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費用曲線の測定
一32一
費 用 曲 線 の 測 定
古瀬大
山 ノ 、
序
費用と生産量との間の關係を規定する所謂費用函敏(8・︒酔皆閏︒寓o昌)の形態︑その特性に就ては︑クールノー以
來多くの脛濟学者の手にょつて理論的研究が重ねられ︑特にチェンバレン︑ロビンスン以來の近代猫占理論の不可訣な
理論的嬰具となつている︒然し此等の経濟学者が前提とした費用曲線は︑決して個々の企業に就ての統計的・会計的
調査から得られたものではなくて︑何れも國民経濟的現象としての債格・生産量關係から出焚して︑それを完全競孚
の下に於ける均衡理論的假定の下に理想化し︑斯る理想化された需要供給關係に於て均衡が成立する爲の必要條件と
しての費用曲線の具備すべき特性を績繹せんとした︑言わぱ︑経瞼的存在としての費用曲線ではなくて論理的構成物
としての費用曲線であつた︒從つて︑逆に斯る観念的費用曲線(吾々が総ての教科書の中に見出す逆S字形曲線)か
ら出護して現實の市場關係を読明せんとすることは︑明かな循環論法であつて︑斯る推論過程から生れた多くの結論
が︑現實の豊富な複雑さの前にその力を失うに至つたのも當然の事と言えるであらう︒
一九三〇年代の末以來︑ディーン︑インテマを初めとして多くの学者が費用曲線の形を實誰的に求めようと努めた
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の拡︑之の様な理論の抽象性を少しでも現實に接近させようとする努力の現れであつた︒そめ結果として確認された
費用曲線の線形性昏同雪島ξ'そのシフトの容易なこと︑等は從來の抽象理論の読明し得ぬ諸事實を開明することに
成功したのである︒一
費用と生産量の問題は︑維濟学の問題であると同時にまた︑経螢学の問題でもある︒企業は決して極大利潤のみを
目標とするものではないにしても︑費用的観黙・損釜的観勲はその政策決定に封して最も大きなウェイトを持つ︒費
用曲線が具艦的に如何なる形を持つかを知ることは︑合理的経螢の途行にとつて不可峡の要素であり︑從つて経螢学
こそ経濟学にもましてその統計的研究を必要としたにも拘らす︑維螢学者達はその理論の構成に際して︑これを経濟
学に於ける抽象的假構物に求めたのであつた︒
経濟学に於ては此の敏ケ年の間に︑薪しい短期的企業均衡理論への努力が着々と進められている︒從來の抽象的諸
假定は吹々に現度的なものに改められ︑量曇7鷲o釦二︒募び書螢一凶ξ‑o書葺ご一ごヨの如き流通面の具艦化許りでなく︑
更に経螢の内部機構にまで立入つて︑所有形態︑支配灌の問題︑管理機構,葺罫帯ざる宣碁'萎昌ゆ号ぎ‑鷲08︒・のの場
ノ合の内部均衡の問題等が論ぜられている︒︑
経螢学に於ける蕉來の猫乙的抽象的費用理論は︑右の如き維濟学の新しい實誰的成果を取入磁︑更に進んで自ら斯
る研究に参加することにょつてその新しい展開を圃るのでなければ︑具艦的輕螢問題を塵理する能力を喪失してしま
うであろう︒アメリカに於て︑国碧詳o墓す碧o訓男o惑娼①一等によつて嚢展せしめられた切話夢ド嗣く①鐸P昌箪遂謬は
斯る費用曲線具騰化の素朴な試みである︒吾㍗は更4︑精密化された費用曲線・牧入曲線を管理組織の中に導入し︑
原慣計算制度・豫算統制制度との結合を圖ることにょつて︑從來多くは勘にょつて決められていた維螢政策の決定を︑
より合理的な基礎の上に確立せしめることに向つて努力すべきであろう︒
費用曲線の測定
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一34‑一
と 費用︑曲線⁝の測定
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の斯る目的に到達する爲の基礎的作業として︑以下に於て主.として︼九三〇年以降に行われた費用曲線測定の試み
︑それに封する批判とに關.する諸論文の跡を辿つてみよ.うと思う︒
㌦︑實誰的研究文献
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'一産出量の測定
從來︑'経濟学に於ても経螢学に於ても︑産出量を軍純な物理的一女元量と考之て少しも怪まなかつた︒然し︑具膿
ゆ 的に一企業の産出量を測定することは︑一國民経濟鉄物的総生産高を測定する際に感ぜられると同様の困難を俘う︒
現實に於ける一企業の産出物はその種類に於て多種である許りでなく︑夫々の製品の質に於ても可攣性を持つ︒從つ
てそれは通常多次元量であり︑之を一次元量に換算する一般的方法は存在しない︒・︑
︑︑費用曲線の測定︑
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ρ費用曲.線の測定・
個々の企業に於て損釜分岐圖表を作成する場合には︑無反省的に夫々の製品の標準原償又はその費償を合計した金
一額を以て産出量とする例が屡々見出される︒これは費用函鐵の中に牧入函籔を導入し︑叉はその費用と産出量との間
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一の關係を多値的︑不確定的なもりとすることになる︒極端な場合には所馬各﹂ー場∂中聞生産物の市場償格で評債しのた金額をもその中に算入することにょつ一・︑コ重計算の誤りを侵ナこともある︒斯様な産出量測定法の上に立つて
経螢者が各工場の増産を要求する凝ら窯︑各工場は材料費D占め3%つ︑番多い品種だけを生窟するようになり︑
鷲o穿さ亨送葺は攣動し︑費用函敏・牧入函敏は攣形途しめられ押︑︑思わぬ損失を蒙ることになろのである︒
右の様な訣陥を避ける爲に統計的研究者は如何なる方法を採つたであろうか.最も普通に行われるのは︑夫々の製
品の相封的可攣費用に從つて加重する方法εあろ︒例へば費用曲線の最も古い研究者0,一入であるくoβ裟へζ^嵩冒コqは︑
當時の慣習に從つて一乗客キ・メートルと一貨物噸キ鐸メートルとを同じと考へて合計してわり.その理由として何
ユね奄れもその酊攣費用の等しい事を墨げている︒これは経濟学淀於ける薪謂考ナ鷲oき飼(盛に近いものであつて︑萱償法
の様に材料費の占める割合によつ褐生産量が大幅に攣動する危灘は持たないけれども︑同一費用に封して無激の
鷲o曾 簿羅騨が劉慮する催れがあろ許りでなぐ寳際原覆を使用ナ・,場合菰は同一鷲o(]崇罫葺7に樹して種々の費
用が到慮することになる︒
その他に特殊な場合として︑投入量によろ測定法潜易る︒例へば梼油工場に於ごけ︑製品が極めて多種類であり且
つその割合が可攣的であ二〇ので︑投入された原油0量を以て産粥量と見微していろ︒これもまた前記の諸訣陥を有す
るものであつて︑軍なる便宜手段以外の何物で‑Pない︒
産出量測定に就て右の檬な種々の便宜的方法が便われているのは︑勿論その測定が困難な爲でもあるが︑更にまた
その灘定の目的︑則ち一騒何の爲工産出量を測ろうとするのか︑という理由に封する反省を訣いているからではなか
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ろうか︒費用函敏測定の目的は︑それと販費函敏とを組合わせることによつて利潤を豫測しゴントロールすることに
ある︒從つて牧入函藪の攣数どなり得ない繊な生産量測定法は軍なる理論遊戯でしかない︒原贋︑費儂︑投入量等はそ
の覧oα詣審塁冥が攣ればび9菖娼憎o暁詳目鴛讐聲も攣化し︑牧入は産出量め一義的函激ではなくなつてしまうであ
ろう︒
斯様な目的に合致する爲にはその産出量測定法は次の二つの條件を満足せねぽならぬ︒第一は費用との間に軍値的
關係が成立つこと︑第二には費上との間に同じく輩値的關係が成立つことへ販費費の問題は一庶除外して考える)こ
れである︒この様な攣換を可能ならしめろ様な=兀次量は一般的には存在しない︒從つて一般的には産出量は種類お
ヘヨ よが質に關する多次元量として表示するより外ないであろう︒過去の研究に於ても鐵道および航塞輸逡の産出量は輸
逡距離とスピードの二次元量として取扱われている︒
産出量に就てはその軍位の問題の外に︑なぼ測定期聞の問題が残されているが︑これに就ては︑次節に於て費用と
併せで論するであろう︒
1餐ロ魔露㊦匿ρの欝蓼二§一〇c韓琶ロ暑二〇蜜植︾・匡・国︒導魯po℃一濾曇宰鋒欝
2鋭犀喝㊤聖ωo同ポ⇔窄o一£唱b障Qo︒・̀
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嗣硝費用の測定 ■
此所で費用というのは勿論輩なる支出ではなくて︑シュマーレンバッハの所謂原慣を意味する︒また此所では需要曲
線の形を攣える事を目的として支出される販費原償は之を除外して考乏る︒何となれば︑生産高と斯る意味に於ける
販萱費との間には何等の必然的關係も存在しないのであるから︒﹁
費用曲線の測定苧
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