はじめに
1)(
図1
)
非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)はメタボリックシン ドロームの肝臓での表現形といってもよい病態 で あ る.NAFLDの 有 病 率 は 欧 米 諸 国 で 20~ 40%,アジア諸国で12~30%,我が国では9~ 30%とされ,全世界的に患者数が非常に多い. NAFLDは狭義では,進行性の肝疾患である非ア ルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepati-tis:NASH)と,予後良好の非アルコール性脂肪 肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)とに分類さ れ,NASHの有病率は世界的に 3~5%と推定さ れている.そしてともに,肥満患者・メタボリッ クシンドローム患者数の増加に伴い,増加傾向 にあり,全世界的に患者数は非常に多い.NASH は3~14年で約30~50%が,肝線維化が進展す る進行性の肝疾患であり,肝硬変・肝臓癌を引 き起こすため,慎重な経過観察・加療を要する. また,NAFLDでは,心血管イベントや慢性腎臓 病の発症率が増加することが報告されており, 留意を要する. NASH/NAFLDの病態機序(図 2)として,two hit hypothesisが古くより提唱されている2).こ れは,脂肪,特に脂肪酸およびトリグリセリド が肝臓へ蓄積し(1st hit),肝臓が外界からの刺 激に易感受性になったところに,酸化ストレ ス・脂質過酸化・PAMPs(病原体関連分子パ タ ー ン:pathogen-associated molecular pat-terns)などにより惹起されるサイトカインの放 出・インスリン抵抗性などの肝細胞障害性因子 (2nd hit)が加わり,肝細胞壊死・アポトーシ スが,肝実質の炎症とともに進行するというも のである.一方,近年では,主に脂肪組織や腸
NASH/NAFLDと腸内細菌
要 旨 冨田 謙吾 穂苅 量太 非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)はメ タボリックシンドロームの肝臓での表現形と考えられている. 肝臓は腸管由来の門脈血流により真っ先に栄養される臓器であり, NASH/NAFLD病態は腸管由来のPAMPs,腸内細菌代謝物をはじめとす る種々の因子の強い影響を受けることが明らかになってきた.そして,そ の背景にある腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)と病態との相関の詳細が, 近年の腸内細菌解析手法の飛躍的な進展により急速に解明されつつある. 〔日内会誌 104:48~56,2015〕
Key words dysbiosis,腸管透過性亢進,PAMPs,腸肝相関
防衛医科大学校内科学(消化器内科)
Gut Microbiota and Internal Diseases:Update Information. Topics:III. NASH/NAFLD and gut microbiota.
Kengo Tomita and Ryota Hokari:Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, National Defense Medical College, Japan.
管由来のサイトカイン,PAMPs,食事因子など の多くの因子により,肝臓に惹起される炎症 が,脂肪化と同時,あるいは先行して起こり, NAFLDを進展させるというmultiple parallel hits hypothesis3)も提唱されており,今後さらに詳細 なメカニズムの検討が必要である. 近年の腸内細菌叢のメタゲノムをはじめとし たメタオーミクス解析の急速な進展により,腸 内細菌の疾患への関与の詳細が明らかになりつ つある. NAFLDはその背景因子として,メタボリック シンドロームの各因子:肥満,糖尿病,脂質異 常症,高血圧を有することが多い.それらの背 景因子がNAFLD発症・進展の病態機序に大きな 役割を果たすことが明らかであるため,腸内細 菌叢の役割を検討する際にも,それらの背景因 子に及ぼす影響が重要である.肥満・糖尿病・ 動脈硬化症への腸内細菌叢の関与については本 特集の他項にて詳述されているため,本項で は,肝臓疾患としてのNASH/NAFLD,またNASH/ NAFLDを背景とした肝臓癌の病態への腸内細菌 の関与を中心に概説することとする.
1.NASH/NAFLD
肝臓は,腸管由来の門脈血流により真っ先に 栄養される臓器であり,肝臓病病態は,腸内細 菌や,細菌菌体成分,腸内細菌代謝産物などの 腸管由来の様々な因子により強い影響を受ける ものと考えられる.そのため,腸内細菌叢の乱 れ(dysbiosis)が,NASH/NAFLD病態に深く関 与することが想定される.一方で,NASH/NAFLD は,その肝臓病理組織像のアルコール性肝障害 との相同性より,当初よりそこには共通の病態 機序であろうと想定され,研究が進められてき た背景がある.それゆえ,門脈血流によって肝 臓に運ばれるPAMPs(病原体関連分子パター ン:pathogen-associated molecular patterns)を はじめとする種々の因子(腸内細菌叢の影響を 強く受けるものと考えられる)が特に注目さ れ,その検討がなされてきた. 1)病態における腸肝相関の役割の解明4) (1)PAMPsを介した作用 アルコール性肝障害の主要な病態機序とし て,アルコールが腸管透過性を亢進し,その結 果腸内細菌由来のTLR4(Toll like receptor 4)ア 図1 NAFLDの疾患概念 NAFLD NASH 炎症 肝細胞風船様変性 線維化 NAFL ・飲酒は,エタノール換算で 男性30 g/日未満,女性20 g/日未満 ・ウイルス性や自己免疫性など 他原因の肝疾患を除外 肝硬変 肝細胞癌 Metabolic syndrome 肝生検診断ゴニストであるLPS(lipopolysaccharide)がよ り多く肝臓に到達してKupffer 細胞を刺激し, TNFα(tumor necrosis factor α)をはじめとする 炎症性サイトカイン産生を促進する機序が想定 されている4).実際にアルコール性肝障害モデ ルラットを用いた検討で,抗生物質投与により 腸内殺菌を施行し,肝臓へのLPS流入を抑制す ることで,アルコール性肝障害を抑制すること が報告されている5). アルコール性肝障害と同様に,NAFLD病態機 序においても,腸管透過性亢進と,血中エンド トキシン濃度上昇が関与する.実際に,NAFLD 患者では血中エンドトキシン濃度が有意に上昇 すること6),腸管透過性が有意に亢進している こと7)が明らかとなっている.小腸細菌過増殖 は小腸において異常に多くの細菌が増殖する状 態であるが,肥満患者やNAFLD患者ではその現 象が多く認められ7,8),NASH患者の50%に認め られたとの報告もある9).また,欧米型の食生 活自体が,ヒトでも血中のエンドトキシン濃度 を上昇させる10).フルクトースは,先進諸国で は 総 カ ロ リ ー 摂 取 の 約 10% を 占 め て お り, NAFLDを引き起こす食事内容として注目を集め ている4)が,エネルギー取り込みを増加させる 一方で,腸管透過性亢進と腸内細菌過増殖を介 して,NAFLD病態を増悪させることが報告され ている11). その際,マウスモデルを用いた検討により, Kupffer細 胞 由 来 のTNFαシ グ ナ ル がNASH病 態 機序においても重要な役割を果たすが12),門脈 図2 NASH/NAFLDの病態機序 NAFL NASH 1st Hit ・インスリン抵抗性 ・肥満 ・過食 など 2nd Hit ・酸化ストレス ・脂質過酸化 ・炎症性サイトカイン ・腸管由来のPAMPs ・インスリン抵抗性 など two-hit theory ・炎症性サイトカイン ・インスリン抵抗性 ・酸化ストレス ・PAMPs ・腸内細菌代謝産物 ・アディポサイトカイン ・脂質過酸化 ・食事因子 ・遺伝因子 Normal liver NAFL NASH
multiple parallel hits hypothesis
血中のLPSが肝臓へ到達し,TLR4 シグナル増強
を介してKupffer細胞のTNFα産生を増加させる
ことが明らかになっている13).NAFLDでは肥満
に伴い,高レプチン血症を呈することが多い が, レ プ チ ン ―STAT3(signal transducer and activator of transcription 3)シグナルがKupffer 細 胞 のCD14 発 現 を 増 強 さ せ, そ れ に よ る Kupffer細 胞 のLPSに 対 す る 感 受 性 の 亢 進 が NAFLD病態進展機序の 1 つであることも,近年 のマウスモデルを用いた検討により明らかに なった14). 腸管由来のLPSは,Kupffer細胞以外に肝星細 胞 のTLR4 シ グ ナ ル を 活 性 化 し, 下 流 のTGFβ
(transforming growth factor β)偽受容体Bambi
発現を低下させることで,肝星細胞のTGFβに対 する感受性を増強させ,その結果,肝星細胞は 活 性 化 し 肝 線 維 化 が 進 展 す る こ と が 示 さ れ た15).実際に,抗生物質投与による腸管殺菌に より腸管からのLPS流出を抑制することで,こ の肝線維化は抑制された15).NAFLD患者は高脂 肪食や高コレステロール食を摂取していること が多いが,それらの食事は,NAFLD肝臓の肝星 細胞に遊離コレステロールを蓄積させ,その結 果,さらに肝星細胞のLPS/TLR4シグナルが増強 し,NAFLD線維化病態が増悪する機序が明らか になった16). このように,NAFLDにおける,腸管透過性亢 進,腸内細菌過増殖と,それに伴うLPSをはじ めとするPAMPsの腸管から門脈血中への流出 は,肝臓でKupffer細胞・肝星細胞や他の免疫細 胞のTLRなどのパターン認識受容体シグナルを 増強し,肝臓自然免疫機構活性化を介して, NAFLD病態を修飾する. 腸管の炎症は腸管透過性亢進を引き起こす. 実際に,高脂肪食摂食によるNAFLDマウスに dextran sulfate sodium処置を施行し大腸炎を惹 起すると,血中エンドトキシン濃度の上昇と相 まって,NAFLD肝臓の炎症・線維化の進展を認 めた17).腸管の炎症は,腸内細菌叢の影響を受 け,無菌マウスに高脂肪食を投与しても腸管炎 症は惹起されないのに対して,コントロールマ ウスでは腸管炎症が惹起される18).また肥満患 者では,減量により,大腸の炎症が軽快するこ とも示されている19).肥満や高脂肪食・高フル クトース食摂食に伴う腸内細菌叢の変化が腸管 炎症を惹起し,腸管透過性を亢進してNAFLD病 態に関与する可能性が示唆される. (2)腸内細菌代謝産物を介した作用 齧歯類へのコリン欠損食投与は,フォスファ チジルコリン不足により肝臓でのVLDL(very-low-density lipoprotein)の生成・分泌が阻害さ れ,NAFLDを引き起こす動物モデルとして広く 使用されてきた.そして,高脂肪食投与時にも, 腸内細菌叢の変化によりコリンがトリメチルア ミンへ代謝されるため,コリンの有効利用がで きず,血中のフォスファチジルコリン濃度が低 下し,同様の機序でNAFLDが進展する病態機序 が明らかとなった20).一方,腸内細菌叢は内因 性のエタノール産生にも重要な役割を果たして おり,肥満NAFLDマウスでは,その産生量は有 意に増加していた21).また,後述するように, 腸内細菌叢代謝産物のエタノールにより,肥満 小児NASH病態が進展したとの報告もなされて いる22).その他,腸内細菌叢は短鎖脂肪酸など の様々な揮発性有機化合物を産生し病態に関与 することが知られているが,近年,NAFLD患者 の糞便で,短鎖脂肪族アルコールとカルボン酸 との誘導体のエステル化合物が有意に増加して いることが示されており23),今後病態や特定の 腸内細菌叢との相関解析が待たれるところであ る. 2) メタ16S解析,特異的PCR解析, メタゲノム解析などの分子生物学的手法 導入後の研究の進展24) NASH患者の腸内細菌叢では,体重や食事内容 とは独立した形で,有意にBacteroidetes門の細 菌の割合が減少していた25).常習飲酒者でも健
常人に比べ,腸内細菌叢のBacteroidetes門が減 少するという報告がされており26),一部同様の 傾向を呈している.また,近年興味深い報告が なされている.肥満小児を対象とした研究で, NASH患者と非NASH患者の腸内細菌叢を比較検 討した所,Proteobacteria門,Enterobacteriaceae 科,Escherichia属の細菌群がNASH患者で有意に 増 加 し て い た22).Escherichia属 細 菌 群 は エ タ ノールを産生する細菌群として知られている が,本研究で,小児NASH患者の血中エタノール 濃度は,非NASH患者と比較して有意に増加して いた22).小児を対象とした検討であり,NASH病 態発症・進展への腸管内産生エタノールの関与 が示唆される.以上のように,NASHとアルコー ル性肝障害の病態機序の共通性は,腸内細菌叢 の解析結果においても推察されるものである. 他方,肥満成人NAFLD患者と健常コントロール 患者との比較で,Firmicutes門,Lachnospiraceae 科の一部の腸内細菌群(Robinsoniella属, Rose-buria属,Dorea属 ) や,Lactobacillaceae 科,
Lactobacillus属の腸内細菌群が,NAFLD患者で 増加しているという結果23)も示された.ヒトを 対象としたこれまでのこのような,メタ 16S・ メタゲノム解析研究報告は,症例数が少ない, 人種,性別,年齢,地域性といった問題などに より相反する結果となる場合がある.背景因子 を揃えた形での,今後の大規模研究が待たれる ところである. さて,近年の腸内細菌叢の移植実験を中心と した検討によっても,腸内細菌叢がNAFLD病態 機序に果たす役割が明らかになりつつある.Le Royら27)は,野生型マウスに高脂肪食を摂餌さ せ,空腹時高血糖・高インスリン血症・高炎症 性 サ イ ト カ イ ン 血 症 を 呈 す る マ ウ ス を responderグループ,それらの表現形に乏しいマ ウスをnonresponderグループとした.その両グ ループより,体重・食餌摂取量・内臓脂肪量が 同等のマウスを選び,その腸内細菌叢を各々無 菌マウスへ移植し,高脂肪食投与を施行したと ころ,responderマウス由来の腸内細菌叢を移植 されたマウスの方が,空腹時血糖・インスリン 値が有意に高く,脂肪肝の進展を認め,肝臓で の脂質合成関連遺伝子発現も増強していた.し かしながら,両群で体重・食餌摂取量・内臓脂 肪量に差は認めなかった.両群の腸内細菌叢構 成は異なっており,responderマウス由来腸内細 菌叢移植群では,腸内細菌叢でLachnospiraceae bacteriumとBarnesiella intestinihominisが 増 加 し,一方nonresponderマウス由来腸内細菌叢移 植群では,Bacteroides vulgatusが増加していた. 一方,NLRP3インフラマソームやNLRP6イン フラマソームの活性化が,IL(interleukin)-18産 生を介してdysbiosisを制御していることが近年 明らかとなった28,29).それらのインフラマソー ム欠損によるdysbiosisの促進は,CCL5(chemo-kine(C-C motif)ligand 5)分泌を介した大腸炎 を引き起こし,その結果門脈から肝臓に到達す るTLR4 リガンドやTLR6 リガンドが増加し,肝 臓TNFα産生を増強し,マウスNASHモデル病態 を増悪させていた28,29).実際に,それらのイン フラマソーム欠損マウスと同居させることで, 野生型マウスのNASH病態は増悪した28).その 際,野生型マウスをインフラマソーム欠損マウ スと同居させるとPorphyromonadaceae科の腸 内細菌が増加したが,さらにNASHモデルに供す ると同腸内細菌が著しく増加しており,病態と の相関が示唆された. dysbiosisは食事によっても大きな影響を受け る.高脂肪食摂餌が,体重増加とは独立した形 で,マウスにおいて,Bacteroidetes門の腸内細 菌 を 減 少 さ せ,Proteobacteria門 お よ びFirmic-utes門の腸内細菌叢の増加を引き起こすことが 明らかとなっている30). そしてdysbiosisは,マウス肝線維化モデルに て病態を増悪させた31).高脂肪食摂餌により, マウス胆管結紮肝線維化モデルの病態は増悪し た.それに伴い,高脂肪食摂餌胆管結紮マウス では,グラム陰性菌のProteobacteria門の腸内細
菌が有意に増加していた.さらに,マウスにコ ントロール食または高脂肪食を摂餌させ,その 後抗生物質投与にて腸管殺菌を施行した後に, コントロール食摂餌マウス由来の腸内細菌叢, もしくは高脂肪食摂餌マウス由来の腸内細菌叢 を各々移植後,胆管結紮肝線維化モデルを作成 した.高脂肪食摂餌マウス由来腸内細菌叢を移 植されたマウスでは,コントロール食摂餌マウ ス由来腸内細菌叢を移植されたマウスに比べ, 肝線維化が増悪したが,腸管殺菌前の食餌内容 と線維化病態との間に相関を認めなかった31). なお,本検討においても,高脂肪食摂餌マウス 由来腸内細菌叢を移植後胆管結紮に供したマウ スにおいて,同じくグラム陰性菌Proteobacteria 門の腸内細菌が有意に増加していた.さらに, 高脂肪食摂餌胆管結紮マウス由来腸内細菌叢よ りグラム陰性菌を選別して移植したマウス群で は,高脂肪食摂餌マウス由来の腸内細菌叢をそ のまま移植したマウス群に比べ,胆管結紮処置 後の肝線維化が有意に進展していた31). このように,近年の解析手法の進歩により, NASH/NAFLD病態進展に関与する腸内細菌叢の 詳細が急速に解明されつつある. 3)治療応用の可能性 病態への関与が明らかになるにつれ,腸内細 菌叢はNASH/NAFLD治療ターゲットとして注目 を集めている.現在検討されている取り組み は,プロバイオティクス,プレバイオティクス, 抗生物質の投与,そして糞便移植などがある. プロバイオティクスでは,VSL#3( Streptococ-cus thermophilus,Bifidobacteria[B. breve,B. infantis,B. longum],Lactobacillus acidophilus,
L. plantarum,L. paracasei,L. bulgaricusの 8 菌 種を含む)が最も多く使用されている.マウス モデルを用いた検討では,VSL#3投与は,マウ スNAFLD病態を改善し32),また肝線維化の改善 作用も有することが明らかとなっている33). VSL#3はNAFLD患者にも使用されており,近年 では小児肥満NAFLD患者を対象に,プラセボ対 照二重盲検比較試験が施行され,4 カ月の投与 で脂肪肝の改善効果が報告されている34).他 方,プレバイオティクスの検討としては,オリ ゴフルクトースの8週間の投与により,NASH患 者の血清肝機能データが改善したとするパイ ロット研究が報告されている35).抗生物質で は,非吸収性抗生物質rifaximinの脂肪性肝疾患 や肝硬変患者に対する臨床試験が現在進行中で ある4).また,糞便移植に関しても前述のマウ ス肝線維化モデルにおいて,病態との相関が示 されており31),今後の臨床応用が期待される.
2.NASH/NAFLD関連肝細胞癌(
図3
)
我が国では近年,非B非C型肝細胞癌が増加し ているが,その多くがNASHを背景因子とするも のと想定されている.また,糖尿病や肥満が NAFLDのみならず,肝細胞癌発生リスクも上昇 させることが明らかとなっている.このため, NASH/NAFLD関連肝細胞癌の病態機序の多方面 からの検討が進行中である. マウスモデルを用いた検討で,腸内細菌由来 のTLR4 リガンドLPSが, 肝細胞癌のプロモー ションを促進させることが明らかになった36). その病態機序の1つとして,肝星細胞のTLR4シ グナル活性化により引き起こされる,その下流 のepiregulinなどの増殖因子の産生促進による ものが想定された.他方,炎症が共存する状態 では,肝細胞や前癌細胞のTLR4シグナルが活性 化しアポトーシスが抑制される病態機序も明ら かとなった.一方,近年の報告37)では,肥満に よりNAFLDが引き起こされるが,他方 Clostrid-iumクラスターXIに属する腸内細菌が増加し,2 次胆汁酸の1つであるデオキシコール酸(deoxy-cholic acid:DCA)の産生を促進することが明ら かとなった.増加したDCAは,肝星細胞の細胞 老化を引き起こし,その結果肝星細胞から分泌さ れ るsenescence-associated secretory phenotype(SASP)因子が肝細胞癌の形成を促進するとい う病態機序が報告された.以上のいずれのモデ ルにおいても,抗生物質投与による腸管殺菌に より肝細胞癌形成は有意に抑制されており,腸 内細菌が病態に果たす役割が明らかであるとと もに,腸内細菌をターゲットとした,肝細胞癌 治療への展望が示唆される結果である.
おわりに(
図4
)
肥満人口の増加に伴い,NASH/NAFLDは,今 後我が国をはじめとして全世界での患者数の増 図4 腸肝相関と,NASH/NAFLD病態機序 肥満 メタボリックシンドローム 食事因子 (高脂肪・高フルクトース・ 低fiber など) PAMPs 代謝産物 胆汁酸 など Probiotics Prebiotics 抗生物質 糞便移植 腸管透過性亢進 Dysbiosis 腸管炎症 免疫制御機構 肝細胞 Kupffer細胞 肝星細胞 類洞内皮細胞 免疫担当細胞 NASH/NAFLD 肝細胞癌 肝脂肪化 肝細胞障害 炎症 線維化 腸管 肝臓 門脈血中への移行 図3 腸内細菌叢と,NASH/NAFLD関連肝細胞癌形成 肥満・高脂肪食負荷 2次胆汁酸DCAの産生増加 肝星細胞の細胞老化 SASP因子 (IL-6など)の放出 Dysbiosis 肝へのTLR4リガンド流入 腸管 肝臓 肝細胞・前癌細胞のアポトーシス抑制 肝星細胞のEpiregulin産生増大 肝細胞癌形成促進 腸管透過性亢進加が予想されており,21世紀の肝臓病として注 目を集めている.それとともに,NASH/NAFLD は,生活習慣を起因とする他臓器疾患病態への 密接な関与も報告されており,その病態機序の 解明は重要な課題である.肝臓は解剖学的に腸 管由来の門脈血流が直接流入する臓器であり, 腸肝相関が肝疾患病態に果たす役割については 古くより検討されてきた.生活習慣の乱れを背 景因子とするNASH/NAFLDでは,腸肝相関が病 態へ及ぼす影響が特に大きいものと想定され る.そして,近年の分子生物学的手法による解 析を中心とした腸内細菌叢研究の飛躍的な進展 により,この分野の知見が急速に広がりつつあ る.プロバイオティクス,プレバイオティクス, 抗生物質,糞便移植などを含め,腸内細菌叢を ターゲットとした,NASH/NAFLDおよび関連肝 細胞癌の新規治療法の確立が今後期待されるも のである. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容 に関連して特に申告なし 文 献 1) 日本消化器病学会編:NAFLD/NASH診療ガイドライン 2014.南江堂,東京,2014.
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