九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
歯車とローラを組合せたハイブリッド形変速機に関 する研究
園田, 計二
https://doi.org/10.11501/3117327
出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
車イす とブる ロリ研 一ツ殉九 ラ ド を形 組変 合速 せ機 たに 歯ハ関
平成8年4月
園田 計二
一 日次-
第1章
緒 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・l1. 1 はじめに
1. 2 本研究の目的 2
1. 3 �鴎装置としての歯車機構とトラクションドライブ 3
1. 3. 1 トラクション係数 3
1. 3. 2 歯車とトラクションドライブの特徴 4
1. 3. 3 回転速度比の変化 5
1. 3.4 差動遊星形恵醐装置と動力伝達効率 7
1. 3. 5 動力伝達能力の比較 7
1. 3. 6 潤滑油と合成トラクション油 8
1. 3. 7 ノ\イブリッド形あ去機 9
1.4 本論文の構成および内容 9
参考文献 12
第2章
歯車の動力伝達効率 2. 1 緒言2. 2 歯車のかみ合い率とすべり率 2.3 歯面の摩擦係数
2. 3. 1 歯形かみ合い率の影響 2.3.2 重なりかみ合い率の影響 2.4 歯車に作用する力とトルク
2.4. 1 歯面の摩擦力が駆動トルクに及ぼす影響 2. 4. 2 損失に注目した効率言慣式
2. 4. 3 トルクに注目した理論効率計算式 2.4.4 内歯車の理論かみ合い効率 2. 5 考察
2.6 第2章のまとめ 参考文献
. . . '14 14 14 18 21 22 23 23 25 27 30 32 34 35
第3章
EHL条件下のローラのトラクション係数 . . . . '363. 1 緒言 36
3. 2 試験機と実験条件 37
3. 2. 1 軸受損失などの補正 40
3.3 実験球吉果 41
3.4 トラクション係数の整理式 45
3.4. 1 トラクション係数を表す基本式 45
3.4.2 トラクション係数を示す式の具体例
3. 4. 3 トラクション係数に及ぼす潤滑油温度の影響 48 3. 4. 4 トラクション係数に及ぼす速度の影響 51
3.5 整理式の応用 52
3. 5. 1 高圧下のトラクション係数の推定 52
3. 5.2 他の研究者の実験データへの応用 54
3.6 考察 54
3. 7 第3章のまとめ 55
参考文献 56
第4章 ローラを用いた遊星式卜ラクションドライブ 4. 1 緒言
4. 2 トラクションドライブの設計と製作 58
4. 3 使用潤滑油と運転剥牛 63
4.4 スピンと動力損失 65
4.4. 1 スピンと差動すべりとの関係 67 4. 4. 2 負荷トルクによるスピン角速度の変化 69 4. 5 トラクションドライブの減速比と効率の計算式 70
4. 5. 1 減車比の計算式 70
4. 5. 2 速度効率 78
4. 5. 3 トルク効率 79
4. 5. 4 全効率 80
4. 6 実験結果 84
4. 6. 1 油の違いが効率と減車比に及ぼす影響 84
4. 6. 2 櫛虫圧力の影響 87
4. 6. 3 混合油の場合
4. 7 考 察 89
4.8 第4章のまとめ 94
参考文献 95
第5章 テーパローラと歯車を組合せた多軸駆動形ハイブリツド変速機 . . . . . . 96
5. 1 緒言
5.2 外歯車のみを郎、たハイブリッド形あ搬〈多糊区動形〉
5. 3 内歯車を用いたハイブリッド形変速機(多軸時鴎形〉
5.4 遊星式のハイブリッド形あま機 105
5. 5 外歯車を用いるハイブリッド形変速機の設計・製作 106 5.6 内歯彰\イブリッド形変速機の設計・製作 109
5.7 理論減速比 113
5.8 全効率 114
5. 8. 1 トラクションドライブ部U効率 115
5.8.2 歯車機構部の理論効率 116
5.9 負荷運転と実勝吉果 120
5. 9. 1 潤滑油粘度の違しゅ、効率と減速比に及ぼす影響 123
5.9.2 回転数の影響 124
5.9.3 他の試験油を用いた場合 125
5. 9. 4 内歯彰、イブリッド形あ墓機の{生能試験 126 5.9. 5 トラクション専用油を用いた場合 128
- 11 -
5. 1 0 考察 130
130 130 132 134
5. 1 O. 1 理論減車比と実測した減車比 5. 1 O. 2 理論効率と実験で得た全効率 5. 1 O. 3 ハイブリッド形変速機の運転騒音 5. 1 1 第5章のまとめ
参考文献 135
第6章 歯車とローラを組合せた内転差動ハイブリッド形変速機 ・・・・・・・・・・136
6. 1 緒言 136
6. 2 各構成要素(トラクションドライブ、歯車機構〉の理論効率 137
6. 2. 1 トラクションドライブの速度効率 137 6.2.2 構成要素〈トラクションドライフ\歯車機構〉 のトルク効率 142
6. 2. 3 トラクションドライブの全効率 145
6.2.4遊星歯車装置 145
6.3 内転差動ノ\イブリッド形変速機の理論効率 146
6. 3. 1差動運動のメカニズム 146
6. 3. 2速比と速度効率 148
6. 3. 3 トルク効率 153
6. 3.4全効率 154
6.4 試作したハイブリッド形あ去機の性能試験 154 6.4. 1構成要素としてのトラクションドライブの運転性能 156 6.4.2構成要素としての歯車装置の運転性能 158 6.4.3内転差動ハイブリッド形変速機の構造と特徴 159 6.4.4内転差動ハイブリッド形変速機の運転性能 164
6. 5 第6章のまとめ 173
参考文献 174
第7章 結 論 7.1 全体のまとめ
7.2 本研究の応用と今後の課題
付録
-・・・175 175 179
A, 本研究で用いた試験油 182
1本研究で試作した変速機 186
C, 歯車とトラクションドライブの動力伝達能力の比較 188
D, 一般に使用されている歯車のかみ合い効率計算式 191
謝辞
第1章 緒 論
1. 1 はじめに
クォーツ技術の開発以前、 歯車とぜんまいを使ったスイス時計は高 精度の代名詞であった。 その後、 メカトロニクスという言葉で象徴さ れるように、 電子技術の飛躍的な進歩により時計をはじめ産業用工作 機械などにおいて様々な技術革新が行なわれている。 歯車を加工する ホブ盤においても大きな変化をもたらした。 従来のホブ盤は、 一つの 駆動源から、 テーブル回転およびホブ軸の回転と送りなどすべて歯車 列で動力の伝達を行なっていた。 最近のCNCホブ盤は、 各軸にエン コーダ付のACサーボモータを取付けそれぞれに歯車変速機を設けて
各軸の位相関係を保ちながら別々に駆動している。
自動車 ・鉄道 ・工作機械 ・建設用機械 ・産業用ロボットなどほとん どの機械において、 対象物をサーボモータで直接駆動するダイレクト 方式ではなく、 歯車関連の変速機を介して駆動する方式が一般に採用 されている。 この考えは、 今後も大きく変わることはないと考えられ る(1 )。 むしろ、低騒音でコンパクトしかも高負荷能力を有する優れた 変速装置の開発が期待され、 変速装置の役割がますます高まるものと
思われる。
近年の電子制御技術のめざましい進歩に加えて、 金属, プラスチッ クおよび高分子材料の開発や油の化学合成技術の進歩により、 これま で実用化できなかったようなもの、 例えばスチールベルト式CV T(2),
作機械の高速回転スピンドル軸用に開発されたトラクションドライ ブ変速機(3 )などが実際に実用化されている。 また、 新鉄道車両用に磁
石とボールを使った遊星減速機(4 )など新しい変速機も開発されている。
1i
今後ますます機械の高機能化、 さらには知能化がなお一層進み、 動 力伝達用の変速装置に対しても多種多様な性能が要求されてくるであ ろう。 従来からの優れた技術を活かしながら新しい技術を開発し、 運 転性能と機械精度の向上を図り、 省エネルギーのために高効率化をめ ざし、 生活環境に適合する優れた変速装置を開発することが必要であ ると思われる。
1 . 2 本研究の目的
歯車変速機は、 自動車をはじめ多くの産業用機械などで最も広く使 用されている。 歯車はトラクションドライブや摩擦伝動装置に比べて
一般に大きな力を確実に伝達できる。 しかし、 歯車は組立条件などに 対する幾何学的な制約を受けやすい。 例えば、 遊星歯車装置において は組立条件を満足するするために歯数が制限されたり、 段付き歯車を 用いるときには歯の位相が問題になる場合もある。 また、 高精度の歯 車装置(特に内歯車〉を製造するのにコストや時間がかかる。 このほ か、 歯車装置を高速回転で運転する場合に振動 ・ 騒音が問題となる。
トラクションドライブは、 ローラなどの転動体の接触面聞に形成さ れた弾性流体潤滑油膜(E H L油膜〉のせん断抵抗によって動力を伝 えることのできる動力伝達装置である。 力の伝達がなめらかに行なわ れるので、問題となるような騒音や振動が発生しにくい(5 )。 また、 組 立条件などに対する幾何学的な制約が少ないので、 自由な設計が行な いやすく無段変速機構(C V T)とすることも可能となる。 しかし、
動力伝達能力や動力伝達効率は、 歯車に比べて一般に低くなる。
本研究の目的は、 歯車のもつ高い負荷能力の特徴と トラクション ドライブ(ローラ〉のもつ高速回転においても運転騒音を発生しにく い特徴を有効に活かして、 歯車とローラを組合せたハイブリッド形変 速機を設計 ・ 製作し、 運転性能を明らかにして、 その実用化を容易に
することである。 ハイブリッド形変速機のトラクションドライブでは、
負荷トルクが増加するとともにローラ聞の接触部分でわずかのすべり を生じ、 速比が変化するため、 遊星歯車変速機などの動力伝達効率や 減速比を求めるのに用いられる従来の計算方法は、 使用できないので、
新たに計算式を誘導する必要がある。
1 . 3 駆動装置としての歯車機構とトラクションドライプ
1 . 3. 1 トラクション係数
トラクションドライブは、 回転する転動体の接触面に垂直にPなる 荷重を加えたときに、 接触面に生じうる駆動力〈接線力) F =μPを 利用して、 動力または角度の伝達を行なう。 係数μは、 摩擦係数に似 ているが、 すべり速度や押付力によって大きく変化する。 日本、 アメ リカ、 イギリスなどでは、 このμのことをトラクション係数と呼んで、
摩擦係数と区別している場合が多い。
従来から良く知られている摩擦係数には、 静摩擦係数μscと動摩擦 係数μdc がある。 トラクション係数μは、 特別の場合に μ=μdcとな る。 しかし、 トラクションドライブにおいて μsc または μdc が現れ るときには、 接触面に損傷の生じるおそれのあるときである。
歯車装置の歯面の動力損失を計算するときに用いられている歯面聞 の摩擦係数μは、 一般にトラクション係数と同じものであり、 ここで は、 トラクション係数μ由ax に相当している値を用いている。
石橋,田中,江副らは、 トラクション係数ではなく、 歯車がかみ合う ときの歯面の静摩擦係数を測定し、 歯面を鏡面(最大高さR lIax * 1 �
注水l 新規格の粗さ表示法では、 最大高さをRyで表わすが、 本論文では、
従来の記号R圃axを用いる。
内叫υ
O. 1μm)に仕上げれば、 静摩擦係数がO. 10以下になることを明ら かにしている。 また、 歯面を鏡面に仕上げれば歯車の回転開始時の静 摩擦係数が小さくなり、 運転開始時に歯面の損傷が、 生じにくいこと を明らかにしている(6 )。
1. 3. 2 歯車とトラクションドライプの特徴
歯車装置は、 動力伝達装置の中でも最も重要なものである。 その中 でも遊星歯車装置本lは、 コンパクトで大きな減速比が得られることか ら汎用の変速機のほかに、 船舶, 自動車, ロボットなどの駆動用の特 製の変速機として広範囲の分野で多く使用されている。 普通の遊星歯 車装置においても太陽歯車, 遊星歯車(およびキャリア), リング内 歯車のどこから動力を入力してどこから動力を出力させるかの組合せ を変えることで、 さまざまな種類の変速が可能となる。 遊星歯車を組 合せた複合遊星歯車装置, 差動運動するように組合わせた差動遊星歯 車装置やその他不思議歯車装置, ハーモニックドライブなど実にさま ざまの変速装置が現在用いられている。
トラクションドライブは、 歯車に比べて幾何学的制約が少ないので、
過去において摩擦駆動装置として開発されたものを含めて、 多くの種 類の機構が考案され実用化されている(7 )。
世界中でさまざまな歯車駆動装置やトラクションドライブが開発さ れ、 色々な用途 ・ 使用条件で用いられている。 歯車とトラクションド
注*1遊星歯車機構の遊星歯車は、 自転しながら公転するので、天体の惑 星と同じような運動するが惑星歯車とは表現しない。 本研究のトラクシ
ョンドライブおよびハイブリッド形変速機において、 自転しながら公転 する歯車を遊星歯車, 自転しながら公転するローラを遊星ローラと呼ぶ
ことにする。
ライブの主な特徴を以下に示す。
歯車機構の主な長所は、(a)小さな容積で大きな動力が伝達できる。
(b) 2軸聞の速比を一定に保つことができる。 短所は、(a)高速運 転において騒音を十分に低くできない。 (b)無段変速の実現が困難で ある。
トラクションドライブ装置の長所は、(a)騒音と振動を歯車駆動装 置よりも小さくすることができる。 (b)無段変速が比較的簡単に可能 となる。 (c)被動軸と駆動軸聞のバックラッシを零にすることができ る。 (d)歯車駆動装置以上の高速回転で動力の伝達が可能である。 短 所は、(a)動力伝達能力が歯車装置よりもかなり低い(類似の寸法 ・
形式のとき1/4�1/10)、(b)接触面のすべりによって、 回転速度比 に誤差が生じる。
歯車装置とトラクションドライブの長所と短所とが、 互いに逆にな っている場合もあり、 1種類の変速装置だけで最適な使用条件を満た すことができないこともあるので、 駆動用モータの極数を変えたり、
流体継手を組合せたりなど多くの工夫をして使用されている。
1. 3. 3 回転速度比の変化
歯車装置では、 各々の歯車軸は歯車の歯によって回転させられるの で、 歯が折れない限り正確な回転速度比または回転角比が保持できる と考えられている。 しかし、 厳密にいえば、 歯車の歯数比が1の場合 において、 1回転単位で回転角度比を測定したときのみ成り立つ。 歯 数比が1でない場合や1ピッチ以下の単位で回転角度比を測定すれば、
歯車装置の場合もかなりの回転誤差が生じている。
これに対して、 トラクションドライブでは、 転動体の接触面のすべ りが不可避であるので、 正しい回転角度比は、 得られないと思われて いる。 しかし、 予想外に正確な回転角度比が得られる場合もある。 特
Fhd
に、 1回転中の角速度変動率は、 著しく小さくなる。 たとえば、 ロボ ットによく用いられるハーモニックドライブ形歯車装置では、 角速度 変動率が δ= 2. 0 %、 精密ウォームギアでは δ=0. 85 % であ るのに対して、 トラクションドライブでは、 δ=0 . 0 8 5 %という 実験結果も報告されている(8 )。
このような結果の得られる理由は、 前述の実験例のように、 トラク ションドライブを構成する転動体に円筒形ローラを用いれば、 その加 工誤差を歯車の加工誤差の 1/10 以下にもできるためである。 た だし、 無段変速できるトラクションドライブでは、 転動体を球面, 円 錐面あるいは複雑な曲線を組合せた形状にしているため、 加工が困難 となり、 歯車装置よりも正確な回転角度比を得ることは、 一般にでき ない。
測定機器の駆動装置のように、 負荷が小さく、 またその変動も小さ い場合には、 トラクションドライブを用いて、 超精密な回転角度比の 伝達を実現させることができる。 たとえば、 石橋 ・ 田中 ・ 上野らは、
接触した一対の円板の精密な回転角度比を基準として、 精密研削仕上 げした歯車の片歯面かみ合い精度を1万倍の倍率で測定しているは)。
回転運動の基準とした直径1 5 5 mmの一対の円板の1回転後の円周 上でのずれは、 O. 1μm (角度でo . 2 7秒〉以下であった。 測定さ れた一対の歯車(m=5, 21=22=31, α = 2 0 0 , β= 0, b =
4 0 mm, 歯面はマーグ研削仕上げ, 精度はJIS 0級〉のかみ合い精 度は、 1ピッチ(1 1 . 6 1りの間で 1� 3μm, 1回転中で約7 μm であった。
1. 3. 4 差動遊星形駆動装置と動力伝達効率
トラクションドライブにおいても、 歯車装置においても、 差動形に すれば、 非常に小さな速度伝達比* 1 U =ω2/ω1 (ω1, ω2はそれぞ れ入力軸と出力軸の角速度〉が得られる。 差動形でない場合は、 u=
1/1 0 が限度であるが、 差動形にすれば、 u=1/100 以下も 容易に実現できる。 ここで、 注意すべきことは、 差動形の遊星歯車装 置の全効率が非常に低いということである(1 0 )。 この原因は、 かみ合 い速度が非常に大きいまま、 出力軸の歯車と遊星歯車に大きなトルク が加わるためである。 したがって、 このかみ合い速度に対する損失は 2�3%という小さいものであっても、 出力軸の回転速度に対しては、
数十ノf一セントの動力損失となる場合もある。
トラクションドライブでも、 差動遊星形のものを利用するので、 動 力伝達効率の計算式を確立する必要がある。
1 . 3. 5 動力伝達能力の比較
歯車装置の動力伝達能力Lcとトラクションドライブの動力伝達能 力LTの比は、 それぞれのピッチ円半径R, 許容接触圧力および回転 速度を同じと仮定すれば、 次式(1 - 1 )で示される〈付録C参照〉。
Lc LT
TcωG TTωT
PTaS in α x COSα x R x ωG PTa xμa X R x ωT
より
注ネl 速度伝達比〈単に速比ということもある)uとは、 一連の歯車列の最 終の被動歯車の角速度ω2を最初の駆動歯車の角速度ωlで、除した値をいう。
したがって減速装置では、 速比 u= (ω2/ω1) < 1となる。 減速比iは、
減速装置の速度伝達比の逆数をいう。 また、 歯数比iとは、 大歯車の歯数22 を小歯車の歯数21で除した値(i =22/21= 1/ u)をいう。
7 -
Lc LT
Slnα COSα μa
- ・……( 1-1)
ここで、 添字G , Tはそれぞれ歯車とトラクションドライブを示 し、 PTaはローラの許容最大押付力, Tはトルク, ωは角速度を表し ている。 いま、 歯車の圧力角をα= 2 00, 許容トラクション係数を μa= 0 . 0 6とすれば、 Lc/LT=5. 35となる。
S. H. 1ρewenthalらは、 トラクションドライブで歯車装置と同じ程
度の動力伝達能力が得られたことを報告している(11)。 その変速機は、
1個の太陽ローラが5個の遊星ローラを駆動する遊星形トラクション ドライブである。 もちろん、 歯車装置でも1個の駆動歯車が5個の被 動歯車を駆動するようにすれば、 動力伝達能力は、 式(1 -1 )から予
想、できるように、 5倍以上となる。
ヘリコプターの回転翼を駆動する歯車装置は、 乗員の頭上において 数千kWの動力を伝達するので騒音が問題となっている。 アメリカで は、 この歯車装置をトラクションドライブに置き換える研究がなされ
-1-�
(1 2) (1 3 )
,'- 0
1. 3. 6 潤滑油と合成トラクション油
最近では、 トラクションドライブ専用の流体(トラクション油〉が 合成され、 トラクション係数を従来の鉱油系潤滑油の2倍程度(μ四ax
� O. 1 3 )まで大きくできるようになった。 合成トラクション油のト ラクション特性は、 かなり明らかにされている(1 4) (1 5)。 また、 接触 する金属表面における合成油の挙動を化学的に考察した結果も発表さ れている(1 6 )。 なお、 合成トラクション油は、 接触面の面圧強さをか なり低下させる場合があるので、 注意が必要である。 ミュンヘン工大
で行なわれた、 歯車およびローラを用いた多数の実験でもこのことが 明らかにされている(17)(18)。
1. 3. 7 ハイプリッド形変速機
本論文では、 歯車とローラを組合せたハイブリッド形変速機に関す る研究について述べる。 高速回転においても振動 ・ 騒音を発生しにく いトラクションドライブを高速側に、 大きな動力伝達能力を有する歯 車機構を低速側に用いるような組合せにすれば、 両者の特徴を兼ね備 えた優れた運転性能を持つ動力伝達用変速機が考えられる。 トラクシ ョンドライブを遊星式にすれば、 遊星歯車装置などで問題となる位相 や歯数条件および荷重等配も特に考慮する必要がなくなる。 また、 設
計に当たって減速比も自由に選択でき、 無段変速構造とすることも可 能となる。 外国においても、 トラクションドライブと歯車機構を組合 せた変速機の存在を示す文献があるが、 具体的な構造や運転特性はあ まり明らかにされていない(19,20,21)。 また、 組合せる要素として、
油圧や電気, 磁石などを利用した装置も考えられる。 現在、 ほとんど のオートマチック自動車で用いられている駆動装置も流体継手と多段 遊星歯車および油圧機構を組合せたものである。 このように2つ以上 の動力伝達要素を組合せることで、 今後さらに優れた特徴を持つハイ ブリッド形変速機が開発されることと思う。
1 . 4 本論文の構成および内容
本研究においては、 先ず、 合成油を含むトラクションオイルのトラ クション特性について明らかにするための基礎実験を2円筒試験機を 用いて行なった。 次に、 遊星式トラクションドライブを設計 ・ 製作し 性能試験を行ない、 トラクションドライブの動力伝達効率, 速比など
9 -
基本的な特性について理論的, 実験的に明らかにした。 これらの基礎 実験を踏まえて、 歯車とローラを組合せたハイブリッド形変速機を設 計 ・ 製作し、 動力伝達効率および速比などの運転性能を実験的に明ら かにするとともに、 動力伝達効率と速比を理論的に求める計算式を誘 導した。 さらに、 歯車機構のみを用いた歯車変速機を試作し、 ハイブ リッド形変速機との性能比較を行なった。
本論文の構成と主な内容を以下に示す。
第1章では、 本研究の目的と本論文の構成について述べるとともに 従来のトラクションドライブ, 歯車装置に関する研究を概括する。
第2章では、 ハイブリッド形変速機の一つの構成要素である歯車が、
かみ合うときに生ずる歯面の摩擦力を明らかにし、 一対の歯車の基準 かみ合い効率(動力伝達効率〉の計算式を誘導する。
第3章では、 2円筒試験機を用いて実測した高圧領域におけるトラ クション係数について述べる。 歯車とローラを組合せたハイブリッド 形変速機の設計に当たり、 あらかじめ動力伝達能力および効率などを 算出するのにトラクション係数が必要となる。 本章では、 トラクショ ン係数をすべりの関数として表わす実験整理式を提案し、 その有効性 と具体的な応用例を示す。
第4章では、 トラクションドライブの基本的特性について明らかに する。 ここでは、 独自に設計 ・ 製作した2種類の遊星式トラクション ドライブ(運転中に押付荷重を変化できるダブルテーパローラを用い た試験用の変速機、 もう一種類はテーパのないローラを用いた高効率,
高負荷能力を有する実用性の高い変速機〉を用いる。
第5章では、 歯車のもつ高負荷能力の特徴と, トラクションドライ
ブ(ローラ〉のもつ高速回転においても運転騒音を発生しにくい特徴 を活かして、 歯車とローラを有効に組合せたハイブリッド形変速機に ついて述べる。 ここでは、 騒音が問題となる高速段にテーパローラタ イプのトラクションドライブを用い、 低速段の歯車機構部には、 外歯 車機構あるいは内歯車機構を用いて非差動 ・ 多軸駆動形になるように 組合せた。 試作した変速機の主な特徴と運転性能について述べる。
第6章では、 減速比を大きくするために考案した歯車機構とローラ を組合せた内転差動ハイブリッド形変速機の特徴および試作した変速 機の運転性能について述べる。 内転差動ハイブリッド形変速機の速度 効率と動力伝達効率を求めるための理論式を新しく提案し、 実験結果 とも比較し考察を行なう。 軸受損失と潤滑油の擦排損失とを考慮すれ
ば、 理論式で求めた効率の計算値と、 測定した実験結果とがかなり良 く一致することを示す。
第7章では、 本研究における結論を要約して述べた。
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(18) H. Winter & M. Simon, Einfluβvon elastohydrodynamischen Parametern auf die Grübchentragfähigkeit vergüteter Scheiben
und Zahnräder (Teil 2), Konstruktion, 37-4 (1985), p.161.
(19) F. Najlepsze, Traction Drives Roll up Impressive Gains,
Machine Design, 57-25 (1985), p.68.
(20) D. McCormick, Traction Drives Move to Higher Power, Disign Engineering, Dec., (1980), p.35.
(21) F. W. Heilich m and E. E. Shube, Traction Drives/Selection and App 1 ica t ion /, Mechan ical Engg. /24, Marce 1 Dekker 1 nc.
(1983), p.66.
のぺU唱EBA
第2章 歯車の動力伝達効率
本章では、 ハイブリッド形変速機の一つの構成要素である歯車がか み合う場合の動力伝達効率について述べる。
2. 1
緒言
歯車は、 単純な動力伝達のほかに、 動力を伝達しながら2軸聞の相 対的回転角度を正確に保持することができるので、 各種の機械器具に 古くから用いられている機械要素である。 歯車の寸法は、 小さいもの は1
mm以下(
1 )、 大きいものは12m (重量100トン〉もある。 回転速 度は、人の目には感知できないような超低速から、1秒間に60 0 0対
以上の歯がかみ合うような超高速まで広範囲に及んでいる(2 )。
歯車は、 円周荷重を次々に異なる歯に移しかえながら動力伝達を行 なうので、 その挙動は静的な機構学の制約だけでなく、 かみ合い時の 弾性変形および潤滑状態などさまざまな運転条件に左右される。 した がって、 実際の歯車の動力伝達効率, 歯面聞の摩擦損失を求めること は困難である。 一般には、 ある仮定のもとでの近似計算あるいは実験 結果から推定されている(3 ) ー (1 0)。 ここでは、 歯面で生ずる摩擦力を 出力軸のトルク損失としてのみ考慮、するのではなく、 摩擦力によって 駆動トルクも増減することを考慮、して、 外歯車同士および外歯車と内 歯車がかみ合う場合の動力伝達効率の計算式を導出する。
2. 2
歯車のかみ合い率とすべり率
ここでは、 歯車のかみ合いを純幾何学的に扱い、 理論的に正しいイ ンボリュート歯形をもっ歯車がかみ合う場合について述べる。
図2-1のように、 一対の平歯車がかみ合っているとき、 作用線とそ
ω2 (Follower)
。bL且nk
Rkl
ω1 (Driver)
図2- 1 一対の外歯車がかみ合う場合
れぞれの歯先円との交点を a, dとすれば、 距離 apを法線ピッチtn で割った値が近寄りかみ合い率εA (式(2 - 1 ))、 距離pdをしで
割った値が 遠退きかみ合い率εR (式(2-2))である。 これらのか み合い率は、 一対の歯車の基準効率を計算するときに必要となる。 な
お、 全歯形かみ合い率εsは(εA+εR)で計算できる。 はすば歯車
15
で計算できる。 はすば歯車のかみ合い率ε は、 正面かみ合い率〈歯 形かみ合い率)εsに 重なりかみ合い率(ねじれかみ合い率〔式( 2 - 3 )) )εhを加える必要がある。
ap VRk 22-Rg 22 - R2sinα
εA = 一一 = ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(2-1)
t n t n
pd vRK12-RZ12 - Rlsinα
εR = 一一 = ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(2-2)
t n t n
btan ß btan ß g
εh = =
t s t n
、‘,,,n,J つ山,,a・‘、
ここで Rkl,Rk2 :駆動歯車と被動歯車の歯先円半径(mm) Rgl, Rg2 :駆動歯車と被動歯車の基礎円半径(mm)
α かみ合い圧力角
ß :ピッチ 円筒ねじれ角, βg . 基礎円筒ねじれ角
t n :法線ピッチ(mm),
b :はすば歯車の歯幅
t s . 円ピッチ(mm)
次に、 歯面のすべりを考える。 歯車のかみ合い点は、 作用線上を等 速度で移動する。 摩擦損失, 動力伝達効率および歯面の損傷などを考 える場合、 歯面の接触部におけるすべりの大きさとその方向が、 大変 重要なファクターとなる。 図2-2に示すように円筒Iと円筒Eがすべ りを伴いながら転がる場合について簡単に説明する。 それぞれ円筒1 , Eの半径は、 接触点におけるインボリュート歯面の曲率半径ρ1, ρ2
である。
pitch
ClrCle
\
pjtch
ClrCle
(a) 一対の歯車の歯面を近似する円筒
Disk n
(b) 近似円筒同士の転がり/すべり接触
図2 -2 かみ合う一対の歯車歯面と近似円筒 17
いま、 dt時間に円筒Iがds1, 円筒EがdS2だけ転がった場合に、
すべり量はdS1-ds2 となる。 したがって、 すべり速度は(ds1 -dS2) /dtとなる。 接触点でのすべり速度を一方の転がり速度で割った値 をすべり率σ( specific sliding)取lと定義すれば、 式( 2-4),式(2 - 5 ) で示される。 なお、 V1, V2はそれぞれの円筒の周速度である。
dsl-ds2 V1-V2
σ 1 = =
. ds 1 V 1 - ・(2-4)
ds2-ds 1 V2-V1
σヮ- = =
dS2 V2
、‘,,,FD nL ,,s・‘、
インボリュート歯車においては、 かみ合い点における1対の歯形の 曲率半径をρ1, ρ2とすれば、 すべり率は式( 2 - 6 ) , 式( 2 - 7 )で 求められる。 なお、d81, d82 はそれぞれの歯車の微少回転角である。
P ld8 l-P 2d8 2 P1Z2-P2Z1 - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(2-6)
σ1 =
P1d81 P 1 Z2
p2d82-p ld8 1 一一P2Z1-PIZ2 - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(2-7)
σ2
P 2d 8 2 P 2Z1
2. 3 歯面の摩擦係数
一対のかみ合っている歯車歯面に生じる摩擦係数を実際に測定する ことは、 非常に困難である。 その理由は、 歯面上の接触点の移動とと もに 転がり/ すべり状態, 荷重分担が常に変化するからである。 そ こで、 一般には歯車歯面の接触状態をシミュレートした2円筒試験に
注本1 流体潤滑などのトライボロジ一関係の文献では、 平均転がり速 度(Vl+V2)/2を基にしたすべり率ε( slide/ rol1 ratio)が一般に用いら れている。 本研究では歯車関係で用いられているすべり率を用いる。
Test disk rad. r1=r2=34 mrn
Disk speed N� 2200 rpm Oil ternperature T = 333 K
Test oil: Oil E (Naphthene type) (45.0 rnm2/s at 313 K)
100 % I N2-N 1 I ×
σ 2= �
\
Pm-x= 700仇�
Pmax=1500 MPa 円/』ハU
nHu ro
nu寸
1l 可|
ハU nU
ハU
nU ハU
nU ハU
ハU
吋tnμEω?U?h←hFωou
zo←μUのふト
0.02
10 15 20
Specific sliding, a 2 (児)
「円以。
。
代表的なトラクション曲線〈測定結果〉
図2- 3
図2-3に2 よる摩擦係数の測定結果を基に評価されることが多い。
無段変 測定には、
円筒試験によって得られた測定結果を示している。
ローラ試験片の (図2- 4 )。
速動力循環式2円筒試験機(1 1)を用いた
試験油として ナ rpm,
2 2 0 0 平均転がり回転数
m川m
6 8 直径は
ヘルツの最大接触圧力を フテン系精製油(油温6 0 0 C) を使用した。
平均転がり速度をー 1500 MPa として、
1000,
p max= 700,
それぞれ
%まで 定に保ちながら2円筒ローラ聞のすべり率がσ2= 0から2 0
すべりが増加するとともにトラクシ 変化するようにすべりを変えた。
その後は少
%付近で最大値を示す、
σ2= 2 ,._ 3 ョン係数が増加し、
し減少しながらそれぞれある一定値に落ちつく傾向にある。
歯車はピッチ点を除く接触点においてすべりを伴う転がり 一般に、
転
とすべりによる摩擦〈すべり 歯面の摩擦(摩擦係数μ〉は、
がりによる摩擦〈転がり摩擦係数μr)
19 運動によって動力を伝達するため、
CVT(l) for changing sliding speed of test rollers
CVT (1)
Driving motor
一二日日
- Test roller (Driver)
Test roller (Follower)
Coil spring for loading
l弐I :2 -l ぷ駄に51j l '\たj!!t C22乙j主!日� )J 11円以,) J 1 J I�-I;j 11式J投機の主役:[
(ω門戸内〕),H・自己
.ω'HSω∞ω』臼HUC判ロou
月斗
nU
Fhu
q/』
内J』
内/』
可1
11 Zl=23. Z2=25
m =3. α= 20。
β= 0, F= 853 N/mm E1=E2=2060 GPa
22 Pm a x . 1
、、,ノ
8m
『EEE'IEノft、、・2AX
+L c
-c a +L 4m lsC ヂム0 ・hu+L a .DPA
fo
nu nU
『d
nu nu
nu
弓ζ tl
凶口一一旬刊日ωU」何回刊ハ)ωロω
歯面聞のすべり率とヘルツの最大接触応力 ( Fは歯幅1mm 当たりの円周力〉
図2- 5
とから成り立っていると考えることができる。
摩擦係数μs)
1対の歯車がかみ合っているときに生じる摩擦力の方向は、 ピッチ
近寄りかみ合いの場合と すべりの方向が異なるので、
点を境として、
転がり摩擦の
〈図2-1 0参照、〉。
遠退きかみ合いの場合とで異なる
(転がり抵 その大きさ
転がりの方向にのみ依存する。 また、
方向は、
すべり摩擦に比べると 一般に油膜厚さに比例すると言われ、
小さい値となる(1 2 )。
抗〉 は、
歯形かみ合い率の影響 2. 3. 1
作用線上のa点 l対の歯車のかみ合いを示している。
図2-1には、
b点からc点の間は1 でかみ合いが始まりd点でかみ合いが終わる。
a点からb点およびc点からd点の聞は2歯 図2-5には、l対の歯がかみ合い始めてかみ合
21 歯かみ合い領域である。
かみ合い領域である。
(a) For εh = 0 (b) For εh=::: 1 (c) For εh =::: 2
図2 - 6 はすば歯車における同時接触線
ミ I Pmax. 1�2300. Pmax. 2�1800 MPa
+J ロ ω
0.08ト Rl
= 34.5. R2 = 37.5 mm. F= 853 N/mm'8
0.06
斗・4 外吋�
0.04
_\_一一一一_�Jl 斗主主てご巴LTS
U
.� ロ
0.02
+J
。
よ o J
a
6 8
ノ
12 14 16 18
Path of contact. x (田田)
図2 - 7 平歯車およびはすば歯車歯面の摩擦係数
20
いが終わるまでの聞のすべり率σ の変化と最大接触圧力(ヘルツの 最大接触応力p øax)の変化の様子を示している。 2対かみ合い領域に おける最大接触応力P四肌2は、 1対かみ合い領域における最大接触応
力P田肌lの約1/
/玄
に減少する。2. 3. 2
ねじれかみ合い率の影響
はすば歯車がかみ合う場合には、 ねじれ角が大きいとき、 あるいは 歯幅が大きいときに、 1つの歯面を数本の同時接触線が横切ることが
ある。 図2-6は、平歯車 とはすば歯車の同時接触線を示している。 図 の実線は、 注目している駆動歯車の接触線を示している。 一方、 破線 (a)および破線(f)は、 その前の歯および後続の歯の接触線を示してい る。 すべり率は、 同じ接触線上でもその位置によって異なる。 はすば 歯車のかみ合いにおける有効摩擦係数を、 斜めの同時接触線のトラク ション係数の平均値として示すことができると仮定すれば、 図2-7の 破線のようになる。 実線は、 平歯車がかみ合う場合のトラクション係 数を示している(第3章参照〉 。
2. 4 歯車に作用する力とトルク
2. 4. 1 歯面の摩擦力が駆動トルクに及ぼす影響
一般に、 1対の平歯車の歯面聞の動力伝達効率 (基準効率、 トルク 効率〉を計算する際に、 動力損失は一定の法線荷重Pn によって生ず
Planet工
\
sun
4
w(a) Axial section (b) Transverse section 図2 - 8 代表的な遊星歯車変速装置
23
る摩擦力を基にして計算している(5 )ー(8)。
しかし、 歯面聞に一定の法線荷重Pn が加わっているとすれば、
対の歯車歯面に生ずる摩擦力〈摩擦力によるモーメント〉の影響によ
り、 駆動トルク(入力トルク)は一定になら ない。 近寄りかみ合い領 域では、 駆動トルクが減少し、 また遠退きかみ合い領域では駆動トル クが増加する。 この入力トルクの増減を無視して、 歯面聞のかみ合い 効率を計算しても、 それが基準効率の値に及ぼす影響はあまり大きく ない。 しかし、 差動遊星形変速機や遊星形変速機(図6 -2 1, 図2-
8 )などの, 動力伝達効率の計算式 の誘導を行なうときには、 トルク 増減の現象を考慮、することが重要であるので、 具体的計算方法を示す。
一対のインボリュート平歯車の作用線とかみ合い領域を図2-9に示 す。 下側の歯車(駆動歯車〉を時計の針方向に回転させた場合は、 ピ ッチ点よりも下側の作用線の上に接触点があるときに、 近寄りかみ合 いが行なわれている。
図2 - 1 0 (a)は、 l対の歯が近寄りかみ合い領域で、 しかも1対の 歯のみで荷重を伝達している場合における歯面上の力を示している。
駆動歯車の歯面に作用する摩擦力は、 駆動トルクを減少させる方向に 作用する。 したがって、 法線荷重Pn を一定にした場合の駆動トルク は、 式( 2 - 8 )で示される。 また、 接触点が遠退きかみ合い領域にあ る場合の駆動トルクは、 式(2 - 9 )で示される。
TIA = PnRgl - μPnXl TIB = PnRgl + μPnX2
.. (2-8) . .. (2-9)
ただし、 X 1 と X2 は駆動歯車のインボリュート曲線の起点(X=O)か ら歯の接触点までの距離である。
qL nピDDは
。(Follower)
Base circle
何KOD比 (Driver)
図2 - 9 1対の平歯車の作用線とかみ合い領域
(Point
ato p) (Point P to
din Fig. 2-9)
(a)近寄りかみ合い (b)遠のきかみ合い 図2 - 1 0 1対の歯に作用する法線荷重と摩擦力
2. 4. 2
損失に注目した効率計算式
法線荷重Pn を一定として入力Lí を計算する場合には、 摩擦トル クの影響を考慮、する必要がある。 1対の歯が図2 - 1の点aでかみ合
25
い始めてから点dでかみ合い終わるまでに なす仕事量は式( 2 -10) で計算できる。 ただし、 2 歯かみ合い領域における荷重分担率は o
.
5、 歯面聞の摩擦係数μ は荷重およびすべり速度に無関係に一定と仮 定した場合の式を 示 している。
\ノ nHU 噌Ei n/u f\
VA VA AU AU
、11ノ 、12ノ
σ。
eb nn nR
/fJ J//
VA VA
μ
μ
一 i+I
4EEA 4,EA
P /\
d f・\
rilldb rillJ
C
n
の/U
pi //
n
lT nr X 4t
AU \jノ
VA l AU 0.
、、,ノ DHU - //' E X R
J''r
μ
x ト
μ
.hu f\
IT
rllJ a c o A
rilJ p
n
n
DI D-
= t+,
IU
従来の 計算結果との比較を容易にす るため、 式( 2 -10)で計算され た入力Li と摩擦トルクを考慮、していな いときの入力L i c との比 k
=
L 1 c /L I を入力修正係数 として導入すれば、すでに明らかにされてい る摩擦損失L:lL f の計算結果(5 )ー( 8 )とよく似た形で示すことができる。歯面聞の動力伝達効率nは、 式( 2 -1 2 )で表すことができる。 一 対の歯車が かみ合い終わるまでに生ずる損失は式( 2
-
1 1 )で示される(付録参照〉。
L:lLf = μ πtnPn(1/z1t1/z2)(εAtεRt1-εA-εR) ・・ ・・ ・・(2-11)
竹山1 ''a T-U一 4一 一一
k一/Jf
bn一
c//一
i C一 τL
vL一 i-
Llc -TL FM
kL:lLf=
1-μ πk(1/z1t1/z2)(εAtεRt1-εA-εR) ・・ ・・ ・・(2-12) ただし、 μ は歯面間の平均摩擦係数、 Z1 は駆動歯車の歯数、 Z2 は被動歯車の歯数、 εA は近寄りかみ合い率、 εR は遠退きかみ合い率である。 修正係数 kを1とすれば、 従来の計算結果(5 )ー(8 )と一 致する。
η 与 1-μ π(1/z1t1/z2)(ε Atε Rt1-ε A-ε R) ・・ ・・ ・・(2-12' )
修正係数kの値は、 一般的に1に近い値となるので、 実用上は!と 近似しでも、 特別の場合以外は、 全く問題にならない。 たとえば、 法
線荷重Pn を一定(トルク 200 N-m)とした場合の修正係数はk =
0.9958である。 計算に用いた歯車の諸元は、 モジュール m = 6、 歯 数 Z1 = 25、 Z 2 = 27、 圧力角 α = 200 、 歯面聞の摩擦係数 μ
= 0.05である。
本研究では、 はすば歯車対の基準効率を比較的簡単に計算するため に 近寄りかみ合い側 と 遠退きかみ合い側 の接触点において作用す る力(法線力と摩擦力〉によるモーメントのバランスを考慮、して、 そ れぞれのトルク効率を求め、 近寄りかみ合い率と遠退きかみ合い率の
割合を考慮して一対の平歯車の理論トルク効率を計算する方法を示す。
2. 4. 3 トルクに注目した理論効率計算式(外歯車同士の場合〉
一対の平歯車がかみ合うとき、 作用線方向に作用する法線力P n ,
すべり摩擦係数μx , 転がり摩擦力F r によって生ずるトルクTを被 動歯車と駆動歯車について計算する(図2 - 1 0参照〉。 サフィックス の1を駆動歯車、 サフィックスの2を被動歯車のものとすれば、 任意 のかみ合い位置(ピッチ点からの距離をえ)における理論効率は、 次 式のようになる。 歯面の油膜形成に基づく転がり摩擦抵抗F r は、 油 膜厚さに比例するといわれている(1 2) 。
本研究の場合は、 一対の歯面 粗さの和( RlIaxl + RlIax2)のほうが理論油膜厚さh lIin よりも、 かなり大
27
きいので、 Frl = F r2 = 0としても実用上差しっかえない。
(i)近寄りかみ合いの場合 T? R,
[りAJx = 一二・ー. .
T1 R2
一PnR2COSα-(μxPn+Fr2)(R2sinα+えx) Rl PnRICOSα一(μxPn-Frl)(R1sinα一えx) R2
cOSα一(μx+Frz/Pn)(sinα+,( x/Rz) COSα一(μx-F r l/Pn) (sinα-,( X/Rl) ここで、 F r1 = F r2= 0とおけば、
〔ηAJx 与 cOSα一μx(sinα+,( x/Rz) COSα一μx(sinα一えX/Rl)
μxえx (l/R 1 + 1/R2 ) 1- COSα-μx ( s inα-,(x/R1 )
- ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・( 2-13)
(ii)遠退きかみ合いの場合
九一L
h一巴一一
切Hg
一一 PnRzCOsα+(μxPn-Fr2)(R2sinα-,( x) Rl PnRICOSα+(μxPn+Fr1)(R1sinα+,(x) Rz
一 cOSα+(μx-Frz/Pn)(sinα-,( x/R2) COSα+(μx+Frl/Pn)(sinα+えX/Rl) F rl = F r2 = 0とおけば、
〔りRJx 与 cOSα+μx(sinα一えx/R2) COSα+μx(sinα+ ,(X/Rl)
μx ,( x (l/R 1 + 1/R2 )
- ・( 2-14) 1- COSα+μx ( s inα+,(x/R1 )
変速機の動力伝達効率を計算するのに必要となる基準効率は、 式(2
-
1 3 )および式(2-14)を積分して得られる平均値である。 接触線上の荷重分布、 2対以上の歯に対する荷重分担率を仮定すれば、 この 平均値は計算できる。 しかし、 ここでは、 実用上十分と思われる精度 で、 平歯車の理論効率が計算できる式を示す。 F rl = F r2 = 0とおい て、 ). x の代わりに、 ピッチ点から接触点までの距離の代表長さえlIean を用いれば、 式(2 - 1 6 ), 式(2-17)が得られる。
,{mean.l=(Rk1sinαkl-Rlsin α)/2
- ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
( 2
-15 )
,{mean.2=(Rk2sinαk2-R2sinα)/2
μe,{mean.2 (1/R1+1/R2 ) ザA� 1-
COSα一μe (sinα- ,(mean. 2/R1 ) - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(
2
-16)
μe ,{ mean. 1 (1/R1 + 1/R2 ) りR� 1-
cosα+μe (sinα+ ,( mean. 1/R1 ) - ・(
2
-17)
なお、 cosαkl= (Rl/Rkl) cosα である。 また、 μeは、ピッチ 点から代表長さえlIean 程度離れた代表点における摩擦係数である。 さ
らに近寄りかみ合い率εAと遠退きかみ合い率εRを用いて、 平歯車の 理論効率 ηG. thを次式 (2-18)で定義する。
R一切ワ一口H-RH向C-c-+
一
tTA一A明UY一εA一C』一一一hH -L • FU η' 、、,s''OO Ti nL ,,,‘、ここで、
εA
J
Rk22ー(R2cosα)2 -R2sinαt cosα , εR
d山R払』J
一(R1cosα)戸2一R1sint cosα - ・(
2
-19)
29
(Intema1 ge紅) Follower
一一一一一ーーー一 ー-、
(a)近寄りかみ合い領域 (b)遠退きかみ合い領域 図2 - 1 1 内歯車に作用する法線力と摩擦力など
2. 4. 4 内歯車の理論かみ合い効率
前節と同じようにして、 外平歯車と内歯車がかみ合う場合の理論的 動力伝達効率を計算する。 いま、図2 - 1 1で示すように作用線方向に
作用する法線力P n ,すべり摩擦係数μx 、 転がり摩擦力Fr によって 生ずるトルクTを被動歯車(内歯車〉と駆動歯車(外歯車)について計 算する。 サフィ ックスのlを駆動歯車、 サフィ ックスの3を被動内歯 車のものとすれば、 任意のかみ合い位置における理論効率は、 次式の ようになる。
(i) 近寄りかみ合いの場合
↑円 Rl
[りAJx =一二・一�1
T1 R3
PnR3COSα-(μxPn+Fr3)(R3sinα- Æ x) Rl PnRICOSα-(μxPn-Fr1)(R1sinα-えx) R3
一一 cOSα一(μx+Fr3/Pn)(sinα-Æ x/R3) COSα一(μx-Fr1/Pn)(sinα-Æ X/Rl)
ここで、 F rl = F r3 = 0とおけば、
〔ηAJx :,:
cOSα一μx(sinα-えx/R3) COSα一μx(sinα一えx/R1)
1- COSα一μx ( s inα-Æx/Rl)
μxえx ( 1/R1-1/R3 ) - ・ ・(2-20)
(ii)遠退きかみ合いの場合
T� Rl [りRJx = ーニ・ーム
T1 R3
PnR3COSα+(μxPn-Fr3)(R3sinα+ Æ x) Rl PnRICOSα+(μxPn+Fr1)(R1sinα+ Æ x) R3
cOSα+(μx-Fr3/Pn)(sinα+ Æ x/R3) COSα+(μx + F r 1 /P n ) ( s i nα+ Æ X/Rl)
F rl = F r3 = 0とおけば、
α+μx(sinα+えx/R3)
〔りRJx 与
COSα+μx(sinα+ Æ X/Rl)
1- COSα+μx ( s inα+えX/Rl)
μx Æ x (l/R 1 -1/R3 ) - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(2-21)
変速機の動力伝達効率を計算するのに必要となる基準効率は、 式( 2 -2 0 )および式( 2 -2 1 )を積分して得られる平均値である。 しかし、
ここでは実用上十分な精度で、 外平歯車と内歯車のかみ合い理論効率 が計算できる式を示す。 えxの代わりに、 ピッチ点から接触点までの 距離の代表長さえ圃eanを用いれば、 式(2-23), 式(2 -2 4 )が得ら
噌EE4qυ
れる。
.( mean. 1 = (Rk lsinαkl-R1sinα)/2
- ・・(2-22)
.( mean. a= (Rasinα -Rkasinαka)/2
μe.(mean.a (1/R1-l/Ra)
方A与 1ー ・・・・・・・・(2-23)
COSα一μe (sinα一えmean. a/Rl )
ηR弓 1- μe.(mean・1 (l/R 1 -l/Ra ) COSα+μe (sinα+ .( mean. l/Rl )
-・・・・・・・(2-24)
なお、 COSαkl= (Rl/Rkl)COSα, COSαk3 = (R3/ Rk3) COSα である。
さらに、 近寄りかみ合い率εAと遠退きかみ合い率をεRを用いて、 内 歯車と外歯車の理論効率 ηG.thを次式(2-25)で定義する。
DU一切ワ一
R-R E』-C』+一+A一A万一εA一ε一一=一hu .E ' G
"打ワ, 、、EE,,「D。,uηJU ,,E目、、
ここで、
εA Rasinα-
V
Rka2ー(Racosα)2ゾ
Rk12ー(R1cosα)2 -R1sinα ・・(2-26)tcosα R - tcosα
2. 5
考察
第3章で述べるトラクション係数の整理式を用いれば、 歯車の任意 のかみ合い点における摩擦係数は、 完全 なEHL潤滑状態であると仮 定すれば推定できる。 歯車がかみ合うときの任意の接触点におけるヘ ルツ応力を計算し、 摩擦係数をすべり速度の関数で表わし、 動力伝達 効率を計算した結果を図2- 1 2に示す。
標準平歯車( m = 3, Z 1 = 25, Z 2 = 27, α= 20 0) を入 力 トル クT = 98 N-m、 回転数 n = 1000 rpm でEHL潤滑状態で回転させ
た場合を想定している。 また、 仮想的にかみ合い率は1としている。
なお、 参考のために、 隣接する歯を除去し かみ合い率をlとして歯 面聞の摩擦係数を測定した 石橋, 江副, 田中らの実験値をプロットし ている(9 )。 ム印が鏡面研削歯車(歯面粗さRrnax=O. 1μm)をC油で潤 滑して低速で回転させた場合の実験値である。 低速では、 通常のEH L油膜の厚さはほとんど零であるが、 鏡面研削歯車の摩擦係数は金属 接触のないEHL油膜の摩擦係数程度に小さくなっている。 もちろん、
普通研削 の歯車(歯面粗さRrnax=3.0μm)を低速で回転させ れば、 ピ ッチ点以外では、 摩擦係数はO. 1以上になり、 かみ合い効率は、 図2 - 1 2の実線 で示される効率よ りも著しく低くなる。
公‘
_
Experimental (Ref.(9))
896 597
�
95 6
3 。6 (mm)
Path of approach Pi tch Path of recess point
(m=3, 21=25, 22=27, α= 2
0 0 )
Kinds of oils Mineral type Synthetic type
A C L N
Specific gravity 15/4 oc O. 903 O. 873 0.908 0.889 Viscosity @ 400C 371. 6 63.34 66.34 30.59 Cmm2/s @ 100 oc 28.9 8.58 5.68 5.50 Viscosity index v1 103 107 under 0 7
lndex α [ l/GPaJ 25.8 21. 0 47.2 28.2
図2-12
歯車の動力伝達効率の計算値および他の研究者らの実験値(実線が 著者の計算値, ム印 は文献(9)に よるもの〉
内ペυのペυ
2. 6 第2章のまとめ
本章では、 ハイブリッド形変速機の構成要素である歯車機構部の一 対の歯車がかみ合う場合の動力伝達効率について述べた。 歯面に働く 力(法線力と摩擦力〉とモーメントのバランスを考慮、して、 標準の外 平歯車同士がかみ合う場合, 内歯車と外平歯車がかみ合う場合につい て理論的に動力伝達効率を求める計算式を誘導した。 この計算式は、
従来のものより改良されたものとなっている。