長野工業高等専門学校紀要 ・第30号 (1996) ll
円形噴流の金網への衝突時における自励振動に関す る研究
第 1 報 自 励 音 と 速 度 変 動 の 関 係
倉澤英夫 羽田喜昭 笠木伸英 小幡輝夫
(平成8年9月30日 受理)
A Study on the Self‑Excited Oscillatin in a Round Jet Impinging upon a Screen.
l s t R e p o r t . T h e r e l a t i o n b e t w e e n s e l f
‑ e x c i t e d t o n e a n d v e l o c i t y f l u c t u a t i o n .
Hideo KURASAWA Yoshiaki HANEDA Nobuhide KASAGI and Teruo OBATA.
A丘nescreenisplacedvertica一lytoanaxisymmetricjet.Thediameterofthenozzle exitis28mmandtheexitvelocityis10.4m/S.Intheexperimentthescreenismovedin thedirectionofthejetaxis.Theshearlayerstartstooscillateperiodically,and simultaneouslyapuretoneisgeneratedduetotheimpingementofthejetuponthe screen.Thisself‑excitedoscillationisproducedbecausesoundpressureisfedbackso astoexertforceontheunstableshearlayernear仇enozzleexit.Ithasbeenrecognized thatthecon丘gurationofthepeaksinthesoundpressurespectrum re兄ectsthatofthe peaksinthevelocityspectrum.
1.緒 論
流体的自励振動に関 しては,最近高速増殖炉 「もんじゅ」 における温度セソサの破損事故 でにわかに注 目を浴びた現象の一つである. これは温度計のような円柱状物体の周 りを流体 が流れるときカルマン渦が発生す る. この渦形成が円柱 に対 し流体力 となって作用 し,円柱 が振動 して くる.それが再びカルマン渦の発生に影響を与 える一種の達成 した自励振動 を作 り出 し,大 きな破損事故につながった とい う推論がある.一方流れが空気のような気体 の場 合には,円柱か ら作 り出され るカルマソ渦は電線の 「ひゅーひゅー」 といった うな り音 の発 生になって くる. この場合電線そのものは振動 しても, しな くて も音 は生 じて くる. この よ うな音 は一般 に空力音響 または空力音 と呼 ばれ,新幹線 など交通機関の高速化に よ り発生す る風切 り音,高層 ビルなどの空調設備関係で生 じる気流音, さらにはOA機器における冷却 ファンか らの音 などの例1)・2)を上げることができる.
ここでは以上の流体的振動 と空力音響の二つに関連 した現象 として,流体的自励音 につい
●長野工業高等専門学校 機械工学科 教授 H 長野工業高等専門学校 機械工学科 助教授 日暮東京大学工学部 教授
HH 帝京大学理工学部 助教授
図1 実験装置と代表的記号 て検討 した.すなわち円形噴流中に金網 を噴流軸に直角に噴流の出口近 くに置 く と,せん断層の自励振動の発生 と同時 に 噴流の金網への衝突に伴 って空力音が生 じて くる. この ような空力音の特性につ いて,せん断層の振動 と対比 させなが ら ⇒
検討 した.
2.実験装置および供試金網 2‑1実験装置および測定方法
実験装置における測定部分お よび使用 した主な記号を図1に示す.送風機によ り送 り出された空気 は,直径28mmの円形 ノズル より静止空間に噴出させた.噴流 中には噴流軸に直角に金網を置 いた.そ
1.0
0.5
Ps=1.27Tnm dw=0.2mm
Il ●I̲+' W l=L
d PsL
図2 供試金網
I.0 2.0 IIJd 0 20 40 60pmm
図3 軸流速度への金網の影響
れは一辺140m,厚 さ5mの四角形の木枠に固定 し, さらに支持棒 を介 して移動装置 に取 りつ け, ノズル出ロー金網間距離 Sを変化 させた.実験 はノズル出口での速度Uo=10.4m/Sの 一定下で行 った.
速度の測定は加熱部直径5〟m,長 さ1mの Ⅰ型熱線 プローブ (H.W.)を用い,その出力 を流速計につないだ. このときプローブの挿入位置は,波形分析を目的にした場合 には変動 が明 りょうに とらえられ る, ノズル出口よ りやや下流域の7‑12mm,r/R‑1に置いた.
音 の測定は1/2イソチの コソデソサ型 マイクロホン(Mic)を金網の中心 よ り上流側84mm, 噴流軸 に対 し450の位置に一定 になるように置 き,その出力を精密騒音計 につ ないだ.また 変動信号に対す るスペク トル分析はデジタルのFFT分析器を用いた. なお音の測定を行 う 関係上,送風機から発生 した音をできるだけ除去す るために,送風機本体 は実験室 の隣に設 置 しかつ流路の途中に消音器を設けるなど,測定部分での暗騒音 レベルをできる限 り下げる
円形噴流の金網への衡突時における自励振動に関する研究 13 工夫をした. しか し実験室そのものは遮音,吸音設備が取 られるなど特別 な工夫がないため, データ収録は外乱の影響を少 なくする目的で暗騒音の小 さい夕方か ら夜にかけて行 った. こ のとき暗騒音 は47dB程度であった.
2‑ 2 供試金網の特性
使用 した金網は市販 のステソレス鋼製の平織 り金網でその詳細寸法は図2に示す.金網 の メ ッシ ュ数 は20で ある.金網 の特性 を示す 開口比β,空孔率 Sはそれぞれβ‑0.71,6‑
0.88である. ここで開口比,空孔率は次式で定義 され る.
β‑(竿 )2
E‑1‑7rdwJps2+du'2
4Ps
(1)
以上の特性 を持つ金網を ノズル出口端 に置いた とき,金網を通過す ることによ り中心速度 が どの程度減少す るかを図3に示す.測定値 はホ ットワイヤセンサにより得 られた もので, 2回の結果を示 している.金網通過直後で両者の債 は全 く異なっているが, この原因は次の ことが考 えられ る.0印ではU/Uoが1よ り大 きな値 となっている. これはセ ソサが金網 の線 と線の間に置かれた場合 に対応 し,その間を通過する縮流の影響で速度が増大 した と考 えられ る.逆 に△印で はU/Uoが1よ り小
さな債 になるが, これは線の後ろの後流部分 に位置 し,速度が低下 した と考 えられ る.級 の影響は下流に進むにつれな くな り,約10mm
下流では値が一致 し最終的にU/U0‑0.86と 一定値になる.金網の抵抗が速度エネルギの 損失なって現れ,本実験では金網がない場合 に対 し0.86Uoの速度の損失を招いている.
3.実験結果 および考察
3‑ 1 噴流の金網への衝突におけるフィー ドバ ックループの形成
金網を噴流中に置いた場合の速度変動 の波 形 (セ ン サ 位 置 はq‑12皿,r/R‑1に 固 定)を図4に示す.振幅を示す縦軸は同一の
S=19mm
I ll̲̲1̲‥し.し ̲L JIL」JlllJlJ l 「「 '「'T l1‑ーl IlTHtP T
S=20mm
1 い門 J」l llilII lm l■ C̲つ1P,、■,.
t′ー I
附 け …:̲m ーtー
〜̲つつー̲
ll「一.一'「.fl lJ l l
I
甘 二.r1I. JIl‑il ・Il l! 図4 せん断層での速度変動の波形
Shearlayer ConvectionvelocityUvmJs
SoundvelocitycmJS
図5 噴流の金網への衝突によるフィード′ミックループの形成
増幅率である. この結果金網位置がS‑19mmと20mmでは波形 が全 く異 なることがわ か る.
S‑19mmでは振幅 は極めて小 さ く周期性は全 く観測 されないのに対 し, S‑20mmでは周期性 の出現 と同時 に振幅が急増 している.S‑21,22mmではさらに振幅が増大 し, また Sの増大 に伴 いこれ ら波形 の頂点の間隔が広が ってお り,周波数が変化 していることがわか る.
S,‑20mmに示 した周期的 な波形 の出現は,せん断層の自励振動の出現 を意味 してお り,著 者等がすでに報告 した噴流‑ リング系3)・4)での現象 と定性的に一致 している.すなわち, こ
の自励振動 は図5に示 され る一つのフィー ドバ ックループの形成 によ り出現,維持 されてい る. ノズルか ら噴出 した薄 いせん断層 はもともと極めて不安定 なか く乱 を有 してお り,それ は下流方向に向かって成長 し大 きな渦構造 を持 って くる. このか く乱 は初期条件,境界条件 によ り発生 しやすい波数領域 (preferredmode)を有す るものの,拘束 のない自由噴流 で はスペク トル分布上卓越 したエネルギを有す る特定波数成分を持たない. ところが噴流中に 金網が存在す る場合 には以下 の ように して特定波数成分が卓越 して くる.流れの中の不安定 波の成長 は大 きな渦構造 となって金網 に衝突す る. この とき図示 した よ うに衝突に伴 い金網 か ら圧力パルス (普)が発生す る. これは上流へ音速 (c m/S)で伝播 しノズル出 口端近辺 に圧力変動 として作用 し,不安定波の初期段階に影響 を与 える.影響 を受けた不安定波 は再 び渦を形成 し金網 に衝突す る. このよ うな フィー
ドバ ックループの形成 によ り,特定の周波数成分 (a) を持つか く乱 のみが成長 し自励振動が生 じて くる.
この自励振動が維持 され るためのエネル嘉は,外 部的な供給 はな く平均流か ら定常的に供給 された
ものといえる.
この種 の現 象 の代 表 的 な もの と して エ ッジ 音5)〜7), リング音 が上 げ られ るが,流 れの形態 か ら考察す ると図6(a), (b),(C)に示 した概念 の相違 がある.図6(a)は二次元のス リット状 の噴流が く さび状物体 に衝突す る系で,エ ッジ音 と呼 ばれ る.
不安定 な揺 らぎを持 った噴流 は くさび状 の物体 に 衝突 し, くさびの上下 に交番 に渦を形成す る. こ のため図の2つのパ ターンで示す上下方向の振動 が くさびの前縁を境 に して起 こる.図6(b)は円形 の噴流が リング状 の物体 に衝突す る系で, リング 音 と呼 ばれ る.円形の薄いせ ん断層は下流方向 に 向かって成長 し渦輪を形成す る.渦 と渦の中間領 域が衝突す るときはそ こで圧力が高 く,外側 に向 かった流れが起 こる.逆 に渦の中心近辺が リング 前縁 に衝突す るときは,そ こで圧力が低いため リ ング内に向かった流れが生 じる∴ この よ うに リン グ前縁を境 にして内,外方向の流れが交番 に生 じ る.図6(C)は金網 の場合である.流れの形態に対
寧 ‑
戦 費
一・一Nozzle
≡≡=ヨ=
i
i5
・ J
≡ 壬 ̲ =
ト垣卑 ー j screen
∃ ;
l; l (b)
(C)
一 一一 d
ll l 図6 フィー ドバ ックにおける
流動バクTソ
円形噴流の金網への衡突時における自励振動に関する研究 し幾何学的な形状 として明確 に上下方向,あ
るいは内,外 とに流れを振 り分ける物体 (幾 何学的形状) は存在せず, この点で前2者 と 異 なってお り,今後 フィー ドバ ックの数学的 モデルを考 える上で考慮が必要 と思 える.
なおここで,噴流中に内在す る小 さな 「か く乱」そのものが 「不安定波」であ り,それ が成長す ると 「渦」構造 となることか ら,特 に3者を区別せず以後同意語 として扱 う.
3‑ 2 自励音 と速度変動の振動モー ド 自励振動の発生時にはせん断層での速度変 動は周期的に変動す る. この とき金網へのせ ん断層の衝突 により音 (圧力パルス)が発生 し, この時の波形例を図7に示す.音圧波形
15
l=I:̲ lI I t l lll7鮎 k=r l I l l l l f柚 亘 ≡t′■ヽ劫 圭
lll l l l l l
S=28mm
二」二 二].t‑ 相 二
ー1
‑
弄 .∧∃諒∈捕 克 夫‑ Yt‑
遺志
症V‑‑.‑‑‑I‑i‑ ‑
図7 音圧変動の波形例
600 は対象以外の音 (例 えば,計測器 の電源の音
など)が重畳 して くるため全体に大 きく揺 ら 550
いでいるが,基本的には周期的に変動 してい 500 ることがわかる.以後 このよ うな自励振動 に ょる周期的な波形を有す る音 を自励音 と呼ぶ. 450
次に速度,音圧変動の最大のエネルギを有 里400 す る振動成分 を最大卓越周波数 と呼び,金網 ヱ 位置に対する変化を図8に示す.横軸 にはS の直径による無次元量 とSの値を併記 した.
図中○,◇印は音圧変動 に対 し,かつ○は下 流方向,◇は上流方向‑金網 を移動 した場合 を示 している.▲,▼印は速度変動で,同様 に▲は下流方向,▼は上流方向へ移動 した場 合を示 している.なお上流方向に関 しては下 流方向 と値が異なる場合のみ示 してある.
金網位置が ノズル出口に近 い場合 には不安 定波の成長 も小 さく自励振動は発生 しない.
金網が点alとある程度下流 に位置す る と不 350
3∝)
250 200
Sound O‑dcwnstr吋n
◇‑ upstream Vekx:Ity
1.m̲lt& 恕 m 喝
85 1・Os/d l・5 2・0 2・5
0 10 20 30Sn4Vn0 50 60 ・ 70 図8 最大卓越周波数の変化
(音圧,速度変動)
安定波の成長 と同時に自励振動が発生す る. このときか く乱の周波数 と自励音 の周波数は同 一の値を取 り,Sの増大 につれ周波数は降下する.両者の値が同一 になることは,図5,図 6(C)に示す渦の形成 とその金網‑の衝突の関係か ら次のよ うに理解できる.一定周期 を持 っ た渦が金網に衝突すると,金網には交番に周期的な圧力変動が加わ るため,位相 は別 に して それに同期 した音波が発生す る.すなわち洞の衝突周期に一致 した周期の音が発生す る.吹 に点alから点blまで くると流れが不安定 とな り, より安定 した状態である a2に跳躍す る.
以下周波数の降下 と跳躍が繰 り返 され,全体 にのこ歯状の振動モー ドが得 られ る. これ らの
振動モー ドを上流側 よりそれぞれステージ1,2,3,4と呼ぶ ことにす る.
この中で特 に下流方向でのa;‑b3のステージ3領域 は極めて小 さいが, これはステ ージ 2が安定 した領域で相対的に下流域まで存在 したため と考 えられる.'またステージ3か ら4 の跳躍では,速度 はa乙に跳躍す るが,音圧 はdに跳躍 し,両者の跳躍先が異 なるが これに 関 しては後で詳述す る. さらにステー.)4のb4からの跳躍 は点eとステージ3の延長線上 に位置 して くるが, これに関 しても後で述べ る.また測定 は Sをさらに増大 させ ると, スペ ク トルの時間的ゆ らぎも増 し,かつ最大卓越成分が他の卓越成分に比較 し同 レベル とな り, 全体 に広帯域成分になって くることか らSを この程度に留めた.
3‑3 自励音 と速度変動の波形,スペク トルの比較
ここでは代表的 な音圧 (p),速度 (u)の波形お よびスペ ク トルの比較 を示す.図9は S‑24mmのステージ1の初期段階である.音圧波形の周期 は一定 しているが,SN比が悪い ため外乱の影響を受け全体 に揺 らいでいる.スペク トル分布ではf。の他 に2f。成分が音圧, 速度 ともに現れている. また音圧 スペク トル分布では電源周波数の2次に相当す る120Ⅰ七が 現れるとともに,SN比の関係か ら対象音以外の各種のスペク トル成分が含まれている.図 10はS‑40mであ り,ステージ2の真申を過 ぎた位置である.速度波形は正弦波的であるが, 音圧波形 は正弦波状か らはかな り歪んでいる.速度 スべク t/レ分布 ではf。に対 して0.5f。, 1.5f。が出現す るのが特徴的で,小 さな2f。成分を除 くと高次成分 は出現 していない. これに 対 し音圧 スペ ク トル分布では0.5f。,1.5fpが出現 しているが,相対的に現れに くく,f,の完 全 な調波成分である2f。,3f。,4f。が卓越 した成分 として出現する. この点では両者のスペク
トルは完全に相似でない部分 も存在す る.
図11のS‑48m はステージ3のa;からb。の間に位置 し,ステージ4に跳躍する前の極め て不安定 な状態にある.速度の波形 も正弦波状 とはかな り異 な り振幅が変動 し,対応 して音 圧の振幅変化 も大 きい. ところで音圧,速度の両波形は,ホ ットワイヤとマイクロホンで同 時計測 した結果であ り直接比較ができる.両者の波形の中で特に振幅の大 きところを取 ると, 音圧波形上の点A,B,C,Dは速度波形の点A,B,C,Dと完全に対応づけられ,両者 の相似性がわかる.ただ し記録計の.関係で両者の位相差 には若干の違いがある.次に速度 ス ペク トルに関 しては,f。,2f。が出現 し,他 にfl,f2,f。,f4の卓越 した成分が存在す るが, これ らf.,f2などはf。に対 し,0.5f。,1.5f。といった関係 にはない.音圧 スペ ク トルではf, に対 し2f,,3f,,・・・‑の多 くの高次成分が存在 している.また同時 に速度のスペク トルに見 られるfl,f2,f3,f4成分 は,対応 して音圧 のスペ ク トルにも出現 している.すなわち音圧 スペク トルは速度 スペク トル と比べるとより高次の調和成分が出現すること, また両者 のス ペク トルの主な成分は完全に一致することの2つの特徴がある.
まず前者について考察す る.速度はノズル出口よ りやや下流の符=12mm(Z‑12mmでもあ る) にセンサを置いて観測 してお り,そ こで存在す るか く乱の特性を分析 している. ところ が音圧 はZ‑Sに置かれた金網の中心か ら上流450の位置 にマイクを置いて分析 している.
マイクには噴流が金網 に衝突 し,その点から放射される音が主に観測 される.従 ってS‑48 m のこの例では,速度 はZ‑12mでの情報であ り,音圧 はZ‑48mmで噴流が金網に衝突 して 放射 された音 の情報 となる. このため不安定 なか く乱はZ‑12皿 と48mmの間で波数間の非線 形干渉が起 こり,下流では上流に対 しよ り多 くの卓越成分が出現 し,それが放射音 にも反映
円形噴流の金網への衝突時における自励振動に関する研究
2・0
0 10
Frequencykトヒ
図9 S‑24mmにお ける波形 お よびスペ ク トル
1.0 Frequency kHz
図10 S‑40mJnにお ける波形 お よび スペ ク トル
2・0
1.0 Frequency kHz 図12 S‑54mmにおけ る波形 お よび
スペ ク トル
2・0
10 Frequenq kHz
図1l s‑48mmにおけ る波 形 お よび スペ ク トル
17
2・0
10 FrequencykHz 図13 S‑58mmにおけ る波 形 お よび
ス・ベク トル
20
して くるため と考 えられ る.後者 は次 の よ うに考察 で きる.一般 に速度 uは平均部分 iiと変 動部分〟′の和 として次式で示 される.
u‑ii+u′ (2)
特 に変動成分u'に着 目し,かつスペク トル分布 の特徴 か ら卓越す る離散成分 の波数 をul, u2, ・・・・・・unとす ると, u'はAI・,tを振幅,時間 として概略次式で表せ る.
u′‑∑A.Isin(a,・t) (3)
これに対 し一つの流線上 でのエネルギ保存 (ベル ヌーイの式)を考慮すれば,対応 した圧力 変動 pは次の形式 になる.ただ しB.・は振幅を示す.
p‑∑B,・sin(a),・i) (4) このよ うな圧力変動が金網 に作用す るとき,当然 uz・に対応 した成分が音 として放射 され同 一成分 を持 ったスペク トルが出現す ると考 えられる.ただ しよ り厳密には音 に変換 され る際
に,波数間の相互作用,位相的変化が加わ ると推測できる.
次に図12はS‑54mJnで, ステージ4に位置す る.速度波形 は正弦波状 とは異 なるが極 めて 一定周期,振 幅で変動 している.対応 して音圧 も周期的になっている.速度のスペク トルで 紘,f。の他に大 きな成分 を持つ0.5f。お よび小 さな1.5f。が存在す る. これに対 し音圧 スペ ク トルで は, さらに2fp,2.5f。,3f。,3.5f。とよ り高い周波数 まで出現 してい る.中で も音圧 スペク トルで はf。よ りも0.5f。成分の方が大 きくなってい るのが特徴 である.,このため図8 で示 した点b3か らの跳躍先が速度では点ai,音圧では点dと異 なって くる. この主た る原 因 は前述 と同様 に測定位置の違 いが, スペク トルの大 きさの違いになった と推考で きる.特 に Sが大 きい と両者の相違 は大 きくなると予測できるものの, スペク トルの分布の形 は両者 とも類似 してお り,本質的 な点 では差異 はない.また,音圧 スペ ク トルで は0.5f。を改めて 主成分 とみなす と,f。,1.5f。は完全にその主成分の調和成分 になって くる.
図13はS‑58mmのステージ4の後期 の場合である.速度の波形では周期性がやや観測 しに くくなっているが,音圧波形では周期性がまだ強い. スペク トルでは今 までの例 とはかな り 異 な り,小 さな卓越成分が急 に増 えてお りまた卓越成分周 りのバ ン ド幅 も広が ってお り,急 に流れのランダム化が進行 した ことを示 している. また, ここで も音圧 スペク トルは,速度 の スペ ク トルを極めて よく反映 した形 になっていることが確認で きる. さらにS‑54m皿と同 様 に,速度で は f。が最大成分 であるのに対 し,音圧 では0.5f。が最大成分 とな りこの変化 は 図8に対応す る. この場合 も両者の測定位置が異なることに主な原因があると考 えられ る.
4.ま と め
一定流速を持つ円形噴流中に金網を挿入 し,それを流れ方向に移動 した とき生 じる自励振 動 につ いて検討 した.特 にこの とき生 じる自励音 とせん断層 の流体的振動 とを比較 し,次の
ことが明 らかになった.
(1) 金網の挿入 によ りせん断層 には自励振動が発生 し, これはノズル出口近 くでの微小か く 乱の存在,その下流方向‑の成長,金網への衝突 による音 の発生,その上流への伝播,微 小か く乱へ の影響の フィー ドバ ックループの形成 によ り発生す る.そ して流れの形態では エ ッジ音, リング音 と異 な り,振動 の運動 を振 り分けるよ うな幾何学的形状 は存在 してい ない.
円形噴流の金網への衡突時における自励振動に関する研究 19 (2) 発生す る振動 モ ー ドはの こ歯状 に変化 し,基本 的 に は速度 ,音圧 ともその値 は完 全 に一
致 してい る. ただ し,最大卓越成 分 のみ に着 目す ると下流域 (ステージ 4) で は必 ず し も 一致せず, この主 な原因 はそれぞれの測定位 置 の違 い に原因す る と考 え られ る.
(3)速度 スペ ク トルの形 は音圧 スペ ク トル によ く反映 され,両者 は相似 な関係 にあ り, 主 な 卓越 成分 は両者 とも出現 しその値 は一致 して いる. この ことはそれぞれ の波形 に も反映 さ れ てい る. この相似性 は流れの変 動 を波 数空 間で考 え る とき,音圧 のスペ ク トル成 分 は速 度場 で の圧力変 動 と対 応づ け られ ることか ら予測 がで きる. ただ し,下流域 で の スペ ク ト ルで は個々 の成 分 の大小関係 には不一致 が見 られ るが,測定位置 の違 いな どが主 な原 因 と 考 え られ る.
参 考 文 献
1) 藤森良夫 :車両空力音 とその制御 ,音響学会誌45巻1号 (1989),pp62‑68
2)高橋稔 ,栗林卓 ,榎木隆氏,浜田春夫他 :管路における空調ダク ト騒音の音響特性 ,音響学会 講演論文集 (1985,9)pp335‑336
3) 倉滞英夫 ,小幡輝夫 ,平田賢,笠木伸英 :軸対称せん断層の衝突に伴 う自励振動現象 ,機械学 会論文集 (B)53巻488号 (1987)pp.1254‑1261
4) 小幡輝夫 ,倉滞英夫 ,羽田喜昭 :リングに衝突す る軸対称噴流せん断層の自励振動,機械学会 論文集 (B)61巻583号 (1995)pp.890‑896
5) Powell,A:Ontheedgetone,∫.Acoust.Soc.Am.(1961)γol.33,no.4,pp395‑405
6) Ziada,SandRockwell,D:Oscillationsofanunstablemixinglayerimpinginguponanedge, J.Fluid.Mech.(1982)γol.124,pp307‑334
7) 社河内敏彦 ,伊藤忠哉 ,末松長一他 :噴流 ・エ ッジ系における噴流の発振現象 (第1報),機 械学会論文集 (B)51巻469号 (1985)pp2987‑2907