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ROCKY NOTE 多発性嚢胞腎 (060123) 多発性嚢胞腎 (Autosomal-dominant polycystic kidney disease (APKD) ) の頻度は数千人に 1 人と比較的多い疾患である 先日 初診の多発性嚢胞腎を診る期会があったので多発性嚢胞腎のアプローチの仕

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Academic year: 2021

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ROCKY NOTE

多発性嚢胞腎(060123)

多発性嚢胞腎(Autosomal-dominant polycystic kidney disease (APKD) )の頻度は数千人に 1 人と比較的多い疾患である。先日、初診の多発性嚢胞腎を診る期会があったので多発性嚢胞腎 のアプローチの仕方について勉強してみた。どの地域にも必ず一人はいると思うので知識を整理 してみる。 基礎知識 □ 遺伝形式は常染色体優性型であるが、家系に本疾患が存在せず新たに発症する場合もあ る。 □ 2 つのタイプの APKD があり、PKD1と PKD2いうタイプがある。 □ PKD1、PKD2 ともに、腎不全の末期に至るが、PKD1のほうがより早く末期に至る。(それぞれ、 平均 57 歳と 69 歳) 診断 日本のガイドラインによると、以下のような診断基準が用いられている。両側の腎臓が腫大し、 大小無数の嚢胞が超音波断層像、あるいはCT、MRIで示されることが必要である。家族歴、他の 臓器の嚢胞などがあれば、診断はより確かとなる 1.家族内発生が確認されている場合 1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの 2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの 2.家族内発生が確認されていない場合 1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下 の疾患が除外される場合 2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下 の疾患が除外される場合 除外すべき疾患

多発性単純性腎嚢胞multiple simple renal cyst、腎尿細管性アシドーシス renal tubular acidosis、多嚢胞腎multicystic kidney (多嚢胞性異形成腎multicystic dysplastic kidney)、多房性腎嚢胞multilocular cysts of the kidney、髄質嚢胞性疾患medullary cystic disease of the kidney(若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis)、多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)acquired cystic disease of the kidney、常染色体劣性多発性嚢胞腎autosomal recessive polycystic kidney disease

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ROCKY NOTE 経過 □ 嚢胞の発生は小児期より始まるが、何年にもわたり無症状な時期がある。 □ 周囲の組織を圧迫したり、感染したり、嚢胞内出血を起こしたり、石ができたりすることで症状 を呈することで気づく場合もある。 □ 男性、診断時に若年、腫大した腎臓、肉眼的血尿、高血圧が予後不良因子。 合併症 □ 肝嚢胞(肝腫大):感染の原因になることもある □ 脳動脈瘤:2倍リスクが上がる。日本のガイドラインでは頭蓋内出血の頻度が一般人の3倍と 記載されている。脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、脳内血管障害などの発生は、明らかに多発 性嚢胞腎患者に多い。 □ 大腸憩室 治療 血圧管理 □ 高血圧が進行に最も重要な因子であり、130/85 以下にするべきであるとされる。日本のガイ ドラインでも同様で外来診察室での血圧が 130/80 未満になるように行うとされている。 □ AFPのレビューでは高血圧治療薬は患者に合わせて、効果に合わせてどの薬剤を用いても かまわないとしている。UpToDateではACE阻害薬が効果的に血圧を下げるとしている。現在 ACEとARBの併用がPKDの進行を遅らせることが出来るかという研究が進行しているらしい。 (HALT-PKD)日本のガイドラインでは第一選択薬としてARBが推奨されている。ACE阻害薬 に関しては、腎保護効果があるとするものと無いとするものの対立した意見があると指摘して いる。それぞれ意見が異なるが、ARB、またはACE阻害薬から用いるのが現段階では無難な 選択といえる。 □ 高血圧治療は腎機能を維持する目的のほか、脳動脈瘤破裂のリスクを下げるという目的もあ る。 頭蓋内出血の予防 □ 30歳以上であればMRアンジオグラフィー(MRA)による頭蓋内動脈瘤の検索が望まれる。30 歳以下であっても、家族歴がある場合や症状がある場合にはMRAによる検索が適応となる。 新たな発生もあり得るので、2〜3年間隔でのMRA検査が推奨される。

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ROCKY NOTE 蛋白制限 □ UpToDateの著者らは、蛋白制限が有効とする論文と、効果が無いとする論文があるため、 その効果はどちらともいえないとしている。実際にはMDRDスタディの結果に代表されるよう に、腎機能低下を抑制する効果が証明されない限りは厳密な蛋白制限は推奨しない立場を とっている。1~1.1 g/kg per day以下には制限していない。日本のガイドラインでは、エビデン スがはっきりしないものの、過量摂取は避けるのが望ましいとしている。 嚢胞のドレナージ □ 嚢胞のドレナージは腎機能改善または腎機能悪化の遅延に対して効果が証明されていない。 ドレナージは強い痛みや難治性の痛みに対して行われることがある。 □ 肝臓腫大が原因の場合、超音波ガイド下嚢胞液吸引と硬化剤注入療法、嚢胞開窓術に肝部 分切除術を併用する方法や肝動脈塞栓術がある。 腎摘除術、腎動脈塞栓術 □ 腎臓腫大が原因で腹部膨満が強く、栄養状態が不良になった患者で既に透析導入され尿量 が少ない場合に適応となる。あくまで、腎機能を改善する外科的手段はなく、圧迫症状・疼 痛・感染によるQOLの改善が目的である。 腎代替療法 □ 末期になると人工透析、または腎移植が行われる。副作用もそれほど多くなく、有効であると する論文もあるようだが、CAPDは透析に必要な腹腔内のスペースが小さく、嚢胞ない感染 の波及や憩室炎の波及の可能性があるため、あまり行われない傾向にあるようだ。 □ 興味深いことに、腎移植の後には赤血球増多症、症候性動脈瘤、尿路感染、憩室炎などの 頻度が増える傾向があるらしい。 感染に対する治療 □ 嚢胞腎患者では尿路感染を合併しやすく、50%の患者で尿路感染を経験し、女性で顕著であ る。腎感染には腎盂腎炎と嚢胞感染がある。腎盂腎炎の治療法は一般的な腎盂腎炎の治療 と同様に行う。 出血に対する治療 □ 肉眼的血尿に対しては、一般的に血尿を来す原因疾患(尿路結石・膀胱癌・腎臓癌など)を除 外した後、原則的には飲水の奨励と安静による保存的対処を行う。ときに選択的腎動脈塞栓 術や腎摘除が必要になる場合がある。 尿路結石に対する治療

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ROCKY NOTE □ 通常の尿路結石症と同じように対処する。

新しい治療

□ Vasopressin receptor antagonistsの研究が進行中のようだ。

死因 □ Fickらの報告によると、心疾患は36%、感染は24%、神経関連のイベントは12%としている。 神経関連の死亡は動脈瘤の破裂が6%、高血圧性脳内出血が5%としている。癌で死んだ患 者はいなかったようだ。どうやら癌の合併はそれほど多くなさそうである。 □ 日本のガイドラインによると、多発性嚢胞腎の透析患者の主要死因では脳血管障害が圧倒 的に多い。欧米の報告と異なり、心筋梗塞は少ない。悪性腫瘍による死亡は透析患者全体 の比率と差はない。 (参考文献 3 より引用) 生活上のアドバイスの要点(日本のガイドラインより) □ 禁煙、過食の回避、十分な休息、適度な運動などが勧められる。 □ 格闘技や体のぶつかるようなスポーツは避ける。 □ 非ステロイド性炎症鎮痛薬は腎機能の低下を招くおそれがあるため、安易に服用しない。 □ 高コレステロール食を避け、腎機能がよい内は大豆や、魚などω3不飽和脂肪酸を含む食材 の摂取が勧められる。 □ カフェインの過剰摂取を避ける。

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ROCKY NOTE □ 水分摂取は多くする。 □ リンの少ない食事で、カルシウムは多めに摂取する。 □ 女性では嚢胞感染の誘因となる尿路感染を予防するために、便の拭き方の注意、性交渉後 の排尿が勧められる。 □ 更年期以降のエストロゲン補充療法は慎重に選択する。 □ 妊娠については、高血圧がなく腎機能が正常な者ではほぼ正常の妊娠が可能。 参考文献

1. Anne D. Control of Polycystic Kidney Disease: An Overview. Am Fam Physician 2002 Oct 1;66(7):1314

2. Course and treatment of autosomal dominant polycystic kidney disease UoToDate 14.3 (http://www.uptodate.com/)

3. 厚生労働省特定疾患対策研究事業 進行性腎障害調査研究班(富野康日己班長). 常染色 体優性多発性嚢胞腎診療ガイドライン(第2版)

参照

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