解剖・栄養生理学
免疫系の生理 参考書: 山本ら第12章 藤田 pp124~133 Mader 第8章、pp353~360この講義で身に付けること
• リンパ系
と
免疫系
の違いを理解する
• リンパ系器官の
解剖
と役割を理解する
• 非特異的防御
と
特異的防御
が説明できる
ようになる
• 液性免疫
と
細胞性免疫
の違いを理解する
• 免疫が体に与える
リスク
について学ぶ
• HIV
と
AIDS
の違いを理解する
免疫とは?
• 体は常に外敵にさらされている – ウィルス – バクテリア – 熱 – 放射線・紫外線 • 体内でおきている変化 – 突然変異を起こした細胞・老廃細胞 – 移植した本来他人の臓器 • 体が認識した「外敵・異物」から保護・防御する システム免疫系地球温暖化と感染症リスク
• 地球規模の気候変化 生態系の変容感染症が大 流行する可能性(National Geographics, 2008) – 日本でもデング熱などの媒 介蚊の北上が確認済み(環境 省地球環境局、2009) • Deadly dozen (死に至る12 の病)1)ライム病、2)黄熱、3)ペスト、 4)鳥インフルエンザ、5)バベシア症、6) コレラ、7)エボラ出血熱、8)腸内寄生虫 および外部寄生虫、9)赤潮、10)リフトバ レー熱、11)アフリカ睡眠病、12)結核 http://mahatmabug.com/mosquito.jpg http://happysadness.files.wordpress.com/2006/10/gpw-20050430a-fullsize-ebola-virus-cdc-phil-id-1181.jpg鳥
インフルエンザ
http://www.who.int/csr/don/Map_20090701_1100.png http://influenza.jp/newflu/img/fig_newflu_02_01.gif
スペインかぜ
最初のインフルエンザ大流行
• 1918-1920年に流行(H1N1型) • 当時の全人口の50%が感染、4000-5000万人 が死亡したとされる(世界の総人口約12億) http://www.invmed.info/historyofinfluenza/spanish.html中世ヨーロッパでのペストの伝播
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/f/f5/Pestilence_spreading_Japane.png • 14世紀(1300- 1400AD)にヨーロッ パで蔓延 ⇒全人口の3割が死亡 • 「黒死病」 • ペスト菌を媒介する ノミに感染したネズミ によって広まったと 考えられている • 検疫の重要性http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/a-cg/a-900/a-970/a-971.jpg • ホメオスタシス のための3つの 役割 1. 余分な体液を回 収・血流に戻す 2. 乳び管で吸収し たリポタンパク 質を血流へ運搬 3. 免疫機能
リンパ管+リンパ系器官=リンパ系
http://health.goo.ne.jp/health/img/jintai/jin017.gif • 浅と深リンパ管 – 毛細管 – 皮膚表層、CNS、筋内 膜や骨組織にはない • リンパ管は弁を持つ 逆流を防ぐ • 胸管:下半身、頭部左 側、左腕と胸部の一部 にリンパ液を流す • 右リンパ本幹:頭部右 側、右腕と胸部の一部
リンパ系
リンパ液
• リンパ管を通っているのがリンパ液 – 血漿に類似したアルカリ性の漿液性の組織液(黄色) – 心臓からの静水圧により毛細血管から漏出された 血漿は細胞間隙で細胞から生じた老廃物を含み組 織液となる – 組織液の90~80%は浸透圧により毛細血管と小静 脈に戻る – 残りの組織液(10~20%)が毛細リンパ管に流入し てリンパ液となる • 血管より漏出した血漿タンパク質と細胞から排 出された高分子物質、リンパ球、脂肪球などが 含まれるリンパ液
• 骨格筋の動きで送られる • 血液(5.9L/分)に対してリンパ液は循環が遅い – 胸管: 100 ml/hr – 右リンパ本幹: 20 ml/hr. – 全体のリンパ液循環: 120 ml/hr (2.9 L/day) • 体液(組織液)の再吸収が十分行えない浮腫 – 浸透圧の変化・過剰な体液の生産 – 慢性的な浮腫象皮病http://www.doh.gov.ph/celf_phil/images/stories/food/elephantiasis.jpg
リンパ浮腫(象皮病)
• 慢性的な肥大と組織の硬化 – 特に下肢や外生殖器 • 一次性(未成熟なリンパ管・ リンパ節)と二次性(他の疾 患による組織の切除や破壊 の結果) • 多くが二次性 • フェラリア虫による感染でも 起きるリンパ節はリンパ球の生産・貯蔵
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/a-cg/a-900/a-950/a-952.jpg 皮質と髄質-皮 質にリンパ球、 髄質にマクロ ファージ リンパに含まれ る異物はリンパ 節の中のリンパ 洞を通過する際 に洞のマクロ ファージに取り込 まれ除去される リンパの浄化扁桃
• リンパ小節の集まり
• 免疫抗体が作られる
• 抗原抗体反応が活
発化
炎症
• 口蓋扁桃、舌扁桃、
咽頭扁桃が呼吸器と
消化器の感染を防ぐ
役割を担っている
http://www.hat.hi-ho.ne.jp/kboy/nodo-sikumi.jpg脾臓は横隔膜の直下にある
http://www.lifespan.org/tmh/services/surgery/mininvasive/images/spleenlarge.jpg – 被膜と白脾髄 にはリンパ球 – 赤脾髄には赤 血球とマクロ ファージ – 血液の浄化 – 被膜は薄いの で破裂すること がある免疫 力低下胸腺は加齢と共に萎縮
http://leavingbio.net/Endocrine%20System/Endocrine%20System_files/image014.jpg 胸腺 脾臓 – リンパ球がTリン パ球へ成熟 – 「自己」に対して 強く反応するリン パ球は除去 (クローン選択説) – サイモシンなど胸 腺ホルモンを産生 – Blood-Thymus Barrier (血液胸 腺関門)リンパ球の分化は赤色骨髄で
• T細胞は胸腺内で成熟する Bリンパ球 Tリンパ球 芽球化・クローン拡大 形質細胞 メモリーB細胞 キラー細胞 ヘルパーT細胞 サプレッサーT細胞 メモリーT細胞 芽球化・クローン拡大 山本ら, P231免疫システムの概要
免疫 自然免疫(非特異的防御) 1.障壁 2.炎症 3.NK細胞 4.防御たんぱく質 獲得免疫(特異的防御) 液性免疫 抗体 B細胞 T細胞 細胞性免疫 MHC (クラスⅠ&Ⅱ) T細胞 サイトカイン非特異的防御(自然免疫)と
特異的防御(獲得免疫)
• 非特異的防御は免疫が 記憶されない • 2011年のノーベル医学・ 生理学賞 • ブルース・ボイトラー博士 とジュール・ホフマン博士 – 自然免疫機能の解明 • ラルフ・ステインマン博士 – 樹状細胞の発見と獲得 免疫の研究成果 http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2011/steinman.html http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2011/beutler.html http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2011/hoffmann.html#非特異的防御(自然免疫)
• 4つの要因 1. 進入に対する物理的障壁(例:皮膚・粘膜・涙腺・pH) 2. 炎症反応 – 発赤や発熱:組織の破壊によって組織内に存在 する肥満細胞(マスト細胞)がヒスタミンやキニンを 放出毛細血管の拡張 – 腫れ:タンパク質や血漿が集まる – 痛み:キニンや腫れが自由神経終末を刺激 – 好中球や単球が病原体を取り込み破壊 – 単球:血液から組織に移動⇒マクロファージに ⇒病原体を取り込むとコロニー刺激因子を放出 ⇒赤色骨髄での好中球の産生と放出を促進非特異的防御(自然免疫)
• 4つの要因 3. NK細胞(Natural Killer細胞):直接接触するこ とで感染した細胞やがん細胞を殺傷すること ができる 4. 防御タンパク質:約20種類のタンパク質でで きている補体補体系 – 病原体の進入によって活性化され、様々な免疫 応答を補助する 1. 単球や好中球を集める 2. 病原体がマクロファージに確実に取り込まれるよ う病原体と結合するなど特異的防御(獲得免疫)
• 非特異的防御で防ぎきれなかった場合のシステ ム • 免疫系を刺激して免疫応答を誘発するする外 来性物質=抗原 – 外来性細胞や「自己」と認識しなくなった細胞(がん 細胞など)の全てではなく一部分を指す • 抗原受容体=抗原を認識する受容体 – リンパ球の細胞膜に存在する • 各抗原を認識しうる抗原受容体をもつリンパ球 を産生可能特異的防御(獲得免疫)
• 2種類のリンパ球:B細胞とT細胞 – B細胞は骨髄中で成熟 – T細胞は胸腺内で成熟 • B細胞とT細胞の違い – B細胞は抗体を生むことが可能な形質細胞に 分化できる 抗体=抗原と結合して生物活動を消失・低下 させることが可能 – T細胞は抗原を持つ細胞を直接攻撃する • 液性免疫と細胞性免疫に分けられる液性免疫
• 抗原がマクロファージに結合⇒抗原提示細胞 (APC)となる T細胞に抗原提示して液性免疫を誘導 ヘルパーT細胞が分泌するサイトカインから の刺激でB細胞が分裂して形質細胞となる 形質細胞が抗体を産生 • 同時に分裂した幾つかはメモリーB細胞となる 免疫を記憶することが可能 次回の侵略に対して迅速に対応できる • 感染が落ち着くと形質細胞はアポトーシス(細胞 死)を起こす抗体
• 5種類の免疫グロブリン(Ig) • 抗原と抗体分子で免疫複合体を形成目印 クラス 存在箇所 機能 IgG 血液中の主要な抗体 病原体に結合 IgM 血液中 補体を活性化 IgA 唾液や母乳などの分泌液 上皮細胞を守る IgD 未感作B細胞の細胞膜上 B細胞上で抗原受容体 として機能 IgE 血液中の肥満細胞や好 塩基球の表面 即時型アレルギー反応 Mader, P152抗体(IgG)の構造
http://www.brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb/no37/img/zu01.gif • L鎖(短いポリペプ チド)とH鎖(長い ポリペプチド) • 可変領域(V領域) は組み合わせで 変わる • 定常領域(C領域) • 抗原とはV領域で 結合する細胞性免疫
• T細胞は自力で抗原を認識できない認識シス テムが必要 • T細胞を活性化する細胞抗原提示細胞(APC) • 抗原提示細胞は細胞膜中にMHC(主要組織適 合性複合体)と呼ばれる糖タンパク分子を持つ– ヒトではHLA(Human Leukocyte Antigen)抗原と呼 ばれる
– 輸血の際の副作用から発見された「白血球の血液 型」
– とても複雑:一致するのは一卵性双生児くらい – クラスⅠとⅡに分類される
細胞性免疫
• クラスⅠは自己と非自己を区別するためのマーカー – 殆どすべての有核細胞が持つ – A座・B座・C座があるー輸血の際はこの適合が大切(適合率 は500人に1人) – 内因性抗原を結合:細胞内でのウィルスの増殖・がん細胞 • クラスⅡはHLA抗原を感知する – 外因性抗原を結合:細胞外で増殖するウィルスや白血球に 感染する菌に対して – D領域(DR、DQ、DP)がある(HLA-DR、HLA-DQなど) • 他人の臓器の細胞は違うHLA抗原をもっている可能性 が高いため、体内では「非自己・異物」と判断される可 能性が高い拒絶反応が起きる(急性拒絶反応) • 同じHLA同士では移植が成功する可能性が高い細胞性免疫
• APCによってT細胞が活性化 分裂・増殖してサイトカインを放出 提示された抗原と同一の抗原性を持つ細胞を破壊 原因が除去されるとアポトーシスを起こす • キラーT細胞・ヘルパーT細胞・サプレッサーT細胞 – キラーT細胞:細胞膜に孔を開けることができる パーフォリンを持ち細胞を破壊する(細胞性免疫) – ヘルパーT細胞:サイトカインを分泌⇒免疫機能を 推進 – サプレッサーT細胞:サイトカインを分泌して過剰な 免疫機能を抑制 • メモリーT細胞次回の感染時に迅速に反応液性免疫と細胞性免疫
http://arapaho.nsuok.edu/~castillo/NotesImages/Topic5NotesImage4.jpg 液性免疫 細胞外微生物 抗体 B細胞 中和 溶解 食細胞 細胞性免疫 細胞内微生物 APC ヘルパーT細胞 サイトカイン NK細胞 などの 増殖 細胞の溶解能動免疫と受動免疫(誘導免疫)
• 人為的に免疫を得る手法=誘導免疫 • 2種類:能動免疫と受動免疫 • 能動免疫 – 病原体に感染することで自然に得られる免疫 – 予防接種(病原体もしくは産生する物質を注射する) – メモリーB細胞とメモリーT細胞の機能を活用 • 受動免疫 – 血清(すでに存在する抗体を投与する)予防接種の危険性-ポリオワクチン-
http://img4.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/31/ba/tomorot_215/folder/975809/img_975809_25568857_0?1306825201 • ポリオ(急性灰白髄 炎)はポリオウィルス によって起こる • 生ワクチンもしくは不 活化ワクチン • 生ワクチンではポリオ の発生リスクが生じる • 日本では2012年から 国産不活化ワクチン を導入⇒9月1日から 予防接種開始サイトカイン
• サイトカイン=生理現象に関わる細胞の増
殖・分化・活性を調節するタンパク質性液
性因子
• 主な調節
– 細胞の増殖・成長 – 免疫関連の細胞の増殖・分化・活性 – 抗ウィルス・抗腫瘍作用 – 他にも造血、分化・増殖の抑制、アポトーシス 誘起など多岐にわたる• T細胞やマクロファージで産生される
サイトカインとホルモン
• 似ている
– 微量で作用する – 恒常性の維持に重要• ホルモンとサイトカイン両方に分類される
物もある
– レプチン – エリスロポエチンサイトカインとホルモンの違い
1. ホルモンは内分泌腺を持つ臓器や腺組織から分泌、 サイトカインは細胞からも分泌 2. ホルモンは1種類の内分泌細胞が1種類を産生分泌、 サイトカインは1種類の細胞が複数産生分泌する 3. サイトカインは複数の細胞に影響する 4. サイトカインの作用は多様 5. サイトカインの作用は局所に限定される(オートクリンや パラクリン) 6. サイトカインは全てタンパク質 7. サイトカインは他の細胞のサイトカイン分泌と関与して いる免疫に関与するサイトカイン
• インターロイキン:白血球やマクロファージの増 殖・分化・活性の調整する(20種類以上ある) • インターフェロン:α・β・γなど抗ウィルスや抗腫 瘍効果など違う性質をもつ一連の群 • コロニー刺激因子(CSF):骨髄での白血球の増 殖を促進 • ケモカイン:白血球やマクロファージの遊走(血 管から破壊されている組織へ集まる現象)を促し て炎症を引き起こすサイトカイン群 • 腫瘍壊死因子(TNF):腫瘍細胞を障害するアディポサイトカイン
• 脂肪細胞から分泌されるサイトカイン • 様々な種類がある – TNF-α – PAI-1 – HB-EGF – レプチン – アディポネクチン etc… • レプチンやアディポネクチン、レジスチンは免疫 系に直接関与していない(ホルモン) • 内臓肥満アディポサイトカインの分泌異常 インスリン抵抗性が高まると考えられている http://www.pathguy.com/lectures/ob_mouse.gif肥満は炎症を促す
環境因子 胎生期の発育 授乳・食事 非活動的生活 ストレスなど 遺伝的因子 脂肪細胞 心疾患 炎症 & ↑酸化ストレスアレルギー反応
• 過去に免疫応答を起こした抗原が再び体内に 入った際に免疫系が過敏に働く状態 • 関連する組織に対して障害を引き起こす – 花粉症 – 食物アレルギー – ハウスダスト – 薬物 • 酷い状態ではショックを引き起こし死亡すること もある(アナフィラキシーショック) – アナフィラキシーは即時型アレルギー反応食物アレルギーを持つ小児・学童が増加
• 約150万名の食物アレルギー患者 – 乳児の5万〜10万名 – 幼児期の30万名 – 学童以降の100万名 『食物アレルギー』斎藤博久監修 海老澤元宏編 診断と治療社 2007 http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/ped/patient/new/images/epipen_002.gif • 基本的に全ての 種類で起こりうる • 小麦、そば、 ピーナッツ、卵、 大豆、甲殻類、 魚介類など • グルテンを除去 した食品や料理 の普及 • 給食管理の徹底自己免疫疾患
• 自身の正常な組織や細胞に対して免疫系が攻 撃をおこなう疾患の総称 – 慢性関節リウマチ – 多発性筋炎 – 全身性硬化症 – 自己免疫溶血性貧血 • 正確なメカニズムはまだ解明されていない • 薬剤で症状を抑制することは可能HIVとAIDS
• ヒト免疫不全ウィルス(Human
Immunodeficiency Virus: HIV)が免疫細胞 に感染することにより免疫細胞を破壊し免疫 不全症を引きおこす
• 後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome: AIDS)