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再生産表式 と産業連関

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(1)

再生産表式 と産業連関

永 田 聖 二

Re p r od uc t i o nSc he me sa ndI np ut ‑ Out p utRe l a t i o ns

Se i j iNa ga t a 1

.はじめに

マル クスは、『資本論

のなかで、資本主義経済 システムが、 どのよ うにして生産活動 を 継続 し、その ことが、いか に して、 このシステム を支 えるための階級制度 の維持 を可能 に してい るか とい うメカニズム を、素材面 な らび に価値面か らみた、生産手段 の補填、資本 家や労働者 の消費、そ して資本 の蓄積 に注 目して、 2部 門モデル の形式 で∴再生産表式 と

して解 明 した。 それ は、資本主義経済 システムの生産 ・分配 ・消費の諸様相 を、一覧表 の かたちで表現す る といった点 で、 レオ ンティエフの産業連 関分析 の さきがけ とい う評価 を あたえることもできるだろ う1)。 しか も、いったん、賃金や利潤 な ど、資本主義的外皮 をは ぎ取 ってみれ ば、 この表式 は、産業連関表 とおな じ く、 どの よ うな経済 システムであって もその存立上かな らず満足 しなけれ ばな らない経済原則 を表現 してい るわけであるか ら2)、 原理 的 には、社会主義計画経済 にも適用可能 なモデル で もある3)0

ところが、再生産表式 は、た しかに、簡 明ではあるが、 じつ は、その単純 さは、マル ク ス独特 の部 門分割基準 によるのである。 そ して、かれ の基準 を適用 してモデル上 の簡 明 さ をえることの代償 は、か えって、あるがままの経済 システムの構造 を見 えに くくす るとい う激 しい副作用 を ともな うC そ こで、本稿 七は、 は じめに、 レオ ンテ ィエフの産業連関表 を再生産表式 に組 み替 えてみ ることによって、再生産表式 の簡 明 さが支払 った代償 の大 き

1) Dobb[1]によれ ば、MaⅨ [10]において、すでに、再生産表式の原型が提示 されていた。

そ して、かれ は、 これ を産業連関分析 の さきがけ とみな してい る。訳書

2 8 2

ペー ジ参照。

なお、 ドッブは、その論拠 を開示 してはいないけれ ども、かれが指摘 してい る箇所 は、

Marx[10]訳書 Ⅱ巻、375ページの記述 とお もわれ る。

2)

.宇野

[ 2 5日1 1 5 ‑ 1 1 6

ペー ジ )によれ ば、

「それ は‑あ らゆる社会生活 に共通 の原則 が、資本主義社会 にもその形態 を異 にし つつ行われ ることを示す のである。資本主義社会 はそれ を商品形態 を以て、個 々 の資本 の運動 として実現す る ところに問題 がある。各 々独立 した 自由な商品売買 を 目的 とす るいわゆ る無政府 的生産 として行われ なが ら、社会 としてはこの一般 原則 を実現す ることを明 らかにす るわ けであるが、 しか し単 にかか る原則 の存在 を明 らかにす るとい うことを 目的 とす るのではない。かか る原則 を通 して資本家 的商 品経済 に特有 な形態 の意義 を明 らか にしよ うとい うのである。」

また、伊藤[4]230ペー ジも参照せ よ。

3)

Tepexo B

[ 2 2]

参照。

(2)

さを指摘す る。 そ して、再生産表式 の精神 を産業連 関分析 に継承す るための、ひ とつ の方 法 として、増補投入行列 の導入 を検 討す る。

2.

マルクスの単純再生産表式

『資本論』 において、マル クス は、 「社会的総資本 の再生産 と流通」 とい うテーマの も と に、資本 主義 が、消耗す る生産手段 の補填 と、労働者や 資本 家 の消費 を、 システム全体 と して どの よ うに処理 し、物 的生産活動 な らび に生産 関係 の再生産 を継続 してい るのか を、

は じめに、基本 的 ケース として、資本 の蓄積 がない、 したが って、剰余 がすべ て資本 家 の 個人的消費 に費や され る状態 である、単純再生産モデル のかたちで表現 した3)。 その さい、

生産手段 の補填 の条件 と、各 階級 の消費 の必要条件 との区別 を明確 にす るため、生産部 門 を、生産手段 を生産す る第 Ⅰ部 門 と、消費手段 を生産す る第 Ⅱ部 門 とい う、2つ の部 門 に 大別 して、価値 お よび素材補填 の両面 か ら、再生産 の継続条件 を検討 してい る。 この両面 は、 それ ぞれ 、産業連 関分析 の用語 に翻 訳すれ ば、価値 ない し価格 バ ランス を表現す る列 バ ランス と、物量バ ランス を意味す る行バ ランス に相 当す る。 そ こで、 これ ら2つ のバ ラ

ンス を、産業連 関表形式 にあわせ て表現すれ ば、つ ぎの よ うにな る。

C1 C2

0

W l

Vl V2

1 2

W l W 2

この表式 で は、行バ ランス は素材 面 か らみ た物量バ ランス C

l+

C2

+

0 W l,

0

+

0

+

V

l +

V2

+

M

l+

M 2 W 2

( 2 .1 )

(2. 2) をあ らわす。他方、各部門の価値構成

C 1 ・+

0

+ t I ・ +M

・‑ W・ (ll‑ 1,2) (2.3)

を表現す るのが列バ ランスである。すなわち、単純再生産のケースでは、生産手段 は、各部門 の消耗分 ClとC2を補填す るだけしか生産 され ないので、第1行 の最終生産物欄 にはゼ ロが 記入 され、 これ らの総計が w lになるOいっぽ う、第 II部門の生産物である消費財 は、いずれ の部門にも投入 され ることはないので、第2行の中間投入欄 は どち らもゼ ロであ り、ただ最終 生産物欄 に、両部門の労働者 と資本家の消費の総計 v

l+ V

2

+

1

+

2が記入 され るだけ で、 この額 が第2部門の総計

W

2に等 し くなる. これ にたい して、列バ ランス に注 目すれ ば、

どち らの部門も、総価値 Wは、不変資本 Cと可変資本 Vと剰余価値M の総和 に等 しい こ とが示 され る。そ うす ると、第1行の総計 と第1列のそれ とは、 ともに、 Ⅳ 1に等 しいので、

周知 の単純再生産の条件、

V

l+

M

l‑

C2

をえる。 なお、 この条件 は、第2行 と第2列 の等値 か らも導 くこ とがで きる。

(2. 4)

3)Ma∝ [11]第2巻第3篇第20章参照。

(3)

3.

産業連関表とレオンティエフ体系

レオ ンテ ィエフは、 さま ざまな産業部 門のあいだの投入 ・産出のか らみあい を一覧表形 式 で表現 した産業連 関表 を考案 して、経済の生産構造 を解 明す る手 がか りを提供 した。そ の基本 となる表式 は、各産業 のア クテ ィヴィテ ィを表示 した、物量 タームの産業連関表 で、

経済が D個の産業 か ら構成 され る ときには、つ ぎの よ うにな るO

Xll ̲Y LI. X ID メ′l ∬ 1

X1.i Xlj XJ.D yj Xl.

XD l XDj XDD yD XD

ここで、記号 xl・j 、Xl・.は、それぞれ、第 1'産業か ら第j産業‑の投入量、な らびに、第1' 産業の産出量 をあ らわす. したがって、投入ベ ク トル をあ らわす第j列 と産出量 xj との組み 合わせが、第j産業のアクティヴィティを記述す る。また、記号 yl.は、第 1'産業の産出量 か ら、各産業が生産活動のため利用 した第 ノ生産物の投入量 を控除 した残 りとして、 この経 済が 自由に処分できる生産物 を意味 し、通常、最終生産物 とよばれ る。そ うす ると、最終生産 物の定義か ら、

y l・ = xl (xl

l+‑+

xLj

+・ ・ ・ +

x,D )

なので、 けっき ょく、

xj l

+・ ・ ・ +

xl.j

+‑. +

xJ.A

+

yl・= x,

をえるO これが、 この表式 の第 1'行 を表現す るバ ランス式 である. さらに、一覧表 の最終 行 に位置す るのは、労働力バ ランスで、各産業 の投下労働量

J

jの合 計 が 、 この経 済 の総 投 下 労 働 量 パこ一 致 す る とい う条 件

l

l+‑I +

Jj

+・ ・ ・ +

JD 1 (3. 3)

を意 味 す る。

なお、物的産業連 関表 では、すべての項 目は物量 タームで表現 され るため、それ ぞれの 行 ごとに物理的な測定単位 が異 な る。 したがって、一覧表 の縦方 向に並 んだ数値 を合計 し て も経済的 に意味のある結果 はえ られ ないので、列バ ランス を検討す ることはで きない。

上述 の産業連関表 は、産業 間の投入 こ産 出のか らみあい に注 目して、経済の構造 を一覧 表 の形式 で表現す る とい う意義 はあるけれ ども、 このままでは、たんなる統計デー タの記 述 にす ぎない。 そ こで、 レオ ンテ ィエフは、それ ぞれの産業 のアクティヴィテ ィに注 目し て、投入 と産出 を結 びつ ける生産活動 を特徴づ ける要素 として、投入係数 とい う概念 に到 達 した。投入係数 とは、それ ぞれの産業 ごとに、生産物 を1単位 あた り産 出す るために必 要 な各種生産物 の投入量 の ことであ り、 た とえば、その代表元

aJjxlj/xJ (3・ 4)

は、第 ノ生産物1単位を生産するために投入 される第 ノ生産物の数量をあらわす。そ うすると、こ の投入係数 を採用すれば、(3. 2)式は、

(4)

aJlXl

+. ・ ・ +

aJjX

j+. ‑+

alnXD + yl・= xJ

になるので、 これ を行列形式で表現すれば、

Ax

+

y ‑ x あるいは、

(I ‑A)

x

‑ J, (3. 7)

とい う連立方程式が導かれ る。すなわち、 レオ ンティエフ体系では、産出量 Jは、パ ラメー ター としての最終生産物J,に対応 した、 この方程式 の解 として

x ‑ (I‑A)‑1y (3. 8)

のかたちであ らわす ことができる4)。 ここで、記号A、x、Yは、それ ぞれ、投入係数行列 A ‑ lal

・ J]

産 出量 (列 )ベ ク トル x lx

j ]

最終生産物 (列 )ベ ク トル y ‑ lyL・] を意 味 す る。

同様 に、第 ノ産業 の労働投入係数 を、第 ノ生産物 1単位 あた りの産出に必要な投下労働量 と定義 して、記号βoであ らわせ ば、

aojJj /xj

になるので、 (3. 3)式 は 、

aoIX

l+・ ・ ・ +

aojXj

+・ ・ ・ +

a.DXD ‑ 1 したがって、行列形式 では、

&.x ‑1

と書 き換 え られ る。 ただ し、記号β。は、労働投入係数 (行 )ベ ク トル

β。〔β。ノ〕

である。そ うす る と、 (3.8)式か ら、 この経済の総労働投入量 は、次式 にしたがって決定 さ れ ることになる。

1‑ a.x ‑ a

.( /‑A

)‑1y

なお、物的産業連 関表 を投入係数表示 であ らわせ ば、つ ぎの よ うになる。

( 3.1 2 )

∂ llg l aljXj a lDXD y l X l

aI.lX l al.jXj ajDXD yj Xj

a771X 1 aDjXj aDDXD yD XD

4)

レオ ンティエフ体系が経済的 に意味 をもつ ためには、非負解 の存在 が保証 され ない と いけない。 そのための条件 については、二階堂[17]参照。

(5)

4.

レオンティエフ体系の双対としての価値体系

前節 で紹介 され た レオ ンテ ィエフ体 系 として表現 され る物 的投入 ・産 出関係 は、表式 に 付随 して労働 に対応す る行 が設定 され てい るよ うに、 その裏面 として、つね に、生産活動 に応 じた適切 な労働力配分 を ともな う。 そ して、 この よ うな労働力配分 の側 面 に注 目すれ ば、おのず と、各種 生産物 の価値 を、その生産 のために必 要 な直接 ・間接労働 ター ムで あ

らわ した評価 システム としての価値体 系 が導 かれ る。 しか も、 この両者 の関係 は、 じつ は、

どち らか一方 が経 済的 に意味 をもつ解 をもてば、 かな らず 、 も う一方 にも有意味 な解 が存 在 す る とい う意味 で、おな じ経 済 の再生産活動 を、物 的補填面 か ら、 あ るいは、労働力配 分 の観 点 か ら考察 してい るこ とにな る。いわ ば、 同一 のモチー フを、 それ ぞれ 、異 なった 切 り口で描写 してい るわ けであ る。 これ ら両体 系 の解 の存在 問題 のあいだ に成 立す る関係 は、一般 に、数理計画法 の用語 では、双対性 とよばれ てい る5)0

そ こで、前節 では物量単位 であ らわ され ていた産業連 関表 の諸項 目を、投 下労働 ター ム に変換す るため、労働価値 (行 )ベ ク トル

V‑ lvL・]

を採用 しよ う. ここで、記号 vjは、第 1'生産物1単位 に直接 ・間接 に投下 され た労働量 を あ らわす. そ うす る と、物量単位 で表示 され た量xljは、投 下労働 ター ム に変換 した ら、

vl.XljになるO この ことに注 目して、直接労働 を表現す る最終行 をのぞ く、 それ ぞれ の行 ご とに対応す る変換率 vL・をか けれ ば、以下の よ うに、物的産業連 関表 を投 下労働 タームで表 現 す る こ とがで きる。

VIX ll V1g 1 V IX ID Vly l VIX l

Vl.Xjl VJ.XJ.j Vl,KID Vlyj Vl.Xl.

VDXD l VDXDj VDXDD VDyD VDXD

ノ1

{ 1 D

この表式 では、行バ ランスは、 た とえ投 下労働 ター ム に変換 され てい る とはい え、両辺 に共通 のスカ ラー vL・をか け られ ただけであ るか ら、実質上、いぜ ん として物 的バ ランス式 (3. 2)を表現 してい るにす ぎないO ところが、前節 での物量単位上 の制 限 と異 なってこい まや 、共通 の投 下労働 ター ムに変換 され た所産 として、 あ らた に、列バ ランス をかんが え

5) 二 階堂[17]参照。 なお、 山田[26]第9章 で は、産業連 関表 は使用価値 面 か らだけ し か再生産 プ ロセ ス を把握 で きない として、素材補填 と価値補填 の両面 か らバ ランス を 検 討す る再生産表式 がわ に軍配 をあげてい るが、 この判 断 は、 レオ ンテ ィエフ体 系 と 価値体 系 のあいだに成立す る双対性 を考慮 しない、表面上 の比較 か らな され てい るよ

うにお もわれ る。

(6)

ることができる。そ こで、労働 に対応す る行 の下 に、総計欄 をあ らわす行 を追加すれ ば、

列バ ランス は、

vIXlj

+

+

vL.XL

j+

・・

・ +

vDXDj

+

1jvjXj (4・ 1) になる. この式の左辺では、vIXlj+・・・+ vjXJ.j+‑+ vDXDjとい う項 目は、各種投入物 に体 化 され た労働量 の総計 を、また

、1

j項 は、直接投下 され た労働量 を、それ ぞれ、意味す る.

これ ら2つの項 目の合計が、右辺 にあ らわれ る生産物 の労働価値 に等 しいわ けであるか ら、

けっき ょく、上式 は、各種生産手段 に体化 され た間接労働 と直接労働 との合計が、 この生 産物 の労働価値 に一致す るこ とを示 してい るO なお、 この表式 の総計欄 では、 とくに、

vlyl

+‑+v D y D

‑ 1 (4. 2)

とい う関係 が成立す ることに注 目しよ う。 この関係 は、各種最終生産物 に体化 され た労働 価値 の総計が、 この経済の投下労働総量 に等 しい ことを意味す る。そ して、 これ が、 じつ

は、行バ ランス と列バ ランスの双対性 に起 因す ることが、以下で示 され る。

それ では、 これ ら2種類 のバ ランスのあいだに成 り立つ関係 を検討す るために、前節 で 導入 した、投入係数表示 の産業連 関表 を援用 してみ よ う。投 下労働 ター ムの表式 を、投入 係数表示 に変換すれ ば、つ ぎの よ うにな る。

VlallXl VlaljXj VlalDXD Vlyl VIXl

VjaL.lXJ. VJ.3'.jXj VJ.aJ.DXD VL.yJ. VIXL.

VDaD IXl VnaDjXj VDaDDXD ㌔Jも VBXD

aolXl aojXj aoDXD

この表式の列バ ランスで、注 目すべ きは、列のすべての要素 に同一のスカ ラーx j が出現す る とい うことである。 そ うす る と、実質上物量バ ランス を表現す る行バ ランス とは対照的 に、列バ ランス は、 じつ は、数量 には依存 しないバ ランス として、労働価値表示 の表式 の 根幹 をなす関係式 を内包す ることになる。そ こで、投入係数表示 の列バ ランス

vlaljXj

+. I . +

vjaJjXj+・・・+ vDaDjXj

+

acjXjvjXj

の両辺 を、共通 なスカ ラーxjでわれ ば、

vlalj

+・ ・ ・ +

vLaLj

+. . ・ +

vDaDj

+

aoj = vj

す なわ ち、行列表示 では、

TA

+

8.‑ V (4. 3)

とい う価値方程式 をえる。生産物1単位 あた りに投下 され た直接 ・間接労働 を労働価値 と 定義 し、み じか く、価値 と略称すれ ば、 この方程式 は、価値 が間接労働 と直接労働 との和 に等 しい ことを表現す る。上式 は、

V(/‑ A)‑ ao (4. 4)

とあ らわす ことができるので、労働価値ベ ク トル は、直接労働 8.と、経済の投入 ・産出構 造 を表現す る投入係数行列Aに応 じて、

V‑ ao(/‑A)‑i

として定 ま る。

(4. 5)

(7)

なお、 レオ ンティエフ体系(3.7)とその解 (3.8)、な らび に、価値体系(4.4)とその解 (4.5)とを比較すれば、あきらかに、 これ ら2つの体系の解 の存在条件 は、逆行列 (I‑A)‑l の存在条件 に一致す るとい う点で、まった く同一である。 この性質 によって、 レオ ンティェ フ体系 と価値体系 は双対 であるといわれ る。また、 このよ うな双対性 の系 として、 (3.7)両 辺 に左 か ら価値ベ ク トル Vをかけたもの と、 (4.4)の両辺 に右 か ら産出量ベ ク トルxをかけ た結果 とを比較すれ ば、 (3.ll)式 とあわせ て、

′‑ V((‑ A)x‑ BbX ‑ 1 (4. 6) にな り、 けっき ょく、 さきの(4.2)式 と同一の条件 が導かれ る。

本節 で示 され た、 レオ ンテ ィエフ体 系 と価値体系 とのあいだに成 り立つ双対 な関係 を、

ま とめて、ベ ク トル表示 で図式的 に表現すれ ば、つ ぎの よ うになる。 は じめに、 これ ら2 つ の方程式 のあいだには、各産業 のア クテ ィヴィティを代表す る投入係数行列 を介 して、

「 ー l l I ′ l l

l

l t I

J

Il

(/‑A):x ‑ y

̲

0

β

̲̲̲̲̲̲̲ ̲ ̲ 」

とい う関係 が成立 し、 どち らの解 の存在条件 も、 けっき ょく、非負 の逆行列 (I‑A)11≧O の存在条件 に帰着す る。 なお、 この図式 では、実線 で囲まれ た領域 は、数量バ ランス をあ

らわす レオ ンテ ィエフ体系 を意味す る。 これ にたい して、再生産活動 の投 下労働 にも とづ く評価 を記述す る領域 が、点線 で囲まれ た価値体系である。

つ ぎに、 このよ うに双対 な関係 にある2つの方程式 に、 (4.6)式 を導出 した ときの操作 を ほ どこして、それ ぞれ、相手 がわの解 をかけれ ば、

r Il′

ll lI

(/‑A)x :‑ TV

; ll :

1 1

I Box l

l l

̲ ̲̲ー̲̲̲ー̲̲ 」

になるので、 これ を適 当に並び替 えれ ば、価値表示 の産業連 関表 にな る。

l l

l

I(A

x ・+ l l

り′‑ IX

+

=

β 」」

(8)

5.

産業連関表から再生産表式への組み換え

は じめに、マル クスの再生産表式 にな らって、 レオ ンテ ィエフ体系が 2つの産業 か ら構 成 され るもの としよ う。そ うす る と、物的産業連関表 は、投入係数表示 では、つ ぎの よ う

にな る。

∂llXl 312x2 yl Xl

321Xl 322x2 y2 ・ x2

そ して、基本 的 には、 この関係 の価値 タームによる表式

VlallXl Vla12x2 Vlyl VIXl

V2a21Xl V2a22x2 V2y2 V2x2

ablXl 4)2x2

が、再生産表式 に対応す るのではあるが、第2節 で紹介 したマル クスの再生産表式 との相 違 は、i)かれ の表式 では、消費手段 を生産す る第 Ⅱ部門の生産物 は生産手段 としては利用 され ることはな く、その結果 、第2行 の第1列 と第2列 に位置す る欄 にはゼ ロが記入 され てい ること。 それ に対応 して、ii)生産手段生産部門である第 Ⅰ部門の最終生産物欄 の数値 は、単純再生産 を想定す るため、ゼ ロであること。 さらに、iii)レオ ンテ ィエフ型の表式 に あ らわれ る、投下労働 タームで表示 され た各部門の付加価値 G.jXjは、マル クスの表式 では、

労働者 が労働力商品販売の対価 として受 け取 る必 要労働 に相 当す る部分 と、それ を差 し引 いたあ と資本家の手 もとにの こる剰余労働部分 とに分割 され てい ることである。

そ こで、 レオ ンテ ィエフ型 の表式 をマル クスの再生産表式 に翻訳す るためには、諸項 目 の組 み替 えが必要 になる。 この組 み替 え手続 きの うちi)とii)については、 ラングは、い き な り、 821 ‑ a22‑ 0と、 y 1‑ 0とい う想定 をお こなったが6)、問題 はそれ ほ ど単純 ではな い。 ラングの想定 の うち 2番 目の もの (y1‑ 0)については、生産手段 は消費 には利用 さ れ ない と解釈すれ ば、比較的受 け入れやす いであろ う。 ところが、第 Ⅱ部門の生産物 がい ずれの部門 にも投入 され ない とい う第1の想定 については、 ほ とん ど、受 け入れ がたい。

とい うの も、主要 な消費財 である穀物 は、それ 自身、生産 のためには一部分 は再投 下 され ない といけないか らであ る (322≠ 0)。 さらにい えば、 レーニ ンが社会主義建設 の最重点 産業 とみなした電力 は7)、消費手段 であると同時 に生産活動 には不可欠の生産手段 でもある ので、 これ を第 Ⅰ部 門 に分類すれ ば321‑0とい う条件 に反す るし、 また、第 I部 門 とみ

6) ラング 「投入産出分析 における若干の考察」 (HeMtTHHOB[16]所収)参照O なお、 ラ ングは、その著書[9]では、 ∂22‑0とい う想定 は設 けていないが、 この部分 は部門内の 利用部分 として相殺 され て しま うので、実質上、仮定がゆるめ られ た ことにはな らな い.同様 に、Zaubem an[27]第3章では、 321‑0、 y 1‑0とい う仮定が採用 されてい る。

7)

レーニ ンは、 「社会主義 とは、 ソビエ ト政権 プラス国の電化 である」 と主張 したそ う である。佐藤[18]54ペー ジ参照。 なお、Kaser[6]では、 この引用 は、社会主義 ではな

く共産主義 とい うことばで表現 されてい る。訳書96ペー ジ参照0

(9)

なせ ば、 こん どはy1‑0に矛盾す る.いずれ にして も、 ラングの想定 をそのまま受 け入れ るわ けにはいかない。

産業連 関表 を再生産表式 に読 み替 えよ うと試 みた、 ラングの想定 が陥 った袋 小路 は、 じ つ は、 レオ ンテ ィェフの産業分類 とマル クス に よる部 門分割 とを、単純 に、 同一視す るこ とに起 因す る。前者 は、通常 の生産物 の物理 的属性 か らの分類 であ る。 ところが、後者 の 分割基準 は、生産物 の用途 に応 じた判 断 なのであ る8)。 したがって、 レオ ンティエフの分類 では、電力 は、生産手段 としてな らば投入行列 に、 また、消費手段 としては最終生産物 の 項 目にあ らわれ るけれ ども、 それ 自体 は、一括 して1つの産業 に分類 され る。 このばあい、

同一 の行 のなかで要素 の配置 が異 な るだけにす ぎない。 これ にたい して、マル クスの部 門 分割 に したが えば、 た とえ、お な じ電力 であって も、生産手段 として投入 され る部分 は第

Ⅰ部 門 として計算 され るが、他方 、消費手段部分 は第 Ⅱ部 門 に編入 され る。つ ま り、かれ の分割 は、経 済 を構成す る さま ざまな産業 の生産物 を、生産手段 として使用 され る部分 と 消費手段 として利用 され る部分 に大別 し、 それ ぞれ、前者 を第 Ⅰ部 門 に、後者 を第 Ⅱ部 門 に、集 計 してい るこ とにな る。 したが って、 この分割 を実行す るためには、物理 的測定単 位 が異 な る各種 生産物 を集 計す る必 要が あ るので、物量表示 の レオ ンテ ィエフ体 系 その も のか らは、組 み替 え不能 にな る。 そ うい うわ けで、物量 ター ムでの部 門分割 が不首尾 にお わ るこ とを認識 したためか、マル クス は、必然 的 に、価値表示 の表式 を採用せ ざるをえな い こ とにな る.森 嶋 にな らってい えば、部 門分割 の集 計 因子 として、マル クス は、価値ベ ク トル を採用 したわ けであ る9)0

ともあれ、 さきに示 した、価値 タームで表示 され た2産業 レオ ンテ ィェフ体 系 を、マル クス流 の部 門分割 に したがって、組 み替 えてみ よ う。 は じめに、生産手段 の投入部分 は、

すべ て、生産手段生産部 門であ る第 Ⅰ部 門 に算入 され るので、第2行 の1番 目の要素 と2 番 目の要素 は ともにゼ ロにな り、そのかわ り、 それ らの額 は、 それ ぞれ、第1行 の対応す

る要素 に加 算 され る。対 照的 に、 こん どは、単純再生産 の想 定 の も とでは、消費手段 とし て しか出現 しえない最終生産物 は、 ま とめて、第 Ⅱ部 門 に集 計 され る。 したが って、第1 行 の3番 目の要素 がゼ ロにな る代 わ りに、第 2行 の 3番 目の要素 にすべ ての最終生産物 の 合計 が記載 され るこ とにな る。 なお、 この よ うな項 目の移動 に対応 して、各行 の総計欄 も 適切 に調整 され ない とな らない こ とは、い うまで もないだ ろ う。 これ で、 さきにマル クス の単純再生産表式 の特徴 として指摘 したiトiii)の3つ の性質 の うち、i)をみたす よ うに組 み 替 えが進行 したのであ るが、 じつ は、lこの組 み替 えは、同時 に、性質ii)もみた してい るこ

とがわ か る。

8) Foley[3]によれ ば、 「マル クスのDepartmentがsectorでないのは、資本 の拡大再生産 で産 出物 が果 たす機能 にも とづいてDepartmentが定義 され てお り、産 出物 の物理 的特 性 によって定義 され てい るので はないか らであ る」 (訳書261ペー ジ)

9) Morishima[13]第8章参照。 なお、森 嶋のい う集 計 問題 は、産業 ど うしの集 計 ・統合 .を意味す るので、再生産表式 の部 門分類 とは異 な る問題 をあつ か ってい るこ とにな る。

(10)

VlallX l vla12x2

+

V2a22x2

0

W l

0 0

vly l

+

V2y2 W2

∂olg1 302x2

ただ し、表 中で、 Wl、 W2 とあるのは、 それ ぞれ、組 み換 えに応 じて調整 され た総計欄 の 項 目

Wl‑

vIXl+ V2亀 1Xl+ V2422X2 ‑ VlylvlallXl+ vla12x2

+

V2421Xl+ V2哉 2x2,(5.1) W2‑ V2X2V2321X1V2322x2

+

vly12vlyl + V2y2

( 5 . 2 )

であ り、 けっ き ょく、 それ らは、思惑 どお り、 それ ぞれ、生産手段 の価値 総額 と消費手段 の価値 総額 とに等 し くな る。

この よ うに、マル クス流 の部 門分割 に対応 した産業連 関表 の組 み替 えは、いっけん、再 生産表式‑ の変換 に成 功 したかの よ うにみ えるが、 じつ は、そ ううま くはいかない。 とい うの も、上記 の表式 で は、組 み替 えは行分類 にかん してだけ実行 され た にす ぎな く、列分 類 は、い まだ レオ ンテ ィエフの産業 区分 そのまま を踏襲 してい るか らで ある。 この よ うな 分類基準 の不統一 は、各行 の総計欄 に記入 され る数値 Wl・と、 それ に対応すべ き列 の総計 欄 の値 vjXl・との不一致 をもた らし、バ ランス表 として保 つべ き双対 な関係 を台無 しに して しま うか らであ る。 なお、上記 の表式 で、労働 を表示す る第3行 の要素 に細工 を施せ ば、

形式上 は、双対 にみ えるバ ランス を偽装す るこ とがで きる。 じっ さい、

E

‑ ablXl+ V2321Xl+ V2822X2 ‑ Vlyl

vla12x2 + V2鞄 2x2 , (5.3)

& ‑ab2X2V2321Xl ‑ V2322x2 + vlyl = vIJll + V2y2‑ V2321XlV2322x2 (5.4) と定義すれ ば、表式 は、

vlallXl+ V2321Xl vla12x2+ V2322x2 0

Wl

0

0

vlyl+ V2y2 W2

Bl A ∫

Wl

W2 vlyl+ V2y2 にな り、マ ク ロ的 には、

E

+& ‑

ゐ IXl

+

ab2x2

vlyl

+

V2

y 2 ‑

1 (5. 5) とい う労働 に関係す るバ ランス を保持す るが、あ らたに定義 され た これ らの値 E 、& に かん して、 ミク ロ的側 面 か らみれ ば、前者 は、第2産業 の生産手段 の価値 マイナス第1生 産物 の純生産物 とい う額 (‑ V2321Xl + V2322X2 ‑ Vlyl) だけ過大評価 され10)、 これ に対 応 して、 同額 の過 小評価 を後者 が受 けるこ とにな る。 それ らの数値 は、 あき らか に、 それ ぞれ の産業 の投 下労働量 か らは帝離す るため、剰 余価値 の側 面 か ら再生産表式 に要請 され る条件iii)に合致 しな くな る。

再生産表式 がみたすべ き、最後 の条件iii)は、剰余価値 の定義 に関係す る。投 下労働 タ‑

10) 厳密 にいえば、 V2哉 lXl

+

V2亀 2X2 ‑ Vlylの符号の正負 に応 じて、第 Ⅰ部 門の付加価 値 は、過大評価 もし くは過小評価 され る。他方 、それ と同額 の過 小評価 または過大評 価 を、第 Ⅱ部 門は受 ける。

(11)

ムで表現 され たそれ ぞれ の産業 の付加価 値 aojXjの うち、労働力販 売 の対価 として、可変資 本 vjに相 当す る部分 が労働者 に支払 われ る とすれ ば、 それ を差 し引いた残余 が、資本家 の 手 元 に剰 余価 値

M

jとして の こる。す なわ ち、

M

j‑ aojXj ‑ Vj> 0 (j‑ 1,2) (5. 6) したが って、

aojXj‑ V

j+ Mj

(j‑ 1,2) (5. 7) マル クス の再 生産表式 に近づ け るた め には、 さ らに、可変資本 は、労働 者 が労働力 再生 産 のた め に必 要 とす る生活 資料 を、 ち ょ うど、買 い戻せ る額 に等 しい こ とが要請 され る。 そ こで、労働 力 再生産 のた め に必 要 な各種 生活 資料 は、労働力 1単位 あた りで は、物量 ター ムで、 それ ぞれ 、第1生産物 をcl、 そ して、第2生産物 を C2だ け必 要 で あ る とす るな ら ば、各産業 の投 下労働 に応 じた生活資料 の必 要量 は、 cia.,Xl・な らび にC2aOlXl・にな る。 それ らを、 それ ぞれ、記 号hl]・.h21・で表記すれ ば、単純再生産 の想 定 の も とでは、現物 的 には、

最終生産物 か らこれ らを控 除 した部分 が、資本 家 の消衰 fl、f2として、の こされ る.す な わ ち、

L・‑ yl・

‑(

h ll

l + h l ・ 2 ) > 0

(1'‑ 1

,2 ) ( 5 .8 )

したがって、

yl

ム 1

+

h112

+

L・

( 1 '

‑ 1,2) (5. 9) そ うす る と、労働力 の再生産 費 としての生活 資料 の価値 は、可変資本 に等 しい と想 定 され るので、

Vj‑ vlhl

j+

V2h2j vIClaOjXj

+

V2C2aOjXj (j = 1,2) (5.10) そ こで、 (5.9)式 の両辺 に V,・をか けた うえで、両式 をた しあわせ れ ば、

vly l

+

V2y 2 V

l+

V2

+

vlfl

+

V2f2

にな るので、 (4.6)、 (5.7)を考慮 すれ ば、 けっ き ょ く、

M

l+

M2 ‑

v

l

f

l

+ V 2 (

2 ,

vly l

+

V2y2

V l+

V

2+

M l+ M 2

(5.ll)

(5.12) (5.13) をえ る。す なわ ち、剰 余生産物 の価値 総額 は、剰 余価値 総額 に等 しい。 これ で、組 み替 え 後 の表式 で、第2生産物 の最終生産物欄 には、 めでた く、Vl+ V2+M

l+M

を記入す

る こ とが で きた。

そ うす る と、第2節 で紹介 したマル クスの再 生産表式 に変換 す るには、 あ とは、 ただ、

C j‑

vlaljXj

+

V232jXj, (

j=

1,2) (5.14)

BJ・‑ Vj

+

M j (j‑ 1

,2 ) ( 5 .1 5 )

を示せ ば よい。 この うち、前者 は、マル クス流 の組 み替 えを実行 したの ち、各部 門が投 入 す る生産手段 の価値 総額 を意 味す るので、かれ のい う不変資本 Gの定義式 として容認 で き る。 これ にたい して、後者 は、(5.7)式 で示 され るよ うに、本来 は、いわゆる 「生 きた労働」

とよばれ てい る直接 労働 に相 当す る部分 で あ る、各産業 で発 生 した付加価値 abjXjを、必 要 労働 vjと剰 余労働

M

jとに分割す る こ とを意味す るはず であ るo ところが、マル クス流 の 組 み替 えを実行 す るため にほ どこ され た、行 の要素入 れ替 えに対 応 して、や むお えず振 り 分 け られ た列 の要素 の修 正 (5.3)、(5.4)によって、マ ク ロ的 には矛盾 な くとも、 ミク ロ的 には、生産手段 に体化 され たいわ ゆ る 「死 んだ労働 」V2a21Xl

+

V2322x2 に相 当す る部分 も 関係 す るか たちで、Bjは定義 され て しま った. その ため、組 み換 え後 の偽 装 的 な分割

(12)

(5.15)と、搾取 関係 を表現す る とい った意 味 で本 来経 済的 に重 要性 をもつ分刺 (5.7)との あい だ に、 ズ レが生 じるの で あ る。 ともあれ 、本 来 の関係 式 (5.7)か ら計算 され る搾 取率 m が、可変 資本 の関係式 (5.10)に注意す れ ば、す べ ての産業 で共通 な値

m

‑ M j

/V

, I ‑

(1 ‑ (vICl

+

V2C2 )) / (vICl

+

V2C2) (j‑1,2) (5.16) にな るこ とに注 目して、直接労働 以外 の部 分 も、 この比率 で案分すれ ば、待望 の (5.15)が え られ る。 ただ し、 この偽 装 され た表式 で は、 もはや 、本 来 あ るべ き姿 で あ る(5.6)や (5.10)とは異 な って、案 分 に よるデー タ加 工 を経 由 して、つ ぎの よ うな修 正 を受 け る。

Vj ‑ (vICl+ V2C2 )abjXj

+ ( 1

‑ FL)(V2321Xl+ V2a22X2‑ Vlyl )

=

(1‑ 〟 )(aojXj

+

V2a21Xl

+

V2322X2 ‑ Vlyl)

=

(1FL )A ,(j=1,2)(5.17)

Mj

‑ Bj‑ Vj

‑ (1‑ (vICl

+

V2C2 )) aojX

j+F L(

V2821Xl

+

V2322X2 ‑ Vlyl )

=FL (aojXj

+

V2321Xl

+

V2322X2 Vlyl) = FLB,., (j=1,2) (5.18) ここで、記 号 〝は、付加価 値 に しめ る剰 余分配 率

FL‑

Mj

/(Vj+

Mj)

a

/ (1

+ m)

(j‑1,2) を意 味す る

(5.19)

6.

レオ ンテ ィエフ体 系 と増補 投入行 列

前節 で は、生 産手段 あ るい は消 費手段 のいず れ に利 用 され るか とい う観 点 か ら、 マル ク ス流 の部 門分割 の意 に添 って、複雑 な産業連 関表 を組 み替 えて、第 2節 で紹 介 した形式 の 簡 明 な単純 再 生産表式 を導 出 した。 ところが、 この よ うな簡 明 さを追 求す るため に失 った 代償 は大 きい。産業連 関分析 で は、数量 バ ランス を表現 す る行 バ ランス と、価値 バ ランス を体 現 す る列バ ランス とは、 それ ぞれ 、 レオ ンテ ィエフ体 系 と価値体 系 とい う別 々の方 程 式 で表現 され て はい るが、 それ らの解 の存在 条件 は、 まった く、 同一 の条件 に帰す る とい

う意 味 で、双対 な関係 にあった。 ところが、マル クス流 の生産物 の用途 に も とづ く分類 は、

測 定単位 が異 な る数 量 デー タの集 計 因子 として価 値 ベ ク トル を使 用 す る こ とか ら、 いわ ば、

価値 と数量 の化 合物 をつ く りだす こ とにな り、せ っか くの双対性 を喪 失 して しま うこ とに なった。 しか も、前節 の末尾 で しめ され た よ うに、形 式上 の双対性 を偽 装す るた め に小細 工 をほ どこせ ば、マル クス の経 済理論 の根 幹 に位 置 すべ き搾 取 関係 を歪 曲 したか た ちで し か表現 で きな くな り、 か えって事態 を悪化 させ る。 か とい って、 ラ ングみ たい に、単純 に、

レオ ンテ ィエフの産業 とマル クス の部 門 を同一視 す るので は、投入 係数 にか んす る非現 実 な仮 定 に頼 らざるをえない。

それ で は、 この よ うな袋 小路 か ら抜 けだす道 は あ るので あ ろ うか ?レオ ンテ ィ エフ体 系 の双対 で あ る価 値体 系 は、再 生産 の条件 を労働価 値 面 か ら考 察す るので、再生産表式 の代 替案 として は、有力 で あ る。 ところが,価 値 方程 式 その ままで は、 マル クス経 済 学説 の戦 略変数 で あ る、搾 取 にか んす るデー タが欠落 してい る。 そ こで、価 値体 系 に搾 取 関係 を導 入す るひ とつ の方 法 として、塩 沢 [19]に したが って、増補 投入 行列 を利 用 しよ う11)。 その

ll) 塩 沢 [19]77ペ ー ジ参 照。

(13)

ために、まず、前節 の(5.・10)式 にな らって、必要消費 (列 )ベ ク トル Cを、労働力1単位 あた りの再生産 に必 要な消費財バ スケ ッ トとして、つ ぎの よ うに定義 しよ う。

β ‑ [¢ ] (6. 1)

そ うす ると、経済全体 では、雇用労働量 はaox になるので、 この経済の雇用労働者 の再生 産 に必要な消費財 は、ベ ク トル表示 でcaox になるOそれ に ともなって、純生産物ベ ク トル は、労働者 と資本家のあいだで、 2つの部分 に分割 され る。

.y ‑ cao

x+I

ここで、記号 ′は剰余生産物ベ ク トル であ り、純生産物 γ か ら必要消費用 。方を控除 した残 余 として定義 され る。そ して、 この部分 は、単純再生産 を想定すれ ば、資本家 の消費 にあ て られ る。上式 を(3.6)式 に代入すれ ば、 レオ ンテ ィエフ体系 は、いまや、

(A

+

cB。 )

x+

f‑ x (6. 3)

とい うかたちで表現 され る。行列A

+

ca。は、各種生産物1単位 を産 出す るために必要な 生産手段Aと 、その とき投入 され る労働力 の再生産のために必要な消費財cB。の合計 をあ らわす一覧表であるか ら、物的補填 な らびに人的再生産の条件 を代表す るデー タの リス ト とみなせ る. この行列 は、通常、増補投入行列 とよばれ るO

それでは、 この よ うにして導入 され た必要消費ベク トル βに対応 して、双対 な体系 とし て、価値方程式がわは、 どの よ うに変化す るであろ うか ?各産業 は、生産物1単位 あた り a.だけの労働 を投入す るので、 この とき必要な消費財 は現物的 にはcaoである。前節での 議論 を踏襲すれ ば、 この消費財の価値 による評価額 I/。が、それぞれの産業 における支払 い労働 としての可変資本 をあ らわすので、生産物1単位 あた りの付加価値 が 8.に等 しい こ とを考慮すれ ば、その帰結 として、資本家の手元 にの こる剰余価値 は、生産物1単位 あた り、 (1‑ vc)a。になる. あるいは、前節 で紹介 した搾取率m ‑ (1‑ TIC)/ vt?を利用すれ ば、剰余価値 は、m I/摺。と表現する こともできる. これ らの結果 をま とめれ ば、価値方程 式 (4.3)は、つ ぎの よ うに変形 で きる。

V(A

+

cao )

+

m I/℃ao‑ V (6. 4)

・なお、 この方程式 は、搾取率 の用語 に翻訳 してあ りはす るものの、その実体 は、価値方 程式 その ものであ ることは、い うまで もない。

こ うして、増補投入行列 を導入 しさえすれ ば、搾取関係 まで包括 した双対 な関係 が表現 され ることになる。

(A

+ 甲o )

x + I ‑ x

0 +

.

」̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲」

ただ し、 この図式 で、搾取率mは、定義上、価値ベ ク トルの情報 Vを必要 とす るので、

外生的 にはあたえ られ ない ことに注意す る必要がある。 あ くまで価値体 系が基本 である。

(14)

この よ うな関係式 を、再生産表式 の表記法 にあわせ て表現す るためには、 それ ぞれ の体 系 に、双対 な変数 をか けた結果 を比較すれ ば よい。す なわ ち、

l

I

l I :+

:

l l

lI℃ガoX l

l I l+

l

l l

:m I/摺 oX : : ll :

l I

: V

:

ll

」 ̲ ̲ ̲ ̲ 」

と くに、 これ を2産業 のケース として表示すれ ば、つ ぎの よ うにな る0

VlallXl Vlal2x2 vlClaOIXl

+

VIClaO2x2 vl^ VIXl V2C232lXl V2322x2 V2C2aOIXl

+

V2C2302x2 V2f2 tr2x2

(vlCl+ V2C2)aolX1

( v l C l +

Tr2C2)ab2x2 m (vlCl

+

V2C2)aolXl m (

v l C l +

V2C2)4,2x2

7.

おわ りに

産業連 関表 は、 旧ソ連 で作成 され た1923/24年 国民経済バ ランス にアイデ ィアを借用 した もの といわれ てい る12)。 ところが、 旧ソ連 の物財バ ランス法 は、事実上 、個別 物財バ ラン スか ら出発す る 「部分的均衡 」 の方法 に終始 してい たため に、計画 の整合性 に問題 があっ た よ うである13)。 また、今 日では、数理計画法 のなかで重 要 な位置 を しめ る線 形計画法 も、

旧ソ連 で資源配分 の効率化 問題 の解決策 として、 カ ン トログィ ッチ によって考案 され た と い う14)。経 済 の構造分析 には、難点 の多い再生産表式 に頗 るよ りも、産業連 関分析や線形 計画法 を利用す るほ うが、 よ り、実 り豊 か にお もわれ る。 ま してや 、か りに、マル クスの 特殊 な部 門分割 に よって もた らされ た 「分解 可能 な」 15)体 系 であ る再生産表式 にも とづい て、第 Ⅰ部 門の優先 的発展 が普遍 的 な真理 であ る と断定 され た結果 、 旧ソ連 の重工業優先 政策 が擁護 され た とすれ ば、再生産表式 の安直 な適用 は、資本 主義 が未成 熟 なまま、 しか も戦争 の脅威 を背景 に独力 で社会 主義建設 を余儀 な くされ た 旧ソ連 の特殊事情 を省 み るこ とな く、 旧ソ連 タイ プの発展 が唯一 の方法 で あ る とす る公式化 ない し教条化 ‑ の道 をひ ら

12)た とえば、TepexoB[22]訳書56ペー ジ、Dobb[1]訳書173ペー ジ参 照。

13)佐藤[18]78ペ ー ジ参照。

14)KaHTOpOBHtl[5]参照。

15)行列 の分解 可能性 の定義 につ いては、二階堂[17]、永 田[15]参照。

(15)

く危 険性 さえあ ろ う16)0

参考 文献

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1970年)0

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[14] 永 田聖二 「安定行列 と価格‑Leontief‑Sraffa体 系 にお ける価格 の収束性 ‑」九州大学

『経 済学研 究 』第52巻第6号,1987年 。

[15] 永 田聖二 「Leontief‑Sraffa体 系 にお け る非基礎 的生産物‑ 「自然価 格 」 の存在 とその 収束性 ‑」 九州 大学 『経 済学研 究 』第53巻第3号,1987年 。

16) 旧 ソ連 の歴 史 的情勢 を背景 とした特殊 事情 が、社会 主義建 設 にたい して作用 した歪 み につ い て は、Kosta[7]、佐 藤[18]参 照。

(16)

[16] HeMtm HOB,B.C.,rTpHMeJIeHHe由 TeMaTH^,H B 3KOHOMHyeCJ{HX H ccneAOBaJlHRX, 1959;(岡稔訳 『マル クス経済学 の数学的方法 (上 ・下

)

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[17] 二 階堂副包 『経 済 のための線 型数学』培風館 ,1960年。

[18] 佐藤経 明 『現代 の社会主義経 済』 (岩 波新 書)岩波書店,1975年。

[19] 塩 沢 由典 『数理経 済学 の方法』朝倉書店 ,1981年。

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新評論,1968年。

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O

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(吉 田靖彦訳 『数理経 済モデルー現代社会主義 の経 済学‑ 』頚草書房 ,1975年)0 [23] 宇 野弘蔵 『経済原論』 (岩 波全 書版 )岩波書店,1964年。

[24] 宇 野弘蔵編 『資本論研究 Ⅲ』筑摩 書房 ,1967年。

[25] 宇野弘蔵 『資本論入 門第二巻解説

岩 波書店 ,1977年。

[26] 山田喜志夫 『再生産 と国民所得 の理論』評論社,1972年。

[27] zauberman ,A.,Aspects of Planom eLrI'cS,AthlonePress,1967;(五井一雄監訳 『計画 計量経 済学一社会主義数理経 済学派 の台頭‑』中央大学 出版部,1986年 )0

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