中間利息控除とは
意義
根拠
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
(民法404)
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率に
よって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
損害賠償額の算定に当たり、将来の逸失利益を現在価値に
換算するために、損害賠償額の基準時から将来利益を得られ
たであろう時までの利息相当額(中間利息)を控除
民法には、中間利息控除に関する規定は置かれていない。
中間利息控除とは
損害賠償額の算出
係数
(ライプニッツ係数の例)
現在一括して損害賠償金を支払う場合の債務額 =
1年あたりの将来利益の額 × 残存年数に応じた係数
「1年」→
0.952、 「10年」→7.722、 「30年」→15.372
(n年後までの損害を、年利r%で割り引いたうえで、現在賠償する場合)
1年後の将来利益の額 × 「100÷(100+r)」
+ 2年後の将来利益の額 × 「100÷(100+r) 」
+ ・・・
2
明文化せず不法行為法の検討に委ねるべきとの意見
変動制にすべきとの意見
中間試案に対する反対意見
変動制の法定利率を適用す
る方向で検討すべき
中間利息控除の割合に法定利率を用いるという
結論については判例法理で確立
このような規定を設けないと
いう考え方に賛成
現在と同じように判例にゆだね、できるだけ速や
かに人身損害の損害額計算方法について合理
的な立法をすることが望ましい。
a
b
法定利率より低い割合とすべきでないとの意見
中間試案に対する反対意見
中間利息控除の規定を設けない
のが妥当
法定利率と中間利息との間での逆転現象
が生じるくらいであれば、むしろ中間利息控
除の規定を置かないのが、混乱回避の見地
から見て妥当
このような高い割合を用いることは
明らかな誤り
平仄を欠いた提案(それどころか、本来...
中間利息控除の割合こそ低くなければなら
ない)
法定利率を変動制や3%として、 変動制を導入することにともない、中間利息
c
d
現在より低い割合に改めるべきとの意見
中間試案に対する反対意見
法定利率が3%に改正されること
を前提に中間利息控除の割合も
3%とすべき
年5%で資産を運用することは困難である
現状に鑑み、中間利息控除の割合も法定
利率と同様に引き下げることが適切
固定制の利率を用いる点には賛
成するが...少なくとも、その割合
は5パーセントよりも低いものでな
ければならない。
市場金利の実勢から乖離している年5パー
セントの割合にて中間利息を控除すること
は、将来にわたる分割払を現在価額に換算
するという本来の論理に照らして妥当性に
問題
法定利率...が中間利息控除の
問題には影響しないことを明確に
すべく、中間利息控除の取扱いの
割合については、法定利率に係る規定改定
時の当初利率(上記では年3%)と同じもの
f
g
h
中間試案の検討
(1)5%を明文化
1
プラスの
影響
マイナスの
影響 備 考
被害者の保護 △ 解消せず
5
6
7
2
3
純保険料への影響
- - 影響なし
4
実勢金利の水準とのかい離 △ 解消せず
遅延利息の割合とのかい離 △ 解消せず
虚構性 △ 解消せず
被害者相互間の公平性 △ 影響なし
実質金利と名目金利 △ 解消せず
中間試案の検討
(2)変動制に移行
1
プラスの
影響
マイナスの
影響 備 考
被害者の保護 当初は○ 以後変動
5
6
7
2
3
純保険料への影響
当初は○ 以後は上下
付加保険料への影響
○ つど発生
4
8
実勢金利の水準とのかい離 ○ 緩和
遅延利息の割合とのかい離 当初は○ 一部解消
虚構性 ○ 一部解消
被害者相互間の公平性 ○ 相対化
実質金利と名目金利 当初は○ 緩和
中間試案の検討
(3)明文化見送り
1
プラスの
影響
マイナスの
影響 備 考
被害者の保護 予測不能
5
6
7
2
3
純保険料への影響
予測不能
4
実勢金利の水準とのかい離 予測不能
遅延利息の割合とのかい離 予測不能
虚構性 解消せず
被害者相互間の公平性 ○ 相対化
実質金利と名目金利 予測不能
変動化の影響
(1)被害者の保護
1 被害者の保護 当初は○ 以後変動
プラス マイナス 備 考
変動制の法定利率が5%を上回らない限り、
損害賠償額はこれまでと比べ増加
中間利息控除割合 モデルケース 損害認定額
(上段:葬儀費・精神的損害/下段:逸失利益) 5%(現行)との比較
5%(現行)
20,600,000円
-
55,597,219円
3%とした場合
○27歳男性(全年齢平均賃
金:月額415,400円/就労
可能年数40年)
○一家の支柱・被扶養者2 20,600,000円 +25.3%
変動化の影響
(2)実勢金利とのかい離
2 実勢金利の水準とのかい離 ○ 緩和
プラス マイナス 備 考
実勢金利とのかい離が縮小するほど、賠償
を受けた被害者の不利益も緩和
将来の
必要額 賠償額
損害賠償額の計算
5%で
割引計算
運用後
賠償金
損害賠償金の運用
5%で
運用可?
被害者の
不利益
=
変動化の影響
(3)遅延利息とのかい離
3
プラス マイナス 備 考
遅延利息の割合とのかい離 当初は○ 一部解消
遅延損害金よりも高い割合を用いることは
被害者にとって酷
損害賠償額の計算
将来の
必要額 賠償すべき額
(元本)
中間利息を5%で
被害者の
不利益
遅延損害金の計算
賠償すべき額
(支払時)
遅延損害金を3%で
変動化の影響
(3)遅延利息とのかい離
3
プラス マイナス 備 考
遅延利息の割合とのかい離 当初は○ 一部解消
法定利率適用の基準時
債権存続中に法定利率が変動した場合
債権の存続中に法定利率の改定があった場合に、改定が
あった時以降の当該債権に適用される利率は、改定後の法定
金銭の給付を内容とする債務の不履行については、その損害
賠償の額は、当該債務につき債務者が遅滞の責任を負った
最初の時点の法定利率によるものとする。
変動制のもと、利率が変動し得る
変動化の影響
(3)遅延利息とのかい離
3
プラス マイナス 備 考
遅延利息の割合とのかい離 当初は○ 一部解消
損害賠償額の計算
将来の
必要額 賠償すべき額
(元本)
全期間について
損害発生時(T1)の
被害者の
不利益
遅延損害金の計算
賠償すべき額
(Y1末)
T1を含む期間(Y1)
の遅延損害金を
賠償すべき額
(支払時)
Y1以後支払時までの遅延損害金を
変動化の影響
(5)被害者相互間の公平性
5 被害者相互間の公平性 ○ 相対化
プラス マイナス 備 考
変動後の利率が変動前を下回った場合は、
損害賠償額は変動前と比べ増加。
(反対に、変動の結果、損害賠償額が減少することもあり得る。)
中間利息控除割合 モデルケース 損害認定額
(上段:葬儀費・精神的損害/下段:逸失利益) 5%(現行)との比較
5%(現行)
20,600,000円
-
55,597,219円
○27歳男性(全年齢平均賃
金:月額415,400円/就労
可能年数40年)
20,600,000円
変動化の影響
「3%」固定制との対比
1
変動制
(当初3%)
固定制
(3%) 優 劣
被害者の保護 将来も変動 将来固定 判定不能
5
6
7
2
3
純保険料への影響
将来上下 なし 判定不能
4
実勢金利の水準とのかい離 将来も変動 固定 変動制が○
遅延利息の割合とのかい離 解消せず 解消せず -
虚構性 解消せず 解消せず 判定困難
被害者相互間の公平性 利率差あり 利率は一律 固定制が○
実質金利と名目金利 解消せず 解消せず -