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正の有理レベルにおける Fock 加群の構造について

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Academic year: 2022

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正の有理レベルにおける Fock 加群の構造について

中野弘夢 (東北大学大学院理学研究科数学専攻)

1. 概要

p+, pを互いに素な2以上の正の有理数とする.中心荷電がcp+,p = 136(p+pp)2

+p

Virasoro代数の表現論に対して[1]による研究がある.そこでは正の有理レベルのFock

加群が適当なアーベル圏の中で有限の長さのSocle列を持つことが示されている.この Fock加群の構造定理は一般化されたJantzen Filtrationとそれに付随するCharacter sumを用いることで証明される[2].本講演では正の有理レベルのFock加群の構造定理 がJantzen Filtrationを用いずに証明できることを紹介する.証明では[3]による不定元 ϵによるϵ変形の手法を基本的に用いる.基礎環Cをmodular系(K=C((ϵ)),O =C[[ϵ]]) に持ち上げて,種々の積分に対してO整値性を示すことによって複雑なC上の理論を比 較的単純なK,O上の理論へ持ち上げることができる.他にはVirasoroの特異ベクトル の自由場表示から得られる情報が重要になる.一般的な条件下でVirasoro代数の特異ベ クトルをFock空間で自由場表示するとき比例定数を除いてJack多項式で表現できるこ とが知られている.白石氏はこの比例定数を明示的に与えた[4].この比例定数を白石定 数と呼ぶことにする.

2. KO 理論と白石定数

以下K,O上のFock加群,Verma加群を定義し白石定数との関連を述べる.

α+=

√ 2p

p+ , α =

√ 2p+

p , βa,b= 1−a

2 α++ 1−b

2 α (a, bZ)

とおく. cp+,p = 1 3(α+ +α)2である.交換関係[bm, bn] = m+n,0idで定義され る無限次元Heisenberg代数から定まる普遍包絡環をU(b)とおくとb0最高ウェイトを βa,bとするFock加群Fa,b = U(b)|βa,bが定義される.このFock加群の構造は複雑で あり,そのままでは解析が難しいためTsuchiya-Woodによるϵ変形の手法を用いて解 析する. α+(ϵ) = α++α(1)+ ·ϵ+α(2)+ ·ϵ2+· · · ∈ Oα(1)+ ̸= 0となるように固定し, α(ϵ) =2·α+(ϵ)1 =α+α(1) ·ϵ+α(2)·ϵ2+· · · ∈ Oとおく. a, b∈Zに対して

βa,b(ϵ) = 1−a

2 α+(ϵ) + 1−b

2 α(ϵ), ha,b(ϵ) = a2 1

8 α+(ϵ)2+b21

8 α(ϵ)2 ab−1 2 とおく. RK,Oのいずれかとする.交換関係[bm, bn] = m+n,0idで定義されるR 係数のHeisenberg代数から定まる普遍包絡環をRU(b)とおき,中心荷電cp+,p(ϵ) = 13(α+(ϵ) +α(ϵ))2のVirasoro代数から定まるR係数の普遍包絡環をRU(L)とお く.この時R係数のFock加群RFa,b = RU(b)a,b(ϵ), R係数のVerma加群RMa,b =

RU(L)|ha,b(ϵ)が定義できる.

以下1≤r≤p+1,1≤s≤p1としr =p+−r, s =p−sとおく. Fock加群 Fr,sはレベル(r+np+)(s+np) (n 0)に特異ベクトルを持ち

ρα(Jλr∨+np

+,s∨+np(x, κ))r,s= (b(r1+np+)(s+np)+· · ·)r,s⟩, κ= α2 2

(2)

というパラメータκに関する長方形ヤング図λr+np+,s+np = ((s+np)r+np+)の Jack多項式表示を持つ[3].ただしραは同一視ρα(pm(x)) =−αbmとする. n≥1 の時はこの特異ベクトル達はVirasoro代数表示を持たないがFr,sを適当なK上のFock 加群に持ち上げて考えるとKU(L)表示を持つことがVirasoro代数の一般論から分か る.すなわちFr,sKへの持ち上げであるKFrnp+,snpは左KU(L)加群として

KMr+np+,s+npと同型であり,レベル(r +np+)(s +np)に唯一つの特異ベクトル を持つ.特異ベクトルの自由場表示とKU(L)表示の間に比例関係が成り立ち,比例定数 cr,s;n(ϵ)∈ KK定数として次の式で表される.

(L(r1+np+)(s+np)+· · ·)rnp+,snp(ϵ)

=cr,s;n(ϵ)ρα(ϵ)(Jλr∨+np

+,s∨+np(x, κ(ϵ)))rnp+,snp(ϵ) .

Virasoro代数の一般論から左辺のVirasoro代数表示はOU(L)の元で表示されることに 注意する.右辺はκ(ϵ) = α(ϵ)2/2パラメータの長方形ヤング図λr+np+,s+npのJack 多項式表示であり,

ρα(ϵ)(Jλr∨+np

+,s∨+np(x, κ(ϵ)))rnp+,snp(ϵ)

OFrnp+,snp OFrnp+,snp

が成り立つ[3]. このK定数cr,s;n(ϵ)に関して次の定理が成り立つ[4].

定理(白石定数)

cr,s;n(ϵ) =

r+np+

i=1

s+np

j=1

(iκ+(ϵ)−j), κ+(ϵ) = α+(ϵ)2

2 .

上の定理はFr,sの持ち上げに関するものであるが,他のFock加群に対しても同様な定 理が成り立つ.この定理よりcr,s;n(ϵ) ∈ O\{0}でありcr,s;n(ϵ)はϵnでちょうど割り 切れることが分かる.白石定数を中心にTuschiya-Woodの理論を用いることで持ち上げ たO上のFock加群に対してϵに関するフィルトレーションの構造を導入することがで きる.

参考文献

[1] B.L.Feigin and D.B.Fuchs, Representations of the Virasoro algebra, Adv. Stud. Con- temp. Math. 7, 465-554, Gordon and Breach Science Publ. New York, 1990.

[2] K.Iohara and Y.Koga,Representation Theory of the Virasoro algebra. Springer, 2010.

[3] A. Tsuchiya, S. Wood,On the extended W-algebra of type sl2 at positive rational level, International Mathematics Research Notices, Volume 2015, Issue 14, 1 January 2015, Pages 5357-5435, (1993).

[4] 白石潤一.量子可積分系入門,サイエンス社, (2003).

参照

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