臨床に 役立つ雑誌⑩
病 院 図 書 室 18(3):122−125,1998一泌 尿器科 −
「泌尿器科診 療に役立つ 雑誌 」
1。 はじめ に 日常 診療 に追 われる一 泌 尿器 科医 とし て、 数 あ る泌尿 器 科関 連の 雑誌 か らひとつ ず つ 正 確 な評 価を 行 い、 これを 読 者に 伝え る に は私 か 適 当 な人 物 と は思え ない ので 辞退 し たか っ たが 、 結局 引 き受 け るこ とと なっ た。 書く に あ た って 自分 に 納得さ せ たこ とは 、格 好を つ けず 、 自分が 自 分の 領域 の知 識水 準を 保つ た め に最 低限 目を 通して い る、 また は目 を 通す べ きと 考えて い る雑 誌を 紹介 す ると と もに、 こ の 際、最近 の 市中 病 院の医 師が ど のよ う な 経 路で 清報を 入 手 し活用 して い るかを 紹 介 す れ ば十 分で あろ う と考え た。 2。 泌尿器 科一 般 領域 の英 文誌 「 JU 」、我 々泌 尿 器科 医 の 間で こ う 呼 ぶ 「Journal of Urology」 は筆者 も末席 に加 え て い ただい た ア メ リカ泌尿 器科 学 会の 学会 誌 で もあ るが 、 世 界中 から 優れ た泌 尿器 科関 連 の論 文が投 稿 さ れ、一 冊 だけ 選ぶ とし た らす べて の泌 尿 器科医 はこの 雑誌を 選 択す るで あ ろ う。泌 尿 器科関 連 すべて の subspecialty を カバ ーして い る 雑誌で あ る。 泌 尿 器科 医が 医局 や 病院で 抄 読 会を 開 く とき、 ま ずこ の 雑 誌が 選 ばれ る。 筆者 は、 全 領域を カ バ ーす る 英文 誌 では JU以 外 に 「Urology」 と 「Brit− ish Journal of Urology」が 重 要と 考え て い る が 、実際 に は毎 月、 送ら れて く るJU の 目 次 に 目を通 して 幾 つか の abstract を 読み 、 き ぬ か わ つ ね お : 院 長 病 部 京 任 中 主 険 科 保 器 会 尿 社 泌 122−絹 川 常 郎
本 文を 読 むの は ほん の数 編と い うの が実状 で あ る。 他 に、1994年 から 日 本泌尿 器科学 会 も 英 文誌 を 「International Journal of Uro− logy」と して 出 版し てい る。 こ れ につ いて は 我 々が もり立 てて 行 か ねば な らな い。 3。 泌 尿 器 科 医 に と っ て の 専 門 領 域 の 英 文 誌 と こ れ を 補 う 一 般 誌 、 デ ー タ ベ ー ス 私 の 泌 尿 器 科 医 と し て のsubspecialty は、 腎 移 植 、 エ ン ド ウ ロ ロ ジ ー ( 泌 尿 器 科 関 連 の 新 し い 内 視 鏡 治 療 な ど を 中 心 に 扱 う 領 域 )、 そ し て 泌 尿 器 悪 性 腫 瘍 で あ る 。 腎 移 植 につ い て は 最 も 重 要 な 雑 誌 は 「Transplantation」 と 「Transplantation Proceedings」 で あ る。 こ の 2 つ が 学 会 の 公 認 雑 誌 と も言 う べ き も の で あ る 。「Transplantation Proceedings」 は 最 近 、 世 界 中 で 開 催 さ れ る 規 模 の 小 さ な 研 究 会 レ ベ ル の 学 会 や ひ と つ の 国 の 学 会 記 録 も 掲 載 さ れ る た め 、 雑 誌 の ボ リ ュ ー ム の 割 に 引 用 さ れ る 機 会 が 減 り Impact Factor が 低 下 し つ つ あ る が 、TOTAL CITES の 数 は 、Impact Fa− ctor の よ り 高 い 「Clinical transplantati− on」 や 「Transplant International」 を 遥 か に 上 回 っ て い る 。 2 年 に 1[司は 審 査 の 厳 し い 国 際 移 植 学 会 の 全 発 表 論 文 が 掲 載 さ れ る の で 、 筆 者 は 、 移 植 の 推 移 を 知 る た め に こ の 特 集 号 だ け は 、1978年 の 学 会 ( シ ク ロ ス ポ リ ン の 最 初 の 発 表 が あ っ た ) の 分 か ら 2年 お き に 、 い つ で も 取 り だ せ る よ う 自 分 の 書 庫 に 保 存 し て あ る 。 移 植 に つ い て は 、 重 要 な 論 文 が 「The Lancet」 や 「New England J of Medicine」病 院 図 書 室 Vol.18 No.3,1998 に 掲 載 さ れ る こ と が あ る の で 、 図 書 室 へ 行 く と 目 次 に だ け は 目 を 通 す よ う に し て い る 。 古 く は オ ッ ク ス フ ォ ー ド か ら の 、 当 時 画 期 的 で あ っ た シ ク ロ ス ポ リ ン の 最 初 の 臨 床 成 績 、 最 近 で は シ ク ロ ス ポ リ ン と タ クロ リ ム ス の ア メ リ カ と ヨ ー ロ ッ パ で の randomized study が こ れ ら の 雑 誌 に 掲 載 さ れ た 。 エ ン ド ウ ロ ロ ジ ー に つ い て は ま だ 新 し い 領 域 で あ り 、「Endourology and ESWL」 と い う 雑 誌 が あ る が こ れ は そ の 道 の 専 門 家 の た め の 雑 誌 で あ り 、 こ の 分 野 の 最 も 重 要 な 論 文 は 「Journal of Urology」 に 掲 載 さ れ て い る の が 現 状 で あ る 。 英 文 誌 と い う 意 味 で は 、 日 本 endourology ESWL 学 会 の 機 関 誌 「Japanese Journal of Endourology and ESWL」 も 約10 年 間 、 英 文 誌 を 年2∼ 4回 発 行 し て き た が 、 最 近 は 若 い 医 師 が 読 み や す く 投 稿 し や す く す る た め に 、 一 部 日 本 語 化 さ れ て し ま っ た の で 寂 し い 思 い が す る 。 癌 関 連 で は J U 以 外 に 「Cancer」 や 「Can− cer Research」 に 泌 尿 器 科 関 係 の 論 文 が な い か 目 を 通 す よ う に し て い る 。 ア メ リ カ で は 前 立 腺 癌 が 男 性 で 最 も 頻 度 の 高 い 癌 で あ る こ と な ど か ら 「Prostate」 と い う 雑 誌 に も 前 立 腺 癌 の 重 要 な 論 文 が 掲 載 さ れ る こ と が あ る 。 雑 誌 で は な い が 、 癌 に つ い て は ア メ リ カ 国 立 が ん 研 究 所(NCI)か ら 出 さ れ るPDQ(physician’s data query) フ ァ イ ル は ア メ リ カ で の 癌 の 治 療 指 針 で あ り 、 最 新 の 情 報 を 十 分 吟 味 し た 上 で 取 り 入 れ 、 完 成 度 を 上 げ る た め か な り 頻 回 に 書 き 換 え ら れ て い る 。 こ れ を 知 っ た1992年 当 時 は 、 ニ フ テ ィ ー サ ー ブ の INFOCUE 経 由 で ア メ リ カ の 有 料 デ ー タ ベ ー ス か ら ダ ウ ン ロ ー ド し て い た が 、 今 で は イ ン タ ー ネ ッ ト か ら 無 料 で 容 易 に 最 新 の デ ー タ ベ ー スを 入 手 で き る 。 日 本 で は 国 立 が ん セ ン タ ー の ホ ー ム ペ ー ジ (http://www.info,ncc.g0.jp/Osj/ indexj.html) か ら 入 手 す る の が わ か り や す い 。 た だ 、 最 近 の 傾 向 と し て 、 ひ と つ の 癌 に 関 す る 記 載 の ボ リ ュ ー ムが 増 え す ぎ て 簡 単 に は 目 を 通 し に く く な っ た こ と が 気 に な る 。 要 領 と し て は ダ ウ ン ロ ー ド し た デ ー タ は フ ァ イ ルを 印刷 な どせ ず、 テ キ ストフ ァイ ルと して そ のま ま自 分の コ ンピ ュ ータに 保存 し、 必 要 に応 じて ワープ ロや エ ディ タ ーの検索 機 能を 使用 し なが ら必 要な 項 目を 読む のが スマ ー ト なや り方 で あろ う。 こ のよ うな 読み方 は、 紙 の 雑誌で は絶対 不可 能 な方 法であ る。 泌 尿 器科 のそ の 他の subspecialty と して ウロ ダ イ ナ ミッ クス、 小児 泌尿 器科、 男 性不 妊、 尿 路感 染な ど があ る。 筆者 はこ の領 域で はあ まり 学 会活 動を し てお らず この 領域 に 特 化 した 重要 な 雑誌 がど れか あ まりよ く知 ら な い ので、 この 領域を 専 門と す る医師 か ら得 た 情 報を も とに して 簡単 に触 れ るのみ とす る。 ひ とつ だけ 挙げ る な ら、 ウロ ダイ ナミ ッ ク ス で は 「Neurourology and Urodynamics」、小 児 泌尿 器で は「Pediatric Surgery」、 男 性不 妊 に関 し て は 「Fertility and sterility」 が 重要 な 雑誌だ そ うで あ る。 他に、 毎回 特 集 中心 の やや 特異 な存 在 の「Urologic Clinics of North America」 も興 味のあ る特 集 は後で よ く コピ ーを 入手 す る雑誌 であ る。 以 上 が 私 な り に 選 ん だ 、 泌 尿 器 科 関 連 の オー ソド ッ クスな 英文 誌 に関 する情 報で あ る。 泌 尿器 科 とい うあ まり 守 備範 囲の広 くな い 領 域 なので 、 こ こに 挙げ た 「Lancet」 や 「New Engl J Med」を 除 く と Impact Factor が あ る程度 高 い雑 誌 は「Journal of Urology」 や 「Urology」、「Transplantation」 の みで 、 あ と はあ まり 高い もので はな いので 、 恒例 の Impact Factor は一 部の 雑誌 に限 って 表に 掲 載 して お く。 4。和 文 誌の 役割 日 本 の 雑 誌 は学 会 誌 や そ れ に 準ず る 雑 誌 ( 私 の場 合日 本泌 尿 器科学 会誌。 泌尿 器科 紀 要 、移 植 、癌 治療 学 会誌 、腎 臓学 会誌 など ) は、特 集 など は少 な く、 ど うして も博 士論 文 用 など の 基 礎研究 に 関す る ものが多 く なり 、 臨 床 に役 立つ 雑誌 の 概念 か らは離 れて しま う 傾向が あ るの は 否め ない。 むしろ 、日 本語 の 雑誌 は自 分の 専門 領 域か ら少 し離 れ た領域 に 関 して ま とま っ た知 識を 至急 手に 入 れたい 時 − 123
に 、 そ の目 的 の 特 集 が あ る とあ り か た い 。 従 って 、泌 尿 器科医 に と って もそ の観 点 から 見 る と雑誌 の 範囲 は少 し広 く なる。 私 かあ る テ ーマで特 集 号を 探し た 結果 行 き着い た 雑誌 は、 ほとん ど が商 業誌 であ るが、 この 1年 で は 、「 最 新 医 学 」「 腎 と 透 析 」「 医 学 の あ ゆ み」「 臨床 免 疫 」な ど で あり 、 次の 1年 で は 全 く 異 なる雑 誌 にお 世話 にな る か もしれ ない。 5. イ ンタ ーネ ット等 の 活 用 こ れ以 降、 全 くの 独断で 思 っ たこ とを 書 か せて も らう。 癌 の治 療指 針で も述べ た通 り、 い まや、必 要 な 情報 は イ ンタ ーネッ トで 何で も手 に 入ると 錯覚 す るよ う な時代 で あ る。 私 の 例で 言うと 、 講演 など で ア メリ カの最 近 の 腎移 植 の成績 が 必要 とな っ たと し たら以 前 は そ のデ ータ の載 って い そう な本 や雑 誌を い く つ も繰 っ た も の で あ る が 、 現 在 で は UNOS (United Networkfor Organ Sharing) の ホー ムペ ージか らど の 雑誌 に もない 最 新の デ ータが入手で き る。 あ る日突然 、自分 の cur− riculumvitae を 提出 す るこ とが必 要 とな り bibliography の更 新 が して なか っ た ので あ わて た が、 何の こ と はない 。 イ ンタ ーネ ット 上 の Medline か ら自 分 の 名 前を 検索 して そ れを フ ァイ ルに 落 とし て ちょ っと 手直 しし た だ けで 完成 した 。 あ るテ ーマに つ いて ま とま った 知識を 得 る 必 要が でて きた 場 合、 昔な ら その テ ーマ に関 す る論 文の 掲載 さ れそ うな 雑誌 で 過去 1年 間 ぐ らい の中 か らで きる だけ 新 しい 論文を 探 し 当て 、 あと は孫 引 きし て ゆく とい う手 法を 取 っ て い た。 し か し 、 こ れで 得 た 関 連 論 文 を や っと の思 いで 入 手す る と予 想と 異な って い る こと もし ば しばで あ っ た。図 書 室 にど の病 院 で も Medline の CD−ROM が設 置さ れ るよ う にな って この 環 境 は激変 し た。 し かし、 一 人で 長 時間 占拠 す る訳 に もい かず 、abstract を 片 っ端 から 印 刷 す る と こ れ も結 構 な量 に な る。 仕方 な く 、abstract を フ ロ ッ ピ ー に 収 ま る 範 囲で ダ ウ ンロ ー ド し て 自 分 の コ ン ピ ュ ー タで 読む 。 そ のた めに 、 もう一 度 デ ー 124− 病 院 図 書 室 Vol.18 No.3,1998 タベ ー スを再 構築 す るた めの ツ ー ルを 自分で プ ロ グラ ミングしたり もした。 最近 は、多少 ス ピードは落ちるが、 もっぱら、free の Medline を 自 分 の パ ソ コ ン か ら ア クセ スし て い る。 Abstr−act を 見て 必 要な 論文 を 絞り 込 み、 後 は 病院 の図 書室で 手 元 にあ る雑 誌を コピ ーし、 見つ か らな い ものに つい て は、 司 書の方 にお 願 いし て 外部か ら入 手 して い る。 これ が私 の 最 近の 医学 雑誌を 通 し た典 型的 な 情報 の入 手 方 法で あ る。 こ れら の例 はい わば 能動 的な 情 報 収集で あ る が、受 動 的な 情 報の 流入 も増 加 しつ つあ る。 エ イ ズ薬 害問題 以来 、 厚生 省 発院 内 薬局経 由 と 製薬 会 社か ら薬 の副 作用 に関 し て も、と て も目を 通 せない 量 の情 報が 流 れて く る。受 動 的 な 情報 は印 刷物 の形 で入 って く る が、 その 時 点で 興 味を 引く 情報 は多 く はな い。 と にか く全 部 伝えてお く とい う姿 勢 だか ら生半可 な 量 で は ない。 机の 上 にし ば らく積 まれや がて ゴ ミ箱 へ消え てい く。 重 要度 別 に グレ ードを つ け 、 しか もその 薬 剤を 使用 す る可 能性 のあ る医 師 に専門 領域 別 の情 報提 供 はで きな い も のだ ろ うか。 そし て、 や はり いつ ど こか らで も ア クセ スで き、 色 々な アプ ロ ー チ方法で 検 索 で きるよ うなデ ータベ ースを早 急 に確 立し て ほし い ものであ る。 6。 今 後の医 学 雑誌 の方 向 さて 、こ のよ うな 情報 の氾 濫 し た世 の中で、 果 たし て従 来か らの 紙の 雑誌 の 意 味は何 であ ろ う。 私に とって は、 2か ら 3の固 定し た 雑 誌で 、 厳し い審 査を 通 って 掲載 さ れた一 流 誌 の論 文を 通 して、 自 分 の領 域にお ける 最先 端 の方 向 性をつ か み、 一方 で 自分 の 周辺 領域 の 知 識不 足を 私に と って はず っと 読 みや すい 日 本 語の 特集で あ る程 度 のレ ベ ルに 保って い く とい う 、 2つ の 意味 であ ろ うか 。 あ と は、 今示 し たよ うに イ ンタ ーネ ッ トを 通して の 情 報 収集 とな って し まう。 い ずれ 、 個人 のイ ン ターネ ッ ト接続 者 の比率 が 高ま り 、料 金の 徴 収 方 法が確 立す れば 、 雑誌 へ の投 稿論 文 も雑 誌 への 掲載 と同 時 にイ ン ターネ ット上 に公 開
病 院 図 書 室 Vol.18 No.3,1998 さ れ るで あろ う。 掲 載を 拒 否 され た論 文が 個 人の ホ ームペ ージで公 開 され 、こ れが 役立 つ 情 報で あ りさ らに質問 を受 け 付け る とし た ら 一 流 誌 もただ 質 の維 持だ けで なく 、 ネ ット上 で の デ ィスカ ッショ ンの場 の 提供 や、 一定 期 間を 経 た雑誌 の 無料公 開 など の サ ービ スを 余 儀な くさ れる であ ろ う。 こ のよ うな 時 代に なれ ば、 司書 の方 々の 仕 事 の 内容 は、 ネ ット上 で 日 々変 化 す る情 報を 我 々医師 に伝 え てい ただ いた り、 情 報機 器 の 使用 に 抵抗感 を示 す 医師 に、 新し い シ ステ ム の 使用方 法を 伝 授 する ような こ とが重 要 な役 割 とな って こよ う。 了。 お わり に 情報化 時 代 の医学 雑 誌の 役割 につい て 書 き な がら、 現 在私 の 部屋 は自宅 も病院 も、 医師 になって か ら購 読 した 雑誌 が捨て き れず に山 積 みに され てい る。 医 学雑 誌に関 して こ んな 格 好をつ け た意 見を 吐 いて しま った か らに は や はり 寂し いが 、 ごく 重要 な もの以 外さ っさ とゴ ミに出 す しか なさ そう だ。