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監査の失敗と監査上の懐疑主義

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Academic year: 2022

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(1)監 査 の 失 敗 と監 査.r̲の 懐 疑 主義. 監 査 の失敗 と監 査 上の懐 疑 主義 鳥羽. 目. 至英. 次. I. は じめ に. H. 監 査 の 失 敗 と監 査 判 断. 皿. 職 業 的 専 門 家 と して の 正 当 な注 意 と職 業 的専 門 家 と しての 懐 疑 心 N. 監査 判断上の誤謬 を生み 出す監査環 境 V. む す び に 代 えて. 1は. 金 融 商 品 取 引 法(第193条 会 計 士 ・監 査 法 人)に. の2)の. じめ に. も とで の 財 務 諸 表 監 査 は、 会 計 の 職 業 的専 門 家(公. 認. よ っ て 実 施 され て い る。 独 立 の 会 計 専 門 家 に よ る財 務 諸表 監 査 と い え. ど も、 そ れ は さ ま ざま な制 約 の も と で実 施 され て お り、 した が っ て 財 務 諸 表 監査 の 失 敗(以 下、「 監 査 の 失 敗 」ω)を 完 全 に封 じ込 め る こ と は 現 実 的 に難 しい 。 監 査 人 が 受 け る制 約 と は 、 具 体 的 に は① 監 査 人 の 監 査 認 識(監. 査 手 続)の. 範 囲 とそ の 深 度 は コ ス ト(監 査 時 間)と い う. 要 因 を 完 全 に度 外 視 して 決 定 され な い こ と(経 済 的 制 約)、 ② 監 査 の 結 論 を 一 定 期 間 内 に 下 さ な け れ ば な らな い こ と(時 間 的 制 約)、 ③ 監 査 人 の 認 識 は 試 査 に基 づ い て実 施 され る こ と (証拠 の 量 に よ る制 約)、 ④ 監 査 人 の技AC・ 知 識 ・経 験 ・性 格 は一 様 で は な い こ と(監 査 人 の 個 人 的 特 性 に 起 因 す る制 約 〉、 ⑤ 監 査 人 の 認 識 活 動 は被 監 査 会 社 との 契 約(合 意)に. 基づい. て 実 施 され る もの で あ り、 公 権 力 を背 景 に実 施 され る もの で は な い こ と(証 拠 の 入 手 可 能 性 に よ る制 約 〉 で あ り、 これ らの 制 約 が 監 査 人 の 認 識 活 動 に 直 接 的 に 、 そ して 間 接 的 に影 響 を 与 え る。 しか し、 か りに1.記 の 制 約 が な くな っ た と して も、 監 査 の 失 敗 は起 こ り う る。 そ れ は、 監 査 人 が 誤 っ た(不 適 切 な)監 査 判 断 を して し ま う可 能 性 は 常 に 残 る か らで あ る。 公 認 会 計 士 に よ る監 査 の 失 敗 は、 そ れ が 監 査 人 の 法 的 責 任 に 結 び つ くか 否 か と い う法 的 な 議 論 を横 に お け ば 、 財 務 諸 表 に重 要 な虚 偽 表 示 が あ る に も か か わ らず 、監 査 人 が、 理 由 は と もあ れ 、 そ れ を黙 認 ま た は看 過 し、 被 監 査 会 社 の 財 務 諸表 につ い て 無 限 定 適 正 意 見 を表 明 して し ま う こ と. 一1一.

(2) 田 . ﹁.. 監査 め 失敗 と監r上 の懐 疑 霊義. に 集 約 され る。 も う少 し手 短 に 言 え ば 、 粉 飾 決 算 を藍 査 報 告書.にお い て 明 らか に しな か っ た こ とで あ る。 公 認 会 計..士 に よ る財 務 諸 表 監 査 の 本 来 の 目 的 は 、 被 監 査 会 社 の 公 表 す る財 務 諸表 の 信 頼 性 を監 査 意 見.を通 じて 保 証 す る こ と に あ る。 監 査 人 が 重 要 な虚 偽 表 示 の あ る財 務 諸 表 を受 け 人 れ 、 それ につ い て 適 正 意 見 を表 明 す る こ と は論 外 で あ る が、 財務 諸 表 に潜 ん で い る重 要 な虚 偽 表 示 の 検 出 に 失 敗 し、 誤 っ た監 査 意 見 を結 果 と して 表 明 す る危 険 性 は依 然 と して 高 い。 監 査 人 が 財 務 諸表 上 の 重 要 な虚 偽 表 示 を監 査 手 続 を通 じて 検 出 で き るか ど うか は、 公 認 会 計 士 に よ る財 務 諸 表 監 査 の 有 効 性 その もの に関 わ る問 題 で あ る。 そ の 意 味 で 、 財 務 諸表 監 査 の 役 割 を 「財 務 諸 表 の 信 頼 性 を保 証 す る こ と」 と捉 え るか 、 そ れ と も 「財 務 諸 表 上 の重 要 な虚 偽 表 示 を検 出 す る こ と」 と捉 え る か は 、 コ イ ンを 「表 」 か ら.見.る か 「裏 」 か ら 見 る か の 関 係 と して 認 識 して お く必 要 が あ る。 この 点 は 、 ナ ナ ボ シ粉 飾 事 件 に 関 す る論 文(鳥 羽[2010Dに お い て も、 指 摘 した とお りで あ る。 会 計 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ン に と っ て 喫 緊 の 課 題 は 、 「監 査 の 有 効 性 を い か に 高 め た ら よ い か 」 あ る い は 「財 務 諸 表 ヒの 重 要 な虚 偽 表 示 は さ ま ざ ま な要nに. よ っ て 引 き起 こ され るが 、 監 査. 人 は ど の よ うな 考 え方 で 重 要 な 虚 偽 表 示 の 検 出 に 臨 むべ きで あ る の か.」 、 そ も そ も 「監 査 人 が 財 務 諸表 監 査 に お い て従 事 す る監 査 認 識 の あ り方 を.どの よ うに 考 え た ら よ い の か 」 と い う 本 質 的 な 問 い か け に 対 す る処 方 箋 を明 らか に す る こ.とで あ ろ 旗, .わが 国 に お け る監 査 研 究1よ. 筆 者 の これ ま で の 監 査 研 究 を 含 め 、 概 念 の 分 類 や 監 査 の 外 郭. び)説明 に終 始 し、.監査 判 断 と い う.監.査 人 の 内 的 過 程 に学 問 的 な メ ス を深 く入 れ る もの で は な か っ た。.また 、 監 査 実 務(監. 査 基 準 等 〉 の 評 論 、.監査 技 術 の 評 論 、.回顧 的 な監 査 研 究 、 テ ー. タ.に.は 基.づい て い る が多 分 に覗 ぎ兇 趣 味 的 な 監.査研 究 で は、.ます ま.す複 雑 化 す る 監 査 人 の 監 査 認 識 や ・.二 段 と厳 し くな る監 査 人 に 対 す る貢 任 追 及 を学 問 的 に 捉 え、 説 明 す る こ とは で き な い。 財 務 諸表 監 査 とい う研 究 分 野 を従 来 の 殻 か ら脱 皮 させ る 必 要 が あ る。 こ れ か らの 監 査 研 究 の 中 心 は 、 監 査 人 の 駝 査 認 識 の背 景 に あ る基 礎 的.な考 え方 を考 察 す る こ と に よ って 、 財 務 諸 表 監 査 に お け る監 査 手 続 の 新 た な.あり方(枠 組 み)を 向 け られ るべ きで あ.る.、と考 え る。Bellら の モ ノ グ ラ フ(Belletal.,[coos])が. 模索 す るζとに 提唱す る 「 証. 拠 に基 づ く信 念 改 訂 型 リス ク評 価 」(evidence‑driven,belief‑basedriskassessment>と. い う考. え方 も、 新 しい 監 査 手 続 の 枠 組 み を模 索 す る もの に他 な らな い 。 本 稿 も、 そ の よ う な枠 組 み を模 索 す るた め の 監 査 研 究 の プ ロ ロ ー グ で あ る。. 皿 監査の失敗 と監査判断 包 括 的 な デ ー タ と し て 公 表 さ れ た も の は な い が 、2004年. 一 一z一. か ら2010年. の7年. 間 に 限 定 して.

(3) 監査 の失 敗 と監査..Lの懐 疑 主義. も、 わ が 国 の 上 場 会 社 に お け る不 正 な 財 務 報 告 は 、 監 督 機 関 に よ る規 制 の 強 化.にもか か わ ら ず 、 な か な か収 束 を み な い(図 表i)。 独 立 姓 の 欠 如 に よ る監 査 の.失敗.もな い わ け で は な い が 、 表 面 に 出 た監 査 の 失 敗 の ほ とん ど は監 査 判 断 の.失敗 に起 因 した もの と推 察 され る。. 図 表1上. 場 会 社 の 不 正 な(不 適 切.な)財 務 報 告 事 例 重 要 な虚 偽 表示 の 内訳(複 数 該 当 あ り). 売上 高(収 益 〉 の塵 偽表 示. 上場. 年. 会社 数. 大)売 上. 先行 売 上. (子会 社. 4. で. zoos. 6. 2. zoos. 14. 5. 1. 1. 2007. 22. 3. 3. 4. 2008. 20. 4. 2. 6. 2009. 21. 7. 2. 5. 4 91. z. 融 庁1?UINIiPよ 売 掛 金 過 大 計1=・. B. 固 定 資産 評価. その 他. 3. 1(1i. 3. z. 1. 2. 5. 5. 4. 1. 1. z. 2. z. 3. z. 4. i(i; 6(2)貨. 1. 18. 5. り 筆 者 が 集 計 ・分 類(201G 貸倒 引 当金過 少 計 上 ば. ② 括 弧 書 は1人1数で 、 い ず れ もSPC(特 ⑧*は. 過小 計 上. 固 定資 産 取 引 ・. 1. zz. 付'記:①. 価 ・費 用. 1. 1. 出 所:金. 庫 ・水 増. その他. を含 む). 2004. 2010. 売上 原. 架 空在. 循環取引. 架 空(過. 8. 13. 5. 8. n. .年は.7月:31日 ま で に 公 表 さ れ た も σ)〉 「費 用.の過 小 計..r.」に)JkRc. 定 目 的 会 社)介. デ リバ テ ィブ 取 引 に 伴 う不 適 切会 計 で 、2009年. 在 取 引 を 意 昧 す る. 度 は2件. あ っ た 。(2>は. 内数。. 独 立 性 の 欠 如 に 起 因 す る 監 査 の 矢 賊. 鑑 査 の失 敗 は、 基 本 的 に は 、2つ の 系 列 を通 じて 生 ず る 占 第1の 系 列 は、 監 査 人 が職 業 専 門 家 と して の独 立性(判. 断 の 独 立 性 ・精 神 的 独 立性.)を 失 い、 不 正 な財 務 報 告 で あ る こ と を. 黙 認 す る場 合 、 あ る い は 不 正 な財 務 報 告 の ス キ ー ム 作 り に監 査 人 が 積 極 的 に関 与 す る場 合 で あ る。 いず れ に して も、 監 査 人 は 当 該 不 正 な財 務 報 告 の 事 実 を 承 知 して い た わ け で あ り、 故 意 に よ る虚 偽 の監 査 証 明 で あ.る。 公 認 会 計 士 に よ るわ が 国 の 証 券 取 引 法 監 査 の 萌 芽 期 に お い て は 、 精 神 的 独 立性 を喪 失 した 公認 会 計 士 が こ の よ うな 不 正 な財 務 報 告 に 手 を貸 した とい う 事 例 が 頻 繁 に起 こ っ た。 公 認 会 計..Lの経 済 的 基 盤 の脆 弱 性 が そ の背 景 に あ っ た こ と は否 め な い。:残念 な こ とで は あ る が、 故意 に よ る虚 偽 の 監 査 証 明 は 、2000年 以 降 の 公認 会 計 士 監 査 に お い て も繰 り返 され て い る。 流 通 市場 に お け る フ ッ トワ ー クエ キ ス プ レ ス(2002)、 ツ(2004)、. カ ネ ボ.ウ(2005>、. で あ る。 また 、2010年5月12日. そ して 非 .上場.会社 で あ るが 三田 ユニ .業(1998>な. キャッ. どが 、 そ の例. に 報 道 され た 発 行.市場.にお け る不 正 な財 務 報 告 事 例(エ. オ ー ア イ)も 、 この 系 列 に 入 る可 能 性 が 高 い.し. か し、 公 認 会 計 士 が 注 意 しな け れ ば な らな. い監 査 の 失 敗 は 、 これ だ けで は な い 。 そ れ が 監 査.判断 に起[tlした 監 査 の 失 敗 で あ る.. 一3一. フ. i.

(4) 監 査の失 敗 と監査 上 の懐疑 主 義. 監 査判 断 上 の暇 疵 に起 因 す る監 査 の 失敗 第2の 系 列 は 、監 査 人 が 職 業 専 門 家 と して正 当 な 注 意(professionalduecare;)を. 行使せず、. あ るい は監 査 人 が 行 使 した 職 業 専 門 家 と して の 注 意 が 不 十 分 な ため 、 結 果 と して 、 不 正 な 財 務 報 告 に気 づ か ず 無 限 定 適 正 意 見 を表 明 して しま う場 合 で あ る。.この 場 合 に は 、 監 査人 は 不 正 な 財 務 報 告 の 事 実 に は た ど.り着 い て お.らず 、 した が って そ の 事 実 に気 づ か な い ま ま監 査 証 明 を して しま っ た わ け で あ り、 法 律 論 と して は 、 基 本 的 に は過 失 に よ る虚 偽 の監 査 証 明 が こ れ に 当 た る.公 認 会 計 七 に よ るわ が 国 の 証 券 取 引 法 監 査.の萌 芽 期 に お い て み られ た 監 査 の 失 敗 の 多 く が第1系. 列 に 属 す る と い うな らば 、1990年 代 後 半 か ら現 在 まで の 期 間 に起 こ っ た 監. 査 の 失 敗 の 多 くは む しろ 第2系 列 に属 す る、 と結 論 して も よ い よ う に さえ 思 わ れ る。 監 査 人 が 粉 飾 決 算 の 事 実 に気 づ か ず 、 無 限 定 適 正 意 見 を通 じて 当該 財 務 諸 表 の 信 頼 性 を保 証 して い るだ け に、 事 態 は 深 刻 で あ る。 監 査 人 の 監 査 判 断 が 十 分 で な か っ た こ と に起 因 し た監 査 の 失 敗 は、 基 本 的 に は、2つ の 原 因 で 生 じ う る。 第1の 原 因 は、不 正 な財 務 報 告 に 関 係 す る重 要 な 経 済 事 象(取 引 や 口座 残 高 〉 が 監 査 人 の 当 初 の 認 識 対 象 範 囲 か ら外 れ て い た 、 と い う監 査 対 象 の 抽 出上 の 問 題 に 関 係 して い る。 会 計 プ ロ.フェ ッ シ ョナ ル は 、 監 査 リス ク ・ア プ ロ ー チ の も とで 、 重 要 な虚 偽 表 示 リ ス クの 高 い財 務 諸 表 項 目に 狙 い を定 め 、 そ の よ う な監 査 判 断 の失 敗 が 起 こ らな い よ う に努 め て い る。 しか し、 企 業 取 引 が 量 的 に 増 大 し、 さ ら に質 的 に ます ま す 複 雑 に な っ て い る こ と を 考 え る と、 財 務 請 表 監 査 が 試査 を原 則 と して い る か ぎ り、 こ の リス クか ら監 査 人 が 完 全 に逃 れ る こ と は で き な い 。 監 査 理 論 は この 問 題 を 「サ ン.プリ ン グ ・リ ス ク」(samplingrisk>と. し. て 認 識 して きた 。 被 監 査 会 社 に お いて 生 起 す る膨 大 な 取 引 の量 と.監査 人 が:認識 対 象 と して 実 際 に 選 択..(抽出)し. た取 引 の量 と を比 較 す れ ば 、 サ ン プ り ング ・リス ク は ま.すます 高 ま り、. 低 くな る こ とは な.い、 とい え るか も しれ な い 。 監 査 人 の 検 証 す る取 引 の絶 対 量(範 囲)が. 限. られ て い れ ば、 そ こ に い か な る 理 由 をつ け よ う と も、 監 査 の 有 効 性 を 高 め る こ と は難 しい 。 監 査 人 が サ ンプ リン グ ・リス ク を引 き...ド げ る こ と が で き る か ど うか は、 財 務 諸表 監 査 の 有 効 性 に 直 接 影 響 を.及ぼ す 問 題 と な る。 統 制 的 試 査(stdtisGcalsampling)は. 、 この 系 列 に属 す る. 問 題 を客 観 的 に 解 決 す る た め の 手 法 と して 、 監 査 の研 究 者 と実 務 家 の 関 心 の対 象 とな って き た. しか し、 監 査 の 難 し さ は、 む し ろ、 こ れ 以 外 の領 域(非. サ ン プ リ ング ・リス ク)に. あ る、. とい うべ きか も しれ な い 、 、事 実 、 監 査 の失 敗 の 多 くは 、 サ ンプ リン グ ・リス ク で は な く、 被 監 査 会 社 固有 の ビ ジ ネ ス ・リス ク につ い て の 状 況 認 識 の 誤 り、 会 計 原ョlfの誤 った 解 釈 、 基 準 の 誤 っ た解 釈 と適 用 な ど、 監 査 人 が適.切な 監 査 判 断 を怠 っ た こ と に起 因 して い る、 と指 摘 さ れ て い る(Deilieseetal.[1985】,p,248>。. ま た、 会 計 連 緯 通 牒 に お い て 取 り上 げ られ た公 認 会. 計 士 処 分 案 件 を 見 て も、 監 査 人 が不 正 な 財 務 報 告 の 糸 「.1に さ え た ど りつ け な か った とい う監 査 失 敗 事 案 は 極 め て 稀 で あ り、 ほ とん どの 場 合 、 監 査 手 続 を 通 じて 入 手 した 証 拠 の な か に不. 一4一.

(5) 監 査 の 失 敗 と監 査.f.の懐 疑 主 義. 正 な 財 務 報 告 の 糸 口(不. 自然 さ)は 捕 え ら えて い た(z)。. 監 査 の 失 敗 は 、 多 くの場 合 、 監 査 人 が 入.手 した監 査 証 拠 に 財 務 諸 表 の重 要 な 虚 偽 表 示 に 繋 が る糸uが. 含 まれ て い た に もか か わ らず 、. ① 監 査 人 が そ れ に 気 づ か ず 、 そ の ま ま看 過 した た め 、 ② そ の 糸 口 は つ か ん で い た が 、 経 営 者 の 説 明 を 鵜 呑 み に し、 深 度 あ る監 査 手 続 を 追 加 し なか ったため、 ③ 監 査 調 書 に そ の 糸 口 は 記 され て い た が 、 そ れ が 放 置 され 、.更な る監 査 手 続 の 追 加 が な され な か っ た た め 、 そ の 背 後 に 隠 され て い るrな. 虚 偽 表 示 」 に ま で 辿 りつ か な か っ た こ とに 起 因 して い る。. た と え ばBeasleyら(BeasleyetaLILOO.1】)は 査 人 に 対 す るSECに. 、 監 査 の 失 敗(1987‑1997>を. 引 き起 こ した 監. よ る行 政 処 分 の 状 況 を 調 査 し、 監 査 の 失 敗 の 主 た る原 因 と.して 、 以 下. を指 摘 して い る。 ① 行 政 処 分 の 対 象 と な っ た 事 案 の80%は と りわ け、 資 産 評 価 と 資 産 の 所 有(実. 、 十.分な監 査 証 拠 を 入 手 して い な か っ た こ と 。 在 性 〉 や 経 営 者 の 陳 述 を裏 づ け る十 分 な 監 査 証. 拠 を 入 手 して い な か っ た こ と。 最 終 契 約 書 で は な く、 契 約 書 案(仮 契 約 書)で. 済 ませ. て い た こ と。 そ して 、 監 査 計 画 に予 定 され て い る監 査.手続 の 手 順 ど お り に、 監 査 が 実 施 され て い な か っ た こ と。 ② 処 分 事 案 の71%は. 、 職 業 的 専 門 家 と して の 正 当 な注 意 の 欠 如 に よ る もの で あ っ た こ. と.。と りわ け 、 その60%は. 職 業.的懐 疑 心 の 欠 如 に起 困 して い た こ と。. ③.お よ そ半 分 の処 分 事 案 で は、 監 査 人 が.一般 に認 め られ た会A/基 準(GAAPpronouncements) を適 用 しな か っ た こ と、 あ る.いは 適 男 に適 用 しな か っ た こ と。 適 切 な 監 査 計 画 が 策 定 .され て い な か っ た こ と。 と りわ け、 固 有 リ ス ク が 監 査 計 画 に適 切 に 反 映 され て い な か っ た こ と、.非通 常 的 な 取 引 に伴 う高 い リス ク が認 識 され て い な か っ た こ と、 過 年 度 の 監 査 計 画 が そ の ま ま踏 襲 され て い た こ と等 が 原 因 と され て い る。 ④ 処 分 事 案 の40%で. は 、 質 問 に対 す る 回 答}こ過 度 な信 頼 を寄 せ て い た こ と。 経 営 者 の 陳. 述 が 監 査 人 の 入 手 して い た 証 拠 と矛 盾 し て い る に もか か わ らず 、 そ れ を裏 づ け よ う と して い なか っ た こ と。36%の. 事 案 で は、 重 要 な 見 積 りで あ るに も か か わ らず 、 十 分 な. 監 査 証 拠 を得 ず 評 価 して い た こ と、 と りわ け 見 積 りの 基 礎 に あ る経 営 者 の 仮 定 や 見 積. りの 方 法 に対 して疑 問 を投 げ か け る 姿 勢 が 欠 けて い た こ と。 ⑥ 事 案 の29%に. お い て 、 売 掛 金 の監:査手 続 が不 十 分 で あ っ た こ と。 十 分 な 売 掛 金 口座 に. つ い て 確 認 を行 っ て い な い こ と、 確 認 回 答 書 が 得 られ な か っ た 場 合 あ る い は 確 認 金 額 との 間 に重 要 な齪 齢 が あ る に もか か わ らず 、 必 要 な代 替 的 な手 続 を実 施 して い な か っ た こ と。 回 答 内 容 をFAXで. 確 認 す る こ と を怠 っ た り、 確 認 依 頼 状 の 発 送 を被 監 査 会. 社 に 依 頼 す るな ど、 確 認 手 続 その も の に 暇 疵 が あ っ た こ と。. 一5一.

(6) 監査 の 失敗 と監査 上 の懐{.. ⑥ 事 案 の27%で. は 、 関 連 当 事 者 間取 引 を監 査 入 が 識xaで きて い な か っ た こ と。. ⑦ 内 部 統 制 に過 度 に信 頼 を.置い て い た こ と,検 出 され た.統制...Lの欠 陥 に 対 す る 対 応 を 怠 っ て い た こ と。 以 上 の 監 査 手続 の 欠 陥 の な か に は 、 「職 業 専 門 家 と して の 正 当 な注 意 」 や 「職 業 的 専 門 家 と して の 懐 疑 心 」(professionalskepticism).〔3;の欠如 の レベ ル で は な く、① 予 定 され た監 査 手 続 が そ も そ も実 施 され て い な か っ た こ と、 ② 監 査 手 続 自体 が不 適 切 に 適 用 され て い た こ とな ど 、 粗 雑 な監 査 に深 く関 係 して い る も.のもあ る。 その よ う な粗 雑 な 監 査 の 実 施 が 監 査 人 の 精 神 的 独 立 性 や 誠 実 性 の 欠 如 に起1*1し た も の か 、 それ と も監 査 人 の 注 意 不 足(懐. 疑 心 不 足)に. 起 因 した もの で あ る か は 、 上 記 の 論 文 に お い て 識 別 さ.れて い な い.し か し、 監 査 人 の 判 断 が 適 切 に 行 使 され て い な か っ た こ と だ け は 明.らか で あ る。. 現 実 に起 こ っ た 監 査 の 失 敗 事 案 の な か に は.、被 監 査 会 社 に よ る 粉 飾 決 算 が 新 聞 等 で 報 道 さ. 図表2不 会社名. 年月 1. 2010‑5. 正 な財務報告 と循 環取 引 事業内容 医薬 ・化 学 品、 飼 料. 事件 当 時 の 監査 人. メル シ ャ ン. 酒窺. 中央 青 山. トー マ ツ. 事件後 新任監査 人 トー マ ツ. z. 2009‑3. 広 島 ガス. ガ ス事業. 3. zoos‑z. ジ ャ パ ン ・デ ジ タル ・コ ン テ ン ツ 信 託. コ ンテ ン ツ制 作 支援. 中央 青 山. 4. zoos‑i. 理経. 電亭部品. 新 日本. 新 日本. 5. cGGG‑1. iHi. 総合重機製造. 新 臼本. 新 日本. 6. 2008‑12. ア イ ・ピ ー しイ ー ホ ー ル デ ィ ン グ ス. ITソ. 新 日本. 新 日本. 7. 2008‑11. 大水. 水産物卸. 中央青出. 8. 2008‑9. プ ロデ ュー ス. 電 子 部 晶 ・半 導 体 製遣 装 置. 隆盛. 建設.. . トー マ ツ. トー マ ツ. 電池. 卜一 マ ツ. トー マ ツ. リ .ユ ー..シ ョ ン. あず さ 個 人2名 共 同監 査. トー マ ツ 一. 9. 2008‑9. 鹿島建設. io. 2008‑8. ジ ー ・エ ス ・ユ ア サaポ. i1. 2008‑2. ニ イ ウ ス コー. ソ フ トウ エ ア 受 託. 12. zom‑s. .ネ ッ トマ ー ク ス. 産業用電気機器卸. あず さ. 一. 13. 20073. サ イバ ー フ ァー ム. 物 流 シス テ ム. あず さ. 一. 14. 2007‑3. 加 ト吉. 食品製造. 中央青山. 一. 15. 2007‑1. ア イ. システ ム 開肇. 新.日本. 一. 5&. 2006‑4. フ ク ビ化 学 工業. プ ラス テ ィ ック建 材製 造. 永昌. t7. 2004‑11. メ デ ィ ア ・リ ン ク ス. ie. 2004‑10. カネ ボ ウ. .一..... ... ・エ ッ ク ス. 出 所;金 融 庁EDIMTか. レ7シ. ョン. ・ア イ. 情 報 シス テ ム販 売 .繊維 ・化 粧 品製 造 販売. トー マ ツ. 永昌. 新 日本. 一. 中央青山. 『. ら筆者 が 作成 した も ので あ る。. 付 紀:① 一 は 、 当該.会#1が消 滅 し たか 、 他 の会 社 に吸 収 され た か 等 に よ り、 事 件 発覚 当 時の 会 社 の 状 態 に 大.きな変 化 が起 こ って い るの で 、 調 査 の 対 象が ら外 され て い る。 その 大 半 ば消 滅 し、 か り に存 在 して い た と して も、 少 な くと も金 融 商 品取 引 法 適用 会 祉 で は ない 、 と考 え られ る。 ② カ ネ ボ ウの 不F.会 計 の 中 心 は 業 績 不 振 の 子 会社 の 連 結 外 しに あ る が、 実 質 的 に 「 循 環 取 引 」 とい え る仕 組 み が温 存 され て いた 。 カ ネ.ボウのdun,当 初 販売 され た在 庫 製uuは 原 糸 で あ る が、 同 祉 に結 果 と して 還流 され て きた 製 品#1会 その 意味 で 、 この 表 に含 め て い る。. 社 で製 造 され た原 糸 を使 っ た繊 維製 品(毛 布)で あ った 。. 一6一.

(7) 監 査の.失敗 と監査 上 の懐疑.に義. れ て初 め て 、 財 務 諸 表....ヒ の 重 要 な 虚 偽 表 示 が.監査 人 の認 識 プ ロ.セス の な か で 素 通.り.して い た こ とが 明 らか に な った 場 合 〔4〕 も あ る 。 監 査 プ ロ セ.スの な か で 見 過 ご され て い た と い ケ、.当事 者 で あ る監 査 人 に とっ て は な ん と もや り きれ な い状 況 で あ る.こ の よ うな 状 況 が 次 第 に 多 く な つ て きて い る の で は な い か.▽との 危 惧 を 強 くす る。 取 引 が.複雑 に な..っ て い る と い う理.由の 他 に、 経 営.者が監 査 人 の 行 う監 査 認 識(監 査.手続).り 弱 点 ・盲 点.・限 界 等 を巧 に突 い た 不 正 取 引 の ス キ ー ム を 作.り上 げ る か らで あ る。 た と え ば 循 環 取 引 〔,,が そ れ で あ る。 図 表2は 、 2004年 か ら2〔110年7月 末 まで の 期 間 に お い て 、 循 環 取 引 が 関 係 した不 正 な 則務 報 告(不. 適. 切 な財 務 報 告)と 監 査 の 失 敗 事 案 を ま とめ た もの で あ る。. 皿. 職業 専門家 と しての正 当 な注意 と職 業的専 門 家 と しての懐 疑心. 財 務 諸 表 監 査 の 失 敗 、 と りわ け大 き な監 査 の 失 敗.を繰 り.返さな い た め に は 、 監 査 人 は 監 査 の 有 効 性 を一一 ・ 段 と高 め な け れ ば な らな い 。 監 査 人 は監 査 判 断 を ど の よ うに 高 め 改 善 した らよ い の で あ ろ うか。 監.査判 断 の 失 敗 を 防 ぐに は 、 監 査 認 識 の あ り方 を ど の よ う に考 え た らよ い の で あ ろ うか。 監 査 人 は監 査 認 識 の 原 点 を ど こ に置 くべ きな の で あ ろ うか 。 現 在 の 公 認 会 計 七が従 事 して い る 監 査 判 断 の 枠 組 み に は.、.何 か 璽.要な 問題.が.見落.とされ て い るの で は な い だ ろ う.か。 公 認 会 計 士 が 財 務 諸 表 監 査 の も.とで 行 う監 査 判 断 の あ り方.を、.いっ た い ど の よ うな 視 点 か ら.議論 し考 察 す べ.きな の で あ ろ うか. 従 来 、.監査 判 断 に お.いで 監:査入 に 求 め..ら れ る注 意 の標 準 は 、 「職 業 的 専 門 家 と して の 正 当 な注 意 」 で あ っ た。 「職 業 的 専 門 家 と して の 正 当 な 注 意 」..によ っ.て示 され る.注意 の 標 準 は、 ア メ リカ の 場 合 に は、1946年. に 公 表 され た 「監 査 基 準 試 案 』(AIA)に. お いて初 めて導 入 さ. れ 、1954年 に正 式.に承 認 され たLi監 査基 准一 一 般 に認 め られ た監 査 基 準 の意 義 と.範囲』(AIA {7954])に お,k'iZ「一 般 基 準 」 の1つ [1997Dに. と して 明示 され 、 そ の 後 、 監:査基 準 書 第s2.号(AICPA. お い て 「職 業 的 懐 疑 心 」 な る 考 え方 が そ こに 追 加 され る まで 、 無 修 正 の ま ま 引 き. 継 がれた。. ProfessionalSkepticism O7.DueprofessionalcarerequirestheauditortoexerciseproPessiona4skeptiaiem. Professionalskepticismisanattitudethatindicatesaquestioningmindandacritical assessmentofauditevidence.(強. 調 筆 者).. 08.Gatheringandobjeclivelyevaluatingauditevidencerequirestheauditortoconsider thecompetenceandsufficiencyoftheevidence.Sinceevidenceisgatheredandevaluated. ̲7̲.

(8) 監査 の 失敗 と監査 上の懐疑 主 義. throughouttheaudit,professionalskepticismshouldbeexercisedthroughoutthe auditprocess.(強. 調 筆 者). 09.Theauditorneitherassumesthatmanagementisdishonestnorassumes unquestionedhonesty.Inexercisingprofessionalskepticism,theauditorshouldnotbe satislledwithlessthanpersuasiveevidencebecauseofabeliefthatmanagementishonest (強 調 筆 者). 一方 、 わ が 国 の場 合 に は、 職 業 専 門 家 と して の 正 当 な 注 意 を規 定 した基 準 は 、証 券取 贋 法 監 査 の 全 面 実 施 に 伴 い、 大 蔵 省 企 業 会 計 審 議 会 が 昭 和31(1956>年12月250に 『 監 査 基 準 』(中 間 報 告)に. お い て 明示 され 、 平成14年1月25日. 公表 した. の 「監 査 基 準 』 の 改 訂 直 後. まで 、 そ の ま ま引 き継 が れ て きた 。 企 業 会 計 審 議 会 は 、前 文 『 監 査 基 準 の 改 訂 に つ いて 』(平 成14年1月25日)に. お い て 、 「職 業 的懐 疑 心 」 な る 用 語 を追 加 す る意 味 を次 の よ うに 説 明. した。. 「(3>職. 業的懐 疑心. 監 査 人 と して の 責 任 の 遂 行 の 基 本 は、 職 業 的 専 門 家 と して の 正 当 な 注 意 を 払 う こ と に あ る。 そ の 中 で 、 監 査 と い う業 務 の 性 格 上 、 監 査 計 画 の 策 定 か ら、 そ の 実 施 、 監 査 証 拠 の 評 価 、 意 見 の 形 成 に至 る まで 、 財 務 諸 表 に 重 要 な虚 偽 の表 示 が 存 在 す る虞 に 常 に 注 意 を払 う こ と を求 め る との 観 点 か ら、 職 業 的 懐 疑 心 を保 持 す べ き こ と を特 に 強 調 した。」(強 調 追 加 〉. 『 監 査 基 準 』 の 「般 基 準 」 は 、 職 業 的 懐 疑 心 に関 し、 「3監 査 人 は 、 職 業 的 専 門 家 と して の 正 当 な注 意 を払 い 、懐 疑 心 を保 持 して 監 査 を 行 わ な け れ ば な らな い 。」(強 調 追 加)と 規 定 し、 さ ら に 「 実施 基準」の 「 基 本 原 則 」 に お い て 、 以 下 の よ うな 規 制 を行 っ た。. 「4監. 査 人 は 、 職 業 的 専 門 家 と して の 懐 疑 心 を も っ て 、 不 正 及 び 誤 謬 に よ り財 務 諸 表 に. よ り財 務 諸 表 に重 要 な虚 偽 の 表 示 が も た ら され る 可 能 性 に 関 して 評 価 を 行 い 、 そ の 結 果 を監 査 計 画 に 反 映 し、 これ に 基 づ き監 査 を実 施 し な け れ ば な らな い 。」(強 調 追 加). ア メ リカ 公='flVL.会 計 士 協 会 がprofessionalskepricismに. 、 そ して 企 業 会 計 審 議 会 が 「職 業 的. 専 門 家 と して の 懐 疑 心 な る概 念 に 関 心 を持 ち始 め た の は、 「職 業 的 専 門 家 と して の 正 当 な注 意 」 を強 調 す るだ け で は 、 監 査 判 断 に起 因 し た監 査 の 失敗 を 防 ぐ こ と が難 し くな りつ つ あ る こ と を認 識 し始 め た か らで あ ろ 旗 、監 査 判 断 の あ り方 一. 一$一. と りわ け監 査 手 続 に お け る監 査 判.

(9) 監査 の失敗 と監 査上 の 陵疑.}. 断 の あ り方 一. に 重 要 な 影 響 を 与 え るllgGの. あ るprofessionalskepflcismと. は 、何 で あ ろ. う か.. 職業 的懐疑心. 経営者の誠実性 についての 中立 的立場. す で に 言 及 し た よ う に 、 ア.メ リ カ 公 認 会 計 士 協 会 は 、 監 査 基 準 書 第82号(1997>に てprofessionalskepticismな. お い. る 表 現 を 導 入 し 、 と り わ け 監 査 手 続 と.関係 づ け る こ と に よ っ て 、. こ の 概 念 の 重 要 性 を 強 調 し た 。 ま た 、 公 開 会 社 会 計 監 視 委 員 会(PublicCompanyAccounting OversightBoard:PCAOB)も され た. 『PCAOB国. 監 査 基 準 第5..号(2007,y[4)に. お い て 、 さ ら に2(X〕8年 に 公 表. 内 会 社 検 査 報 告 書 』(ReportonthePCAOB'slnspectionsofDomestic. AnnuallyInspectedFirms)に. お い て 、職 業 的懐 疑 心 の 重 要 性 を 追 認 して い る。. ア メ リ カ 公 認 会 計 士 協 会 が 監 査 基 準 書 に お い て 導 入 し た.professionalskepticismは 手 続 に 従 事 す る 監 査 人 の 心 の 状 態(心. の 持 ち 方)で. 心 」・「疑 い を 投 げ か け る 心 」(aquestioningm…ind)、 い姿勢」 あるいは. 、 監査. あ り 、 そ の 内 容 を 敷 街 す る と 、 「疑 う. 「入 手 し た 監 査 証 拠 の 質(信. 「経 営 者 ・従 業 員 の 陳 述 を 鵜 呑 み に し な 頼 性 ・真 正 性 〉 を 疑 っ て み よ う と す る 姿 勢 」. で あ る 。 そ れ は 、 基 本 的 に は 、 証 拠 の 人 手 と 証 拠 の 評 価 に従 事 す る 場 合 の 公 認 会 計 士 の 姿 勢 の あ り 方(心. の 持 ち 方)を. 監 査基準書 が. 規 制 す る概 念 と して 導 入 され て い る。. 「職 業 専 門 家 と し て の 懐 疑 心 」 に 言 及 し た こ と は 、 会 計 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル. に よ る財 務 諸 表 監 査 に と っ て重 要 な 展 開 で あ る。 そ れ は、 同 時 に 、 本 質 的 に微 妙 な 問 題 一 す な わ ち 、 監 査 人 は 経 営 者 の 誠 実 性 を ど の よ う に 考 え る.のか と い う 問 題 門 一を 潜 在 的 に 抱 え て い た 。.同基 準 書(.09)は. 、 監 査 人 に 対 し て 、 経 営 者 を 誠 実 で.あ る と も、 反 対 に 、 誠 実 で は. な い と も 、 そ.のい ず れ も.想定 し て 監 査 に 臨 ん.で は な ら な い 、4‑1す. れ .ば、 経 営.者の 誠 実 性 に. 関 し て 予 断 を も っ て は な.らな い 、 と 規 定 し た 。 こ の 立 場 は 、 監 査 人 は 、 経 営 者 の 言 明 に 対 し て 事 前 に い か な る バ.イ ア ス("anybiasexante"or"biasineitherapositive(̀trusting'.)or negative(̀suspicious)direcfion;)を. 持 っ て は な ら な い こ と を 意 味 して い る. p.3;Gushing[2000】.P.2)。ThePanelonAuditEffectiveness(以 準 書 の こ う した立 場 に つ い て 、 関 係 者 の 間 で. .(Nelson[2009],. 下 、 「1'hePanel」)は. 、監 査 基. 「fi立 的 立 場 」 と の 特 徴 づ け が な さ れ て い る こ. と を 紹 介 し て い る([1980],p.7fi)。 心 理 学 的 ア プ ロ ー チ に よ る 監 査 認 識 爾 究 は 、 「職 業 的 專 門 家 と して の 懐 疑 心 」 な る 概 念 が 監 査 基 準 書 に明 示 され た こ と に よ っ て 一 一層 の 拍 車 が か か っ た 。 監 査 人 が 求 め る 証 拠 の 範 囲 や 監 査証拠 の評価. い ず れ も 、 監 査 人 の 証 拠 料 断 に ほ か な ら な い一. は、 この よ うな 姿 勢 を. 監 査 人 が ど の 程 度 強 く抱 くか ど うか に よ って 影 響 を 受 け る。. 職 業的懐 疑心 Skepticismを. 疑 っ て か か る姿 勢 を 強 調 す る 立 場 も っ て 「心 の 状 態 」(amentalatGtudel>と. 一9一. 捉 え る従 来 の 基 本 的 視 点 に 変 化 が.

(10) 監 査の 失敗 と監 査上 の懐 疑主義. あ っ た わ け で は な い 。 し か し 、 監 査 に お け るskepricismの. 理 解 の 仕 方 に つ いz、. 新 た な展 開. や 問 題 提 起 が な され る よ うに な っ た。 新 た な 展 開 と は 、skepticismを. 、 と りわ け経 営 者 の 誠 実 性 を 中立 的 に捉 え よ う と す る立 場. に 対 し て 、 経 営 者 に 対 す る 疑 い を も う 少 し 強.め よ う と す.る.立 場 の 出 現 を 意 味 す る 。..The Pane1は. 、 財 務 諸 表 監 査 に お い て 求 め ら れ る.職業 的 懐 疑 心 は 、刑 事 捜 査(forensicinvesfigation). に 従 事 す る 警 察 官 や 不 正 摘 発 監 査.(forensicauditing)に 懐 疑 心 と は 異 な る こ と を 指 摘.し た う え で(p.76)、. 従 事 す る監 査 人 に 求 め られ る 職 業 的. 従 来 の 中 立 的 立 場 に そ の ま ま.甘ん ず る の. で は な く 、 不 正 捜 索 型 の 調 査 方 法 を 財 務 諸 表 監 査 に 反 映 させ る 必 要 性 を 勧 告 し 、 次 の よ う に 述 べ て い る。 ご. 不 正 捜 査 型 操 作 の 調 査 方 法 を財 務 諸 表 監 査 に 反 映 させ る と い う こ と は、GAAS監. 査 を不. 正 摘 発 監 査 に変 え る こ と を意 味 して い るの で.はな い 。.不正 捜 査 の 局 面 を もっ たGAAS監. 査. の特 徴 は、 監 査 人 の懐 疑 心 の 程 度 に お け る 態 度 の 変 化 を伝 え よ う とす る もの で あ る。 こ う した局 面 の 中 で は 、 監 査 人.は、 何.も.なけれ ば 申立 的 で あ る とす る職 業 的 専 門 家 と し .ての懐 疑 心 の概 念 を修 正 し、 共 謀 、 内 部統 制 の 無 視 、 お よび 文 書 の偽 造 を 含 む 、 さ ま ざ ま な レベ ル で0)経 営.者の 不 誠 実 の 可 能 性 を想 定 しな け.れば な ら.ない 。(PRS8‑90). ThePanelの. 立 場 に11乎 応 す る か の よ う に 、 研 究 老(Bellelal,[2005];Nelson[2009].)の.間. で も 、 従 来 の 中 立 的 概 念 と し て の 懐 疑 心 で は な く、 経 営 者 の 誠 実 性 に 対 す る 疑 い を 事 前 に 想 定 し て 監 査 に 臨 む こ と を 重 視 す.る立 場 一. 「推 定...r.の疑 い 」.(presumpfive.doubt))が. 主張 さ. れ 始 め た 。.「推 定 上 の 疑.いJ..と..は 「疑.っ て か か る 監 査.人 の 姿 勢 」 で あ り、 し た が っ て 、 そ の よ う な 意 味 で の 懐 疑 主 義 が 強 調 さ れ れ ば 、.そ れ を 反 映 し た 監 査 手 続 は お の ず と厳 し く な る (Nelson.[2009],p.3).。 第2は. 懐 疑 主 義 は 、 ど の よ う に 、.監査 手 続 の あ り方 に 反 映 す る の で あ ろ う か 。. 、professionalskepticismあ. る い はskepticisminauditingに. 対 し て 、、い ま だ 十 分 な 定. 義 が な さ れ て い な.い、.と の 問 題 提 起.で あ る(Belletal.[2005]P.66)。Nelsonは.professional skepticismに. 対 して. 「監 査 人 が 入 手 し た 情 報 次 第 で あ る が 、 あ る ア サ ー シ ョ ン が 正 し く な い. と い う リ.スク が 高 め に 評 価 さ れ て い る こ と を.表す 監 査 人 の 判 断 ・意 思 決 定 に よ っ て 示 さ れ る よ う な も の 」([2009].p.4)と. の 定 義 を 与 え て い る が 、定 義 と し て は 十 分 で は な い(Quadackers. [2009],p16)o 「疑.う心 」 と い う 実 質 が 明 ら か に な っ て い る に も か か わ ら ず 、 監 査...fI.のskepticismの. 定義. が い ま だ 十 分 で な い と す る 研 究 者 に よ る 指 摘 は 、 何 を 意 味 し て い る の で.あ ろ う か 。 そ れ は 、 駝 査 上 のskepticismに. は 、 監 査 証 拠 の 入 手 と 評 価 に 従 事 す る監 査 人 の 持 ち 方. 立 性 」 を 強 調 す る も の で あ ろ う と 「椎 定 上 の 疑 い 」 を 強 調 す る も の で あ ろ う と一 う と す る 視 点(監. それ が. 「中. を捉 え よ. 査 基 準 書 〉 だ けで は な く、 監 査 人 が従 事 す る監 査 証 拠 の 入 手 と評 価 の あ り. 一10一.

(11) 監 査 の失 敗 と監査上 の懐 疑 主義. 方..監. 査 人 が 従 事 す る 監 査 認 識 の あ りJiを. 捉 え る視 点 が 必 要 で あ る が 、 そ の 双 方 の 視. 点 が 既 存 の 定 義 に お い て は 適.切 に 統 合 さ れ て い な い こ と を 意 味 し て い る 、 と 推 察 す る 。 も し こ の 推 察 が .正し い と す れ ば 、 こ の こ と は 、 監 査 上 のskept正CISIIIは 単.に と して で は な く 、 監 査 認 識 の あ り 方(監. 査 手 続 の 枠 組 み)も. 「監 査 人 の 心 の 状 態 」. 含 め て定 義 す る必 要 が あ る。. 監 査 の.世界 に お け るskepticismの. 存 在 を 初 め て 言 及 し た の は 、MautzandSharaf(1961). で あ る 。 彼 ら が 言 及 し たskepticismは. 、 「監 査 人 の 心 の 状 態 」 と し て のskepticismと. り も 、知 識 の 理 論 に お け る 認 識 方 法(awayofknowing)の1つ 彼 ら は 、 以 下 の よ う に.、監 査iに お け るskepticismと. と し て のskepticismで. い うよ あ っ た。. そ の 有 用 性 の 限 界 を 以 一rの よ う に 説 明 し. た。. モ ン タギ ュ は 、 理 念 や 信 念 を支 持 して い る.証拠 の.入手 に 関 す る以 上5つ. の積極 的方法に. 加 え て、 懐 疑 主 義 と い う6番 目の 消 極 的 方 法 を挙 げ て い る。 この よ うな 認 識 方 法 が 監 査 人 に と って 価値 あ る こ とは 容 易 に わ か る.。繭.懐 疑 主 義 は 、賢 明 に 用 い られ る場 合 に限 っ て 、 思 索 家 に とっ て利 用 で き る重 要 な用 具 の1つ. で あ.る。 も..し 思索家 が証拠 の信頼性 を十分に. 見極 め る ま で は 、 他 の 認 識 方 法 に よ っ て 得 られ た証 拠 に 疑 い を もつ よ うで あれ ば 、懐 疑 主 義.は有 益 で あ る 。 換 言 す れ ば 、 す で に 認 め られ て い る こ とで.あるが 、 理 性 的 な人 間 で あ れ ば 、 入手 した 証拠 は 十 分 に 説 得 的 で あ る と判 断 す る場 合 で あ る に も か か わ らず 、 も しい つ まで も疑 い を も ち 続 け て い る な らば 、 懐 疑 主 義 は 有 益 と さ.れる 境.界を.すで に超 え て い る。 (MantzandSharaf[1961],pp.96‑97). 知 る方 法(認. 識 す る方 法)と.し て は 、 上 で 取 り.一 とげ た5つ.の 積 極 的 な方 法 が あ る が 、 さ.. らに 監 査 人 に とっ て と りわ け 重 要 な 、 第6番. 目の"消 極 的 な"方. 法 が あ る。 これ が 懐 疑 主. 義 で あ る。 懐 疑 的 で あ.るとい う こ と は 、確 信 を得 る こ とが 不 可 能 で あ る こ と を意 味 す る も の で は な い。 懐 疑 主 義 ど は 、..むしろ、 合 理 的 な評 価 と称 され るべ き、 証 拠 に 対 峙 す る監 査 人 の 姿 勢 を示 唆 す る もの で あ る。 無 能 な 者 は 、 最 良 の議 拠 で あ っ て も、 そ れ を受 け人 れ る .の を拒 否 す る か も しれ な い .同 様 に 、 別 の 無 能 な者 は、 最 も薄 弱 な 証 拠 で あ る に.もか か わ らず 、 その 証 拠 で確 信 を得 た とい うか も しれ な い。.監査 に お い て 、 この よ うな 両 極 端 は排 さな けれ ば な らな い 。 監 査 人 は 、 本 書 で.言及.した 「知 る方 法 」 に...i分 精 通 しな けれ ば な ら ない、 、 ま た、 証 拠 の 種 類 に 精 通 し、 各 証拠 の 種 類 が持 っ て い る強 さ と弱 さ と を認 識 しな け れ ば な らな い。 監 査 人 は(証 拠 を)受 け い れ るの に急 い て は な らな い が 、 け っ して 満 足 し な.いと い うこ とが あ っ て は な ら な い 。 す で に 示 唆.した よ うに 、 監 査 の 局 面 に は 、 完 全 に確 証 的 な証 拠 が 入 手で き な い よ う.な場 合 や アサ ー シ ョ ンの 重 要 姓 に 照 ら して 、 証 拠 の 入 手 に あ ま り に も費 川 が か か りす ぎ る と判 断 され る場 合 が 多 い 。 反 対 に 、 ア サ ー シ ョンが 極 め て 重 要 で あ り、 最 良 の 証 拠 を 入 乎 す る た め の 強 力 な監 査.x続 が 求 め られ る場 合 も あ る。 さ.ら. 一P1一.

(12) 監査 の失敗 と監 査上 の懐 疑 煮義. に、 問 題 と な っ て い る事 項 の 重 要 性 は 十 分 に認 め られ な が ら も、 十 分 に確 証 的 な証 拠 を入 手 す る こ とが で きず 、 その た め、 監 査 人 が 職 業 的 専 門 家 と して 意 見 を表 明 す る こ と を 拒 否 しな け れ ば な ら な い場 合 もあ る。 こ の よ う に 、 懐 疑 主 義 は 、 ① 証 拠 は 、 そ のplL'lt力 に お い て 一 様 で は な い こ と 、 ② わ れ わ れ は こ の 事 実 に も っ と注 意 を向 け な け れ ば な らな い こ と、 そ して 、③ 監 査 人 が 証 拠 を利 用 す る場 合 に は 、 い か な る種 類 の 証 拠 で あ れ 、 そ こに は程 度 の 差 こ そ あ れ 、 リス クが あ る こ と を 、 わ れ わ れ に 対 し て 注 意 し て い る の で あ る 。(Mautz[1964],pp.63‑64>. 筆 者 が 渉 猟 した 文 献 の 範 囲 で あ る が 、skepticismに 関 してMautzら. が 説 明 した もの は以...is. の 部 分 に 限 られ て い る。 その た め 、彼 らの 説 明 は 、 監 査 上 のskepticismを ず し も十 分 で は な い 。 認 識(知. る)方 法 と してskepticismを. と評 価 に 対 峙 す る際 の 監 査 人 の 心 の あ り方(姿 ら く、 この こ と は 、監 査 上 のskepticismは. 理解す るうえで必. 説 明 して い る一 方 、 証 拠 の 入 手. 勢) .を説 明 して い る部 分 も読 み取 れ る。 お そ. 、 監 査 人 の 「疑 う心 」 の レベ ル と、 監 査 人 の 従 事. す る 証 拠 の 入 手 と評 価 の あ り方(監 査 認 識 の あ り方 〉 の レベ ル との 双 方 を 内包 す る もの で あ る こ と を示 唆 して い る 。 監 査 の 失 敗 が 現 実 に 起 こ る と、 そ の 反 省 と して 、 た と え ば 「も っ と懐 疑 心 を働 か せ よ 」・ 「 懐 疑 心 が 足 りな い 」 と、 関 係 者 は 口 を そ ろ え る 、 、確 か に 、 特 定 の 監 査 現 場 に お い て 監 査 人 が も っ と懐 疑 心 を働 か せ て い れ ば 、 監 査 の 失 敗 は 防 げ た か も しれ な い 。 現 実 に は、 そ の よ う な場 合 が 多 いか も しれ な い。 しか し、 そ の 一 方 で 、 職 業 的懐 疑 心 の 不 足 は 監 査 人 の 個 人 的 属 性 や 監 査 人 の 帰 属 す る組 織 的 属 性 だ け に 起 因 して い るの で は な く、 監 査 人 が 暗 黙 裡 に(当 然 の こ と と して 〉 想 定 して い た監 査 認 識 方 法 そ の もの. 監 査 認 識 の あ り方 その もの 一. に原. 因 が あ る の か も しれ な い 。 た と え ば最 近 素)が国 の 会 計 社 会 に お い て 財 務 報 告 に大 き な影 響 を 及 ぼ す 企 業 取 引 と して 、 関 係 者 の 間 で 関 心 が 高 ま っ て い る もの に、 循 環 取 引 が あ る。 日本 を 代 表 す る 大 監 査 法 人 の す べ て が 循 環 取 引 に 起 國 し た(あ る い は循 環 取 引 に 関連 して 〉監 査 の 失 敗 を、 しか も幾 度 と な く経 験 して い る(図 表2)。 これ を ど の よ う に考 え た ら よい の で あ ろ うか 。 監 査 人 に す べ て懐 疑 心 が足 りな か った 、 と総 括 す べ きな の で あ ろ うか 、 そ れ と も、 監 査 人 が 無 意 識 の う ち に 陥 っ て い る認 識 上 の 罠(現 行 の 監 査 認 識 の枠 組 み が有 して い る潜 在 的 問題 〉が あ る と考 え る べ きな の で あ ろ うか。 筆 者 が 問 題 とす る点 は、 ま さに 、 こ の 点 で あ る。 い っ た い 、懐 疑 主 義 に基 礎 を置 く監 査 人 の 認 識 の 枠 組 み と は、 どの よ うな考 え方 を 内 容 と す る もの な の で あ ろ うか 。 職 業 的 懐 疑 心 の 重 要 性 を精 神 論 と して 監査 人 に 説 く こ と は容 易 で あ る。 しか し、 職 業 的 懐 疑心 の議論 を単な る 「 精 神 論 」 に留 め て は な らな い。 とい うの は 、 監 査 の失 敗 は 、 監 査 人 の 懐 疑 心 が 足 りな か っ た.ことに よ って の み 引 き起 こ され るだ け で な く、 監 査 人 の懐 疑 心(監 査 人 の 心 の 持 ち 方 〉 その もの に 影 響 を 与え る監 査 手 続 の 枠 組 み 一 ….監査 認 識 方 法 と して の懐 疑. 一iz一.

(13) 監 査の失 敗 と監 査上 の懐 疑 主義. 主義. に よ?て 影 響 を受 け て い る 可能 性 が た ぶ ん に 予 想 され るか らで あ る。. か く して 、 監 査 の 失 敗 は 、 監 査 人 個 人 に帰 す る.部分(懐 疑 心 と して のskepticism)と 該 監 査 人 が 従 事 し て い た 監 査 認 識 の あ り方 そ の も の に 帰 す る部 分(懐 skepflcism)と. 、当. 疑 主 義 と して の. に 分 け て分 析 す る 必 要 が あ る。. N監. 査判断上の誤謬 を生み出す監査環境. わ れ わ れ の 職 業 の な か に は 、 当事 者 の な した 言 明 が 真 で あ るか.どうか 、 あ るい は(も し弱 め られ た形 で)よ. う少. り確 か ら しい もの で あ るか ど うか を、第.三者 が 証 拠 に基 づ い て 判 断 し、. そ の 結 果 を第 三 者 の 新 た な言 明 と して 当事 者 に 伝 え る 、 と い う機 能 が と りわ け 強 く求 め られ て い る も の が あ る。 原 告 と被 告 の 主 張 が 対 立 す る争 点 に つ い て法 的 判 断 を下 し判 決 を下 す 裁 判 官 、 わ れ わ れ の 社 会 で 起 こ っ た 出 来 事 につ い て 情 報 を 集 め 、 そ の 真 偽 の 程 度 を確 か め 、 最 終 的 に は 当該 出 来 事 の 内 実 を 「記 事 」.こ う て、 事 実 そ の もの で は な い. れ は 第 三 者 に よ る.評価 を受 け た事 実 的情 報 で あ. と して 社 会 に 広 く報 道 す る ジ ャ.一ナ リス ト、 そ して 経 営 者. の 会 計 的 言 明 を 証 拠 に基 づ い て.立証 し、 当該 言 明 の 適.正表 示 につ い て の 信 念 を監 査 意 .見と し て 表 明 す る監 査 人 が そ れ で あ る。 い ず れ の 場 合 で も、 当事 者 に は、 情 報 の 入 手(利 判 断 が求 め られ るが 、 場 合 に よ っ て は 公 正 な(偏. 用)・ 評 価 に 関 して 、 独 立 的 で 客 観 的 な. ら な い)判 断 が特 に重 要 視 され る場 合 も あ. る。 裁 判 官 は そ の 典 型 的 な例 で あ り、.制度 的 に は 、 公 正 な 判 断 が下 せ る よ う な仕 組 み が 裁 判 官 に保 証 され て い る。 監 査 人 が 関.与す る社 会 的 関 係r作 川 者 と して の一 般 投 資 者 との 間 の 関係 一. 成 者 と して の 経 営 者 と情 報 利. は 裁 判 官 が 関 与 す る訴 訟 関係 と は異 な る が 、 監 査. 人 の 判 断 に も独 立 的 で客 観 的 で 、 そ して 公 正 な 判 断 が 求 め られ て い る。 監 査 の 失 敗 は 、 多 くの 場 合 、 監:査人 に 本 来 求 め られ て い る はず の 「客 観 的 で 公 正 な 判 断 」 が 十 分 に 発 揮 され な か っ た こ とに 起 因 して い る。Bazermanら. は 、 監 査 の 失 敗(badaudits:〉. を引 き起 こす 真 の原 因 は 、 監 査 人 の意 図 的 な 堕 落 に あ る の で は な く、 監 査 人 の 無意 識 なバ イ ア ス(unconsciousbias>に. あ.る、 と の 観 察 を す る(13azerman,Loewenstein,andMore. [2002D。 彼 らは 、 公 認 会 計 士 が 行 う監 査 の 舞 台 が 「公 認 会 計1.=に と って 都 合 の よ い(利 的 な 〉 バ イ ア ス 」(self‑servingbias>を. 己. 生 み 出 す 特 に肥 沃 な土 壌 とな って い る こ と、 と りわ. け 、 会 計 の 有 す る3つ の 構 造 的 な 面(PP98‑100)が. 、 彼 らの バ イ ア ス が 監 査 判 断 に影 響 を. 与 え る機 会 を作 り出 して い る こ と 、 さ らに 、 そ の よ う な機 会 が 人 間 の 有 して い る3つ の 本 性 (p.100)に よ っ て 増 幅 され て い る こ とを 指摘 す る、. 一13一.

(14) 監査 の失 敗 と監 査上 の懐疑 主義. 会 計 の 構 造 的 側 面= ・会 計 と 監 査 が 有 し て い る 曖 昧 さ(ambiguityinaccountingandauditing) ・公 認 会 計 士 は. 、 経 営 者 の 知 遇 を.得て 、 被 監.査会 社 と 長 く付 き合 う こ と に 強 い イ ン..セン チ. ィ ブ を 有 し て い る こ とJ(attachment) ・経 営 者 が 下 し たt断. を 承 認 あ る い は 評 価 す る と い う側 面 を 監 査 が 究 極 的 に 有 して い る こ. と」(approval) 監 査 人 が 有 し て い る 人IPJ的 本 性;. ・「人 は 、 親 密 な 間 柄 に あ る 人 に 対 し て は 、 そ の 人 が 被 る 損 害 を で き る だ け 小 さ く し て あ げ よ う と の 意 向 が 強 く 働 く」(familiarity> ・「人 は 、 即 座 に 悪 い 結 果 が 出 る.こ と が 分.か っ て い る よ う な 場 合 に は 、 そ れ を 直 ち に 出 す よ うな 行 動 は せ ず 、 む しろ 、 そ れ を後 に 延 ば す よ う な行 動 を採 ろ う とす る 傾 向 が あ る 」 (discounting) ・「人 は 、 軽 率 な 行 動 や う っ か り ミ ス に つ い て は 、 そ れ を 隠 そ う と す る 、 あ る い は 、 言 葉 巧 み に 言 い ぬ け よ う と す る が 、 そ の よ う.な行 動 を し た 結 果 、 う っ か り ミ ス の 結 果 が 集 積 し大 き く な っ て い っ た 場nに. は 、 そ れ を 意 図 的 に 隠 蔽 し よ う と す る 意 思 が 働 く傾 向 が あ. る 」(esca且anon). 著 者 らは 、 以 上の よ う な 心 理 学 的 な.分析 ・観 察 に基 づ い て 、 エ ン ロ ン事 件 発 生 時 点 に お け る公 認 会 計.r.査. の 仕 組 み に つ い て改 善 の 提 案 を して い 風,監 査 を改 善 す るの は、 公 認 会 計. 士 を脅 した り、tr言 を 弄 す る こ とで は な い(P.102)。. 彼 らは 、監 査 人 の利 己 的 な バ イ ァ ス を. 生 み 出 す 状 況 を 公 認 会 計 士 の周 囲 か ら取 り除 く.ことで あ る と考 え、 次 の よ うな 環 境 改 善 の た め の い く.つか の 緊急 策(p.ユ 〔}2)を提 案 す る5. ① 被 監 査 会 社へ の コ ン サ ル テ ィ ング 業 務 の 禁 止 。 ② 更 新 に.よる 監 査 契 約 で は な く、..監 査 の 結 果 に か か わ らず 、 監 査 契 約 が 、 あ る一 定 期ray、 自 動 的 に保 障 され る 仕 組 み を導 人 す る こ と。 監 査 期 閻終 了 後 の 再 契 約 は 禁.止.され る こ と。 ③ す べ て の 報 酬 お よ び その.内容 は 監 査 契 約 締 結 時 点 で 確 定 し、 変 更 で きな い もの とす る こ と。 ④ 監 査 事 務 所 自 体 の 定 期 的 な 交 替 を法 律 で 義 務 付 け る こ と。 ⑤ 被 監 査 会 社 が監 査 契 約 締 結 中.の監 査 事 務 所 か ら の退 職 者 を雇 用 す る こ と の禁 止 。.. 重 要 な こ とは.、監 査 人 の 利 己 的 なバ イ ア ス が監 査 判 断 の 深 層 部 分 で 影 響 を 与 えて い る こ と を 正 し く認 識 す る よ う に な らな けれ ば な らな い、 と彼 らが 強 調 して い る点 で あ る。 監 査 人 と. 一14一.

(15) 監 査 の失敗 と監査上 の懐 疑 主義. い え ど も、 無 意 識 の うち に ミス を起 こす こ.とが あ る こ と、 また 、 なぜ 、 彼 らが そ の よ うな ミ ス を 犯 す に至 っ た か の 理 由 を理 解 させ る こ とで あ る1と 主 張 す る(p.102)。. そ して 、 「プ ロ.. フ ェ ッ シ ョナ リズ ム こ そ が 監 査 人 を ミス か ら守 る こ との で き る防 波 堤 だ 」.と、 強 調 して 止 ま な い公 認 会 計 士 も、 も.し監 査 に お.けるバ イ ア スの 問 題 を真 に 理 解 した な ら.ば、 そ の よ うな こ とは も う 言わ な くな るで あ ろ う、 と.。 監 査 判 断 上 の 誤 謬 は 、監 査 人 が:有して い る 「利 己的 なバ イ.アス.」に よ.って 引 き起 こ され る。 彼 らの ア プ ロ ー チ は 、 心 理 学 的 分 析 を通 じて 、 監 査 人 が 拠 っ て 立 つ 監 査 の 舞 台 の外 郭 を改 善 させ る と い うと こ ろ に 置 か れ て い る■ ・しか し、 監 査 人 が 陥 る 判 断 上 の 誤 り は、 彼 らの 主 張 す る 「利 己 的 なバ イア ス」 だ け に 起 因 す る もの で は な い 。 監 査 の 外 郭 面 で の 改 善(改. 革)が 監. 査 人 の 利 己的 なバ イ ア ス を 除 去 す る うえ で 役 立 つ こ と は確 か で あ る が 、 監 査 人 が 日常 的 な監 査 の なか で 当然 の こ と と して 受 け い れ て い る監 査 認 識 の あ り方 その もの が 、 監 査 人 に と っ て む し ろ都 合 の よ うバ イ ア ス を結 果 と して 醸成 して きた、 とい え るか も しれ な い 。 わ れ わ れ が 、 監査の失敗 を 「 職 業 的 懐 疑 心 」 や 「バ イ ア ス 」 との 関係 で一 ロ. す なわち心理学的 なアプ ロー. コ. チ だ けで 一. 捉 え る.ので は な く、 監 査 人 の従 事 す る監 査.手続 の あ り方 とい う視 点 か ら. す. な わ ち監 査認 識 の あ り方 とい う視 点.から.一 捉 え る必.要が.ある と主 張 す るの は、 そ の た め で あ る。. .Vむ. 監 査..Lの 懐 疑 心 の 問. 一一r密. す び に代 えて. に い う と.、財 務 諸 表 監 査 に 従 事 す る 監 査 人 の 懐 疑 心 一. は、. 犯 罪 捜 査 に 従 事 す る 捜 査 関 係 者 の.懐疑 心 や 不 正 摘 発 に 従 事 す る.監査 人 に.求め ら れ る 懐 疑 心 と は 異 な る 。 し か し、ThePanelは. 、 こ れ まで の 中 立 的 概 念 と して の 職 業 的懐 疑 心 を、 不 正 監. 査 や 犯 罪 捜 査 に お い て 求 め.ら れ る 懐 疑 心 を 反 映.し た.もの.に修 正 し 、 「不 正 捜 査 の 局 面 を も っ た 監 査 」(forensic‑typefieldwork>を. 提pigす る 。 し か し、 こ の 提 案 は 、 監 査i上 のskepticism. を 「疑 う 心 の 持 ち 方 」..のレ.ベル で 捉 え よ.う と す る立 場 に と ど ま.り、 そ れ を 超 え る も の で は な い。 監 査 上 の 懐 疑 心 の 議 論 は 簡 単 で は な い 。 「懐 疑 心 を 働 か せ る 」 と い っ て も 、 監 査 契 約 が 経 営 者 と 監 査 人 と の 間 の.自 由 契 約 で.あ り 、 か つ 、 監 査 手 続 は 契 約.上 の 信 義 を 基 礎 に お い て 実 施 さ れ る 隈 り、 「疑 う 心 」 の 重 要 性 を 強 調 し て も、..そこ に は お の ず と 限.界 が あ る か ら で あ る 。 「合 理 的 な 懐 疑 心 」(reasonableskeppcism=(Anderson1977Lp125)・ (healthyskepticism=[SEC1974]:Robertson[1979],p.31).と は 、 財 務 諸表 監 査 に お け る懐 疑 心 は. 「健 康 的 な 懐 疑 心 」 い う表 現 が 使 用 され て きた の. 「適 度 に 抑 制 さ れ た 」 も の で な け れ ば な ら な い か ら で あ. る。 しか し 、 監 査r.の 懐 疑 心 の 問 題 は 、 監 査 人 の 疑 う 心 の 程 度 は 合 理 的 な 健 康 的 〉 で あ る か ど. 一15一.

(16) 監 査の 失敗 と監 査上 の懐 疑 主義. うか とい う次 元 で 取 り上 げ られ るべ きで は な く、 監 査 人 が従 事 す る監 査 手 続 の 枠 組 み が 当 該 監 査 契 約 の も とで 監 査 人 の 疑 う心(職 業 的 懐 疑 心)を. どの 程 度 十 分.に発 揮 させ る も の で あ る. か 、 と い う次 元 で 問 わ れ る べ きで あ る。 監 査 研 究 者 は、professionalskepticismを. 監 査 人 の心(監. づ け 、 心 理 学 を援 用 して 監 査 認 識 の領 域 を実 証 的 にG+Aし 研 究 が 前提 と して い た 「職 業 的 懐 疑 心!の. 査 人 の 心 理)の. 問題 として位置. よ う と して き た。 そ の よ う な 実 証. 内 容 に つ い て の 解 釈 は 、経 営 者 の 誠 実 性 に つ い て. あ く ま で 中 立 的 な 解 釈 を重 視 す る監 査 基 準 書 の 立 場.であ っ た 。 しか し、 監 査 判 断 の 研 究 は、 と りわ け職 業 的 懐 疑 心 に 関 係 づ け た監 査 研 究 は 、 そ れ だ けで 十 分 で は な い。 監 査 人 が 証 拠 を 入 手 し評 価 す る方 法 や 枠 組 み を 規 定 す る懐 疑 主 義 を 明 らか にす る、 と い う試 み が 不 可 欠 で あ り、 そ れ で 監 査 上 の懐 疑 主 義 を主 題 とす る監 査 判 断 研 究 の両 輪 が 揃 う こ と とな る。 監 査 証 拠(研 究)の. 枠 組 み が そ の根 本 か ら大 き く変 わ ろ う と して い るの で は な い か 、 と筆. 者 は 推 察 して い る 。 監 査 上 の 懐 疑 主 義 につ い て の これ か らの 監 査 研 究 の 方 向 は 、 「懐 疑 心 」 (skepticism)そ. の もの に 狙 い を 当 てる の で は な く、 「監 査 証 拠 の 入 手 と監 査 証拠 の 評 価 の あ. り方 を 問 う監 査 認 識(監. 査 手 続)の. で あ る 。 た と えば 、Solomonら. 枠 組 み 」(skepticism)を. 探 求 す る方 向 で模 索 され る べ き. が 提 唱 した 「三 元 的 証 拠 評 価 法 」(triangulation)の. 意 義 は、. そ の よ うな 枠 組 み を追 求 す る 方 向 との 関係 で 理 解 され るべ き で あ る。 それ は 新 た な監 査 証 拠 の 分 類 法 に つ い て の 単 な る提 唱 で は な い 。 懐 疑 心 を捉 え る 視 点 と して2つ doubt))一. の立 場 一. 中 立 性(neutrality)と 推 定 上 の 疑 い(presumptive. が 明 らか に な っ た 以 上 、 そ れ ぞれ の 立 場 が 投 影 され た監 査 手 続 の 枠 組 み と して. の懐 疑 主 義(skepficism)の. 世 界 を概 念 的 に、 か つ 、 実 証 的 に解 明 す べ きで あ る。 い っ た い 、. 監 査 人 は 、 長 い財 務 諸 表 監 査 の歴 史 に お い て 、 どの よ うな疑 う姿 勢 の.もとに 監 査 証 拠 の 入 手 と評価 に 従 事 して きた の で.あろ う か。 模 索 さ れ る監 査 研 究 は 、 監 査 上 の 懐 疑 主 義(skepticism)に. 図表3監. 基 礎 を 置 い た新 しい 監 査 研 究. 査硯究対 象 として の懐 疑主義 と隣接 学問. 心 理 学.. 監 査 人 の 疑 う心. s. Psychology. QuestioningMinc. 監査 上 の 懐 疑 主 義. 1. (Skepticism inAuditing). 監 査 認 識 の 枠組 み. →. Frameworkof AuditCognition. 監 査研究領 域. 一16一. 哲 学 ・言 語 学 a. Philosophy/Linguistics.

(17) 監査 の 失敗 と監査上 の 懐疑is義. (規範 ・概 念 研 究 〉 で あ ろ う し、 その 監 査 研 究 成 果 を現 実 の.世界 との 関 係 で説 明 す る研 究(心 理 学 に支 え られ た実 証研 究 と徹 底 的 な ケ ー ス研 究)で. あ り、.最 終 的 に は 、両 者 の 統 合(融. 合). を図 る、 と い う方 向 で あ ろ う(図 表3)。 監 査 とい う独 特 の 専 門 領 域 を、 哲 学 ・言 語 学 と心 理 学 と い う2つ の 基礎 学 問 と をす り合 わ せ て い く、 も っ と も難 しい分 野 一 監 査 人 の 判 断(内 的過 程 〉 に 関 す る監 査 研 究 分 野 はmicroauditと. 最近、 この ような. 呼 ば れ て い る一 一一...で あ る。. 現 実 に起 こっ た監 査 の 失 敗 事 例 を監 査 認 識 の 失 敗 と い う視 点 か ら分 析 ・考 察 す る 事 例 研 究 も、 こ う した研 究 成 果 の統 合 に 参 加 す る必 要 が あ る。 監 査 事 例 研 究 は 、 現 実 の 監 査 の 世 界 で 、 監 査 人 が い っ たい どの よ うな監 査 認 識 に 従 事 して い た か を、 個 々 の 監 査 失 敗 事 例 の な か で外 部 者 が 知 り うる唯.....一 の機 会 で あ る。 監 査 研 究 と監 査 教 育 につ い て 、"洗 濯"を. しな けれ ば な らな い 段 階 に現 在 来 て い る よ う に. 思 わ れ る。 そ れ が 、 特 に わ が 国 の 会 計 学 者 が 監 査 の 分 野 に お い て正 しい 意 昧 で の 「復 権 」 を 果 たす 残 され た道 の よ う に思 わ れ て な らな い 。. 【注 】 (1)「 監 査 の 失敗 」 とは、監 査 人 が7的 貢 任 を 追.及.さ れ 敗 訴 した事案 に限 らない 。 金融 庁 に よ る行 政処 分(業 務改 善.命令 ・課 徴金 納 付命 令 等)の 対 象 とな っ た事 案 の ほ か、 新 聞 等 で報 道 され た事 案 も含 む。 監 査 人 が意 図 的 に虚 偽 証明 を した場 合 は もち ろんの こ と、 財務 諸表 上 の.重要 な虚 偽 表示 に 気 づか ず 、結 果 と し て無 限 定適 正意 見 を表IIIした 場 合 も含め 、 こ こで は広 義 に 「 監 査 の 失敗Jと 捉 え て い る。 (2)本 稿 で は・ 「'職 業 的.醐 家 と して の 懐 疑 心 」 とi. .的懐 疑 創. を同 義 に 使 っ て い る。 と もに 原 詔 ま. professionalskepticismで あ る。 (3)ナ ナ ボ シ粉飾 決 算 事案 は 、粉 飾 決 算の 糸 口を 捕 まえ て いな が ら、 ま た、 粉 飾決 算 の可 能性 を示唆 す る よ うな状 況 が さ ま ざま な形 で現.れて い た に もか か わ らず 、 監査 判 断(職 業 的懐 疑 心)が 不 十 分 で あ った こ とか ら、監 査 人が それ に達 す る こ とが で きなか った;と を実 証 した好 醐 で あ る。 (4>そ0)代. 表的 な例 は、1997年11月22日. の 日本 経 済新 聞(夕. 刊)報 道 で 明 るみ に な っ たd .1...・ 謹 券 粉飾 事. 件 で あ ろ う。 この 場合 の 不 正 工 作 は一 部 の経 営 上 層 部 に よ って 実施 され,し た が って 一般 従 業 員 は も と よ り、外 部監 査人 もその 事 震 を知 る こ とは な か っ た。 な お、 この 事件 に対 す る当 事 者 に よ る総 括 は、 以 .下 の 文献 に お いて詳 細.にな され て い る。 伊藤 醇、/命燃 や しz』 東洋tPiR/x2010年 。 (5>繕 環 取 引 ζは、繹 営 者 が売.上高 を 増 やす ため 、 事 前 に取 引 先 に協 力 を求 め た うえ で 、在 庫 を一 切 動 か さ な い状 態 の ま まで販 売取 引 を起 こ し、 書 類 の うえで 当該取 引 を通 常 の 販 売取 引 と して 完 全 に仮 装 し売 上 高 を計。 ヒす る不正 取 引.をい う。 循 環 取 引 を成 功 させ るに は 、取 引 先 の 事 前の 協 力0)他 に 、 協力 費 を含 む 資 金 の手 当て が不 可 欠で あ る。 そ れゆ え、 資金 の手 当てが 続 く限 り、循 環 取 引 は 続 き.し たが って 、会 計 上の 不 正額(と 複 数の 場合(加. りわ け在庫 額)が 次 第 に 累積 して い くこ と とな る。 仮 装 取 引 に 関与 す る 第三 者 企 業 は 卜吉)も あ り、 ま た、こ.の取 引 に リー ス取引 を関係 させ た場 合(=イ. ウ ス コ ー)も あ る。. ま た、 当 初 は循環 取 引 を 意 図 した もので は ない が 、取 引 先 に販 売 した 製 品(原 糸)が 最 終 的 に は織 物 の 形 で戻 り在 庫 化 した、 と い う場 合. ゆ ネ ボ ウ)あ る。 循 環取 引 が採 る態様 は さま ざまで あ り、 ま た その. 発 覚 を 防 ぐた め、数 多 くの 聖 引 先 を巻 き込 む場 合 もあ る。.なお、循 環 取 引 の実 態 は 、井 端 和 男(2009年) にお い て詳細 に紹 介 され て い る。. 17一.

(18) 監査の 失敗 と監 査上 の懐 疑 主義. 惨 考 文献】 伊藤. 醇 ゴ 命燃 や して.一.一 山...・ 監 査 責 任 を巡 る!0年 の 暁跡 』 東洋 幽極.201〔}年 占. 欄 棚. 欝. 鳥 羽 至 英. 「.ナナ ボ シ 粉 飾 決 算 事 件 訴 訟 判 決 の. 倒産と循環魍 一および糠 ・ 騨 唖 蹴糠 監.査Lの. 税務経醐 会 〜009年 ・.. 意 義 」!1月. 刊. 監 査 役 」2010年1月No.56538‑61. a̲. ‑7Yzei>S「gn「'frcanceα. .歪 ..︑﹁ト =.卜旨. American[ostituteoCAccountants(AIA).19h6:ATentativeStatemento[GenerallyAeceQtedAuditingStandards πdSρ ψ2 .NewYork,NY,AIA.. rhρ⁝. AmericanInstituteo[Accountants(AIA).1954.GeneallyAcceptedAuditingStandards‑Thei>SdgniJ「canceand. }.出 ﹁.﹁P...﹂卍二 誤 .■.﹂.︹ ..F. Scnpe.NewYork,NY:AIA. American]ostituLe(,fCertifiedPublicAccountahts(A畳CPA),1997.ConsideratlonofFraudinaFinancial StatementAudit..StatemerotanAud「tdngStarulards(SgSI)No.82,NewYork,NY;AICP八. .ご F﹂己.= Fド. Anderson,RodneyJ.1977.ZYt2Extern「lAudit?Corycep[sandTechniques.lbronto,Canada:CoppClarkPitmxa. ニ.rPE. Bazerman,MaxH.,GeorgeLoeweustein,andDonA.Moore.2002.WhyGoodAccountantsDoBadAudits,. 匡. HarvardBusinessReview(11):97‑102. Beasley,MarkS.,JosephV.CarcellqandDanaR.Hermanson.2001.Top10AuditDellciencies.ノournalof Accountancy19/(4):63‑66. Bell,TimothyB.,MarkE.Peecher,andIraSolomon,2005.The21stCenturyPublicCompanyAudat‑ ConceptualElementsofKPMG'sGlobal!4udatMethodology,NewYork,NY=KPMGInternational.鳥as英 秋 月 信.=・. 福 川 裕 徳. ・ 岡11鳴慶. 監.査 』 国 元 書 房2010年. ・鈴 木 孝 則. ・永 見 尊. ・林 隆 敏. ・前 山 政 之. ・ ・山 崎 秀 彦. 『21世. 紀 の 公 開 会 社. 。. Gushing,B.E.,2000,"EconomicMalysisofSkepticisminanauditsetting"in14̀"SymposiumonAuditing ResercheditedbyIraSolomonandMaikE.Peecher,UrbanaLhampaign:Ils,ppa‑3. http,://www.business、ilGnois.edu/acc{}康. 益tancy/events/symposium/. Defliese,PhilipL.,HenryR.Jaenicke,JerryD.Suilivan,andRichardA.Gnospelius,[79Fi4],Montgome>y's Audating,TenthEdition,NewYorkN.Y.,JohnWiley&Sons,tnc. Mautz,RobertK.1969.Fund「ment「lsofAudaing.SecδndEditi6n,New.York:John..Wiley&Sons,Inc.. blautz,RobertK,andHusseinASharaf.1961.77aeFFaidosoghyofAudatixg.AmericanAccounfingAs…socia60n MonographNo,6,Sarasota,FL:AmericanAcc6u宝1廿ngAssociation, Nelson,MarkW.2009.AModelandLiteratureReviewofPPOfessionalSkepticisminAuditing.Auditing.'A Jo「rrnalofPractice&Theory.AmericanAccountingAssociation.1‑34. PublicCompanyAccountingOversightBoard(PCAOR).2008.ReportdothePCAOB's2004,2005,200Q「nd 20077nspectionsofDomesticArnua(lyInspectedFerms.PCAOBReleaseNo.2008…008.AveflableathLLp:// www.pcà,b.org/lnspections/Other/2008/12‑05Releases21〔ioaoos.gar Public.OversightBoard(POB).2000,TheYanelonノ CC'ffiePublicOversightBoard.山 状 分 析. 切4鷺 浦 久 司 監 訳. 雌. 児 島. と厚,ノmess.ReportandRecmnmendations...Stamford. 隆 ・小 澤 康 裕 共 訳. と 公 益 牲 向.上 の た め の 勧 告 〉』 白 桃 書 房200/sF.,. Quadackers,Lac.2009.AStudyofAttditors'SkepticadCharacieyasi「csandThe「>RelotdnnshiptoSkeptic「E JudgmentsandDecis「ons.Ph.lldissertation. Roberts〔}n,JackC.1979.Auditing.Dallas.,TXlBusinessPublications,Inc., SullivaqJ.D.,R.A.Gnospclius,P.L.DeflieseandH.R.Jaenicke.1985.Montgo‑raery'sAuditing:TenthElation, JohnWilcy&Sons,Inc.:NewYork. 'lh. eUnitedStatesSecuritiesExchangeCommission,Eebruary25,/974.AccountingSeriesReleaseNo.155,. 一18一. 『公 認 会.計 士 監 査. 米 国POB〈. 現.

(19) .撃 ... "fi. と 監 査 上 の 懐 疑 主 義. ndings…,OpinionandOrderAccepfingWaiverandConsentandImposingKemedialSanctionsInthe Mattevげ7bπcカ. θHoss&Co..1,. 19. .} .﹂﹂﹁.ヒ﹂.ご︑.﹂....己﹂..F﹂. 監 査 の 失 敗.

(20)

参照

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32 Sharaf [1 961

2 在に至るまでにさらに約

     監査の目的による内部監査の意義      三六

因があろう。 これらの 3

議論の大半はこれを容認する︒ノrトンもヒュームの思想を自然主義と認めるが︑しかしそれはF.ハチソンやケイ