長野工業高等専門学校紀要 ・第30号 (1996) 21
円形噴流の金網への衝突時における自励振動に関す る研究
第2報 速度変動のスペク トル成分 に関す る分析 羽田喜昭 倉澤英夫 小幡輝夫 笠木伸英
(平成8年9月30日 受理)
A S t u d y o n t h e S e l f ‑ E x c i t e d O s c i l l a t i o n i n a R o u n d J e t I m p i n g i n g u p o n a S c r e e n . 2nd Report. An analysis of the spectral components of velocity fluctuation.
Yoshiaki HANEDA Hideo KURASAWA Teruo OBATA and Nobuhide KASAGI.
Self・excitedoscillationinaroundjethasbeeninvestigatedwhenafinescreenis placedverticallytothejetaxis.Thefeedbackloopisfom edbythedownstream・
convectedlargevorticalstmcturein仇eshearlayerandbytheupstream‑propagating soundpressuregeneratedby仇eimpingementofthejetuponthescreen.Fourmodal stagescanbecofirmedwi仇 discretechangesofdominantfrequencies.Neartheendof thestagethevorticalstructurebecomesunstable,andnew spectralcomponentsare produced.Thusnonlinearinteractionofthesecomponentsresultsinproductionofmany ofthem.Itisclearthat仇isnonlinearinteractionplaysanimportantroleinJumplngtO thenewstage.
1.緒 論
円形噴流中に金網を置 くと,そ こに‑つのフィー ドバ ックループが形成 され自励振動が発 生 して くる.流体力学的にはせん断層が周期的に振動 し, また音響学的には純音 に近い音が 噴流の金網への衝突に伴 って放射 されて くる.構造物の振動問題 あるいは装置系か ら生 じる 騒音問題 との関係か ら工業的にも重要であ り, この現象に関す る詳細 なデータの集積が望 ま れる. さらには現象のメカニズム,因果関係をより一層明確にし, 自励振動そのものの物理 的数式モデルの構築が重要な課題 といえる.
以上の観点か ら,可能 な限 りこの自励振動に関わる物理的な特性を明 らかにすべ きである.
本研究では第1報1)に続 いて金網位置 による波形,スペク トルの変化 に重点を置 き,周波数 間の干渉,相互作用に焦点を置いて考察 した.また考察に際 してはできるだけ流動形態 と対 応 させながら検討 した. なお ここでの考察は速度変動のみに対 して行 っているが, この理由
●長野工業高等専門学校 機械工学科 助教授
= 長野工業高等専門学校 機械工学科 教授
=●帝京大学理工学部 助教授 HH 東京大学工学部 教授
22 羽田書昭 ・倉揮英夫 ・小幡輝夫 ・笠木伸英
は速度,音圧両者 の波形, スペク トルは前報で示 した とお り相似の関係 にあること,音圧 に は対象以外の音が重畳 していることにある.
2.実験装置,方法
用 いた実験装置 は前報1)と同一 で図1に示す. これに関す る詳細 は前報 を参考にされ, こ こでは簡単に記す.送風機 は実験室外 に設置 した.送風機 に吸い込 まれた空気 は,冷却器, 消音器,整流部 を経 て ノズル部 に導き,静止大気 中に噴出 させた. ノズル出口直径 は28mm で,噴流中にはメ ッシュ数20,開孔比0.71のステンレス鋼製の平織 り金網を噴流軸 に垂直 に 置いた.実験 は ノズル出 口での速度U0‑10.4m/Sと一定 で,金網 を軸方向に移動 させた.
測定 は Ⅰ型の熱線 プローブを用いその出力を流速計 につないだ. プローブの挿入位置 は,原 則 として ノズル出口端 よ りやや下流域 のq‑12mm,r/R‑1に置いた. さらに流速計 の出力 は記録計,お よびデジタルのFFTにつなぎ,波形,スペク トル分析 を行 った.スペク トル 分析 での平均化回数は32回である.なお,以後用いた主 な記号 は図1に示 している.
3.実験結果 および考察
・
i c /
Support図1 実験装置 と代表的記号
600 550
空500
EL
‑ 45) 400 350
az● a3●
U.:10.4rTVs bZ
10 20 30 40 50
3‑ 1 自励振動の基本特性
噴流せ ん断層 に内在す る不安定波 は下流 に 向かって成長 し,大 きな組織的な構造を持 っ
Zて くる.可視化結果 によるとこれは離散的 な 渦 (渦輪) の形成 とな り,ある移流速度 で金 網 に衝突す る.衝突に伴い音波が発生 し, ノ ズル出口近 くでの不安定波を制御 し,一つの フィー ド′ミックループをつ くる.その結果, せん断層 は一定周期で振動 し,金網 か らは一 定周期 を持つ者が発生 し自励振動が発生す る.
この ときのせん断層中での速度変動のスペ ク トル分布で最大 になる成分の周波数を最大 卓越周波数 と呼び,その変化 を図2に示す.
全体 にのこ歯状 の変化 を示 し,あ る程度降
0 85 10 115 285/d 2・5
図2 速度変動に対する最大卓越周波数 図3 金網に衝突する噴流の流動形態
円形噴流の金網への衝突時における自励振動に関する研究 23 下す ると不連続に跳躍す る. この不連続の変化には金網を下流方向へ移動 させた場合 と,上 流方向‑移動 させた場合で位置が異 なるヒステ リシスが存在す る.また この連続 した振動形 態をステージと呼び,上流 よりステージ1,2,3,4とす る.
各 ステージでの周波数の降下 は次のように説明できる. ノズル出口端 と金網 との間の流れ に対す る概念は図3のように措かれ る.せん断層の不安定波は下流へ移流 しなが ら離散的な 渦輪を形成す る. この様子 は噴流‑ リング系2)3)での挙動 と同一 と見 なされ るので,渦輪間 の平均的な波長を A,ステージ番号 をnで示す と,次の式が成立する.
‡ ‑ n.Ⅰ (1)
すなわちステージ nに存在 しうる渦輪は (n+1/2)個,波長で置 き換 えると (n+1/2)波 長 となる. したがって同一 ステージ (n)で Sを増大 させ ると,式 (1) よ りAは増大す る.一方,渦の発生周波数 (ある点 を通過す る周波数)f,と波長 1は,渦輪 の移流速度 を U,とす ると次式で関係づけられる.
Uv‑i,・^ (2)
従来の同様 の実験結果2)3)か ら,U,は同一 ステージで大 きな変化がないことが確認 されてお り, ここで も大 きく変化 しない と推測で きる. この ことか ら結局 Sを増大 させ ると波長A が増大 し,式 (2)よ り周波数f。は低下す ることになる.逆 に fpの低下 は 1の増大 を意味
し,後述す るよ うに波長が大 きくな りす ぎると渦の存在そのものが不安定 となる. この結果 ノズル と金網の間に渦輪がもう一つ加わ りことにより,波長が不連続 に短 くな り次 ステージ に移行 し,同時 に安定 した流れにかわる.
3‑ 2 半径方向に対する速度の特性
噴流出口端での不安定波 (微小か く乱) は下流に向かって最初 は線形的 に成長 し,振幅の 増大 とともに非線形性が加わって くる. このような成長は噴流外部か らのエネルギ供給がな いことから,平均流からのエネルギ供給 により成 り立 っている. またせん断層領域その もの は粘性効果 によ り下流方向に向かって拡大 され
てい く. ここでは金網通過前後で速度が どのよ うに変化す るかを調べた.
図4にS‑33mmに金網を置 き,金網の前後 q‑22mm,q‑36mmで の平 均 速 度U,乱 れ 速度 uの r方向での分布を示 し,それぞれの値 はU。で無次元化 してある. ノズル出口端 で平 均速度は管壁で作 られた薄い境界層領域 を除い た領域 でU/U。‑1であ るが,Zの増 大 ととも にせん断層の領域が拡大 し減速域が内側 にまで 及 び, r/R‑1近辺で急減 している.乱れ速度 は平均速度の変化率の最 も大 きい r/R‑1近辺 0 で最大 とな り,そこから離れるにつれ減少す る.
この よ うな特性 は一般 の噴流特性4)5)に見 られ るもの と一致す る.金網が存在す ると,その抵
0・5 1・0 1.5 2.0 r/R
図4 金網衝突前後での平均 (U), 乱れ速度分布 (u)
(半径方向の変化,S‑33mm)
24 羽田書昭・倉浮英夫 ・小幡輝夫 ・笠木伸英 抗 によ り金網通過前に噴流は r方向の外
側 に曲げられる. このため金網通過後の 平均速度は通過前に比較す るとr>Rで 増大 し,せん断層領域 は拡大 して くる.
中心付近では金網通過によるエネルギ損 出によ り速度が低下 してい る. また金網 の存在 によ り,乱れ速度は全領域 にわた って増大す るが,特 に中心近辺での増大 割合は顕著である.
対応 した位置での速度変動のスペク ト ル分布 を図5(a), (b)に示す.図5(a)は衝 突前,図5(b)は衝突後を表 し, この位置 で はf。‑475Hzの最大卓越 周 波数 を持 っている.図5(a)の衝突前では,噴流軸 に近 いr‑6mmで も明瞭 に f,が観測 さ れ,周期的変動の影響がポテンシャル コ ア領域 まで及 んでい るこ とがわ か る.
r‑Rに近づ くにしたがい変動エネルギ も増大 し始め, r‑12mmから急増 して いる.同時にf。の高次成分の数が急激 に 増 える.r‑R近辺で最大 になった後, 高次成分,変動エネルギそのものが急激 に減少 している.図5(b)は金網通過後で,
r‑5mmの中心軸 の近 くで もf。は存在 している. また rが増大す るとやは り, 高次成分,変動 エネルギともに増大 し, 半径 (R‑14mm)よ り少 し大 きいr=
16mmで最大になる. これは先 に説明 し た とお り,噴流が金網を通過す るときに 外側 に曲げ られ るためである.
自励振動が存在 しない場合には通常金 網通過 によ り流れ全体のランダム化が促 進 され, ここに示す ような周期性は存在 しない. これに対 し自励振動発生時での 金網通過後のせん断層部での周期的な振 動, さらに中心近辺に及ぶその振動成分 の存在 は, 自励振動が極めて強 く大 きな 組織的構造を有す ることがわかる.
(a)
5.0 Frequency kHz
10・0
(b)
5・O
FrequencykHz 10・0 図5 金網衝突前後でのスペクトル分布
(半径方向の変化, S‑33m )
円形噴流の金網への衝突時における自励振動に関す る研究 25 3‑ 3 スペク トル分布の特徴 と非線形相互作用
最大卓越周波数 f,の変化 を図2に示 したが,f。以外の成分については明 らかではない.そ こでスペ ク トル分布において,f。を含め卓越す る主な成分を表1に示す.表 は金網を下流方 向に移動 した場合である.表中太い実線で囲んだ周波数は最 も卓越す る成分,す なわち最大 卓越周波数f。を示 し,図2に対応す る.またその延長上に位置す る成分を細線で囲んだ. さ らに例 えはS21はステージ2の最大卓越周波数, S21/2はその周波数の半分およびS22は倍 成分を表 している.また表の右側には対応するステージ番号を記 してある.以後 の考察 で, 具体的な数値が必要な場合 には表1を参照にされたい.
図6にステージ llか らステージ2へのスペク トル分布の変化を示す.S‑28mmでは f,の 他に2次成分の2f。が観測 され る. さらに レベルは小 さいが f,の両側に卓越す る成分(305, 527Hz)が現れている. この成分 は表1の値 からす ると,f,(‑420Hz)を中心成分 として次 式の関係が成立す る一対の側帯波成分になっているのが特徴である.
Af‑ 527‑420‑ 420‑305‑ 105Hz
この成分 の 1つf‑527Hzは Sの増大 とともに急激 に増大 し, S‑32mmではステージ1 の最大卓越周波数420Hzに相当す る成分は消滅 し,527Hzに相当す る成分が f。とな りステ ージ2に移行す る.す なわちステージ2の周波数は,ステージ1の終わ り近 くにすでに形成 されていることが認め られ, これ らの準備段階を経て次 ぎステージへの移行が達成 され ると いえる.
表1 金網移動に伴 う卓越成分 SrTTTl トーセ
20 505 10ー2 22 480511 9∝)SIZ
24 4∝)Stage1 920
26 435 870
28 305 420 527 840 30 298 405 507 810
32 485 970
34 229S21IZ 465S21 930522
36 225 455Stage2 917
38 2ー6 435 870
40 211 425 634S21.5 847 42 206 410 613 816 44 200 400 6∝) 800 46 149195244338 39044ー542584 638 780 48 140 1772413ー4 380 450 520 622 760 50 149 29 289 36日 44 514
52 254S4VZ 510S41 S42762 54 250 Stagを3 414 500Stageん 750
56 224 403 485 730 58 238 393 475 717 60‑ 200 232 385 466
ta°e3
26 羽 田喜昭 ・倉津英夫 ・小幡輝夫 ・笠木伸英
図7にS‑44mmからS‑52mm,ステージ2からステージ4までの一連の変化を示す.
S‑44mmになると,同一ステージのS‑32mmと異な りf。に対 して1/2,3/2倍である0.5f。, 1.5f。が成長 している.特 に1.5f。は表1で見 るよしうにS‑40mmで急激に出現す る.0.5f。, 1.5f。の出現 に対す る1つの解釈 として以下の考察ができる.すなわち噴流中での渦の挙動 に関 して,従来 より渦の合体,追 い抜 きなどの現象が報告6ト8)されてお り, ここで も渦輪同 士の相互作用 などによる図8(a),(b)に示す渦 の合体を考 える.図8(a)か ら図8(b)に示す よう
o な渦の合体が生 じた とす ると,合体後あ
る点を通過す る渦の個数は半分 に減 り局
0・4 0.8 1.2
FrequencykHz
図6 スペク トル分布の変化 (S‑28mm〜34mm)
0・4 0・8
FrquencykHz 1.2 図7 スペク トル分布の変化
(S‑44mm〜52mm)
波数は f,の半分 になる. この現象が確率 的にある割合で起 こると,一定エネルギ を持 った0.5f,成分 が 出現 す る. さ らに 波数間の非線形相互作用 によりf。と0.5 f。の和 が生 じ,1.5f。成分 が出現す る.
ここでS‑40mmか らS‑44mmまでの 波形を図9に示す.図には参考 にS‑33 mmの波形 も併記 した.S=33mmの波 形 は振幅,周期 とも一定で,スペク トル 上 で も0.5f。,1.5f。は殆 ど観測 され ない.
S‑40mmではやや振幅に不揃いが生 じ, 振幅変調が起 こっているのが読み取れる.
S‑44mmでは変調 もかな り激 しくな り, 1つ置 きに振幅が大 きくなってお り0.5 f。成分の存在を裏づ け,スペク トル と対 応づけられ る.
図7において, さらに Sが増大 しS‑
'a'
備 ‑
図8 円形噴流での 渦輪の合体
円形噴流の金網への衝突時における自励振動に関する研究 27 46mmになると,急激 に多数の卓越成分が現れ る.前述 の とお り同一 ステージでは, ステー ジ番号nに よ り, ノズルー金網間 に入 る渦の個数 は式 (1) によ り規定 され る. このため同 一 ステージで Sを増大 させ ると,渦 の大 きさを示す波長 A は大 き くな り,渦 その ものが極 めて不安定で,そこに違 ったモー ドの運動が生 じて くる.事実 このよ うな現象 は渦輪 に関す る可視化結果7)8)か らも見 ることがで き,それをモデル的 に措 くと図10に示 され る.図10(a) は軸対称の渦輪が一定周期 を持 って発生,移流 してお り, ステージの初期 に対応 してい る.
図10(b)は渦輪全体が一定速度で移流 していた ものが上 と下で移流速度が異 な り,隣同士で動 きが反対 になる.図10(C)は渦輪を Z軸の後方か ら見た場合で,円形でな く円周方向 に凹凸を 持つ運動が起 こ り全体 に波打 っている.図10(b),(C)よ うなモー ドが生 じて くるとスペ ク トル 上 にも新たにい くつかの卓越成分が生 じ, さらにそれ ら波数間の非線形相互作 用9ト12)に よ り 新 たに多 くの周波数が生成 されて くる. ここで例 えばS‑46mmで次式で示 され るftノを新 たな1つのモー ドと容認す ると,
ftノ‑ 195‑149‑ 46Hz
表1の他の周波数は以下の よ うにして導 出できる.
195+46‑241⇒回
…;:二三…≡;;芸…E3)sideband
S三33mm
図9 速度変動の波形変化 (S‑33mm〜44mm)
図10 波長の増大による渦輪の 不安定モード
28 羽田喜昭 ・倉浮英夫 ・小幡輝夫 ・笠木伸英
≡…三二:…≡………≡ EZ )sideband
さらにS‑48mmでは次式のfI/を新たなモー ドとす る.
ftノ‑140/2‑70Hz
同様 に表1の他 の周波数は以下 のように導出 され る.
170+ 70=240⇒巨画
票田
380‑ 70‑310⇒ 380+ 70‑450⊂今回 380+140‑520⇒匝司
760‑140‑620⇒巨頭]
sideband
上式の中で,特 にS‑48mmですでにステージ3, 4に対す る周波数450Hz,520Hzが存在 す るのが特徴である.す なわちステージの終わ りに近づ くと,渦が不安定 にな りそ こに新た な振動 モー ドが重畳 し波数間の非線型作用を通 じて多 くの波数が形成 され る. この ときすで に次ステージの周波数の芽が生 まれ, このよ うな準備段階を経て次ステージが生 じて くる.
次 にS‑50mmになる とS‑48mmには極 めて小 さか った成分 であ る前述 の450Hzに相 当す る成分が急増 して最大卓越周波数 にな り, ステージ3に跳躍す る.跳躍 と同時に安定 し た流動パターンに移 るため,f。を除いた多 くの卓越成分 は消滅す ると考 えられ るが, ここで はスペ ク トル分布 に見 るよ うに同程度 の卓越 した成分 が数多 く現れ る. これは以下の よ うに 考 えられ る.図2で示 され るステージ2が安定 し極 めて下流域 まで存在 したため,S‑50 nimの跳躍 した位置がステージ3の終わ りに位置 して くる. このため流れが再 び不安定 にな
ったため同様 に多 くの卓越成分 が出現 した と考 えられ る. さらに Sを増加 させ る,S‑48 mmでの520Hzに相 当す る成分 が成長 し,S‑52mmで ステージ4の安定 した流動形態 に 移行 し,卓越成分の数 も急減す る.
!lilー I l l
図11 速度変動の波形変化 (S‑46mm〜50mm)
014 0・8
FrequencykHz 1.2 図12 スペクトル分布の変化
(S‑54mm〜62mm)
円形噴流の金網への衝突時における自励振動に関する研究 S‑46mmか ら50mmに対する波形を図11
に示す.S‑46mmか ら49mmの波形の間で は大 きな違いは読み取れない.安定 した流れ の波形か ら比較す ると,振幅 さらには位相 の 変 調 を見 る こ とが で き る.S‑49mmと50 mmでは明 らかに違 いがあ り周期 が小 さ くな
ってお り,スペク トルの形の急激 な変化 と対 応す る.
図12にS‑54mmか ら62mmにおけるスペ ク トル分布 を示す.S‑54mmと56mmで比 較す ると,最大卓越周波数は連続 した変化 を 取 るが,次 の2点 で大 きな相違が あ る.1つ はf。お よび0.5f。の卓越 成分 にお い て, S‑
54mmでは極 めて急峻であるのに対 し56mm ではその帯域幅が急激に広が っている.2つ め はS‑56mmに な る とf。,0.5f。以 外 に レ
84 88
FrequencykHz 1.2 図13 スペク トル分布の変化
(S‑50mm〜42m)
29
ベルは小 さいが卓越す る成分 の数が急増 している. この二つの現象は流れが急激 に不安定 に な り,同時に急激な ランダム化の進行 を示 している.す なわち金網が下流に位置す ると, フ ィー ドバ ックも弱 くな り,振動モー ド (渦の運動)が急に不安定 になったため各種 のモ ー ド が出現 した と考 えられ る. さらに帯域幅の急激な増加 は,いわゆ る流れの乱流化 と類似 して お り,線 スペ ク トルか ら連続 スペ ク トルの突然の発生 を意味 している.一般 に離散 スペ ク ト ル間の相互作用では新たな離散 スペク トルのみの出現 を意味 し, ここに示す連続 スペク トル の急激 な出現 はいわゆるカオス的な現象の存在を意味 してお り,今後 さらに詳細 な検討 が必 要である.
S‑56mmよ りさらに下流 に金網が位置 して くると,卓越成分 まわ りの帯域幅 は広が りか つ スペ ク トル間でのエネルギのや り取 りによ り卓越度 は平準化 し, ランダム化が進行す る.
さらに Sが増大す ると, フィー ドバ ックその もが弱ま り自由噴流の特性 に徐々に近づ いてい く.
最後 に履歴域 でのスペク トル分布 の例 を図13に示す. この場合 は Sが小 さ くな る方向で, 渦輪の波長が短 くなって くる. このためある限界 を超 えると渦輪が急 に不安定 にな り,すで に説明 した現象 と同様 に渦輪 に他の振動 モー ドが重畳 して くる.対応 させ ると, S‑48mm よ り上流に位置す ると急激に多 くの卓越成分が出現 して くる.下流方向 と同様に これ ら卓越 成分間の相互作用を通 じて,新 ステージへの跳躍が起 こると考 えられ る.
4.まとめ
円形噴流中に金網を置いた とき発生す る自励振動 について調べた.特 にせ ん断層 に形成 さ れ る渦構造を背景 に,スペク トル分布 において最大 の卓越成分わみでな くよ り小 さな成分 を 含めて検討 し,次の ことが明 らかになった.
(1) 自励振動発生時 にせん断層で形成 され る渦構造 は,極めて堅 固で組織的構造 を有 し,噴
30 羽田喜昭 ・倉浮英夫 ・小幡輝夫 ・笠木伸英
流の中心領域 まで影響 しかつ金網通過後 もその周期性 は完全 に維持 されている.
(2) 各 ステージの終わ り近 くでは一定間隔で発生 している渦輪 の波長 は長 くな り,渦輪 が不 安定 となるため,そ こに違 った運動 が生 じ, スペ ク トル上新たなモー ドが生 じる. これ ら 波数間の非線形相互作用 によ り, さらに多 くのスペク トル成分が出現す る.
(3)新 ステージの周波数 は,前項 に述 べた渦輪 の不安定 に ともな う非線型相互作用 を通 じ, 前 ステージの終わ り近 くにす でに新 しい芽 として存在 している. これ ら準備段階 を経 て よ り安定 した新 ステージへ の移行 が行われ, この意味ではステージの移行 は1つの連続性 を 有 してい ることになる.
(4) ステージが進むにつれ卓越成分の数 は増 える傾 向にあ り, またそれ ら卓越成分間 のエネ ルギ差 も小 さ くかつ全体 に広帯域 にな り,徐 々に自由噴流の特性 に近 づ く.中で も線 スペ ク トルか ら広帯域成分 を持つ連続スペ ク トルの突如 の出現がみ られ る.
参 考 文 献
1) 倉浮英夫,羽田喜昭,笠木伸英,小幡輝夫 :円形噴流の金網‑の衝突時における自励振動に関 する研究 (第1報),長野高専紀要 第30号 (1996)
2) 倉浮英夫,小幡輝夫,平田賢,笠木伸英 :軸対称せん断層の衝突に伴 う自励振動現象,機械学 会論文集 (B)53巻488号(1987)pp.1254‑1261
3) 小幡輝夫,倉揮英夫,羽田喜昭 :リソグに衝突する軸対称噴流せん断層の自励振動,機械学会 論文集 (B)61巻583号(1995)pp890‑896
4) S.C.Crow andF.H.Champagne:Orderlystmctureinjetturbulence,∫.FluidMech.
(1971),vol.48,pp.547‑591
5) CJ.Moore:Theroleofshear‑layerinstabilitywavesinjetexhaustnoise,∫.Fluid Mech.(1977).γol.80,pp.321‑367
6) 山田日出夫,望月修,山辺春男,松井辰弥 :渦輪列の実験⊥干渉モー ドと運動の様子,流体力 学会誌 (ながれ)第3巻(1984)pp.364‑377
7)山田日出夫 :渦輪 と渦対の可視化 :流体力学会誌 (ながれ)第11巻(1992)pp.82‑86 8) A.Yule:Large‑scalestructureinthemixinglayerofaroundjet,∫.FluidMech.
(1978),γol.89,pp.413‑432
9) R.W.Miksad:Experimentsonthenonlinerstagesoffree‑shear‑layertransition,∫.
FluidMech.(1972),vol.56,pp.695‑719
10) R.W.Miksad:Experimentsonnonlinearinteractionsin仙etransitionofafreeshear layer,∫.FluidMech.(1973),vol.59,pp.1‑21
ll) R.W.Miksad,F.LJones,E.∫.Powers,Y.C.Kin andL.Khadra:Experimentson theroleofamplitudeandphasemodulationsduringtransitiontoturbulence,∫.Fluid Mech.(1982),γol.123,pp.1‑20
12) Y.C.Kin andE.∫.Powers:Digitalbispectralanalysisandapplicationstononlinear waveinteractions,IEEETrams.PlasmaS°i.(1979),vol.PS‑7,pp.120‑131