カキ合 テ畏 テ猶 父 力気 色 ヲ伺 ケ ル ヲ父伊 遠 カ ヤ ウ ニ申 上 ハタ ヽ試 候 ヘト度 々 云ケレ ハ. 、 。 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮 名 本 で は ﹁惟 遠 ﹂ と あ る 伊 遠 と 伊 成 は 父 子 で あ り 弘 光 が 誹 謗 し た 相 手 は 伊 遠 で は な く. ︵第 四 の二話 ︶. 伊 成 ハ袖 カ キ 合 テ畏 テ猶 父 力 気 色 ヲ伺 ケ ル ヲ父 伊 遠 カ ヤ ウ エ申 上 ハタ ヽ試 候 へ﹂ と あ る こ と か 伊 成 で あ る こと は ﹁ 惟 遠 ﹂ で は 文 意 が 通 ら な い。 ら わ か る。 傍 線 部 が ﹁. 白 河院 二進 タ リ ケ レ ハ殊 二悦 ハセ給 テ御 宝 ノ中 二加 テ鳥 羽 ノ宝 蔵 二納 ラレ ニケ リ.

(19) 博 基 泉. 530(19). 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮 名 本 で は ﹁ く は ゝり て﹂ と あ る。 ﹁ 進 タ リ﹂ は栗 田讃 岐 守 兼 房 が絵 師 に書 か せ た 人丸 の絵. を 兼 房 が自 河 院 に差 し 上 げ たと いう こと であ る。 ﹁ く は ゝり て﹂ では意 味 が 通 じな い。 ﹁ 加・ ご を平 仮 名 本 の書 写 者 が 誤 読 し た も のであ ろう 。. 三条 内 大 臣 御 モト ニ客 人 マフテキ タ リ ケ ル ニ隣 一 天吉片 ﹁こ︶公 重 ノ少 将 ノヰ ラ レタ リ ケ ルカ コノ殿侍 卜物 ヲ. 云 アカ リ大 ツ フテ ウ チ ケ ル物 ハソヒ給 タ ル傍 ノ格 子 ヲイ ト オ ヒタ ヽシ ク打 タ リ ケ レ ハ客 人 ケシキ オ ホ ヱケ ル ニ. 卜し 申 ケ レ ハウ チ ヱミ 人 ヲ メシ テタ カ ウ ツ ソト問 セ給 ケ レ ハ隣 ノ少 将 ノ ハカ ナキ事 ヲト カ メ テ打 候 ﹁ 一翁口 片 ﹃. テ客 人 二内 へ入 セ給 ヘアヤ マチ モ ソ出 ク ルト テ我 モ引 入給 ケ リ又後 二打 タ リ ケ レ ハ賢 ク ソト ハカ リ ウ チ云 テ コ. レイ カ ニト ト カ メ モシ給 ハス物語 シ テオ ハセ シ上 臓 ハカ ク コソ有 ヘケ 一 天吉片 ﹃ レビ トイ ミシ ク有 カ タ カ リ シ. 人也 卜其 客 人 ノ給 ケ ル也 今 ノ世 ニ ハ不覚 ニオ ハスルト ヤ ソシ リ聞 ヘ マシ                      ︵ 第八2 一 話︶. 右 記 の傍 線 部 は 、 平 仮 名 本 ︵ 名本 ・静2本は片仮名本と同じである。名本、静2本 の本文 の性格に ついては別稿 で解明し. た い。︶ で は ﹁お ほえ す﹂ と あ る。 ﹁ お ほえ す﹂ で は意 味 が 通 じ な い。 これ は 平 仮 名 本 の書 写 者 が 片 仮 名 本 の ﹁不 覚﹂ を 訓 読 し た た め に意 味 が 通 じ なく な った も のであ る。. 以 上 の A、 B、 C、 D の用 例 を 見 て み ると 、 A、 B、 C、 D のう ち 特 に C、 Dに お いては片仮名 本 と 平 仮 名 本 と. の本 文 が対 立 し て いると 言え る。 また C、 Dか ら 片 仮 名 本 が平仮 名 本 か ら 出 てき た と は言え な い。 Aか ら 平 仮 名 本. は片 仮 名 本 か ら 出 てき た のでは な いと 言え な いこと も な いが、 A の用 例 は ﹃ 十 訓 抄﹄ の上巻 にあ るも ので、吉 片 本. で は欠 巻 のた め A の用 例 の傍線 部 の本 文 を 知 る こと が でき な いので、 Aか ら 平 仮 名 本 が片 仮名 本 か ら出 てき た ので. は な いと は言 え な い。 で は片 仮 名 本と 平 仮 名 本 と が 親 子 関 係 ︵﹃ 片仮名本←平仮名本し にあ る のか、 兄弟 関 係 にあ る のか を 見 て いき た いと 思う 。. 吾 朝 ニ ハ山 蔭 中 納 言筑 紫 へ下給 ケ ル道 二鵜 飼 ノ コロサ ント シ ケ ル亀 ヲカ ヒ テ ハナ チ テケ リ其后 若 君 ノ ニ ツ ハカ.

(20) (20)529. 『十訓抄』 における片仮名本 と平仮名本の関係 について. 若. 第 一の七話︶ リ ナ ル ヲ具 シ給 ヘル ヲ                                                                    ︵. 我 君﹂、異 本 o静 1本 ・静 2本 。内 本 我 君﹂、 天本 では ﹁ 右 記 の傍 線 部 は 、 京 本 ・国本 ・名 本 ・吉 本 ・彰 本 では ﹁. 若﹂ 我﹂ は ﹁ 我 君﹂ の ﹁ 我 君﹂ に ついては、 ﹁ 我 君﹂ で は文 意 が 通 ら な い。 ﹁ ・武 本 ・祐 本 で は ﹁わ か 君﹂ と あ る。 ﹁ 、 の誤 写 と は考 え ら れ にく いので、 京 本 ・国 本 ・天本 。名 本 ・吉 本 ・彰 本 の親 本 で は ﹁わ か君﹂ とあ ったも のを 京 我 君﹂ と 表 記 した も のと 思わ れ る。 片 仮 名 本 わ がき み﹂ と 読 み ﹁ 本 ・国 本 ・天本 o名 本 ・吉 本 ・彰 本 の書 写 者 が ﹁ わ か 君﹂ ← 若 君﹂ ← ﹁ わ か君﹂ と考 え る よ り は 、 ﹁ 我 君﹂ ← ﹁ が 平 仮 名 本 よ り 先 行 す る こと を 考 慮 に 入 れ る と 、 ﹁. 第 一の八話︶ ︵. ﹁ 我 君 と 考 え る のが妥 当 であ ろう 。 異 本 ・静 1本 ・静 2本 ・内 本 ・武 本 o祐 本 が京 本 。国 本 ・天本 ・名 本 o吉 本 ﹂ 、 次 のよう な も のがあ る。 o彰 本 か ら出 てき た も ので はな いこと を 示 す 用 例 に は. 前 世 ノ戒 力 少 ク テ 右 記 の傍 線 部 は平 仮 名 本 では次 のよう にな って いる。 戒 類﹂ 戒 行﹂   彰 ⋮ ⋮ ﹁ 戒 形﹂   名 ⋮ ⋮ ﹁ 京 ・国 ・天 ・吉 ⋮ ⋮ ﹁ 戒 か﹂ 異 ・静 1 ・静 2 o内 ・武 ・祐 ⋮ ⋮ ﹁. 戒 力﹂ の ﹁ 力﹂ を 誤読 した も のであ ろ 戒 か﹂ の ﹁か﹂ は片 本 の ﹁ 異 本 ・静 1本 ・静 2本 o内 本 o武 本 ・祐 本 の ﹁. 片 本 ← 異 本 ・静 1本 ・静 2本 o内 本 。武 本 ・祐 本 ← 京 本 ・ 我 君﹂ の関 係 は ﹁ 若 君﹂ ﹁わ か君﹂ ﹁ う 。 そ う す ると 、 ﹁. 、 本 本 京 o国本 ・天 本 ・名 本 ・吉 本 ・彰 本﹂ は考 え ら れ ← 片 国 本 ・天 本 ・名 本 ・吉 本 ・彰 本﹂ と いう こと に な り ﹁ 。 な いと いう こと にな る。 し か し 、 次 の用 例 か ら はど う であ ろう か. 第 一の八話︶ 城 モナ シ カ ヽリ モナ シ惣 テタ チ ア フ ヘキ方 モナ シ                                          ︵. 。 。 右 記 の傍 線 部 は 、 異 本 o静 1本 ・静 2本 o内 本 ・武 本 o祐 本 に はな し 他 の平 仮 名 本 は片 本 と 同 じ であ る. 第 一の九話︶ 一事 叶 へ奉 ラ ムラ フ レ ハ カ ツ シ ラ セ 給 タ ル ラ ム 小 神 通 ヲ得 タ レ ハ                            ︵.

(21) 。 右 記 の傍 線 部 は、 異 本 。静 1本 o静 2本 ・内 本 ・武本 ・祐 本 には な し。 他 の平 仮 名 本 は片 本 と 同 じ であ る. 義 家 朝 臣 陸奥 前 司 ノ比常 二堀 河右 府 ノ御 許 二参 テ囲碁 ヲウ チケ リイ ツモ小 雑 色 一人 ハカ リ ヲ相 共 タ リ ケ リ大 力. ヲ持 テ中 門 ノ内 ノカ ラヰ シキ ニ居 タ リ ケ リ或 日寝 殿 ニテ 囲 碁 ラ 打 間 追 入 レ ケ リ 犯 人 刀 ヲ ヌキ テ南 庭 ヲ走 り通 ル. ヲ前 司義 家 力候 ソ罷 留 レト云 ケ ル ヲ聞 入 ス猶 過 ケ レ ハソレカ シ候由 云 聞 セ ヨヤ レトイ フ其 時 雑色 八幡 殿 ノオ ハ. 第 一の四 二話︶ シ マス罷 留 レト 云 此事 ヲ聞 テ忽 二留 テ刀 ヲナ ク傷雑 色 是 ヲト ラ フ                          ︵. 右 記 の傍 線 部 は、 異 本 o静 1本 o静 2本 o内 本 ・武 本 ・祐 本 にはな し。 他 の平 仮 名 本 では傍 線 部 は次 のよう にな って いる。. あ る 日し ん殿 にし て こを う つ間犯 人 を 追 入 た り﹂ 天 ・名 ・彰 ⋮ ⋮ ﹁. あ る 日し ん殿 に し こをう つ間 犯 人を 追 入 たり﹂ 国 ⋮⋮ ﹁. て歎. あ る 日し ん殿 にし こをう つ間 犯 人 を 追 入 た り﹂ 京 ⋮⋮ ﹁ 博. ︲ ︲ ︲ ︲ ︲ ︲︲ 九条殿右大将 ニテオハシケル頃讃岐三位ノ聟 ニトリ奉テ列 ツ川 ヒ剤 工列 レ ノ二引 二利訓 ノ洲測利列引濶朝朝目劉. で、 異 本 ・静 1本 ・静 2本 o内 本 ・武 本 o祐 本 の本文 の欠 脱 であ る。. も 人 も 興 に入 てあ るし に か はら け さす と てを そ れ﹂ と あ る。右 記 の傍線 部 が な いと 説 話 と し て の文 意 が 通 ら な いの. け る程 に我 右 記 の傍線 部 は、 異 本 o静 1本 ・静 2本 ・内 本 ・武 本 。祐 本 にはな し。 他 の平 仮 名 本 では傍 線 部 は ﹁. ︵第 四 の三話 ︶. 主シ酒取テ飲セケルホトニ我モ人モ興 二入テ主シカリ﹁刻﹁利H列馴タルヨシ ヽテ瓶子取テアシク振舞 ヘルヤ. 太 刀﹂ であ る。 大 力 ﹂ は平 仮名 本 で は ﹁ お 片 本 の本 文 の ﹁. 。 右 記 の傍 線 部 が な いと 文 意 が 通 らな いので、 異 本 o静 1本 o静 2本 ・内 本 ・武 本 ・祐 本 の本 文 の欠脱 であ る な. あ る内 し ん殿 にし こを う つ間 犯 人 を 追 入 たり﹂ 吉 本 ⋮⋮ ﹁. 基. 528(21).

(22) (22)527. 『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係 について. 第四の八話︶ テ物 語 ノ次 二                                        ︵. 右 記 の傍 線 部 は、 異 本 o静 1本 o静 2本 ・内 本 ・武 本 ・祐 本 に はな し。他 の平 仮 名 本 は片 本 と 同 じ であ る。 右 記. の傍 線 部 が な いと 説 話 と し て の文 意 が 通 ら な いので、 異 本 ・静 1本 ・静 2本 o内 本 o武 本 ・祐 本 の本文 の欠 脱 であ Z O。. 以 上 の用 例 は、 片 本 と 京 本 o国本 ・天 本 o名 本 o吉 本 ・彰 本 と の本文 が同文 あ る いは同文 に近 いも のであ るが 、. 異本 ・静 1本 。静 2本 ・内 本 o武 本 ・祐 本 で は欠 文 であ るも のであ る。 これ ら の用 例 か ら ﹁ 片 本 ← 京 本 ・国本 ・天. わ か君﹂ ﹁ 本 o名 本 o吉 本 o彰 本﹂ が 考 え ら れ る。 そう す ると 、 ﹁ 若 君﹂ ﹁ 我 君﹂ の関 係 で ﹁ 片 本 ← 京 本 ・国本 ・天. 本 o名 本 o吉 本 ・彰 本﹂ は考 え ら れな いと いう こと と 矛盾 す る こと にな る。 こ の矛 盾 を 解 決 す るた め には、片 本 と. 京 本 ・国 本 ・天本 o名 本 ・吉 本 o彰 本 と の間 に 一伝 本 を介 さ な け れば な らな いと いう こと にな る。 では片 本 と 異 本. 片 本← 異 本 ・静 1本 o静 2 ・静 1本 ・静 2本 ・内 本 ・武 本 ・祐 本 と の関 係 はど う かと いう と 、 以 上 の用 例 か ら は ﹁. 本 ・内 本 o武 本 ・祐 本﹂ です べてを 解 す る こと が でき る が、 異 本 ・静 1本 o静 2本 ・内 本 ・武 本 o祐 本 の諸 本 の本. 文系 統 に つ いては、 片 本 と 異 本 ・静 1本 ・静 2本 o内 本 ・武 本 ・祐 本 と の間 に 一伝 本 を介 さな け れば な ら な いので あ る が 、 紙 幅 の都 合 で、 こ の事 に ついて は 別 稿 に譲 る こと にす る。. 五  片 本 と 吉 片 本 と は親 子 関 係 か 兄 弟 関 係 か 片 本 と 吉 片 本 と の本 文 異 同 か ら 両者 の関係 に ついて見 てみ よう と 思う 。 E  片 本 の本 文 が吉 片 本 で は欠文 であ るも の. 此 住 持 サ モ有 ナ ント 思 テ止 置 タ ルホ ト ニ初 後 夜 鐘 ナト マ コ ヽロ ニツキケ レ ハウ レシト思 フホ ト 二十 日計 過 テ.

(23) 第七の二六話︶ ︵. 止 置 タ ルホ ト ニ﹂ に ﹁ホ ト ニ﹂、 ョ心フホト 右 記 の傍 線 部 は、吉 片 本 で は欠 文 であり 、書 き 入 れ も な い。 これ は ﹁ ニ﹂ に ﹁ホ ト ニ﹂ と あ る ので、 吉 片本 の書 写 者 の目移 り によ る欠 脱 であ ろう と 思う 。 F  吉 片 本 の本 文 が片 本 で は欠 文 o欠字 であ るも の. 第七の六話︶ オ ト シ文 ハヨム所 ニト カ有 卜云事 ヨリ始 ルト カ ヤ                                          ︵ 事是 ヨリ﹂ と あ る。 片 本 の本 文 では文意 が 通 ら な い。 右 記 の傍 線 部 は、吉 片 本 で は ﹁. 隆 禅 律 師 按 察 大 納 言 隆 季 ノ法事 ノ導 師 ニテ坊 ニカ ヘリ タ ル夜 部 尼 一人来 テ大 和 国 ノ人 ヲ尋 ヌルカ 日暮 タ リ又食. 第七2 五 話︶ 二夜 フケ テ判 官 殿 卜 云 者 来 テ又門 ヲ叩 ク                                                ︵. 庁 使 也 卜 云其 尼 オ ホ ク盗 犯 ノ沙汰 ニカ ヽリ タ ルナ リ ユルシ出 スナト云 テ帰 リ ヌ是 ニヨリ テ彼 尼 ヲシ ハリ テ相 程. 物 モナ シ今 夜 是 二候 ハン食 物 アテタ ヒ候 ヘト 云 ケ レ ハ食 物 ヲ アタ ヘテヤ ト シ テケ リ夜 二入 テ門 ヲ叩 ク者 アリ使 博. 原﹂ と あ り 、 平 仮 名 本 は片 本 と 同 じ であ る。吉 片 本 の誤 写 であ ろう 。 右 記 の傍 線 部 は 、吉 片 本 で は ﹁. 第六の 一 〇話︶ 残 ワ ツカ 二六騎 長 男義 家 修理少進 藤 原 景 道 清 原貞 廉 藤 原季 範 大宅 光 任 藤 原 則 明 等 也         ︵ 所レ. G  片 本 と 吉 片 本 と に本 文 異 同 のあ るも の. テ侍 リ ツル ヲ帰 リ ケ ニ候 ツ﹂ と 書 き 入 れ があ る。 リ モト ク ﹁ 一. 鶯 ノ マツ ハサキ /ヽ ョ の ﹁問 ヘ ハル間﹂ では意 味 が 通 じな い。片 本 の本 文 の欠 脱 であ る。 な お、片 本 に は朱 書 で ﹁. 。 右 記 の傍 線 部 は 、吉 片 本 で は ﹁ハ鶯 ノヤ ツ ハサ キ /ヽ ョリ モト ク参 テ侍 リ ツル ヲ帰 リ ケ ニ候 ツル﹂ と あ る 片 本. 第七の 一 モ 話︶ 鶯 ノ マタ ミ エヌ ハ今 朝 ハイ マタ コサ リ ツルカ ト問 ヘハル間 メシト ヽメ テト 云                 ︵. あ る。. 待﹂ の欠 脱 で 相待 程﹂ と あ る。 片 本 の本 文 では文 意 が 通 ら な い。 片 本 にお け る ﹁ 右 記 の傍 線 部 は 、吉 片 本 で は ﹁. 基. 526(23).

(24) (24)525. 『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係 について. 文 字 ヲ洗 捨 タ ル水 迷 大 河 卜 成 テ 右 記 の傍 線 部 は、吉 片 本 で は ﹁黒﹂ と あ る。 愁 嘆 ノ気 色 アリ時 二妻 赤 染 右 衛 門何 ソト タ ツ ヌル ニ 右 記 の傍 線 部 は 、吉 片 本 で は ﹁ 案﹂ と あ る 。 尤 腹 迷 事 欺 五品後 悔 シ ケ リ 右 記 の傍 線 部 は、吉 片 本 で は ﹁ 黒﹂ と あ る。 和 歌 作 成 ノ由 歎 ケ ル ニ 右 記 の傍 線 部 は 、吉 片 本 で は ﹁ 難﹂ と あ る。. ︵第 六 の三〇話 ︶. ︵第 七 の九 話 ︶. 第 七 の 一七話 ︶ ︵. ︵第 七 の二〇話 ︶. 大 隅 守 大 江 仲 宣 子 以 言 ヲ試 ラ レケ ル時                                                   ︵ 第七2 〓一 話︶. 右 記 の傍 線 部 は、 吉 片 本 で は ﹁ 斉 名 大 隅 守 大 江 仲 宣 子 以 言﹂ と あ る。 ﹃ 続群書類従第十六輯下︶に 清 輔袋 草 紙 二﹄ ︵. は ﹁ 以 言 典 斉 名 被 試 之 日所 作 也 ﹂ とあ り 、 ﹃ 江 談 抄 四﹄ ︵ 新校群書類従第廿 一巻︶には ﹁以 言 典 斉 名 被 相 試 日承作 也﹂. と あ る こと か ら 、 ﹁ 斉 名﹂ が 本 文 にな いと意 味 が 通 じ な い。 ﹁ 大 隅 守 大 江仲宣 子﹂ は傍 注 であ った も のが本 文 に混 入. し た も の であ ろう 。 な お 、 片 本 に は ﹁ 大 隅守 大 江 仲 宣 子﹂ を 見 消 に し傍 に ﹁ 大 隅守 斉名 ﹂、 ﹁ 以 言﹂ の傍 注 と し て ﹁ 大 江 仲 宣 子﹂ と 後 人 の書 き 入 れ が あ る。. 第七2 一 御 前 モ侍 モ舞 カ ナ テ ヽソ出 ニケ ル                                                        ︵ 七話︶. 右 記 の傍 線 部 は、吉 片 本 で は ﹁カ ナ ヽワ﹂ と あ る。 吉 片 本 の本 文 で は意味 が通 じ な い。吉 片 本 の誤 写 であ ろう 。. 以 上 の E、 F、 G の用 例 か ら 考 え て、 片 本 か ら吉 片 本 が成 立 し た と も 、吉 片本 か ら 片 本 が成 立 し た と も考え ら れ. な い。片 本 と 吉 片 本 と に親 子 関 係 が 認 め ら れ な いと いう こと は 、 片 本 と 吉片 本と に は親 本 があ ると いう こと にな る。 四項 、 五項 を 整 理 し 図式 化 す ると 次 のよう にな る。.

(25) 片本 吉片本 ︲︲. □. ︺ ← 平仮名 本 ← 一  . ︵片 本 ・吉 片 本 の親 本 ︶. ・ 説話番 号対 照表. 詳     解 説 話番 号 一. 説 話 ※. 説話番 号. 二. 第 一    一. 三. 五. 四. 六 ※  七. 九. ※  八. 一〇  一 ※ 一. 二 三. │ │. 番 一 一 二. ※ 一 一一. 一四. 九 八 七 六 五 四 三 二 一 〇 九 八 七 六 五 号 三. 四 三 二. 一 〇 九 八 七 六 五. 一 一 一 二 三 二 三 二 三. ※ ※. │. 一一 二. 口. ※ ※ ※. │. 博 基. 524(25). 解. 説 話番 号. 一五. 一四. 一七. 一エ ハ. 一八. 一九. 二〇. 一一一.

(26) 詳   解. 一 二 一一. 一一 一一. 五三. 五二. 説 話番 号. 三〇. 五四. 説話番 号. 一 一 一一 二四. 五五. 説 話番 号. 一 一 一 一一 二五. 二人. 二七. 一一 二 ハ. 六〇. ※ 五九. ※五 八. ※五七. 三四. 一 一 一 一 二. 一 一 一 一一. 六五. 六四. 二 二 ハ一. エ ハ一一. 上 ハ一. 一 二五. 第 二    一. ※上 ハ六 三七. 二 一 一 一 ハ. 一 一 一一. 三〇. ※ 二九. 五六. 一 一 一 一 二 一 二四 一 二五 エ 一 一 一 ハ 三七 ※三 八. 四〇. 三九. 四 一 四二 四三 四四 四五. 三八. 四〇. 三九. 四 一. 六 五 四 三 二. 四六 四七 四八 四九 五〇 五 一. 言 羊. 四二. 説話番 号. 四 〓一. 四四. 四五. 四六. ※ 四七. ※四八. 五〇. ※ 四九. 五 〓一.   南 一 口 一. 五四. 五五. 五六. 一. ※ 五七. 四 三 二. 五. □ □. (26)523. 『十訓抄』における片仮名本と平仮名本の関係について. □.

(27) 説話番 号. 二. 第三    一. 三. 一〇. 九. 説話番 号. 説話番 号. 解. 説話 番 号. 詳    解. 一一. 一一一. 一〇. 一一 二. 一一. 一一 二. 一四. 一一一. 一四. ︵前 半 ︶. 一二 ハ. 一五. 一七. ︵後 半 ︶. 一二 ハ. 一五. 一 六 五 四 三 二 九 八 七. 四 五. 置   一□ 博. ヽ. 基. 522(27).

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