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(1)

はじめに  冠状動脈瘤は比較的稀な疾患で,一般的に自覚症 状は乏しく冠動脈造影検査(coronary angiography; CAG)時に偶然発見されることが多く,CAG施行例の 0.3〜4.9%(平均2.6%)にみられる1).多くは冠状動脈 狭窄を伴い,また,高率に心筋梗塞を発症し自然予 後はよくないといわれている2).一般的に動脈硬化の 1 型と考えられているが,炎症,外傷などが原因と なることもある.治療方針については,抗凝固療法・ 冠動脈バイパス術単独・冠動脈バイパス+瘤の血行 遮断,ステントグラフト留置やコイル塞栓,ステント 留置などがあり,一定の見解を得られていない.今 回,血管内超音波(intravascular ultrasound;IVUS) が不通過な狭窄病変で冠動脈瘤が併存した病変に前 拡張を行い,内膜に慎重に損傷を加えた後,瘤前後 の狭窄部位をまたぐ形でBMSを留置したところ,良 好な拡張と,IVUSにて瘤の血栓性と考えられる消退 石川県立中央病院 《Abstract》──────────────────────────────────────  症例は,83歳,男性.2011年12月にアテローム性脳梗塞で入院し,入院中の冠動脈CTで冠動脈疾患を指摘され た.冠動脈造影にて三枝病変に加え,前下行枝に冠動脈瘤を認めた.後日,経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention;PCI)を施行し,左前下行枝に計 3 本のステントを留置し,TIMI3にて終了,

aneurysmもほぼ消失した.

 Aneurysmの部位をあらかじめ前拡張しベアメタルステント(bare metal stent;BMS)をオーバーラップさせたことで 瘤のエントリーを閉鎖させ,血栓性閉塞と瘤の縮小がIVUSで観察されたので報告する.

───────────────────────────────────────────

● 冠動脈造影 ● 冠状動脈瘤

 (coronary artery aneurysm) ● ベアメタルステント

Key words

Haruyuki Kinoshita, Takao Matsubara, Toshihiko Yasuda, Kenji Miwa, Masaru Inoue, Ryota Teramoto, Hirohumi Okada, Youhei Yakuta, Honin Kanaya

Ishikawa Prefectural Central Hospital

(2012 . 5 . 21 原稿受領;2012 . 10 . 1 採用)

(2)

れた.

 冠動脈CT上,seg.6に瘤状変化は認められたが,左 右の冠動脈ともに高度石灰化病変にて評価は困難で あった.そこでCAGを施行したところ,三枝病変と 前下行枝に冠動脈瘤を認めた(図 1A).右冠動脈(right coronary artery;RCA)と左冠動脈回旋枝(left cir-cumflex artery;LCX)病変は比較的灌流域が小さ かったが,左冠動脈前下行枝(left axis deviation; LAD)の灌流域は大きかったため,アスピリン100mg, クロピドグレル75mgの内服が開始され経皮的冠動脈 インターベンション(percutaneous coronary inter-vention;PCI)目的で循環器内科へ転科となる.  治療経過  まず未分化ヘパリン10,000単位静注後CAGを行っ た.  CAGではseg.6に冠動脈瘤とその前後に75〜90%の を確認できたため,治療法の 1 つとなり得ると考え られたので報告する. 症例  患者:83歳,男性.  主訴:自覚症状なし.  既往:60歳代に前立腺肥大症,81歳時前立腺癌, 椎骨脳底動脈循環不全,83歳アテローム性脳梗塞, 右上肢不全麻痺出現.  冠危険因子:脂質異常症,高血圧.  現病歴:これまで,冠動脈造影歴なし.2011年12 月初旬,右上下肢不全麻痺を出現し,脳梗塞の加療 目的で加療となる.同入院中に頸動脈エコー,頸動脈 CTを施行され,両側内頸動脈狭窄(左99%,右75%) 認められ,冠動脈疾患の合併も疑われ循環器内科コ ンサルト.スクリーニング目的で冠動脈CTが施行さ 図 1  A:コントロール;白矢印 冠動脈瘤 B:前拡張しseg. 7にDES留置(両矢印) C:Seg.6;遠位にBMS留置(破線矢印), 瘤の輪郭が一部不明瞭化している. D:Seg.6;近位にBMS留置(破線),瘤 はさらに消退し造影効果も低下して いる. A C B D

(3)

① Seg. 8の対角枝分岐部では, 8 時方向でseg. 9を認める. ② 9 時方向にはseg. 9および分岐 枝へのワイヤーを認め, 6 時方 向に瘤の交通部を認める. ③ 2 時方向から 4 時方向に解離を 疑う所見を認める. ④ 前拡張によって,entryと考えら れる像が 1 時方向にみられる. ⑤ 冠動脈瘤の近位側ではIVUS上, 狭窄が認められた. ① ② ③ ④ ⑤ ④ 図 3  瘤内で(A)ステントは遠位 端側径(B)以上には拡張せ ず,瘤側へ突出することも なかった. ステント留置直後はステン トと瘤の間にスペースが生 じた.(A点線) A A B B

(4)

圧,20秒)を留置した(図 1 C).続けて冠動脈瘤前後 をカバーするようにIntegrityステント(薬剤溶出性ス テント:Medtronic,Minneapolis,MN,USA) 3.0 mm×18mm(10気圧,20秒)を植え込んだ(図 1 C). IVUSにて冠動脈瘤の近位側にも狭窄病変が認められ ており(図 2 A),seg. 6の近位側に対して左冠動脈主 幹部(left main coronary trunk;LMT)にステントが 出ないようにIntegrityステント3.0mm×9 mm(12気 圧,25秒)を植え込み(図 1D),TIMI3でPCIを終了し た.PCI終了時,IVUSでステント外の瘤内で血流速 狭窄を認めた(図 1A).PCIはまずLADの評価のため

IVUS(Eagle Eye® Platinum Catheter VOLCANO) を試みたが,冠動脈瘤の直前でIVUSが不通過だった ため,NC Trek PTCAバルーン(Abbott Vascular) 2.25×15mmにて前拡張( 6 気圧,25秒)を行うことで IVUSが通過することができた.瘤径はおおよそ5.5 mm× 6 mmであることが確認できたが(図 2 C),瘤 よりも遠位側(LADの中間部)にも狭窄病変が確認でき たため(図 2 A),同部位にXience-Vステント(Abbott Vascular,薬剤溶出性ステント)2.5mm×15mm( 8 気 図 4  A:前拡張直後;前拡張を行い,本管の内膜に損傷は加わったが,まだ瘤内でのIVUSの輝度の上昇なく,交通は保たれている. B:図 1 C時点,瘤遠位側に 1 本目のステント留置;一部輝度の高い血栓像も認められ(矢印),Aに比較して瘤内の輝度が全体的 に上がっている C:図 1 D時点,瘤近位側に 2 本目のステント留置;IVUS上,もやもや像のエリアが拡大,輝度もBに比較して上昇してエント リーの閉鎖による血栓性閉鎖を認める. A B C

(5)

ると,今後はさらに増えてくると考えられる.その ような症例の場合は本法のような方法も一考する価 値があると思われる.

文 献

1)Gonzalez-Santos JM, Vallejo JL, Pineda T, Zuazo JA : Emergency surgery after coronary disruption compli-cating PTCA. Report of four cases. Thorac Cardiovasc

Surg 1985 ; 33 : 244-247

2)Rath S, Har-Zahav Y, Battler A, et al : Fate of nonob-structive aneurysmatic coronary artery disease : angio-graphic and clinical follow-up report. Am Heart J 1985 ;

109 : 785-791

3)内山隆史,並木紀世,小林 裕,ほか:PTCA後に形成 された冠動脈瘤に対しvein-covered stent植込み術を施行 した 1 例.Jpn J Intervent Cardiol 1998 ; 13 : 444-450 4)Wong SC, Kent KM, Mintz GS, et al : Percutaneous

trans-catheter repair of a coronary aneurysm using a compos-ite autologous cephalic vein-coated Palmaz-Schatz biliary stent. Am J Cardiol 1995 ; 76 : 990-991

5)Kaplan BM, Stewart RE, Sakwa MP, O’Neill WW : Re-pair of a coronary pseudoaneurysm with percutaneous placement of a saphenous vein allograft attached to a biliary stent. Cathet Cardiovasc Diagn 1996 ; 37 : 208-212 6)松岡 宏,川上秀生,小山靖史,ほか:通常のステント 2 枚重ね植え込みにより消失した冠動脈瘤の 2 例.Jpn J

Intervent Cardiol 2003 ; 18 : 186-192

7)伊藤一貴,東 秋弘,朝山 純,ほか:コイル塞栓術が 有用であった冠動脈瘤の 1 例.呼と循 2006;54:893-897 8)Aoki J, Kirtane A, Leon MB, Dangas G : Coronary ar-tery aneurysms after drug-eluting stent implantation.

JACC Cardiovasc Interv 2008 ; 1 : 14-21

考えであるが,一方で瘤からの血栓流出も危惧され る.また,コイル塞栓術は血管閉塞に伴う心筋障害 や不整脈などを生じる可能性もあり,側枝末梢の孤 立性冠動脈瘤では有用な報告もあるが7),本症例のよ うにLAD本幹に生じた 冠動脈瘤には不向きな治療 法である.  今回われわれが経験した症例は過去に冠動脈造影 検査などの既往がなく,また前下降枝近位側に高度 狭窄病変がありIVUSが不通過であったため,前拡張 以降のIVUS所見しか確認できないことからも,真性 動脈瘤であるか仮性動脈瘤であるかは判断できない 症例である.一方,IVUSではバルーンによる前拡張 によって瘤周囲の血管内膜の断裂が観察され,さら に従来型ステントを一部オーバーラップさせること によって瘤内の血栓化の様子が確認できた.最終的 にはアンジオ上,冠動脈瘤が消退傾向となったこと を逆説的に裏付けできたことでもIVUSは有用であっ た症例と考えられる.  仮に冠動脈瘤が真性冠動脈瘤であった場合は血管 径の 2 倍以上の大きさで,かつ症状のあるものがス テントグラフト留置やコイル塞栓,BMS留置,外科 的手術などの侵襲的治療の適応となり,仮性動脈瘤 であった場合は血管径の 2 倍以上のもの,あるいは 症状があるものが侵襲的加療の適応であり,それ以 外のものは冠動脈CTやCAGで経過観察していくこと

参照

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