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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 題 名

博 士 ( 農 学 ) 西 邑 隆 徳

牛の成長および牛肉の熟成に伴う 筋肉内結合組織の変化に関する研究

学位論文内容の要旨

  本論 文は 総頁 数164頁の 和文 論文 で、 図62、表3およ び引 用文 献115から なり、他に12 編の参考論文が添え られている。

  食肉の品質を決め る要因の中で軟らかさは人の嗜好性にとって最も重要で ある。食肉の 軟らかさに直接影響 を及ぼすのは、筋肉内結合組織の性状に起囚する部分と 筋原線維の性 状に起因する部分と からなっている。筋肉内結合組織に関しては、主成分で あるコラーゲ ン細線維を形成する コラーゲンの分子間架橋が動物の成長に伴い安定な成熟 架橋ヘ転換す るのでコラーゲン細 線維は堅牢になる。この変化は筋肉内結合組織である筋 内膜および筋 周膜の物理的強度の 増加にっながり、老齢な家畜および家禽から生産される 食肉が硬く品 質が劣ることの一因 となっている。一方、家畜の骨格筋を食肉として利用す る場合には屠 畜後に一定の熟成 期間が必要であり、牛肉の場合は10日問以上であるが、この間に食肉は 軟化し風味も改善さ れ食昧が向上するので食肉としての適性を備えるように なる。熟成に 伴う筋肉内結合組織 の変化については、これまでに多くの研究が行われてき たが、食肉の 軟化に対する筋肉内 結合組織の関与については未だ明らかにされていなぃ。 本研究は、牛 肉の軟らかさに密接 に関連している筋肉内結合組織の生化学的特性および構 造が牛の成長 に伴ってどのように 変化するかを詳細に検討するとともに、牛肉の熟成If亅に起こる筋肉内 結 合 組 織 の 構 造 変 化 お よ び そ の 機 構 を 解 明 す る こ と を 目 的 と し て い る 。

(1)牛の成長に伴う筋肉内結合組織の変化

  牛肉の硬さの指標 として剪断力価を測定した結果、剪断力価は出生時から36ケ月齢にか けて増加した。また 、筋肉内結合組織のみからなるモデル牛肉の勢断力価は出生時から36ケ 月 齢に かけ て直 線的 に増 加し た。 以上 の 結果 は、牛の成長 に伴い筋肉内結合組織の物理 的強度が増加するこ とを直接的に示すものであり、成長に伴う牛肉の硬さの 増加に筋肉内 結合組織の物理的強 度の増加が関与していることを示している。

  牛の成長に伴い筋 肉内結合組織の物理的強度が増加する原因を解明するた めに、成長に 伴うコラーゲンの性 状変化を追究した。コラーゲンの加熱溶解性は成長に伴 い顕著に滅少 し た。 また 、筋 肉内 結合組織標 品中のピリジノリン含量は胎子から9ケ月齢にかけて徐々 に 増加 し、 その 後360月齢までは急激に増加した。以上の結 果は、牛の成長に伴うコラー ゲン分子間の成熟架 橋の増加はコラーゲンの加熱溶解性の低下に見られるコ ラーゲン分子 間の架橋結合の強化 、すなわちコラーゲン細線維の物理的強度の増加をもた らすことを示 している。  ・

,牛の成長に伴う筋 肉内結合組織の構造変化を細胞消化・走査電顕法を用いて追跡すると、

筋内膜のコラーゲン 細線維の網目構造はより緻密に、筋周膜のコラーゲン線 維はより太く なり、筋周膜は厚い 層構造となることが明らかになった。無定形基質の主要 な構成成分で あり、コラーゲン細 線維と結合能を有するプロテオグリカンの骨格筋におけ る配列が成長

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に伴いどのよ うに変化するかを透過電顕で観察した結果、基底膜にお けるプロテオグリカ ンの配列は加 齢とともに規則正しい配列をとること、成牛の半腱様筋 の筋周膜ではコラー ケン細線維と より強く結合するデルマタン硫酸鎖を持っプロテオグリ カンが相対的に多く なることが明らかになった。

  以上の結果 に基づぃて、牛の成長に伴う筋肉内結合組織の堅牢化と 牛肉の硬さとの関連 については以 下のように結論している。すなわち、牛の成長に伴いコ ラーゲン分子間には ピリジノリン などの非還元性の成熟架橋が多くなり、コラーゲンの分 子間架橋が強固とな り、コラーゲ ン細線維はより安定な構造となる。また、牛の成長に伴 い、筋内膜を構築し ているコラー ゲン細線維の網目榊造ほ緻密化し、筋周膜を構築してい るコラーゲン線維は 太くなり厚い 層を形成する。プロテオグリカンなどの無定形基質がコ ラーゲン細線維間の 結合を補強し 筋肉内結合組織は緻密で堅牢な構造になる。その結果、 筋肉内結合組織の物 理 的 強 度 が 増 加 し 、 牛 の 成 長 に 伴 う 牛 肉 の 硬 さ の 増 加 が も た ら さ れ る 。

(2)牛肉の熟成に伴う筋肉内結合組織の変化

  屠畜 後4℃ で貯 蔵し た牛肉の剪断力価は熟成10日目までは顕著に 低下し、その後熟成の 経過とともに 緩やかに低下し、熟成28日目の剪断力価は屠畜直後の値 の約58%となった。

ま た、 結合 組織 のみ からなるモデル牛 肉の剪断力価は熟成7日目ま ではほとんど変化しな いが、その後 熟成の経過に伴い漸滅する傾向が認められた。これらの 結果は、牛肉の熟成 中に筋肉内結 合組織の物理的強度が低下することを直接的に示すもの であり、熟成に伴う 筋 肉内 結合 組織 の榊 造変化は熟成7日目までは小さいが、その後、 徐々に進行することを 示している。 牛肉の熟成に伴う筋肉内結合組織の脆弱化がどのような メカニズムで起こる の かを 解明 する ため に、 筋 肉内 結合 組織 の榊 造および生化学的特 性の変化を追究した。

  半腱 様筋 およ び胸 最長 筋 のコ ラー ゲン の加 熱溶解性は熟成中に ほとんど変化せず、単 離した筋内股 画j分および筋周膜岡分のコラーゲンの)11熱溶解性も熟成に伴う変化はほとん ど認められな かった。また、成熟架橋のーっであるピリジノリン含量 は熟成中に全く変化 しなかった。 これらの結果は、コラーゲン細線維の安定化に寄与して いる分子間架橋は牛 肉の熟成中に変化しなぃことを示している。

  4℃で 熟成 した 牛肉 の筋肉内結合組織について走査電顕により経 時的な構造変化を追跡 す ると 、熟 成7日 目ま では変化が認められなかったが、熟成14日目 以降、筋内膜を構築し ていたコラー ゲン細緑維の緻密な網目構造は一本一本のコラーゲン細 線維にほぐれ疎な構 造に、筋周膜 を機築していたコラーゲン線維はより細いコラーゲン細 線維の束、あるいは 個々のコラー ゲン細I線維に解離すること が明らかになった。このことは、牛肉の熟成に伴 い筋肉内結合 組織を榊築しているコラーゲン細線維間の接着性が低下 し、コラーゲン細線 維がほぐれやすくなっていることを示すものである。

  牛肉の熟成 中にコラーグン細線維がほぐれやすくなる原因を解明す るために、筋肉内結 合組織の主要 な無定形基質成分であるプロテオグリカンの変化を追跡 した。牛肉中のプロ テオグリカン 量は熟成14日目まで急激に低下し、その後熟成の経過と ともに漸減した。ま た 、SDS‑ PAGEに よる 分析 では 高分 子量 のプ ロテ オグ リ カン が熟 成の 経過 とともに減少 し 、熟 成7日 目に は消 失することが示された。熟成に伴う筋肉内結 合組織におけるプロテ オグリカンの 形態学的変化を透過電顕で観察した結果、筋周膜のコラ ーグン細線維に結合 しているプロ テオグリカンは、熟成7日目 まではほとんど変化しなぃが、熟成14日目以降、

そ の数 が減 少す るこ とが 明 らか にな った 。こ れらの事実は、牛肉 の熟成に伴いプロテオ グリカンがコ ラーゲン細線維から解離するか、あるいは酵素的に加水 分解されて筋周膜お よび筋内膜に おけるコラーゲン細線維間の接着性が弱まり、コラーゲ ン細線維で榊築され ている筋肉内結合組織の構造が脆弱化することを示している。

  以上の結果 から、筋肉内結合組織構造の脆弱化は牛肉の熟成後期に みられる軟化に寄与 しており、熟成初期に起こる軟化は筋原線維構造のJF醐弓化によるものであると結論している。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    高橋興 威 副 査    教 授    近藤敬 治 副 査    教 授    島崎敬 一

学 位 論 文 題 名

牛の成長および牛肉の熟成に伴う 筋肉内結合組織の変化に関する研究

本 論 文 は 総 頁 数164頁 の 和 文 論 文 で 、 図62、 表3お よ び 引 冂J文 献115か ら な り 、別 に 12編 の参 考論 文が 添え られ てい る 。

  牛 肉の品質を決める亜因の巾で軟らかさは人 のi欝好州!にとって巌もm硬であり、筋肉 内結 合組 織の 性状 に起 因す る部 分 と筋 原線 維の 性状 に起 囚する部分とからなっている。

筋肉 内結 合組 織は コラ ーゲ ン細 線 維と 無定 形基 質で 形成 されており、牛の加齢に伴って 堅牢 にな るの で、 老齢 な牛 から 生 産さ れる 牛肉 は硬 く品 質が劣っている。一方、牛肉を 利用 する 場合 、屠 畜後 に4℃ で10日間 以上 の熟 成が 必要 で、 こ の問 に牛 肉は 軟化 し風味 も改 善さ れ食 味が 向上 する 。熟 成 に伴 う牛 肉の 軟化 に対 する筋肉内結合組織の関与につ いて は不 明な 点が 多い 。本 研究 は 、牛 肉の 軟ら かさ に密 接に関述している筋肉内結合組 織の 生化 学的 特性 およ び構 造が 牛 の成 長に 伴っ てど のよ うに変化するかを詳細に検討す ると とも に、 牛肉 の熟 成中 に起 こ る筋 肉内 結合 組織 の構 造変化およびその機構を解明す るこ とを 目的 とし てい る。 得ら れ た結 果は 以下 の通 りで ある 。

(1) 牛の 成長 に伴 う筋 肉内 結合 組織 の変 化

  牛 肉の 硬さ の指 標で ある 剪断 力 価は 出生 時か ら36ケ月 齢にかけて増加し、筋肉内結合 組織 のみ から なる モデ ル牛 肉の 剪 断力 価も 出生 時か ら36ケ月齢にかけて増加することを 確認 し、 牛の 成長 に伴 って 筋肉 内 結合 組織 の物 理的 強度 が増加することを直接的に示し た。 筋肉内結合組織を形成するコラーゲンの加 熱溶解性は牛の成長に伴い顕著に滅少し、

ピリ ジノ リン 含量 が増 加す るこ と を見 出し 、コ ラー ゲン 分子間の成熟架橋であるピリジ ノリ ン含 量の 増加 は分 子間 架橋 結 合の 強化 、す なわ ちコ ラーグン細線維の物理的強度の 増加 をも たら すこ とを 明ら かに し た。 牛の 成長 に伴 う筋 肉内結合組織の構造変化を細胞 消化 ・走査電顕法を用いて追跡し、筋内膜のコ ラーゲン細線維の網目構造はより緻密に、

筋周 膜の コラ ーゲ ン線 維は より 太 くな り、 筋周 膜は 厚い 層構造となることを見出した。

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また、牛の成長にやトい、筋周膜ではコラーゲン細線維と強く結合するデルマタン硫酸鎖 を持っプロテオグリカンが相対的に多くなることを明らかにした。以上の結果に基づぃ て、牛の成長に伴う筋肉内結合組織の堅牢化と牛肉の硬さとの関連について以下のよう に結論している。すなわち、牛の成長に伴って、コラーゲンの分子間架橋が強固となる ので、コラーゲン細線維はより安定な構造になるとともに、無定形基質を形成するプロ テオグリカンがコラーゲン細線維間の結合を補強し筋肉内結合組織は緻密で堅牢な構造 になる。 従って、筋肉内結合組織の物理的強度が増加し、牛の成長に伴う牛肉の硬さの 増加がもたらされる。

(2)牛肉の熟成に伴う筋肉内結合組織の変化

  屠畜後4℃で熟成した牛肉の剪断力価は熟成10日目までは急激に低下し、その後漸減 し、熟成28日目には屠畜直後の値の約58%となること、およびモデル牛肉の剪断力価は 熟成7日目まではほとんど変化せず、その後漸減することを示し、熟成に伴う筋肉内結 合組織の変化は熟成7日目以降、徐々に進行することを明らかにした。!杠離した筋内膜 および筋周J旗のコラーゲンの加熱溶解1t!、およびピリジノリン含量は熟成中に仝く変化 せず、コラーゲンの分子間架橋は牛肉の熟成中に変化しなぃことを確認した。熟成に伴 う筋肉内結合組織の構造変化を細胞消化・走査電顕法で追跡・し、熟成7日目までは変化 が認められなぃが、熟成14日目以降、筋内膜は一本一本のコラーグン細線維にほぐれ、

筋周膜を構築していたコラーグン線維はより細いコラーゲン線維、あるいはコラーグン 細線維に解離することを見出し、熟成中にコラーゲン細線維間の接着性が低下すること を明示した。コラーゲン細線維どうしを接着するプロテオグリカンの含量は熟成7日目 までは変化せず、その後時間の経過とともに漸減した。透過電顕で観察した結果、筋周 膜のコラーグン細線維に結合しているプロテオグリカンは、熟成7日目までは変化しな いが、熟成14日目以降、その数が減少することを確認した。これらの事実は、牛肉の 熟成に伴いプロテオグリカンの性質が変化するためにコラーグン細線維間の接着性が弱 まり、筋肉内結合組織の榊造が脆弱化することを示している。従って、筋肉内結合組織 榊造の脆弱化は牛肉の熟成後期にみられる軟化に寄与しており、熟成初期に起こる軟化 は 筋 原 線 維 構 造 の 脆 弱 化 に よ る も の で あ る と 結 論 し て い る 。   .   以上の研究成果は牛の成長および牛肉の熟成に伴う筋肉内結合組織の変化を多面的に 追究して多くの新知見を見山したものであり、学術上応用上貢献するところが大きく、

高く評価される。よって、審査員一同は、別に行った学力石寉認試験の結果と合わせて、

本論文の提出者西邑隆徳は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと 認定した。

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参照

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