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再生産表式の修正と産業連関表

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論文

再生産表式の修正と産業連関表

-四部門四価値構成の再生産表式に基づく産業連関表の考察-

Modified Reproduction Schemes and Input-Output Tables

寺田 隆至 TERADA Takayuki

(抄録)

マルクスが提示した再生産表式の表示形式を、産業連関表の表示形式との共通 性をできるだけ保持するように、その生産手段生産部門を、中間財生産部門と資 本財生産部門に分割し、さらに、「輸出入」取引と「サービス部門」を加えて、よ り具体的な再生産表式に修正する。そして、この表式を、産業連関表の形式で表 示し、マルクス再生産論が解明した内容が産業連関表の中にどこまで示されるの かを考察して、産業連関表のマルクス再生産論視点からの利用の前提となる知見 を獲得する。

考察の結果、マルクス再生産論が解明した物質的生産部門の単純再生産の条件 と、拡大再生産の物質的前提となる条件は、産業連関表の中に示されることが明 らかになった。しかし、再生産表式と異なって所得の支出構成の表示形式を持た ない産業連関表では、物質的生産部門の拡大再生産における部門間均衡条件は示 されないことも明らかになった。

(キーワード)再生産表式、マルクス、産業連関表、サービス部門、輸出入 論文

再生産表式の修正と産業連関表

-四部門四価値構成の再生産表式に基づく産業連関表の考察-

Modified Reproduction Schemes and Input-Output Tables

寺 田 隆 至 

TERADA Takayuki

(2)

1 はじめに-課題設定とその意義-

本稿の課題は、社会的生産を、生産手段生産部門と消費手段(消費財)生産部 門の二部門に分割して作成されたマルクスの再生産表式について、その生産手段 生産部門を、中間財(労働対象=原材料であり、歴史的形態規定性としては不変 流動資本であるが、以下では多くの場合「中間財」と表記する)生産部門と、資 本財(労働手段であり、歴史的形態規定性としては固定資本であるが、以下では 多くの場合「資本財」と表記する)生産部門に分割し、これに、 「サービス部門」

を加えた四部門による再生産表式の考察で明らかになる社会的再生産に関する知 見が、産業連関表という表示形式において、どのように示されるのかを考察する ことである。以下、この課題設定の意義について述べる。

産業連関表については、これまでマルクス経済学に基づく日本資本主義の研究 において、特に、マルクスが再生産論(再生産表式論)で明らかにした知見を強 く意識した形で、その統計データを活用する様々な試みが行われてきた

1

しかしながら、産業連関表と再生産表式には、表示形式における大きな差異が ある。すなわち、再生産表式は、 「二部門三価値構成」と表現されるように、資本 主義社会の経済活動を、生産手段(労働対象と労働手段)生産部門(第Ⅰ部門)

と消費手段(消費財)生産部門(第Ⅱ部門)という二つの生産部門で捉え、その 上で、生産物の価値構成を、生産手段の移転価値である「C」と、労働力の価値 と等価の部分である「V」 、そして、新たに作り出された価値が労働力価値(V)

を上回る部分である剰余価値(M)からなるものとして、その社会的再生産のあ り方を考察する。

このような再生産表式は、資本主義社会の経済活動を、極めて高い抽象度で捉 えたもので、これに対し、 「産業連関表は国民経済における生産物とサービスとの あらゆる部門間の流れ、取引を表示する統計値からなる 1 枚の表」

2

であり、した がって、再生産表式にはない具体性と全体性を持っている。そこから、両者に様々 な差異が生じている。

すなわち、再生産表式は、資本主義経済において、生産された物質的財貨であ

る商品が、どのようにして買い手を得て価値実現されるのか、そして、それによ

って、上述した第Ⅰ部門と第Ⅱ部門の資本の再生産がどのようにおこなわれるの

か、そして、さらに、資本主義経済を構成する二大階級としての資本家と労働者

(3)

1 はじめに-課題設定とその意義-

本稿の課題は、社会的生産を、生産手段生産部門と消費手段(消費財)生産部 門の二部門に分割して作成されたマルクスの再生産表式について、その生産手段 生産部門を、中間財(労働対象=原材料であり、歴史的形態規定性としては不変 流動資本であるが、以下では多くの場合「中間財」と表記する)生産部門と、資 本財(労働手段であり、歴史的形態規定性としては固定資本であるが、以下では 多くの場合「資本財」と表記する)生産部門に分割し、これに、 「サービス部門」

を加えた四部門による再生産表式の考察で明らかになる社会的再生産に関する知 見が、産業連関表という表示形式において、どのように示されるのかを考察する ことである。以下、この課題設定の意義について述べる。

産業連関表については、これまでマルクス経済学に基づく日本資本主義の研究 において、特に、マルクスが再生産論(再生産表式論)で明らかにした知見を強 く意識した形で、その統計データを活用する様々な試みが行われてきた

1

しかしながら、産業連関表と再生産表式には、表示形式における大きな差異が ある。すなわち、再生産表式は、 「二部門三価値構成」と表現されるように、資本 主義社会の経済活動を、生産手段(労働対象と労働手段)生産部門(第Ⅰ部門)

と消費手段(消費財)生産部門(第Ⅱ部門)という二つの生産部門で捉え、その 上で、生産物の価値構成を、生産手段の移転価値である「C」と、労働力の価値 と等価の部分である「V」 、そして、新たに作り出された価値が労働力価値(V)

を上回る部分である剰余価値(M)からなるものとして、その社会的再生産のあ り方を考察する。

このような再生産表式は、資本主義社会の経済活動を、極めて高い抽象度で捉 えたもので、これに対し、 「産業連関表は国民経済における生産物とサービスとの あらゆる部門間の流れ、取引を表示する統計値からなる 1 枚の表」

2

であり、した がって、再生産表式にはない具体性と全体性を持っている。そこから、両者に様々 な差異が生じている。

すなわち、再生産表式は、資本主義経済において、生産された物質的財貨であ る商品が、どのようにして買い手を得て価値実現されるのか、そして、それによ って、上述した第Ⅰ部門と第Ⅱ部門の資本の再生産がどのようにおこなわれるの か、そして、さらに、資本主義経済を構成する二大階級としての資本家と労働者

の生存(=生命の再生産)がいかにおこなわれるのかを、商品の売買を媒介する 貨幣流通との関係で捉えたものであり、したがって、第一に、産業部門は、物質 的財貨である商品の生産活動として、上述のように、生産手段(労働対象と労働 手段)生産部門(第Ⅰ部門)と消費手段(消費財)生産部門(第Ⅱ部門)との二 部門からなり、この他の様々な経済活動は、産業部門としては設定されていない。

すなわち、商業、不動産業、運輸業、通信業、金融業、保険業、「サービス業」、 政府(公務)などである。

第二に、再生産表式では、前述のように、第Ⅰ部門は生産手段である労働対象

(原材料=中間財)と労働手段(資本財)を、第Ⅱ部門は消費手段(消費財)を、

それぞれ生産するが、「生産手段」(労働対象と労働手段)と「消費手段」という 商品の規定性は、あくまでも、生産された商品が再生産過程において果たす機能 を示している。

これに対して、産業連関表での「部門分類は、原則として財およびサービスを 生産する生産活動単位によって行」い、「ある企業や事業所が

2

個以上の生産活動 を行っている場合は、これらをそれぞれの部門に分けて分類する」。このような産 業連関表での産業分類は、「財およびサービス」として何を生産しているのか、を 基準とした「一種の商品分類というべきもの」となる3。すなわち、産業連関表で の「部門生産物は、再生産構造上における経済的役割・機能とは関係なく使用価 値的に把握されている」4のである。

つまり、産業部門の設定が、再生産表式では、商品が再生産過程で果たす生産 手段と消費手段(消費財)という二つの機能=二つの産業部門として行われてい るのに対して、産業連関表では、産業部門は、使用価値的に「商品分類」として 設定する。そして、その上で、各部門が供給する商品が再生産過程で果たす三つ の機能として、資本財(労働手段)としての販売額(固定資本形成向け)、中間財

(原材料=労働対象)としての販売額(中間需要向け)、そして、消費財としての 販売額(消費支出向け)を把握する。そこでは、再生産表式で「生産手段」とし て一括される資本財と中間財は区別される。したがって、このことからは、再生 産表式と産業連関表の第三の差異として、次のことを指摘しなければならない。

すなわち、再生産表式が、労働対象(中間財)と労働手段(資本財)の両方を 生産する第Ⅰ部門と、消費手段(消費財)を生産する第Ⅱ部門との二部門で社会

(4)

的生産を捉えるのは、ある商品が中間財(原材料=労働対象)として販売される のか(中間需要向け)、資本財(労働手段)として販売されるのか(固定資本形成 向け)、消費財として販売されるのか(消費支出向け)を区別して示す産業連関表 よりも抽象的だということである。

確かに、労働対象と労働手段は、「生産手段」としての機能的同一性を持つ。し かし、より具体的な機能としては、労働対象(中間財)と労働手段(資本財)と して区別されるのであり、このことは、両者の商品への価値移転の様式の差異と ともに、マルクスの再生産論においても考察されている。このような差異があり ながらも、「生産手段」として一括することは、再生産表式の抽象性の一つであり、

この点では、産業連関表の方が具体的なのである。

ところで、これまで、マルクスの再生産表式論の知見を意識して、産業連関表 のデータを利用しようとした研究には、二部門三価値構成のマルクスの再生産表 式を前提して、連関表のデータから「第Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータを得よ うとしたものが多い5。しかし、そのような試みには、二つの課題がある。

第一には、産業連関表のある産業部門の生産する「商品分類」が、「第Ⅰ部門」

と「第Ⅱ部門」という再生産表式で設定されている産業部門の両方の機能を果た すことがあり得るということである。

例えば、「小麦粉」は、再生産過程において、一部は消費手段(消費財)として 家計で消費されるから「第Ⅱ部門」としての機能を果たすが、別の一部は、様々 な食品製造業によって原材料として消費されるから、この部分は生産手段として

「第Ⅰ部門」としての機能を果たす。同様の例は、他にも様々なものが考えられ る。

したがって、このような産業連関表のデータは、そのままでは、再生産表式に おける「第Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータにはならない6。産業連関表のデータ を再生産表式の「第Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータに変換する何らかの方法が 必要になる7

第二の課題は、第一の課題で述べた、産業連関表のデータを再生産表式の「第

Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータに変換するという課題では、再生産過程で労働 手段(資本財)として機能するものと、労働対象=原材料(中間財)として機能 するものを、「第Ⅰ部門」として一括することになり、産業連関表が、元々、各産

(5)

的生産を捉えるのは、ある商品が中間財(原材料=労働対象)として販売される のか(中間需要向け)、資本財(労働手段)として販売されるのか(固定資本形成 向け)、消費財として販売されるのか(消費支出向け)を区別して示す産業連関表 よりも抽象的だということである。

確かに、労働対象と労働手段は、「生産手段」としての機能的同一性を持つ。し かし、より具体的な機能としては、労働対象(中間財)と労働手段(資本財)と して区別されるのであり、このことは、両者の商品への価値移転の様式の差異と ともに、マルクスの再生産論においても考察されている。このような差異があり ながらも、「生産手段」として一括することは、再生産表式の抽象性の一つであり、

この点では、産業連関表の方が具体的なのである。

ところで、これまで、マルクスの再生産表式論の知見を意識して、産業連関表 のデータを利用しようとした研究には、二部門三価値構成のマルクスの再生産表 式を前提して、連関表のデータから「第Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータを得よ うとしたものが多い5。しかし、そのような試みには、二つの課題がある。

第一には、産業連関表のある産業部門の生産する「商品分類」が、「第Ⅰ部門」

と「第Ⅱ部門」という再生産表式で設定されている産業部門の両方の機能を果た すことがあり得るということである。

例えば、「小麦粉」は、再生産過程において、一部は消費手段(消費財)として 家計で消費されるから「第Ⅱ部門」としての機能を果たすが、別の一部は、様々 な食品製造業によって原材料として消費されるから、この部分は生産手段として

「第Ⅰ部門」としての機能を果たす。同様の例は、他にも様々なものが考えられ る。

したがって、このような産業連関表のデータは、そのままでは、再生産表式に おける「第Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータにはならない6。産業連関表のデータ を再生産表式の「第Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータに変換する何らかの方法が 必要になる7

第二の課題は、第一の課題で述べた、産業連関表のデータを再生産表式の「第

Ⅰ部門」と「第Ⅱ部門」のデータに変換するという課題では、再生産過程で労働 手段(資本財)として機能するものと、労働対象=原材料(中間財)として機能 するものを、「第Ⅰ部門」として一括することになり、産業連関表が、元々、各産

業部門=商品分類について、資本財(労働手段)として販売される額(固定資本 形成向け)と、中間財(原材料=労働対象)として販売される額(中間需要向け)

を区別して示しているというその具体性が生かされないということである。

しかし、二部門三価値構成の再生産表式を前提にした産業連関表の利用に関す る以上二つの課題のうち、第二の課題に関しては次のような解決策を考えること ができる。それは、これまでの研究のように二部門三価値構成のマルクスの再生 産表式を前提して、中間財(労働対象=原材料)と資本財(労働手段)を、第Ⅰ 部門が生産する「生産手段」として一括するのでなく、逆に、その第Ⅰ部門を、

中間財の生産部門と資本財の生産部門に分割する形で再生産表式の方を具体化す るという解決策である。

既に、寺田[2015]は、マルクスの再生産表式を、中間財生産部門、資本財生産 部門、そして、消費財生産部門の三部門表示とし、価値構成もこれに見合って、

「不変資本価値の移転部分」の「C」を、「中間財価値の移転部分」(Ca)と「資 本財価値の移転部分」(Cb)に分割した三部門四価値構成の再生産表式によって 社会的総資本の再生産過程を考察する研究を行っている8。この研究をふまえて、

産業連関表の具体性を活かす利用方法を検討する必要がある。

また、寺田[2015]では、この三部門四価値構成の再生産表式に「サービス部門」

を加えた四部門四価値構成の再生産表式についての考察も行っている。すなわち、

そこでは、上で再生産表式の産業部門について、「第一に」として指摘した、再生 産表式で設定されていない諸産業部門に関わる「サービス部門」を設定する試み がなされている。

なお、そこでの「サービス部門」は、寺田[2015]が、マルクス経済学内部にお ける「サービス論争」に関する研究の成果として提示した独自の「サービス産業」

の理解に基づくもので、上で、再生産表式で設定されていない産業部門としてあ げた、商業、不動産業、運輸業、通信業、金融業、保険業、「サービス業」、政府

(公務)のうち、「サービス業」と政府(公務)、そして、一部の運輸業、通信業を 含むものと捉えられる。すなわち、寺田[2015]の「サービス部門」を導入した四 部門四価値構成の再生産表式にもとづいた産業連関表の利用は、再生産表式に設 定されていない、相当数の産業部門を含めた考察を可能にすることが考えられる のである。

(6)

さて、再生産表式と産業連関表の第四の差異は、再生産表式では、「輸出」、「輸 入」という貿易に関する取引が捨象されているということである。ただし、再生 産表式への「輸出」、「輸入」という取引項目の組み込みに関する研究は既に行わ れている 9。これらの研究の成果をふまえて、上述した四部門四価値構成の再生 産表式に、「輸出」、「輸入」を組み込むことが試みられるべきである。

以上、四点にわたって、再生産表式と産業連関表の表示形式の差異について述 べ、その中で、マルクスの再生産表式論に基づいて産業連関表のデータを利用し た従来研究の課題について言及してきた。それらをふまえて、本稿が行おうとす るのは、再生産表式の表示形式を、産業連関表の表示形式との共通性をできるだ け保持するように具体化して、それについて再生産論的な考察を行い、その上で、

この具体化された再生産表式を産業連関表の形式で表示して、そこに、先の再生 産表式の考察結果が、どのように、どこまで表れるのか(逆に、表れないのか)

を確認して、マルクス再生産論に基づいて産業連関表を利用する際の前提となる 知見を得ることである。

そして、産業連関表の表示形式との共通性を保持するように具体化された再生 産表式とは、「輸出」、「輸入」という取引項目を含み、「サービス部門」を導入し た四部門四価値構成の再生産表式である。

そして、この再生産表式を産業連関表の形式で表示するのであるが、もちろん、

こうして、産業連関表の表示形式で示された「サービス部門」を含む四部門四価 値構成の再生産表式と、実際の統計としての産業連関表には重要な違いがある。

すなわち、既に述べたように、産業連関表の産業分類は、基本的に、使用価値的 に「商品分類」でなされるのに対して、産業連関表の表示形式で示された「サー ビス部門」を含む四部門四価値構成の再生産表式とは、産業分類を、中間財生産 部門、資本財生産部門、消費財生産部門、そして、「サービス部門」という四つの 産業部門として設定するものである。したがって、産業連関表の産業部門=「商 品分類」を、上述の四つの産業部門との関係でどのように捉えるのか、という、

上述した、二部門三価値構成の再生産表式を前提にした産業連関表の利用におけ る「第一の課題」と同じ課題がある。この課題については、実際の産業連関表の データを利用する本稿に引き続く研究で取り扱う。

以下、本稿は、次のような順序で考察を進める。

(7)

さて、再生産表式と産業連関表の第四の差異は、再生産表式では、「輸出」、「輸 入」という貿易に関する取引が捨象されているということである。ただし、再生 産表式への「輸出」、「輸入」という取引項目の組み込みに関する研究は既に行わ れている 9。これらの研究の成果をふまえて、上述した四部門四価値構成の再生 産表式に、「輸出」、「輸入」を組み込むことが試みられるべきである。

以上、四点にわたって、再生産表式と産業連関表の表示形式の差異について述 べ、その中で、マルクスの再生産表式論に基づいて産業連関表のデータを利用し た従来研究の課題について言及してきた。それらをふまえて、本稿が行おうとす るのは、再生産表式の表示形式を、産業連関表の表示形式との共通性をできるだ け保持するように具体化して、それについて再生産論的な考察を行い、その上で、

この具体化された再生産表式を産業連関表の形式で表示して、そこに、先の再生 産表式の考察結果が、どのように、どこまで表れるのか(逆に、表れないのか)

を確認して、マルクス再生産論に基づいて産業連関表を利用する際の前提となる 知見を得ることである。

そして、産業連関表の表示形式との共通性を保持するように具体化された再生 産表式とは、「輸出」、「輸入」という取引項目を含み、「サービス部門」を導入し た四部門四価値構成の再生産表式である。

そして、この再生産表式を産業連関表の形式で表示するのであるが、もちろん、

こうして、産業連関表の表示形式で示された「サービス部門」を含む四部門四価 値構成の再生産表式と、実際の統計としての産業連関表には重要な違いがある。

すなわち、既に述べたように、産業連関表の産業分類は、基本的に、使用価値的 に「商品分類」でなされるのに対して、産業連関表の表示形式で示された「サー ビス部門」を含む四部門四価値構成の再生産表式とは、産業分類を、中間財生産 部門、資本財生産部門、消費財生産部門、そして、「サービス部門」という四つの 産業部門として設定するものである。したがって、産業連関表の産業部門=「商 品分類」を、上述の四つの産業部門との関係でどのように捉えるのか、という、

上述した、二部門三価値構成の再生産表式を前提にした産業連関表の利用におけ る「第一の課題」と同じ課題がある。この課題については、実際の産業連関表の データを利用する本稿に引き続く研究で取り扱う。

以下、本稿は、次のような順序で考察を進める。

まず、寺田[2015]が提示した、三部門四価値構成の単純再生産表式と拡大再 生産表式に「輸出」と「輸入」を組み込み、それらについての再生産論的考察を 行う。そこでは、マルクスが二部門三価値構成の再生産表式について明らかにし た「再生産の条件」(単純再生産条件、拡大再生産の物質的前提条件と部門間均衡 条件)が、「輸出入」を組み込んだ三部門四価値構成の再生産表式の中ではどのよ うな条件として確認できるのかを明らかにする。

なお、ここで、「サービス部門」を含まない三部門四価値構成の再生産表式に、

「輸出」と「輸入」を組み込むのは、本稿では、「輸出入」は、物質的生産部門に ついてのみ行われるものとしており、「サービス」の「輸出入」は想定していない からである。これは、本稿に引き続く研究で行う予定の実際の産業連関表を使っ た研究が、「サービス貿易」の比重の少ない高度成長期の日本を対象としているこ とと、「サービス貿易」の再生産表式への導入については、独自の理論的考察が必 要だと考えるからである。

その上で、前述の「輸出入」を組み込んだ三部門四価値構成の単純再生産表式 と拡大再生産表式に、さらに、「サービス部門」を導入した四部門四価値構成の単 純再生産表式と拡大再生産表式を作成してそれぞれについて再生産論的考察を行 い、先に確認した「再生産の条件」が、「サービス部門」を導入した四部門四価値 構成の再生産表式の中ではどのような条件として捉えられるのかを明らかにする。

そして、それらの再生産表式を産業連関表の形式で表示し、「再生産の条件」が、

産業連関表のどこに、どのように、どこまで示されるのかを考察する。

2 「輸出入」を導入した三部門四価値構成の再生産表式

2.1

単純再生産表式

ここで行うのは、寺田[2015]が提示した三部門四価値構成の単純再生産表式に

「輸出」と「輸入」を組み込むことである。

次に示すのは、寺田[2015]による三部門四価値成の単純再生産表式である。た だし、「Ⅰα部門」という中間財生産部門の表記を「第1部門」に、「Ⅰβ部門」

という資本財生産部門の表記を「第2部門」に、「Ⅱ部門」という消費財生産部門 の表記を「第3部門」に変更している。また、寺田[2015]が、「Ca」で中間財(原 材料=労働対象)、「Cb」で資本財(労働手段)を示しているのを、前者は「Cr」

(8)

(「r」は原材料の「raw material」による)で、後者は「Cf」(「f」は固定資本 の「fixed capital」による)で表記した。また、第Ⅰ部門のCr、Cf、V、M に「1」を付し、同様に第2部門のCr、Cf、V、Mに「2」を、第3部門の Cr、Cf、V、Mに「3」を付している。

[表式1]

中間財 資本財

可変資本 剰余価値 生産物価値 第1部門(中間財); 1000Cr1+1000Cf2+ 500V1+ 500M1 = 3000 第2部門(資本財); 1000Cr2+1000Cf2+ 500V2+ 500M2 = 3000 第3部門(消費財); 1000Cr3+1000Cf3+ 500V3+ 500M3 = 3000

(計) 3000Cr +3000Cf +1500V +1500M = 9000

寺田[2015]は、この表式の各部門の年間生産物の

3000

という生産物価値の全 ての構成部分(Cr、Cf、V、Mの各部分)が、貨幣流通の媒介で価値実現され ること、また、各部門の資本家は、消費された中間財(Cr)と資本財(Cf)を 補填するとともに、自己の生命の再生産のために消費財に支出し、他方、各部門 の労働者は資本家が払った賃金を消費財に支出してやはり自己の生命の再生産を はかること、こうして社会的総資本としての全部門の資本が再生産されることを 確認している10

なお、上の表式は、数値を省略して示すと次のようになる。

[表式2]

第1部門(中間財); Cr1+Cf1+V1+M1 第2部門(資本財); Cr2+Cf2+V2+M2 第3部門(消費財); Cr3+Cf3+V3+M3

そして、この表式における単純再生産(部門間均衡)の条件は次の三条件のう ちの二つが成立することである(二つが成立すると残りの一つも成立する)とし、

上の表式についてもその成立を確認している。

(9)

(「r」は原材料の「raw material」による)で、後者は「Cf」(「f」は固定資本 の「fixed capital」による)で表記した。また、第Ⅰ部門のCr、Cf、V、M に「1」を付し、同様に第2部門のCr、Cf、V、Mに「2」を、第3部門の Cr、Cf、V、Mに「3」を付している。

[表式1]

中間財 資本財

可変資本 剰余価値 生産物価値 第1部門(中間財); 1000Cr1+1000Cf2+ 500V1+ 500M1 = 3000 第2部門(資本財); 1000Cr2+1000Cf2+ 500V2+ 500M2 = 3000 第3部門(消費財); 1000Cr3+1000Cf3+ 500V3+ 500M3 = 3000

(計) 3000Cr +3000Cf +1500V +1500M = 9000

寺田[2015]は、この表式の各部門の年間生産物の

3000

という生産物価値の全 ての構成部分(Cr、Cf、V、Mの各部分)が、貨幣流通の媒介で価値実現され ること、また、各部門の資本家は、消費された中間財(Cr)と資本財(Cf)を 補填するとともに、自己の生命の再生産のために消費財に支出し、他方、各部門 の労働者は資本家が払った賃金を消費財に支出してやはり自己の生命の再生産を はかること、こうして社会的総資本としての全部門の資本が再生産されることを 確認している10

なお、上の表式は、数値を省略して示すと次のようになる。

[表式2]

第1部門(中間財); Cr1+Cf1+V1+M1 第2部門(資本財); Cr2+Cf2+V2+M2 第3部門(消費財); Cr3+Cf3+V3+M3

そして、この表式における単純再生産(部門間均衡)の条件は次の三条件のう ちの二つが成立することである(二つが成立すると残りの一つも成立する)とし、

上の表式についてもその成立を確認している。

[表式3]

Cf1+V1+M1=Cr2+Cr3 Cr2+V2+M2=Cf1+Cf3

V1+M1+V2+M2=Cr3+Cf3

ところで、「輸出」と「輸入」の二部門三価値構成の再生産表式への導入は既に なされている。その研究成果をふまえて、前掲した、三部門四価値構成の再生産 表式における「輸出」と「輸入」の位置づけについては、次のように言える。

まず、「輸出」は、国内で生産された年間生産物から、その一部が国外に向けら れるのだから、その分、国内に供給されて国内での再生産過程に加わる生産物の 量を減らす。したがって、再生産表式における各部門の年間生産物の価値額を示 す表式からの控除分として表記される。

次に、「輸入」である。輸入品としての商品は輸入国の再生産過程において現実 に果たす機能によって、「中間財」「資本財」「消費財」のいずれかの規定性を持つ ことになる。したがって、輸入品は、その規定性に従って、国内に供給されて再 生産過程で機能する「中間財」「資本財」「消費財」の量を増加させる。表式では、

輸入品は、その規定性に従って各部門の表式への追加として表記される

なお、「輸出」と「輸入」の導入に伴って、各部門の資本家は、産業資本家に 加えて、「輸出」と「輸入」という取引を行う商業資本家としても再把握される ことになる。

以上の理解をふまえて、輸出を「e」、輸入を「i」とし、それに各部門を示す

1

~3 の数字を付記して表記すれば、前掲の[表式2]は次のように表すことができ る。この表式は、山田[1968]が提示した、「輸出」と「輸入」を含む二部門三価 値構成の再生産表式11と本質的に同一である。

[表式4]

第1部門(中間財); Cr1+Cf1+V1+M1+i1-e1 第2部門(資本財); Cr2+Cf2+V2+M2+i2-e2 第3部門(消費財); Cr3+Cf3+V3+M3+i3-e3

(10)

どの部門の表式も、国内で生産された生産物の価値額に、輸入額を加え、輸出 額を減じて得られる「国内に供給された生産物の価値額」を示している。そして、

再生産論としての課題は、この国内に供給された各部門の生産物の価値実現と各 部門の資本の単純再生産(これは、各部門の資本家と労働者の生命の再生産を含 む)の条件の解明となる。

そして、この単純再生産(部門間均衡)の条件は、次の[表式5]のように、「輸 入-輸出」(i-e)を加えた三条件となる。これも、既に、山田[1968]が、「輸出 入」を含む二部門三価値構成の再生産表式について示した条件と本質的に同一で ある12

[表式5]

Cf1+V1+M1+i1-e1=Cr2+Cr3 … ① Cr2+V2+M2+i2-e2=Cf1+Cf3 … ② V1+M1+V2+M2=Cr3+Cf3 +i3-e3 … ③

ここで、確認しておきたいのは、この単純再生産条件の中に、「輸出=輸入」(e1

+e2+e3=i1+i2+i3)という条件が含まれていることである。すなわち、以下 のとおり。

①から V1+M1=Cr2+Cr3-Cf1-i1+e1

③に代入 Cr2+Cr3-Cf1-i1+e1+V2+M2=Cr3+Cf3+i3-e3 …

②から V2+M2=Cf1+Cf3-Cr2-i2+e2

④に代入 Cr2+Cr3-Cf1-i1+e1+Cf1+Cf3-Cr2-i2+e2=Cr3+

Cf3+i3-e3

これを整理すると e1+e2+e3=i1+i2+i3 となる。

次の[表式6]は、上の[表式5]の単純再生産条件が成立した数値例による表式 である。

(11)

どの部門の表式も、国内で生産された生産物の価値額に、輸入額を加え、輸出 額を減じて得られる「国内に供給された生産物の価値額」を示している。そして、

再生産論としての課題は、この国内に供給された各部門の生産物の価値実現と各 部門の資本の単純再生産(これは、各部門の資本家と労働者の生命の再生産を含 む)の条件の解明となる。

そして、この単純再生産(部門間均衡)の条件は、次の[表式5]のように、「輸 入-輸出」(i-e)を加えた三条件となる。これも、既に、山田[1968]が、「輸出 入」を含む二部門三価値構成の再生産表式について示した条件と本質的に同一で ある12

[表式5]

Cf1+V1+M1+i1-e1=Cr2+Cr3 … ① Cr2+V2+M2+i2-e2=Cf1+Cf3 … ② V1+M1+V2+M2=Cr3+Cf3 +i3-e3 … ③

ここで、確認しておきたいのは、この単純再生産条件の中に、「輸出=輸入」(e1

+e2+e3=i1+i2+i3)という条件が含まれていることである。すなわち、以下 のとおり。

①から V1+M1=Cr2+Cr3-Cf1-i1+e1

③に代入 Cr2+Cr3-Cf1-i1+e1+V2+M2=Cr3+Cf3+i3-e3 …

②から V2+M2=Cf1+Cf3-Cr2-i2+e2

④に代入 Cr2+Cr3-Cf1-i1+e1+Cf1+Cf3-Cr2-i2+e2=Cr3+

Cf3+i3-e3

これを整理すると e1+e2+e3=i1+i2+i3 となる。

次の[表式6]は、上の[表式5]の単純再生産条件が成立した数値例による表式 である。

[表式6]

中間財 資本財 可変資本 剰余価値 輸入 輸出 国内供給 第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+350V1+ 350M1+1000i1-100e1 =3000 第2部門; 1100Cr2+1100Cf2+550V2+ 550M2+ 200i2-500e2 =3000 第3部門; 1200Cr3+1200Cf3+600V3+ 600M3+ 100i3-700e3 =3000

(計) 3000Cr +3000Cf +1500V+1500M + 1300i-1300e =9000

この表式について、単純再生産条件の成立を確認すれば次のようになる。

700Cf1+350V1+350M1+1000i1-100e1=1100Cr2+1200Cr3 = 2300 1100Cr2+550V2+550M2+200i2-500e2=700Cf1+1200Cf3 = 1900 350V1+350M1+550V2+550M2=1200Cr3+1200Cf3+100i3-700e3

1800

なお、寺田[2015]は、「輸出入」を含まない三部門四価値構成の単純再生産表 式について、「いくらかの貨幣準備は-資本前貸のためであろうと収入支出のた めであろうと-…どんな事情のもとでも生産資本と並んで資本家の手もとにあ る」13という前提の下で資本家が支出する貨幣の流通経路と関連させて再生産の 過程を確認する作業を行っている14

上の[表式6]についても、同様の作業を行うことができるが、その場合、「輸 出入」取引が含まれる[表式6]では次の二つの差異が生じてくる。すなわち、

[表式6]において、輸入額が輸出額を上回る「入超」の第

1

部門では、前述の ように、「国内に供給される生産物」に「入超」分の生産物が含まれてこの部分の 価値実現が行われること、そして、輸出額が輸入額を上回る「出超」の第2部門 と第3部門では、価値実現される国内生産物が「出超」で減少し、他方で「出超」

の結果としての「貨幣」15の支出による生産物の価値実現が行われることである。

2.2

拡大再生産表式

次の[表式7]は、寺田[2015]が考察している拡大再生産の出発表式を参考に

「輸出入」を組み込んで数値を変えたものである。

(12)

[表式7]

中間財 資本財 可変資本 剰余価値 輸入 輸出 国内供給 第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+350V1+350M1+1000i1- 100e1=3000 第2部門;1300Cr2+1300Cf2+650V2+650M2+ 300i2-1200e2=3000 第3部門; 750Cr3+ 750Cf3+750V3+750M3+ 600i3- 600e3=3000

(計) 2750Cr+2750Cf +1750V+1750M+ 1600i- 1600e=9000

注)第3部門の輸出と輸入が同額になっているのは、各部門の資本構成(Cr:

Cf:V)、剰余価値率(M/V)、国内供給額を、寺田[2015]が示した表式(37 頁)から変えずに、考察し易い整数の数値例にしたためであって、これらの条 件を変えれば、第3部門の輸出と輸入の額が異なる表式は作成できる。

まず、確認できるのは、この表式では、次のように、[表式5]に示した単純再 生産条件が成立していないことである。

700Cf1+350V1+350M1+1000i1-100e1=2300

> 1300Cr2+750Cr3=

2050

1300Cr2+650V2+650M2+300i2-1200e2=1700

> 700Cf1+750Cf3=

1450

350V1+350M1+650V2+650M2=2000 > 750Cr3+750Cf3+600i3-600e3

=1500

最初の式は、余剰中間財

250

(=2300-2050)の存在を、二つ目の式は、余剰資

本財

250(=1700-1450)の存在を示すから、要するに、この両式は余剰生産手

段の存在を示している。これは、マルクスが二部門三価値構成の再生産表式につ いて、「拡大された規模での再生産の物質的前提」16としたものである。

そして、この余剰生産手段のうち、余剰中間財については、

900

(=1000i1-100e1)

という中間財の純輸入が行われているから、中間財輸入が拡大再生産の物質的前 提になっていると言うことができる。

なお、最後の式は、単純再生産の規模を超える余剰消費財

500

(=2000-1500)

の存在を示すが、この存在は拡大再生産の絶対的な条件ではない。確かに、拡大

(13)

[表式7]

中間財 資本財 可変資本 剰余価値 輸入 輸出 国内供給 第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+350V1+350M1+1000i1- 100e1=3000 第2部門;1300Cr2+1300Cf2+650V2+650M2+ 300i2-1200e2=3000 第3部門; 750Cr3+ 750Cf3+750V3+750M3+ 600i3- 600e3=3000

(計) 2750Cr+2750Cf +1750V+1750M+ 1600i- 1600e=9000

注)第3部門の輸出と輸入が同額になっているのは、各部門の資本構成(Cr:

Cf:V)、剰余価値率(M/V)、国内供給額を、寺田[2015]が示した表式(37 頁)から変えずに、考察し易い整数の数値例にしたためであって、これらの条 件を変えれば、第3部門の輸出と輸入の額が異なる表式は作成できる。

まず、確認できるのは、この表式では、次のように、[表式5]に示した単純再 生産条件が成立していないことである。

700Cf1+350V1+350M1+1000i1-100e1=2300

> 1300Cr2+750Cr3=

2050

1300Cr2+650V2+650M2+300i2-1200e2=1700

> 700Cf1+750Cf3=

1450

350V1+350M1+650V2+650M2=2000 > 750Cr3+750Cf3+600i3-600e3

=1500

最初の式は、余剰中間財

250

(=2300-2050)の存在を、二つ目の式は、余剰資

本財

250(=1700-1450)の存在を示すから、要するに、この両式は余剰生産手

段の存在を示している。これは、マルクスが二部門三価値構成の再生産表式につ いて、「拡大された規模での再生産の物質的前提」16としたものである。

そして、この余剰生産手段のうち、余剰中間財については、

900

(=1000i1-100e1)

という中間財の純輸入が行われているから、中間財輸入が拡大再生産の物質的前 提になっていると言うことができる。

なお、最後の式は、単純再生産の規模を超える余剰消費財

500

(=2000-1500)

の存在を示すが、この存在は拡大再生産の絶対的な条件ではない。確かに、拡大

再生産が追加労働者(追加労働力)を必要とする限り、この追加労働者が消費す る追加の消費手段(消費財)は絶対的に必要であるが、この供給が、資本家が消 費できる消費財から行われることも可能だからである。

さて、[表式7]を出発点に、拡大再生産が行われる場合の剰余価値・利潤の支 出構成を示したものが次の表式である。

[表式8]

第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+350V1+100mk1+100mcr1+100mcf1+

50mv1+1000i1- 100e1=3000

第2部門;1300Cr2+1300Cf2+650V2+400mk2+100mcr2+100mcf2+

50mv2+ 300i2-1200e2=3000

第3部門; 750Cr3+ 750Cf3+750V3+600mk3+ 50mcr3+ 50mcf3+

50mv3+ 600i3- 600e3=3000

(計) 2750Cr+2750Cf+1750V+1100mk+250mcr+250mcf+150mv+

1600i-1600e=9000

注)この表式では、表式上の記号の意味を示す、「中間財」、「資本財」、「可変資 本」、「剰余価値」、「輸入」、「輸出」、「国内供給」という表示は省略している(以 下の表式でも紙幅の関係で表示を省略することがある)。

この表式では、資本家は剰余価値から追加投資を行う。すなわち、追加中間財 への投資(mcr)、追加資本財への投資(mcf)、追加労働者への投資(mv)17である。

そして、資本家は、剰余価値の一部を追加投資に向けた残りを消費財に支出する

(mk)。なお、資本家が剰余価値を追加資本に投資する比率(蓄積率)は、各部門 において一定ではなく、各部門での追加資本投資が、全部門として拡大再生産に 帰結するように、それぞれ異なる蓄積率となっている。また、追加資本投資にお いても、資本構成(Cr:Cf:M)及び剰余価値率(M/V)は変わらないものと している。

この表式では、既に、寺田[2016]が考察した、三部門四価値構成の拡大再生産 表式における部門間均衡条件 18に「輸出」と「輸入」の項目を導入した次の三条 件が成立している。

(14)

[表式9]

Cf1+V1+mk1+mcf1+mv1+i1-e1=Cr2+mcr2+Cr3+mcr3 … ① Cr2+V2+mk2+mcr2+mv2+i2-e2=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3 … ② V1+mk1+mv1+V2+mk2+mv2=Cr3+Cf3+mcr3+mcf3+i3-e3 … ③

[表式8]では、この三条件が次のように成立している。

700

Cf1+350V

1+100mk1

+100mcf1+50mv1+1000i1-100e1=1300C

r2+

100mcr2+750Cr3+50mcr3

= 2200

1300

Cr2+650V

2+400mk2

+100mcr2+50mv2+300i2-1200e2=700Cf1+

100mcf1+750Cf3+50mcf3

= 1600

350V1+100mk1+50mv1+650V2+400mk2+50mv2=750Cr3+750Cf3+50mcr3

+50mcf3+600i3-600e3 = 1600

そして、[表式9]の三条件の中には、2.1で単純再生産の場合について確認し たのと同様に、次のように、「輸出=輸入」(e1+e2+e3=i1+i2+i3)という条 件が含まれている。すなわち、以下のとおり。

①から V1+mk1+mv1=Cr2+mcr2+Cr3+mcr3-Cf1-mcf1-i1+e1

③に代入 Cr2+mcr2+Cr3+mcr3-Cf1-mcf1-i1+e1+V2+mk2+mv2=

Cr3+Cf3+mcr3+mcf3+i3-e3 これは次のように整理できる。

Cr2+V2+mk2+mcr2+mv2-i1-i3+e1+e3=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3 …

②から V2+mk2+mv2=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3-Cr2-mcr2-i2+e2

④に代入 Cf1+mcf1+Cf3+mcf3-Cr2-mcr2-i2+e2+Cr2+mcr2-i1-

i3+e1+e3=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3

これを整理すると e1+e2+e3=i1+i2+i3 となる。

なお、前節で、「輸出入」を含む三部門四価値構成の単純再生産表式である[表

(15)

[表式9]

Cf1+V1+mk1+mcf1+mv1+i1-e1=Cr2+mcr2+Cr3+mcr3 … ① Cr2+V2+mk2+mcr2+mv2+i2-e2=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3 … ② V1+mk1+mv1+V2+mk2+mv2=Cr3+Cf3+mcr3+mcf3+i3-e3 … ③

[表式8]では、この三条件が次のように成立している。

700

Cf1+

350V1+100mk1

+100mcf1+50mv1+1000i1-100e1=

1300C r2+

100mcr2+750Cr3+50mcr3

= 2200

1300Cr2+650

V2+400mk2+100mcr2+50mv2+300i2-1200e2=700C

f1+

100mcf1+750Cf3+50mcf3

= 1600

350V1+100mk1+50mv1+650V2+400mk2+50mv2=750Cr3+750Cf3+50mcr3

+50mcf3+600i3-600e3 = 1600

そして、[表式9]の三条件の中には、2.1で単純再生産の場合について確認し たのと同様に、次のように、「輸出=輸入」(e1+e2+e3=i1+i2+i3)という条 件が含まれている。すなわち、以下のとおり。

①から V1+mk1+mv1=Cr2+mcr2+Cr3+mcr3-Cf1-mcf1-i1+e1

③に代入 Cr2+mcr2+Cr3+mcr3-Cf1-mcf1-i1+e1+V2+mk2+mv2=

Cr3+Cf3+mcr3+mcf3+i3-e3 これは次のように整理できる。

Cr2+V2+mk2+mcr2+mv2-i1-i3+e1+e3=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3 …

②から V2+mk2+mv2=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3-Cr2-mcr2-i2+e2

④に代入 Cf1+mcf1+Cf3+mcf3-Cr2-mcr2-i2+e2+Cr2+mcr2-i1-

i3+e1+e3=Cf1+mcf1+Cf3+mcf3

これを整理すると e1+e2+e3=i1+i2+i3 となる。

なお、前節で、「輸出入」を含む三部門四価値構成の単純再生産表式である[表

式6]について指摘したように、[表式8]の拡大再生産表式についても、資本家 が支出する貨幣の流通経路と関連させて再生産の過程を確認することが可能であ る。そして、その場合、[表式8]の第

1

部門における「入超」分の生産物の価値 実現と、第2部門の「出超」によって減少した国内生産物の価値実現、及び、「出 超」の結果としての「貨幣」の支出による生産物の価値実現が、再生産の成立に とっての重要な契機となる。

さて、上の[表式8]を整理すると、次のような「拡大再生産のために変更さ れた表式」となる。

[表式

10]

中間財 資本財 可変資本 剰余価値 輸入 輸出 国内供給 第1部門; 800Cr1+ 800Cf1+400V1+100mk1+1000i1- 100e1=3000 第2部門;1400Cr2+1400Cf2+700V2+400mk2+ 300i2-1200e2=3000 第3部門; 800Cr3+ 800Cf3+800V3+600mk3+ 600i3- 600e3=3000

(計) 3000Cr +3000Cf +1900V+1100mk+ 1900i- 1900e=9000

この表式では、次に示すように、[表式5]の単純再生産条件が成立している。

800Cf1+400V1+100mk1+1000i1-100e1=1400Cr2+800Cr3 = 2200 1400Cr2+700V2+400mk2+300i2-1200e2=800Cf1+800Cf3 = 1600 400V1+100mk1+700V2+400mk2=800Cr3+800Cf3+600i3-600e3 = 1600

すなわち、マルクスが明らかにしているように、「拡大された規模の再生産」は、

「拡大された規模の単純再生産」として行われるのである。

そして、実際に拡大再生産が行われれば、例えば、次の表式の「Cr+Cf+V

+M」の価値構成で示されるような、拡大された規模の年間生産物が生産される。

表式では、その年間生産物の価値構成に加えて、単純再生産を可能とする、す なわち、単純再生産(部門間均衡)条件が成立する規模での輸出入の最低量を加 えている(簡単化のために、各部門は輸出、輸入のいずれかのみを行うとしてい る)。

(16)

[表式

11]

中間財 資本財 可変資本 剰余価値 輸入 輸出 国内供給 第1部門; 800Cr1+ 800Cf1+400V1+400M1 + 600i1 =3000 第2部門;1400Cr2+1400Cf2+700V2+700M2 - 1200e2 =3000 第3部門; 800Cr3+ 800Cf3+800V3+800M3 + 600i3 =3800

(計) 3000Cr +3000Cf +1900V+1900M+1200i-1200e=9800

この表式について確認しておきたいのは、第1部門(中間財)、第2部門(資本 財)、第3部門(消費財)のいずれにおいても、単純再生産のために一定の規模の 輸出入が不可欠となっていることである。輸出入が再生産の不可欠の条件となっ ているのである。

3 「サービス部門」を含む四部門四価値構成の再生産表式と産業連関表的表示

3.1

単純再生産表式と産業連関表的表示

3.1.1

単純再生産表式

本章で行うのは、前章で考察した三部門四価値構成の単純再生産表式と拡大再 生産表式に、「サービス部門」を組み込んで考察し、それを産業連関表の形式で 表示することである。そして、産業連関表の形式では、どこに、どのように、ど こまで、再生産表式による考察で得た知見(単純再生産条件、拡大再生産の物質 的前提条件と部門間均衡条件)が示されるかを確認することである。本節では、

まず、単純再生産表式をとりあげる。

次に示すのは、[表式6]に「サービス部門」を第4部門として導入した四部門 四価値構成の単純再生産表式である。

[表式 12]

中間財 資本財 可変 剰余 輸入 輸出 国内 資本 価値 供給 第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+350V1+ 350M1+1000i1-100e1 =3000 第2部門; 1100Cr2+1100Cf2+550V2+ 550M2+ 200i2-500e2 =3000 第3部門; 1200Cr3+1200Cf3+600V3+ 600M3+ 100i3-700e3 =3000

(17)

[表式

11]

中間財 資本財 可変資本 剰余価値 輸入 輸出 国内供給 第1部門; 800Cr1+ 800Cf1+400V1+400M1 + 600i1 =3000 第2部門;1400Cr2+1400Cf2+700V2+700M2 - 1200e2 =3000 第3部門; 800Cr3+ 800Cf3+800V3+800M3 + 600i3 =3800

(計) 3000Cr +3000Cf +1900V+1900M+1200i-1200e=9800

この表式について確認しておきたいのは、第1部門(中間財)、第2部門(資本 財)、第3部門(消費財)のいずれにおいても、単純再生産のために一定の規模の 輸出入が不可欠となっていることである。輸出入が再生産の不可欠の条件となっ ているのである。

3 「サービス部門」を含む四部門四価値構成の再生産表式と産業連関表的表示

3.1

単純再生産表式と産業連関表的表示

3.1.1

単純再生産表式

本章で行うのは、前章で考察した三部門四価値構成の単純再生産表式と拡大再 生産表式に、「サービス部門」を組み込んで考察し、それを産業連関表の形式で 表示することである。そして、産業連関表の形式では、どこに、どのように、ど こまで、再生産表式による考察で得た知見(単純再生産条件、拡大再生産の物質 的前提条件と部門間均衡条件)が示されるかを確認することである。本節では、

まず、単純再生産表式をとりあげる。

次に示すのは、[表式6]に「サービス部門」を第4部門として導入した四部門 四価値構成の単純再生産表式である。

[表式 12]

中間財 資本財 可変 剰余 輸入 輸出 国内 資本 価値 供給 第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+350V1+ 350M1+1000i1-100e1 =3000 第2部門; 1100Cr2+1100Cf2+550V2+ 550M2+ 200i2-500e2 =3000 第3部門; 1200Cr3+1200Cf3+600V3+ 600M3+ 100i3-700e3 =3000

(計) 3000Cr +3000Cf +1500V+1500M + 1300i-1300e =9000 第4部門; 600Cr4+600Cf4 +300V4 =1500

そこでの「サービス部門」の捉え方は、寺田[2015]に基づいており、この表式 で、第4部門に剰余価値(M)が帰属していない理由もその捉え方に基づく(後 述する)。ただし、寺田[2015]が作成した「サービス部門」を含む四部門四価値 構成の再生産表式とは、数値の違いの他に、「輸出入」が組み込まれている点が異 なる。なお、寺田[2015]の表式で使用している中間財、資本財の記号は、2.1 で 述べたように変更している。

ところで、寺田[2015]は、「サービス部門」を捉えるにあたって、「サービス」

が売買される「サービス取引」現象から考察を始める19

すなわち、「サービス取引」とは、マルクスの「サービス」規定である「商品の であれ労働のであれ、ある使用価値の有用的な働き」20が取引される現象である21 が、商品の「有用的働き」は商品が消費される際に生じるのであり、また、労働 の「有用的働き」も、労働力が支出されて労働が行われる際に生じるのだから、

「商品のであれ労働のであれ、ある使用価値の有用的な働き」が「サービス」と して取引されるというのは、実は現象であって、本質ではない。「サービス取引」

が行われる時には、そうした「サービス」は存在しておらず、取引が行われた後 に、商品が消費されてから、あるいは、労働が行われてから「サービス」は存在 する。そして、「取引」の時点で売られているのは商品であり、労働力であり、こ れが「サービス取引」の本質であると述べる22

そして、具体的な「サービス部門(産業)」として、主に、商品を、特定の「有 用効果」をもたらす「有用的働き」の「時間」を決めて売る(=時間内の消費権 限を認める)のが、物品賃貸・レンタカー・スポーツ施設・宿泊施設などであり、

また、主に、労働力を、その支出=労働の「有用的働き」がもたらす特定の「有 用効果」という「結果」を決めて売る(=結果に向けての消費権限を認める)の が、理容・美容・医療・教育・福祉・芸能・スポーツ・会計・放送などであると する(なお、この商品と労働力の両方を売る場合=業種もある)23

そして、主に、固定資本に擬せられる施設などを含む様々な商品を「有用的働 き」の「時間」決めで売る場合にも、中間財に擬せられる燃料や、商品の管理を

(18)

行う労働力が必要であり、また、主に、労働力を「有用効果」の「結果」決めで 売る場合にも、その労働力は、中間財や資本財に擬せられる様々な物的手段を使 用するから、「サービス部門(産業)」の「サービス資本」は「中間財(Cr)+資 本財(Cf)+労働力(V)」という価値構成で示されるとする。

こうして、寺田[2015]が捉える「サービス部門(産業)」とは、「Cr+Cf+V」

という価値構成で示される「サービス資本」を(その「サービス=有用的働き」

と関連させて)売る産業であり、その中でも、物質的生産を行う一部の業種(機 械修理業、加工・組立サービス業等)を除く、「非物質的生産部門としてのサービ ス部門」である。

そして、このような非物質的生産部門の「サービス資本」は、物質的生産部門 の労働者と資本家が、それぞれ賃金と剰余価値の一部を「サービス」に支出する

(=「サービス資本」を買う)結果として、「Cr+Cf+V」という「サービス資 本」の価値を超える「利潤(P)」(剰余価値ではない)を獲得すると捉える。こ こで、「サービス部門」は、物質的生産部門で生み出された価値の一部を「利潤」

として受け取るのである24。したがって、物質的生産部門の労働者と資本家の「サ ービス」への支出=「サービス支出」が示されていない[表式

12]では、第4部

門への利潤の帰属は表記できないのである。

そこで、[表式

12]の賃金と剰余価値の消費財への支出と「サービス支出」

、及

び、第4部門への利潤(P)の帰属を示したのが次の[表式

13]である。

[表式 13]

第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+140Vp1+210Vs1+140Mp1+210Ms1+

1000i1-100e1=3000

第2部門;1100Cr2+1100Cf2+220Vp2+330Vs2+220Mp2+330Ms2+

200i2-500e2 =3000

第3部門;1200Cr3+1200Cf3+240Vp3+360Vs3+240Mp3+360Ms3+

100i3-700e3 =3000

(計) 3000Cr+3000Cf +600Vp +900Vs +600Mp +900Ms +

1300i-1300e =9000

第4部門; 600Cr4+ 600Cf4+300V4

+300P4 =1800

(19)

行う労働力が必要であり、また、主に、労働力を「有用効果」の「結果」決めで 売る場合にも、その労働力は、中間財や資本財に擬せられる様々な物的手段を使 用するから、「サービス部門(産業)」の「サービス資本」は「中間財(Cr)+資 本財(Cf)+労働力(V)」という価値構成で示されるとする。

こうして、寺田[2015]が捉える「サービス部門(産業)」とは、「Cr+Cf+V」

という価値構成で示される「サービス資本」を(その「サービス=有用的働き」

と関連させて)売る産業であり、その中でも、物質的生産を行う一部の業種(機 械修理業、加工・組立サービス業等)を除く、「非物質的生産部門としてのサービ ス部門」である。

そして、このような非物質的生産部門の「サービス資本」は、物質的生産部門 の労働者と資本家が、それぞれ賃金と剰余価値の一部を「サービス」に支出する

(=「サービス資本」を買う)結果として、「Cr+Cf+V」という「サービス資 本」の価値を超える「利潤(P)」(剰余価値ではない)を獲得すると捉える。こ こで、「サービス部門」は、物質的生産部門で生み出された価値の一部を「利潤」

として受け取るのである24。したがって、物質的生産部門の労働者と資本家の「サ ービス」への支出=「サービス支出」が示されていない[表式

12]では、第4部

門への利潤の帰属は表記できないのである。

そこで、[表式

12]の賃金と剰余価値の消費財への支出と「サービス支出」

、及

び、第4部門への利潤(P)の帰属を示したのが次の[表式

13]である。

[表式 13]

第1部門; 700Cr1+ 700Cf1+140Vp1+210Vs1+140Mp1+210Ms1+

1000i1-100e1=3000

第2部門;1100Cr2+1100Cf2+220Vp2+330Vs2+220Mp2+330Ms2+

200i2-500e2 =3000

第3部門;1200Cr3+1200Cf3+240Vp3+360Vs3+240Mp3+360Ms3+

100i3-700e3 =3000

(計) 3000Cr+3000Cf +600Vp +900Vs +600Mp +900Ms +

1300i-1300e =9000

第4部門; 600Cr4+ 600Cf4+300V4

+300P4 =1800

この表式の価値構成における、「Vp」と「Vs」、「Mp」と「Ms」は、労働者と 資本家が、それぞれ賃金(V)と剰余価値(M)という所得を、消費財に支出す る部分(Vp、Mp)と、「サービス」に支出する部分(Vs、Ms)である。そして、

この表式では、労働者と資本家のどちらも、2:3の比率で、所得(賃金、剰余 価値)を「消費財」と「サービス」に支出するものとしている。

なお、寺田[2015]は、この表式では、基礎的関係を把握するために、「サービス 支出」は、物質的生産を行う三部門の労働者と資本家だけが行い、「サービス部門」

の労働者と資本家は「サービス」に支出しないものとしている25

そして、その上で、このような「サービス部門」の再生産のあり方を、「サービ ス部門」を組み込んだ四部門四価値構成の再生産表式によって考察する26

すなわち、まず、物質的生産部門の労働者と資本家は、所得(賃金と剰余価値)

の一部から、消費財への支出(Vp、Mp)とともに「サービス」への支出(Vs、

Ms)を行う。そして、その労働者と資本家の「サービス」への支出(Vs、Ms)

の合計が、「サービス部門」の売上げを形成する。すなわち、

[表式 13]における、

210Vs1+210Ms1+330Vs2+330Ms2+360Vs3+360Ms3=1800

である。そして、

この「サービス部門」の売上げについては、「600Cr4+600Cf4+300Vp4」とい う価値構成の「サービス資本」が

1800

という価格で売られたということで、「サ ービス部門」が取得する

300P4

という利潤の源泉は、物質的生産部門で生み出さ れた価値であるとする。

その上で、「サービス部門」の資本家は、この売上げから、一部を「サービス部 門」が消費した「不変資本としての消費財」(600Cr4+600Cf4)の補填のために 消費財生産部門(第3部門)に支出し、また、「サービス部門」の労働者に賃金を 支払って(300V4)、これは結局、消費財生産部門に支出され、さらに、資本家自 らの生存のために消費財生産部門に支出する(300P4)。これによって、「サービ ス部門」の再生産が行われると捉える。

なお、「サービス部門」が使用する「600Cr4+600Cf4」という「不変資本」を、

「不変資本としての消費財」と呼ぶのは、「サービス部門」は物質的生産物を生産 せず、したがって、この「不変資本」とは、本質的には消費財だからである。し たがって、それらは、消費財を生産する第3部門が供給する。しかし、この消費 財の生産には、中間財と資本財が使用されており、その価値額が「600Cr4+600

(20)

Cf4」なのである。

そこで、消費財生産部門は、 「サービス部門」のための「不変資本としての消費 財」の生産に消費した中間財(600Cr3)と資本財(600Cf3)を、それぞれ中間 財生産部門(第1部門)と資本財生産部門(第2部門)から購入して補填する。

これによって、社会的生産の全体的な連関の中での「サービス部門」の再生産が 完了すると捉える

27

以上のような 「サービス部門」 を含む社会的総資本の単純再生産過程について、

寺田[2015]は、三部門四価値構成の単純再生産表式に「サービス部門」を組み込 むことは、物質的生産部門の労働者と資本家の所得(賃金と剰余価値)が消費財 だけでなく、 「サービス」にも支出されるという消費支出の構成変化(V→Vp+

Vs、M→Mp+Ms)を生じさせるだけで、そのことは物質的生産部門の単純再生 産条件を変えるものではないと指摘する。このことは、 [表式6]について確認し た、三部門四価値構成の再生産表式における単純再生産(部門間均衡)の条件が、

[表式 13]では、前述した賃金と剰余価値の支出構成の変化を伴う形で、次のよう

に成立していることで確認できる。

700Cf1+(140Vp1+210Vs1)+(140Mp1+210Ms1)+1000i1-100e1=1100 Cr2+1200Cr3 = 2300

1100Cr2+(220Vp2+330Vs2)+(220Mp2+330Ms2)+200i2-500e2=700 Cf1+1200Cf3 = 1900

(140Vp1+210Vs1)+(140Mp1+210Ms1)+(220Vp2+330Vs2)+(220 Mp2+330Ms2)=1200Cr3+1200Cf3+100i3-700e3 = 1800

3.1.2 産業連関表的表示

さて、 [表式 12]は、産業連関表の表示形式では下の[表1]のように表記でき

28

。産業連関表である[表 1]と再生産表式である[表式 12]との関係につい ては次のように言える。

まず、 [表式 12]の単純再生産表式は、商品資本の循環範式W’-W'を基礎に

置いており、資本主義的生産の結果としての「Cr+Cf+V+M」で表現できる

各部門の年間生産物と「サービス」であるW'を出発点に、それが、どのように

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