Komazawa University 『
正
法
眼
蔵
抄
』口
語
訳
の
試
み
1
仏
性
因
1
伊
藤
秀
虫 、田、 Kom 三1z三1w三1 Umversrty 第 七 段 ( − : : : ニ フ ナ ガ ア リ。 シ ユ ナ ト ニ ハ 7 タ ト タ フ リ 昌 ウ ミ ヤ ウ ト ノ ナ リ ル ニ ノ ノ 第 十 四 祖 竜 樹 尊 者 、 梵 云 二 那 伽 閼 刺 樹 那 → 唐 云 二 竜 樹 、 亦 竜 勝 → 亦 云 二 竜猛
幻 西 天 竺 国 人 也 。 至 二 南 天 竺 国 → 彼国
ク ズ ヲ メ ニ ク ヲ ク タ ガ ヒ ニ ヒ テ ク ル ハ ナ リ ヲ ニ ワ ト カ ク ル ヲ ク 之 人 、 多 信 二 福 業 司 尊 者 為 説 二 妙 法 → 聞 者 逓 相 謂 日 、 「 人 有 二 福 業 → 世 間 第 一 。 徒 言 二 仏性
嚇 誰 能 覩 〆 之 。 」 尊 者 日 、 バ バ ソ ト ヲ ヅ ク ク ヲ ノ ク ナ リ ヤ ナ リ ヤ ク ハ ズ ニ ズ ニ ズ ニ ズ ニ ク ク 「 汝 欲 レ 見 二 仏 性 嚇 先 須 シ 7 除 二 我 慢 ご 彼 人 日 、 「 仏 性 大 耶 小 耶 。 」 尊 者 日 、 「 仏 性 非 ノ 大 非 γ 小 、 非 レ 広 非 〆 狭 、 無 ゾ 福 無 ノ 報 、 ナ リ レ テ ノ レ タ ル コ ト ヲ ク メ グ ラ ス ヲ タ ニ ズ ヲ シ ノ ダ テ ヲ 不 死 不 生 。 」 彼 聞 二 理 勝一 悉 廻 二 初 心 → 尊 者 復 於 二 坐 上一 現 二 自 在 身 ハ 如 二 満 月 輪 一 切 衆 会 、 唯 聞 二 法 音 → 不 レ覩
二 師 ヲ ノ ニ リ ノ カ ナ ダ イ バ テ ニ ク ル ヤ ノ ヲ ヤ ク イ て ニ ダ ユ ク ク 相 魂 於一 一 彼 衆 中 「 有 二 長 者 子 迦 那 提 婆 → 謂 二 衆 会 一 日 、 「 識 二 此 相 一 否 。 」 衆 会 日 、 「 而 今 我 等 目 所 ノ 未 ア 見 、 耳 無 レ 所 γ 聞 、 ニ ク ル ニ ツ ス ル ク レ ハ レ ノ ナ リ テ ス ニ ヲ テ ヵ ル ヲ シ テ ナ リ ル ノ ク ナ ル ワ ノ 心 無 レ 所 レ 識 、 身 無 〆 所 レ 住 。 」 提 婆 日 、 「 此 是 尊 者 現 仏 性 相 、 以 示 二 我 等 一 何 以 知 ノ 之 。 蓋 以 三 無 相 三 昧 形 如 二 満 月 → ノ ハ ( 2 ) ナ リ ヒ ル ニ チ ル タ シ テ ( 3 ) ニ テ ヲ ク ニ ジ ノ ヲ テ ス ノ ヲ 〔 ‘ ) ク ノ誰
簸
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擬
虚 明 。 」 雪 、 訖 輪 相 即 隠 。 復 居 ・ 本韲
而 説 ・ 偈 昔 . 、 「 身 現 ・ 円 月狽
以 表 ・ 諸 仏矗
鱗
説 法 無 ・諺
→ 用 辨 二 非 声 色 こ し る べ し 、 真 箇 の 用 辨 は 声 色 の 即 現 に あ ら ず 、 真 箇 の 説 法 は 無 其 形 な り 。 尊 者 か つ て ひ ろ く 仏 性 を 為 説 す る 、 不 可 ( 6 ) * ( 7 ) 数 量 な り 。 し ば ら く 一隅
を 略 挙 す る な り 。 汝 欲 見 仏 性 、 先 須 除 我 慢 と こ そ 為 説 の 宗 旨 、 す ご さ ず 辨 肯 す べ し 。 見 は ネ な き に あ ら ず 、 そ の 見 こ れ 除 我 慢 な り 。 我 も ひ と つ に あ ら ず 、 慢 も 多 般 な り 、 除 法 ま た 万 差 な る べ し 。 し か あ れ ど も 、 こ れ ら み な 見 仏 性 な り 、 眼 見 目 覩 に な ら ふ べ し 。 仏 性 非 大 非 小 等 の 道 取 、 よ の つ ね の 凡 夫 二 乗 に 例 諸 す る こ と ( 8 ) ( 9 ) な か れ 。 偏枯
に 仏 性 は 広 大 な ら む と の み お も へ る 、 邪 念 を た く わ へ き た る な り 。 大 に あ ら ず 小 に あ ら ざ ら む 正 当 恁 歴 時 の 道 取 に 口 圭 礙 せ ら れ む 道 理 、 い ま 聴 取 す る が ご と く 思 量 す べ き な り 。 思 量 な る 聴 取 を 使 得 す る が ゆ へ に 、 し ば * 駒 澤 大 學 佛 敏 學 部 研 究 紀 要 第 四 十 五 號 昭 和 六 十 二 年 三 月 一 九 九Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 二
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ら く 尊 者 の 道 著 す る 偈 を 聞 取 す べ し 。 い は ゆ る 、 身 現 円 月 相 、 以 表 諸 仏 体 な り 。 す で に 諸 仏 体 を 以 表 し き た れ る 身 現 な る が ゆ へ に 、 円 月 相 な り 。 し か あ れ ば 、 一 切 の 長 短 方 円 、 こ の 身 現 に学
習 す べ し 。 身 と 現 と に 転 疎 な る は 、 円 月 相 に く ら き の み に あ ら ず 、 諸 仏 体 に あ ら ざ る な り 。 愚 者 お も は く 、 尊 者 か り に 化 身 を 現 ぜ る を 円 月 相 と い ふ と お ( −o ) も ふ は 、 仏 道 を 相 承 せ ざ る 儻 類 の 邪 念 な り 。 い つ れ の と こ ろ の い つ れ の と き か 、 非 身 の 化 現 な ら む 。 ま さ に し る べ し 、 こ の と き 尊 者 は 高 座 せ る の み な り 。 身 現 の 儀 は 、 い ま の た れ 人 も 坐 せ る が ご と く あ り し な り 。 こ の 身 、 こ れ 円 月 相 現 な り 。 身 現 は 方 円 に あ ら ず 、 有 無 に あ ら ず 、 隠 顕 に あ ら ず 、 八 万 四 千 蘊 に あ ら ず 、 た だ 身 現 な り 。 円 月 相 と い ふ 、 這 裏 是 甚 歴 処 在 、 説 細 説 蠱 月 な り 。 こ の 身 現 は 先 須 除 我 慢 な る が ゆ へ に 竜 樹 に あ ら ず 、 諸 仏 体 な り 。 以 表 す る が ゆ へ に 諸 仏 体 を 透 脱 す 。 し か あ る が ゆ へ に 仏 辺 に か か は れ ず 。 仏 性 の 満 月 を 形 如 す る 虚 明 あ り と も 、 円 月 相 を排
列 す る に あ ら ず 。 い は ん や 用 辨 も 声 色 に あ ら ず 、 身 現 も 色 心 に あ ら ず 、蘊
処 界 に あ ら ず 。 蘊 処 界 に 一 似 な り と い へ ど も 、 以 表 な り 、 諸 仏 体 な り 。 こ れ 説 法 蘊 な り 、 そ れ 無 其 形 な り 。 無 其 形 さ ら に 無 相 三 昧 な る と き 身 現 な り 。 一 衆 い ま 円 月 相 を 望 見 す と い へ ど も 、 目 所 未 見 な る は 説 法 蘊 の 転 機 な り 、 現 自 在 身 の 非 声 色 な り 。 即 隠 即 現 は 、 輪 相 ( 11 ) の 進 歩 退 歩 な り 。 復 於 座 上 、 現 自 在 身 の 正 当 恁 摩 時 は 、 一 切 衆 会 、 唯 聞 法 音 す る な り 、 不 覩 師 相 な り 。 尊 者 の 嫡 嗣 迦 那 提 婆 尊 者 、 あ き ら か に 満 月 相 を 識 此 し 、 円 月 相 を 識 此 し 、 身 現 を 識 此 し 、 諸 仏 性 を 識 此 し 、 諸 仏 体 を 識 此 せ り 。 も ご ロ コ ぞ フ ム ム く ニ サ ロ し リ コ コ ロ モ ノ ロ コ へ ぷ レ ヘ エ ニ こ じ の じ ロ サ る の ロ し ロ し ノ り エ ニ こ ご ロ も ニ コ コ こ コ コ し サ も も や サ ご ひ し コ の ヱ コ ヘ ヘ ロ ニ と ひ ノ 隻 源 胡 ¢ 野 夫 と 乙 ま に し と レ ( ど く 黏 矍 と ヂ 戸 た を さ 7. ( し , 払 矍 に 斗 麈 ¢ 亳 為 り 舞 ハ τ ¢ 耄 郎 な り 塗 塵 ¢ 分 座 な り 。 正 法 眼 蔵 無 上 大 法 を 正 伝 せ る こ と 、 霊 山 に 摩 訶 迦 葉 尊 者 の 座 元 な り し が ご と し 。 竜 樹 未 廻 心 の さ き 、 外 道 の 法 に あ り し と き の 弟 子 お ほ か り し か ど も 、 み な 謝 遣 し き た れ り 。 竜 樹 す で に 仏 祖 と な れ り し と き は 、 ひ と り 提 婆 を 附 法 の 正 嫡 と し て 、 大 法 眼 蔵 を 正 伝 す 。 こ れ 無 上 仏 道 の 単 伝 な り 。 し か あ る に 、 潜 偽 の 邪 郡 、 ま ま に 自 称 す ら く 、 わ れ ら も 竜 樹 大 士 の 法 嗣 な り 、 論 を つ く り義
を あ つ む る 、 お ほ く 竜 樹 の 手 を か れ り 、 竜… 樹 の 造 に あ ら ず 。 む か し す て ら れ し 群 徒 の 、 人 天 を 惑 乱 す る な り 。 仏 弟 子 は ひ と す ぢ に 、 提 婆 の 所 伝 に あ ら ざ ら ん は 竜 樹 の 道 に あ ら ず と し る べ き な り 。 こ れ 正 信 得 及 な り 。 し か あ る に 、 偽 な り と し り な が ら 稟 受 す る も の お ほ か り 。 謗 大 般 若 の 衆 生 の 愚 蒙 、 あ は れ み か な し む べ し 。 迦 那 提婆
尊 者 、 ち な み に 竜 樹 尊 者 の 身現
を さ し て 、 衆 会 に つ げ て い は く 、 此 是 尊 者 現 仏 性 相 、 以 示 我 等 、 何 以 知 之 、Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 蓋 以 無 相 三
昧
、 形 如 満 月 、 仏 性 之 義 、 廓 然 虚 明 な り 。 い ま 天 上 ・ 人間
、 大 千 法 界 に 流 布 せ る 仏 法 を 見 聞 せ る 前 後 の 皮 袋 、 た れ か 道 取 せ る 、 身 現 相 は 仏 性 な り と 。 大 千 界 に は 、 た だ 提 婆 尊 者 の み 道 取 せ る な り 、 余 者 は た だ 仏性
は 眼 見 ・ 耳 聞 ・ 心 識 等 に あ ら ず と の み 道 取 す る な り 。 身 現 は 仏 性 な り と し ら ざ る ゆ へ に 道 取 せ ざ る な り 。 祖 師 の お し む に あ ら ざ れ ど も 、 眼 耳 ふ さ が れ て 見 聞 す る こ と あ た は ざ る な り 、 身 識 い ま だ お こ ら ず し て 了 別 す る こ と あ た は ざ る な り 。 無 相 三 味 の 形 如 満 月 な る を 望 見 し 礼 拝 す る に 、 目 未 所覩
な り 。 仏 性 之 義 、 廓 然 虚 明 な り 。 し か あ れ ば 、 身 現 の 説 仏 性 な る 、 虚 明 な り 、 廓 然 な り 。 説 仏 性 の 身 現 な る 、 以 表 諸 仏 体 な り 。 い つ れ の 一 仏 二 仏 か 、 こ の 以表
を 仏 体 せ ざ ら む 。 仏 体 は 身 現 な り 、 身 現 な る 仏 性 あ り 。 四 大 五 蘊 と 道 取 し 会 取 す る 仏 量 祖 量 も 、 か へ り て 身 現 の 造 次 な り 。 す で に 諸 仏 体 と い ふ 、 蘊 処 界 の か く の ご と く な る な り 。 一 切 の 功 徳 、 こ の 功 徳 な り 。 仏 功 徳 は 、 こ の 身 現 の 究 尽 し 曩 括 す る な り 。 一 切 無 量 無 辺 の 功 徳 の 往 来 は 、 こ の 身 現 の 一 造 次 な り 。 し か あ る に 、 竜 樹 ・ 提婆
師 資 よ り の ち 、 三 国 の 諸 方 に あ る 前 代 後 代 、 ま ま に 仏 学 す る 人 物 、 い ま だ 竜 樹 ・ 提 婆 の ご と く 道 取 せ ず 。 い く ば く の 経 師 ・論
師 等 か 、 仏 祖 の 道 を 蹉 過 す る 。 大 宋 国 む か し よ り こ の 因 縁 を 画 せ む と す る に 、 身 に 画 し 、 心 に 画 し 、 空 に 画 し 、 壁 に 画 す る こ と あ た は ず 、 い た づ ら に 筆 頭 に 画 す る に 、 法 座 上 に 如 鏡 な る 一輪
相 を 図 し て 、 い ま 竜 樹 の 身 現 円 月 相 と せ り 。 す で に 数 百 歳 の 霜 華 も 開落
し て 、 人 眼 の 金 屑 を な さ ん と す れ ど も 、 あ や ま る と い ふ 人 な し 。 あ は れ む べ し 、 万 事 の蹉
鉈
た る こ と か く の ご と き な る 。 も し 身 現 円 月 相 は 一輪
相 な り と 会 取 せ ば 、 真 箇 の 画 餅 一 枚 な り 。 弄 他 せ ん 、 笑 也 笑 殺 人 な る べ し 。 か な し む べ し 、 大 宋 一 国 の 在 家 出 家 、 い つ れ の 一 箇 も 竜 樹 の こ と ば を き か ず し ら ず 、 提 婆 の 道 を 通 ぜ ず み ざ る こ と 。 い は ん や 身 現 に 親 切 な ら ん や 。 円 月 に く ら し 、 満 月 を 虧闕
せ り 。 こ れ 稽 古 の お ろ そ か な る な り 、慕
古 い た ら ざ る な り 。 古 仏 新 仏 、 さ ら に 真 箇 の 身 現 に あ ふ て 、 画 餅 を 賞 翫 す る こ と な か れ 。 し る べ し 、 身 現 円 月 相 の 相 を 画 せ む に は 、 法 座 上 に 身 現 相 あ る べ し 。揚
眉瞬
目 そ れ 端直
な る べ し 。 皮 肉 骨 髄 正 法 眼 蔵 、 か な ら ず 兀 坐 す べ き な り 。 破 顔 微 笑 つ た は る べ し 、 作 仏 作 祖 す る が ゆ へ に 。 こ の 画 い ま だ 月 相 な ら ざ る に は 、 形 如 な し 、 説 法 せ ず 、 声 色 な し 、 用 辨 な き な り 。 も し 身 現 を も と め ば 、 円 月 相 を 図 す べ し 。 円 月 相 を 図 せ ば 、 円 月 相 を 図 す べ し 、 身 現 円 月 相 な る が ゆ へ に 。 円 月 相 を 画 せ む と き 、 満 月 相 を 図 す べ し 、満
月 相 を 現 ず べ し 。 し か あ る を 、 身 現 を 画 せ ず 、 円 ( 12 ) * 月 相 を 画 せ ず 、 満 月 相 を 画 せ ず 、 諸 仏 体 を 図 せ ず 、 以 表 を 体 せ ず 、 説 法 を 図 せ ず 、 い た づ ら に 画 餅 一 枚 を 図 す 。 用 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 二 〇 一Komazawa University 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 二 〇 二 ( 13 ) ( 14 ) ( 15 ) 什
歴
。 こ れ を 急 著 眼 看 せ む 、 た れ か 直 至 如 今 飽 不 飢 な ら む 。 月 は 円 形 な り 、 円 は 身現
な り 。 円 を 学 せ む に 、 一 枚 * ( 16 ) * ( 17 ) 銭 の ご と く 学 す る こ と な か れ 、 一 枚 餅 に 相 似 す る こ と な か れ 。 身 現 円 月 身 な り 、 形 如 満 月 形 な り 。 一 枚 銭 ・ 「 枚 餅 は 円 に 学 習 す べ し 。 予 、 雲遊
の そ の か み 、 大 宋 国 に い た る 。 嘉 定 十 六 年 癸 未 秋 の こ ろ 、 は じ め て 阿 育 王 山 広 利 禅 寺 に い た る 。 西 廊 の 壁 間 に 、 西 天 東 地 三 十 三祖
の 変 相 を 画 せ る を み る 。 こ の と き 領 覧 な し 。 の ち に 宝 慶 元 年 乙 酉 夏 安 居 の な か に か さ ね て い た る に 、 西 蜀 の 成 桂 知 客 と 廊 下 を 行 歩 す る つ い で に 、 予 、 知 客 に と ふ 、 「 這 箇 是 什 摩 変 相 。 」 知 客 い は く 、 「 竜 樹 身 現 円 月 相 。 」 か く 道 取 す る 顔 色 に鼻
孔 な し 、 声 裏 に 語 句 な し 。 予 い は く 、 「 真 箇 是 一 枚 画 餅 相 似 。 」 と き に 知 客 大 笑 す と い へ ど も 、 笑裏
無 刀 、 破 画 餅 不 得 な り 。 す な は ち 知 客 と 予 と 、 舎 利 殿 お よ び 六 殊 勝 地 等 に い た る あ ひ だ 、 数 番 挙 揚 す れ ど も 、 疑 著 す る に も お よ ば ず 。 お の つ か ら 下 語 す る 僧 侶 も 、 お ほ く 都 不 是 な り 。 予 い は く 、 「 堂 頭 に と ふ て み ん 。 」 と き に 堂 頭 は 大 光 和 尚 な り 。 知 客 い は く 、 「 他 無 鼻 孔 、 対 不 得 、 如 何 得知
。 」 ゆ へ に 光 老 に と は ず 。 恁 摩 道 取 す れ ど も 、 桂 兄 も 会 す べ か ら ず 、 聞 説 す る 皮 袋 も 道 取 せ る な し 。 前 後 の 粥 飯頭
、 み る に あ や し ま ず 、 あ ら た め な ほ さ ず 。 又 、 画 す る こ と う べ か ら ざ ら ん 法 は 、 す べ て 画 せ ざ る べ し 、 画 す べ く は 端 直 に 画 す べ し 。 し か あ る に 、 身 現 の 円 月 相 な る 、 か つ て 画 せ る な き な り 。 お ほ よ そ 仏 性 は 、 い ま の 慮 知 念 覚 な ら ん と 見 解 す る こ と さ め ざ る に よ り て 、 有 仏 性 の 道 に も 、 無 仏 性 の 道 に も 、 通 達 の 端 を 失 せ る が ご と く な り 。 道 取 す べ き と 学 習 す る も ま れ な り 。 し る べ し 、 こ の 疎 怠 は 癈 せ る に よ り て な り 。 諸 方 の 粥 飯 頭 、 す べ て 仏 性 と い ふ 道 得 を 、 一 生 い は ず し て や み ぬ る も あ ( 18 ) る な り 。 あ る い は 、 聴 教 の と も が ら 仏 性 を 談 ず 、 参禅
の 雲 衲 は い ふ べ か ら ず 。 か く の ご と く の や か ら は 、 真 箇 是 畜 生 な り 。 な に と い ふ 魔 黴 の 、 わ が 仏 如 来 の 道 に ま じ は り け が さ ん と す る ぞ 。 聴 教 と い ふ こ と の 仏 道 に あ る か 、 参 禅 と い ふ こ と の 仏 道 に あ る か 。 い ま だ 聴 教 ・ 参 禅 と い ふ こ と 、 仏 道 に は な し と し る べ し 。 Kom 三1z三1w三1 Umversrty 竜 樹一 段 如 γ 亠 乂 、 シ ル ヘ シ 、 真 箇 ノ 用 辨 ハ 声 色 ノ 即 現 ニ ア ラ ス 、 真 箇 ノ 説 法 ハ 無 其 形 也 云 云 、 打 任 テ ハ 説 法 ハ 三 業 ノ 内 口 業 ノ 能 ナ リ、 説 法 竜 樹 の 段 は 文 の 通 り で あ る 。 「 し る べ し 、 真 箇 の 用 辨 は 声 色 の 即 現 に あ ら ず 、 真 箇 の 説 法 は 無 其 形 な り 」 と あ る 。 普 通 一 般 に は 、 「 説 法 」 は 三 業 の 内 の 自 業 の は た ら き で あ る 。 「 説 法 」 は ま た 上 聖 が 下 位 に 受 け さ せ る 姿 で あ る 。 そ う で あ れKomazawa University
Kom 三1z三1wa Unlverslty
ハ 又 上 聖 ノ 下 位 ニ カ ゥ フ ラ シ ム ル 姿 也 、 然 者 尤 用 辨 モ 共 形 ア ル ヘ シ 、 今 文 違 二 普 通 ノ 存 知 → 但 真 実 ノ 説 法 ノ 道 理 必 用 辨 ア ル ヘ カ ラ ス 、 草 木 山 河綿 等 モ ナ ト カ 説 法 ノ 道 理 ヲ 背 カ ム 、 然 者 又 無 其 形 ナ ル 義 非 レ 可 レ 驚 、 尊 者 カ ツ テ 広 仏 性 ヲ 為 説 ス ル 不 可 数 量 也、 楚 一 隅 ヲ 略 挙 ス ル 也 云 云 、 実 竜 樹 ノ 一 代 仏 性 ヲ 為 説 シ 給 ツ ラ ム 、 サ タ リ ク ワ リ コ ソ ハ ア リ ツ ラ メ 、 千 部 ノ 為 二 論 師 → 広 大 ノ 為 ア ク ク 説 非 ノ 可 レ 疑、 略 二 挙 ( 一 三 八
b
) 一 隅 一 ト ハ 右 ノ ス ル ニ 所 ノ 載 之 詞 ヲ 指 也 、 汝 欲 見 仏 性 先 須 除 我 慢 ト コ ソ 為 説 ノ 宗 旨 ス コ サ ス 辨 肯 ス ヘ シ 云 云 、 打 任 テ 此 文 ヲ 心 得 ル ニ ハ 、 仏 性 ヲ 見 ト 思 ハ ハ 先 我 慢 ヲ 可 レ 除 、 慢 ト 云 ハ 凡 悩 也、 雲 ノ 月 ヲ 如 〆 覆 、 此 我 慢 ヲ 具 足 ス ル ユ ヘ ニ 不 γ 見 二 仏 性4 也 、 仍 此 慢 ヲ 除 ハ 見 ヘ シ ト 思 ヘ リ 、 是 邪 見 也 、 仏 性 ノ 義 タ ニ モ 談 シ 、 仏 性 ノ 道 理 タ ニ モ ア ラ ハ ル レ ハ 、 理 ト シ テ 除 我 慢 ノ 義 ア ラ ハ ル ル 也 、 喩 ヘ ハ 諸 悪 ヲ 莫 作 ト 談 セ シ カ 如 シ 、 故 見 ハ ナ キ ニ ァ ラ ス 、 ソ ノ 見 コ レ 除 我 慢 也 ト 文 、 所 詮 仏 性 ヲ 指 テ 除 我 慢 ト ハ 名 タ リ 、 汝 欲 見 仏 性 ノ 見 ハ ナ キ ニ ア ( = 二 九 a ) ラ ス 、 此 見 是 除 我 慢 也 ト 云、 此 見 ヲ 能 見 所 見 ノ 如 二 心 得 ル 邪 見 也 、 此 見 ヲ ヤ カ テ 仏 性 ト 心 得 ル 也 、 我 モ 非 γ 一 、 慢 モ 多 般 也 、 除 法 又 万 差 ナ ル ヘ シ ト ア リ 、 先 須 除 我 慢 ノ 我 、 先 須 除 我 慢 ノ 慢 、 先 須 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ば 、 当 然 「 用 辨 」 も 其 の 形 ( 其 形 ) が あ る は ず で あ る 。 こ こ の 文 は 、普
通 の 存 知 ( 知 る ) と は 違 う 。 し か し な が ら 、 真 実 の説
法 の 道 理 は 、 必 ず し も 「 用 辨 」 が あ る と は 限 ら な い 。 草 木 山 河 等 〔 の 無 情 〕 も 、 ど う し て 「 説 法 」 の 道 理 に 背 く で あ ろ う 。 〔 無 情 説 法 と い う こ と が あ る で は な い か 。 〕 そ う で あ る か ら 、 ま た 「 無 其 形 」 ( 其 の 形 無 し ) で あ る こ と は 驚 く べ き で は な い 。 「 尊 者 か つ て ひ ろ く 仏性
を 為 説 す る 、 不 可 数 量 な り 。 し ば ら く 一 隅 を 略 挙 す る な り 」 と あ る 。 実 に 竜 樹 の 一 代 は 、 「 仏 性 を 為 説 」 さ れ た と い う こ と で あ る が 、 き っ と そ う な の で あ ろ う 。千
部 の 論 師 で あ り 、 広 大 な る 「 為 説 」 は 疑 う べ き で は な い 。 「 一 隅 を 略 挙 」 と は 、 右 に載
せ る と こ ろ の こ と ば を 指 す の で あ る 。 「 汝 欲 見 仏 性 、 先 須 除 我 慢 と こ そ 為説
の 宗 旨 、 す ご さ ず 辨 肯 す べ し 」 と あ る 。 普 通 一 般 に こ の 文 を 理 解 す る に 、 「 『 仏 性 を 見 ん と お も は す べ か ら 欲 ば 、 先 づ 〔須
く 〕 我 慢 を 除 く べ し 。 』 『 慢 』 と 言 う の は 煩 悩 で あ る 。 雲 が 月 を 覆 う よ う に 、 こ の 『 我 慢 』 を 具 え て い る か ら 仏 性 を 見 な い の で あ る 。 そ こ で 、 こ の 『 慢 』 を 除 け ば 見 る こ と が で き る 」 と 思 っ て い る 。 こ れ は 邪 見 で あ る 。 せ め て 仏 性 の 意 味 だ け で も 説 き 、 仏 性 の道
理 だ け で も あ ら わ れ た ら 、 理 で も っ て 「 除 我慢
」 ( 19 ) の 意 味 が あ ら わ れ る の で あ る 。 例 え ば 、 諸 悪 を 莫 作 と 説 く よ う な も の で あ る 。 だ か ら 「 見 は な き に あ ら ず 、 そ の 見 こ れ 除 我 慢 な り 」 と 言 う の で あ る 。 結 局 、 「 仏 し 性 」 を 指 し て 「 除 我 慢 」 と 名 付 け た の で あ る 。 「 汝 欲 見 仏 性 」 の 「 見 は な き に あ ら ず 、 そ の 見 こ れ 除 我 慢 な り 」 と 言 う 。 こ の 「 見 」 を 、 能 見 ・ 所 見 の よ う に 理 解 す る の は 邪 見 で あ る 。 こ の 「 見 」 を そ の ま ま 「 仏 性 」 と 理 解 す る の で あ る 。 「 我 も ひ と つ に あ ら ず 、 慢 も 多 般 な り 、 除 法 ま た 万 差 な る べ し 」 と あ る 。 先須
除 我 慢 の 「 我 」 、 先 須 除 我 慢 の 「 慢 」 、 先 須 除 我 慢 の 「 除 」 、 こ れ ら は 皆 異 な る 法 と 理 解 し て は い け な い 。 た だ 仏 性 の 上 の 荘 厳 で あ る 。 だ か ら 、 「 見 」 も 「 我 」 も 「慢
」 二 〇 三Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 除 我 慢 ノ 除、 是 等 皆 各 各 法 ト 不 〆 可 二 心 得哨 只 仏 性 ノ 上 ノ 荘 厳 也 、 故 見 モ 我 モ 慢 モ 除 モ 皆 仏 ゲ ソ ト 性 ト 可 二 心 得 熟 故 是 等 皆 見 仏 性 ナ リ 、 眼 見 目 覩 ニ ナ ラ フ ヘ シ ト 文 、 眼 与 γ 目 ハ 只 同 物 也、 眼 二 見 ト 云 モ 、 目 二 覩 ト 云 モ 只 同 事 也 、 此 定 二 汝 欲 見 仏 性 先 須 除 我 慢 ノ 一 一 詞 一 一 義 皆 仏 性 也 ト 可 二 心 得 一 也 、 仏 心 性 非 〆 大 非 γ 小 尋 常 ノ 凡 夫 レ イ ニ 乗 二 例 諸 ス ル 事 ナ カ レ 、 ( 一 三 九
h
) 偏 枯 タ ク ワ ニ 仏 性 ハ 広 大 ナ ラ ム ト ノ ミ 思 ヘ ル 、 邪 念 ヲ 蓄 へ 来 ル ナ リ、 非 〆 大 非 γ 小 サ ラ ム 正 当 恁 麼 時 ノ ヶ イ ノ 道 取 二 里 礙 セ ラ レ ム 道 理 、 今 聴 取 ス ル カ 如 ク 思 且 里 ス ヘ キ ナ リ、 思 量 ナ ル 聴 取 ヲ 使 得 ス ル カ シ ヤ 故 、 シ ハ ラ ク 尊 者 ノ 道 著 ス ル 偈 ヲ 聞 取 ス ヘ シ 云 云 、 実 ニ モ 仏 性 ハ 只 大 ナ ラ ム ス ル ト ノ ミ 多 分 思 ヘ リ 、 仏 性 不 レ 可 〆 爾 、 大 三 ア ラ ス 小 ニ ア ラ サ ラ ム 正 当 恁 麼 時 ノ 道 取 二 里 嵩 呶 セ ラ レ ム 道 理 、 今 聴 取 ス ル カ 如 ク 思 量 ス ヘ シ ト ア ル ハ 、 大 小 ニ ア ラ サ ラ ム 時 ノ 道 取 二 塁 礙 セ ラ レ ム 道 理 、 今 聴 取 ス ル カ 如 ク ト ハ 、 非 大 非 小 詞 ヲ 聴 取 ス ル カ 如 ク 思 量 ス ヘ シ ト ハ ア ル 也 、 思 量 ナ ル 聴 取 ヲ ( 一 四 〇 a ) 使 得 ス ル カ 故 ニ ト ハ 、 此 非 大 非 小 正 当 恁 麼 時 ノ 道 取 ヲ 思 量 ノ 聴 取 ヲ 使 得 ス ヘ シ ト ナ リ 、 身 現 円 月 相 以 表 諸 仏 体 也、 ス テ ニ 諸 仏 体 ヲ 以 表 シ キ タ レ ル 身 現 ナ ル カ 故、 円 月 相 也 云 云 、 身 現 円 月 相 ト 云 ヘ ハ 、 マ ロ ク 二 〇 四 も 「 除 」 も 、 皆 仏 性 と 理 解 す べ き で あ る 。 だ か ら 、 「 こ れ ら み な 見 仏 性 な り 、 眼 見 目 覩 に な ら ふ ぺ し 」 と あ る 。 「 眼 」 と 「 目 」 と は 同 じ も の で あ る 。 眼 で 見 る ( 眼 見 ) と い う の も 、 目 で 覩 る ( 目 覩 ) と い う の も 同 じ こ と で あ る 。 こ の よ う に 、 「 汝 欲 見 仏 性 、 先 須 除 我 慢 」 の そ れ ぞ れ の こ と ば 、 そ れ ぞ れ の 意 味 は 、 皆 仏 性 で あ る と 理 解 す べ き で あ る 。 「 仏 性 非 大 非 小 〔 等 の 道 取 〕 、 よ の つ ね の 凡 夫 二乗
に 例 諸 す る こ と な か れ 。 偏 枯 に 仏 性 は 広 大 な ら む と の み お も へ る 、 邪 念 を た く わ へ き た る な り 。 大 に あ ら ず 小 に あ ら ざ ら む 正 当 恁 歴 時 の 道 取 に堊
礙 せ ら れ む 道 理 、 い ま 聴 取 す る が ご と く 思 量 す べ き な り 。 思 量 な る 聴 取 を 使 得 す る が ゆ へ に 、 し ば ら く 尊 者 の 道 著 す る 偈 を 聞 取 す べ し 」 と あ る 。 本 当 に 仏 性 は た だ 大 き い だ ろ う と の み 大 部 分 〔 の 者 は 〕 思 っ て い る 。 仏 性 は そ う で あ る は ず が な い 。 「 大 に あ ら ず 小 に あ ら ざ ら む 正 当 恁 歴 時 の 道 取 に 口 圭 礙 せ ら れ む 道 理 、 い ま 聴 取 す る が ご と く 思 量 す べ し 」 と あ る の は 、 大 小 で は な い と き の 「 道 取 に 回 圭 礙 せ ら れ む 道 理 、 い ま 聴 取 す る が ご と く 」 と 言 う こ と で あ り 、 そ れ だ か ら 、 「 非 大 非 小 」 の こ と ば を 「 聴 取 す る が ご と く 思量
す べ し 」 と あ る の で あ る 。 「 思 量 な る 聴 取 を 使 得 す る が ゆ へ に 」 と は 、 こ の 「大
に あ ら ず 小 に あ ら ざ ら む 正 当 恁 歴 時 の 道 取 」 を 、 〔 聴 取 す る が ご と く 思 量 し 〕 思 量 で あ る 聴 取 を 使 得 す べ き で あ る と い う の で あ る 。 「 身 現 円 月 相 、 以 表 諸 仏 体 な り 。 す で に 諸 仏 体 を 以 表 し き た れ る 身 現 な る が ゆ へ に 、 円 月 相 な り 」 と あ る 。 「 身 現 円 月 相 」 と 言 え ば 、 円 く 鏡 の よ う で あ る 身 を 現 さ れ る よ う に 理 解 す る が そ う で は な い 。 た だ 、 竜 樹 の 身 の 欠 け た と こ ろ が な く 、 無 辺 際 で あ る 姿 を 、 「 円 月 相 」 と 説 く の で あ る 。 「 以 表 諸 仏 体 」 ( 以 て 諸 仏 の 体 を 表 す ) と あ る が 、 「 以 表 」 と は 、 本 を お い て そ の 姿 に 相 似 で あ る の を 、普
通 一 般 に は 「 以 表 」 と 思 っ て い る 。 こ れ は 、 そ の こ と で は な い 。 「 諸 仏 体 」 を 「 以 表 」 と 名 付 け た の で あKomazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 鏡 ノ 如 ナ ル 身 ヲ 現 シ 給 様 二 心 得 ル 非 〆 爾 、 只 竜 樹 ノ 身 カ ケ タ ル 所 ナ ク 、 無 辺 際 ナ ル 姿 ヲ 円 月 相 ト ハ 談 ス ル ナ リ 、 以 表 諸 仏 体 ト ハ 、 以 表 ト ハ 本 ヲ 置 テ 其 姿 二 相 似 ナ ル ヲ 打 任 テ ハ 以 表 に ト ハ 思 ナ ラ ハ シ タ リ 、 是 ハ 非 二 其 儀 → 諸 仏 体 ヲ 以 表 ト ハ 名 タ リ 、 ヤ カ テ 竜 橦 ノ 竜 樹 ヲ 以 表 ス ト モ 可 二 心 得 嚇 又 竜 樹 諸 仏 体 ヲ ( 一 四 〇
b
) 以 表 ス ル 時 ハ 、 竜 樹 バ カ ク レ 、 諸 仏 体 ノ 竜 樹 ヲ 以 表 ス ル 時 ハ 、 諸 仏 体 ハ 蔵 身 ス ト モ 可 二 心 得 哨 又 シ カ ア レ ハ 、 一 切 ノ 長 短 方 円 、 コ ノ 身 現 二 学 習 ス ヘ シ ト 云 云 、 実 長 短 方 円 ノ 詞 ニ ハ ツ ラ イ 煩 テ 、 或 長 ク 或 短 ク 或 円 二 或 ヨ ホ ウ ナ ル ナ ム ト 云 凡 情 ヲ 止 テ 、 此 円 月 相 ノ 円 ヲ 心 得 ル 定 二 可 γ 学 ト ナ リ、 身 ト 現 ト ニ 転 疎 ナ ル ハ 、 円 月 相 ニ ク ラ キ 道 理 可 二 顕 然 → 又 愚 者 思 バ ク ハ ト テ 被 レ 釈 御 詞 如 ノ 文、 何 ノ 所 何 ノ 時 力 、 非 身 カ グ ル ケ ッ ノ 化 現 ナ ラ ム ト 云 云 、 竜 樹 ノ 虧 闕 ナ キ 道 理 ア キ ラ ケ シ 、 又 此 時 尊 者 ハ 高 座 セ ル ノ ミ 也 云 云 、 フ 普 通 二 思 ナ ラ ハ シ タ ル ( 一 四 一 a ) 円 月 相 ニ ア ラ サ ル 証 拠 顕 然 也、 又 身 現 ハ 方 円 二 非、 有 ヲ ア ケ ム ウ ン 無 二 非、 隠 顕 二 非 、 八 万 四 千 蘊 二 非 、 ロ バ 身 現 ナ リ ト 云 云 、 如 ノ 文 、 無 二 別 子 細 【 円 月 相 ト 云 、 ソ 這 裏 是 甚 麼 処 在 、 説 ノ 細 説 〆 庭 月 也 文 、 是 ハ 古 モ テ ア ソ フ ヲ キ 詞 也 、 祖 師 翫 ド 月 之 時、 如 レ 此 イ ヒ シ ナ リ、 所 詮 此 心 地 ハ 、 月 ト 談 ス ル 時 ハ 法 界 ノ 内 外 皆 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) る 。 ま さ に 、 竜 樹 が 竜 樹 を 「 以 表 」 す る と も 理 解 す べ き で あ る 。 ま た 、 竜 樹 が 「 諸 仏 体 」 を 「 以 表 」 す る と き は 、 竜 樹 は か く れ 、 「 諸 仏 体 」 が 竜 樹 を 「 以 表 」 す る と き は 、 「 諸 仏 体 」 は 蔵 身 す る ( か く れ る ) と も 理 解 す べ き で あ る 。 ま た 、 「 し か あ れ ば 、 一 切 の 長 短 方 円 、 こ の 身 現 に 学 習 す べ し 」 と あ る 。 本 当 に 、 「 長 短 方 円 」 の こ と ば に と ら わ れ て 、 或 い は 長 く 、 或 い は 短 く 、 或 い は 円 に 、 或 い は 方 形 で あ る な ど と 言 う 〔 が 、 そ の よ う な 〕 凡 夫 の 考 え を 止 め て 、 こ の 「 円 月 相 」 の 円 を 理 解 す る よ う に 学 ぷ べ き で あ る と 言 う の で あ る 。 「 身 と 現 と に 転 疎 な る は 、 円 月 相 に く ら き 」 道 理 は 顕 ら か な は ず で あ る 。 ま た 「 愚 者 お も は く 」 と 言 っ て 釈 か れ る お こ と ば は 、 文 の通
り で あ る 。 「 い つ れ の と こ ろ の い つ れ の と き か 、 非 身 の 化 現 な ら む 」 と あ る 。 〔 こ の 身 の ほ か に 、 変 化 身 が 別 に あ る の で は な い か ら 〕 竜 樹 の 虧 闕 が な い 道 理 は 明 ら か で あ る 。 ま た 「 こ の と き 尊 者 は高
座 せ る の み な り 」 と あ る 。 普 通 に い つ も 思 っ て い る 「 円 月 相 」 で は な い 証 拠 は顕
ら か で あ る 。 ま た 「 身現
は 方 円 に あ ら ず 、 有 無 に あ ら ず 、 隠顕
に あ ら ず 、 八 万 四 千 蘊 に あ ら ず 、 た だ 身現
な り 」 と あ る 。 文 の 通 り で あ る 。 特 に と り た て て 論 じ る こ と は な い 。 「 円 ( 20 ) 月 相 と い ふ 、 這 裏 是 甚 摩 処 在 、 説 細 説驫
月 ( 這 裏 是 れ 甚 麼 の 処 在 ぞ、 細 と 説 き 、 轟 と 説 く 月 ) な り 。 」 こ れ は 古 い こ と ば で あ る 。 祖 師 が 月 を め で る と き 、 こ の よ う に 言 っ た の で あ る 。 結 局 こ の 意 味 あ い は 、 月 と 説 く と き は 法 界 の内
外 が 皆 月 で あ る 。 月 で は な い 一 法 が あ る は ず が な い か ら 。 「 ど の よ う な と こ ろ を 細 と 説 き 、 驫 と 説 く の か 」 ( 這 裏 是 甚 麼 処 在 、 説 細 説 嶐 ) と 言 う の は 、 細 も 月 、 驫 も 月 で あ る 。 月 で は な い と こ ろ が な い 道 理 を 説 く こ と ば で あ る 。 「 円 月 相 」 の 意 味 は こ れ に 同 じ で あ る 。 「 こ の 身 現 は 先 須 除 我 慢 な る が ゆ へ に 竜 樹 に あ ら ず 、 諸 仏 体 な り 」 と あ る 。 こ の 「 身 現 」 の姿
を 「 先 須 除 我 」 と 言 う の で あ る か ら 、 こ の 時 、 仮 り に 「竜
樹
に 二 〇 五Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ニ 月 也 、 非 7 月 ル 一 法 不 ノ 可 γ 有 故 、 是 ハ 是 イ カ ト コ ロ ナ ル 所 ヲ サ イ ト ト キ ソ ト ト ク ト 云 ハ 、 細 モ ソ 月 靉 モ 月 ナ リ 、 非 ノ 月 所 ナ キ 道 理 ヲ 説 詞 也 、 円 月 相 義 同 〆 之 、 此 身 現 ハ 先 須 除 我 慢 ナ ル カ ニ 故 非 二 竜 樹剛 諸 ( 一 四 [
b
) 仏 体 也 云 云 、 此 身 現 ノ 姿 ヲ 先 須 除 我 ト 云 故、 此 時 ハ 鏨 非 二 竜 樹“ ト イ フ 道 理 ア ル ヘ シ、 是 只 諸 仏 体 也 、 又 竜 樹 ニ ア ラ ス 諸 仏 体 二 非 只 先 須 除 我 也 ト 云 道 理 モ テ ウ ア リ ヌ ヘ シ 、 又 以 表 ス ル カ 故 諸 仏 体 ヲ 透 脱 ス 、 シ カ ア ル ユ ヘ ニ 仏 辺 ニ カ カ バ レ ス ト 云 云 、 諸 仏 体 ヲ 透 脱 ス ト 云 ヘ ハ ト テ 、 竜 樹 諸 仏 二 勝 ル ト ハ 不 二 心 得 → 竜 樹 比 丘 形 ノ 菩 薩 ナ ル ト キ ハ 、 諸 仏 体 ヲ 透 脱 ス ト ハ 難 二 心 得 { 竜 樹 諸 仏 体 ヲ 以 表 ス ル ヲ、 シ ハ ラ ク 透 脱 ト ハ 云 歟、 非 二 勝 劣 之 儀嚇 所 詮 竜 樹 ハ 竜 樹 ヲ 透 脱 シ 諸 仏 体 ハ 諸 仏 体 ヲ 透 脱 ス ト モ 可 二 心 得 一 歟 、 此 道 理 ヲ 仏 辺 ニ カ カ バ レ ス ( 一 四 二 a ) ト ハ イ ハ ル ル ナ リ、 仏 辺 ニ カ カ バ レ ス ト ハ 、 正 辺 ノ ニ ヲ 置 テ 談 ス ル 儀 ニ テ ハ ア タ ル ヘ カ ラ ス 、 今 ノ 透 脱 ノ 義 、 仏 辺 ニ バ カ カ ハ ラ ヌ 義 也 、 又 仏 性 満 月 ヲ 形 如 コ ハ ィ レ ツ ス ル 虚 明 ア リ ト モ 、 円 月 相 ヲ 排 列 ス ル ニ 非 云 云、 是 ハ 仏 性 ノ 満 月 ア キ ラ カ 也 ト 云 ト モ ロ バ 円 フ 月 冖 相 マ ロ キ 姿 ヲ ナ ラ へ 置 タ ル 樫 怺 ニ ハ 不 γ 可 ン 有 ヘ ソ 也 ト 云 云 、 イ ハ ム ヤ 用 辨 モ 声 色 二 非 ス 、 身 現 五 緬 十 八 界 等 事 也、 シ ロ モ 色 心 二 非 ス 、 蘊 処 界 二 非 ト モ 文 、 是 則 円 月 二 〇 六 あ ら ず L と い う 道 理 が あ る は ず で あ る 。 こ れ は た だ 「 諸 仏 体 」 で あ る 。 ま た 、 「 竜 樹 に あ ら ず 、 諸 仏 体 に あ ら ず 、 た だ 先 須 除 我 な り 」 と 言 う道
理 も あ る に ち が い な い 。 ま た 、 「 以 表 す る が ゆ へ に 諸 仏 体 を 透 脱 す 。 し か あ る が ゆ へ に 仏 辺 に か か は れ ず 」 と あ る 。 「 諸 仏 体 を 透 脱 す 」 と 言 う か ら と 言 っ て 、 竜 樹 が 諸 仏 に 勝 る と は 理 解 し な い 。 竜 樹 が 比 丘 形 の 菩 薩 で あ る と き は 、 「 諸 仏 体 を 透 脱 す 」 と は 理 解 し 難 い 。 竜 樹 が 「 諸 仏 体 」 を 「 以 表 す る 」 の を 、 仮 り に 「 透 脱 」 と 言 う の か 。 勝 劣 の こ と で は な い 。 結 局 、 竜 樹 は 竜 樹 を 透 脱 し 、 諸 仏 体 は 諸 仏 体 を透
脱 す る と も 理 解 す べ き か 。 こ の 道 理 を 「 仏 辺 に か か は れ ず 」 と 言 わ れ る の で あ る 。 「 仏 辺 に か か は れ ず 」 と 言 う の は 、 正 と 辺 の 二 つ を お い て 説 く や り 方 で は あ た る は ず が な い 。 こ こ の 「 透 脱 」 の 意 味 は 、 仏 辺 に か か わ ら な い 意 味 で あ る 。 ま た 、 「 仏 性 の 満 月 を 形 如 す る 虚 明 あ り と も 、 円 月 相 を 排 列 す る に あ ら ず 」 と あ る 。 こ れ は 、 仏 性 が満
月 〔 の よ う に 〕 明 ら か で あ る と 言 っ て も 、 た だ 「 円 月 相 」 の 円 い姿
を 列 べ 置 い て あ る 様 子 で は あ る は ず が な い と 言 う の で あ る 。 「 い は ん や 用 辨 も 声 色 に あ ら ず 、 身 現 も 色 心 に あ ら ず 、 蘊 処 界 〈 五 蘊 十 八 界 等 の こ と で あ る 〉 に あ ら ず 」 と も あ る 。 こ れ が そ の ま ま 「 円 月 相 」 で あ る か ら 。 ま た 、 「 蘊 処 界 に 一 似 な り と い へ ど も 、 以表
な り 、 諸 仏 体 な り 。 こ れ 説 法 蘊 な り 、 そ れ 無 其 形 な り 。 無 其 形 さ ら に 無 相 三 味 な る と き 身現
な り 」 と あ る 。 こ れ は 、 「 以 表 な り 」 「 諸 仏 体 な り 」 「 説 法 蘊 な り 」 「 無 共 形 な り 」 「 無 相 三昧
な り 」 と 、 一 一 あ げ ら れ 、 こ れ ら が 「 蘊 処 界 」 等 にコ
似 L で あ る ( 全 く 似 て い る ) よ う で あ る が 、 そ う で は な い 理 由 を釈
か れ る の で あ る と 理 解 す べ き で あ る 。Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 相 ナ ル 故 、 又 蘊 処 界 一 二 似 也 ト 云 ヘ ト モ 、 以 表 ナ リ 、 諸 仏 体 也 、 コ レ 説 法 蘊 也 、 ソ レ 無 其 形 也 、 無 其 形 サ ラ ニ 無 相 三 ( 一 四 二
b
) 昧 ナ ル ト キ 身 現 也 云 云 、 是 ハ 以 表 ナ リ 、 諸 仏 体 也、 説 法 蘊 也 、 無 其 形 ナ リ 、 無 相 三 昧 也 ト 一 一 被 レ 挙 γ 之 、 是 等 体 処 界 等 二 一 似 ナ ル 様 ナ レ ト モ 、 ロ シ 不 F 爾 之 由 ヲ 被 レ 釈 也 ト 可 二 心 得「 ハ ウ 又 一 衆 今 円 月 相 ヲ 望 見 ス ト 云 ヘ ト モ 、 目 所 未 見 ナ ル ハ 説 法 蘊 ノ 転 機 也 、 現 自 在 身 ノ 非 声 色 ヲ ソ 也 、 即 隠 即 現 ハ 輪 相 ノ 進 歩 退 歩 也 云 云 、 一 衆 円 月 相 ヲ 望 見 ス ル ニ 、 目 所 未 見 ナ ル ハ 説 法 蘊 ノ 転 機 也 ト ハ 、 竜 樹 ノ 上 座 シ テ 説 法 シ 給 姿 力 、 目 所 未 見 ノ 道 理 ナ ル ナ リ、 竜 樹 ハ 高 座 シ 給 ヲ 大 衆 不 ( 一 四 三 a ) 見 ト ハ 不 〆 可 二 心 得 一 也 、 現 自 在 身 ノ 非 声 色 ト 云 ヘ ハ ト テ 、 不 思 議 ナ ル 身 ヲ 稻 尻 シ 給 ニ テ ハ ナ シ、 ロ ハ 亠 咼 座 説 法 ノ 姿 ヲ 怕 現 自 在 身 ト 名 タ リ 、 即 隠 即 現 ハ 、 輪 相 ノ 進 歩 退 歩 ト 云 ハ 、 打 任 テ ハ 竜 樹 高 座 説 法 ノ 姿 ハ 円 月 ロ ギ ヨ ウ ヘ ム 相 ニ テ 、 説 法 無 其 形 用 辨 非 声 色 ノ 文 ヲ 説 テ 後 カ ク キ ヤ ウ ハ 、 輪 相 ハ 隠 レ テ モ ト ノ 僧 形 ノ 竜 樹 ニ テ 坐 給 ヲ ト 心 得 也、 非 γ 爾、 只 以 二 竜 樹 説 法 僧 形 ノ 姿一 円 月 相 ト 談 上 ハ 、 高 座 へ 上、 高 座 ヨ リ 下 給 姿 ヲ 輪 相 ノ 進 歩 退 歩 ト 鏨 談 γ 之 也 、 又 復 於 座 上 現 自 在 身 刈 ノ 正 当 任 心 麼 時 ハ 、 「 切 衆 ム 買 、 唯 聞 法 立 日 ス ル 也 、 不 覩 師 相 也 云 云 、 ( 一 四 三b
) 是 ハ 竜 樹 ノ 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ま た 、 「 一 衆 い ま 円 月 相 を 望 見 す と い へ ど も 、 目 所 未 見 な る は 説 法蘊
の 転 機 な り 、 現 自 在 身 の 非 声 色 な り 。 即 隠 即 現 は 、 輪 相 の 進 歩 退 歩 な り 」 と あ る 。 「 一 衆 」 が 「 円 月 相 を 望 見 」 す る と き に 、 「 目 所 未 見 な る は 説 法 蘊 の 転 機 な り 」 と 言 う の は 、 竜 樹 が 座 に 上 っ て 説 法 さ れ る 姿 が 「 目 所 未 見 」 ( 目 に 未 だ 見 ざ る 所 ) の 道 理 な の で あ る 。 竜 樹 は 高 い と こ ろ に 座 っ て お ら れ る の に 、 大 衆 は 見 な い と は 理 解 す べ き で は な い の で あ る 。 「 現 自 在 身 の 非 声 色 」 と 言 う か ら と 言 っ て 、 不 思 議 な 身 を お 現 わ し に な る の で は な い 。 た だ 高 座 で 説 法 す る 姿 を 「 現 自 在 身 」 と 名 け た の で あ る 。 「 即 隠 即 現 は 、 輪 相 の 進 歩 退 歩 」 と 言 う の は 、 普通
一 般 に は 、 竜 樹 が 高 座 で 説 法 す る姿
は 円 月 相 で 、 「 説 法 無 其 形 、 用 辨 非 声 色 」 の 偈 文 を 説 い た 後 は 、輪
相 は 隠 れ て も と の 僧 形 の 竜 樹 に 戻 っ て お 坐 り に な っ て い る と 理 解 す る の で あ る 。 そ う で は な い 。 た だ 、 竜 樹 が 説 法 を 行 な う 僧 形 の姿
を 円 月 相 と 説 く か ら に は 、高
座 へ 上 っ た り 、 高 座 よ り 下 り た り さ れ る 姿 を 「 輪 相 の 進 歩 退 歩 」 と 仮 り に 説 く の で あ る 。 ま た 、 「 復 於 座 上 、 現 自 在 身 の 正 当 恁 歴 時 は 、 一 切 衆 会 、 唯 聞 法 音 す る な り 、 不覩
師 相 な り 」 と あ る 。 こ れ は 、 竜 樹 が 高 座 で 説 法 す る 姿 が 、 既 に 「 以表
諸 仏 体 」 で あ る 。 だ か ら 「 不 覩 師 相 」 ( 師 の 相 を 覩 ず ) の 道 理 で あ る 。 「 諸 仏 体 」 で あ る か ら に は 、 仮 り に 「 不 覩 師 相 」 と 説 く の か 。 こ の 次 の お こ と ば は 、 迦 那 提婆
二 〇 七Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 高 座 説 法 ノ 姿 已 以 表 諸 仏 体 也 、 故 不 覩 師 相 ノ 道 理 也 、 諸 仏 体 上 ハ 楚 不 覩 師 相 ト 談 歟 、 此 次 ノ 御 詞 迦 那 提 婆 ヲ 被 二 讃 嘆 一 御 詞 也 、 如 γ 文 、 又 全 座 ノ 分 座 ト 云 事 ハ 、 於 二 霊 山 一 摩 訶 迦 葉 釈 尊 ノ 法 座 へ 請 上 テ 相 竝 テ 座 給 シ 時 事 也 、 其 以 下 如 レ 文 、 又 天 上 人 問 大 干 法 界 二 流 布 セ ル 仏 法 ヲ 見 聞 セ ル 前 後 ノ 皮 袋 、 タ レ カ 道 取 セ ル 、 身 現 相 ハ 仏 性 也 ト 、 是 ハ 仏 性 ハ 理 具 ノ 法 也、 イ カ ニ モ 身 現 ヲ サ シ テ 仏 性 ヲ 談 ス ル 義 不 〆 可 〆 有 、 今 提 婆 ノ ミ 一 道 取 セ ル 所 ヲ 、 返 返 被 一 【 讃 嘆 一 ナ リ 、 余 者 ノ 仏 性 ヲ 談 ス ル 様 如 γ 文、 又 無 ハ ウ ( 一 四 四 a ) 相 三 昧 ノ 形 如 満 月 ナ ル ヲ 望 見 シ ノ ソ ム 礼 拝 ス ル ニ 、 目 未 所 覩 ナ リ 云 云 、 如 二 前 云 嚇 只 竜 樹 ノ 無 相 三 昧 形 如 満 月 ナ ル 道 理 力 目 未 所 覩 ト イ ハ ル ル 也 、 目 所 未 見 ノ 道 理 二 不 レ 可 ノ 違 也 、 ロ ク ワ ク シ カ ア レ ハ 、 身 現 ノ 説 仏 性 ナ ル 、 虚 明 也 、 廓 然 也 、 説 仏 性 ノ 身 現 ナ ル 、 以 表 諸 仏 体 也 、 イ ツ レ ノ 一 仏 二 仏 力 、 此 以 表 ヲ 仏 体 ト セ サ ラ ム 云 云 、 是 ハ 身 現 ノ 説 仏 性 虚 明 也 、 廓 然 也 、 説 仏 性 ノ 身 現 ナ ル 、 以 表 諸 仏 体 也 ト 云 ハ 、 ロ ハ 同 道 理 也 、 詞 ノ 前 後 シ タ ル 許 ナ リ、 所 詮 身 現 モ 説 仏 性 モ 以 表 諸 仏 体 モ 虚 明 モ 廓 然 ノ 義 モ ロ
2
テ ヲ 物 ナ リ 、 指 二 色 色 一 仏 性 ノ 理 ヲ ア ラ ハ ス ト 可 ニ レ 心 得「 何 ( 一 四 四b
) ノ 仏 力 、 此 以 表 ヲ 仏 体 セ サ ラ ム ト ハ 、 此 以 表 則 諸 仏 体 也 、 故 何 仏 モ 二 〇 八 を 讃 嘆 さ れ る お こ と ば で あ る 。 文 の 通 り で あ る 。 ま た 、 「 全 座 の 分 座 」 と い う こ と は 、 霊 鷲 山 で 摩 訶 迦 葉 が 、 釈 尊 の 法 座 へ 上 る こ と を 請 わ れ て 、 相 い 並 ん で 座 わ ( 21 ) ら れ た と き の こ と で あ る 。 そ れ 以 下 は 文 の 通 り で あ る 。 ま た 、 「 天 上 ・ 人 聞 、 大 千 法 界 に 流 布 せ る 仏 法 を 見 聞 せ る前
後 の 皮 袋 、 た れ か 道 取 せ る 、 身 現 相 は 仏 性 な り と 」 。 こ れ は 、 仏 性 は 理 と し て 具 え て い る 法 で あ る 。 決 し て 「 身 現 」 を さ し て 仏 性 を 説 く 道 理 が あ る は ず が な い 。 こ こ で は 、 提 婆 だ け が 道 取 す る と こ ろ を 、 繰 り 返 し 讃 嘆 さ れ る の で あ る 。 「 余 者 」 が 仏 性 を 説 く さ ま は 文 の 通 り で あ る 。 ま た 、 「 無 相 三 昧 の 形 如 満 月 な る を 望 見 し 礼 拝 す る に 、 目 未 所 覩 な り 」 と あ る 。 先 に 述 べ た よ う に 、 た だ 竜 樹 の 「 無 相 三 昧 」 の 形 が満
月 の 如 く で あ る 道 理 が 、 「 目 未 所 覩 」 と 言 わ れ る の で あ る 。 「 目 所 未 見 」 の 道 理 に 違 う は ず が な い の で あ る 。 「 し か あ れ ば 、 身 現 の 説 仏 性 な る 、 虚 明 な り 、廓
然 な り 。 説 仏 性 の 身 現 な る 、 以 表 諸 仏 体 な り 。 い つ れ の 一 仏 二 仏 か 、 こ の 以 表 を 仏 体 せ ざ ら む 」 と あ る 。 こ れ は 、 「 身 現 の 説 仏 性 〔 な る 〕 、 虚 明 な り 、 廓 然 な り 。 説 仏 性 の 身 現 な る 、 以 表 諸 仏 体 な り 」 と 言 う の は 、 た だ 同 じ 道 理 で あ る 。 〔 「 身 現 の 説 仏 性 」 と 「 説 仏 性 の 身 現 」 と 〕 こ と ば が 前 後 し た だ け で あ る 。 結 局 、 「 身 現 」 も 「 説 仏 性 」 も 「 以 表 諸 仏 体 」 も 「 虚 明 」 も 「 廓 然 」 の 意 味 も 、 た だ 一 つ の 物 で あ る 。 色 々 を 指 し て 仏 性 の 理 を 表 わ す と 理 解 す べ き で あ る 。 「 い つ れ の 〔 一 〕 仏 〔 二 仏 〕 か 、 こ の 以 表 を 仏 体 せ ざ ら む 」 と い う の は 、 こ の 「 以 表 」 が 即 ち 「 諸 仏 体 」 で あ る 。 だ か ら 「 い つ れ の 仏 」 も こ の 「 以 表 」 を 「 仏 体 」 と す る と 言 う の で あ る 。 ま た 、 「 仏 体 は 身 現 な り 、 身 現 な る 仏 性 あ り 。 四 大 五 蘊 と 道 取 し 会 取 す る 仏 量祖
量 も 、 か へ り て 身 現 の 造 次 な り 。 す で に 諸 仏 体 と い ふ 、 蘊 処 界 の か く の ご と く な る な り 」 と あ る 。 文 の 通 り で あ る 。 た だ 結 局 、 「 四 大 五 蘊 と 道 取 し 会 取 す る 仏 量 祖 量 も 」 、 皆 「 身 現 」 で あ る 。 「 蘊 処Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 此 以 表 ヲ 仏 体 ト セ リ ト ナ リ 、 又 仏 体 ハ 身 現 ナ リ 、 身 現 ナ ル 仏 性 ア リ 、 四 大 五 蘊 ト 道 取 シ 会 取 ス ル 仏 量 祖 量 モ 、 カ ヘ リ テ 身 現 ノ 造 次 也、 ス テ ニ 諸 仏 体 ト 云 フ 、 蘊 処 界 ノ カ ク ノ コ ト ク ナ ル ナ リ 云 云 、 如 γ 文、 只 所 詮 四 大 五 蘊 ト 道 取 シ 会 取 ス ル 仏 量 祖 量 モ 、 皆 身 現 ナ リ、 蘊 処 界 等 モ 諸 仏 体 也 ト 可 二 心 得 需 也 、 此 次 ハ 無 二 別 子 細 嚇 如 〆 文 可 二 心 得( 又 大 宋 国 昔 ヨ リ 此 因 縁 ヲ ワ ク グ ワ カ へ 画 セ ム ト ス ル ニ 、 身 二 画 シ 、 空 二 画 シ 、 壁 二 画 ス ル 事 ア タ ハ ス 、 イ タ ツ ラ ニ 筆 頭 二 画 ス ル ニ 、 ギ ヤ ウ ツ 法 ( 一 四 五 a ) 座 上 二 如 鏡 ナ ル 一 輪 相 ヲ 図 シ テ 、 今 竜 樹 ノ 身 現 円 月 相 ト セ リ 云 云 、 是 ハ 此 円 月 相 ヲ 図 セ ム ニ 、 身 ニ テ モ 心 ニ テ モ 画 シ 、 ソ 空 ニ モ 壁 ニ モ 何 不 レ 被 ゾ 画 、 只 筆 頭 ニ テ 座 上 二 如 鏡 ナ ル 一 輪 相 ヲ 図 シ テ 、 今 竜 樹 ノ 円 月 相 ト キ ソ セ ツ ス ル 事 ヲ 被 レ 嫌 也 、 已 下 如 〆 文、 金 屑 ト ハ 金 ノ ス リ ク ツ 也 、 金 ハ ユ ユ シ キ 重 宝 ナ レ ト モ 、 ス ヵ タ シ タ ニ リ ク ツ ヲ 目 二 入 ヌ レ ハ 難 〆 堪、 其 喩 也 、 此 次 又 如 レ 文 、 返 返 モ 円 月 相 ト 云 二 付 テ 画 餅 一 枚 ヲ 図 シ タ ル 事 ヲ 被 レ 嫌 也 、 此 次 如 F 文、 シ ル ヘ シ 、 身 現 円 月 相 ノ 相 ヲ 画 セ ム ニ ハ 、 法 座 上 ニ タ ソ チ キ 身 現 相 ア ル ヘ シ 、 揚 眉 瞬 目 ソ レ 端 直 ナ ル ( 一 四 五
b
) ヘ シ 、 皮 肉 骨 髄 正 法 眼 蔵 、 必 兀 座 ス ヘ キ ナ リ 、 破 顔 微 笑 ツ タ ハ ル ヘ シ 、 作 仏 作 祖 タ ワ ス ル カ ユ ヘ ニ 、 コ ノ 画 未 月 相 ナ ラ サ ル ニ ハ 、 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 界 」 等 も 「 諸 仏 体 」 で あ る と 理 解 す べ き で あ る 。 こ の 次 は 、 別 に と り た て て 論 じ る こ と は な い 。 文 の 通 り に 理 解 す べ き で あ る 。 ま た 、 「 大 宋 国 む か し よ り こ の 因縁
を 画 せ む と す る に 、 身 に 画 し 、 〔 心 に 画 し 〕 、 空 に 画 し 、 壁 に 画 す る こ と あ た は ず 、 い た づ ら に 筆 頭 に 画 す る に 、 法 座 上 に 如 鏡 な る 一 輪 相 を 図 し て 、 い ま 竜 樹 の 身 現 円 月 相 と せ り 」 と あ る 。 こ れ は 、 こ の 円 月 相 を 画 こ う と す る の に 、 身 で も 、 心 で も 画 く の に 、 空 に も 壁 に も ど う し て 画 く こ と が で き な い の か 。 た だ 「 筆 頭 」 ( 筆 の 先 ) で 「 〔 法 〕 座 上 に 如 鏡 な る 一 輪 相 を 図 し て 、 い ま 竜 樹 の 〔 身 現 〕 円 月 相 」 と す る こ と を 斥 け ら れ る の で あ る 。 以 下 は 文 の 通 り 。 「 金 屑 」 と は 金 の す り 屑 で あ る 。 金 は す ば ら し い 重 宝 で あ る け れ ど も 、 す り屑
を 目 に 入 れ た と す る と 堪 え 難 い 。 そ の 喩 で あ る 。 こ の 次 も ま た 文 の 通 り 。 繰 り 返 し 円 月 相 と い う こ と に 関 し て 、 画 餅 一 枚 を 画 い た こ と を 斥 け ら れ る の で あ る 。 こ の 次 は 文 の 通 り 。 「 し る べ し 、 身 現 円 月 相 の 相 を 画 せ む に は 、 法 座 上 に 身 現 相 あ る べ し 。 揚 眉 瞬 目 そ れ 端 直 な る べ し 。 皮 肉 骨 髄 正 法 眼 蔵 、 か な ら ず 兀 坐 す べ き な り 。 破 顔 微 笑 つ た は る べ し 、 作 仏 作祖
す る が ゆ へ に 。 こ の 画 い ま だ 月 相 な ら ざ る に は 、 形 如 な し 、 説 法 せ ず 、 声 色 な し 、 用 辨 な き な り 」 と あ る 。 こ れ は 、 「 身 現 円 月 相 」 を 図 と し て 描 く と き に 、 た だ 法 座 上 に竜
樹 を 画 く べ き で あ る 。 こ れ に 「 揚 眉 瞬 目 」 も 、 「 皮 肉 骨 髄 正 法 眼 蔵 」 さ ら に 「 破 顔 微 笑 」 等 も 皆 具 わ り 、 か く れ る と こ ろ が な く 完 全 で あ る と い う 〔 こ と を 述 べ た 〕 こ と ば で あ る 。 ま た 、 「 月 相 な ら ざ る に は 、 形 如 な し 、 説 法 せ ず 、声
色 な し 、 用 辨 な き な り 」 と あ る 。 こ れ は 、 こ の 「 画 餅 一 枚 」 の 「 円 月 相 」 を 図 と し て 描 く と き に は 、 「 形 如 」 も 「 説 法 」 も 、 さ ら に 「 声 色 」 「 用 辨 」 等 も 具 わ っ て お ら ず 、 欠 け て い て 役 に 立 た な い も の で あ る と 斥 け ら れ る の で あ る 。 ま た 「身
現 を も と め ば 、 円 月 相 を 図 す べ し 」 と あ る 。 こ れ は と り た て て 論 じ る こ と は な い 。 実 に そ の 理 由 二 〇 九Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) キ ヤ ウ 形 如 ナ シ 、 説 法 セ ス 、 声 色 ナ シ 、 用 辨 ナ キ 也 云 云、 是 ハ 身 現 円 月 相 ヲ 図 ス ル ニ 、 只 法 座 上 二 竜 樹 ヲ 画 ス ヘ シ、 是 二 揚 眉 瞬 目 モ 、 皮 肉 骨 髄 正 法 眼 蔵、 乃 至 破 顔 微 笑 等 皆 ソ ナ ハ リ 、 カ ク ル 所 ナ ク 満 足 ス ル 也 ト 云 詞 也 、 又 月 相 ナ ラ サ ル ニ ハ 、 形 如 ナ シ 、 説 法 セ ス 、 士 尸 色 ナ シ 、 用 辨 ナ キ 也 云 云、 是 ハ 此 画 餅 一 枚 ノ 円 月 相 ヲ 図 ス ル ニ ハ 、 形 如 モ 、 説 法 、 乃 至 声 色、 用 辨 等 モ 不 二 具 足 一 カ ケ タ ル イ タ ( 一 四 六 a ) ツ ラ 物 也 ト 被 〆 嫌 ナ リ、 又 身 現 ヲ 求 メ ハ 、 円 月 相 ヲ 図 ス ヘ シ ト 云 云、 是 ハ 無 二 子 細 剛 実 有 二 其 謂 剛 円 月 相 ヲ 図 セ ハ 、 円 月 相 ヲ 図 ス ヘ シ ト 云 云 、 是 ハ 只 仏 性 ヲ 図 セ ハ 仏 性 ヲ 図 ス ヘ シ 、 竜 樹 ヲ 図 セ ハ 竜 樹 ヲ 図 ス ヘ シ ト 云 程 ノ 道 理 ナ リ 、 又 円 月 相 ヲ 画 セ ム ト キ 、 満 月 相 ヲ 図 ス ヘ シ 、 満 月 相 ヲ 現 ス ヘ シ ト 云 云 、 是 又 同 二 上 道 理 一 歟、 又 シ カ ア ル ヲ 、 身 現 ヲ 画 セ ス 、 円 月 相 ヲ 画 セ ス 、 満 月 相 ヲ 画 セ ス 、 諸 仏 体 ヲ 図 セ ス 、 以 表 タ イ ク ワ ヲ 体 セ ス、 説 法 ヲ 図 セ ス 、 イ タ ツ ラ ニ 画 餅 一 ヤ イ 枚 ヲ 図 ス 、 用 什 麼 云 云、 是 ハ 竜 樹 ノ 姿 ヲ ア ラ バ サ ス シ テ ハ 如 二 晶 朋 云 「 円 目 ’ 相 モ 満 月 相 モ 、 ( 一 四 六
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) 諸 仏 冖 体 乃 至 以 表 説 法 竺 寸 ヲ 図 セ ス 、 イ タ ツ ラ ナ ル マ ロ キ 画 餅 一 枚 図 シ テ ハ 、 ナ ニ ノ 用 カ ア ラ ム ト 云 釈 也 、 竜 樹 兀 坐 ノ 姿 二 、 右 二 所 説 ノ 道 理 ハ 皆 具 足 シ タ ソ ト 云 心 地 也、 是 二 一 〇 が あ る 。 「 円 月 相 を 図 せ ば 、 円 月 相 を 図 す べ し 」 と あ る 。 こ れ は 、 た だ 、 も し 仏 性 を 図 と し て 描 く な ら ば 、 仏 性 を 図 と し て 描 く べ き で あ る 。 も し 竜 樹 を 図 と し て 描 く な ら ば 、 竜 樹 を 図 と し て 描 く べ き で あ る と い う く ら い の 道 理 で あ る 。 ま た 、 「 円 月 相 を 画 せ む と き 、 満 月 相 を 図 す べ し 、 満 月 相 を 現 ず べ し 」 と あ る 。 こ れ も 乙 た 上 の 道 理 に 同 じ か 。 ま た 、 「 し か あ る を 、 身 現 を 画 せ ず 、 円 月 相 を 画 せ ず 、 満 月 相 を 画 せ ず 、 諸 仏 体 を 図 せ ず 、 以 表 を 体 せ ず 、 説 法 を 図 せ ず 、 い た づ ら に 画 餠 一 枚 を 図 す 。 用 什 歴 」 と あ る 。 こ れ は 、 竜 樹 の 姿 を 〔 画 き 〕 あ ら わ さ な い で は 、 先 に 言 っ た よ う に 、 「 円 月 相 」 も 「 満 月 相 」 も 「 諸 仏 体 」 も 、 さ ら に 「 以 表 」 「 説 法 」 等 を も 図 と し て 描 い て い な い 。 役 に 立 た な い 円 い 「 画 餅 一 枚 」 を 図 と し て 描 い て 、 な ん の 用 が あ ろ う ( 用 什 癒 ) と 言 う 釈 で あ る 。 竜 樹 の 兀 坐 の 姿 に 、 右 に 説 く と こ ろ の 道 理 は 、 皆 充 分 に 具 わ っ て い る と い う 意 味 あ い で あ る 。 「 こ れ を 急 著 眼 〔 看 〕 せ む 、 た れ か 直 至 如 今 飽 不 飢 な ら む 」 と は 、 こ う い う 役 に 立 た な い 月 輪 を 看 て 、 こ れ を 信 じ る 者 を 、 誰 が こ れ を 満 足 し て い る と 言 お う と 、 言 う の で あ る 。 「 直 至 ( 22 ) 如 今 飽 不 飢 」 ( 直 に 如 今 に 至 る ま で 飽 き て 飢 え ず ) は 、 香 厳 智 閑 の 悟 道 の こ と ば で あ る 。 「 月 は 円 形 な り 、 円 は 身 現 な り 」 と あ る 。 「 月 」 は 全 く 欠 け る こ と な く 完 全 で あ る 姿 を 言 う 。 い わ ゆ る 、 竜 樹 が 兀 坐 し て い る 姿 で あ る 。 こ れ を 「 月 は 円 形 な り 」 ( 16 ) と 言 う 。 「 円 」 は ま た 「 身 現 」 の 姿 で あ る 。 円 を 学 ぶ の に 、 「 一 枚 銭 の ご と く 学 す る こ と な か れ 」 と 斥 け ら れ る の で あ る 。 ま た 、 「 身 現 円 月 身 な り 、 形 如 満 月 形 な り 」 と は 、 竜 樹 が 兀 坐 し て い る 姿 を 指 す の で あ る 。 「 一 枚 餅 」 二 校 銭 」 の 「 円 」 も 、 「 身 現 円 月 相 」 の 「 円 」 に 学 ぷ べ き と 言 う の で あ る 。 「 予 、 雲 遊 」 以 下 の お こ と ば は 文 の 通 り で 、 と り た て て 論 じ る こ と も な い 。Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty チ シ バ ケ キ ヲ 急 著 眼 セ ム 、 タ レ カ 直 至 如 今 飽 不 飢 ナ ラ ム ト ハ 、 カ カ ル イ タ ツ ラ ナ ル 月 輪 ヲ ミ テ、 是 ヲ 信 セ ム モ ノ ヲ ハ 、 誰 力 是 ヲ 満 足 シ タ リ ト ハ 云 ギ ヤ ウ ケ ソ ハ ム ト ナ リ 、 直 至 如 今 飽 不 飢 ハ 香 厳 ノ 悟 道 ノ 詞 ナ リ 文 、 月 ハ 円 形 ナ リ 、 円 ハ 身 現 也 云 云 、 月 虧 闕 イ
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ル ハ ロ ハ キ ケ ツ ナ ク 濡冖 足 シ タ ル 姿 ヲ 云 フ 、 所 謂 竜 樹 兀 坐 ノ 姿 也 、 是 ヲ 月 ハ 円 形 也 ト 云 、 ( 一 四 七 a ) 円 ハ 又 身 現 ノ 姿 ナ リ 、 円 ヲ 学 セ ム ニ 、 ( 16 ) 一 枚 餅 ノ 如 ク 学 ス ル 事 ナ カ レ ト 被 F 嫌 也、 又 身 現 円 月 身 也、 形 如 満 月 形 也 ト ハ 、 竜 樹 兀 坐 ノ 姿 ヲ 指 ナ リ、 一 枚 餅 二 枚 銭 ノ 円 モ 身 現 円 月 相 ノ 円 二 学 ス ヘ シ ト ナ リ 、 予 雲 遊 已 下 御 詞 如 ノ 文 無一 一 子 細 噛 又 シ カ ア ル ニ 身 現 ノ 円 月 相 ナ ル 、 カ ツ テ 画 セ ル ナ キ 也 云 云 、 是 ハ 身 現 円 月 相 ナ ル ヲ 画 シ タ ル 事 イ マ タ ナ キ 也 ト 云 ナ リ、 其 己 下 又 如 γ 文、 チ ヤ ウ ケ ウ 或 聴 教 ノ 輩 談 二 仏 性 戯 参 禅 ノ 雲 衲 不 〆 可 γ 云 ト 云 ハ 、 教 家 ニ コ ソ 仏 性 ト 云 事 ヲ ハ 談 ス レ 、 禅 ヤ カ ラ 門 ニ ハ ( 一 四 七b
) 不 レ 可 レ 云 ト 云 族 ラ 有 歟 、 仏 法 ハ 一 法 也、 更 教 禅 ノ 差 別 不 レ 可 レ 有 、 仏 在 世 ニ モ 全 ク 教 ソ 禅 ソ ト タ テ ワ カ チ タ ル 事 無 レ 之 、 初 祖 震 旦 へ 渡 給 テ 面 壁 九 年 シ テ 坐 禅 シ 給 タ リ シ ヲ 、 壁 観 バ ラ 門 ト 名 ケ、 又 坐 禅 ノ 禅 シ カ シ ナ ヵ リ ノ 一 字 ヲ 呼 出 テ 号 二 禅 宗 → 是 併 人 師 ノ 詞 也、 不 γ 可 レ 然 、 仍 聴 教 参 禅 ト 云 事 、 仏 道 ニ ハ ナ シ 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ま た 、 「 し か あ る に 、 身現
の 円 月 相 な る 、 か つ て 画 せ る な き な り 」 と あ る 。 こ れ は 、 「 身 現 円 月 相 」 で あ る の を 画 い た こ と が ま だ な い の で あ る と 言 う の で あ る 。 そ れ 以 下 は 、 ま た 文 の 通 り 。 「 あ る い は 、 聴 教 の と も が ら 仏 性 を 談 ず 、 参 禅 の 雲 衲 は い ふ べ か ら ず 」 と 言 う の は 、 「 教 家 で は 仏 性 と い う こ と を 説 く 。 禅 門 で は 言 う は ず が な い 」 と い う 族 が い る の か 。 仏 法 は 一 法 で あ る 。 決 し て 教 と 禅 の 区 別 が あ る は ず が な い 。 仏 在 世 で も 、 決 し て 教 だ 禅 だ と た て て 分 け た こ と は な い 。 「 初 祖 が 中 国 に 来 ら れ て 、 面 壁 九 年 し て 坐禅
さ れ た こ と を 壁 観 婆 羅 門 と 名 づ け 、 ま た 、 坐 禅 の 禅 の 一 字 を 取 り 出 し て禅
宗 と 号 す る 。 」 こ れ は 、 し か し な が ら 〔 仏祖
の こ と ば で は な く 〕 入 師 の こ と ば で あ る 。 そ う で あ る は ず が な い 。 し た が っ て 、 「 聴 教 ・参
禅 と い ふ こ と 、 仏道
に は な し 」 と 斥 け ら れ る の で あ る 。 一 二 一Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 囗 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ト キ ラ ハ ル ル ナ リ 、 尊 者 復 於 坐 上 現 自 在 身 ト 云 、 是 ハ 皮 肉 骨 髄 仏 性 也 ト 云 也 、 如 満 月 輪 ト ハ 、 カ ク ル 所 ナ キ 故 ナ リ、 月 ノ 如 ク ニ ( 一 四 八 a ) イ タ ツ ラ ニ 円 ナ ル ト ト カ バ 、 非 円 非 方 ト イ フ ヘ カ ラ ス 、 ト 一 切 衆 会 唯 聞 法 音 、 不 覩 師 相 ト 云 、 我 声 許 ヲ 以 テ 法 音 ト ハ 難 レ 云 、 仍 仏 性 義 ヲ 法 音 ト イ ヒ 、 師 相 ヲ 不 見 ト 云 ハ 、 ス テ ニ 現 仏 性 ナ レ ハ 、 師 相 ハ 不 見 ナ リ 、 偈 日 、 身 現 円 月 相 以 表 諸 仏 体 説 法 無 其 形 用 辨 非 声 色 チ ゥ ス 身 現 円 月 相 、 奥 委 注 也 、 以 表 諸 仏 体 ト 云 ハ 、 テ ウ ト ツ 解 脱 ヲ 云 歟 、 超 脱 ス ル 義 也、 説 法 無 其 形 ト 云 シ ン コ ハ 、 コ ノ 無 、 世 間 ノ 無 ニ ア ラ サ ル ヘ シ、 真 箇 ノ 説 法 ハ タ タ 無 其 ( 一 四 八