ルーブリックと学習観,学習動機,学習方略 との因果分析
山本 美紀
電気通信大学大学院情報システム学研究科 博士(学術)の学位論文
2016 年 3 月
ルーブリックと学習観,学習動機,学習方略 との因果分析
博士論文審査委員会
主査 植野 真臣 教授
委員 大須賀 昭彦 教授
委員 田中 健次 教授
委員 南 泰浩 教授
委員 川野 秀一 准教授
委員 中山 実 教授
著作権所有者 山本 美紀
2016 年
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Analysis of the Effects of Rubric in
Learners’Conceptions of Learning, Motivation and Learning Strategy
Miki Yamamoto
AbstractThis paper presents the possibility of transformation of learners' conception of learning by practicing the assessment based on the
constructivist to learners. Specifically, we performed experimental classes by different methods to creating and presenting rubrics for open-ended and closed-ended tasks. We analyze empirically the effect of using the rubric in learners’ conceptions of learning, motivation and learning Strategy.
In general, structural equation model called SEM (Structural Equation Mode) [6] is used in the modeling using the data in fields such as psychology, education. First, we have causal analyzed using SEM. Result show that, (1) according to learning task, goal orientation characteristic to the learner is changed. In some cases, it would suppress the transformation of learners' conception of learning. But, using the rubric allows to directly induce the transformation of learners' conception of learning. (2) In open-ended task, by creating the rubric before challenge implementation in collaboration of
teachers and learners, the most transformation of the conception of constructivist learning is induced most. (3) In open-ended task, the
transformation of the conception of constructivist learning promotes using cognitive strategies and self-regulation strategies including meta-cognitive strategies, and enhances the learning task performance. (4) In open-ended task, by the learner to participate in creating the rubric, the intrinsic value of
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constructivist learning increases and motivation improves.
However, structural equation model, because it is provided by a statistical test of the tentative causal model based on a comparison of endogenous
covariance matrix and sample covariance, not possible to infer a causal direction variables. For that reason, causal structure using SEM depends on background knowledge and experience of the modeler, optimality not be guaranteed is problematic.
In contrast, in recent years, LiNGAM (Liner Non-Gaussian Acyclic Model) [36] has been proposed a method for estimating a causal model from the data, and has attracted attention.
Therefore, then, we have constructed a new causal model by applying LiNGAM. As a result, it showed the following thing. To use open-ended task, and to create the rubric in collaboration of teachers and learners before challenge implementation, it is the method that most potential to induce transformation of the conception of constructivist learning. In addition, this method to using the rubric has the most impact on such as motivation and learning strategies on the constructivism learning. Furthermore, by the application of LiNGAM, it revealed that the learners with increased
awareness of the conception of constructivist learning improved confidence (self-efficacy) for the learning task in closed-ended task, other than the group has been presented the rubric created by the teacher in advance. In addition, it revealed that promotes self-regard strategies linked to using cognitive strategies in open-ended task, it has been speculated that the performance of this task is difficult only cognitive strategies. On the other hand, the goal orientation of the learner is changed depending on the type of learning task, but there is a case to suppress the transformation of the conception of
constructivist learning, it has been suggested that can adjust the goal orientation by using the rubric.
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ルーブリックと学習観,学習動機,学習方略 との因果分析
山本 美紀
要旨
近年,教育パラダイムは,知識注入主義から構成主義へ変遷してきた.前者で は,「知識」が普遍的に真で分割可能であると考えていたのに対して,後者では,
知識は社会によって構築され,体系・理論として意味を持つだけでなく,それが 用いられるコミュニティに依存している[56]と考える.すなわち,それぞれ知 識を細かい単位に分割して暗記させる知識注入主義と実践的にコミュニティに埋 め込まれた知識を獲得する構成主義での学習観は異なってくる.現在の学校教育 では知識注入主義に基づく学習観が学習者を支配することが多く,構成主義的学 習観への変容は本質的な学習を行うための重要な課題となっている.
本論では,学習観が学習者の評価観に密接に関係していることを利用し,構成 主義的学習観に基づく評価を学習者に実践させることによって,学習観の変容を 誘発できると考える.具体的には,ルーブリックを活用した実験的な授業を行い,
その活用方法(提示方法,作成方法)の違いが学習者に与える影響をクローズエ ンドな課題(解が一意に決まる),オープンエンドな課題(解が一意に定まらない)
を用いて実証的に分析する.
一般に,観察データから現象の因果構造を探索する場合, SEM(Structural Equation Model)と呼ばれる構造方程式モデル[6]が用いられている.本論で は,まず,SEMを用いて因果分析を行った.その結果,(1)学習課題の形式によ って学習者の目標志向性が変化して学習観の変容を抑制する場合があるが,ルー ブリックの活用より課題によらず学習観の変容を直接的に誘発できる,(2)オープ ンエンドな課題では,課題実施前に教師と学習者集団の共同でルーブリックを作
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成した場合,最も学習観の変容を誘発する,(3)オープンエンドな課題では,構成 主義的学習観への変容によって認知方略およびメタ認知方略を含む自己調整方略 の使用が促進され学習課題の成績が向上する,(4)オープンエンドな課題では,学 習者がルーブリックの作成に参加することによって構成主義的学習に対する内発 的価値を高め,学習動機を向上させる,ことを明らかにした.
しかし,SEM は,標本共分散と内在共分散行列の比較に基づく仮因果モデルの 統計的検定によって提供されるため,変数の因果方向を推定することはできない.
そのため,SEMの因果構造は,モデラーの背景知識や経験に依存し,最適性は保 証されない問題が顕在化した.
これ に対 し ,近 年, デー タ から 因果 モ デル を 推定 する 手法 LiNGAM(Liner
Non-Gaussian Acyclic Model)が提案され[36],注目されている.LiNGAMと
は,本来,識別性のない因果方向の推定をデータの非ガウス性を用いて実現しよ うとする最先端手法である.そこで,次に,LiNGAM を適用することによって,
新たに因果モデルを構築した.その結果,オープンエンドな課題を用いて課題実 施前に教師と学習者集団の共同によるルーブリックの作成が,構成主義的学習観 への変容を誘発する可能性が最も高い活用方法であることを示した.また,この 方法は,学習動機づけ,学習方略の使用など,構成主義的学習において最も影響 を与えるルーブリックの活用方法であることを明らかにした.さらに,LiNGAM を用いたことで,クローズエンドな課題において,課題実施前に教師が作成した ルーブリックを提示した群以外は,構成主義的学習観への認識を高めた学習者は 学習課題に対する自信(自己効力感)を向上させることを明らかにした.また,
オープンエンドな課題において,認知方略の使用に連動し自己調整方略が促進さ れることが明らかになり,認知方略のみでは今回のオープンエンドな課題の遂行 は困難であることが推測された.一方,学習課題の形式によって学習者の目標志 向性が変化し学習観の変容を抑制する場合があるが,ルーブリックの活用により 目標志向性を調整できる可能性を示唆した.
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目次
第1 章 緒言 ... 1
第2章 ルーブリックの定義と関連研究 ... 5
2.1 構成主義的な学習環境に関する研究 ... 5
2.2 学習者個人の認識論(知識論)に関する研究 ... 7
2.3 ルーブリックの定義 ... 8
2.3.1 ルーブリックとは ... 8
2.3.2 ルーブリックの特長 ... 9
2.3.3 ルーブリックによる問題解決アプローチ ...10
2.4 本研究における仮説 ... 12
2.5 影響要因に関する研究 ... 13
2.5.1 学習観 ...13
2.5.2 目標志向性 ...14
2.5.3 学習動機と学習方略 ...15
2.5.4 ルーブリックの学習に与える影響のモデル化 ...16
2.6 ルーブリックを活用した実践研究 ... 17
2.6.1 教師が作成するルーブリックの活用事例 ...17
2.6.2 教師と学習者で作成するルーブリックの活用事例 ...18
2.6.3 学習者のみで作成するルーブリックの活用事例 ...18
2.7 本研究の位置付け ... 19
第3章 ルーブリックと学習観,学習動機,学習方略との因果分析 ... 22
3.1 緒言 ... 22
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3.2 方法 ... 22
3.2.1 調査概要 ...22
3.2.2 事前調査 ...23
3.2.3 実験的授業の流れ ...24
3.2.4 ルーブリックを用いた評価活動 ...29
3.2.5 事後調査 ...29
3.3 影響要因の分析 ... 31
3.3.1 分析方法 ...31
3.3.2 尺度構成 ...31
3.3.3 分散分析 ...35
3.4 共分散構造分析(SEM) ... 37
3.4.1 分析方法 ...37
3.4.2 結果と考察 ...39
3.5 結言 ... 43
第4章 LiNGAM による因果モデルの構築 ... 44
4.1 緒言 ... 44
4.2 因果構造探索法 ... 44
4.2.1 従来の因果構造探索法の問題点 ...44
4.2.2 非ガウス性を活用する因果構造探索法...45
4.3 LiNGAM ... 45
4.3.1 LiNGAMとは ...45
4.3.2 DirectLiNGAMアルゴリズム ...48
4.3.3 PkDirectLiNGAMアルゴリズム ...48
4.4 LiNGAMによる因果モデルの構築 ... 49
4.4.1 分析方法 ...49
4.4.2 結果と考察 ...57
vii
4.5 結言 ... 63
第5章 結言 ... 65
5.1 総括 ... 65
5.2 今後の展開 ... 67
引用文献 ... 68
付録 ... 73
謝辞 ... 80
関連論文の印刷公表の方法及び時期 ... 81
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図目次
図2.1 ルーブリックの例 ... 9
図2.2 ルーブリックの活用と学習観,学習動機,学習方略との関係についての 仮説モデル ...12
図2.3 ルーブリックの活用と学習観,学習動機,学習方略との関係についての 仮説モデルと関連研究 ...19
図3.1 クローズエンドな課題のルーブリック(実験 1) ...26
図3.2 オープンエンドな課題のルーブリック(実験 2) ...27
図3.3(a) 構成主義的学習観の因子分析 モデル(実験 1) ...32
図3.3(b) 構成主義的学習観の因子分析 モデル(実験 2) ...32
図3.4 多変量データの一部(実験 1) ...38
図3.5(a) SEMによる因果モデル(実験 1) ...42
図3.5(b) SEMによる因果モデル(実験 2) ...42
図4.1 データ行列 Xのデータ生成過程からランダムに生成されたモデル ...45
図4.2 外生変数 e1とe2 のガウス性および非ガウス性によるモデルの分布 ....46
図4.3 多変量データの一部(実験 1) ...50
図4.4 事前知識の行列(実験 1) ...50
図4.5 クローズエンドな課題における LiNGAM(実験1) ...55
図4.6 オープンエンドな課題における LiNGAM(実験2) ...59
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表目次
表1.1 教育学における教育パラダイムの変遷 ... 1
表3.1(a) クローズエンドな課題を用いた授業の流れ(実験 1) ...25
表3.1(b) オープンエンドな課題を用いた授業の流れ(実験 2) ...25
表3.2(a) クローズエンドな課題のルーブリック質のχ2検定(実験 1) ...28
表3.2(b) オープンエンドな課題のルーブリック質のχ2検定(実験 2) ...28
表3.3(a) Cronbachのα係数と主な適合度指標(実験1) ...34
表3.3(b) Cronbachのα係数と主な適合度指標(実験2) ...34
表3.4(a) 平均値(標準偏差)と検定統計量(F 値)(実験1) ...36
表3.4(b) 平均値(標準偏差)と検定統計量(F 値)(実験2) ...36
表3.5 各モデルに対する主な適合度指標 ...42
表4.1 LiNGAMのパス係数行列 B ,誤差変数,定数項(実験1) ...51
表4.2 LiNGAMのパス係数行列 B ,誤差変数,定数項(実験2) ...53
表4.3 LiNGAMの各モデルに対する主な適合度指標(実験1) ...62
表4.4 LiNGAMの各モデルに対する主な適合度指標(実験2) ...62
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第 1 章 緒言
近年 ,教育 パ ラダ イム は ,知識 注 入主 義か ら 構 成主 義へ 変 遷し てき た( 表1.1).
前者 では ,「 知識」が 普遍 的に 真 で分 割可 能 で ある と考 え てい たの に 対し て,後 者で は, 知 識は 社 会に よっ て 構築 され , 体系 ・理 論と し て意 味を 持 つだ け でな く,そ れが 用い ら れる コミ ュ ニテ ィに 依 存し てい る[56]と考 える .すな わ ち,
それ ぞれ 知 識を 細 かい 単位 に 分割 して 暗 記さ せる 知識 注 入 主 義と 実 践的 に コミ ュニ ティ に 埋め 込 まれ た知 識 を獲 得す る 構成 主義 での 学 習 観 は異 な って く る.
現在 の学 校 教育 で は知 識注 入 主義 に基 づ く 学 習観 が学 習 者を 支配 す るこ と が多 く, 構成 主 義的 学 習観 への 変 容は 本質 的 な学 習を 行う た めの 重要 な 課題 と なっ てい る. そ こで , 本論 では , 学習 者を 構 成主 義的 学習 観 へ変 容さ せ る手 法 を考 える .
本論 では , 上述 の よう に実 践 的に コミ ュ ニテ ィに 埋め 込 まれ た知 識 を 社 会 的 な営 みと し て学 習 者自 身が 構 築し てい く 過程 を構 成主 義 的学 習と 呼 ぶこ と にす る. そし て ,学 習 者が 構成 主 義的 学習 こ そが 本質 的な 学 習で ある と 考え る 信 念 を「 構成 主 義的 学習 観 」と 呼 ぶ.
表1.1 教育 学 にお ける 教 育パ ラダ イ ムの 変 遷
知識 注入 主 義 構成 主義
学習 主体 知識 観
学習 観 学習 課題 評価 形態
・教 師主 体
・知 識は 与 える (与 え られ る ) もの
・知 識伝 達
・学 校化 さ れた 課題
・テ スト に よる 客観 的 な評 価
・学 習者 主 体
・知 識は 自 ら構 成す る もの
・自 ら学 ぶ(知 識を 構成 す る)
・現 実味 の ある 課題
・ 学 習 者 の パ フ ォ ー マ ン ス の 主観 的な 評 価
2
これ まで に も, 学 習者 のコ ミ ュニ ティ と して の学 級集 団 や仲 間と の 相互 交 渉 を通 して , 知識 の 構成 を支 援 する 学習 環 境の 開 発 研究 と して ,協 調 学習 な ど構 成主 義的 学 習が 教育 現 場に 取 り入 れら れ てき た[31][5].Yamamoto et al.は,
関 連 論 文 ”Knowledge-Building Support through Social Navigation in Learning Community”(2012) に お い て ,Web上 で の 探 究 学 習 に ソ ー シ ャ ル タギ ング を 活用 す るこ とで , 学習 者の 知 識構 造と 学習 コ ミュ ニテ ィ の知 識 構造 を推 定し , 学習 者 が未 獲得 の 知識 を シ ス テム が推 薦す る 学習 コミ ュ ニテ ィ の知 識構 造に 基 づい て ナビ ゲー シ ョン する 学 習 支 援シ ステ ム を開 発し た .し か し,
ここ では 学 習者 に 知識 の構 成 の促 進を 図 って いる が, と もす ると そ のよ う な過 度な 学習 支 援は , 学習 者の 主 体的 な目 標 設定 や学 習方 略 の選 択の 妨 げに な り,
また ,評 価 が困 難 な課 題の 遂 行は 目標 の 達成 感や 内省 の 機会 を十 分 に得 ら れな いな どの 問 題が あ る. よっ て ,協 調学 習 を機 械的 に運 営 する だけ で は, 学 習者 はそ の経 験 を受 動 的に 受け 入 れ て いる に 過ぎ ず, 構成 主 義的 学習 を 実現 す るた めに は, 学 習者 自 身が 学習 に 対し て自 ら 学ぶ (知 識を 構 成す る) と いう 認 識を 持つ こと が 重要 で ある .そ こ で, 構成 主 義的 学習 観を 育 成す るた め に, 補 完的 にそ れを 実 現で きる 手 法の 開 発が 望ま れ る.
一方 ,構 成 主義 へ の教 育パ ラ ダイ ムシ フ トを 契機 とし , 学習 活動 や 課題 , 評 価方 法等 が 現実 的 なも ので は なく ては な らな いと いう 「 真正 性」 が 求め ら れる よう にな っ た. 現 実的 な課 題 (真 正な 課 題) と, 現実 的 な文 脈を 持 った 学 習内 容( 真正 な 文脈 ) のも と, 現 実に 即し た 活動 (真 正な 活 動) によ っ て進 め られ る学 習者 に よる 自律 的 な学 習 は「 真正 な 学習 」と 呼ば れ てい る.
真正 な学 習 では , 継続 的に 学 習者 の学 習 を多 面的 に評 価 する こと ( 真正 な 評 価) が求 め られ , 学習 の中 に 評価 が埋 め 込ま れて いる こ と が 特徴 で ある . すな わち ,学 習 者の 学 習プ ロセ ス にお いて 評 価活 動が 学習 の 一部 とし て 組み 込 まれ て お り , 学 習 者 に よ る パ フ ォ ー マ ン ス ( 成 果 物 な ど ) の 自 己 評 価
(self-assessment)お よび 学 習者 同士 に よる 相互 評価(peer-assessment),と 呼ば れる 手 法[52][54] が 注目 され て いる .
また ,こ の よう な 学習 評価 に おけ る評 価 基準 とし てル ー ブリ ック を 活用 し た 実 践 研 究が 盛 ん に 行 わ れ て い る[47][48][57]. そ の 中 で , 教 師 が作 成 し た ルー ブリ ッ クを 提 供す るだ け でな く, ル ーブ リッ クの 作 成に 学習 者 を参 加 させ
3
ると いう 試 みも 行わ れ てい る .
本論 では , 学習 観 が学 習者 の 評価 観に 密 接に 関係 して い るこ とを 利 用し , 構 成主 義的 学 習観 に 基づ く評 価 を学 習者 に 実践 させ るこ と によ って , 学習 観 の変 容を 誘発 で きる と 考え る. 具 体的 には , 学習 課題 につ い てル ーブ リ ック を 学習 者集 団に 共 同で 作成 さ せ, そ れを 基に 学 習・ 評価 させ る .
学習 者集 団 で学 習 課題 のル ー ブリ ック を 共同 で作 成し , それ を用 い た相 互 評 価を 授業 に 取り 入れ る こと に よっ て, 以 下の 利点 が期 待 でき る.
A. 学習 目標 が 共同 体で 構 築・共 有さ れ るこ とを 理解 し ,普遍 的知 識 観か ら 構 成的 知識 観 への 変容 が 起こ る .
B. 他者 と評 価 観を 話し 合 う過 程で ,自 己 の評 価観 が社 会 的に 調整・改 善 され , 学習 観も 変 容す る.
C. 教師 から 押 しつ けら れ た学 習で な く ,学 習者 自身 で 学習 目標 を 設定 ,評 価 する こと に より 自律 的 学習 が 経験 でき , 自信 と学 習動 機 が向 上す る . D. 学 習 目 標 を 達 成 す る こ と で 社 会 的 評 価 が 得 ら れ , 従 来 の 評 価 と は 異 な る
構成 主義 的 な学 習評 価 の利 点 が経 験で き る .
本研 究の 目 的は ,こ れら の 利点 が最 大 限に 得 られ るル ー ブリ ック の 活用 方 法,
すな わち , 学習 観 の変 容を 誘 発す るル ー ブリ ック の活 用 方法 を明 ら かに す るこ とで ある .そ の ため に,ルー ブ リッ クの 学 習者 の学 習観 に 与え る影 響 とと も に,
学習 を予 測 する 重 要要 因と な る学 習動 機 ,学 習方 略に 与 える 影響 を 因果 モ デル によ って 示 す.
そこ で, ル ーブ リ ック を活 用 した 実験 的 な授 業を 行い , その 活用 方 法( 提 示 方法 ,作 成 方法 ) の違 いが 学 習者 に与 え る影 響を クロ ー ズエ ンド な 課題 ( 解が 一意 に決 ま る),オー プ ンエ ンド な 課題( 解 が 一意 に定 ま らな い)を用 い て実 証 的に 分析 す る.
社会 学, 心 理学 ,教 育 学な ど の社 会科 学 分野 にお ける 因 果構 造探 索 では , 一 般に ,SEM(Structural Equation Model) と呼 ばれ る 構造 方程 式 モデ ル [6]
が用 いら れ てい る.
本論 でも , まず ,実 験 的な 授 業で 得ら れ た デ ータ を基 に SEMを 用 いて 分析 を行 った .しか し ,SEMで は二 つ の因 果 モ デル に差 異 ある 場合( 例え ば ,あ る 変数 間の 因 果方 向の 違 い) で も, 適合 度 指標 に大 きな 違 いと して 表 われ な い場
4
合が ある . これ は, 構 造方 程 式モ デル が 標本 共分 散と 内 在共 分散 行 列の 比 較に 基づ く仮 因 果モ デル の 統計 的 検定 によ っ て提 供さ れる た め, 変数 の 因果 方 向を 推定 する こ とは でき な い.そ のた め ,SEMの 因果 構造 は ,モ デ ラー の背 景 知識 や経 験に 依 存し ,最 適 性は 保 証さ れな い 問題 が 顕 在化 し た.
これ に対 し ,近 年, デ ータ か ら因 果モ デ ルを 推定 する 手法 LiNGAM(Liner Non-Gaussian Acyclic Model) が提 案 され [36],注 目 され てい る .LiNGAM とは ,本 来 ,識 別性 の ない 因 果方 向の 推 定を デー タの 非 ガウ ス性 を 用い て 実現 しよ うと す る最 先端 手 法で あ る. そこ で ,本 論で は, モ デル の識 別 がモ デ ラー に依 存し な いこ とを 重 視し ,LiNGAM を 適 用し 新た に 因果 モデ ル を 構 築 す る .
本論 文は ,次 の全 5 章 から 構成 さ れる .第 1 章で は ,問 題 の背 景と 研 究の 目 的,第2章で は,こ れま での 構 成主 義的 な 学 習 環境 に関 す る研 究に つ いて 述 べ,
その 上で ル ーブ リ ック によ る 問題 解決 ア プロ ーチ を検 討 し, 本論 が 最も ル ーブ リッ クの 利 点が 得 られ ると 期 待す る仮 説 因果 モデ ルを 提 示す る. そ して , 仮説 の根 拠を 示 すた め 学習 への 影 響要 因と し て学 習観 ,学 習 動機 ,学 習 方略 に 関す る関 連研 究 ,ま た ,ル ーブ リ ック を活 用 した 実践 研究 を 整理 し, 理 論的 位 置づ けを 明確 に する .第3章 で は,ルー ブリ ッ クを 活用 した 実 験的 な授 業 の方 法 と , 実験 で得 ら れた デ ータ をも と にル ーブ リ ック の学 習観 , 学習 動機 , 学習 方 略 に 与え る影 響を SEM によ っ て明 らか に する . 第 4 章では , 従来 の因 果 構造 探 索 法の 問題 点 を解 決す る ため に ,デ ータ の 非ガ ウス 性を 利 用す る LiNGAM を適 用し ,新た に構 築 した 因果 モ デル を 示す .第 5 章で ,総 括と 今 後の 展開 を 述べ る.
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第 2 章 ルーブリックの定義と関連研究
本章 では , 背景 と なる これ ま での 構成 主 義的 な学 習環 境 での 問題 点 を挙 げ , 学習 者の 発 達段 階 にお ける 学 習観 の変 容 につ いて 学習 者 個人 の認 識 論か ら 概観 する .そ の 上で 問 題解 決の 鍵 とな る“ ル ーブ リッ ク” と は何 かを 定 義し , どの よう にル ー ブリ ッ クの 特長 を 活か し問 題 解決 を導 くか に つい て 述 べ る. 次 に,
本論 が最 も 期待 する ル ーブ リ ック の影 響 を仮 説因 果モ デ ルで 提示 す る.そし て,
この 仮説 の 根拠 を 示す ため , 学習 への 影 響要 因と して 学 習観 ,学 習 動機 , 学習 方略 に関 す る関 連 研究 ,お よ びル ーブ リ ック を活 用し た 実践 研究 を 整理 し ,理 論的 位置 づ けを 明確 に する .
2.1 構成主義的な学習環境に関する研究
研究 背景 で は, 学 習者 のコ ミ ュニ ティ と して の学 級集 団 や仲 間と の 相互 交 渉 を通 して , 知識 の 構成 を支 援 する 学習 環 境の 開発 研究 と して , 協 調 学習 な ど構 成主 義的 学 習が 教育 現 場に 取 り入 れら れ てき た[31][5].
また ,近 年 では ,ソ ー シャ ル Web 技術 を 活用 した イン タ ーネ ット 上 での 学 習 活動 が多 様 化し てい る .特 に , Wiki, ブ ロ グ, そし て SNS(Social Network Service)な どで 形 成さ れる 集 合知 に着 目 した 学習 支援 の 研究 へと 拡 大し て いる .
Yamamoto et al.の 関連 論 文(2012) で は, 学習 者が 主 体的 に知 識 を獲 得 す る探 究学 習 にお いて ,膨大 な情 報 が溢 れる Web 上での 知 識獲 得を 支 援す るた め にソ ーシ ャ ルタ ギ ング の技 術 を活 用す る こと で, 学習 者 の知 識構 造 と学 習 コミ ュニ ティ の 知識 構 造を 推定 し ,学 習者 の 未獲 得の 知識 を シス テム が 学習 コ ミュ ニテ ィの 知 識構 造 に基 づい て ナビ ゲー シ ョン する 学習 支 援シ ステ ム を開 発 し,
評価 実験 を 行っ た .そ の結 果 ,コ ミュ ニ ティ の知 識構 造 から 新た な 知識 発 見の 機会 を得 る こと が でき る, ま た, エキ ス パー ト( 熟達 者 )の 知識 構 造を 参 照す るこ とに よ って , 不足 して い る知 識に 気 づく こと がで き るな ど 学 習 者の 知 識の 構成 を促 進 する な どの 効果 が 得ら れた . しか し, 一方 で シス テム に よる 過 度な
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学習 支援 が 学習 者の 主 体的 な 学び の取 捨 選択 を妨 げる 可 能性 もあ る .
これ まで の 構成 主 義的 な学 習 環境 の 開 発 研究 では ,協 調 学習 によ る 探究 的 な 学習 活動 を 実現 す ため に学 習 者を 含む 共 同体 の知 識の 構 成過 程を 可 視化 す るこ とに よっ て ,他 者 との コミ ュ ニケ ーシ ョ ンを 支援 し, 知 識 の 構成 の 促進 を 目的 とす るア プ ロー チを と るも の が多 い.
しか し, こ のよ う な協 調学 習 はオ ープ ン エン ドで ゴー ル が 明 確で な いた め , 学習 に対 す る評 価 が困 難で あ り, コミ ュ ニテ ィに とっ て も, 学習 者 個人 に とっ ても ,目 標 の達 成 感や 内省 す る機 会が 十 分に 得ら れな い 場合 があ る .そ こ で,
自ら 学ぶ 意 欲, 構 成主 義的 学 習観 の育 成 を実 現す るた め には ,補 完 的な 手 法の 開発 が望 ま れる . すな わち , 学習 者個 人 およ びコ ミュ ニ ティ にお け る 学 習 目標 の共 有, 学 習計 画 ,学 習方 略 など の協 調 学習 のプ ロセ ス や成 果物 に 対す る 評価 につ いて 検 討す る必 要 があ る .
構成 主義 的 な学 習環 境 の開 発 につ いて , 後 に Scardamalia[32][33] は,
知識 構築 共 同体 を決 定 する 技 術的 要因 と 社会 的認 知要 因の 12 項目 を設 定 し,
これ らに よ って 知識 構 築共 同 体が 発展 す るこ とを 示唆 し てい る.
本論 では , その 中 で特 に四 つ の項 目に 着 目し ,真 正な 学 習を 実現 す る構 成 主 義的 な学 習 環境 を検 討 する .ま ず,第1 項目 は真 のア イ ディ アと 真 正な 課 題に つい ての 必 要性 .次 に,第2 項目 は共 同 体の 知識 と集 団 的認 知責 任 とし て 学習 目標 の共 有 ,価 値 付け ,そ し て目 標へ の 貢献 (責 任) に 対す るよ り 高い 評 価.
さら に, 第 3 目は 知 識構 築 の話 合い , 最後 の 項目 は真 正 な評 価で あ る.
真正 な学 習 では , 継続 的に 学 習者 の学 習 を多 面的 に評 価 する こと ( 真正 な 評 価) が求 め られ , 学習 の中 に 評価 が埋 め 込ま れて いる こ とが 特徴 で ある . すな わち ,学 習 者の 学 習プ ロセ ス にお いて 評 価活 動が 学習 の 一部 とし て 組み 込 まれ て お り , 学 習 者 に よ る パ フ ォ ー マ ン ス ( 成 果 物 な ど ) の 自 己 評 価
(self-assessment)お よび 学 習者 同士 に よる 相互 評価(peer-assessment),と 呼ば れる 手 法[52][54] が 注目 され て いる .
また ,こ の よう な 学習 評価 に おけ る評 価 基準 とし てル ー ブリ ック を 活用 し た 実践 研究 が 盛ん に 行わ れて い る. そこ で ,ル ーブ リッ ク とそ の関 連 研究 に つい て調 査し , 本論 が 仮定 する 構 成主 義的 な 学習 環境 にお け るル ーブ リ ック の 活用 が学 習者 に 与え る影 響 を検 証 する .
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2.2 学習者個人の認識論(知識論)に関する研究
構成 主義 的 な学 習 環境 にお い て, 知識 構 成過 程に 適切 な 影響 を与 え るこ と で 学習 者の 学 習観 の 変容 が可 能 な学 習者 の 発達 段階 を個 人 の認 識論 か ら検 討 する . 認 識論 と は, 個 人の ”知 識 ”や ”知 る こと ”に つい て の信 念で あ り, 知 識論 とも 呼ば れ る. ま た, 構成 主 義は ,認 識 論の 一つ で「 知 ると いう こ とは 自 分の 中に 意味 を 構成 する 」 と考 え る立 場で あ る[19]と され る.
構 成 主 義 的 学 習 観 の 根 底 と な る 知 識 観 は 個 人 の 認 識 論 を 前 提 と し ,Perry
[29] は 個 人 の 認 識 論 が 段 階 的 に 発 達 す る と い う 段 階 モ デ ル を 提 唱 し て い る . また , Hofer and Pintrich[12] によ っ て ,Perry[29] の 発達 段階 は 4つ の 段 階 (1)二 項 対 立 主 義 : 知 識 を 正 し い か 間 違 っ て い る か と い う 観 点 か ら 捉 える 段階 .絶 対的 な 答え が ある と信 じ てい る,(2)多項 主義:知 識 の多 様 性と 不確 実 性を 認識 し 始め てい る が,真実 が ある とま だ 信じ てい る 段階 ,(3)相 対 主義:知 識は 相対 的 なも の であ り, 文 脈と して 知 識が ある と認 識 し, 自身 の 傾倒 を もち 選択 する 必 要性 を理 解 し始 め てい る段 階,(4)相対 主義 へ の傾 倒:個々 が それ ぞ れの 価値 , キャ リ ア, 関係 へ の傾 倒を も ち, それ をア イ デン ティ テ ィと し 形成 する 段階 , に整 理さ れ てい る .Hofer and Pintrich[12] によ る と, 小 学生 か ら高 校生 , およ び 大学 生の 初 めの 頃ま で は二 項対 立主 義 の認 識論 を もつ こ とが 多く ,大 学 生の 中 頃か ら卒 業 まで に多 項 主義 の認 識論 へ 変容 し, 相 対主 義 に近 づく 学生 も いる . そし て, 大 学院 教育 を 受け るこ とに よ って 相対 主 義に 至 ると 言及 され て いる .一 方 ,Scholmmer[34]は ,個人 の認 識 論は い くつ かの 次 元 で構 成さ れ てい ると い う多 次 元モ デル を 提唱 して いる .多 次元 モデ ル では ,「知 識の 確実 性」と「 知識 の 単純 さ」( 確 固た る 知 識の 存在 を 信じ る否 か),「 知識 の 源」と「知 識 の正 当化 」( 知識 が真 で ある 根 拠 を必 要と 考 える か否 か)な どの 各 次元 によ っ て発 達が 異 なる と 述べ られ て いる[12]が ,次元 間 の関 係は 明 らか でな い. ま た, こ れら 研究 か ら発 達の メ カニ ズム は明 ら かで は な い が, 個 人の 認識 論は 発 達す る と想 定さ れ る. 大学 生 の初 めの 頃ま で の知 識注 入 主義 の 一斉 授業 の影 響 によ る 二項 対立 主 義の 認識 論 を授 業の 形態 を 変え るこ と よっ て ,知 識の 相対 性 を理 解 でき る段 階 が大 学生 の 初め の頃 から 表 われ てく る ので は ない
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だろ うか .
野村・丸 野[24]は,高校 生 と大 学生 の 認識 論の 比較 か ら認 識論 の 変容 を 示 唆し てい る .し か し,野 村・丸 野[24]が 提 言す るよ う に,大 学院 で専 門 的な 訓練 を受 け なけ れ ば自 分自 身 の考 えを 含 めて 相対 化す る こと は容 易 では な く,
授業 観( 教 師や 学習 者 によ る 授業 の捉 え 方) ほど 容易 に 変化 しな い .
本論 は, 学 習者 個 人の 認識 論 の巨 視的 な 時間 軸上 のご く 一部 に焦 点 を当 て , 学習 観の 変 容を 検 証す る. し かし ,微 量 な変 容で あっ た とし ても , その 積 み重 ねに よっ て 構成 主義 的 学習 観 が育 成さ れ るこ とが 期待 さ れる .
そこ で, 個 人の 認 識論 にお け る二 項対 立 主義 から 多項 主 義 の 発達 段 階に あ る と考 えら れ る専 門学 校 1 年 次( 入 学し て 3 ヶ 月程 度 )の 学 生を 被験 者 とし ,実 験的 な授 業 を実 施 する .そ れ まで の知 識 注入 主義 の一 斉 授業 の形 態 では な く,
ルー ブリ ッ クを 活 用し た授 業 を経 験さ せ るこ とで 被験 者 の学 習観 の 変容 を 示す こと は, こ の発 達 段階 にお い てル ーブ リ ッ ク を活 用す る こと で構 成 主義 的 学習 観を 育成 で きる 可能 性 を示 す こと にな る .
2.3 ルーブリックの定義
2.3.1 ルーブリック とは
ルー ブリ ッ クは ,「 朱書 き ,も しく は 特別 な 字体 の表 題 」と いう 意 味を も つ . もと もと は 聖書 の 教典 のな か で教 会の 儀 式の あり 方を 朱 書き で示 し たと こ ろか ら,行動 規範 と いっ たよ う な意 味で 使 われ る よう にな っ た.教育 用語 と して は,
米国 で1980年 代か らポ ー トフ ォリ オ 評価 と と もに ,絶 対評 価 の判 断基 準 表を 意 味す る用 語 とし て広 く 使わ れ るよ うに な って きた .
文 部 科 学 省 中教 審 大 学 教 育 部 会 (2011年12月9日 ) の 説 明 資 料の 一 部 抜 粋 で は,「 学生 が 何を 学 習す るの か を示 す評 価 観点 と学 生が 学 習到 達し て いる レ ベル を示 す具 体 的な 評 価基 準を マ トリ クス 形 式で 示す 評価 指 標の こと 」 と定 義 され てい る . また ,現 代教 育 方法 事典( 図 書文 化 社 )評 価 指標( ルー ブ リッ ク)[23]
では ,「ル ー ブリ ック と は,成 功 の度 合い を 示 す数 段階 程 度の 尺度 と ,尺 度に 示 され た評 点 ・評 語 のそ れぞ れ に対 応す る パフ ォー マン ス の特 徴を 記 した 記 述語 から 成る 評 価基 準表 で ある 」 と定 義さ れ てい る.
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これ らの 定 義か ら ,ル ーブ リ ック とは 「 評価 基準 表」 に 集約 され る .具 体 的 には ,図 2.1の よう に ,① 評価 観 点( 課題 が 求め る具 体 的な スキ ル や知 識),② 評価 尺度(達 成レ ベ ル),③評 価 基準( 評 価観 点に 対し て 各レ ベル に 到達 す るた めの 具体 的 なパ フォ ー マン ス の 内 容),の 3 つの 要素 で 構成 され る .
課題 :ア ル ゴリ ズム 「 基本 三 構造 」演 習 問題
図 2.1 ル ー ブリ ック の 例
2.3.2 ルーブリック の特長
ルー ブリ ッ クを 用い る 主な 特 長に つい て[55],評価 者 と学 習者( 被 評価 者)
の各 側面 か ら利 点を 以 下の よ うに まと め られ る .
【評 価者 側 の利 点】
・評 価者 が 一貫 し て客 観的 に 適用 する こ とが でき る基 準 を 設 定す る こと に よ り, 評価 の 信頼 性を 高 める .
・確 立さ れ た基 準に よ って , 学生 の作 品 を評 価す るバ イ アス が低 減 され る .
・パ フォ ー マン ス 評価 のた め の基 準を 定 め, その 基準 を 満た す具 体 的な パ フ ォー マン ス の内 容 を説 明す る こと は, 教 師が 目標 を明 確 にし ,教 育 を向 上 させ る.
・ル ーブ リ ック は ,教 師が 学 習者 への 合 理的 かつ 適切 な 期待 を設 定 し, 学 習 者が それ ら をど れ だけ 満た し てい るか 一 貫し て判 断で き るよ うに , 教師 が 品質 の維 持 のた めに 目 印を 設 定す るの に 役立 つ.
・良 く設 計 され た ルー ブリ ッ クは ,カ リ キュ ラム , 教 授 ,お よび 評 価課 題 に 評価 基準 を 合わ せて 評 価の 構 造と コン テ ンツ の有 効性 を 増加 させ る .
評価 基準
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【学 習者 側 の利 点】
・ル ーブ リ ック は ,学 習者 が 学習 目標 を 設定 し, 学習 の ため の責 任 を果 た す こと を助 け る.
・学 習者 は 何が 最 適な パフ ォ ーマ ンス に なる かを 知っ て ,そ れを 達 成す る た めに 努力 す るこ とが で きる .
・自 己評 価 や相 互 評価 で使 用 した 場合 は ,学 習者 が自 身 のパ フォ ー マン ス の 質を 判断 す る能 力 や他 者の パ フォ ーマ ン スの 改善 を支 援 する こと が でき る .
・学 習者 は ,自 ら の強 みと 弱 点の それ ぞ れの 領域 につ い て, また , その 能 力 を向 上さ せ る方 法に つ いて の 具体 的な フ ィー ドバ ック を 受け 取る .
・学 習者 は ,自 分 の努 力と パ フォ ーマ ン スを 評価 し, そ れを 提出 す る前 に 学 習の 調整 を 行う ため に ルー ブ リッ クを 使 用す るこ とが で きる .
2.3.3 ルーブリック による 問題解 決アプロ ーチ
研 究背 景 の問 題 点に 対し て ,学 習評 価 活動 にお いて ル ーブ リッ ク を活 用 する こと よっ て ,問 題 解決 の糸 口 を探 る. 本 研究 では ,ル ー ブリ ック を 教師 が 評価 基準 とし て 使用 す るの では な く, 学習 者 自身 が学 習評 価 活動 にお い てル ー ブリ ック を活 用 する . 前述 の評 価 者( すな わ ち, ルー ブリ ッ クを 作成 し 提供 す る教 師) 側と 学 習者 ( ルー ブリ ッ クを 受け 取 る) 側の メリ ッ トに 注目 し ,学 習 者を ルー ブリ ッ クの 作 成主 体に す るこ とに よ って ,学 習者 は 評価 者側 の メリ ッ トも 得ら れる こ とに な る. また , 学習 者集 団 で作 成し た場 合 ,教 師と 学 習者 集 団の 共同 で作 成 した 場合 の メリ ッ トは , 以 下 にま とめ られ る .
(1) 学 習者 が ルー ブリ ッ クを 作成 す る メ リッ ト
・学 習課 題 を複 数の 学 習観 点 (評 価観 点 )か ら理 解し , 問題 解決 す る方 法 を 自ら 発見 す るこ とが で きる
・各 学習 観 点に レベ ル (評 価 尺度 )を 設 定し ,レ ベ ル を 満た すた め の具 体 的 なパ フォ ー マン ス( 評 価基 準 )を 自ら 設 定す るこ とが で きる
これ らに よ って , さら に, 現 時点 の自 分 のレ ベル を認 識 し, ベス ト な目 標 を立 て ,学 習 目標 達成 の ため の 計画 や方 略 を 立て るこ と がで きる .す なわ ち,
「自 ら学 ぶ 」方 法を 身 につ け るこ とが で きる と考 える .
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(2) 学 習者 集 団で ルー ブ リッ クを 作 成す る メ リッ ト
・学 習目 標 (評 価基 準 )を 集 団で 共有 し ,構 築す る過 程 で, 個々 の 学習 者 は 自身 の学 習 目標 (評 価 基準 ) を改 善で き る
・他 者と の 相互 作用 に よっ て ,学 習動 機 が向 上す る (3) 教 師と 学 習者 集団 で ルー ブリ ッ クを 作成 する メリ ッ ト
・教 師が ,学習 者集 団 の話 合い に 参加 ,助 言 によ って ,学習 目標( 評価 基準 ) 互い に合 意 がな され た こと に なる.よ って ,学 習動 機 ,目 標 達成 へ の自 信が 向上 する
・教 師の 助 言は ,学 習 者に 学 習へ の新 た な価 値を 発見 す る機 会を 与 える (4) 最 終 的に ,作 成し たル ー ブリ ック を 用い て集 団内 で 相互 評価 を 行う こ とに
より ,学 習 課題 の成 果 と同 時 に,(1),(2)の プロ セス を 自ら 見直 し ,改 善 で きる .ま た ,他 者と 双 方向 で 改善 への 支 援が でき る.
学習 者は , これ ら の構 成主 義 的な 学習 評 価の 利点 を経 験 する こと に よっ て , 学習 目標 を 共同 体 で構 築・ 共 有さ れる こ とへ の理 解が 促 され ,普 遍 的知 識 観か ら構 成的 知 識観 へ の変 容を 誘 発し ,ま た ,他 者と 評価 観 を話 し合 う 過程 で 自己 の評 価観 が 社会 的 に調 整・ 改 善さ れ, 学 習観 の 変 容を 誘 発す る可 能 性が 期 待で きる .
そ こで , ルー ブ リッ クの 活 用方 法の 違 いに よる 学習 者 へ与 える 影 響を 明 らか にす るた め,ルー ブ リッ ク の提 示時 期( 課題 実施 前/ 実 施後 ),お よ び作 成主 体
(教 師の み /教 師 と学 生) を 取り 入れ , さら に, 本研 究 では ,作 成 主体 と して これ まで 検 証が なさ れ てい な い「 学生 の みの 集団 」を 加 え,2 つの 提示 方 法と 3つの作 成 方法 を組 み 合わ せた 2×3 の 活 用方 法を 用い て,そ の影 響 を比 較す る.
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2.4 本研究における仮説
前節 で述 べ たル ー ブリ ック を 学習 者集 団 で作 成す るメ リ ット を基 に , 本 研 究 に お け る 仮 説(1) ル ー ブ リ ッ ク の 活 用 に よ っ て , 知 識 注 入 主 義 の 学 習 観 か ら 構 成 主 義 的 学 習 観 へ の 変 容 が 誘 発 さ れ る , 仮 説(2) ル ー ブ リ ッ ク の 活 用 に よ って 自信 と学 習 動機 が 向上 し, そ の相 乗効 果 によ って 構成 主 義的 学習 観 への 変 容が さ ら に 促 さ れ る , 仮 説(3) 構 成 主 義 的 学 習 観 へ の 変 容 は , 学 習 方 略 の 使 用 を 促 進し 学習 課 題成 績を 高 める ,を 図2.2に提 示 する .ま た ,本 論で は ,特 にル ー ブ リッ クの 活 用方 法 で, 学習 課 題実 施前 に 教師 と学 習者 集 団が 共同 で 作成 す るこ と に よ っ て 仮 説(1), 仮 説(2), 仮 説(3)の 最 も 期 待 す る 影 響 が 与 え ら れ る と 予 測 する (仮 説(4)).
本研 究で は ,構 成 主義 的学 習 観へ の変 容 を誘 発す るル ー ブリ ック の 活用 方 法 を明 らか に する た め, ルー ブ リッ クと 学 習の 成立 にお け る重 要要 因 に与 え る影 響を モデ ル 化す るこ と を目 指 す.
そこ で, 次 節に お いて ,モ デ ルを 構成 す る各 要因 と要 因 間の 関係 に 関す る 関 連研 究に つ いて 紹介 す る.
図2.2 ル ー ブリ ック の 活用 と学 習 観, 学 習 動機 ,学 習 方略 との
関係 につ い ての 仮説 モ デル
仮説(1) 仮説(3)
仮説(2)
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2.5 影響要因に関する関連研究
本節 では , ルー ブ リッ クの 学 習へ の影 響 を明 らか にす る ため に, 学 習に 影 響 を与 える 要 因と 要 因間 のモ デ ル化 に関 す る研 究に つい て 整理 する . まず , 学習 観の 重要 性 と, 本 論で いう 学 習と 学習 観 につ いて 述べ る .さ らに , 学習 に 影響 を与 える 要 因と して 目 標志 向 性,学 習 動機 と 学習 方略 が 知ら れて い る[30][14]
[46][51][22]. 本 節 で は , 目 標 志向 性 , 学 習 動 機と 学 習 方 略 を 紹 介 し, こ れら と学 習 観の 関係 の モデ ル 化 に 関す る 研究 を紹 介す る .
2.5.1 学習観
学習 とは ど のよ う にし て成 立 する の か . どの よう にす れ ば, 学習 は 効果 的 に 進 む の か . 植 木 [51] は ,「 学 習 観 」 を こ の よ う な 学 習 成 立 に 関 す る 信 念 と 限 定し ,そ の 構造 を 明ら かに し た. また , 学習 観と 学習 行 動の 関係 , すな わ ち,
学習 者の 学 習観 の 違い によ っ て学 習方 略 の使 用が 異な る こと を示 し , 学 習 観の 重 要 性 を 提 示 し た . し か し , 植 木 [51] が 示 し た , 学 習 観 の 因 子 構 造 は ,「 環 境志 向」,「 方略 志 向」,「学 習 量志 向」 で 構成 され てお り ,学 習観 の 土台 と なる
「学 習と は 何か 」, すな わ ち,「学 習の 主 体」 また 「知 識 構築 の過 程 」の 観 点か らの 考慮 が なさ れて い ない .
一方 ,中山[22]は「 目 標志 向性 」と「学 習 方略 」を規 定 する 中間 要 因と し て「 学習 観」を 取り 上げ ,「 目標 志 向性 」と「 学習 観」お よび「学 習方 略」の モ デル 化を 検 討し た .そ の結 果,「自 己 能力 に 対す る学 習 観」(す なわ ち ,語 学学 習に 対す る 自信 ) が学 習方 略 の選 択に 影 響を 及ぼ す 因 果 モデ ルを 提 示し , 学習 観を 考慮 し た英 語学 習 指導 の 必要 性を 示 唆し た.
中山[22]は,学 習観 とは「 学習 方略 に 影響 を与 える 思 い込 みや 信 念」と 定 義し てい る .し か し, この 研 究 で 学習 方 略の 使用 に影 響 を与 える 「 自己 能 力に 対す る学 習 観」 の 質問 項目 内 容は 「最 終 的に 今学 習し て いる 外国 語 をと て も上 手に 話せ る よう に なる と信 じ てい る」,「 自分 には 外国 語 学習 に対 す るセ ン スが ある 」,「 誰 でも 外 国語 を話 せ るよ うに な る」 であ るこ と から ,学 習 動機 の 学習 に対 する 自 信( 自己 効 力感 ) と同 様の も のの 様に も捉 え られ る.
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これ まで の 研究 に おけ る「 学 習観 」は 学 習の 成立 をど の よう に す れ ば多 く の 知識 を獲 得 する こ とが でき る かと いう 観 点か ら捉 えて い る , すな わ ち, 知 識注 入主 義に 基 づく 学習 観 に支 配 され てい る とい える .
本論 では , 学習 と は「 真正 な 学習 」す な わち 学習 者に よ る自 律的 な 学習 を い う. そし て ,実 践 的に コミ ュ ニテ ィに 埋 め込 まれ た知 識 を社 会的 な 営み と して 学習 者自 身 が構 築 して いく 過 程を 構成 主 義的 学習 と呼 ぶ .そ こで , 本論 で は,
学習 観と は 「構 成 主義 的学 習 観」 すな わ ち学 習者 が構 成 主義 的学 習 を本 質 的な 学習 であ る と考 える 信 念と 定 義す る.
中 山 [22] で は , 学 習 観 に 影 響 を 与 え る 目 標 志 向 性 の 概 念 に ,Dweck[8]
の達 成目 標 理論 にお け る「学 習 目標(learning goal)」と「 遂行 目標(performance goal)」の二 つの 枠 組み が用 い られ てい る .そ して ,遂 行 目標 の因 子 を構 成 する 質問 項目 に は接 近 傾向 の目 標 と回 避傾 向 の目 標が 混在 し てい る. こ のよ う な伝 統的 な達 成 目標 に対 し て,Elliot and Harackiewicz[9]は ,「 遂 行接 近目 標 」 と「 遂 行回 避目 標 」の 有 効性 を示 し た.そ し て, Elliot and Church[10]は , 目標 志向 性 の三 つの 枠 組み を 提唱 した .
次に ,「遂 行 回避 目標 」を 考慮 し,これ を 含む 三つ の目 標 志向 性 に つ いて 述 べ る.
2.5.2 目標志向性
中山 [22] は, 学 習観 に影 響 を 与 え る 要 因 と し て 目 標 志 向 性 を 取 り 上 げ た . 目標 志向 性 とは , どの よう な 目標 をも っ て学 習を する か とい う学 習 者個 人 の意 識の 特性 で ある . ルー ブリ ッ クの 活用 方 法 の 違い によ っ て, 構成 主 義的 学 習観 への 変容 の 効果 が 異な ると 考 える が, 学 習者 個人 の特 性 にも それ は 影響 さ れ る と考 えら れ る. 本 論で は, こ の学 習者 個 人の 特性 であ る 目標 志向 性 を学 習 者の 学習 観お よ び学 習動 機 に影 響 を与 える 要 因と して 取り 上 げる .
また ,本論 で 着目 する の は ,Elliot and Harackiewicz[9],Elliot and Church
[10]が提 唱 した ,達成 目 標理 論に お ける 目 標志 向性 の 概念 を整 理 し ,次 の三 つの 枠組 み であ る.
・習 得目 標(mastery goal):能力 を 伸ば し た い,何か 新し い こと を理 解 した い, 身に つ けた いと い う目 標 志向
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・遂 行接 近目 標(performance-approach goal): 自 分の 能 力に 対し て 肯定 的 な評 価を 得 たい とい う 接近 的 な目 標志 向
・遂 行回 避目 標(performance-avoidance goal):能 力に 対す る 否定 的 な評 価 を避 けた い とい う回 避 的な 目 標志 向
Elliot and Church[10]は,大学 生を 対 象と した 目標 志 向性 に関 す る調 査 を 行い ,習 得 目標 の 高い 志向 性 は内 発的 動 機づ け, 遂行 接 近目 標の 高 い志 向 性は 学業 成績 を 促進 し ,遂 行回 避 目 標 の高 い 志向 性は 内発 的 動機 づけ と 学業 成 績の 両方 を低 め るこ とを 指 摘し た .
また , こ れら の 概 念化 の 妥 当性 を 確 認す る た め田 中 ら [46] は ,Elliot and Church[9]が 検 討し た 因果 モ デル を 日本 の 小学 生 ・中 学 生 に適 用 し, 遂 行接 近目 標の 高 い志 向 性が 学習 へ の内 発的 興 味や 成績 にポ ジ ティ ブな 影 響が あ るこ とを 示し た .し か し, 目標 志 向性 が直 接 的に 学業 成績 へ 影響 を与 え ると は ,こ れま での 関 連研 究 の調 査か ら 考え 難い . 中間 要因 とし て , 学 習観 , また , 学習 動機 ,学 習 方略 の影 響 を考 慮 する 必要 が ある .
2.5.3 学習動機と学 習方略
学習 方略 と は , 「 学習 の効 果 を高 める こ とを めざ して 意 図的 に行 う 心的 操 作 あ る い は 活 動 」[45] と 定 義 さ れ て い る . ま た , こ れ ま で の 研 究 か ら 学 習 方 略 を規 定す る 様々 な要 因 の一 つ とし て学 習 動機 があ るこ と が 知 られ て いる[17].
学習 動機 づ けの 領域 で は, こ れま で膨 大 な研 究の 知見 が 蓄積 され て きた . 本論 では , 学習 観 が学 習方 略 の使 用に 影 響を 与え ると 考 える が, さ らに , 学 習動 機と の 関係 も取 り 上げ る .
学 習 動 機 づ け と 学 習 方 略 と の 関 係 に 関 す る 研 究 と し て はPintrich and De Groot[30] が 知 ら れ て い る . 彼 ら は , 学 習 動 機 づ け と 学 習 方 略 の 関 係 を 明 ら か に す る た め , 質 問 紙 MSLQ ( Motivated Strategies for Learning Questionnaire) を 作 成 し , 中 学 生 を 対 象 と し て 調 査 を 実 施 し た . そ の 結 果 , 動機 づけ 要 因と して「自 己 効力 感」,「内 発 的 価値 」の2因子 が抽 出 され て いる . 自己 効力 感 とは , 課題 遂行 の 可能 性に 対 する 能力 への 期 待( 効力 期 待) と 結 果を もた ら す方 略 への 期待 ( 結果 期待 ) であ り, とり わ け, 前者 の 期待 を 自覚 した とき に 生じ る自 信 のこ と [4] であ る.
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内発 的価 値 とは , 活動 遂行 か ら得 られ る 個人 的な 楽し さ や, 課題 に 対す る 個 人的 な価 値 づけ であ る .
ま た , 自 己 調 整 学 習 方 略 と し て 「 認 知 方 略 」 と 「 自 己 調 整 方 略 」 の2因 子 が 抽出 され て いる .
認知 方略 は ,新 し い知 識を 過 去の 知識 に 結び つけ なが ら 理解 し, リ ハー サ ル など の浅 い 処理 ,ま た は精 緻 化, 体制 化 など の深 い処 理 を行 う方 略 であ る .
自己 調整 方 略は , プラ ンニ ン グや モニ タ リン グな どの メ タ認 知方 略 や努 力 , 調整 など の 方略 であ る .
彼ら は,さら に,「動 機づ け 要因 の自 己 効力 感は ,学 習方 略 の使 用を 経 て,間 接的 に学 習 行動 の 要因 とな り ,ま た, 認 知方 略よ りも 自 己調 整方 略 の方 が 重要 で, 実際 の 学業 成績 に 影響 を 与え る」 こ とを 指摘 して い る.
Pintrich and De Groot[30] の 質問 紙MSLQを適 用し た 結果 は ,伊 藤 [14] の研 究な ど によ って も 検証 さ れて いる . 伊藤[14]は,原因 帰 属の あり 方(成 功・ 失敗 の 原因 と して 能力 , 努力 ,運 , 課題 のい ずれ か に帰 属) と 学習 方 略の 程度 が, 自 己効 力 感と どう の よう に関 係 があ るの かを 多 重比 較に よ って 示 して いる . さら に,質 問紙MSLQは,学習 動 機づ けと 学習 方 略の 関係 に 関す る 多く の研 究に お いて 使用 さ れて き た.
2.5.4 ルーブリック の学習 に与え る影響 の モデル 化
近年 ,前 述 した 学 習に 影響 を 与え る要 因 に対 して ,ル ー ブリ ック の 影響 を 調 査す る研 究 が行 われ て いる .
鈴 木 [41][42] は , 学 習 者 の テ ス ト 観 に 着 目 し , フ ィ ー ド バ ッ ク 時 の ル ー ブリ ック の 提示 が ,テ スト に 対す るネ ガ ティ ブな 認識 を 改善 し, 内 発的 動 機づ けを 高め , 学習 方 略に 及ぼ す 影響 のメ カ ニズ ムを 検証 し た. ここ で ,テ ス ト観 とは「テ ス トの 実施 目 的・役割 に 対す る学 習 者の 認識 」[41][42]と定 義 され てい る.
この 研究 は ,ル ー ブリ ック の 活用 がテ ス トで のク ロー ズ エン ドな ( 解が 一 意 に決 まる ) 課題 に おけ るル ー ブリ ック の 提示 に留 まっ て いる . し か し, 構 成主 義的 学習 で は, 現 実的 な場 面 での オー プ ンエ ンド な( 解 が一 意に 定 まら な い)
問題 解決 が 重要 視さ れ てい る(例 え ば ,Vygotsky[56]).ま た ,ル ーブ リ ック
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の活 用は テ スト よ りも ,む し ろ, 授業 中 の学 習に 活用 さ れる こと に より , 学習 者の 学習 に 対し て 直接 的に 作 用し ,学 習 観を 変化 させ る 可能 性が 高 いと 考 えら れる .
そこ で, 本 論で は ,ク ロー ズ エン ドな 課 題と オー プン エ ンド な課 題 にお い て ルー ブリ ッ クの 活 用に よる 構 成主 義的 学 習観 の変 容を 誘 発す る可 能 性と , 学習 者の 学習 動 機, 学 習方 略と の 関係 を明 ら かに する .学 習 観の 変容 は ,学 習 動機 とと もに 学 習活 動へ の 効果 的 な学 習方 略 の選 択に 影響 を 与え ると 予 測さ れ る.
次に ,ル ー ブリ ッ クを 学習 評 価に 組み 込 んだ 実践 研 究 を 整理 し, ル ーブ リ ッ クの 活用 方 法を 検討 す る.
2.6 ルーブリックを活用した実践研究
ルー ブリ ッ クは , 評価 基準 と して 用い ら れる だけ でな く ,ル ーブ リ ック の 作 成を 授業 に 組み 込 んだ 実践 研 究も 進め ら れて いる . ル ー ブリ ック の 作成 主 体に 着目 する と ,こ れ まで の実 践 研究 は, 教 師が 事前 に作 成 する ルー ブ リッ ク ,教 師と 学習 者 集団 の 共同 で作 成 する ルー ブ リッ ク, 学習 者 のみ の集 団 が共 同 で作 成す るル ー ブリ ック の 三つ に 大別 でき る .
2.6.1 教師が作成す るルー ブリッ クの活用 事例
寺嶋・林[47]は ,学 習者 の 自律 性を 重 視し た大 学の 問 題解 決型 の 授業 に お いて ,ル ー ブリ ッ クを 事前 に 学習 者に 提 示し ,そ の評 価 基準 を基 に 学習 活 動を 自己 評価 す る授 業 を実 施し た .そ の結 果 ,学 習目 標を 意 識化 し, そ の目 標 に従 って 学習 を 進め , 学習 にお け る成 果や 課 題を 把握 する な どの 効果 が ある こ とを 示し た.
しか し, 学 習者 が 学習 の肯 定 的な 成果 よ りも ,学 習に 対 する 難し さ を実 感 し てい たこ と も明 ら かに なっ た .そ の理 由 とし て, 彼ら は ルー ブリ ッ クの 構 築段 階に おい て ,学 習 者側 から 提 案さ れた 評 価視 点は なく , 双方 向で 授 業を 作 り上 げる とい う こと が確 立 して い ない ため で ある と述 べて い る.
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2.6.2 教師と学習者 で作成 するル ーブリッ クの活 用事例
塚本・清 水[48]は,中学 生 を対 象と し て細 胞分 裂の 観 察時 に,ル ーブ リ ッ クを 教師 と 生徒 で 作成 する 取 り組 みが , 学習 者に 与え る 効果 の分 析 を行 っ た.
その 結果 , ルー ブ リッ クの 作 成が 学習 成 果を 高め ,情 意 面に つい て も「 評 価の 規準 を事 前 に知 る こと に対 す る意 識」 と 「学 習結 果に 対 する 自信 」 を高 め る効 果が ある こ とを 示し た.し かし ,「学 習 結果 に対 する 自 信」の調 査な ど は,その 有無 にと ど まっ て おり ,情 意 面へ の影 響 がど のよ うに 及 ぼさ れた の かに つ いて は, 詳し く 調査 され て いな い .
2.6.3 学習者のみで 作成す るルー ブリック の活用 事例
山崎・瀬 端[57]は,学習 促 進的 評価 の 考え 方を 基本 に した ポー ト フォ リ オ 評価 にお け るル ー ブリ ック の 開発 ・実 践 を行 った .こ こ で, 学習 促 進的 評 価と は「 学習 そ のも の を促 進さ せ るた めの 学 習者 自身 によ る 評価 を主 と し, 学 習目 標に 対し て 学習 活 動を 自己 コ ント ロー ル する ため の評 価 」と 定義 さ れて い る.
小学 生を 対 象と し た調 査の 結 果, 学習 者 自身 が 個 々に 作 成す るル ー ブリ ッ クの 活用 が学 習 促進 的 評価 に有 効 であ るこ と を示 した .し か し, ルー ブ リッ ク の作 成が 自己 コ ント ロ ール に対 し てど のよ う に影 響す るか に つい ては , 深く 考 察さ れて いな い .
以上 の各 事 例で は ,ル ーブ リ ック の活 用 はど れも 教師 が ねら いと す る構 成 主 義に 基づ く 自律 性 ,自 己コ ン トロ ール な どを 促す 効果 が ある こと が 報告 さ れて いる .し か し, こ のよ うな 構 成主 義的 な 授業 の実 践に よ って ,学 習 者自 身 の学 習観 に変 容 があ る のか ,ま た はル ーブ リ ック のど のよ う な活 用方 法 にお い て変 容が 大き い のか ,と い うこ と は, 明ら か には され てい な い.
一方,ル ーブ リッ ク の作 成 主体 に着 目 したLewis,Berghoff and Pheeney[16]
は ,3つ の ア プ ロ ー チ ( テ ス ト 仕 様 の 提 示 ; 教 師 が 作 成 し た ル ー ブ リ ッ ク の 提 示;教師 と学 習 者と の話 し 合い によ る ルー ブ リッ クの 作 成)の効 果を 比 較し た.
その 結果 , 教師 と 学習 者と の 話し 合い に よっ てル ーブ リ ック を作 成 した 場 合,
学習 意欲 の 低い 学 習者 に有 益 であ った こ とが 分か った . さら に, 学 習意 欲 の高 い学 習者 は ,ど の よう な課 題 でも 独自 の 評価 規準 を構 築 し, ルー ブ リッ ク と同 等の もの を 使用 する こ とが 分 かっ た.しか し,ルー ブリ ッ クの 作成 が 学習 意 欲,
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学習 動機 と いう よ うな 学習 者 の内 面的 な 活動 にど のよ う に影 響を 与 える か のメ カニ ズム に つい ては , 明ら か にさ れて い ない .
そこ で, ル ーブ リ ック の活 用 方法 の違 い によ る学 習者 へ 与え る影 響 を明 ら か にす るた め,ルー ブ リッ ク の提 示時 期( 課題 実施 前/ 実 施後 ),お よ び作 成主 体
(教 師の み /教 師 と学 生) を 取り 入れ , さら に, 本研 究 では ,作 成 主体 と して これ まで 検 証が なさ れ てい な い「 学 生の み の 集団 」を加 え ,2つ の 提示 方法 と3 つの 作成 方 法を 組み 合 わせ た2×3の 活 用方 法 を用 いて , その 影響 を 比較 す る.
2.7 本研究の位置付け
本研 究で は ,構 成 主義 的学 習 観へ の変 容 を誘 発す るル ー ブリ ック の 活用 方 法 を明 らか に する た め, ルー ブ リッ クの 活 用が 学習 の成 立 にお いて 重 要要 因 とな る「 学習 観」,「 学 習動 機」,「 学習 方略 」 に与 える 影響 を モデ ル化 す るこ と を目 指し てい る .ル ー ブリ ック の 活用 とこ れ らの 重要 要因 と の関 係を 検 証し た 事例 は未 だ見 当 たら ない .
そこ で, 本 研究 の仮 説 モデ ル と関 連研 究 の成 果を図 2.3 に示 し, 本 研究 を 位 置づ ける .図 2.3にお い て,太 線は 本研 究 で仮 定し てい る 変数 間の 関 連を 示 し,
破線 は先 行 研究 で明 ら かに さ れて いる 変 数間 の関 連を 示 して いる .
図 2.3 ル ー ブリ ック の 活用 と学 習 観, 学 習 動機 ,学 習 方略 との
関係 につ い ての 仮説 モ デル と 関連 研究
仮説(1) 仮説(3)
仮説(2)
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2.1節 で 述 べ た ル ー ブ リ ッ ク を 学 習 者 集 団 で 作 成 す る メ リ ッ ト を 基 に , 仮 説 (1) ル ー ブ リ ッ ク の 活 用 に よ っ て , 知 識 注 入 主 義 の 学 習 観 か ら 構 成 主 義 的 学 習 観 へ の 変 容 が 誘 発 さ れ る , 仮 説(2) ル ー ブ リ ッ ク の 活 用 に よ っ て 自 信 と 学 習 動 機が 向上 し ,そ の 相乗 効果 に よっ て構 成 主義 的学 習観 へ の変 容が さ らに 促 され る , 仮 説(3) 構 成 主 義 的 学 習 観 へ の 変 容 は , 学 習 方 略 の 使 用 を 促 進 し 学 習 課 題 成績 を高 め る, を立 て た.
しか し, 関 連研 究 に基 づく と ,学 習観 は 目標 志向 性と 学 習方 略の 中 間要 因 と なり 得る[22],ま た ,目 標 志向 性 は学 習動 機を 向上 さ せる[9][10][46]こ とか ら, 学 習者 個人 の 特性 で ある 「目 標 志向 性」 につ い ても 取り 上 げる .
ルー ブリ ッ クを 課 題実 施前 ま たは 課題 実 施後 に提 示し た 場合 ,ま た ,教 師 が 作成 した ル ーブ リ ック を提 示 した 場合 と 学習 者集 団に 作 成さ せた 場 合 で は ,学 習者 の学 習 目標 設 定お よび 学 習方 略へ の 影響 が異 なる こ とが 簡単 に 予測 さ れる . すな わち , 学習 者 集団 に作 成 させ ,共 同 体内 でル ーブ リ ック に対 す る合 意 がな され ,個 々 の学 習 者の 学習 目 標設 定が 改 善さ れた 場合 は ,他 者の 評 価を 意 識し た目 標志 向 性( 遂 行接 近目 標 ,遂 行回 避 目標 )の 影響 が 出な くな る だろ う と考 える .
次に ,学 習動 機 と学 習方 略 間の 関係 に つい て は多 くの 研 究で 実証 さ れて い る.
しか し, 学 習動 機と 学 習観 の 関係 につ い て 検 証さ れた 事 例は 見当 た らな い . 仮説(2)に おい て,学習 動 機の 向上 に よっ て 学 習観 の変 容 が促 され ,学 習 方略 の使 用を 促 進す る とし たが , 関連 研究 に おけ る学 習動 機 と学 習方 略 の直 接 的な 因果 関係 に ルー ブ リッ クの 活 用 に よっ て 学習 観の 変容 が 中間 要因 と して 影 響す るの かに つ いて も検 証 する .
仮説 モデ ル (図 2.3) は ,課 題実 施 前に , 教 師と 学習 者 集団 の共 同 によ る ル ーブ リッ ク の作 成に よ って 最 も 期 待す る 影響 (仮 説(1),(2),(3)) が得 ら れる と予 測す る ,こ れを 本 研究 に おけ る仮 説 (4)と する . 本論 の仮 説 をま と め,
次に 示す .
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【本 論の 仮 説】
(1) ル ーブ リ ック の活 用 によ って , 構成 主義 的学 習観 へ の変 容が 誘 発さ れ る . (2) ル ーブ リ ッ ク の 活 用 によ っ て , 自 信 と 学 習 動 機 が向 上 し , そ の 相 乗効 果 に
よっ て構 成 主義 的学 習 観へ の 変容 がさ ら に促 され る .
(3) 構 成主 義 的 学 習 観 へ の変 容 は , 学 習 方 略 の 使 用 を促 進 し 学 習 課 題 成績 を 高 める .
(4) 課 題実 施 前 に , 教 師 と学 習 者 集 団 の 共 同 に よ る ルー ブ リ ッ ク の 作 成に よ っ て最 も期 待 する 影響 ( 仮説(1),(2),(3))が 得ら れる .
ルー ブリ ッ クの 活 用と これ ら の因 果関 係 を明 らか にす る ため ,関 連 研究 に お ける ルー ブ リッ クの 提 示時 期( 課題 実 施前 / 実施 後),お よび 作成 主 体(教 師 の み/ 教師 と 学生 ) を取 り入 れ ,さ らに , 本研 究で は, 作 成主 体と し てこ れ まで 検証 がな さ れて いな い「 学生 のみ の 集団 」を 加え ,2つの 提示 方 法と3つの 作 成 方法 を組 み 合わ せた2×3の 活用 方法 を 用い て 影響 を比 較 する .具体 的に は,「ク ロー ズエ ン ドな 課 題」 と「 オ ーブ エン ド な課 題」 を用 い て, ルー ブ リッ ク の活 用と 自己 評 価, 相互 評 価を 学 習活 動に 組 み込 んだ 実験 的 な授 業を 実 施す る .
各 授 業 に お い て , 活 用 方 法 の 異 な る6グ ル ー プ を 編 成 し , ル ー ブ リ ッ ク の 活 用が 構成 主 義的 学 習に おけ る 学習 者の 内 面的 な活 動へ 与 える 影響 を 実践 的 に検 証す る.
これ によ っ て, ル ーブ リッ ク の活 用 に よ る学 習者 の構 成 主義 的学 習 観へ の 変 容, およ び 学習 に 与え る影 響 の新 たな モ デル 化を 試み る こと は, 本 研究 分 野に おい て有 意 義な こと で ある と 考え る.