弘前大学教育学部紀要 第
93号 :
97‑106(2005年
3月)
Bull.Fac.Educ.HirosakiUniv.93:97‑106(Mar.2005)
養護教諭の行 う創傷処置に関する研究
‑閉鎖療法の導入に向けて‑
97
AS t u d yo nWo u ndMa n a g e me n tAc h i e v e db yYo g oTe a c he r
‑To I nt r o d uc eOc c l us i v eDr e s s i ngTe c hm iq ue ‑
葛西 敦子
*1・赤木 光子
*2・船水 郁里
*3・ 藤原 立子
*5・浅利 恵子
*6・新谷ますみ
*7・ 津 田 栄子
*9・菊地美和子
*10・林 真麻
*11・
奈良岡 明
*14・福 田 朋子
*15・渡遵 祐子
*16・
AtsukoKASAl *1 ・MitsukoAM *2 ・IkuriFUNEMIZU*3 TatsukoFUJIWARA * 5
IKeikoASARI*6 ・MasumiARAYA*7EikoSAWADA*9 ・MiwakoKIKUCH I*
1 0
・MaoIiAYASHI*11内山 陽子
*4・佐藤 玲奈
*5菊池 圭子
*8・三上久仁子
*8金谷 香子
*12・小野富美子
*13小玉 有子
*17・ 天野 敦子
*1・YokoUCHIYAMA*4・RenaSATO*5 IKeikoKIKUCHI*8 ・KunikoMIKAMI*8
・KokoKANEYA*12 ・FumikoONO*13 AkiNARAOKA*14 ・TomokoFUKUDA*15IYukoWATANABE*16
・
ArikoKODAMA*17 IAtsukoAMANO*1要 旨
従来,創傷処置 は消毒す る ・乾燥 させ る ことを原則 として行われて きた。 ところが, 医療 の場 において消 毒 しない ・乾燥 させ ない 『閉鎖療法』が行われ るよ うになった。 この ことは養護教諭 に とって学校現場 での 創傷処置 の見直 しを迫 られ るものであった。そ こで 「傷 の治 り方 の基礎知識」講演会 に参加 したA県 内養護 教諭お よび養護助教諭 を対象 に創傷処置 に関 してのアンケー トを実施 し156名の有効 回答があ り,以下の結果
*1弘前大学教育学部教育保健講座
DepartmentofSchoolHealthScience,FacultyofEducation,HirosakiUmiversity
*2青森県立青森第二高等養護学校
AomoriPrefecturalAomoriSecondHighSchoolforStudentswithIntellectualDisabilities
*3青森県上北郡野辺地町立馬門小学校
MakadoElementarySchool,Noheji‑town,Kamikita‑country,Aomorl‑Prefecture
*4青森県立弘前第一養護学校
AomoriPrefecturalHirosakiFirstSchoolforStudentswithIntellectualDisabilities
*5弘前大学大学院教育学研究科養護教育専攻
CoordinatedSchoolHealth(Yogo)Education,GraduateSchoolofEducation,HirosakiUniversity
*6弘前大学教育学部附属養護学校
SchoolfortheMentallyHandicapped,FacultyofEducation,HirosakiUniverslty
*7弘前大学教育学部附属 中学校
JuniorHighSchoolAffiliatedwithHirosakiUniversity
*8 弘前大学教育学部 附属小学校
ElementarySchoolAffiliatedwithHirosakiUniverslty
*9 弘前大学教育学部附属幼稚 園
AttachedKindergarten,FacultyofEducation,HirosakiUniverslty
*10青森県弘前市立東 目屋小学校
HigashimeyaElementarySchool,Hirosaki‑city,Aomorl‑Prefecture
*11青森県東津軽郡平内町立東小学校
HigashiElementarySchool,Hiranai‑town,Higashitsugaru‑country,Aomorl‑Prefecture
*12青森県立弘前 中央高等学校
AomoriPrefecturalHirosakiChuoHighSchool
*13青森県立弘前実業高等学校
AomoriPrefecturalHirosakiIndustrialHighSchool
*14青森県立弘前高等学校
AomoriPrefecturalHirosakiHighSchool
*15青森県立北斗高等学校 (通信)尾上総合高校分室
AomoriPrefecturalHokutoHigh School(correspondence)OnoeGeneralHighSchool,Branch
*16青森県弘前市立船沢 中学校
FunazawaJuniorHigh School,Hirosaki‑city,Aomori‑prefecture
*17青森県弘前市立大和択小学校
OowasawaElementarySchool,Hirosaki‑city,Aomorl‑Prefecture
98 津田 栄子 ・菊地美和子 ・林 真麻 ・金谷 香子 ・小野富美子 ・奈良岡 明 ・福 田 朋子 ・渡連 祐子 ・小玉 有子 ・天野 敦子
を得た。
1.現在の擦 りキズ ・切 りキズ に対す る手 当ては
,
『従来 の方法』 (水洗い,消毒,ガーゼ,乾燥) と回答 し た者が88.5%,
『閉鎖療法』 (水洗い,湿潤環境,消毒は しない) と回答 した者が5.8%であった。2.『従来 の方法』 と回答 した者138名の うち, これか らも 『従来の方法』を行ってい くと回答 した者は4.5%
であった。『閉鎖療法』を導入 したい と回答 した者は92.5%であった。
3.これか らも 『従来の方法』を行ってい くと回答 した者は,保護者 (家庭)の理解 の困難 を理 由にあげて いた。
4.すで に 『閉鎖療法』 を実施 している者では,保護者 (家庭 )の理解 の困難や家庭での処置の継続 の困難 を あげていた。
5.従来 の創傷処置 において,消毒 した り乾燥 させた りす ることが よくないのではないか とい う体験がある と回答 した ものは54名 (34.6%)いた。
6.今後開催 してほ しい研修 内容 については, 「最新の医学情報の提供」, 「専門医による講演」, 「救急処置」
な どが多かった。
養護教諭が創傷処置 に閉鎖療法 を導入す るにおいて, さま ざまな課題が明 らか となった。 自分たちの行 う 行為 に対 して,エ ビデ ンス (根拠) を追求す ることは重要な ことであるO
キー ワー ド :養護教諭,創傷処置,閉鎖療法,エ ビデ ンス
Ⅰ.緒言
平成15年7月雑誌 「健」に 「外傷の閉鎖療法」1)
の論文が掲載 された。その内容は,「消毒やガーゼ を使わないで,速 く, きれいに傷 を治す」 とい う ものである。従来 より行 ってきた 「傷は消毒 しガ ーゼを当てる」治療 を「伝承的治療」の一つ とし,医 学的根拠 のない ものであると指摘 している。「創傷 治癒阻害因子」が消毒 と創面の乾燥であるとい う。
つま り 「傷 を消毒 しない,創面 を湿潤 にす る」 こ とが創傷処置の原則 となるO
その後平成15年8月27日にNHKのテ レビ番組
「ため してガ ッテ ン」 に 「けがに消毒は逆効果」
が放映 された。 内容はま さに 「傷 を消毒 しない, 創面 を湿潤 にす る」 とい うものであった。
この ことは,養護教諭 にとって学校現場で救急 処置の中で も最 も多い,擦 り傷や切 り傷の処置の 見直 しを迫 るものであった。
本稿ではまず,養護教諭な らびに養護教諭 を 目 指す学生が 日頃参考 としているテキス トには,刺 傷処置 について どの よ うに記載 されているかを概 観 してみた。
次に,従来の創傷処置である消毒 と乾燥 につい ての問題点 とその根拠 を明 らかにした。そ して, 保健室 における閉鎖療法 による創傷処置の実際を 提案 した。
しか し,いずれ にせ よ学校現場で養護教諭が創 傷処置 に対 して,閉鎖療法 を導入す るか どうか に は,まずは基本的 に創傷治癒過程 について理解 し
ておかなければな らない。そ こで,A県 内養護教 諭 を対象 に 「傷の治 り方の基礎知識」の講演会 を 開催 し,理解 を深めて もら うことにした。
その上で,今後の創傷処置 を どの よ うにしてい くかな どのアンケー トを実施 し,養護教諭の意識 を明 らかにした。
創傷処置 に対す る閉鎖療法は, 医療の場で行わ れ る処置である。学校 は医療機関ではない2)こと か ら,閉鎖療法 とい う言葉その ものの使用 には慎 重 にな らなければな らない。 しか し,現時点では 閉鎖療法 にあてはまる用語,閉鎖療法 を説明でき る適 当な用語が見あた らない ことか ら,本稿では 閉鎖療法 とい う用語 をそのまま用いることとす る。
医学大辞典 によれば,「創傷」3)とは外力によっ て生 じた組織損傷 を総括 して創傷 とい うが,皮膚 や粘膜面の連続性が離断 した開放性損傷 を創,逮 続性が保持 された閉鎖性損傷 を傷 と区別 して用い ることがある。文献等 をみて も,創傷,創,傷, キズな ど様々な記載が見受 け られ る。本稿では, 創傷あるいはキズ と表記す るOただ し,引用 した 文献 については,その表記のまま とす る。
Ⅱ.創傷処置について
1.従来のテキス トの記載 にみ る創傷処置 養護教諭な らびに養護教諭 を目指す学生が 日頃 参考 としているテキス トか ら,創傷処置 について の記載内容 を表 1にま とめ概観 してみた。テキス ト (1)か ら (4) に共通す ることとして,擦 りキ
養護教諭の行 う創傷処置 に関す る研究
表 1.テキス トに記載 されている創傷の処置内容
99
テキス ト 創傷の処置内容
(1)杉浦守邦:
【 擦過傷の応急手 当て】
学校救急処置マニ (
1) 水道水による水洗
エアル
,283‑289,擦過傷の大部分は,砂や ほこ りが付着 しているo水道水で よく洗い流すo要す るに,眼 に見 える砂や泥は 東山書房
,1998残 さない よ うに,多少痛 くて もがまん させて除去す ることが,化膿 を防 ぐ最良の方法であるo洗い終われ
ば,そのまま乾燥 させ るか,消毒ガ‑ゼで水滴 を拭 き取 るO
(2)消 毒
傷 口の消毒 にはマキ ロンが適す るo消毒 ( 殺菌)力 も強 く,毒性 も少な く,刺激性 も皆無で,着色 もしな
い ○(3)
包 帯
出血 の少ない傷 は包帯せず,そのまま乾燥 させた方が治 りは早い○出血のある場合は包帯 をす るが,小 さ い場合 には鮮創膏付 きガーゼ ( 市販品の救急バ ン,バ ン ドエイ ド等)で十分である○
(4)
注 意
処置す るに当たって,絶対 に,汚れた手で,傷 口に触 った り,救急バ ンや救急包帯のガーゼ部分に触れた りしない よ う心掛 ける○処置前 に逆性石 けん液 ( オスバ ン等)で,十分手 を洗ってお く等の注意が必要で あるo
2,3
日経 って,上 にか さぶたができた時,かゆ くて もはがす ことな く, 自然に脱落す るのを待つ よ うにす るな らば,療痕 も残 さず,完全に治癒す るものであることを指導 してお くO
(2)
山本公弘 : 【 擦過傷の処置】
イ ラス トでわか る ( 1) 処置者 ( 術者)の手を水道水で洗 う ( 石 けんを用いる) o 応急処置 のすべて
(2)受傷部 に土な どが付着 している場合は水道水で洗い流すO
‑緊急度 とその対
(3)受傷部 を消毒す る ( 傷用消毒薬を用いる) O
応 ‑
,125‑127,
(4)受傷面積が狭い場合は救急用鮮創膏,ある程度広い場合は滅菌済みガ‑ゼ と包帯 ( あるいは救急包帯な 東山書房
,2001ど)で被服す る○
(3)
川崎憲一 : 【 創傷の救急処置】
新 .保健 室 の救急 ( 1) キズが泥や砂で汚れて不潔であった ら,微温湯や水道水,石 けん水な どできれいに洗 うo 事 典
,119‑123,
(2)逆性石 けんな どの消毒液でキズの周辺 を広 く消毒す るo
東山書房
,1999○出血 もほ とん どな く痛み も軽い場合, この( 1)
,(2)の時点で処置 に終止符 を打 って よいo
○血液がに じみ ヒリヒリす る痛みがあるとか関節付近の擦過傷では,清潔なガーゼ を当てるか リバノール ガーゼ を当てて,その上か ら包帯 を してお くo
(4)
石原 昌江
:【 す り傷 .き り傷の学校での処置】
フ ローチ ャー トを ・傷の水洗 ( 水道水で洗い流 し,異物 を完全に除去) 使 った救急処置 と ・消毒 (ヒビテ ン .マキ ロン等)
保健指導
,90‑114, ・保護 ( 包帯,滅菌ガーゼ,粁創膏を使 う)
ズや切 りキズの処置内容は,(丑水道水 による水洗 い,②消毒,③保護 (包帯,滅菌ガーゼ)である.
ただ し,テキス ト(3)については 「キズの周辺 を 広 く消毒する」 とい う記載があ り, この文面では,
「キズを消毒 し, さらに広 く消毒す る」のか 「キ ズは消毒せず,傷の周辺 を広 く消毒す る」のかは 読み取ることができない。テキス ト (1)では,「乾 燥 させた方が治 りが早い」 とい うことを強調 して いた。学校現場 において子 ども達 に 「傷は乾燥 さ せた方が治 りが速い」 とい う指導は従来は当然の
こととしてな されてきた。
2.これか らの創傷処置
夏井4)は前述 した従来の皮膚外傷の治療原則は 間違 ってお り,正 しい知識 についてま とめている。
1)従来の皮膚外傷の治療原則 (丑創 は乾かす と治る
②創 は消毒するものであ り,消毒 しない と化膿す る
③創はガーゼで覆 う
④創 (特 に縫合創)は濡 らしてはいけない
2)正 しい知識
(丑創は乾かす と治 らない (塾消毒 しても化膿は防げない
③消毒は創治癒の妨害行為である
④皮膚欠損創 をガーゼで覆 ってはいけない
⑤創はよく洗ったほ うがよい
これ らの原則 についての根拠を表 2にまとめた。
受傷す ると創面がジクジクして くるが,従来 「傷 が化膿 した」 と考 え,消毒 して きた。実 は この
「ジクジク」は細胞成長因子 (GrowthFactor) そのものである。創面か らの細胞成長因子を外 に 逃が さない ように閉鎖することで,創面は自然 に 湿潤環境 となる。「外傷の閉鎖療法」とは,人体が 本来持っている創傷治癒能力を最大限に引き出す とい うものである。前述の原則 に従えば,創傷処 置は消毒やガーゼは使わず,創面か ら分泌 されて いる創傷治癒物質 (‑細胞成長因子) を有効利用 す るように 「創 を閉鎖」す る 「創 を湿潤環境 に保 つ」ことが重要 となる。つま り,閉鎖療法 ・湿潤 療法 (モイス トヒー リング)である。
100 津 田 栄子 ・菊地美和子 ・林 美麻 ・金谷 香子 ・小野富美子 ・奈良 岡 明 ・福 田 朋子 ・渡連 祐子 ・小玉 有子 ・天野 敦子
表
2.これか らの創傷処置の原則とその根拠
原
則根拠
① 創 は乾 かす と治 細胞は生 きてい くためには適度な湿潤環境が必要であるoまた,露出 している真皮 にして も,乾燥 に非常 らない に弱 く,乾燥状態が続 けば容易に壊死 して しま うO適度な湿潤環境が創治癒 には不可欠である.
②消毒 して も化膿 創感染は細菌単独で起 こるのではな く,異物や壊死組織が創面 .組織内に混在 している場合 に起 こるo逆 は防げない の言い方 をす る と,異物や壊死組織がなければ少 々細菌が侵入 して も創感染はお こらないo創面の消毒は
創感染の予防効果はない○
③ 消毒 は創 治癒 の 消毒薬は,人体細胞 にとって極めて強力な傷害性 を持 っているo創面 を消毒す ると細菌だけでな く人体細 妨害行為である 胞のたんぱ く質 も変成 させ るが,細菌 より人体細胞 を強力に傷害 して しま うo消毒薬の原液 中で も生存で きる細菌はいるが,人体細胞は希釈 した消毒薬で も全滅 して しま うo このため,創は消毒すればす るほ ど 治 らない とい うことになる○
④ 皮膚 欠損剤 はガ ガ‑ゼ とは 「 創面 を乾燥 させ る」 目的で使われている. これは鮮創膏や メッシュ状ガーゼでも同様であるo
‑ゼ で覆 ってはい 傷が治るためには創面 を 「 湿潤環境」 に保つ必要があ り,乾燥は絶対 に避 けなければな らないのであるO けない 湿潤は細胞成長因子そのものであるか ら,ガーゼで覆 うことは創面の治癒妨害行為 となるo
⑤剤 は よ く洗 った 創感染は細菌 と異物や壊死組織が創面 .組織内に混在 している場合 に起 こるのであるか ら, よく洗い流す
出典 :夏井睦 :これか らの創傷治療,第
1版,医学書院
,2003夏井睦 :外傷の閉鎖療法,健
,32(4),38‑41,20033.閉鎖療法 による創傷処置の実際
保健室 において,児童生徒の擦 りキズや切 りキ ズの手 当て (創傷処置)は どの ようにしてい くの が よいかをま とめてみた。
① キズを洗 う
キズロの砂や土 をきれいに洗い流す。生理食塩 水 を使 って洗 うとよいが,水道水で も十分である。
生理食塩水は人体の体液のpHと近いため,生理食 塩水で洗 った方が刺激が少ない とい う利点がある。
②止血す る
清潔なタオルやガーゼな どでキズロを押 さえて 血 を止める。脱脂綿な どはキズロに繊維が残 って
しま うので使わない よ うにす る。
③ハイ ドロコロイ ド・ドレッシング剤 を貼 る,ま たは軟膏 を塗 り防水用鮮創膏 を貼 る
キズを治すためには,そ こか ら出て くる透明の 演 (浸出液)で潤いを保つ ことが大切である。そ のため,キズロをガーゼや従来の救急鮮創膏の よ うな通気性の よい ものではな く,潤いを保つ こと のできる素材で覆 う必要がある。
ハイ ドロコロイ ド ・ドレッシング剤の場合は, 最大5日間まで貼 ったままキズの治癒 に最適な湿 潤環境を維持でき,長時間貼って もはがれ に くく, 優れた防水性 と防菌性がある。ただ し,従来 の救 急鮮創膏 に比べて価格が高い とい う難点がある。
湿潤環境 を保つ方法 には,軟膏 を塗 り防水用鮮 創膏を貼 る方法 もある。 ワセ リン, ワセ リン合有 軟膏,ゲンタシン軟膏な どの軟膏 を塗 り,防水用 鮮創膏で しっか り覆い,キズロの潤いを保つ。防 水用鮮創膏は最低 1日 1回は取 り替 える。水で濡 れた とき,入浴後 も取 り替 える。軟膏の使用 につ
いては,形成外科 医の助言 をいただいた。
ただ し,病院を受診 した方が よいキズ としては,
・動物や人 に喫まれてで きたキズ
・ギザギザのキズや深いキズ
・水洗い して も異物が取 り除 けない場合
・20‑30分経 って も出血が止ま らないキズ がある。
Ⅲ.
「傷の治 り方の基礎知識」講演会学校現場で養護教諭が創傷処置 を行 うにあたっ て,閉鎖療法を導入す るかを判断す るためには, まずは基本的 に創傷治癒過程 について理解 してお かなければな らない。
そ こで,平成16年8月18日弘前大学医学部形成 外科学講座助教授四 ッ柳高敏先生 を講師に 「傷の 治 り方の基礎知識」のテーマで講演会 を開催 した。
講演会開催 にあたっては,A県教育委員会 の名義 後援 をいただいた。
募集人員は200名であったが,養護教諭の関心の 高 さか ら応募者が多 く,75名ほ どはお断 りす る と い う事態 となった。
講演内容は,基礎編 として 1.創傷治癒 とは,2.
皮膚潰癌の上皮化,3.創 の経過,4.感染 に対す る 考 え方,応用編 として 1.外傷のprimarycare,2.
熱傷 における注意点,3.きれいな傷 にす るには, とい うものであった。講演後 は質疑応答が活発 に かわ された。
Ⅳ.講演会終 了後のアンケー ト 1.調査対象者
対象は,「傷の治 り方の基礎知識」講演会 に参加
養護教諭の行 う創傷処置 に関す る研究
したA県内養護教諭お よび養護助教諭236名だっ たC本アンケー トは講演会終了後 にその場で記入 して もらい回収 した。その うち173名よ り回収があ り,156名が有効であった (有効回答率90.2%)0
2.調査内容
調査内容は,対象者の属性 として年齢,養護教 諭 としての勤務年数,現在の所属 をきいたOまた, 養護教諭の職務内容の項 目5)として①保健指導 ・ 保健学習,②救急処置,③健康相談活動 (‑ルス カウンセ リング),④健康診断,⑤学校環境衛生,
⑥伝染病の予防,⑦その他 について養護教諭 自身 が 「養護教諭 として専門性 を発揮」 している項 目, 同僚の教職員か ら 「養護教諭 としての専門性 を期 待」 されている項 目を選択 してもらった。
現在の擦 りキズ ・切 りキズの手当てについて原 則的 にどのよ うに行っているかをきいた。大まか には 『従来の方法』
,
『閉鎖療法』のいずれ を行っ ているかをきいた。『従来 の方法』 とは,「創傷部 は水洗い後消毒 し,ガーゼや救急鮮創膏を当てるO 止血すればガーゼは取 り除き,乾燥 させるよ うに す る」方法であるO『閉鎖療法』 とは,「創傷部は 水洗い し,キズが乾燥 しない ようにする (湿潤環 境)。消毒はしないO」方法であるOさらに 「傷の治 り方の基礎知識」講演会 を受講 した ことか ら,今後の擦 りキズ ・切 りキズの手当 てをどのようにしようと考えているかをきいた。
Ⅴ.結果
1.回答者の属性
回答者の年齢は22歳か ら65歳,平均42.8±9.5歳 であった。
養護教諭 としての勤務年数 (養護助教諭 も含む) は4か月か ら44年で,平均20.2±9.8年であった。
現在の所属は図1に示 した通 りである。
養護教諭の職務 内容の項 目について養護教諭 自 身が 「養護教諭 として専門性 を発揮」 しているも のは,「救急処置」 と回答 した ものが49.4%,「健 康診断」23.1%,「保健指導 ・保健学習」13.5%で あった (図2)。また同僚の教職員か ら 「養護教諭 としての専門性を期待」されているものは,「救急 処置」74.4%,「健康相談活動 (‑ルスカ ウンセ リ ング)」ll.5%,「健康診 断」8.3%で あった (図
3)。
2.現在の擦 りキズ ・切 りキズの手当て
■ 救急処置
ES健康診断 E=保健指導 .保健学習 田健康相談活動1
0
1図2.養護教論自身の 「養護教諭としての専門性 を発揮」 している職務内容
■ 救急処置
冒健康相談活動 言健康診断 固保健指導 .保健学晋図3.同僚の教職員から 「養護教論としての専門性 を期待」されている職務内容
102 浮 田 栄子 ・菊地美和子 ・林 真麻 ・金谷 香子 ・小野富美子 ・奈良岡 明 ・福 田 朋子 ・渡連 祐子 ・小玉 有子 ・天野 敦子
3,2 2.6
I従 来 の方法 国閉息療 法 E =併用
□その他図4.現在の擦 りキズ ・切 りキズの手当て
現在の擦 りキズ ・切 りキズに対する手 当ては, 原則的 にどの よ うに行 っているかをきいてみた。
『従来の方法』と回答 した者が88.5% (138名),
『閉鎖療法』と回答 した者が5.8% (9名)であっ た (図4)。
3.今後の擦 りキズ ・切 りキズの手 当てについて の考 え (『従来 の方法』の回答者)
1)今後の擦 りキズ ・切 りキズの手 当て について の考え
『従来の方法』 と回答 した者138名の うち, これ か らも 『従来の方法』を行ってい くと回答 した者 は4.5% (6名)であった。『閉鎖療法』 を導入 し たい と回答 した者 は92.5% (124名)であった。
2)これか らも 『従来 の方法』 を行 ってい く理 由 これか らも 『従来の方法』 を行ってい くと回答 した者6名の理由は表3に示 した通 りである。
3)『閉鎖療法』の導入 にあたっての具体的手順
『閉鎖療法』の導入 にあたっての具体的手順 を記 載 した ものは111名お り,その内容は表4に示 した 通 りである。 「教職員 との共通理解」66名, 「保護 者‑の説明」54名,「子 ども‑の指導」51名な どで あった。
4.『閉鎖療法』の回答者
表
3.これか らも 『 従来の方法』 を行 う理 由 今す ぐ決め られないこともあるので,現状でできる方法 をじっ くり考 えたい○
『 軟膏を塗 る』 とい う行為は,養護教諭ができることなのか疑問が残 る○
学校で起 こる傷はほ とん ど小 さいので,従来の方法でや ると思 う○ただ,大きな傷は病院受診 を勧めるし, まめに軟膏 .ガーゼを交換 した方が よい○『閉鎖療法』は学校では無理だ と思 うo
毎 日の傷のチ ェックな どを家庭 にお願い して もできない ( や って くれない)家庭 はた くさんあるので,管 理は難 しい と思 うoその子 と親,傷 をみて判断するo
『 消毒がいい』 とい う伝説 を取 り除 くのが難 しそ うD
表
4,『閉免療法』導入にあたっての具体的な手順
内容 件数 内訳 ( 件数)
教職員 との共通理解
66教職員 と共通理解 をはかる
(50)職員会議で研修報告す る
(12)処置後の説明をす る ( 1 ) 管理職‑相談す る
(1)保護者‑の説明
54保護者‑説明す る
(40)保健だ よ り
(31 )
参観 日な どの保護者会で説明す る
(4)連絡カー ドな どで処置後の説明をす る
(2)子 ども‑の指導
51保健指導を行 う
(36)保健だ よ り
(26)児童 . 生徒集会で説明する
(4)保健室 に 「 キズの手 当ての仕方」の掲示 をす る ( 1 ) 養護教諭 間での情報交換
2養護教諭間での情報交換 をす る
(1)お よび討議 養護教諭間でいろいろ話 し合い決める
(1)学校医‑の相談 .連携
2学校医に相談す る ( 1 )
養護教諭の行 う創傷処置 に関す る研究
1)『閉鎖療法』導入 の経緯
『閉鎖療法』を行 ってい る と回答 した9名の導入 の経緯 は,「雑誌掲載論文 をみて」6名,「附属4校 園の研修」 「地 区の養教部会 で の研修」で あ った
表
5.『閉鎖療法』導入の経緯
内 容 件数
雑誌掲載論文をみて
6附属
4校園の研修
2地区の養教部会での研修
1(表5)。子 ど もが乾 燥 した ガ ーゼ を 当て る と化膿 す る 可能性が高 く,
くっつ きや す いので, 自分な りに考 え,実施 していた, とい う 回答 があった。
2)『閉鎖療法』 を実施 しての問題
『閉鎖療法』を実施 しての問題 については5名の 記載があ り,表6の通 りである。
5.創傷処置 にお ける消毒や乾燥 による問題 これ まで に創傷の手 当て を して,消毒 した り乾 燥 させた りす ることが よ くないのではないか とい う体験 がある と回答 した ものは54名 (34.6%)い た。そ の内容 は, 「痴 皮形 成 に よる問題」25名,
「痕 が残 った」11名, 「感染 (化膿)」8名, 「消毒 に伴 う問題」5名な どであった (表7)0
103
6.今後開催 してほ しい研修 内容
今後開催 してほ しい研修 内容 については,「最新 の医学情報 の提供」43名,「専門医 による講演」19 名, 「救急処置」14名な どであった (表8)。
Ⅵ.考察
近 年, 医 学 の領 域 に お い てEBM (Evidence‑ basedMedicine)の重要性が提唱 され るよ うにな
り,「根拠 に基づいた医療」と訳 されてい る。従来 の経験,直感 に基づ いた医療 か ら,科学的根拠 に 基づ いた医療‑ のパ ラダイム シフ トとい う言い方 が され て い る6)。 さ らに,看 護 におい て もEBN (Evidence‑based:Nursing:科 学 的根拠 に基 づ く看護)が導入 され るよ うにな り, 自分たちの行 う看護行為 に根拠 (エ ビデ ンス) をもって行動す る とい うものである7)。
養護教諭 は 「児童生徒 の養護 をつか さどる (学 校教育法第28条第7項)」専門職である。養護教諭 は児童生徒 の さま ざまな健康 問題 に対す る養護実 践 において,専門性 を発揮す ることが求め られ る。
学校 において,養護教諭 の行為 にも根拠 (エ ビデ ンス)が求め られ る ことはい うまで もない。
創傷処置 に対す る閉鎖療法の概念 が登場 した こ とは,従来 の創傷処置 とは異 にす るものである。
養護教諭 にとっては, 自分たちの行 うキズの手 当
表
6.『閉鎖療法』を実施 しての問題
なかなか理解 を得 られないoキズは乾か した方が良い と主張す る大人が多い○地域 が ら,清潔 に保つ こと が難 しい○
その 日に帰 して も,保護者のほ とん どは手当ての持続性がないため,学校でや らない限 り,従来 と同 じに なるO更 に家 に帰 ってか らの処置は,家庭の役 目となるため,周知が難 しいO
経過観察
,wet環境の維持の難 しさo
生徒 自身が管理で きる子が少な く,や りつ放 しになって しま うO継続 の手 当ては保健室の範 囲外であるO 自分で管理できるよ うに指導 したいo
表
7.創傷処置における消毒や乾燥による問題
内容 件数 内訳 ( 件数)
痴皮形成 による問題 25 治 るまでの期間が長 くなって しまった
(14)か さぶたを とって しまい何度 も出血 した
(3)乾燥 した時 にヒビ割れ る
(3)か さぶたが引つぼ られて出血す る
(3)か さぶたがなかなかはがれない
(1)か さぶたが取れ ることで, さらに傷 口が広 がった
(1)痕が残 った
ll痕が残 った
(ll)感染 ( 化膿)
8感染 ( 化膿) した
(8)消毒 に伴 う問題
6消毒液が しみる
(3)消毒す ることに抵抗があるが,職員や子 どもが消毒す る ことを期待 している
(1)消毒液 に負 けてケ ロイ ドを作った
(1)1 0
4 津 田 栄子 ・菊地美和子 ・林 莫麻 ・金谷 香子 ・小野富美子 ・奈良岡 PB ・福 相 朋子 .渡連 結子 .小玉 有子 .天野 敦子表
8.今後開催 してほ しい研修内容
内容 件数 内訳 ( 件数)
最新の医学情報 の提供
43最新の医学情報 を提供 してほ しい
(41 )
「 傷の治 り方の基礎知識」講演会
(2)専門医 による講演
19整形外科
(8)皮膚科 ( ア レルギー) ( 4) 小児科
(2)心身症
(2)思春期の疾病 ( 1)
各科の専門医 による講演 ( 1) 感染症 ( 1 )
救急処置
14救急処置 に関す ること
(5)ケガの処置
(5)出血 ( 1) スポーツ障害 ( 1) テー ピング ( 1) 眼 の打撲 ( 1 )
健康相談活動
3健康相談活動 ( ヘルスカウンセ リング) に関す ること
(2)( ヘルスカ ウンセ リング) 健康相談活動 は
2‑3年 に
1度 は、県内養護教諭仝貞が受講 したい ( 1 ) 保健室で使用す る薬品
2保健室で使用す る薬品の選び方や使用法 について ( 1)
市販の薬品 につ いて ( 1)
その他
9具体的な 日常の執務 に活かせ るよ うな研修 ( 1 ) 看護理論 ( 1)
フィジカルアセスメン ト ( 1) 器具の消毒 ( 1 )
保健学習や教材づ くりの研修 ( 1) いろんな事例 ( 1 )
教育相談講座 ( 1 ) 肥満指導 ( 1)
てについて専門性 を発揮するにあた り, どのよ う な根拠 をもって行 っているかを問 うものである。
日常の さまざまな職務の中で,養護教諭 自身は職 務内容の項 目の中で 「養護教諭 として専門性 を発 揮」 している項 目として 「救急処置」を第 ‑にあ げている者が最 も多 く49.4%であった。また,同 僚の教職員か ら「養護教諭 としての専門性 を期待」
されている項 目として74.4%のものが 「救急処置」
を第‑にあげていた。早坂8)の研究では,養護教 諭の職務 に対する必要度 として,12項 目掲 げた う ち 「救急処置」を 「特 に必要」 とした人の割合が 着否教諭,教諭,管理職 ともに,最 も高率に選択 されてお り,本研究 と同様の結果であった。「救急 処置」 において 自他共に認めるような専門性 を発 揮するためには,エ ビデンス (根拠)に基づいた 処置が求め られることになる。
学校 においては,「救急処置」の中でも,擦 りキ ズ ・切 りキズは頻発す る外傷である。現在の擦 り キズ ・切 りキズに対する手当ては,原則的 にどの よ うに行っているかをきいてみたC『従来の方法』
と回答 した者が88.5% (138名),『閉鎖療法』と回 答 した者が5.8% (9名)であった。『従来の方法』
と回答 した者138名の うち,これか らも 『従来の方 法』を行 ってい くと回答 した者は6名であった。
『閉鎖療法』を導入 したい と回答 した者は124名で あったo雑誌 にも,『閉鎖療法』に対す る質問‑の 回答9)や,保健室での養護教諭の実践報告10),ll)が 見受 けられる。
『従来の方法』を行ってい くと回答 した者6名の 理由 としては,「毎 日の傷のチェックな どを家庭 に お願い して もで きない (や って くれない)家庭 杖 た くさんあるので,管理は難 しい と思 う。」「『消毒 がいい」=:い う伝説 を取 り除 くのが難 しそ う。」と い うもので,保護者 (家庭)の理解の困難を理由 にあげていた。保護者‑の啓発活動が課題 となる。
『閉鎖療法』を導入 したい と回答 した者は124名 であ り,その うち 『閉鎖療法』の導入 にあたって の具体的手順 を記載 したものは111名であった。そ の内容は 「教職員 との共通理解」66名,「保護者へ の説明」54名,「子 ども‑の指導」51名な どであっ たO一般的な手順 としては以下の よ うになるであ ろ う。
①分掌内での話 し合い
②管理職‑の提案 (診職員間での共通理解
④児童生徒‑の保健指導 (児童生徒 には,学年 ・ 全校集会,学級指導,保健 の授業,保健室の個 別指導,委員会活動な どで伝 える。)