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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 山田淳 論文審査担当者 主査副査 大川淳野田政樹 上阪等 論文題目 Follistatin Alleviates Synovitis and Articular Cartilage Degeneration Induced by Carrageenan ( 論文

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Academic year: 2021

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学位論文の内容の要旨

論 文 提 出 者 氏 名 山田 淳

論 文 審 査 担 当 者 主 査 大川 淳

副 査 野田 政樹、上阪 等

論 文 題 目 Follistatin Alleviates Synovitis and Articular Cartilage Degeneration Induced by Carrageenan (論文内容の要旨) <要約> Activin は TGF-superfamily に属するサイトカインで、様々な組織の炎症に関与している事が知 られている。Follistatin は、Activin と結合しその受容体への結合を阻止する内在性のインヒビター として機能する分子で、LPS 投与による全身炎症反応を効果的に抑制する薬理作用がある事が示 されている。Follistatin は関節軟骨に発現がみられ、変形性関節症によって増大する事が示されて いるが、関節炎や関節軟骨のホメオスタシスにおける生理機能は明らかにされていない。本研究 では、Carrageenan の関節内投与による関節炎と軟骨の退行変性に対し Follistatin の事前投与が滑 膜炎を有意に緩和し、関節軟骨のプロテオグリカン量の低下を抑制したので報告する。 <緒言> 変形性関節症(osteoarthritis:OA)は関節軟骨および軟骨下骨の変性を含み、機能障害を主体とす る疾患である。その発症には年齢や肥満、機械的ストレスやエストロゲンやサイトカインなどの 液性因子、さらには遺伝的要因などの多因子が関与すると報告されている。疫学的にも現在、日 本を含む世界中に罹患している疾患であり、特に北米では成人の有症状者は関節症に関わるもの で約2 割にも上り、最も高いものとなっている。さらに 65 歳以上の高齢者では人口の 80%でレ ントゲン上の関節軟骨の変性を指摘されると言われており、今後もさらなる高齢化に伴い罹患者 数は増加するとされている。このような現況から OA の病態解明および分子生物学的治療法の確 立などが性急な課題であると考えられる。 OA に対する主体的な治療法は保存療法であるが、筋力トレーニングや疼痛のコントロールな どの対症療法であり、OA の進行の抑制は困難である。薬物療法では NSAIDs が使用されること が多い。NSAIDs が抗炎症や鎮痛などの薬理作用を示すが、軟骨に対しても抗異化作用や抗 apoptosis 作用を持つと言われているが、まだ OA の関節軟骨への影響に関しては不明な点が多い。 本研究ではCarrageenan を用いたマウスの関節炎モデルに対して Follistatin が抗炎症および軟骨保 護作用を認めることを示した。Follistatin は pro-inflammatory サイトカインである Activin に高い親 和性を持ち、結合してActivin-signal をブロックする。Activin は TGFsuperfamily に属する、分子 量25,000 の Inhibin 鎖の二量体蛋白質であり、体内の様々な組織に存在し、胎盤からの FSH の分 泌や神経分化への関与などの作用を持つほか、炎症の過程や免疫反応でActivin 濃度が上昇するこ

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- 2 - とが知られている。特に炎症の過程ではIL-1 や TNF などよりも ctivin は先に上昇を認め、炎 症系サイトカインの放出に関与していると推測されている。それに対し、Follistatin は Activin 作 用をブロックし、抗炎症効果がマウスの腸炎モデルや敗血症モデルなどで示されている。さらに Activin の活性は軟骨・骨形成過程にも及び、軟骨への分化誘導や軟骨基質合成の促進、また骨芽 細胞の増殖刺激などが動物モデルで報告されている。またFollistatin も関節軟骨内に存在し、犬の OA モデルではその発現が上がることが示されており、Activin-Follistatin 系の骨・軟骨への関与が 考えられている。以上のようにActivin-Follistatin 系が抗炎症および抗異化に重要な役割を示し、 骨・軟骨への作用もあることからOA の治療ターゲットとなり得ると考えられるが関節内での両 者の役割についての報告はない。そのため、本結果がOA 治療としての Follistatin の可能性を示す ものと考えられる。 <方法> 全身麻酔下、12 週齢のオス C57BL/6J マウス 28 匹の左膝関節内に、 -Carrageenan30μg を投与 して関節炎を誘導した。Carrageenan+Follistatin 群(CA+FLT 群)の 14 匹には Carrageenan 投与の 30 分前にFollistatin25ng を左膝関節内に投与した。残りの Carrageenan 群(CA 群)14 匹は Carrageenan のみとした。3 日後および 14 日後に各群 7 匹ずつを sacrifice し、左膝関節を摘出した。対側の右 膝も摘出し、Control 群とし、それぞれの組織学的解析を行った。組織学的解析ではサフラニン-O 染色、HE 染色、F4/80 染色(マクロファージの凝集を判定)を行い、各スコアリングを行い、CA 群 やCA+FLT 群、Control 群らを比較検討した。

<結果>

3 日後の関節軟骨の Safranin-O の染色性は、CA 群において顕著な減少が観察されたが、CA+FLT 群では、染色性の低下が改善し、軟骨変性を評価するスコアリングでは有意な差を認めた。しか し、14 日後では CA 群での染色性の低下は認めなかった。次に HE 染色にて滑膜の評価を行った。 3 日後では Control 群に比べ、CA 群で滑膜の肥厚および細胞密度の増加を認めたのに対し CA+FLT 群では滑膜の肥厚は認めたものの細胞密度の増加はなく、滑膜炎のスコアリングを行ったところ CA 群に比べ、CA+FLT 投与群で有意に低下していた。さらにマクロファージの表面抗原である F4/80 の免疫染色を行うと、CA 群で滑膜に陽性細胞を多く認めたが、CA+FLT 群で有意に減少し ており、スコアリングで有意な差を認めた。14 日後では HE 染色、F4/80 染色ともに両群で有意 な差は認めなかった。以上の結果はCarrageenan 投与による関節炎症と関節軟骨の退行変性のプロ セスにActivin signal が関与しており、Follistatin の関節内投与により、滑膜炎の軽減と関節の軟骨 変性の抑制に効果的であることを示したが、Carrageenan 誘導による関節炎では OA のような軟骨 表面の裂孔形成などの形態的変化や軟骨細胞の肥大化や細胞数の増加といった変化がないため、 OA 治療における Follistatin の効果は限定的にしか判定できなかった。 <考察> 本研究でCarrageenan 投与後 3 日の滑膜炎および軟骨の退行変性に対して Follistatin 投与により マクロファージ凝集の抑制や軟骨のプロテオグリカン量の維持などの作用を示し、OA 治療にお

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ける新たな可能性を示した。 Carrageenan はアイルランド苔から得られる多糖類の植物性ゴムでげっ歯類に投与するとカラ ギーナン浮腫という関節炎を引き起こすとされている。Carrageenan 投与によりマクロファージの 凝集が惹起され、自然免疫反応としてToll 様受容体(TLRs)が病原体に関連した特有の分子パター ンを認識し、免疫反応として炎症反応が引き起こされる。TLR ファミリーには 10 種を超えるメ ンバーが存在するが、TLR4 はグラム陰性桿菌の細胞壁に存在する lypopolysaccharide(LPS)を認識 し、TLR2 はグラム陽性菌のペプチドグリカンを認識し、免疫応答を果たすことが知られている。 TLR ファミリーを介した細胞内シグナル伝達経路では MyD88(Myeloid differentiation factor 88)と 呼ばれるアダプター分子が炎症性サイトカインの産生に関与することが報告されていて、TLR フ ァミリーの細胞内領域と相同性の高いToll/IL-1 受容体(TIR)ドメインを有する。MyD88 欠損マウ スでは TLR が認識する全ての病原体の構成成分に対する炎症性サイトカインの産生が認められ ない。TLR シグナル伝達経路の活性化は、細胞質側の TIR ドメインから開始されるが、これは TIR ドメインを持つアダプタータンパク質の MyD88 と会合する。リガンドの刺激を受けると直ち に、MyD88 は IL-1 受容体結合キナーゼ-4 (IRAK-4) を TLRs に呼び寄せるが、これは、両者に存 在する細胞死ドメイン間の相互作用によっておこる。リン酸化によって活性化されたIRAK-1 は、 次にTRAF6 と会合し、最終的には MAP キナーゼ (JNK、p38 MAPK) 及び NF-κB の活性化に至 る。Carrageenan を用いた関節炎モデルはげっ歯類やラビットが報告されているが、炎症反応とし て滑膜の肥厚やマクロファージの凝集、そして軟骨のプロテオグリカン量の減少が報告されてい る。Rheumatoid arthritis(RA)の滑膜や手術侵襲時に TLR2,TLR4 の発現が上がっていることなどを 考えると、十分ではないが Carrageenan 誘導性の関節炎でも TLR-IRAK 系の反応が起こっている と推測される。しかし、Activin と TLR シグナルとの関係は明らかでない。ただ Activin が炎症過 程の初期で発現が上昇し、その後 IL-1や TNFなど炎症系サイトカインが上昇する。さらにyD88 ノックアウトマウスではLPS 刺激に対して Activin の濃度の上昇が抑えられることや Follistatin が 炎症過程における IL-1や TNFLなどの上昇を抑えることなどから本研究でも Activin と TLR シグナルとが関係してくることが考えられる。 本結果でCarrageenan 誘導性の関節炎に対して Follistatin 投与により滑膜マクロファージの凝集 は抑制されているものの滑膜の肥厚は残存していた。滑膜の線維化は OA で関節の拘縮に繋がる が、特にTGFが大きな役割を示す。過去の報告では TLR4-MyD88-NFκB 系が TGFBMP family のpseudo receptor(BAMBI)を down regulation することで TGFの活性化に関与するとされている。 今回の系ではFollistatin が TLR4-MyD88-NFκB 系にのみ干渉し、TGF系には関与しなかったの かもしれない。さらに今回はFollistatin により軟骨のプロテオグリカンの減少が認められた。軟骨 の変性を誘発するものとしてADAMTSs や MMPs などが知られているがこれらは IL-1 による刺 激で活性化される。そのことからも今回はFollistatin が TLR4-MyD88-NFB-IL-1の系に抑制的に 作用したと推測される。しかし、依然として Activin と TLR4-MyD88-NFB 系との関連は不明で あり、関節内の炎症および軟骨の変性にどのような影響を及ぼすかを検討していく必要がある。 <結語> 本研究でCarrageenan 投与後 3 日の滑膜炎および軟骨の退行変性に対して Follistatin 投与により

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マクロファージ凝集の抑制や軟骨のプロテオグリカン量の維持を認めた。今回の結果では関節炎 症とそれに伴う関節軟骨の退行変性のプロセスにActivin signal が関与している可能性を強く示唆 する実験データを得た。

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論文審査の要旨および担当者 報 告 番 号 甲 第 4712 号 山田 淳 論文審査担当者 主 査 大川 淳 副 査 野田 政樹、上阪 等 (論文審査の要旨) 1.論文内容 本論文は、カラニゲン関節注射により実験的に作成されたマウスの関節症モデルに対する Follistatin の事前投与が、関節軟骨保護作用を有することを病理組織学的に示した論文である。 2.論文審査 1)研究目的の先駆性・独創性 高齢者の変形性関節症は健康寿命を大きく損なうので、その克服は重要な課題であるが、原 因となる軟骨変性のメカニズムはまだ解明されていない。このような背景の下、申請者はマウ ス関節炎モデルを用いて、炎症カスケードの上流に位置するActivinと拮抗するFollistatinを 用いた軟骨変性制御について解析を行っており、その着眼点は評価に値するものである。 2)社会的意義 本研究で得られた主な結果は以下の通りである。 1. Follistatinを事前投与したマウス関節炎モデルでは滑膜のマクロファージの浸潤が抑制さ れた。 2. 同時に、サフラニン染色性で評価されるプロテオグリカンも維持できた。 以上のように申請者は、マウス関節炎モデルを用いて、Follistatinが関節軟骨変性に抑制的 効果を有することを示した。これは軟骨変性を原因とする変形性関節症に対する根治治療の可 能性を示すもので、臨床的にも極めて有用な研究成果であると言える。 3)研究方法・倫理観 研究にはマウスが用いられ、病理組織学的検討が行われており、申請者の研究方法に対する 知識と技術力が十分に高いことが示されると同時に、本研究が極めて周到な準備の上に行われ てきたことが窺われる。 4)考察・今後の発展性 さらに申請者は、本研究結果について関節炎症とそれに伴う関節軟骨の退行変性のプロセス に Activin signal が関与している可能性を強く示唆する実験データと考察している。炎症制御に よる軟骨変性抑制は今後の研究にてさらに発展することが期待される。 3. その他 一部理解が不十分なところがみられたため、Follistatinの軟骨への作用、効果や発現制御、炎 症との関連性についてレポートの提出を求めた。

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( 2 ) 4.審査結果

論文およびレポートの内容を踏まえ、本論文は博士(医学)の学位を申請するのに十分な価値 があるものと認められた。

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