• 検索結果がありません。

脳血管障害患者における全脳CT灌流画像と自動関心領域設定ソフトを用いた脳循環の解析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "脳血管障害患者における全脳CT灌流画像と自動関心領域設定ソフトを用いた脳循環の解析"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

 現在使用されている CBF(cerebral blood flow)を測定 し得る modality としては PET, Xenon CT, SPECT(single photon emission computed tomography),そして CT およ び MRI 灌流画像が挙げられる.この中で脳循環のみ ならず代謝も評価可能であるのは唯一 PET であり, 定量性は担保されるもののパラメータとしては CBF のみしか測定できず,血管反応性〔脳循環予備能: CVRC(cerebrovascular reserve capacity)〕を検討するた めには負荷試験を必要とするのが Xenon CT および SPECTである.CT および MRI 灌流画像は脳血液関門 が破綻しておらず,外頸動脈系からの入力関数に影響 を及ぼすバイパスが入っていないことを前提に,投与 された造影剤の挙動から脳循環に関するパラメータを 計算する手法で,CBF のみならず CBV(cerebral blood volume), MTT(mean transit time), TTP(time to peak),

Delay, Tmax等のパラメータを同時に算出することが できる.また,脳主幹動脈の形態学的評価を同時に行 うことが可能で,とくに CT 灌流画像では撮像時間が 50秒前後とその他の CBF を算出し得る modality によ る撮像時間と比較して短時間であるという特徴を有し ている.

320 列面検出 CT と自動 ROI 設定ソフトを

用いた CT 灌流画像の半定量解析

 CT 灌流画像から算出される CBF は脳の単位体積当 たりに存在する血管床(毛細血管)を単位時間当たりに 通過する血流量であり,Xenon CT 等の脳血液関門を 通過するトレーサーを用いて得られる局所脳血流とは 異なる.CT 灌流画像は CBF のほか,CBV, MTT, TTP, Delay, Tmax等のパラメータ算出が可能である.CBV は脳の単位体積当たりに存在する血管床をみており, 比較的定量性の高い数値が得られる.MTT は造影剤 が単位体積当たりの血管床を通過するのに必要な平均 時間を,TTP と Delay および Tmax は MTT に造影剤 が毛細血管に到達する以前の動脈相において例えば主 幹動脈の狭窄により生じた遅延も含めたパラメータと なっている.解析には東芝メディカルシステムズ製の Aquillion One(320 列面検出 CT)を用いた.Delay に依 存しない解析が可能な SVD+ アルゴリズムを実装して 慶應義塾大学医学部脳神経外科 〒 160-0016 東京都新宿区信濃町 35 TEL: 03-5363-3808 FAX: 03-3354-8053 E-mail: satoshi710@mac.com doi: 10.16977/cbfm.28.2_321 とが重要である.この文脈において,急性期血行再建に際しては,どのような脳循環の状態の患者に対し,ア ルテプラーゼ静注のうえの血栓回収療法が有用であるのか,慢性期血行再建に際しては,どのような脳循環の 状態の患者に対し,どのような血行再建術が有用であるのかを比較的簡便かつ定量的に理解できる評価法の確 立は有用であると考える.これまでこの命題に対する答えを得るべく CT 灌流画像を用いた脳血管障害患者に おける脳循環の解析を行って来たのでこれを報告する. (脳循環代謝 28:321∼325,2017) キーワード : 脳循環,CT 還流画像,血行再建

(2)

おり,13 種の CT 灌流画像解析アルゴリズムの正確性 をファントムデータを用いて検証した研究において, 検討された CBF, CBV, MTT の全てにおいて正確性が 示された 2 つのアルゴリズムのうちのひとつであ る1).解析に際してはより客観的な評価を行うため に,竹内亮先生が開発された,元画像に解剖学的標準 化を加えた後,定型 ROI を当てはめ自動解析を行うソ フトである 3DSRT(富士フィルム RI ファーマ,東京) を使用した2, 3).撮像データをオフラインで画像解析ソ フト DRIP(富士フィルム RI ファーマ)で 3DSRT が認 識可能なデータに書き換えたうえで 3DSRT に入れ, 自動 ROI を設定し解析した(Fig. 1).

CT 灌流画像 CBF の定量性に関する検討

4)  虚血性脳血管障害患者において CT 灌流画像で算出 した CBF を Xenon CT から算出し,同様に 3DSRT で 解析した CBF をリファレンスに比較検討した4).本研 究では MCA 領域に注目し,その近位部が灌流する基 底核領域と遠位部が灌流する皮質領域の CBF を比較 した.結果,CT 灌流画像から算出された CBF の絶対 値は Xenon CT の CBF 値と相関を認めなかった一方, MCA皮質領域の CBF 左右比および MCA の皮質領域 と基底核領域の血流の比で表される hemodynamic stress distribution(hSD:基底核の CBF/MCA 皮質領域 の CBF5))は CT 灌流画像から算出した値と Xenon CT から算出した値が相関した.以上から CT 灌流画像か ら算出される CBF は定量値として Xenon CT から算出 される局所脳血流の代替値として用いることはできな いものの,同一患者の同一検査中という前提があれば 局所脳血流に富む部分とそれが欠乏する部分を示し得 ることが明らかになった.

CT 灌流画像から CVRC を

予測し得る可能性に関する検討

6)

 CVRC を PET を用いることなく Xenon CT や SPECT で算出するためには,アセタゾラミド静注等の負荷が 必要となる.アセタゾラミド負荷に関しては,2014 年 に関連学会から心不全および肺水腫といった重篤な副 作用の報告がなされてから,その慎重な使用に関する 適応の検討が求められている.CT 灌流画像から得ら れるパラメータの中で CVRC と相関を認めるパラメー タを探索した6).2014 年 6 月の注意喚起以前の同時期 に CT 灌流画像と安静時およびアセタゾラミド負荷 Xenon CTを行った虚血性脳血管障害症例において, 横軸に CT 灌流画像のパラメータ,縦軸に CVRC を とって相関を検討したところ,TTP と CVRC に統計学 的 有 意 な 負 の 相 関 を 認 め た(p<0.001, Pearson r=−0.7228).TTP が 12.56 秒 よ り も 長 い 場 合 感 度 86%,特異度 85%の確率で CVRC が 10%未満である との結果を得た.CT 灌流画像を行い TTP が延長して いる領域がある場合のみアセタゾラミド負荷を行う等 の利用法が考えられる. Fig. 1.3DSRT で 解 析 し た CT 灌 流 画 像 に よ る CBF データ 動脈の灌流域ごとに平均の値を算出できる.3DSRT で解剖学的標準脳にデータを落とし込むことにより, CBF, CBV, MTT, TTP, DLY, さ ら に は Xe-CT に よ る CBFを同一の ROI で比較検討することが可能になる.

(3)

慢性虚血における脳循環障害を呈した部位の

CT 灌流画像における検討

7)  前述の研究と同じコンセプトであるが,CVRC との 相関を取るのではなく,IC および M1 閉塞患者のう ち,脳ドックで指摘された無症候のものと,症候性に 分水嶺梗塞を起こしたもので CT 灌流画像のパラメー タを比較検討した7).本研究では健側比を用いた検討 を行った.結果,検討した CBF, CBV, MTT, TTP, 4 つ のパラメータのうち CBV の健側比のみが無症候性群 に対して症候性群において有意に上昇していた(Fig. 2).健側比が 1.059 以上になると感度 88.9%,特異度 66.7%の確率で症候性群であるとの結果が得られた. 脳血管床が拡張し,つまり脳循環予備能が下がった状 態の脳は脳梗塞を起こしやすいと理解でき,直感的に も納得のできるデータである.前述の研究の結果と併 せて,CT 灌流画像を施行して,対側に比べて CBV が 上昇してる,また TTP や MTT が延長している領域は Kurodaの type 38)の領域である可能性を念頭にアセタ ゾラミド負荷試験を検討することにすれば潜在的なリ スクを伴うアセタゾラミド負荷試験の頻度を抑え得る 可能性があると考える.

急性期主幹動脈閉塞における CT 灌流画像

 CT 灌流画像は 50 秒前後で撮像が完了し,定性の灌 流画像,および主幹動脈形態評価のための 3DCTA 画 像がそれぞれ 10 分程度で再構成可能である.放射線 被曝の問題と造影剤使用の問題があるが,対象の脳領 域が救済可能な可能性と機能予後を考えた際の救済の 必要性を評価するために急性期においても有用な検査 であると考える.CT 灌流画像を用いた脳血管内治療 による血栓回収療法の適応決定に関する有用性はすで に Extend-IA といった大規模臨床試験で示されてい る9)が,それらは RAPID という自動画像解析システム を用いて,対側比 30%以下の CBF の領域を ischemic core, Tmaxが 6 秒を越える領域を penumbra と定義し, システムがアルゴリズムに基づいて返してきた Yes/ Noの答えに従って治療を進めるもので,RAPID が現 状として導入されていない本邦では現段階において使 用できない.このため比較的簡便に得られる定性画像 の血管内治療による血栓回収療法の適応決定に際して の有用性を 3DSRT を用いた後方視的なデータ解析を 行うことで検討した.結果,ische mic core の領域では

CBFと CBV の対側比が有意に低下するものの,CBF は penumbra の領域においても低下している一方 CBV Fig. 2.慢性虚血における脳循環障害 上段:51 歳女性.脳ドックで指摘された無症候性の右内頸動脈閉塞の患者.定性的に右 MCA 領域の CBV は左の同部位として上昇していない.下段:70 歳男性.様子がおかしいとの家人の指摘にて施行した MRI 上分水嶺領域の脳梗塞を指摘された症候性左内頸動脈閉塞の患者.定性的に症候側の左 MCA 領域の CBV は 右の同部位と比較して上昇している.毛細血管床の拡張を反映していると考えられる.

(4)

は ischemic core の領域のみで低下する傾向を認めるこ とから,定性画像から ischemic core をみつけるために は対側や周囲に比べて CBV が低下している領域を探 すことが有用であることがわかった(Fig. 3).アルテ プラーゼ静注は施行の条件を満たせば遅滞なく行われ るべきエビデンスに基づいた治療であるので,アルテ プラーゼ静注後可能であればすぐに CT 灌流画像を施 行し,救済可能な可能性がある領域と ischemic core の 領域を理解したうえで血栓回収療法に臨むことで必要 かつ十分な治療を安全な範囲で行い得ると考えて いる.

今後の展望およびまとめ

 現在上記の急性主幹動脈閉塞に加え,くも膜下出血 後の遅発性虚血性脳障害に関しても CT 灌流画像を用 いた脳循環の解析を行っている.解析の途中である が,動脈瘤再破裂予防手術後早期の CT 灌流画像から 得られるデータを解析することで,その後の遅発性虚 血性脳障害の程度を予測し得る可能性を検討して いる.  これまでの研究から,脳循環代謝のうちの脳循環に 関しては,CT 灌流画像がいくつかの前提のうえに毛 細血管レベルの血管床中の造影剤の挙動を見ていると いうルールを理解することで,この modality から脳血 管予備能の推定や脳血流低下の有無等,臨床上有用な データが得られることがわかった.  本論文の発表にて,開示すべき COI はない. 文  献

1) Kudo K, Christensen S, Sasaki M, Østergaard L, Shirato H, Ogasawara K, Wintermark M, Warach S; Stroke Imaging Repository (STIR) Investigators: Accuracy and reliability assessment of CT and MR perfusion analysis software using a digital phantom. Radiology 267: 201–211, 2013 2) 竹内 亮:脳核医学画像全自動 ROI 解析プログラ

ム;3DSRT.日放線技会誌 59: 1462–1474, 2003 3) Takeuchi R, Sengoku T, Matsumura K: Usefulness of

fully automated constant ROI analysis software for the brain: 3DSRT and FineSRT. Radiat Med 24: 538–544, 2006 Fig. 3.急性期主幹動脈閉塞における灌流画像 43歳女性.右麻痺と失語で搬送された.発症時間不明にてアルテプラーゼ静注は施行できなかった. CT灌流画像で左大脳半球の CBF の低下を認めたものの,CBV は保たれており,同部位の MTT, TTP, DLYは上昇しており,広範囲に penumbra が残っていると判断し,血栓回収を施行した.ステントリ トリーバーにて TICI 3 の再開通を得て,右麻痺は改善した.

(5)

M, Yoshida K, Mihara B: Prediction of cerebrovascular reserve capacity by computed tomography perfusion using 320-row computed tomography. J Stroke Cerebrovasc Dis 24: 939–945, 2015

7) Takahashi S, Tanizaki Y, Akaji K, Kimura H, Katano T, Suzuki K, Mochizuki Y, Shidoh S, Nakazawa M, Yoshida

glinger M, Ang T, Scroop R, Barber PA, McGuinness B, Wijeratne T, Phan TG, Chong W, Chandra RV, Bladin CF, Badve M, Rice H, de Villiers L, Ma H, Desmond PM, Donnan GA, Davis SM; EXTEND-IA Investigators: Endovascular therapy for ischemic stroke with perfusion-imaging selection. N Engl J Med 372: 1009–1018, 2015

Abstract

Analyses of cerebral blood flow of stroke patients with 320-row CT

Satoshi Takahashi

Department of Neurosurgery, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan

We do clinical research on cerebral blood flow of patients with miscellaneous cerebrovascular

diseases to know “What kind of surgical intervention is beneficial to which subgroup of patients”. In this

context, for example, in patients with acute major cerebral artery occlusion, we want to identify patients’

subgroup who derive benefit from mechanical thrombectomy besides intravenous infusion of alteplase.

And in patients with chronic cerebral artery occlusion, we want to identify patients subgroup who derive

a benefit from EC-IC bypass surgery. In the report, we summarized our data of CT perfusion study on

patients with cerebrovascular diseases.

参照

関連したドキュメント

Yoshida 610-618, hemorrhage arterial chronic angiographic subarachnoid Wilkins Wilkins, Congress Cerebral 266-26918 spasm ed: inWilson prolonged Neurosurgeons: byArterial wall.. of

Electron micrograph of the middle cerebral artery, show ing dissolution of perinuclear myofilaments M in the degenerating smooth-muscle cell... Electron micrograph of the

(質問者 1) 同じく視覚の問題ですけど我々は脳の約 3 分の 1

J CerebBloodFlow Metab 2: 321-335, 1982 Lewis HP, McLaurin RL: Regional cerebral blood flow in in creased intracranial pressure produced by increased cerebrospinal fluid

Methods: IgG and IgM anti-cardiolipin antibodies (aCL), IgG anti-cardiolipin-β 2 glycoprotein I complex antibody (aCL/β 2 GPI), and IgG anti-phosphatidylserine-prothrombin complex

り最:近欧米殊にアメリカを二心として発達した

前項では脳梗塞の治療適応について学びましたが,本項では脳梗塞の初診時投薬治療に

の改善に加え,歩行効率にも大きな改善が見られた。脳