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失禁患者の排尿自立への援助 -失語・失認・失行のある患者を通して-

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Academic year: 2021

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(1)

  失禁患者の排尿自立への援助

一失語・失認・失行のある患者を通してー

3階西病棟

  国 見

  横 山

  浜 田

ゆ 道 一

○宗

 松

和 江

美 好

石 崎

I。はじめに  排泄は,人間の基本的行動の一つであり,脳神経外科病棟においては,脳内出血, 脳腫瘍などによる大脳皮質障害や,大脳皮質下障害によって,排尿障害が生じてく ることがある。これらの場合,意識障害,麻庫,失語,失認,失行を伴っているこ とが多く,失禁患者への援助を,より困難なものとしている。この状態を放置する ことは,患者の不快感を増強させ,自立心を低下させることにもつながる。今回, 当病棟における失禁患者の,排尿の自立への援助を,症例を通して再検討したので, その結果を報告する。 II.事例紹介  1 症例1   患者:○居○子 59才 女性   病名:左前頭葉星細胞腫   経過:昭和56年発症し,同年,脳腫瘍部分摘出術施行。以後,人退院を繰り返     し,再発にて,昭和60年11月再入院となる。脳腫瘍部分摘出術は,計3回     施行されているが, 1, 2回目の手術の際,失禁はみられていない。今回     は,失禁があるため他院より,バルンカテーテルが留置された状態での人     院であった。意識レベルは, 3-3-9度方式で,Iの1の状態であった。      (以後,意識レベルについては,3−3−9度方式によるものとする。)     入院後,直ちに膀胱訓練を開始し,一回尿量も, 200∼300 m目こて,本人     から尿意の訴えもあり,入院後2日目にバルンカテーテル抜去を試みた。

(2)

7 ! a S 匂 ¶ r ゝ − で ; 抜去後,トイレで排尿することもできたが,尿失禁もみられた。発語は比 較的スムーズで,「おしっこ」という言葉で,尿意を訴えることも時々は できていた。しかし,ナースコールで尿意の訴えがあり,便器を持ってい くと,すでに失禁しているという状態もみられた。又,頻尿で,尿失禁の 30分後に再度尿失禁があったり,ベッドサイドで放尿していることもあっ た。そこで2時間毎に排尿誘導を行ったが,失禁は続いた。  12月4日,脳腫瘍部分摘出術,術中照射を施行。術後の意識レベルは, Iの2からIの3であり,点滴を自己抜去したり,素足で廊下を歩いたり という行動が,再三見られた。又,発語は,意味不明な言語の羅列であっ たり,急に笑いだしたりと,失語,失認,失行の状態は,やや増強がみら れている。術中よりバルンカテーテルが留置されており,術後2日目より, 膀胱訓練を開始した。本人からの尿意の訴えはなく,尿意の有無を問うが。  「そうね」とか,笑うのみであったり,答えは曖昧であった。そこで,時 間的考慮をしたうえで,言動に注意を向け,バルンカテーテルを開放して いくことにした。約3時間の間隔で,尿量も300∼400 ml 前後であった。 術後6日目にバルンカテーテルを抜去したが,失禁状態が持続していたた め,2∼3時間毎に排尿誘導を行い,排尿時間をチェックし,時間的間隔 を調べた。しかし,トイレ歩行が可能となっても,失禁状態は全く改善さ れず,術後2週間目には,髄膜炎を併発し著明な発熱が持続した。失禁に よるIVH挿入部の汚染が頻回となったため,汚染防止のためバルンカテー テルが再留置された。バルンカテーテル留置後,1ヶ月目に抜去するまで, 膀胱訓練を続けた。術後の膀胱訓練と同様に,約2時間の間隔で開放し, 1回尿量は, 150∼500 ml 程度であったが,尿意は,曖昧であった。今回 のバルンカテーテル抜去後も,尿失禁は改善がみられていない。  現在に至るまで, 37.0∼38.0℃の発熱が持続しており,体温上昇時には, ベッドにうずくまる様にしている状態が多く,排尿誘導に応じなかったり, 動作も緩慢となり,失禁回数も多くなっている。ナースサイドからの働き かけは,以前から2∼3時間毎の排尿誘導を続行している。この患者に対 , I r - 、 S ’

(3)

    しては,失語,失認,失行があるため,尿意を言葉で訴えることができな     い点を第一に考慮し,頻回に訪室し,患者の言動に注意を向け,いつもと     違う動作,例えば,ベッド上に起きあがりごそごそしたり,ベッドサイド     に立ったりという動作が見られたとき,排尿誘導の予定の時間でなくても,     誘導するようにした。      又,毎日全身清拭と,陰部洗浄を行い,感染防止に努めた。  2 症例2   患者:○崎○輔 56才 男性   病名:被殻部出血   経過:昭和61年2月1日発症し,緊急入院する。当日,穿頭脳内血腫除去術,     血腫腔内ドレナージ術を施行。術前より,意識レベルはIの2であり,術     後もレベル低下は認められなかった。右上下肢不全麻蝉があり,運動性失     語症を認めたが,バイタルサイン等の一般状態は落ち着いており,術後の     経過も良好であった。      術後2日目より,膀胱訓練を開始した。最初,尿意の訴えはなかったが,     問えば「そろそろ」などと言い,1回量200 m1 程で,術後6日目にバルン     カテーテルを抜去した。抜去後,2∼3時間毎に排尿を促した。尿器使用     時排尿がなく,除去しようとした時失禁するなど,排尿のタイミングがっ     かめなかった。そのため1日の排尿時間をチェックした結果,排尿間隔が     長く,回数も少ないことから,飲水を勧めることに努めた。当初,尿意の     有無も曖昧であったが,術後10日目頃より看護婦の促しに対し,「うん,     してみようか」と,何らかの言葉で看護婦に訴えるようになり,失禁回数     も減少がみられた。リハビリテーションも開始となり,ADLも拡大され,     失語もやや改善し,自分でナースコールを押せる様になり,失禁はみられ     なくなった。 Ⅲ。考  察  各個人の生活の中において,おおよそ排尿時間は,習慣づいているものである。 それゆえ,入院前の患者の日々の生活を充分に把握し,できるだけその患者の,入

(4)

l y や , ` , ふ 心 " ` , Q , ’

院前の生活に近い状態へと対処していくことが必要である。患者自身の排尿習慣を

知った上で,各個人に応じた援助方法が必要となる。

 排尿は,本来反射運動であり,膀胱に一定量の尿が貯留すると,知覚神経を介し,

仙髄反射中枢にて,排尿刺激を運動神経に伝え,膀胱を刺激する。これらの排尿機

序は,脳によって調節されるが,失認,失行のある患者においては,自分が,どこ

で排尿すれば良いのか認識できず,尿が充満すると,すぐに排尿行動をおこし,我

慢することができない。このため,膀胱容量が減少する傾向をもち,頻回な失禁と

なるのが特徴である。

 今回検討した2症例においても,その失認失行の程度の差が失禁回数に関与し,

加えて意志を伝える最大の機能としての,言葉が充分に話せないことにより,その

頻度を変化させていると考えられる。

 症例1において,患者は,失認,失行に加えて,混合性失語症があり,尿意を看

護婦に伝えることができず,失禁が持続している。又,髄膜炎の併発により,発熱

が持続したことが,患者をより一層動作緩慢にしている。発熱は,全身衰弱の誘因

となり,自発的行動を低下させるため,できるだけ感染の予防に努めなければなら

ない。

 症例2においては,術後,バイタルサインー般状態,ともに落ちついていたこと

が,良い結果となった。又,意識レベルの低下がなかったことも,良い結果につな

がった。リハピリテーションが開始され,ADLが拡大したことが良い刺激となり,

自発的行動を活発化させ,排尿に対しても,何らかの方法,言葉で看護婦に知らせ

る様になった。

 以上,当病棟における,排尿自立への援助について検討してみた。2∼3時間毎

の排尿誘導,排尿時間のチェックを行うことは,画一化された個別性の少ないもの

であることを再認識した。今後,患者の意識レベル,失語,失認,失行の程度,疾

患の部位,一般状態,一日の水分出納等を考慮し,各個人にあわせたプラン作りが

必要となる。患者の安静に応じたADLの拡大をはかり,日常行われている清潔に

ついての習慣,例えば現在援助している歯みがき,入浴,排尿後の後始末等患者が

自立できる様指導していくことも,ひとつの方法ではないかと考える。これらの指

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導にあたり,失語,失認,失行めある患者に対しては,看護婦の鋭い洞察力が,必

要だと思う.

 又,尿失禁が持続することは,陰部を汚染することになる.感染防止という点か

らも,現在行っている清潔ヶアは意義があり,今後も続けていきたい.

Ⅳ.おわりに

 失禁が持続する患者に対し,私たち看護婦は,つい苛立ちを感じたり,あきらめ

を感じたりすることも,多々あると思う.しかし看護婦自身の消極的態度は,患者

の排尿の自立を遅らせることにもつながる.患者に対する積極的な根気強いアプロ

ーチを行い,各個人に応じた計画立案が,重要なポイントとなることを,これらの

症例を検討し再認識した.今後失禁のみられる患者に対し,今回の研究を生かし,

援助していきたい。

V.参考文献

1)大柴幸子:意識障害患者の看護をとおして学んだこと.クリニカルスタディ

 4(5). 60∼66, 1983.

2)斎藤澄子他:意識障害.排尿障害のある患者の排尿自立への援助.クリニカル

 スタディ 4(3).

84∼96, 1983.

3)演口勝彦他:意識障害.臨床看護 9(l4

2185∼2191, 1983.

4)河村信夫:尿失禁.排尿障害.臨床看護 9(l4

2223∼2227, 1983.

5)川出富貴子:排泄習慣とその文化的側面への考察.臨床看護 10(9).

1325∼1333,

 1984.

6)松村悠子:意識障害患者の看護.臨床看護 9(10).

1493∼1503, 1983.

7)渡辺文子:脳血管障害患者の看護ケアのポイント.臨床看護 10(3).

351∼356,

 1984.

参照

関連したドキュメント

の資料には、「分割払の約定がある主債務について期限の利益を喪失させる

を,松田教授開講20周年記念論文集1)に.発表してある

が成立し、本年七月一日から施行の予定である。労働組合、学者等の強い反対を押し切っての成立であり、多く

顧  粒 減少︑飛散︑清失︒ 同上︑核消失後門モ粟酒スルアリ︑抵抗力強シ︒

(a) 主催者は、以下を行う、または試みるすべての個人を失格とし、その参加を禁じる権利を留保しま す。(i)

Greiff, Notwendigkeit und Möglichkeiten einer Entkriminalisierung leicht fahrlässigen ärztlichen Handelns, (00 (; Jürgens, Die Beschränkung der strafrechtlichen

PCIJ,  series  A/B;  Permanent  Court  of  International  Justice,  Judgments,  Orders  and  Advisory  Opinions . PCIJ,  series  B;  Permanent  Court  of 

[r]