修 士 学 位 論 文
障 害 物TimedUpandGoTestを
用 い た 予 期 的 歩 行 調 整 方 略 の 分 析
(西 暦 …)2019年12月26日 提 出
首 都 大 学 東 京 大 学 院
人 間健 康 科 学研 究 科 博 士 前 期 課 程 人 間健 康 科 学 専 攻 ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョ ンサ イ エ ンス 学 域
学 修 番 号:18899701 氏 名:井 上 隼
(指 導 教 員 名:樋 口 貴広 教授)
要旨
本 研 究 で は,国 際 的 な 歩 行 評 価 テ ス トで あ るTimedUpandGoTest(以 下,TUG) に,障 害 物 回 避 の要 素 を加 え た新 しい 課 題(以 下,障 害 物TUG)を 用 い て,衝 突 回 避 の た め の予 期 的 歩 行 調 整(Adaptivelocomotoradjustments)の 方 略 を分 析 した.
TUGと は,「 椅 子 か ら立 ち 上 が り,3皿 先 の コ ー ン を 回 っ て 再 び 椅 子 に戻 る ま で の 所 要 時 間 を計 測 す る歩 行 テ ス ト」 で あ る.所 要 時 間 が短 い ほ ど歩 行 能 力 が 高 い と評 価 す
る.TUGの タ イ ム を短 くす る に は,筋 力 な どの 身 体 機 能 に加 え て,復 路 の軌 道 を見 越 した効 率 的 な 方 向転 換 動 作 も有 効 で あ る.本 研 究 で は,復 路 に ポ ー ル を配 置 す る こ と に よ り,復 路 に対 す る見 越 しが 所 要 時 間 に影 響 す る状 況 を設 定 した.こ れ に よ り,高 齢 者 が 歩 行 を どの よ うに 予 期 的 に調 整 す るの か を検 討 した.
参 加 者 に は2種 類 の課 題 設 定 で 障 害 物TUGを 行 っ て も ら っ た.第1課 題 と して, 障 害 物 を 回 避 す る方 向 を参 加 者 に 自 由 に選 択 さ せ る課 題 を 行 っ た(自 由選 択 課 題).
こ こで の選 択 が,先 を 見 越 した 効 率 的 な 方 略 に な っ て い る か を確 か め るた め,第2
課 題 と して 障 害 物 を 回避 す る方 向(外 側 か 内側 か)を 試 行 ご と に規 定 した課 題 を行 っ た(強 制 選 択 課 題).
検 証 は3つ 行 っ た.第1検 証 で は,回 避 軌 道 の 選 択 傾 向 に着 目 し,自 由選 択 課 題 に て 所 要 時 間 の短 い効 率 的 な軌 道 を選 択 出来 て い た の か を若 年 者 と の 比 較 か ら検 証 した.第2検 証 で は,通 常TUGに 対 す る障 害 物TUGの 所 要 時 間 の遅 延 に着 目 し,障 害 物TUGに お け る歩 行 調 整 の 特 徴 を検 証 した.第3検 証 で は,前 述 の2つ の 検 証 を 通 して得 られ た 高 齢 者 の 歩 行 調 整 方 略 の特 徴 と,バ ラ ンス 能 力 との 関 係 性 を分 析
し,障 害 物TUGが 高 齢 者 の 予 期 的 な歩 行 調 整 を 評 価 す るテ ス トと成 り得 るか を検 討 した.
第1検 証 の結 果,高 齢 者 は効 率 的 な 軌 道 を選 択 出 来 て い な か った.ま た,軌 道 選
択 の 特 徴 と して,若 年 者 と比 較 し て 外 側 回 避 を 多 く選 択 す る こ とが 分 か っ た.こ
の傾 向 に つ い て,回 避 方 向 の 違 い に よ る方 向 転 換 方 略 の違 い を検 証 した と こ ろ,
外 側 回 避 は方 向 転 換 時 の 速 度 や 歩 幅 の 調 整 が 緩 や か で あ り,安 定 性 の 高 い 軌 道 で
あ る こ とが わ か っ た.こ れ ら の こ と か ら,高 齢 者 は 安 定 性 を優 先 して 外 側 回 避 を
選 択 して い た 可 能 性 が 考 え られ た.
第2検 証 の 結 果,高 齢 者 で は 若 年 者 と比 較 し て 通 常TUGに 対 す る 障 害 物TUGの
所 要 時 間 の 差 が 大 き く,遅 延 の 割 合 も大 き くな っ て い た.こ の 所 要 時 間 の遅 延 に
つ い て,歩 行 区 間 を5つ に分 け て 詳 細 に 分 析 した 結 果,高 齢 者 は方 向 転 換 時 や 障
害 物 回避 時 で は 所 要 時 間 や 速 度 の 遅 延 を認 め ず,予 期 的 に歩 行 を調 整 して い た.
しか し,そ の 後 の 着 座 動 作 時 に 通 常TUGよ り も時 間 が か か る よ う に な り,椅 子 に
よ り近 い 位 置 か ら着 座 し て い た.こ の こ とか ら,高 齢 者 で は 障 害 物 回 避 に 対 す る
認 知 的 な 負 荷 が そ の 後 の 着 座 動 作 に影 響 し,所 要 時 間 が 遅 延 した 可 能 性 が 示 唆 さ
れ た.
第3検 証 で は,こ れ ら の 歩 行 調 整 の 特 徴 とバ ラ ンス 能 力 と の 関 係 性 を検 証 す る
た め,バ ラ ン ス 評 価 テ ス トの 点 数 に 基 づ い て 高 齢 者 を 群 分 け して 比 較 した.結 果,
回 避 方 向 の 選 択 に つ い て はバ ラ ン ス 能 力 の 高 低 との 対 応 を認 め な か っ た.一 方,
所 要 時 間 と着 座 時 間 に つ い て は,バ ラ ン ス 能 力 の優 れ た 高 齢 者 で は 遅 延 が 少 な か
っ た.加 え て,総 歩 数 も 比 較 的 少 な く,わ ず か な ス テ ッ プ 調 整 に て 課 題 を 遂 行 し
て い た.こ の こ と か ら,バ ラ ンス 能 力 が 高 い 高 齢 者 で は 予 期 的 な 歩 行 調 整 能 力 も
高 く,障 害 物 回 避 後 の 着 座 動 作 ま で 予 期 的 に 調 整 し な が ら 円 滑 に 歩 行 し て い た 可
能 性 が 示 唆 さ れ た.
以 上 の 結 果 を ま と め る と,高 齢 者 は本 課 題 に お い て 効 率 的 な 軌 道 を 選 択 で き
ず,安 定 性 の 高 い 軌 道 を予 期 的 に選 択 して い た.ま た,歩 行 調 整 の 方 略 と して,
方 向 転 換 や 障 害 物 回 避 に つ い て は 予 期 的 に調 整 で き る が,そ の 後 の 着 座 動 作 が 通
常TUGよ り も慎 重 に な る とい う特 徴 が 得 られ た.こ の よ うな 保 守 的 な 方 略 はバ ラ
ンス能力 とも関係 してお り・バ ランス能力 が高い高齢者 で は障害物 回避後 の着座
動 作 を 見 据 え た 調 整 を 行 い,所 要 時 間 の 遅 延 や 歩 数 の 調 整 を少 な く保 っ て い た.
こ の こ と か ら,高 齢 者 の バ ラ ン ス 能 力 と障 害 物TUGに お け る歩 行 指 標 に は 一 定 の
関 係 性 が あ る こ とが 示 さ れ,障 害 物TUGが 予 期 的 な 歩 行 調 整 方 略 を評 価 す る課 題
に な り う る可 能 性 が 示 唆 さ れ た.
目次
第1章 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …1 第2章 ,本 研 究 の 理 論 的 及 び 方 法 論 的 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …3
第1節Ti皿edUpandGoTestに よ る 予 期 的 調 整 の 評 価 の 可 能 性3 1.1TimedUpandGoTestに よ る 歩 行 評 価3
1.2TUGに お け る 歩 行 調 整 の 戦 略 一 軌 道 と 速 度 の 観 点 か ら 一6 1.3TUGの 歩 行 調 整 と 認 知 機 能 と の 関 係9
第2節 高 齢 者 の 歩 行 の 予 期 的 調 整10 2.1予 期 的 歩 行 調 整 と 視 線10 2.2反 応 時 間 の 遅 延14 2.3高 齢 者 の 保 守 的 な 調 整14
2.4問 題 の 所 在:本 研 究 の ポ イ ン ト16
第3章 実 験 報 告 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …17 第1節 実 験 全 体 の 概 要17
1.1実 験 参 加 者17 1.2実 験 課 題20 1.3計 測 装 置22
第2節 回 避 方 向 の 選 択 割 合 と 効 率 性 の 検 証25 2.1検 証 方 法25
2.1.1対 象 デ ー タ25 2.1.2算 出 項 目25
2.1.3実 験 デ ザ イ ン と 統 計 解 析26 2.2結 果27
2.2.2強 制 選 択 課 題 に お け る 所 要 時 間 の 比 較 2.2.3障 害 物TUGに お け る 所 要 時 間 の 変 化 2.3考 察
第3節 回 避 軌 道 毎 の 方 向 転 換 に お け る 歩 行 調 整 方 略 の 比 較 3.1検 証 方 法
3.1.1対 象 デ ー タ 3.1.2算 出 項 目
3.1.3実 験 デ ザ イ ン と 統 計 解 析 3.2結 果
3.2.1往 路 区 画 に 対 す る 方 向 転 換 区 画 の 歩 行 速 度 の 割 合 3.2.2方 向 転 換 区 画 に お け る 歩 幅 の 調 整
3.3考 察
第4節 障 害 物TUGに お け る 歩 行 調 整 方 略 4.1検 証 方 法
4.1.1事 前 分 析:障 害 物TUGの 各 区 画 に お け る 所 要 時 間 の 遅 延 4.1.2算 出 項 目
4.1.、3実 験 デ ザ イ ン と 統 計 解 析 4.2結 果
4.2.1軌 跡 の 側 方 偏 位 距 離 4.2.2速 度 の 調 整
4.2.3着 座 動 作 の 所 要 時 間 4.3考 察
第5節 高 齢 者 の バ ラ ン ス 能 力 と 障 害 物TUGの 方 略 の 関 係 性 5.1検 証 方 法
5.1.1対 象 デ ー タ
13555567786777123340244492UρUOU農U233333333334444555556
5.1.2算 出 項 目65
5.1.3実 験 デ ザ イ ン と 統 計 解 析66
5.2結 果67
5.2.1所 要 時 間 の 比 較67
5.2.2回 避 方 向 の 選 択 割 合 と 所 要 時 間 の 比 較69
5.2.3着 座 時 間71
5.2.4歩 数73
5.3考 察74
第4章 総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …76
引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …81
謝 辞 …'…'… ●'1'●'…"… ● … ●'●86
第1章 緒言
高 齢 者 で は 視 機 能 低 下 や 反 応 時 間 の 遅 延 か ら,先 の 状 況 を見 越 した 予 期 的 な 歩 行 調 整(Adaptivelocomotoradjustments)に 難 渋 す る こ とが 知 られ て い る.す な わ ち, 視 線 を 進 行 方 向 へ む け られ ず 先 々 の 情 報 が 得 ら れ な い こ と や,瞬 時 の 反 応 で 姿 勢 や 歩 行 を 調 整 す る こ と が で き な い こ と か ら,蹟 き や バ ラ ン ス の 崩 れ な ど の 転 倒 リ ス ク に つ な が っ て い る(Paquette&Vallis,2010).ま た,一 部 の 高 齢 者 で は 方 向 転 換 の よ う な 予 期 的 歩 行 調 整 が 必 要 な 動 作 に お い て,姿 勢 の 安 定 を 優 先 し た 保 守 的 な 方 略 を と り,歩 行 速 度 が 低 下 す る こ と が 知 られ て い る.こ う し た 調 整 は 一 見 安 定 性 を 高 め て い る が,柔 軟 な バ ラ ン ス 制 御 が で き ず 却 っ て バ ラ ン ス を 崩 し や す く な る と い う側 面 も あ る(Mancinietal.,2016).こ う した 研 究 に 基 づ き,本 研 究 で は 予 期 的 調 整 を 要 す る よ う な 課 題 を 行 い,高 齢 者 が ど の よ う に 歩 行 軌 道 を 調 整 す る の か を 分 析 す る こ と で,予 期 的 な 歩 行 調 整 の 方 略 が 簡 便 に 評 価 で き る 可 能 性 を 考 え た.
本 研 究 の 目 的 は,国 際 的 な 歩 行 評 価 テ ス トで あ るTimedUpandGoTest(以 下, TUG)に,障 害 物 回 避 の 要 素 を 加 え た 新 し い 課 題(以 下,障 害 物TUG)を 用 い て,
高 齢 者 の 予 期 的 な 歩 行 調 整 能 力 が よ り詳 細 に 評 価 出 来 る か を検 証 し 明 らか に す る こ と で あ る.TUGと は,椅 子 か ら立 ち 上 が り3m先 の 折 り返 し 指 標 を 回 っ て 再 び 椅
子 に 戻 る ま で の タ イ ム を 計 測 し,短 い ほ ど 歩 行 能 力 が 高 い と 評 価 す る 歩 行 テ ス ト で あ る.TUGの タ イ ム を 短 く す る に は,復 路 の 軌 道 を 想 定 し,往 路 や 方 向 転 換 を 予 期 的 に 調 整 す る 必 要 が あ る.す な わ ちTUGで は,復 路 を 見 越 し た 予 期 的 歩 行 調 整 が 求 め られ て い る.本 研 究 で は,復 路 に ポ ー ル を 配 置 し,復 路 に 対 す る 見 越 しが タ イ ム に 大 き く 影 響 す る 状 態 を 設 定 した.こ の 課 題 に お け る 高 齢 者 の 歩 行 方 略 を 若 年 者 と 比 較 す る こ と で,高 齢 者 の 予 期 的 歩 行 調 整 の 特 徴 を 抽 出 す る こ と と し た.
加 え て,そ の 方 略 の 特 徴 と バ ラ ンス 能 力 と の 対 応 を み る こ と で,障 害 物TUGか ら
予期的歩行 調整能力が評価 出来 るかを検 討 した.
障害物TUGは2つ の課題設定 で実施 した.第1課 題 として,障 害物 を回避す る 方 向 を参加者 に自由に選択させ る課題 を行 った(自 由選択課題).第2課 題 とし
て,障 害物 を回避す る方向(外 側 か内側 か)を 試行 ごとに規定 した課題 を行 った (強制選択課 題).こ の2つ の課題 の結果 を併せ,高 齢者 の予期 的な歩行調整 の 方 略 を明 らか にしてい くこととした.障 害物TUGに おける高齢者の歩行 調整方略
を分析するため,3つ の検証 を行 った.第1検 証 として,高 齢者が所要時間 の短 い軌道 を選択 出来ていたのかを検証 した.第2検 証 として,通 常TUGに 対 す る障 害 物TUGの 所 要時間の遅延に着 目し,高 齢 者の障害物TUGに おけ る歩行方 略 を詳 細 に検 討 した.第3検 証 として,前 述 の2つ の検証 か ら得 られた予期的な歩行調 整 方略の特徴 を踏 まえ,バ ランス能 力が優 れた高齢 者 におけ る歩行調整方略 を検 証 した.こ の3つ の検 証 を通 して,障 害物TUGの 成績 か ら予期的な歩行 調整方略 が 評価 出来 るかを検 討 した.
第2章 本研究の理論的及び方法論的背景
本 章 で は,障 害 物 を 配 置 し たTimedUpandGoTest(障 害 物TUG)が 高 齢 者 の 予 期 的 歩 行 調 整 を 簡 便 に 評 価 し う る と考 え た 根 拠 に つ い て,先 行 研 究 の 知 見 に 基 づ き 説 明 す る.第1節 で は,TUGが 復 路 を見 越 し た 歩 行 調 整 の 要 素 を含 む こ と に つ い て 説 明 す る.第2節 で は,高 齢 者 の 予 期 的 歩 行 調 整 に お け る 視 線 と 反 応 の 問 題 に つ い て ま と め る.
第1節TimedUpandGoTestに よ る 予 期 的 調 整 の 評 価 の 可 能 性
1.1TimedUpandGotestに よ る 歩 行 評 価
高 齢 者 に お い て 転 倒 は 重 大 な 健 康 被 害 を も た らす 事 象 で あ り,加 齢 に よ っ て そ の リ ス ク が 高 ま る.WHOの 調 査 に よ る と,65歳 以 上 の 高 齢 者 の28〜35%が 過 去 に 転 倒 を 経 験 し て お り,70歳 以 上 に な る と32〜42%と そ の 割 合 が 増 加 す る(WHO, 2018).我 が 国 に お い て も 高 齢 者 の 転 倒 発 生 率 は 高 く,救 急 搬 送 さ れ た 事 例 の 約8 割 は 転 倒 に 起 因 し た も の で あ っ た(消 費 者 庁 資 料,2018).ま た,転 倒 リ ス ク は, 加 齢 に よ っ て 増 加 す る こ とが 知 ら れ て お り,筋 力 の 弱 化 や 感 覚 機 能 の 低 下,認 知 力 低 下 な ど加 齢 に よ る 影 響 が 認 め られ る(Bergland,2012).さ ら に,転 倒 後 の 受 傷 は 高 齢 に な る に つ れ て 重 篤 化 し,死 亡 率 を も 高 め て い る(Schneider&Beattie, 2015).高 齢 者 に と っ て 転 倒 は 生 じや す い 事 故 で あ り,加 齢 が 進 む こ と で 発 生 率 や 重 症 化 と い っ た リ ス ク が 高 ま る.
TUGは こ う し た 転 倒 リ ス ク を 評 価 す る 手 法 と し て,Mathiasら が 考 案 し たGet UpandGoTestを 基 に,Podsiadloら が 改 良 し た 歩 行 テ ス ト で あ る(Podsiadlo
andRichardson.,1991).参 加 者 は 合 図 と と も に 椅 子 か ら 立 ち 上 が り,3m先 の コ ー ン を 回 っ て 再 び 椅 子 に 着 席 し
,立 ち 上 が り か ら 着 席 ま で に 要 し た タ イ ム を 計 測 す る(図2‑1‑1).タ イ ム が 短 い ほ ど 歩 行 能 力 が 高 い と 評 価 す る(American
GeriatricsSocietyandBritishGeriatricsSociety,2001).使 用 物 品 が 少 な く 評 価 方 法 が 簡 便 で あ る た め,日 本 国 内 に お け る 運 動 器 不 安 定 症 の 診 断 基 準 や, 米 国/英 国 老 年 医 学 会 ガ イ ド ラ イ ン に お け る 日 常 生 活 の 自 立 度 の 判 定 な ど,世 界
中 で 用 い ら れ て い る テ ス ト で あ る.
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一 )
図2‑1‑1TUGの 模 式 図(Sebastiaoetal.,2016よ り) 椅 子 か ら の 立 ち 上 が り,歩 行,方 向 転 換,着 座 で 構 成 す る テ ス トで あ る.
TUGの タ イ ム に 基 づ い た 能 力 評 価 は 多 数 報 告 さ れ て お り,参 考 タ イ ム や 評 価 内 容 に 違 い は あ る も の の,タ イ ム が 短 い ほ ど 身 体 能 力 が 高 い と評 価 す る 点 は 共 通 し て い る(Bretanetal.,2013;Arnold&Faulkner,2007).Shumway‑Cookら
は 過 去 の 転 倒 歴 と タ イ ム と の 関 係 を 調 査 し,13.5秒 と い う 転 倒 予 測 の カ ッ トオ フ 値 を 提 唱 し た(Shumway‑Cook,Brauer&Woollacott,2000).こ の 数 値 は 今 な お 世 界 中 で 参 考 に さ れ て い る.ま た,総 合 的 な バ ラ ン ス 評 価 バ ッ テ リ ー で あ る BergBalanceScaleの 点 数 と も 中 等 度 の 相 関 関 係 を 示 し,タ イ ム が 短 い ほ ど バ
ラ ン ス 能 力 が 高 い こ と が 示 さ れ た(Caballeretal.,2016).実 際 に 転 倒 リ ス ク の 高 い 参 加 者 がTUGを 行 う と,ス テ ッ プ 長 が 短 く 加 速 に 要 す る 時 間 も 長 く な り, 結 果 的 に タ イ ム が 遅 く な る傾 向 に あ る こ とが 明 らか と な っ て い る(Weisset
al.,2011).こ の よ う に,TUGの タ イ ム は 歩 行 能 力 を 示 す 指 標 とな っ て い る.
しか し,複 数 の シ ス テ マ テ ィ ッ ク レ ビ ュ ー に お い て,TUGの タ イ ム に よ る 評 価 は 単 純 な 身 体 機 能 の 評 価 に 留 ま り,転 倒 予 測 の 指 標 と して 不 十 分 で あ る と い う 指 摘 が あ る(Barryetal.,2014;Schoeneeta1.,2013).Barryら は レ ビ ュ ー
に て,TUGの タ イ ム は 過 去 の 転 倒 経 験 と の 強 い相 関 は 認 め ら れ る 一 方,あ る 時 点 の タ イ ム か ら将 来 的 な 転 倒 リ ス ク を 検 討 す る よ う な い わ ゆ る 前 向 き 研 究 で は,感 度 が 低 く予 測 に は 不 十 分 で あ る と し て い る.TUGが 転 倒 予 測 の 指 標 と して い つ で
も 機 能 す る わ け で は な い 理 由 と して,Barryら は,転 倒 が 身 体 内 外 の さ ま ざ ま な 要 素 が 影 響 して い る こ と を 挙 げ た.彼 ら は,TUGで は 筋 力 や バ ラ ン ス な ど の 身 体 機 能 しか 評 価 で き な い こ と が 原 因 で あ る と考 え た(Barryetal.,2014).
Schoeneら も 同 様 の 指 摘 を して お り,タ イ ム に よ っ て 身 体 機 能 は 大 ま か に 評 価 可 能 で き る の に 対 し,歩 行 の 調 整 に 必 要 な 視 覚 や 認 知 機 能 な ど の 要 素 は 十 分 反 映 さ れ て い な い と して い る(Schoeneetal.,2013).す な わ ち,TUGで は 立 ち 上 が
りや 歩 方 向 転 換 な ど を 包 括 的 な タ イ ム に よ っ て 評 価 し て い る た め,身 体 機 能 以 外 の 要 因 が 詳 細 に 評 価 で き て い な い 可 能 性 が あ る.
TUGは コー ンを中心 とした方 向転換を伴 う歩行テ ス トである.こ こで歩行路 に お ける最速 の歩行 軌道 を考 える と,復 路 に関 しては方向転換後 の地点 か ら椅子 ま で を結ぶ軌道 が最 短にな る ことは 自明で ある.そ のため,TUGを 早 く遂行す るた め には,復 路 の軌道 を見越 して往路や歩行転換 を調 整す ることが求 め られる.そ れ ゆえ,こ れ まで歩行軌道や速度な どの運動学 的戦略の分析や,認 知機能な どの
中枢神経機能 との関係性の調査な どが広 く行わ れてきた.次 節ではそ の例 を示 し て い く.
1.2TUGに お け る 歩 行 調 整 の 方 略 一軌 道 と速 度 の 観 点 か ら 一
TUGに お け る 歩 行 調 整 を 分 析 す る 試 み と し て,先 行 研 究 で は 軌 道 の 分 析 と 速 度 の 変 化 が 検 証 さ れ て き た(Nishiguchieta1.,2017;Weissetal.,2011).
歩 行 軌 道 に つ い て は,同 様 の タ イ ム で あ っ て も 参 加 者 の 能 力 に よ っ て そ の 軌 道 は 異 な っ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る.Bonnyaudら は,脳 卒 中患 者 のTUGの 軌 道 を分 析 し た.そ の 結 果,健 常 者 と 比 較 して 軌 道 の 動 揺 が 大 き く 軌 跡 長 が 長 く な る こ と を 示 し た.ま た,同 程 度 の タ イ ム で 歩 行 して い る 脳 卒 中 患 者 の 場 合 で も, そ の 軌 道 の ば ら つ き は 大 き く,ゆ っ く り と短 い 軌 道 で 歩 く者 や 素 早 く 遠 回 りの 軌 道 を通 る も の な ど,歩 行 方 略 の 個 人 差 が あ る こ と を 明 らか に し た(Bonnyaudet a1.,2016;図2‑1‑2).ま たNishiguchiら は,軽 度 認 知 症 症 例 を 対 象 と し た 軌
道 分 析 を お こ な っ た.そ の 結 果,健 常 高 齢 者 と 同 等 の タ イ ム で 遂 行 で き る も の の,往 路 が 直 線 的 な 軌 道 と な り,方 向 転 換 後 の 復 路 軌 道 を 予 期 し た 調 整 が 行 え て い な い こ と を 報 告 し た(Nishiguchietal.,2017;図2‑1‑3).こ れ ら二 つ の 検 討 か ら は,TUGの 軌 道 分 析 は 転 倒 危 険 性 を 評 価 す る 上 で 有 益 な 情 報 を 提 供 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た.
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図2‑1‑2同 様 の 平 均 タ イ ム(左:20.7,右:20。8)を 示 す 脳 卒 中 患 者2名 の 歩 行 軌 道(Bonnyaudetal.,2016)
実 線 は 片 麻 痺 群 の 平 均 軌 道,破 線 は そ れ ぞ れ の3試 行 の 軌 道(い ず れ も反 時 計 周 り)を 示 す.同 様 の タ イ ム だ が,そ の 平 均 軌 道 は 異 な る.
健 常 高 齢 者 年 齢:63歳
TUGタ イ ム=6.10(s)
M◎vmg d…rect!on
毒 /気
φ 瑛6
誠へ
Forward phase 図2‑1‑3
(Higashietal
BackwardBackward phasephase
㍉ーτ 黙
軽度認 知症 }。5年 齢 ・74歳
TUGタ イ ム=5.72(s)
◎3
ー
F◎rward phase
健 常 高 齢 者(左)と 軽 度 認 知 症 例(右)のTUG軌 道 の 傭 畷 図 .,2017)
タ イ ム に ほ と ん ど 差 は な い が,認 知 症 例 で は 往 路 区 画 の 重 心 軌 道 が よ り直 線 的 に な っ て い る.ま た,方 向 転 換 時 に コ ー ン に 接 近 した 位 置 を 通 る.
速 度 の 調 整 に つ い て は,転 倒 リス ク の 高 い 者 で は 全 体 的 に 速 度 や 加 速 度 の 変 化 を 抑 え る 傾 向 に あ る こ とが 明 らか に な っ て い る.健 常 高 齢 者 と転 倒 高 リ ス ク の 高 齢 者 にお け るTUG中 の 歩 行 加 速 度 を 比 較 す る と,高 リ ス ク 群 で は 加 速 度 の 変 化 が 少 な く,緩 や か な 加 減 速 を 行 っ て い る こ とが 明 らか と な っ た(Weisseta1.,
2011;図2‑1‑4).Higashiら の 検 討 に お い て も,転 倒 リ ス ク の 高 い 者 で は 歩 行 速 度 ・加 速 度 の 低 下 を き た す 結 果 とな っ て お り,加 え て,前 後 方 向 だ け で な く 左 右 方 向 へ の 重 心 加 速 度 も 減 少 す る こ と が わ か っ た.こ の 反 応 は,歩 行 を安 定 さ せ る た め に 重 心 移 動 を 抑 え た 戦 略 で あ り,安 定 性 を 高 め た 結 果 と し て 生 じ た と 考 え ら れ る(Higashietal.,2008).こ れ ら の 知 見 か ら,速 度 変 化 の 観 点 か ら 見 る と,転 倒 リ ス ク の 高 い 者 で はTUG中 の 速 度,加 速 度 の 変 化 を 緩 や か に し,歩 行 の 安 定 性 を 高 め る 戦 略 を と っ て い る と い え る.
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図2‑1‑4(左)加 速 度 計 の 装 着 図
(右)健 常 高 齢 者,転 倒 経 験 者 のTUGに お け る 速 度 変 化 (Weissetal.,2011)
左:腰 部 に つ け た 加 速 度 計 を 用 い て 動 作 中 の 速 度 変 化 を 算 出 す る.
右=転 倒 経 験 者 で は 四 角 で 囲 っ た 歩 行 区 画 に て,加 速 度 の 変 化 が 小 さ く か つ
1.3TUGの 歩 行 調 整 と 認 知 機 能 と の 関 係
TUGに お い て 復 路 で の 軌 道 を 予 期 して 歩 行 を 調 整 す る た め に は,視 覚 的 に 先 々 の 状 況 を 捉 え て 認 知 し,自 身 の 歩 行 を 調 整 す る こ と に な る.そ の た め,視 覚 情 報 に 基 づ い て 運 動 調 整 の度 合 い を 決 定 す る認 知 機 能 も 重 要 な 役 割 を 持 つ(Patla, 1997).そ の 観 点 か ら,TUGの 所 要 時 間 と注 意 機 能 や 遂 行 機 能 と い っ た 広 義 の 認 知 機 能 と の 関 連 も 検 討 さ れ て き た.そ れ ら の 研 究 が 示 し た の は,認 知 機 能 が 低 下
し て い る ほ ど,TUGの タ イ ム が 遅 延 す る と い う こ と で あ る.Donoghueら は,様 々 な 種 類 の 認 知 機 能 テ ス トの 結 果 とTUGの タ イ ム と の 相 関 関 係 を 調 査 し,総 合 的 な 認 知 機 能 だ け で な く 注 意 機 能 や 記 憶 力 な ど と い っ た 個 々 の 認 知 機 能 に つ い て も, 成 績 の い い 高 齢 者 で はTUGの タ イ ム が 短 く な る こ と を 示 し た(Donoghueetal., 2012).ま た,ス トル ー プ 課 題 の よ う に 直 接 的 な 運 動 を 伴 わ な い 前 頭 葉 機 能 の 評 価 テ ス トに お い て も,認 知 機 能 が 保 た れ て い る 者 で はTUGの タ イ ム が 短 く な る 傾 向 が 認 め ら れ た(McGoughetal.,2011).
認 知 機 能 と タ イ ム の 関 係 が 明 らか に な る に 従 い,TUGに 運 動 や 認 知 課 題 な ど の サ ブ タ ス ク を 課 し たDual‑TaskTUGの 方 が,転 倒 危 険 性 を よ り正 確 に 評 価 で き る の で は な い か と い う考 え が 提 案 さ れ た.Hofheinzら は 高 齢 者 に 対 し,通 常 のTUG の ほ か に 数 字 の 逆 唱 を行 うcognitive‑TUGと 水 の は い っ た グ ラ ス を 運 ぶmanual‑
TUGを 行 い,12ヶ 月 後 の 転 倒 状 況 を 調 査 し た.そ の 結 果,cognitive‑TUGが 最 も 鋭 敏 に 転 倒 リス ク を 予 想 で き た こ と を 示 し た(Hofheinz&Mibs,2016).認 知 課 題 の 種 類 に よ る 違 い も検 証 さ れ て お り,注 意 を 外 か らの 情 報 に 向 け る 様 な 課 題 で は,健 常 若 年 者 で あ っ て も有 意 に タ イ ム が 遅 延 す る こ と が 明 ら か に な っ た
(Tamuraetal.,2018).こ れ らの 先 行 研 究 の 結 果 か ら,TUGの 歩 行 路 上 に 障 害 物 配 置 の よ う な 視 覚 的 な 認 知 負 荷 を 加 え,歩 行 を ど の よ う に 調 整 して い る の か を 分 析 す る こ と で,参 加 者 の 歩 行 能 力 を よ り強 く 反 映 した 評 価 に つ な が る 可 能 性 を 考 え た.
一
一
歩 行 を 調 整 す る 時,人 は 視 覚 情 報 に 基 づ い て 予 期 的 な 調 整 を行 う.こ こ で い う 予 期 的 な 調 整 と は,「 近 い 将 来 起 こ り う る 状 況 に 対 し て,あ ら か じ め 備 え る よ う に 働 く 運 動 の 調 整 」 の こ と を指 す.我 々 の 生 活 環 境 は 人 や 物 に あふ れ て お り,環 境 の 状 況 に 合 わ せ て 進 む 方 向 や ス テ ッ プ 位 置 な ど を 調 整 す る 必 要 が あ る.そ の た め,方 向 転 換 や 障 害 物 回 避 の よ う に 歩 行 の 調 整 が 求 め ら れ る 場 面 で は,動 作 に 先 ん じて 視 線 や 頭 部 を 動 か し,視 線 を 常 に 進 行 方 向 へ 向 け る 様 な 姿 勢 調 整 を 行 っ て い る(Hollands,Patla&Vickers,2002;Sreenivasaetal.,2008).こ う し た 場 面 に お い て,視 覚 は 方 向 転 換 や 段 差 ま た ぎ な ど の 動 作 直 前 に こそ 必 要 な も の
の,動 作 中 に は 視 覚 情 報 が 無 くて も 動 作 は 遂 行 可 能 で あ る(Patlaetal.,
1996;図2‑2‑1).進 行 方 向 へ 視 線 を 向 け 予 期 的 に 備 え る こ と で,安 定 し た 歩 行 を 継 続 し て い る の で あ る.
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図2‑2‑1(左)方 向 転 換 課 題 の 模 式 図
(右)各 方 向 転 換 角 度 に お け る 視 覚 情 報 の 利 用 時 間 (Patlaetal.,1996)
左=ラ ン ダ ム で 設 定 した 角 度 のmat3に 向 か う課 題.歩 行 路 上 のmat1に 右 足, mat2に 左 足 を 乗 せ,方 向 転 換 を 行 う.参 加 者 は 手 元 の ス イ ッ チ を 押 して い る 間 だ け 前 が 見 え る ゴ ー グ ル を 着 用 し,必 要 な と き だ け 視 覚 情 報 を 得 る よ う に しな が
ら 歩 行 す る.
右=ス タ ー トか らmat1ま で に 視 覚 情 報 を 利 用 し た 時 間(上 段)と,mat1以 降 に 視 覚 情 報 を 利 用 した 時 間(下 段).mat1を 超 え て か ら は 視 覚 情 報 が ほ ぼ 遮 断 され て い て も 方 向 転 換 は 可 能 で あ っ た.
これ に 対 し て,高 齢 者 は 歩 行 時 に 視 線 が 前 方 に 向 か ず,視 線 の 移 動 も 乱 れ や す い た め,視 覚 情 報 を 的 確 に 得 る こ とが 難 し い こ とが 知 られ て い る.高 齢 者 に お け る 歩 行 中 の 視 線 移 動 は 様 々 な タ ス ク で 検 討 さ れ て き た.Yamadaら はMulti‑Target SteppingTaskと い う歩 行 課 題 を行 い,課 題 中 の 視 線 移 動 を 検 証 し た.こ の 課 題 は10mの 歩 行 路 中 に 等 間 隔 で 配 置 し た3色 の タ ー ゲ ッ トの 内,規 定 し た1色 の タ ー ゲ ッ トを 踏 み な が ら歩 く と い う歩 行 課 題 で あ る .こ のテ ス トを高 齢 者 と若 年 者
で 実 施 し 注 視 点 を 調 べ た と こ ろ,高 齢 者,と りわ け 転 倒 リス ク の 高 い 高 齢 者 で は 視 線 が 足 元 近 くの タ ー ゲ ッ ト に 向 い て い る こ と が 明 らか に な っ た(Yamadaetal.
2012;図2‑2‑2).ま た,Paquetteら は ポ ー ル 状 の 障 害 物 回 避 課 題 中 の 視 線 移 動 を 分 析 し た.そ の 結 果,高 齢 者 で は 視 線 が 有 意 に 床 面 に 向 い て お り,進 行 方 向 へ の 注 視 時 間 が 短 い こ と が わ か っ た(Paquette&Vallis,2010;図2‑2‑3).以 上 の 結 果 か ら,高 齢 者 は 視 線 が 床 や 足 元 に 向 い て し ま う こ と で 先 を 見 通 せ ず,先 の 環 境 を 見 通 す こ と が 難 し い こ と が 明 らか と な っ た.さ ら に,Bockら はVRを 用 い て 屋 外 環 境 を 再 現 し た 歩 行 課 題 を 行 い,視 線 の 停 留 時 間 を 計 測 し た.そ の 結 果,高 齢 者 で は 通 行 人 や 動 物,信 号 と い っ た 動 き の あ る 物 体 に 視 線 が 停 留 し て し ま い, 進 路 上 へ の 注 視 が 若 年 者 よ り短 く な る こ と が 明 らか に さ れ て い る(Bock,Brustio
&Borisova,2016).こ う した 歩 行 中 の 視 線 に 関 す る 研 究 結 果 か ら,高 齢 者 は 先 を 見 通 す の に 時 間 を 要 し,予 期 的 に 歩 行 を 調 整 す る こ と が 困 難 に な っ て い る と考 え
られ る.
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図2‑2‑2(左)歩 行 中 の 様 子
(右)Multi‑TargetSteppingTaskの 模 式 図(Yamadaetal.,2011) 左=歩 行 中 の 視 線 移 動 を ア イ マ ー ク レ コ ー ダ ー に て 計 測.
右=特 定 の タ ー ゲ ッ ト(図 は 白 を 選 ん だ 場 合 の 例)を 踏 み な が ら 歩 い て い く.
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図2‑2‑3(左)障 害 物 回 避 課 題 の 模 式 図
(右)障 害 物,地 面,前 方 の 壁 面 へ の 注 視 時 間 の グ ラ フ (Paquette&ValIis,2010)
左=障 害 物(OBS)に 向 か っ て 歩 き ト リガ ー マ ッ トを 踏 む と,左 右 ど ち らか の ラ イ トが 光 り回 避 方 向 を 規 定 す る.
右=高 齢 者(下 段)は 若 年 者(上 段)と 比 較 し て,地 面 へ の 注 視 時 間 が 長 く 障 害 物 や 前 方 壁 面 へ の 注 視 が 短 い.
2.2反 応 時 間 の 遅 延
高 齢 者 で は,刺 激 に対 す る 反 応 が 全 般 的 に 遅 延 す る.そ の た め,予 期 的 な 反 応 に つ い て も 開 始 が 遅 れ る こ と が あ る.LEDの 点 灯 を 合 図 に 歩 き 出 し1m先 の 障 害 物 を 跨 ぐ と い う ス テ ッ プ課 題 を 用 い た 研 究 で は,転 倒 リ ス ク の 高 い 高 齢 者 で は 低 い 高 齢 者 と 比 較 した 際 に,LEDが 点 灯 し て か ら 足 を 振 り 出 し 始 め る ま で の 時 間 が 有 意 に 遅 延 す る こ と が わ か っ た(Uemuraetal.,2011).高 齢 者 の 反 応 時 間 に つ い て は 単 純 反 応 課 題 や よ り高 度 な 選 択 反 応 課 題 で も 調 査 さ れ て お り,バ ラ ン ス 能 力 の 低 い 者(Lord&Fitzpatrick,2001)や よ り 年 齢 の 高 い 者(Fozardetal.,
1994)で は 反 応 時 間 が 遅 く な る こ と が わ か っ た.こ の 背 景 に は 中 枢 神 経 機 能 低 下 に 伴 う 注 意 機 能 低 下 が 影 響 し て い る と考 え ら れ て お り,デ ュ ア ル タ ス ク にて 注 意 を 歩 行 動 作 か らそ らす こ と で 反 応 時 間 が 有 意 に 遅 延 して バ ラ ン ス を 崩 し や す く な る こ とが 知 ら れ て い る(Sturnieks,George&Lord,2008).高 齢 者 は こ う した 反 応 時 間 遅 延 の 影 響 を う け て 動 作 調 整 の 開 始 が 遅 く な る こ と で,予 期 的 な 調 整 が 乱 れ る と考 え ら れ て い る.
2.3高 齢 者 の 保 守 的 な 調 整
高 齢 者 で は 歩 行 の 予 期 的 調 整 に お い て バ ラ ン ス を 崩 さ な い よ う に,安 定 性 を 高 め る 保 守 的 な 戦 略 を と る 傾 向 に あ る こ とが 明 らか に な っ て い る(Tournier,
Do㎜es&Cavallo,2016).例 え ば 方 向 転 換 動 作 に お い て,高 齢 者 は 速 度 を 落 と し て 歩 数 を 増 や し た 方 略 を と る(Paquette&Vallis,2010;Thigpenetal.,
2000).ま た,足 元 の 障 害 物 を ま た ぐ課 題 に お い て も,高 齢 者 は 若 年 者 よ り1歩
早 くス テ ッ プ を 調 整 し,急 な ス テ ッ プ の 調 整 を 避 け る 傾 向 に あ る.(Chenet
al.,1994).こ れ ら の 方 略 は 重 心 を 支 持 基 底 面 内 に と ど め,バ ラ ン ス の 安 定 を優 先 す る 保 守 的 な 戦 略 で あ る と さ れ て い る.
確 か に こ の 保 守 的 な 方 略 は,速 度 が 遅 く,か つ 重 心 が 支 持 基 底 面 内 に と ど ま る と い う 点 に お い て は 安 全 性 を 高 め る こ と が で き る.と こ ろ が い く つ か の 研 究 に よ れ ば,こ う し た 方 略 を と る こ とが,か え っ て バ ラ ンス を 崩 す リ ス ク に も つ な が る こ と が 指 摘 され て い る.す な わ ち,重 心 を 支 持 基 底 面 に 留 め よ う と歩 数 を 増 や す こ と で,か え っ て ス テ ッ プ が ば らつ き つ ま ず く危 険 性 が 高 ま る の で あ る
(Mancini,2016,;図2‑2‑4).ま た,保 守 的 な 回 避 で は 時 間 を要 し急 な 調 整 が 困 難 と な る た め,回 避 ま で の 時 間 が 短 い 状 況 で は つ ま ず き や 転 倒 な ど の リ ス ク が 高 く な る 傾 向 に あ る(Galna,2009)こ の よ う に 高 齢 者 で は 姿 勢 の 安 定 を優 先 し た 保 守 的 な 調 整 を 行 う傾 向 に あ る が,そ の 結 果 バ ラ ン ス を 崩 す リ ス ク が 高 ま っ て
い る 可 能 性 が あ る.
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図2‑2‑4タ ー ン に 要 す る 時 間,速 度,ス テ ッ プ 数 の 比 較 (Mancinietal.,2016)
過 去12ヶ 月 の 転 倒 回 数 で 高 齢 者 を 群 分 け し,日 常 生 活 中 の タ ー ン 動 作 を 観 察 ・分 析 した 結 果,転 倒 リス ク の 高 い 者(2回 以 上 転 倒 した 者)で は ス テ ッ プ 数 の 多 い ゆ る や か な タ ー ン動 作 を 行 っ て い た.
2.4問 題 の所在:本 研究 のポイ ン ト
これ まで見て きたように,TUGは 高齢者 の転倒 リスクを評価す るテス トとして 簡便かつ優れた指標で あ り,復 路 を見越 した歩行調整 を包括 的なタイム(所 要 時 間)で 検討 して きた.し か し,TUGの タイムに基づ く評価 では,歩 行 の軌道や速度 を どのように調整 して いるのかが詳細 に評価 で きない.つ ま り,タ イ ムの遅延が 予期的な調整 に難渋 した結果なのか,単 純な運動機能低下 による歩行速度低下 の 結果なのか を判別す ることができな い.歩 行 の予期 的調整は,高 齢者 に とって難 易度が高 く,転 倒 リスクとの関係 もたびたび報告 されて いる.そ のため,TUGに お いて予期的な調整が タイムによ り強 く影響す る状況 を設定 し,そ の歩行 戦略を分 析す ることで,予 期 的な調整 を簡便 かつ詳細 に検討 できる可能性 を考 えた.
本研 究では,TUGの 復路上にポール を配置 した障害物TUGを 行 い,高 齢者が ど の ような歩行 調整の方略 を選択 して いるのか を明 らか とす る ことを 目的 とす る.
緒言で も述べ たよ うに,障 害物TUGを2つ の課題設定 に分 けて検討す る.ま ず障 害物TUG(自 由選択)(以 下,自 由選択課題)を 行 い,続 いて障害 物TUG(強 制選 択)(以 下,強 制選択課題)を お こな った.自 由選択 課題では,4種 類 の障害物配 置 条件それぞ れ に対 して回避方 向(外 側 回避,あ るいは内側 回避)を 自由に選択 して もらった.強 制選択課題 では,同 様 の障害物位置 の設定 に対 して どち ら側 を 通 るか,事 前 に実験者が指示 した.も し所要時間 の短 い軌道 を予期 的 に選択 でき て いたな らば,自 由選択課題 におけ る回避方向の選択割合 と,強 制選択課題 にお け る所要時間が対応 し,障 害 物位置 に合わせて所要時 間の短 い軌道 を多 く選択 で き るはずである.高 齢者では こうした状況 にて,効 率 的な方 略よ りも緩 やかな保 守的方略を優 先 して選択す る と仮説 を立 て,検 証 した.
第3章 実験報告
第1節 実験全体 の概要
本研 究では1つ の実験 に対 し複数の検証 を行 った.そ のため,第1節 で実験方 法 の概要 につ いて解 説 し,そ の後 は検証 内容 ごとに 「算 出項 目」 「統計処理 」 「結 果 」「考察」をまとめ ることとした.本 研究 手続 きは首都大学東京研究安全倫理委 員 会による審査を受 け,承 認 された(承 認番 号H31‑5).
第1検 証 では,高 齢者が 自由選択課題 にて効 率性 の高 い軌道 を選択 出来ていた のかを検 証 した(第2節).ま た,第1検 証 にて高齢 者が どのよ うな軌道 を優 先的 に選択 したのかを追加検証 した(第3節).第2検 証では,通 常TUGに 対す る障害 物TUGの 所要時間の遅延 に着 目し,高 齢者が障害物TUGの どの場面 に時間 を要 し て いるかを検 証 した(第4節).第3検 証 では,こ れ らの検証 を踏 まえ,障 害物 TUGに おける高齢者 の予期的歩行調整の方略 とバ ランス能力 との 関係性 について 検証 した(第5節).
1.1実 験 参 加 者
本 研 究 で は 健 常 高 齢 者 と 健 常 若 年 者 に 対 して 同 じ課 題 を 実 施 し て も ら い,両 群 の 比 較 を す る こ とで,高 齢 者 の 予 期 的 歩 行 方 略 の 特 徴 を 明 ら か に す る こ と と し た.
健 常 高 齢 者27名(74.2歳 ±3.8歳,男 性13名,女 性14名,身 長160.3±10.4cm, 体 重56.8±10.9kg)と 健 常 成 人20名(22.9±5.0歳,男 性12名,女 性8名,身 長165.2±9.5cm,体 重61.7±13.4kg)を 対 象 と し た(表3‑1‑1).健 常 高 齢 者 は,65歳 以 上 で 独 歩 が 自立 し て お り,歩 行 に 支 障 を き た す 整 形 外 科 疾 患 や 神 経 疾 患 を 有 しな い 者 と した.ま た,募 集 は 大 学 周 辺 地 域 在 住 者 に 向 け て 行 い,応 募 し た 希 望 者 の 中 か ら呼 び か け,主 体 的 に 参 加 し て も ら っ た.歩 行 に 支 障 を き た す 整 形 外 科 疾 患 や 神 経 疾 患 を 有 す る 者 は 除 外 し た.ま た,募 集 は 本 学 大 学 院 生,な ら
表3‑1‑1.参 加 者 情 報
健 常 高 齢 者(n=27)健 常 若 年 者(n=20)p値 年齢(歳)
性別
身 長(cm) 体 重(kg) BOOMER(点) MMSE(点)
通 常TUGの タ イ ム(s)
74.2±3.8 男 性13名 女 性14名 160.3±10.4 56.8±10.9
15.1±0.8 29.2±1.45 6.82±0.94
22.9±5.0 男 性12名 女 性8名 165.2±9.5 61.7±13.4
5.14±0.55
〈0.001 n.S,
n.S.
n.S.
〈0.001
※ 年 齢 ・身 長 ・体 重 ・通 常TUGの タ イ ム1対 応 の な いt検 定,性 別1カ イ ニ 乗 検 定 有 意 水 準5%n.s.=notsignificant
び に 実 験 参 加 メ ー リ ン グ リス ト に 登 録 し て い る 本 学 学 生 に 呼 び か け,主 体 的 に 参 加 し て も らっ た.
高 齢 者 に つ い て は,認 知 機 能 と視 力 に 問 題 が な い こ と を 確 認 す る た め,精 神 的 健 康 状 態 と視 力 を,そ れ ぞ れMiniMentalStateExamination(以 下,MMSE)と 視 力 表 を 用 い て 検 査 し た.MMSEは11個 の 設 問 か らな る30点 満 点 の 簡 易 認 知 症 検 査 で あ り,23点 以 下 で 認 知 症 の 疑 い が あ る と診 断 す る.視 力 表 は 国 際 基 準 に 則 り, ラ ン ドル ト環 を 用 い た 視 力 表 を 用 い た.加 え て,4種 の 異 な る バ ラ ンス 評 価 テ ス
トか ら な る 評 価 ス ケ ー ル(BalanceOutcomeMeasureforElderRehabilitation:
BOOMER)を 用 い て,バ ラ ン ス 能 力 を 評 価 し た(図3‑1‑1).BOOMERは 測 定 課 題 の 一 つ で も あ るTUGに 加 え,閉 眼 立 位 テ ス ト,フ ァ ン ク シ ョ ナ ル リー チ テ ス ト,ス テ ッ プ テ ス トの4テ ス トか ら な る バ ラ ン ス 評 価 ツ ー ル で あ る.そ れ ぞ れ の テ ス トの 結 果(閉 眼 立 位 テ ス トの 秒 数,フ ァ ン ク シ ョ ナ ル リ ー チ テ ス トの 距 離 ス テ ッ プ テ ス トの ス テ ッ プ 数,TUGの 所 要 時 間)を 基 に,バ ラ ン ス 能 力 を0〜16点 で 点 数 化 す る.一 回 の 計 測 が5分 〜10分 で 済 む こ と,総 合 的 な バ ラ ン ス 評 価 ス ケ ー ル で
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(の 閉 眼 立位 テ ス ト
閉 眼 ・下 肢 閉 脚 立 位 にて,で き る だ け 長 く保 持 す る.3回 実 施 し, 合 計 タ イ ム に応 じて 採 点 す る.1回 目の 試 行 で30秒 に達 した 場 合,残 りの 試 行 は 全 て30秒 立 て た もの とみ な す.
90秒 …4点60〜89秒 …3点30〜59秒 …2点 1〜30秒 …1点 実 施 不 可 …0点
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開始肢位
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リー チ 動 作 時
Gi)フ ァ ン ク シ ョ ナ ル リ ー チ テ ス
立 位 に て 片 側 の 上 肢 を 前 方 に挙 上 した 肢 位 (開 始 肢 位)か ら,下 肢 を 踏 み 出 さ ず にで き る 限 り 遠 く ま で 前 方 に リ ー チ しそ の 距 離 を 測 定 す る.
31cm以 上 …4点21"30cm…3点16〜20cm
…2点1"15cm…1点 実 施 不 可 …0点
価)ス テ ッ プ テ ス ト
立 位 と な り,片 側 の 足 を 高 さ7.5cmの 台 に15 秒 間 で で き る だ け 多 く 上 げ 下 ろ しす る.左 右 と も 計 測 し,平 均 の 回 数 を も と に 採 点 す る.
13回 以 上 …4点9"12回 …3点
6"8回 …2点1〜5回 …1点 実 施 不 可 …0点
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(iv)TUG
椅 子 に腰 か け,合 図 と と も に 立 ち 上 が り3m先 の コ ー ン を 回 り,着 席 す る ま で の タ イ ム を 計 測 す る.各 自 回 りや す い1方 向 の み 測 定 し,快 適 な 速 度 で 歩 行 す る.計 測 課 題 の TUGと は 分 け て 実 施 す る.
10秒 以 下 …4点11"20秒 …3点21"30秒 …2点31秒 以 上 …1点 実 施 不 可 …0点
図3‑‑1‑1BOOMERに 含 ま れ る4つ の テ ス トの う ち,TUGを 除 く3テ ス トの 内 容(TUG は 本 文 で 説 明)
あ るBergBalanceScaleと の 強 い 相 関 が み ら れ る こ と か ら(Haineseta1.2007, Kuysetal.,2011),今 回 バ ラ ン ス 評 価 の 指 標 と し て 採 択 し た.
1.2実 験 課 題
本 研 究 で は 練 習 課 題 と し て 通 常TUGを 行 い,そ の 後 メ イ ン 課 題 で あ る 障 害 物TUG を 実 施 し た.TUGの 実 施 方 法 は 国 際 的 に 利 用 さ れ る 方 法 の 一 部 を改 変 し,折 り返
し の 指 標 を カ ラ ー コ ー ン か ら ポ ー ル に 変 更 した(図3‑1‑2上 段).ポ ー ル に 変 更 し た 理 由 と し て,コ ー ン で は 身 体 を カ ー ブ の 内 側 に倒 す こ と で,障 害 物 位 置 に 関 係 な く 一 定 し て 距 離 の 短 い 軌 道 を 選 択 し て し ま う こ と を懸 念 し た.参 加 者 は 椅 子 に 腰 か け た 状 態 か ら 開 始 の 合 図 と と も に 立 ち 上 が り,3m先 に 設 置 し た 折 り返 し指 標 の ポ ー ル を 回 り,再 び 椅 子 に 腰 か け る課 題 を 行 っ た.歩 行 速 度 に つ い て は 最 大 努 力 で の 歩 行 を 促 す た め,「 な る べ く早 く,か つ 転 倒 し な い 速 度 で 歩 く 」よ う 声 掛 け を し た.障 害 物 を 回 る 方 向 は,反 時 計 回 り の1方 向 の み と した.
練 習 課 題 を1試 行 行 っ た 後,障 害 物TUGへ 移 行 し た.障 害 物TUGで は,ポ ー ル 状 の 障 害 物 を 方 向 転 換 後 の 復 路 の 位 置 に,折 り返 し指 標 と 並 ぶ よ う に 配 置 し た.
障 害 物 の 位 置 は 肩 幅 と の 相 対 値 で 決 定 し,肩 幅 の0.9倍,1.05倍,1.2倍,1.35
倍 の4条 件 と した(図3‑1‑2下 段).参 加 者 に は 障 害 物 の 配 置 変 更 か ら試 行 開 始 ま で は 顔 を ふ せ,合 図 と 共 に 顔 を あ げ て 歩 く よ う 指 示 した.速 度 に つ い て は,最 大 努 力 を 促 す た め,「 障 害 物 に 衝 突 し な い よ う に し つ つ,な る べ く早 くか つ 転 倒 し な い 速 度 で 歩 く」 よ う 求 め た.障 害 物 を 回 る 方 向 は 通 常TUGと 同 一 で あ り,反 時 計 回 り の1方 向 の み と し た.
障 害 物TUGは2種 類 の 課 題 条 件 で 行 っ た.第1に,参 加 者 に 回 避 方 向 を 自 由 に 選 択 さ せ る 課 題(以 下,自 由 選 択 課 題)を 行 っ た.自 由 選 択 課 題 で は 参 加 者 に 回 避 方 向 を 自 由 に 選 択 し て も ら っ た.試 行 数 に つ い て は,障 害 物4条 件 ×実 施 回 数
障害物
ポ ー ル の 高 さ=120cm
直 径12.5cm
麟 ・
障 害 物 の 配 置 に つ い て 1.方 向 転 換 後 の 位 置 に,
折 り返 し 指 標 と 並 ぶ よ う に 置 く.
2.障 害 物 配 置 は,折 り 返 し 指 標 か ら 肩 幅 の0.9イ 音1.05倍,1.2倍,
1.35倍 の4条 件 と し た
図3‑1‑2(上)実 験 環 境 の 写 真(方 向 転 換 区 画 か ら撮 影).
折 り返 し指 標 と 障 害 物 は 同 じポ ー ル を 用 い た.
(下)障 害 物 の 配 置 条 件 の 模 式 図.