第3章 ルーブリックと学習観,学習動機,学習方略との因果分析
3.4 共分散構造分析(SEM)
3.4.2 結果と考察
(1 )ク ロ ーズ エン ド な課 題 にお ける 因 果モ デル
それ ぞれ の パス の標 準 化係 数と p値 を確 認 し ,有 意差 の ある パス (p <.10)
を残 しな が ら収 束 する まで 分 析を 繰り 返 した .ル ーブ リ ック の提 示 方法 , 作成 方法 によ る 事前 テ スト およ び 作成 した ル ーブ リッ クの 質 への 有意 な パス は 確認 され ず, ま た, 事 前テ スト お よび ルー ブ リッ クの 質か ら 他の 変数 へ の有 意 なパ スも 確認 さ れな かっ た ので , これ らの 変 数を 除外 した .
適合 度の 改 善を もと に ,最 終 的に 導か れ たモ デル を図 3.5(a)に 示す .推 定 法 は,最 尤推 定法 を 用い て解 を 求め た .主 な適 合度 指標(表 3.5の実験 1)より , モ デ ル は 受 容 で き る と 判 断 し た . こ こ で , パ ス の 上 の 数 値 は 標 準 化 係 数 (**p<.01; *p<.05; p<.10)を 示 し, 数値 が 正の 場合 は実 線 ,負 の場 合 は破 線 ,絶 対値が0.35 以上 の場 合 は太 線と し てい る.
クロ ーズ エ ンド な 課題 の因 果 モデ ルで は ,他 者の 評価 を 重視 する 学 習者 個 人 の特 性が , 学習 観 の変 容に 最 も大 きな 影 響を 与え るこ と が明 らか に なっ た .中 でも ,低 い 評価 を 避け たい と いう ネガ テ ィブ な遂 行回 避 目標 の高 い 志向 性 の学 習 観 の 変 容 へ の 負 の 影 響 (-.60) が 際 立 っ て 大 き い こ と が 分 か る . よ っ て , ク ロー ズエ ン ドな 課 題に 対し て 遂行 回避 目 標が 高い 傾向 に ある 学習 者 は, 学 習者 自身 によ っ て学 習観 の 変容 を 抑制 する 場 合が ある .
しか し, こ のよ う な学 習者 個 人の 特性 に 対し て, ルー ブ リッ クの ど のよ う な 活用 が学 習 観の 変 容を 誘発 さ せる かが 明 らか にな って い る. 最も 大 きな 影 響を 示し たの は ,学 生の み での 作成(.33)で ある .こ れは ,クロ ーズ エ ンド な課 題 でも ,ル ー ブリ ッ クを 学習 者 集団 で 共 同 して 作成 させ る こと で, 学 習目 標 が共 同体 で構 築 ・共 有 され るこ と を体 験し , 学習 に対 する 新 たな 認識 が 生じ た と考 えら れる . さら に ,構 成主 義 的学 習観 が ,内 発的 価値 に よる 学習 動 機 の 向 上と とも に, 認 知方 略 およ び自 己 調整 方略 の 使用 を促 して い るこ とが 示 され た .ま た, 二つ の 方略 の うち ,暗 記 や理 解な ど の認 知方 略の 使 用が クロ ー ズエ ン ドな 課題 の成 績 を高 める こ とが 分 かる .
次に ,学 習 動機 に 注目 する と ,課 題実 施 前, およ び教 師 が作 成し た ルー ブ リ ック の提 示 によ っ て, 自己 効 力感 が高 め られ るこ とが 示 され た. 課 題実 施 前の 提示 によ っ て学 習 目標 を設 定 し, その 目 標を 達成 する た めの 計画 を 立て る こと
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が可 能と な り, ま た, 教師 が 作成 した ル ーブ リッ クは 確 かな 道標 と なっ て ,学 習目 標達 成 に対 する 自 信が 向 上し たと 推 測さ れる .
(2 )オ ー プン エン ド な課 題 にお ける 因 果モ デル
クロ ーズ エ ンド な課 題 の場 合 と 同 様に , 有意 差の ある パ ス(p <.10)を 残 し なが ら収 束 する ま で分 析を 繰 り返 した . 事前 テス トお よ びル ーブ リ ック の 質か ら他 の変 数 への 有意 な パス は 確認 され な かっ たの で,これ ら の変 数を 除 外し た.
また ,オ ー プン エ ンド な課 題 では ,目 標 志向 性の 遂行 回 避目 標か ら 他の 変 数へ の有 意な パ スも 確認 さ れな か った ので , 変数 から 除外 し た.
最 終的 に 導か れた モ デル を図 3.5(b)に 示す .推 定法 は ,最 尤推 定 法を 用 いて 解を 求め た .主 な適 合 度指 標 (表 3.5 の 実 験 2)よ り ,モ デル は 受容 で きる と 判断 した .
オ ープ ン エン ド な課 題の 因 果モ デル に おい て, 学習 観 の変 容を 誘 発さ せ るル ー ブリ ッ ク の活 用 方 法は , 課 題実 施 前 の提 示 (.25), お よび 学 習 者集 団 と 教師 の 共同 で の ルー ブ リ ック の 作 成(.22) で あ る こと が 明 らか に な った . こ れは , 学習 目標 の 設定 が 難し いオ ー プン エン ド な課 題で は, 学 習者 が主 体 とな っ てル ーブ リッ ク を作 成 する 過程 で 学習 者同 士 のコ ミュ ニケ ー ショ ンと , 教師 の 助言 が足 場か け とな って , 明確 な 学習 目標 を 調整 でき たた め であ ると 考 えら れ る.
さ らに , 学習 者 がル ーブ リ ック を用 い て構 成主 義的 学 習観 に変 容 する こ とに よっ て, 認 知方 略 およ びメ タ 認知 方略 を 含む 自己 調整 方 略の 使用 が 促進 さ れる こと が示 さ れた . また ,オ ー プン エン ド な課 題で は, 課 題実 施前 に ルー ブ リッ クを 提示 す るこ と によ って , 直接 的に 学 習方 略の 使用 を 促進 させ る こと が 明ら かに なっ た .こ れ より ,ル ー ブリ ック を 共有 した 学習 目 標の 設定 と ,同 時 に,
学習 方略 の 計画 が 促さ れた と 考え られ る .ま た , オー プ ンエ ンド な 課題 の 成績 に対 して , 認知 方 略の みの 使 用よ りも , 自己 調整 方略 の 使用 によ っ て効 果 が得 られ るこ と が明 らか に なっ た .
次 に, 学 習動 機 に注 目す る と, 学習 者 がル ーブ リッ ク の作 成に 参 加す る こと によ って , 学習 に 対す る内 発 的価 値が 高 めら れ, 学習 動 機 を 向上 さ せる こ とが 明ら かに な った . そし て, 学 習者 集団 お よび 教師 の援 助 によ って , 新た な 知識 を獲 得す る 機会 , 共同 体に お ける 知識 の 再構 成の 機会 を 提供 され た こと が ,内 発的 価値 を 向上 させ た と推 測 され る.
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とこ ろで , オー プ ンエ ンド な 課題 では , 学習 に対 して ポ ジテ ィブ な 目標 志 向 であ る習 得 目標 お よび 遂行 接 近目 標の 高 い志 向性 が学 習 観の 変容 に 影響 を 与え てい るの に 対し て,遂行 回 避目 標志 向 性の 影 響は 受け な いこ とが 分 かる .ま た,
習得 目標 お よび 遂 行接 近目 標 は, 課題 に 対す る内 発的 価 値を 高め て いる こ とが 分か った . しか し ,内 発的 価 値と 自己 効 力感 と各 学習 方 略と の関 係 は確 認 され なか った .
以 上 よ り , オ ー プ ン エ ン ド な 課 題 の 因 果 モ デ ル に お い て 本 論 の 仮 説(1) ル ー ブ リ ッ ク の 活 用 に よ っ て , 構 成 主 義 的 学 習 観 へ の 変 容 が 誘 発 さ れ る , 仮 説(2) の 前 半 部 分 で あ る ル ー ブ リ ッ ク が 学 習 動 機 を 向 上 さ せ る , 仮 説(3) 構 成 主 義的 学習 観へ の 変容 は ,学 習方 略 の使 用を 促 進し 学習 課題 成 績 を 高め る ,仮 説(4) 課 題実 施前 に 教師 と 学習 者集 団 が共 同で 作 成す るこ とに よ って 最も 学 習観 の 変容 を誘 発す る 可能 性 があ る, が 成り 立つ こ とが 示さ れた . しか し, 学 習動 機 の向 上に よっ て 構成 主 義的 学習 観 への 認識 が 高ま ると いう 結 果は 得ら れ なか っ た.
一方 ,ク ロ ーズ エ ンド な課 題 にお いて も , ル ーブ リッ ク の活 用に よ って 学 習観 の変 容を 誘 発す る可 能 性が 示 され た.
した がっ て ,構 成 主義 的学 習 にお ける 学 習方 略を 身に つ ける ため に は, 学 習 動機 の向 上 だけ でな く,構 成主 義的 学 習観 へ の変 容が 重 要 で ある と 示唆 さ れる.
また ,学 習 課題 の 形式 によ っ て, 学習 者 の目 標志 向性 が 変化 して , 学習 観 の変 容を 抑制 す る場 合 があ るが , ルー ブリ ッ クを 用い るこ と によ り, 課 題に よ らず 学習 観の 変 容を 直接 的 に誘 発 でき る可 能 性が 示さ れた .
クロ ーズ エ ンド な 課題 とオ ー プン エン ド な課 題 を 用い た 実験 的な 授 業は 異 な る日 に実 施 した の で, 対象 ク ラス は同 じ であ った が, 参 加人 数, お よび 分 析デ ータ の数 が 異な るた め,因 果モ デル を 一つ に せず にそ れ ぞ れ のモ デ ルを 構 築し,
それ ぞれ の 場合 にお け るル ー ブリ ック の 活用 との 因果 関 係を 示し た.そ のた め,
学習 課題 形 式を 要因 と した 影 響は 言及 し てい ない .
しか し, 二 つの 因 果モ デル を 構築 した こ とに よっ て 一 つ の因 果モ デ ルに す る と表 に出 な いか も しれ ない 興 味深 い結 果 がそ れぞ れの 学 習課 題形 式 にお い て 得 られ たこ と は確 かで あ る.
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(a) ク ロー ズ エン ドな 課 題( 実験 1)
(b) オ ープ ン エン ドな 課 題( 実験 2)
図3.5 SEMに よ る因 果モ デ ル
(i) パ ス上 の数 値 は標 準 化係 数 (**p<.01; *p<.05; p<.10) (ii) 変数 の 右上 の 数値 は決 定 係数
(iii) 実線 は パス 上の 数 値が 正の 場 合, 破線 は 負の 場合 , 太線 は絶 対 値が 0.35以 上の 場合 を 示し てい る
表3.5 各モ デ ルに 対す る 主な 適合 度 指標
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