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博 士 ( 歯 学 ) 江 畑 典 幸

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 江 畑 典 幸

     学 位 論 文 題 名

Immuno‑electron mlCrOSCOplCStudyofPECAM ‐ 1eXpreSSion     OnthelymphatiCendotheliumofhumantongue      ヒ ト 舌 リ ン パ 管 内 皮 細 胞 に お け る

    PECAM ・ 1 発 現 に 関 す る 免 疫 電 子 顕 微 鏡 的 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  血管系に おいて自 血球が血 流中から 組織内ヘ 移動する 際には,血 管内皮細胞が発現 する種々 の白血球 接着因子 が重要な 役割を担 っている .これまで の研究から,この移 動に際して血管内皮細胞はplatelet endothelial cell adhesion moleculeー1(PECAM−1),

intercellular adhesion molecule−1  (ICAM−1),  およびendothelial cell一selectin (ELAMー1)を発現することが知られている.

  ー方,リ ンノヾ管系は組織液や高分子蛋白質あるいは脂質などの吸収に関わるととも に,炎症 時におけ るりンノ'球の移動 ,さらには癌の転移にも大きく関わっていること が知られ ている. しかしな がら,脈 管系にお けるりン バ球の移動 に関する研究は血管 系につい ては盛んに行われているものの,リンノヾ管系についてはほとんど行われてい ない . こ の大 き な理由 の1っは,組 織切片に おけるり ンバ管の 同定が困 難であっ たこ とによるものである.

  ところが近年,組織切片におけるりンノヾ管の同定法として5|ーnucleotidaseーalkaline phosphatase(5 −NaseーALPase)酵 素 二重 染 色法 , お よびdesmosome構 成蛋 白の1 つで あ るdesmoplakinに 対 する 抗 体 を用 い た免 疫 組 織化 学 的 染色 法 が開 発 された . そこで本研究では,これらの染色法を用いてりンノヾ管を同定し,ヒト舌のりンノヾ管に おける白 血球接着 因子の発 現を光学 顕微鏡お よび透過 電子顕微鏡 を用いて検索した.

  本研究で は,材料 として外 科的に切 除された ヒ卜正常 舌を用いた ,光学顕微鏡用に はク リ オ スタ ッ ト を用 い て厚 さ10umの 凍結 連続 切片を作 製し,5 ‑NaseーALPase酵 素二 重 染 色法 あ る いは 抗desmoplakin抗 体 を用 い た 免疫 組 織 化学 的 染色 法 によっ て りン ノ ヾ 管の 同 定を行 った,次に ,その隣 接切片にPECAM−1,ICAM−1お よびELAM− 1の それ ぞ れ に対 する特 異抗体を用 いて免疫 染色を施 し,リン パ管にお けるこれ ら接 着因子の発現を検索した.

(2)

  電 子 顕 微 鏡 用 に は 厚 さ16umの 凍 結 連 続 切 片 を 作 成 し ,2枚 の 連 続 切 片 の う ち1 枚 は 抗PECAMー1抗 体 , も う1枚 は 抗desmoplakin抗 体 を ― 次 抗 体 として 用い た後 , 金粒 子で 標識 された 抗体 を二 次抗 体と して 用い て免 疫染 色を施した,次いで,この2 枚の 連続 切片 をそれ ぞれ エポ キシ樹脂に包埋して準超薄切片を作成し,両者を比較す る こ とに よってPECAM―1を発 現し てい るり ンノ ヾ管 を光 学顕 微鏡 的に同 定し た後 , 通 法 に 従っ て 超 薄 切 片 を 作 成 し て , リンノ'管 にお けるPECAM−1の発現 を透 過電 子 顕微鏡により観察した,

  光学顕微鏡による観察では,リンノヾ管は上皮直下とその周辺,ならびに粘膜固有層 の 中 央 部に 分 布 し て お り , す ぺ て の り ン パ 管 がPECAM−1を 発 現 してい るこ とが 明 ら か とな った, また ,一 部の りン パ管 にはICAM−1やELAM−1の発 現も認 めら れた . こ れ は 先に 我 々 が 行 っ た 報 告 , す な わ ち 炎 症 の 存 在 す る 組 織 に おける りン パ管 は PECAMー1.ICAM−1, お よ びELAMー1を 発 現 す る が , 正 常 組 織 に お け る り ン パ 管 はPECAM−1の み を 発 現 し , |CAM一1やELAM―1は 発 現 し な い と い う 結 果 と は 異 なっ てい る. このこ とは ,舌 のように常にある程度の外来刺激を受けている組織のり ン/ヾ管では,炎症の存在する組織ほど強くはないものの,正常組織であってもICAM−1 やELAM− 1を 発 現 し て い る 可 能 性 を 示 唆 し て い る も の と 思 わ れ る .   一方,これら白血球接着因子の発現様式から,舌のりンパ管は大きく3つのタイプ,

す な わ ち PECAM−1,ICAMー1,ELAM−1の す べ て を 発 現 す る も の ( 夕 イ プ1)I@ PECAM−1とICAM‑1の2っ を 発 現 す る も の ( 夕 イ プII) , お よ び ◎PECAM―1の み を発 現す るも の(夕 イプIII)の3夕イプに分けられることが明らかとなった.また,

夕イブ1のりンノヾ管はすぺて上皮直下とその周辺に,夕イプIIとタイプIIIのりンパ管 は粘膜固有層の中央部に認められた.このことは,起始部に近いりンノヾ管はPECAM一1, ICAM―1.ELAM一1の すべ ての 白血球接着因子を発現するが,リンノヾ管が集合するに っ れ て まずELAM−1の 発 現 , 次 い でICAMー1の 発 現 が 減 少 す る 可 能性を 示唆 する と ともに,組織からりンノヾ管内へのりンパ球の移動は,リンノヾ管起始部でより活発に行 われていることを意味しているのではないかと推測される.

  以 上の 結果か ら, ヒト 舌に おけ るり ンノ ヾ管 はす ぺてPECAMー1を発現 し, 起始 部 に近 いり ンノ ヾ管で はICAM―1やELAM―1の発現も認められることが明らかとなった.

ー方,リンノヾ管におけるこれら白血球接着因子の発現が,組織からりンノヾ管内へのり ンノヾ球の移動に関与しているのであれば,その発現部位は血流中から組織内へとりン パ球が移動する血管系とは当然異なっているはずであると考えられる,そこで,次に,

舌 を 含め たすぺ ての 組織 のり ンノ'<管 が発 現す るこ とが 知ら れて いるPECAM−1の 発 現の局在を免疫電顕により検索した.

(3)

  抗desmoplakin抗 体 と 抗PECAM−1抗 体 を 用 い て そ れ ぞ れ 免 疫 染色 を 施 し た2枚 の 準超 薄切 片像 の比 較に よりPECAM―1を発現 して いる と同 定さ れた りンバ管には,

anchoring filament,  overlapping jurictiori,end−to−end junction,非薄で非連続的 な基底膜など,リンノヾ管の微細構造学的特徴が観察された.またj血管内皮細胞にお け るPECAM−1の 発現 が管 腔側 の細 胞膜 表面の みに 認め られ たの に対 し,リンノヾ管 内 皮 細 胞 に お け るPECAM−1の 発 現 は 管 腔 側 と 非管 腔側 の両 者に 認め られ た. この り ンノ ヾ管 内皮細胞の非管腔側におけるPECAM―1の発現は,リンノヾ球がPECAM−1の 接 着機 能を 介して組織からりンパ管内へと移動することに寄与していると恩われる,

― 方, リン ノヾ 管内 皮細 胞の 管腔 側に おけるPECAM―1の発 現は ,組 織からりンパ管 内 に移 動し た白血球が,リンパ管内皮細胞と接着することによって管腔内に留まり,

リ ン ノ ヾ 管 内 に 取 り 込 ま れ た 抗 原 に 対 応 す る た め で は な い か と 推 測 さ れ た ,   なお ,リ ンノ ヾ管 内皮 細胞 の非 管腔 側にお ける 抗PECAM−1抗 体に 反応した金粒子 の 数は ,血 管内皮細胞の管腔側における金粒子の数に比ぺて明らかに少なかった.こ れ は, 血流 中を流れている自血球が血流に逆って内皮細胞に接着しなければならない 血管に比ぺて,流れの少ない組織内のりンノヾ球が内皮細胞に接着するりンノヾ管では,

多くの接着因子を必要としないためであろうと推測された.

(4)

学位論文 審査の要旨

     学位論文題名

Immuno‑electron microscoplCStudyofPECAM ‐1eXpreSSion     OnthelymphatiCendotheliumofhumantongue      ヒト舌リンパ管内皮細胞における

    PECAM ・ 1 発 現 に 関 す る 免 疫 電 子 顕 微 鏡 的 研 究

  審査は、審査員全員出席の下fこ、申請者に対して提出論文とそれに関連した学科目につ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 、 以 下 の 通 り で あ る .   本研究は、リンパ管における白血球接着因子の発現を免疫学的手法を用いて光学顕微鏡 および透過電子顕微鏡で検索したものである.

  材料として手術時に切除されたヒト舌の正常部分を用いた,光学顕微鏡用には厚さ10 弘mの凍結連続切片を作製し、5I‑nu cle otidase‑alk alinephosphatase(以下、5 ‐ Nase‑ALPase)酵素二重染 色法、ある いは抗desmoplakin抗体を用いた免疫組織化学的 染色法を用いてりンパ管の同定を行った.次に、その隣接切片にplatelet endothelia| cell adhesion molecule‑l(以下、PECAM‑1)、in te rcellu laradhesionmole cule‑

1(以下、ICAM‑1)およぴendothelial cell‑selectin(以下、ELAM‑1)に対する特異抗 体を用い て免疫染色 を施し、リ ンパ管fこおけるこれら接着因子の発現を検索した.

  電子顕微 鏡用には厚 さ16触mの 凍結連続切片を作成し、2枚の連続切片のうち1枚は 抗PECAM‑1抗体 、 もう1枚は抗desmoplakin抗 体を―次抗 体として用 いた後、金 コ□

イド標識二次抗体を用いた免疫染色を施した.次いで、この2枚の連続切片をそれそれェ ボキシ樹脂に包埋して準超薄切片を作成し、両者を比較することによってPECAM‑1 を発 現しているりンパ管を光学顕微鏡的に同定した後、通法に従って超薄切片を作成して、リ ン パ 管 に お け る PECAM‑1の 発 現 を 透 過 電 子 顕 微 鏡 に よ り 観 察 し た .   光学顕微鏡による観察では、リンパ管は上皮直下とその周辺、ならびに粘膜固有層の中 央部に分布しており、すぺてのりンパ管がPECAM‑1を発現していた.また、一部のりン パ管にはICAM‑1やELAM‑1の発現も認められた,さらにこれら自血球接着因子の発現様 式から、 舌のりンパ 管は、PECAM‑1、ICAM‑1、ELAM‑1のすべて を発現するタイプI、 PECAM‑1とICAM‑1の2っを発現す るタイプII、 およびPECAM‑1のみを発現 するタイプ

(5)

IIIの3のタイプに分けられた,夕イプIのりンパ管はすべて上皮直下とその周辺に、夕 イプIIとタイプ川のりンパ管は粘膜固有層の中央部に認められた,このことは、起始部 に近 い りン パ 管はPECAM‑1、ICAM‑1、ELAM‑1の すべての白 血球接着因 子を発現す る が、リンパ管が集合するにっれてまずELAM‑1の発現、冫欠いでICAM‑1の発現が滅少する 可能性を示唆するとともに、組織からりンパ管内へのりンパ球の移動は、リンパ管起始部 でより活発に行われていることを意味していると推測された.

  次 に 、I」 ン パ 管 に お け るPECAM‑1の 発 現 の 局在 を 免疫 電 顕に よ り 検索 し た,

抗desmoplakin抗 体 と抗PECAM‑1抗体を用 いてそれそ れ免疫染色 を施した2枚の準 超 薄切片像 を比較する ことによりPECAM‑1を発現し ていると同定されたりンパ管には、

anchoring filam ent、overlapping jun ction、end‑to‑end junction、菲薄で非連 続的な基底膜など、リンパ管の微細構造学的特徴が観察された.また、血管内皮細胞にお けるPECAM‑1の発現が管腔側の細胞膜表面のみに認められたのに対し、リンパ管内皮細 胞におけるPECAM‑1の発現は管腔側と非管腔側の両者に認められた,このりンパ管内皮 細胞の非 管腔側にお けるPECAM‑1の発 現は、リン パ球がPECAM‑1の接着機能 を介して 組織からりンパ管内へと移動することに寄与していると思われる.一方、リンパ管内皮細 胞の管腔側におけるPECAM‑1の発現は、組織からりンパ管内に移動した白血球が、リン パ管内皮細胞と接着することによって管腔内に留まり、リンパ管内に取り込まれた抗原に 対応するためではないかと推測された,

  なお、リンパ管内皮細胞の非管腔側における抗PECAM‑1抗体に反応した金粒子の数は、

血管内皮細胞の管腔側における金粒子の数に比べて明らかに少なかった,これは、血流中 を流れてし、る白血球が血流に逆って内皮細胞に接着しなければならない血管に比べて、流 れの少ない組織内のりンパ球が内皮細胞に接着するりンパ管では、多くの接着因子を必要 としないためであろうと推測された.

  論文の審査にあたって、論文申請者による研究の要旨の説明後、本研究ならぴに関連 する研究について質問が行われた,いずれの質問についても、論文申請者から明快な回 答が得られ、また将来の研究の方向性についても具体的に示された.本研究は、これま で不明であったりンパ管における自血球接着因子の発現を明らかにしたことが高く評価 された,本研究の業績は、口腔外科の分野はもとより、関連領域にも寄与するところ大 であり、博士(歯学)の学位授与に値するものと認められた.

参照

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