グ リ ム の 〈 動 物 聟 〉 の 分 類
― 日 本 昔 話 と の 分 類 上 の 比 較 ―
Die Typen der "Tierbrautigamsmarchen"
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―im typologischen Vergleich mit den Japanischen Marchen―
く日次) は じめに 1 ヨー ロッパ と日本の く動物聾)のちがい 1 「美 女 と野獣」型 2 「蛇聾 入」型 ロ ヨー ロッパにおけ る く動物聾)の分類 と対応 す るグ リムの く動物聾) l ポル テ/ ポ リーフカに よる分類 2 7-ル ネ/ トム ソンに よる分類
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グ リムの く動物聾)の特徴Ⅳ
日本昔 話分短 との比較 ま とめは じめに
動物 と人間 との結婚 とい うモチー フを含む メル ヒェソ(音詩 は異類婚姻雷 と呼ばれ世界中に見 られ るが、そのなかで も男性が動物 の姿を して人間の 女性 と婚姻関係を結ぶ く動物聾〉(Tierbrb:utigam) の話 は ヨー ロッパでは特 に 「美女 と野獣」の話 と して よ く知 られている。 L.レ- リッヒ(LutzR'dhrich)は ヨー ロッパの く動物聾) の話の特散 を 「動物-の変身 と結婚に ょる救房j'とい う点に見ている。 これに対 して 日本の く動物聾)の話は例 えは全 国に見 られ る 「蛇聾入」 では、蛇はあ くまで動物 の ままであ って、結婚 は成立せず、殺 され るか、 去 ってい くとい う不幸 な結末に終わ る。 この よ うな ヨーロッパ と日本の く動物聾)の話 の展開 の違 いは話型に よる分類上 の区別や対応関 係 に も影響 を与 えてい る。 この小論 では、 ヨー ロッパのメルヒェンを代表す小
高
康 正
Yasumasa KOTAKA
る 『グ リム童話剰 (
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以下、KHM と略す )の中の く動物聾)の話を取 り出 し、その特徴を探 りなが ら、 ヨーロッパ と日本の話の分類上の問題 につい て考 えてみたい。1
ヨー ロ ッパ と 日本 の 〈動 物聾 ) の ち が い 1. 「美女 と野獣」(BeautyandtbeBeast)型よ く知 られてい る 「美女 と野獣」型の話 は大 体次の よ うな展開を してい る。あ る商人が財産 を失 う。その財産を もと通 りにす るために航海 に出 る。商人は三人の娘に向か って望み のみや げをいわせ る。姉二 人は高価な品物の名前 をい うが、末娘 はバ ラの花が欲 しい とい う。 商人は 取引に失敗 し家路につ く途 中、不思議 な宮殿 の 前 を通 りがか り、その庭 にバ ラの花が咲 いてい るのを見つけ る。 バ ラの花を とろ うとして宮殿 の主 の野獣 に見 とがめ られ る。野獣 は許 してや る代わ りに娘 の一人 を連れて来 るよ うに言 う。 家 に帰 り三人の娘に この話をす るが、姉二人は 拒絶 し、末娘が野獣 の もとに行 くと申 し出 るo 娘 は野獣 と暮 らす うち、だんだん と野獣 を愛す る ようにな る。野獣 は夜の間は人間の姿 に変わ る。 ある日、娘の父が病気であることを知 り、 娘 は一週間だけ家に帰 ることをゆ るされ るo し か し野獣 との約束の 日限を守 らなか ったため、 野獣は死にかけ る。娘は魔法により急いで宮殿 に 帰 り、息 も絶えだえの夫の野獣を見つけ る。娘 の 心か らの涙 と愛の誓いに よって、今まで野獣にか けられていた呪いが角財 、野獣は美 しい王子に戻る'02) この 「美女 と野獣」型 の話は アール ネ/ トム
(3) ソソの『昔話の話型』の国際的な分類では、425C 番に入れ られている(今後 この分頓に よる番号 はAT425Cの ように表す)0 また、AT425aとして、 「怪物 (動物)の花 聾」 と呼ばれ るグル ープで、別名、 「アモール とブ シケ-」(Amorand Psyche,Cupid and psyche)の話があ る。 この標題 は西暦二世紀頃 の ローマのアプ レイ ウス(Apuleius)の 『変身』 (Metamorphosen)の中の話に由来 してい るoこ の古典の形が現在 ヨーロッパで語 られてい る話 の もとであ るか ど うかは明 らかではないが、基 本的な図式は変わ りがない。 それは 「娘 と神秘 的な存在 との結婚が テーマにな ってい る。 しか しその結婚は娘が タブーを破 ることに よ って破 綻 し、夫 は姿 を消す.娘は夫を探 しに出かけ、 様 々な困難にあい、最後には再 び夫を 見つけ出 す
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」 とい うものであ る。 2. 「蛇管入」型 日本昔話 に見 られ る く動物聾)は 「蛇 聾入」
や 「猿等入」 と呼ばれ る話が多い。「美女 と野 獣」型 の話 と発端が比較的似てい る 「蛇聾入」 (水乞型)を取 り上げてみ ると、次の よ うな話 の展開にな ってい る(05) (1) 田が干 いてい るので、水をかけて くれた者 に三人娘の一人を嫁にや ると父親が独 り言す る。 翌 日、水がかか ってい る。 (2) 父が娘 たちに水 の主に嫁に行 って くれ と相 談す る。姉二人は断 るが末娘が承諾す る。 (3) 蛇 が若者 にな って嫁迎えに来 る。 (4) 末娘は瓢笠 と針千本 とを も って若者 につい て い く。 (5Ⅰ 若者は娘 を淵に連れてい く。娘 は瓢箪を沈 めた ら壕に行 くとい って淵 に投ず る。 若者 は ・蛇にな って瓢箪を沈め よ うとす る。 その間に 娘は針 を投ず る。 (6) 蛇 は鉄 の毒 で死ぬ。 (7) 娘 は家に帰 る。 話の発端 は父親があ る困難 な状況 におかれ、 動物に助けて もら う。 そのかわ りに娘を嫁にや ると約束をす る。そ して動物が人間に姿 を変 え て迎 えに来 る。 ここですでに ヨーロッパの く動 物聾) と違 って、人間が動物に変身す るのでは な く、逆 に動物が人間に化けてい る。結 末は娘 が夫 とな る動物に難問を出 し、死 に至 らしめ る。 結局、人 と動物 との結婚は成立 しない。 世界に分布す る人 と動物 との異類婚姻雷を比 較 して 、 小沢 俊 夫 は 大 き く三 つ の タイ プに 分 け て い る。 つ ま り、 エ ス キ モ ー、 パ プ ア ・ ニューギ ニアな どの 自然民族 では、 「人間 と動 物 との間の変身 は 自然 の ことと してお き、人間 と動物 との結婚 も、異類婿 として よ りむ しろ同 類婿の如 くにお こなわれてい る」。 また、 ヨー ロッパを中心 としたキ リス ト教民族 では、 「変 身は魔術 に よってのみ可能 であ ると考え られて お り、人間 と動物 との結婚 と思われ るの も、 じ つは、人間 であ りなが ら魔法に よって動物 の姿 を強い られていた ものが、人間の愛情に よ って 魔法を解かれ、元の人間に戻 ってか ら人間 と結 婚 してい る」。それ に対 して、 日本の場合は、 自然民族 と近い ところにあ り、動物 その もの と 人間 との婚姻が語 られてい るが、 しか し、動物 -の拒否 とい う日常的な感覚が入 りこんで きて お り、独特 な形を作 ってい る、 とい う(6.) 小沢は異類婚姻雷 の物語性の中心 に人間 と動 物 との関係の在 り方 を見、各民族 に伝わ る話を 分析 して、それぞれ の 「動物観 -人間観」の違 いを取 り出し
蔦
この よ うに、同 じ く動物聾)をテーマに した 話であ って も、 ヨー ロッパに広 く伝 わ る話 と日 本のそれ とを比べ ると、その違い には当然これ ら の話を伝承 して きた人 々 (民族) の様 々な文化 的背景の違 い も考慮 しなければな らない。 しか しそれ と同時に、 メルヒェン (昔話) とい う完結 した形式の共通性 とそ こにあ らわれ るモチーフ やその展開の仕方が どの ように対応 し、また違い を作 ってい るかを考 え る必要が ある○Ⅱ
ヨー ロ ッパ に お け る く動 物 等 〉の分 類 と対 応 す るグ リム の く動 物 聾 〉 グ リム兄弟はKHMを編集す るにあた り今 日行 なわれてい るよ うな分類の方法を とってはいない。 1812年の初版 (第-巻) には86話、続 く1815年 の第二巻には70話の話が取 り上げ られ た。その後、 話の数は版を改め るご とに少 しずつ増 えていき、 1857年 の最終版 (第7版) では、全部で昔話 (メ ルヒェソ) が200話 と、あ と10話の 「子供の聖者伝説」が加わ った。 グ リム兄弟が KHMに よって昔 話研究の基礎を築 いた と言われ るよ うに、 この メ ル ヒェソ集はそれ までの ように専 ら 「文学」的関心 か ら作 られた ものではな く、 ゲルマ ニス トであ っ た グ リム兄弟の 「フ ォー クロア」的関心に よって 作 り出 された。 それゆ え、初版 の各巻末 には、そ れぞれ の話の類誌や関連す るモ チーフについての 注釈が付け られていた。 この注釈はその後再版 を 機 に本文 とは切 り離 され、独立 した注釈集 として 1822年 に第三巻 として 出 されている。 その中で、 グ リム兄弟 自身 は 〈動物聾) とい う 言葉 は用 いてはいないが、 KHM 108の注釈 の中 では、 KHM 144の 「基藍馬 の子」や ス トラバ p-ラの 「疎 の王子」を挙 げ、 「これ らのメルヒェンが 88番や、 127番 な ど と同 じ一 連 q)親 近性 の あ る 話であ り、別の少 し近い もの もそ こにつなが る」 と考えて い長8.'また KHM88の注釈においては、 い くつかの類話 と共に ボーモ ソ夫人の 「美女 と野 獣」や 、 アプ レイ ウスの 「アモール とブシケ-」
(
9) に も言及 してい る。
1. ポル テ/ポ リーフカに よる分類 グ リムの注釈集 を もとに グ リム以後 の類話を含 め、膨 大 なメルヒェソ注釈集 としたのがJ.
ボルテ とG.
ポ リーフカの 『グ リム童話注釈集』(
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以下、ボル テ/ ポ リーフカ と省略)であ る。 ボルテ/ ポ リーフカは KHM88「歌 って跳ね る ひば り」 の注釈 の中でい くつかの玩話を挙げた後 「これ らの話 は 『鉄 の ス トーブ
』(127番 )や 『- ソス針鼠坊や』 (88番) 、 『森 の老婆』 (123 香) 『塩 馬の子』 (144番) お よび 『蛙の王様』 (1番) などと共に 〈動物 聾) (Tierbr'dutigam) (10) の タイプに属す る」 と指摘 してい る。そ して この タイ プの話のモチーフを取 り出 し、その展開を次 の よ うに示 している。 Al辛抱 のない両親の軽率な願 いに よって動物の 子が生 まれ るQ (108番 の よ うに) A2娘が父親の約束に よ って、あ るいは A3 本人 の約束に よ って獣 の ところにや られ る。 A4娘 と父親は、小人、熊、狼、随馬、蛇、陳、 針 鼠、蛙、小鳥、木 などの 魔法を、キスあ る いは涙に よって解いてや る、 ときには B2 獣 の皮を焼 くことに よって B3 首をはね ることに よ って、魔法を 解 く。 C しか し、獣の皮 を早 く焼 いたために、あ るい は、夫の秘密を姉妹に漏 らさないよ うに とい った禁止を破 ったために、娘 は夫を失 う。 D 娘 は鉄 の靴 を履 き、困難 な旅 を続け ることに よ って、あるいは、 D2 星の ところや D3 風の ところで行 き先 を尋ねた り、 Dl 下女 として働いた り、 D5 しつ こい求婚者を欺 いた りして E 三 つの高価 な品物 と交換 に、新 しい花嫁か ら、 消えた夫の もとで三晩す ごす ことが で き、再 び夫の愛を生得す る。 ボル テ/ ポ リーフカは これ らのモチー フの組み 合わせに従 って く動物蟹)を四つの グル ープに分 け、 KHM88を含 め、先に掲 げた 六話の (動物聾) の話をそれぞれ の属す るグル ープに入れ ている。 第- グル ープは、だいたいA,B
群のモチーフ だけで成 り立 ち、CDEの展開が欠けてい る。魔 法 か らの救済が、皮 を脱 ぐ、焼 く、首をはね る、 魔 女 をや っつけ ることに よ って行 なわれ る。KHM 1,108,123,144が この グル ー プに入れ られてい る。 第二 グノレープ も同様にCDEが欠けてい る。救 済 は第- グループとちが って醜 い獣 をだ んだん と 愛す ることに よ って行 なわれ る。 それゆえ このグ ル ープは 「美女 と野獣」型 ともよはれ る。 KHM 88は ここに属す る。 第三 グループは後半のCDE、つまり夫の失院 と 娘の試練が加わ る。 これは 「アモールとブシケ-
」型の 話となり、KHMでは 127番が ここに属 している。 第四の グル ープは、 ポル テ/ ポ リーフカ も言 う よ うに、魔 法 にかけ られ た動物 の救 靖 が 中心 的 テーマにはな っていない。2・
アールネ/ トム ソt/に よる分析 ボル テ/ ポ リーフカの く動物聾〉 のモチ ーフ構 造 にい くつかの小 さなモチーフを付け加 えて、 さ らに四つの グル ープの話を個 々の話型に分類 した のが、 7-ルネ/ トム ソンであ る。その 『昔話の 話型』 の分類では、 425番か ら 449番 までの話型 が 「超 自然 または魔法にかけ られ た夫」 の グル ー プ とな ってお り、 グ リムの話 も八話 が次 の よ うな 話型に取 り上げ られてい るg
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AT 425a 「アモール とブシケ
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如 127「鉄 のス トーブ」 AT 425C 「美女 と野獣」
KHM 88「歌 って跳ね るひば り」
AT 426 KHM 161「雪 白と紅 バ ラ」
AT 430 KHM 144「駿馬 の子」
AT 431 KHM 169「森 の小屋」
AT 440 KHM】
「蛙 の王様」 AT 441 KHM IO8「- ソス針鼠坊や」 AT 442 KHM 123 「森の 老婆」 アール ネ/ トムソソの分類 で 「怪物 (動物)撃」
の標題が付け られてい るのは425番 の話型だけで あ るが、 この425番は 「アモ ール とブシケー」 秤 (サイ クル) をな してお り、 さらにA∼ Pに下 位区分 されてい る。 いわば この型が く動物聾)の 原形 とみ な されているようであ る。 それは425番 のモチ ーフ構造が先に示 したポルテ/ ポ リーフカ の (動物聾)の基本図式 とほ とん ど変わ りがな く、 その基太的 なモチーフ構造 を基準 に して他の話型 との区別 を行 ってい ることか らも伺われ る。つ ま り、ポルテ/ ポ リーフカのい う第二 グル ープが 425C番 であ り、第三 グル ープが425a番 とな り、第 一 グル ーブに一括 されていた ものが、個 々の話型 に区分 され たのであ る。Ⅲ
K HMに お け る く動 物 聾 〉の 特 徴 AT分類 で425番 か ら449番 まで の 「超 自然 または魔法にかけ られ た夫」q:グ ル ー プ に 対 応 す るKHMの八話の話を取 り上 げ、個 々の話のモ チ ーフ展開 を考 えてみ よう。取 り上げ る順番は、 KHMの番 号順 とす る。 KHMl
「蛙 の王様、 または鉄 の-イ ソ リヒ」
(DerFroschkonigoderdereiserneHeinn'ch)
(1)王に姫 がお り、森 の泉の中に金 の ま りを落 と す。 (2)蛙が現われ、友達になることを条件 に ま りを 拾 って くれ る。 (3)蛙は約束 の履行を求めて、玄 関、食卓、寝室 - とや って来 る。 (4) しか し、最後に姫は蛙を壁に投 げつけ ると王 子 に変わ り、二人は結はれ る。 (5)翌朝、王子 の家来の-イ ソ リヒが迎 えに来 る。 AT 440に よるモチ ーフ構造 の骨組みだけを挙げ ると次の よ うにな ってい るくど 1 蛙 と結婚の約束
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蛙の訪 問 m 魔法が解け るⅣ
鉄の- ソ リー 基本構造 はKHMlの もの と同 じである。 発端 は額話に よ って様 々にあ りえ るが、 たいていは娘 が何 らかの困難な状況におかれ る。 そ こ-援助者 が現われ、結婚の約束を条件 に助け て もら う。 そ の後 、約束の履行を求めて くる。 そ の履行が娘に と って試練 とな り、それに耐 え るこ とに よ って男 にかけ られ ていた魔法が解かれ る。 しか し、 グ リ ムの 「蛙 の王様」の魔法を解 く手段 は珍 しい。た いていは娘が試練 に耐え るこ とや与 えられた課題 を遂行す ることに よって初めて魔法 が解かれ るの だが、 ここでは、蛙 を壁 にぶ つけ る とい う強 い拒 否の態度に よって魔法が解かれてい る。 ヨーロッ パの 〈動物聾〉 に本質的な特徴であ る、 「醜 さと 美 しきとい うアンビヴァレソツ」 を もつ 「救済の愛」 .'1;D(Er
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のモチーフは この点で、 グ 1) ムの話 には特異な仕方で現われてい るといえ る。 グ リムの話の最後には、家臣の- イ ソ リヒが結 婚 した二人を迎 えに来て、王子 の城 に帰 る途中、 - イ ソ リヒの胸 に巻 いた鉄 の輪 が ほ じけ るとい う話 が つ い て い る。 これ も グ リム独 特 の よ うであ るが、 ここでは本筋に付け られたエ ピソー ドとして考 えてお くことに留め る。 KHM88「歌 って跳ね るひば り」 (Dassingendes
pn'ngende L'dwenecke71Chen) (1)父親が旅に出 る。三人の娘には しい土 産をき く。姉二人は高価 な ものを願 う。 末娘は「歌 って 跳ね るひば り」がほ しい とい う。 (2)ひば りを手に入れ よ うとして獅子に命を脅か され る。命 とひ きかえに、家に帰 って最初に出 会 った ものを与 え る約束をす る。 (3)家に帰 って最初に出会 った ものは、末娘だ った。末娘 は獅子の ところ-行き、暮らす。獅 子は 夜は人間 の姿に戻 る。 (4) 姉の婚礼に出るため娘は夫の獅子を連れて家 に帰 る。 しか し、光 をあててはな らない とい う タブーを破 ったため夫の獅子 は こんどは鳩にな って去 る。 (5) 娘は夫 を追 って旅に出る。七年 たち、鳩 は王 子の姿 に戻 るが、魔法使 いの王女 に捕われ る。 (6) 娘 は太虚、月、風 の力 を借 りて、偽の嫁か ら 三晩を買 い王子を救 い出す。 『グリム志 歪鬼 の中では これだけがAT 425C に分類 され てい る。比較 してみ ると、 前半 は 「美 女 と野獣」型の展開 と変わ らないが タブーを破 ったために、夫が失綜す る後半 は 「美女 と野獣」 型 には 見当たらないことがわかる。そのためKHM 88「歌 って跳ね るひば り」をAT 425Cではな く、 AT 425aに分穎す る考 え方 もあ a(1.D KHM108「- ソス針鼠坊や」(IIans〝好inZgel) (1)百姓 とその女房に子供がいない。 どんな子で もいい と願 うと、針鼠の子供が生 まれ る。 (2) 町に出かけた父親 に笛 を買 って もらい、それ を もって家を出てい く。 (3)森 で道 に迷 った王を助け、そのかわ りに城に 帰 って最初に出会 った ものを もら う約束をす る。 (これが二度 あ る) (4) 針鼠は約束 どお り、最初に出会 った もの-王 の娘を もらいに行 く。 (5)最初 の王 は応 じないので仕返 しをす る。 (6)二人 目の玉 の娘 と婚礼をす ませ、獣皮を脱 ぎ、 それ を燃す と、針 鼠は立 派 な若者 になる。 (7) 両親 を連れて きて一緒に幸せに暮 らす。 この話の発端は子供のいない夫婦 に動物の子が 生 まれ るとい う 「異常誕生」の一 つである。父親 に土産 を頼むが本来の筋の展開には関与 していな い。その後 の展開 は 「美女と野獣」の展開 と似 てい る。 ただ し、主人公は逆 で、 ここでは男性の側に 立 って語 られてい る。 KHM 123 「森 の老婆」 (
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Wald) (1)主人が強盗に襲われ、奉公の娘 が森に取 り残 され る。 (2) 小鳥が娘に食べ もの、寝床、着物を与 えて助 け て くれ る。 (3)そのお礼に、小鳥の願 いを きき森 の家のお婆 さんの手か ら指輪 を取 り戻す。 (4) す る と鳥、その後 は木に されていた王子の魔 法が解け人間の姿に戻 る。 (5) 家来 の魔法 も解け、二 人 は結婚 して幸せ に暮 らす。 これはKHM69の 「ヨ リソデ とヨ リンゲル」
(Jon'ndeandJon'ngel)の話 と よ く似 て い るo こ ち ら も森 の中には老婆 の姿を した魔女 が住 んでお り、人間 を捕 まえて動物に変 えて しま う。 ヨ リン デ と ヨ リンゲルは許婚老 同士 で、娘の ヨ リンデの 方が魔法にかけ られ、小鳥に変 え られ る。 その点 で く動物聾)のタイプ と異な る。 KHM 127 「鉄 のス トーブ」(DerEisenofen ) (1)王子が魔法使 いに魔法を かけ られ、森 のス トーブの中に入れ られ る。 (2) 森の中で道に迷 った王女は、ス トーブの中か ら王子 を助け出す約束を して帰 り道 を教 えて も ら う。 r3) 王 と娘 は二度別の娘 をス トーブの もとにや る が、王子 を 救い出すことができない。 (4) 仕方 な く三度 目は王女 が行 き、 ス トーブに穴 を 開け、王子 を救 い出 し、結婚の約束 をす る。 (5) 王女 は父親に会 いに行 くが、別れ の言葉 を三 言以上言 ってほな らない とい うタブーを破 り、 王子は姿を消す。 (6) 王女 は王子を探 しに旅に出 る。 (7) 三晩、矢尻 した婚約者の もとで過 ご し、新 し い花嫁か ら夫 を取 り戻す。 この話では これ までの もの とは違 って、夫にな る男性は動物の姿 を してい るのではな く、鉄 のス トーブの中に閉 じ込め られてい る。 (動物聾)に おいては、帆.
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)も言 うよ うに、た しかに王子が獣の姿を してい ることには 象徴性が ある。
「獣 の王子は、獣 として出て こな くてはな らない。 次に、暗やみの中で獣 の皮 を脱 ぐこ とが許 され る。そ して最後に、 日の光 の中で 人間 の姿 となることが で きる。(11 そのために この 127番を 〈動物聾)にはふ さわ しくない とい う考 え方 もあ るよ うだが、魔法に よ って閉 じ込め られ る 「獣の皮」 も、 ここでの 「ス トーブ」 のなか も共 に暗闇のなかであ り、 グ リム兄弟 も指摘 してい るよ うに、 まさし く 「地
鉄」(
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e,Unterwelt.) を意味 してい るとみ ることがで き去100 この夫が動物では ない点を別にすれば、筋の展 開は まさに 「アモ ール とブシケ-
」型 であ り、す べての要素を含 んでい る。 KHM144「駿馬の子」(
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Ekelein ) (1)王様 とお妃には子 供がいなか った。 どんな子 供で もいいか らと願 うと駿馬の子が生 まれ る。 (2) 駿馬 の子は ラウテ (楽器) を上手 に弾 くこと がで き、それを も って旅に出 る。 (3) あ る国に美 しい姫 がいたので、その城 の前で ラウテを弾 き、中- 入れて もら う。 (4) 王様 に何 で も欲 しい ものをや ると言われ、姫 を もらい、婚礼を挙 げる。その夜、駿馬の皮を 脱 ぎ人間の姿にな る。 (5) 王様が脱 ぎ捨て られた蛇馬 の皮を燃す と魔法 が解けて美 しい若者 になる。 (6) その後、 国を譲 り受けて立派な暮 らしをす る。 この話は 口承に よる ものではな く、 ヤー コプ ・ グ リムが14世紀の ラテ ン語 の詩句か ら取 って きた ものを もとに してい る。 グ リムの注釈に も触れ ら れてい るよ うに、 108番の 「- ソス針鼠坊や」や 「アモ ール とブシケー」 との関連 で彼 らのメルヒェ ヨ‖玩 ソ集に取 り入れ られた のであろ う。 話の発端は108番 と同様に子 のない夫婦に動物 の子が生 まれ ることか ら始 まる。 しか しこの話に は、救助、約東、試練 とい った 〈動物聾)のタイ プの話に特徴的な一連 のモチ ーフがすべて欠けて い る。主人公 の駿馬 は い とも簡単に姫 と結婚を し、 女性 の側 もいか なる試 練 もな く、 また館馬 の子へ の強い愛 も拒否 も感 じさせない。 KHM 161「雪 白 とバ ラ紅」 (schneewehschen undRosenrot
)
(1) 森 の中で 「雪 白」 と 「バ ラ紅」とい う二人の 姉妹が母親に育て られていた。 (2) 冬 の問毎晩、熊 が暖を取 りに小屋 に入 って き て、朝にな ると帰 ってい った。 (3) 姉妹は意地悪な小 人を三度助けてや る。 (4) 熊が小人を倒す と、魔法が解け、熊皮が脱げ 落 ちて、王子に変 わ る。 (5) 雪 白と王子 が結婚 し、母親 も一緒 に幸せに暮 らす。 魔法にかけ られて熊 の姿 を して いた王子が、悪 い小人を殺す ことに よって魔法が解け人間の姿 に 戻 り、娘 と結婚す るとい う く動物聾)の最低限の 展開は持 ってい る。 しか し全体的にそれぞれのモ チーフは本来の機能を弱め られて い る。意地悪い 小人を三度助け るモチ ーフも娘 の試練 にはならず、 憐偶や親切心 のあらわれ とな って い る。 魔法が解 け るの も、熊が娘達-のお礼 として小人を殺 した 結果であ り、 ここで も 「救済の愛」 のモチーフと はつなが らない。 このメルヒェソは、K.シ ュタール(Karoline Stahl)の 『寓話、メルヒェソお よび子供達のための おはな し集』の中の話をW.
グ リムが手を加えて 語 り直 した ものであ a(1.9それゆえ、おそ らくもと の話に見られ るキ リス ト教的信仰 の信心深 さや隣人 愛 の影響が この話全体に及ぼ されていると思われ る、 KHM169 「森 の小屋」(
Da
sWaldhaus) (1) 樵夫婦 と娘三人が森のそばに住 んでいた。 (2)森 で仕事を してい る父親の ところ-娘達が昼 食を届け る。 (3) 娘 たちはそれぞれ道に迷 い、小屋 に泊めて も ら う。 そ こには老人 と家畜が住 んでいる。 (4) 姉二人は 自分 と老人だけ で食べて寝 る。家蓄 には何 も与 えなか ったので、穴蔵-落 とされ る。 末 の妹は家蓄に も優 しくす る。 (5) それに よって、森 の中電にかけ られていた魔 法が解け、老 人は王子に、家苔 は家来に変わ る。 (6) 末娘は王子 と結婚式 を挙 げ、埴二 人は下女に なる。 ここで も127番 と同様に、 喝法 にかけ られた王 子 は動物でな く、 「氷 の ような白髪の老人」(ein alter,eisgrauerMann)とな って い る。 確か に 娘 に よ って魔法が喝かれ、娘 と王子は結婚す るの だが、KHM 161「雪 白とバ ラ約二」の よ うに、「救 済 の愛」のモチ ーフとのかかわ りはな く、それ よ りも、娘 の知恵が試 され る とい うモチ ーフに力点 があ る。 その意味で、 この話はAT 480番に分類 されてい るKHM24「ホ レおば さん」(FrauHolle) とつなが る面 も多 く、その話 の兼高か、 「アモー ル とブシケー」型の特殊な形かほ聞 き手の期待や話し手 の意図に よって どち らともとれ るほ どであ るo アールネ/ トム ソンがAT 425番 として示 し た「アモールとブシケー」型あるいは 「美女 と野獣 」型 の 話 を 〈動 物聾 ) の ヨー ロ ッパ型 の典型 と考 え る な らは、 AT 425か ら442番 までの話型に収 り上 げ られ た八話の グ リムの話 もおお よそそ うい った ヨーロッパ的特徴を持 ってい ることがわか る。 し か し、 そのなかで も、 KHM88やKHM 127の よ うに、物語の発端か ら結末 までの基本的 なモチ ー フ構造 を備えてい るものか ら、 KHM 161やKH M 169の よ うに、一応魔法にかけ られた王子がお り、娘 に よって魔法を解かれ、二人 は結婚す ると い うモチ ーフは残 しなが らも内容的 にはかな りの 変容を うけてい るものまで見 られ る。 そ こで この八話の話の発 端 と結 末 の 部分 か ら く動物聾)に とって特徴的なモチ ーフを収 り上げ 整理 してみ よ う。 (1)男性はなぜ動物の姿 を してい るか これは大 き く分けて二 つの グル ープに分け ら れ る。一 つは魔法に よるもの。 この場合魔法を かけたのは 「魔女」 (eineHexe)tKHM l,123, 127,169)、 「魔法使 い」 (Zauberer)tKHM 88)あ るいは 「小人」(zwerg)lKHM161)で ある。 しか しなぜ魔法にかけ られたかはメルヒェ ソでは言われない。 も う一 つは異常誕生に よ っ て生 まれて きた もの fKHM IO8,1441 0 この二つのグル ープの違 いは物語のその後 の 展 開 に も大 きな違 いを与 えてい る。 それ は話 の全 体 の主人公を魔法にかけ られ た王子 と見る か、魔法を解し、てや る娘 の側 に見 るかに もつな が って くる。同時 に、結 末 に お い て語 られ る一 「幸福 なる結婚」は誰に と っての ものか ともか かわ って くる。 (2) どの ように動物 と娘 との婚約がな され るか。 「美女 と野獣」では父親が獣 に娘をや る約束 をす る。 この形を とってい るのは、 KHM 188、 108である。 また娘 自身が結婚を約束す る場合 もあ るtKHM 1,123,1271が、本人の意志 と い うよ りは、 もっとも大事 な もの、命あるいは それ に次 ぐもの と引 き換 えに、動物/怪物 との 婚約が成立 している。そ こには娘 の犠牲 -いけ にえ とい う観念 も含 まれてい ると考 え られ る。 KHM 127「鉄のス トーブ」では、約束 を破 る とその報復 として 「国 じゅ う何 で もば らば らに 壊れて、石一つ重な ってない よ うにす る」 と脅 か され て、いわば国を救 うために娘が犠牲 とな って怪物 (ス トーブ) の ところへ行 くことにな る。 しか し、婚 約が成 立 して い ない場合 もあ る tKHM 123,161.1691。この場合は、最後には 結 婚す ると して も く動物聾)のモチ ー フととる よ りも、メルヒェンの一般的な結末 としての 「幸 福 なる結嬉」 とい う意味合いが強い。
(
3
) 結婚 と魔法が解け ることとの関係 KHM88「歌 ってはね るひば り」の話では、娘 は父親 の した約束に したが って獅子の ところ-行 く。
「娘がつ くと、親切にむかえ られ、お城 に あんない され ました。夜になると、獅 子は美 しい男の人 にな り、婚礼がはなやかに行 なわれ ま した。二人はい っし ょに楽 しくくらし、夜起 きていて、昼間眠 りま した。」 しか しこの時点 での結婚は 「幸福 な結婚」にはな って いない。 夫 は夜 しか姿 を見せず、昼間は獣の ままであ る。 この結婚生活 は一時 的な もので、娘が タブーを 破 ることに よって もろ くも崩れ、夫 は どこか-矢尻 して しま う。 そ して物語 の結末で二人は再 び結ばれて、 よ うや く く- ッピーエ ン ド〉 とな る。それゆえ、 この 場 合 、 まず 娘 と動 物 との 「不幸 な結婚」が行 なわれ ることが く動物聾) に とっては重要 なことであ り、一般に物語の結 末 におかれ る く- ッピーエ ン ド)_AL象徴 とな る 主人公 の結婚 とは異 な るので玄 る。 iiZ! 「蛇聾入」な ど日本の く動物聾)では この始 め の、人 と動物 との結婚が成立せず 「不幸な結 婚」に終 ることがおおいので、 さらに娘が旅に 出て、長者の息子 と結婚 をす るとい う 「姥皮」 の話が付け加 え られ る場合 もおおい。 これは、 C(1 「幸福 な結末に導 くための語 り手の意 図」 とも 言われ るが、 く動物聾)の話の主眼が どこにあ るかを示唆 している。つ ま り、主人公 のおかれ た不幸 な状況を幸福 な結末に転ず るこ とが どの よ うに可能かを人 と動物 との結婚 とい うテーマ に語 らせているのであろ う。 KHM 127「鉄のス トーブ」で も父親 の した 約束に したが って、娘 は 「ス トーブ」 の ところに行 くが、 ここでは婚礼が行われ るのではな く、 娘が ナイ フで鉄の ス トーブに穴を開けて中の王子 を助け 出 さなければな らない。 この点、魔法にか け られた王子が動物の姿を してい るケースとは異 な るが、娘 のおかれた不幸 な状況に変わ りはない。 その後 の展開は 「アモ ール とブシケー」型 と同 じ であ る。 結婚が結末 に しか現われない ケース もあ る。 KHM 123、161、169の話では、先に も触れた よ う に、男性が動物の姿を してい る問には婚約が行わ れず、魔法が解けて人間の姿に戻 ってか ら結婚 し、 それ と同時 に物語 も終わ る。 このように結婚 と魔法が解かれ ることとの関係もい くつか考 え らえる。いったん結婚はするが、魔法が 解かれるのは物語の結末になるものがKHM88であ り、 それ に近 いのがKHM 127であ った。 KHM 123、 161、169では魔法が解かれ、人間の姿 に戻 ってか ら結婚が行われた。 これ らの場合は、魔法 も娘の 自覚的 な愛や試練 に よるよ りも、動物の願 いを聞 いて、あ る課題を果たす とい う形が多い。 そ して、 も う一つ、最後に結婚に よ って魔法を 解かれ るKHM I08や144の場合 もあ る。 KHM 108では、 KHM88と同様に、父親 が娘 を与え る とい う形で、針鼠 と娘 との結婚が行われ、それに よって始めて人間の姿に変わ ることがで きる。 K HM 144もほぼ同 じで、 この両者に共通 している のは、娘 の側 の行為についてはほ とん ど何 も触れ ていない点であ るo この ことは、 これ ら二つの話 が共 に異常誕生 とい う発端を持つ ことと関係があ るよ うに思われ る。つ ま り、両親か ら子供が欲 し い と切実に願われ なが ら、生 まれて きた子供は動 物 の姿を していた。両親は驚 き、呪われた子 とし て排除 しよ うとす る。それ で も、 J 駿 馬 の子」 も 「針 鼠の- ソス」 も何 とか成長す る。 そ して物 語 の主人公 として家か ら広い世間へ と出てい く。 その後 の展 開はそれぞれ異 なるが、最後には、 自 分の智恵 と能力に よ ってお姫様 と結婚 し、それに よ って、呪われた動物の姿か ら解放され立派 な人 間にな ることがで きる。 この よ うに 見て くると、 グ リムの く動物聾)杏 大 き く三つの グル ープに分け ることが で きるよ う に思われ る。 一 つは、 KHM88.127の話で、 アールネ/ トム ソ ソがAT 425番に分類 した よ うに、発端か ら結末 に至 るまで ヨーロッパの く動物聾)に と って基本 的な特徴を備えてい る。 また、 KHMlお よび、 KHM 123、161、169の話では、 AT 425番の基本 的なモチ ーフが欠如ない しは変質 してお り、単に 魔法をかけ られた男性 (王子) が、娘に助け られ て魔法が解け、 もとの人間の姿 に戻 り結婚す ると い う話 とな って しま ってい る。 最後 に、 KHM 108や144の話は、他の グル ー プ と異 な って、物語の主人公 は明確に男性の側に あ り、その男性の成長 と成功 の物語 と見 ることが で きる。 その意味 では、 これ らの話 は 日本昔話分 類 で言 うところの 「異常誕生」 または 「成長」の 項 目に入れ られ る話 と して受け取 ることもで きる のではないだろ うか。 lV 日本昔話分類 との比較 周知の よ うに、柳 田国男の昔 話- の関心の根本 には神話 とのつなが りがあ り、それ は 「桃太郎」 に代表 され る く小 さ子)説 話 と呼ばれ る話に向け られていた。「日本の小 さ子説 話が、最初小 さな 動物の形 を もって出現 した英雄 を説 き、 または奇 怪 な る妻問いの成功を中心 に展開 してい るとい う ことは、それが右 申す押入通婿 の言 い伝 えの、 ま だ堅 く信 じられていた時代に始 ま ってい る証拠 と して、我 々 に と ってはか な り大切 な要 点 であ っ た。¢lj そ して柳 田の この ような関心の在 り方はその ま ま日本昔話の分類に も反映 され た
。
『日本昔話名 碁 笥では 「完形昔話」 の中に、(1)誕 生 と奇 私 (2)不思議 な成長、(3)幸福な る婚姻 な どの項 目が設 定 され、それぞれに以下の よ うな話が分類 されて い る。 誕生 と奇瑞 - 「桃太郎」
「力太郎」
「瓜子姫子」 「子育て幽霊」
「一寸 法師」 など 不思議 な成長 -I「蛇息子」「田螺長老
」 「蛙聾入」
な ど 幸福 な る婚姻 - 「天人女房」「鶴女房」「蛇等入」 「蛙等入」な ど 柳 田の分類の考 え方では、 (動物聾)の話は特 に一 つの項 目としては分類 されず、 「誕生」「成 長」「婚姻」の項 目に またが ってい る。 その後、閑散吾 に よ って 『日本昔 話名 菓』の分類を踏 まえつつ、 7-ルネ/ トムソンな どの国際的 な分類 との比較 を考慮 した分類がな された。閑は、 『日本昔話集成』 では 「本格昔話」の中に 「四、 異類婚姻
」
「五、異常誕生」の項 目を置 き、 「異 類婚姻」は さらに「
A
、異類等」 と「
B
、異穎女 房 」に分 け られてい る。次の 『日本昔話大成』に おいて も分損方法 はほ とん ど変わ りはないが、名 称 と位置が少 し変わ り、 「-、婚姻 :異類聾」、 「二、婚姻 :異類女房」
「三、婚姻 :難題聾」、 そ して、 「四、誕生」 とな った。 柳 田の分類 と比べ ると、 「誕生」 と 「成 長」が 一 つに され、 「婚姻」の中に 「異類聾」
「異類女 房 」の項 が新 たに設定 されている。 この よ うな 日本昔話の分類 とヨーロッパ大陸を 中心 と したアールネ/ トム ソンの分類 との対応関 係を作 るのは必ず しも容易 な ことではないが、関 の分類は国際的な比較 を念頭に置 いた ものであ っ た 。 関は 『日本昔話大成』の 「四、誕生」の項 目に 134番 「田螺息子」 (田螺長者 とも呼ばれ る) を、 135番 に 「蛙息子」を分頼 し、後者 の 「蛙息子」 と同 じタイプの話 として、 グ リムのKHM
l
「蛙 の王様」 を挙げてい る。 CllJ 「蛙 息子」の話 とは次の ような ものであ る。 (1) 子供 のない夫婦がか らだに不足があ って もい いか らと神に祈願す る。 (2) 妻 は蛙 の子を生む。 (3) 蛙 は金持 ちの美 しい娘 の ところに通 うが嫌わ れ る。 (4) 娘 の ところに通 う途 中で蛙 は池の中にけ込 ま れて鯉 に飲 まれ る。 (5) 父親 が鯉を釣 り上 げ、蛙が腹か ら出て立派 な 若者 にな る。 (6) 彼 は娘 と結婚す る。 蛙が人間に変わ り、娘 と結婚す るとい う点では グ リムの話 と共通す るモチ ーフではあるが、話の 発端や人間への変身の仕方に違 いが見 られ るO グ リムの方 では、男性が蛙 の姿を していたのは異常 誕生ではな く、魔法に よるものであ り、人間に変 わ る場合 も娘 との約束 とその履行 とし、う前提があ った。つ ま り日本の 「蛙息子」は 「誕生」の項 に 分類 されているよ うに異類婿のモチーフを中心に 見 られ てはいない。 それに対 して、 「田螺息子」 とグ リムのKHM
108「- ソス針 鼠坊や」 との方が、発端か ら結末 に到 る物語の展開 とい う全体性か ら見て対応関係 が強 い ように思われ る。
「田螺息子」の発端 は子 のない夫婦が神に祈願 して、 田螺を拾 って 自分達 の子供にす る。妻 の歴 や親指か ら生 まれ る場合 も あ る。 その後援探 しを して知恵を も って長老 の娘 と結婚す る。最後に人間に変わ ることに よ って幸 せ に暮 らす とい うものであ る.Cの 関 は 「- ンス針 鼠 坊や 」 を取 り上げ、 「前半 はむ しろ 『水 乞型』
『旗 聾入型』 と同一 モチ ーフ で、後半は田螺息子 の後半 と同一であ る」 と話型 の全体的な対応関係の難 しさをほのめか しているが、 全体 としてほ 「我が国の異類婚姻詔を ヨーロッパ の同種 の昔話 と比較す ると、我が国の伝承 はほ と ん ど人間の形態 を取 って婚姻関係を結ぶが、ほ と ん ど人間に よ って両者 の間 で守 らなければな らな い規範が破 られ、破局 に終わ る。異類の姿 に還 っ て去 って行 く。 ヨー ロッパの伝承 はこれ と逆 の形 式 を取 ってい る。 田螺聾は最初動物 として人間の 女性 と結婚す るが、結 婚す ることに よ って人間 の 姿 に還 る。 ヨー ロッパの伝泉 と共通す る例であ る」 と述べていaeo9 むすび 日本昔話分析では、 く動物 聾)の話は、発端 の 誕生 のモチーフと、結末 の結 婚のモチ ーフのいず れ に話全体の力点があ るかに よ って グル ープが異 って いた。それに対 して、 7 -ルネ/ トム ソンら の分 類では、発端 の誕生のモ チ ーフは物語 の発端 の可能 な一つのモチ -フと しかみ なされず、結局 は最後 の結婚のモチ ーフに重点が置かれ てい る。 それはおそらく異常誕生のモチーフの位置づけ の 違 いに よるのであろ う。共 に子供のいない両親 に 願 われて生 まれて くるのだが 、 日本の場 合、神様 に よ って授け られた申 し子 と して大事に育て よ う とす るが、 グ リムに出て くる話 では、神 に よる罰 と して受け取 られていた。 グ リムの 「- ソス針鼠 坊や」の注釈 において も、 「神 に性急 に子供が欲 しい と願 う人 々はメルヒェソにおいて しば しば異常 な誕生 によ って罰せ られ るこ とがあ る。 しか しそ の後 両親が謙虚 になることに よ って人間 に変わ るe) とい うとらえ方がな されてお り、 アール ネ/ トムソソと共 に ヨー ロッパを中心 とす るメルヒェソの分 類 の確立 に寄与 した ポルテ/ ポ リー フカ もこ うい
C
7) う考 え方 を踏襲 していた。
ヨー ロッパのメルヒェソにおけ る、 この よ うな異 常 な誕生 に対す る否定的 な見解が直接 的 に話型 の 分類 に反映 した とは思われ ないが、 日本昔話研究 の始 ま りに柳 田国男の 附 βの組 があ った こ とを考 え る と、 その後 の 日本昔 話の分 類 に与 えた 影響 は大 きい と言わ ざるを得 ない。 だが、現在、 日本の昔話の分 析をほぼ確立 した と見 られ る関は、 『日本昔 話の比較研究』 におい て、 「これ まで 『田螺息子』
『一寸 法師』 な ど発 端 の異常 誕生 のモチ ーフを中心 に研究 されたが、 全体的 に見 るときは、いずれ も主題 は婚姻 にあ る。 この立 場か ら再検討す る必要が あ る.0秒」とす るヨー ロ ッパ的 な考 え方 を示 してい る。 同 じ く動物聾) とい うテーマを もつ昔話であ っ て も、 日本 と ヨー p ッパの分類 を対応 させ ること は難 しい。 どち らか に基準を合わせ るだけでは根 本的 な解決策 にはな らない。 重要 な ことは、 「真¢9) の意 味 の昔 話 は い づ れ も婚 姻 に結 び つ く」 とは いえ、 発端 か ら結末 に到 るモチ ーフの全体性 の中 で婚姻の持 つ意味 を考 え ることであ ろ う。 使用テキス ト'.R'611eke Heinz(Hrsg.)I.Briider Grimm.Kinder - undHausmdrchen. 3 Bde. (Reclam)Stuttgart1980. Fグリム童話全集 』高橋健二訳 小学館 1984年 参照 (1990.4.18受理) 註 1 Lutz Riihrich:Mi'71Chenund l砺71klichkeit,. Wiesbaden1974 92 2 稲田浩二他編 F日本昔話事典 』 弘 文堂 1977年 770-771頁 .F世界の民話 』(南欧編)安達茂之他 訳 ぎ ようせい 1977年 参考3 A.Aarne/ S.Thompson:Thetypesofthe folktale..Helsinki1981,S.143.
4 K.Ranke:Enzyk
l
oZwdiedesMLYyd7enS/ Bd.1,S.463f.,,AmorlmdPsyche". 5 関敬吾 F日本昔話大成 jll 角川喜店 1980年 23貢 6 小沢俊夫 F世界の民話』(中公新書 ) 1979年 187-188頁 7 同上書、189頁 8 Grimms Anmerkungen, in: Rolleke Heinz(Hrsg.):Kinder-1EndHausmdTIChenl gesammelt dlL71C;idie Brl;dT・Grimm. Vbllstb.ndigeAusgabeIalEfderdrittenAuj7age
(1837)Frankfurt1985,S.1051. 9 Ibid,S.1015.
10 J・ Bolte/ G・Polivka:Anmerkungen・,zu denKinder- 1LndHalLSmBrchenderBrilder
Grimm・ Le ipzlg 1913 - 1932,Nachdruck Hildesheim 1963,Bd.2.S.234r.
ll A・Aarne/S.Thompson,a.a.0.,S.140-151. 12 Ibid.,S.149.
13 Lutz R占hrich: Wagees,denFroschZZL KltSSen.(, K61n1987.S.37.
14 WalterScherf:LexikonderZaubermdyIChen.
Stuttgart1982,S.358rr.
15 マックス ・リュティF昔話の解釈 』野村弦訳 福音館書店 1982年 157頁
16 Gn'mmsAnm., Rolleke,a.a.0.,S.1074. 17 IbidりS.1051.
18 Vgl.Bol
t
e/Polivkn,Bd.3,S.259,L.R811eke:,WodosWl-I-nschennochgeholjTenhat", Bonn1985,S.191rr. 19 W.Scherr,a.a.0.,S.423. 20 関 F大成 』2、45貢 21 柳田国男 F桃太郎の誕生 3 (角川 文庫)19831年 41貢 22 F日本昔話名菓』柳田国男監修 日本放送出版協 会編、1954年 23 関 F大成 』11、31頁 24 関 F大成 』11、 31貢 25 関 F大成 』3、 24貢 26 GrimmsAnぞn.,in:R'o'lleke,a,a.0..S.1051・ 27 Bolte/Polivka,Bd.2,S.483. 28 関敬吾 F閑散吾著作集 ・第四巻 』同朋社 136貢 29 同上