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学位論文の内容の要旨
論 文 提 出 者 氏 名 加嶋 祐佳
論 文 審 査 担 当 者 主査 宇尾 基弘
副査 高久田 和夫、吉田 惠一
論 文 題 目 Evaluation of the shear bond strength of dental porcelain and the low magnetic susceptibility Zr-14Nb alloy. (論文内容の要旨) [緒言] 近年、CAD/CAM の普及や金やパラジウムの価格の高騰から、従来の金合金に代わって非貴金属合 金である Ti 合金や Co-Cr 合金がインプラントの上部構造やロングスパンのブリッジに多く用いら れるようになってきている。しかし、これらの金属は高い磁化率を有していることから、MRI 撮 像時にアーチファクトと呼ばれる画像の歪みや欠損を引き起こし、診断に影響が出ることが指摘 されている。そこで、加嶋は磁化率が Ti 合金の約 1/3、Co-Cr 合金の約 1/7 である Zr-Nb 合金に 着目した。 Zr-Nb 合金は整形外科領域で新たなインプラント材料として注目を集めている次世代型合金 で、高い生体親和性や機械的性質を示すことから、歯科領域においても大型のフレームワーク等 に有用であると思われる。歯科ではインプラントやブリッジのフレームワークに金属を用いる際、 審美性の観点から金属のフレームワークに歯冠色のレジンや陶材を前装した構造をとるが、優れ た耐摩耗性や審美性を有する陶材が多く用いられている。その際に陶材と金属の結合強度が臨床 上非常に重要となってくるが、本合金の陶材焼付強度は未だ明らかになっていない。金属と陶材 との焼付強度には陶材築盛時に金属表層に形成される酸化膜が密接に関連していると言われてい る。金合金では陶材築盛前にディギャッシングと呼ばれる熱処理を予め行い、金属表層に酸化膜 を形成することで陶材と化学的に結合し、強固な陶材焼付強度を有することが報告されている。 一方で Ti や Ti 合金は非常に酸化しやすく表層に脆性の厚い酸化膜を形成することから、逆に 酸化を抑えることが重要とされてきた。Zr-14Nb 合金も Ti と同族で、酸化しやすい性質を持つこ とが報告されているが、陶材焼成時及びディギャッシング時に形成される酸化膜が陶材との焼付 強度にどのような影響を与えるのかは、明らかになっていない。そこで本研究では Zr-14Nb 合金 の陶材焼付冠への応用を目指し、異なる熱処理条件の下、陶材焼付強度の評価を行った。 [方法]
Zr-14Nb 合金の円柱状試料(直径 8 m、高さ 8 mm)を遠心鋳造(MSE-50TMD-Z, Yoshida cast) で製作した(n= 60)。続いて陶材焼付面にサンドブラスト処理後、4 条件の熱処理(Z0:熱処理な し・コントロール、Z5:700 ℃ 5 分、Z10:700 ℃ 10 分、Z20:700 ℃ 20 分)を施した(各グ ループで n= 15)。それぞれの条件の試料より無作為に 1 つの試料を選択し、前処置面を、走査
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型電子顕微鏡(SEM)、レーザー顕微鏡、及びエックス線回折装置(XRD)を用いて組織観察・結 晶構造解析を行った。続いて各グループから 5 つの試料を無作為に選択し、表面粗さの測定後ス クラッチ試験を行い、酸化膜の接着強度の評価を行った。さらにスクラッチ試験後のスクラッチ 痕を SEM 及びデジタル顕微鏡で観察を行った。残りの試料は高さ 8 mm となるように陶材(Opaque: Initial Ti, Dentine:Initial AL, GC)の築盛を行った。陶材築盛後各条件より無作為に 1 つの 試料を選択し、レジン包埋し中央部で切断・研磨し、陶材金属の界面を SEM 及びエネルギー分散 型 X 線分析(EDS)を用い組織観察・元素分析を行った(各条件で n= 1)。残りの試料は万能試 験機(AG-2000B、島津)にてクロスヘッドスピード 1.0mm/min の条件下でせん断試験を行った(各 条件で n= 8)。比較のため Ti(Ti-アロイ H、GC)もメーカーの指示通りに陶材焼成後(Initial Ti,、GC)せん断試験を行った(n= 8)。 [結果] 熱処理後の Zr-14Nb 合金試料表層には白色の酸化膜が観察された。この酸化膜は XRD の結果か ら主に単斜系のジルコニアで構成されていることが分かった。酸化膜の SEM 像から、熱処理を施 した試料はブラスト処理のみの試料(Z0)より微細な凹凸構造を有している様子が観察され、表 面粗さの測定結果は Z5>Z10>Z20>Z0 の順であった。また SEM 像及びレーザー顕微鏡による 3D 像から、Z20 の試料では Z5 の試料より厚い酸化膜が観察され、スクラッチ試験の結果からより脆 い性質を持つことが明らかとなった。陶材金属界面の SEM 像からは、微細な金属酸化膜の凹凸面 に陶材が密に勘合している様子が観察された。せん断接着強度は Z5 で最大となり、Z5 と Z10 の 条件で Ti を有意に上回った(p < 0.05)。また Z5、Z10 は、有意差は認められなかったものコン トロール(Z0)より高いせん断接着強度を示した。破断面はいずれの試料も Zr-14Nb 合金と陶材が 混在する混合破壊であった。EDS 分析結果からは Zr、Nb の陶材側への拡散が観察され、特に Nb の拡散は Z5、Z10 の試料で顕著であった。一方陶材成分である Na、Al、K、Sn、Si は金属側への 顕著な拡散は認められなかった。 [考察] Zr-14Nb 合金は 5、10 分の熱処理により Ti より有意に高い陶材焼付強度を示した。陶材焼付強 度が向上した要因として、5、10 分の熱処理により高い表面粗さの粗造な酸化膜が得られ、機械 的結合力が向上したのではないかと考えられる。また、5、10 分の熱処理を施すと金属成分であ る Nb が陶材側深部に浸透する様子が観察され、これが化学的結合に貢献している可能性が示唆さ れた。一方熱処理時間が 20 分に及ぶと、酸化膜が厚く脆くなり、金属面から剥離しやすくなった ことが原因で、陶材焼付強度の低下が認められた。つまり陶材焼付強度は表層に形成された酸化 膜の厚さや性状により影響を受け、適切な条件下では陶材焼付強度の向上が見込めると思われた。 Zr-Nb 合金の酸化は放物線状の時間依存性を持つ(parabolic rate law)ことが提唱されており、 酸化初期に急激な酸化膜の生成が行われ、膜厚の増加速度は徐々に低下すると考えられる。その ため酸化時間が 5 分程の初期の影響が強く、5 分以内に最適な熱処理条件が存在する可能性も考 えられるため、今後さらに適切な熱処理条件を検討していく必要があると考えられた。
また、陶材と金属の熱膨張係数の差は陶材焼付において非常に重要な要素とされており、一般 的に金属の熱膨張係数がわずかに(CTE value が 1×10-6以内)陶材より高い場合に、陶材側に圧
- 3 - 縮応力がかかり焼付強度が向上するとされる。現在、市販されている歯科用合金には各々に適し た熱膨張係数を有する陶材が市販されているが、Zr-14Nb 合金はこれまでの歯科用合金と比べ熱 膨張係数が低いため、市販の金属用陶材では熱膨張係数の不適合から陶材/金属間に残留応力が 集中し、焼付強度の低下を招いた可能性が示唆された。今後、Zr-14Nb 合金の熱膨張係数に適し た陶材を開発することで、本合金の陶材への焼付強度はまだ改善の余地があると考えられた。 [結論] Zr-14Nb 合金は適切な加熱酸化処理を施すことにより、市販陶材と機械的・化学的に結合し Ti と比較して優れた陶材焼付強度を示すことが明らかとなった。この原因として、酸化処理を施し た群では Nb が陶材側深部に浸透し陶材との化学的結合に寄与する可能性や、酸化膜表層の凹凸に よる機械的勘合力の増加の影響が示唆された。以上より本合金は、インプラントの上部構造の基 材として有望であることが示唆された。
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論文審査の要旨および担当者
報 告 番 号 甲 第 4975 号 加嶋 祐佳
論文審査担当者 主 査 宇尾 基弘
副 査 高久田 和夫、吉田 惠一
論 文 題 目 Evaluation of the shear bond strength of dental porcelain and the low magnetic susceptibility Zr-14Nb alloy.
(論文審査の要旨) 金属と陶材から構成される陶材焼付冠は優れた機械的強度を有することから、高い強度が求め られる大型のインプラント上部構造やブリッジに多く用いられているが、近年の金の価格の高騰 から、従来陶材焼付用合金として金合金の代わりに非貴金属である Ti 合金や Co-Cr 合金が多く使 用されている。しかし、それらの非貴金属は高い磁化率を有しているため、MRI 撮像時に金属周 囲にアーチファクトが生じ診断の障害になることが指摘されている。そのため磁化率の低い新た な陶材焼付冠用合金を開発することは臨床上極めて重要であるといえる。 加嶋は磁化率が Ti 合金やコバルトクロム合金と比較して低い Zr-14Nb 合金に着目し、先に参考 論文において本合金の機械的性質、鋳造性を評価し、それらが歯科補綴物用合金として優れた物 性を備えることを示した後に、本論文において陶材焼付強度の評価を行い新たな陶材焼付冠用合 金としての応用の可能性を検討した。 本研究を遂行するにあたり本合金用に開発された埋没材や陶材は市販されていない中で、周到 な予備実験を背景に使用材料の選定がされており、その選択は適切であったと言える。機械的性 質は引張試験およびビッカース硬さ試験で評価を行い、組織評価には走査型電子顕微鏡、エネル ギー分散 X 線分析(EDS)、X 線回析を用いており、合金の特性を評価するにあたって適正な方法で あった。鋳造性については画像解析ソフトを有効に利用し鋳込み率の算出を行っていた。陶材焼 付性の評価にあたっては、金属表層の酸化層の最適化が重要であると考え、異なる熱処理時間で 酸化熱処理を施し焼付強度の検討を行っている。また得られた酸化膜について、走査型電子顕微 鏡、X 線回析、スクラッチ試験、および共焦点レーザー顕微鏡を用い、多角的に評価を行ってい る。得られた結果に対する統計学的な検討も適切に行われており、十分な情報と知識を背景に、 本研究が計画、遂行されたことが窺われる。 本研究で得られた主な結果は以下のとおりである 1. Zr-14Nb 合金は Co-29Cr-6Mo 合金に匹敵する最大引張強さ、0.2%耐力を有していた。また Ti-6Al-7Nb 合金の 2 倍以上の良好な伸びを示した。(参考論文) 2. Zr-14Nb 合金は Ti-6Al-7Nb 合金と同程度の鋳造性を有していた。(参考論文) 3. Zr-14Nb 合金は鋳造の際に 50µm 程度の酸化膜が形成され、埋没材成分である Al との反応も認 められた。 4. Zr-14 合金は適切な熱処理条件下では陶材との化学的・機械的結合が得られ、Ti を有意に上回
( 2 ) る陶材焼付強度が得られた。 5. 熱処理時間が 20 分に及ぶと、酸化膜が母材金属から剥離し易くなり、陶材焼付強度の低下が 認められた。 Zr-14Nb 合金は機械的強度と鋳造性、陶材焼付強度の観点から新たな陶材焼付冠用合金として 応用可能であることが示された。また本研究で得られた陶材と金属の結合機序について、陶材金 属界面の元素分析の結果から、化学的結合に対する論理的な考察が行われている。考察は過去の 文献を適切に引用しながら展開し、金属酸化膜成分が陶材中に拡散し、陶材成分中の金属酸化物 と固溶していることと、酸化熱処理による表面粗さの増加が陶材焼付強度向上に寄与したと結論 付けている。 本研究は綿密な研究計画をもとに実施され、適切な解析により妥当性の高い結果を導いており、 研究計画から考察に至るまで、高く評価できるものであった。以上の成果は今後の歯科医学の発 展に寄与するところが大きく、本論文は博士(歯学)の学位を申請するに十分値するものと認めら れた。