金沢大 学十 全 医学 会 雑 誌 第1 0 1巻 第2 号 21 ト 22 6 (1 99 2)
大腸 腫 瘍に おけ る K ‑r a S 遺 伝 子の点 突然変異と 腫瘍細 胞増殖 能に 関する臨床病理学 的研 究
金 沢 大 学 医 学 部病理学 第 一講 座 ( 主 任: 中西功 夫 教授)
田 中 松 平
( 平 成4年1 月2 2 日受付)
2 11
5 9症 例の大 腸 腫 瘍 ( 癌5 3病 変, 腺 塵2 1病 変) につい てポ リメ ラ ー ゼ ・ チ ェ
ー ソ反応 (polym ela s echain r e a ctio n, P C R) お よ び ドッ ト プロ ットハイ プリダ イゼ ー ショ ン法を用い て Kィ a s 癌 遺 伝 子の1 2,1 3 お よ び 61 コ ドンの点 突 然変 異の有 無を検 索し た・ ま た抗増 殖 細 胞 核 抗 原 (pr olife r ating c ell n u cle a r a ntige n・ P C N A)/サイク リソ(cyclin) モノ クロ ー ナル抗体 (1 9 A 2) を用
い て組織 学 的に腫 瘍 細 胞の標 識 率を算 出し, 腫瘍の増 殖 能を評価した・ 癌では4 2症 例 中1 2症 例 (2 8.6%) に1 2 コ ドンあるい は 1 3コ ドンに点 突 然 変 異を, 腺 腫では1 5症 例 中3 症 例(2 0・0% ) に同 じく1 2 コドンあるいほ1 3 コドンに点 突 然変 異を認め た. 対照 正常 粘膜には点 突 然 変 異を認め な かった・ P C N A/サイク リン標 識 率ほ胤 腺 鷹で そ れぞれ 57.1 ±11.0% ,5 5.0±1 0.0% であっ
た・ これらの値は 正常粘 膜 (4 6・0 ± 6・6% ) に比べて有 意に高か った(p <0・0 5; p < 0・01 )・ Kィ a s 点突 然変 異の有 無と臨 床 病理学 的な検討でほ ‥点 突然 変異陽 性群は陰性 群に比べて年齢が高 く(p <0 ・0 5), ま た, 静 脈 侵襲の頻度が高かった ( 5/1 2対1/3 0,
p <0・0 0 5)L 癌における P C N A/サイクリン標 識 率と臨 床 病理学 的 検 討では, 左 半 結 腸に発 生し た癌の標 識 率は他の部 位に比べ
て有 意に高か った(p <0・0 5)・ 分化 度の低 下と問 質への浸 潤 度の増 加につれ て P C N A/サイクリン標 識率が高くな る という傾 向 が み られ た(p< 0・0 5)・ 大腸 癌におい ては, K‑r a S 点突 然 変 異と P C N A/ サイク リ ン標 識 率との間に統 計 学 的な相 関は な か っ
た・ む し ろ, K‑r a S 点 突然 変 異と静 脈 侵 襲, 細 胞増 殖 活 性と問 質への浸 潤, と そ れぞれ別 個の因子 と して癌の進展に関 与し てい るものと思われ, これ ら は独立 し た 予後因 子にな りうる と考え ら れ た.
K ey w o rds Krr a s point m utation, prOlife r atio n rate, pr Olifer ating c ell n u cle a r antige n/cyclin,
Clinic opathologic al a n alysis, C Olo r ectal c a r T C e r a nd ade n o m a
大腸 癌は, 現 在まで のところ, 少なくとも3 段階の進 展 過 程 を経て発 生 する と考え ら れて い る. すな わ ち, まず 最 初に大腸 粘膜上皮の局所 的な増 生が おこりょ 小さ な腺 管 腺 腫が発 生 す る・ 次いで, そのな かで強い異常 増 殖 能を獲 得し た腺 腫は増 大 し, 異 型 性 も増し てくる. そ して, 最 終 的には, 周囲組 織への 破壊・ 浸 潤 性増 殖お よ び遠 隔 転移とい った癌の性 格を有する腰 掛こな る というものである (腺腫¶癌 相 関)l ) 2 ). 最 乱 大腸 癌 発 生過 程にお け る種々 の遺 伝 子の異常に関 する研 究が急 速に進 行 し, 癌 発 生の分 子機 構が 明 ら かにさ れつ つある. な かでも 癌 遺
伝子の ‑ つである K‑r a S 遺伝 子の点 突 然 変 異が高率に大 腸 癌で
証明 さ れて注目 をあび た … . こ の点突 然 変 異は,癌 発 生 過 程の 第2 段 階, すな わ ち腺 魔の時期に生 ずる と報 告さ れて いる4}.
培養細 胞へ の ヒ ト癌 遺 伝 子の D N A の導入 や動 物 実 験な どの
r a s 遺伝 子 産 物に関 する研 究か ら, 変 異r a s 遺 伝子によ って
コ ー ド さ れ る変 異r a s 蛋 白は細胞 増 殖のシ グナ ル伝達を促し, 細胞の異 常 増 殖を引 き起こすこと が わ か って い るの で6 ), 大 腸
腺脛における K‑r a S 遺 伝子の変 異は, 腺 腰の発 育を促 進し, 癌
発生に 一役を担っている と考えられて いる7 ). し か し, K‑r a S 遺
伝 子の変 異を生ずることによ り, 実 際に大 腸 腫 瘍のどの時 期
に, どの程度の細 胞 増殖 率が増し ト腫瘍の進 展や生 物 学 的態 度
に影 響を与え るのかについ て の臨床 医学にお け る研 究はなさ れ て いない.
本 研 究では, 大腸 腫 瘍にお け る K‑r a S 遺 伝子の点 突 然 変異の 有 無と腫 瘍 細 胞の増 殖 率に着目 し, 両者の関 連につい て臨床 病 理学 的 事項を含めて解 析し, さ らに臨床 的に予後 決 定因 子 と な り う る か ど う か を統 計学 的に検 討し た.
対象お よび方法
1 . 対 象
1 9 90年6月か ら1 9 9 1年4月まで に小 松 市 民病 院 外 科▲ 有松 中 央 病 院外 科お よ び 石川 済生 会 病 院で経 内 視 鏡 的 あるいは手術 的
に切 除さ れ た大腸 腫 瘍5 9症 例, 7 4病 変を対 象と した( 蓑1 ). 男 性3 3例, 女 性2 6例で, 腺 腰21病変, 早 期 大 腸癌1 1病 変, 進 行 大 腸 癌4 2病 変であった. 腺 鷹お よ び早 期 癌ともに平 坦 型 あるいほ 隋 凹 型 腫 瘍は な か っ た. 1 症 例に複 数 腫 瘍を認め たものは
K‑r a S 点 突 然 変 異を認め た症 例を代表 として選び, 1症 例1 病
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