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自由落下運動の測定

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Academic year: 2021

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(1)

自由落下運動の測定

著者 内田 直

雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学

巻 32

ページ 15‑19

発行年 1992

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010493/

(2)

自由落下運動の測定

内 田

(平成3年9月30日受理)

Measurement of Free Fall Motion

   Sunao UcHIDA

(Received September 30,1991)

諸 言

 空気中を運動する物体は空気からの抵抗を受けるため 重力だけを考慮した場合と異なってくるが,通常空気抵 抗は小さく無視し得ることから真空中の運動と同じ扱い をしている.実験で重力加速度を求めるには,簡単な方 法としては単振り子,厳密にはボルダ振子の方法やカー ター可逆振子の方法により空気抵抗を無視し,かっ時間 測定も多数回の振動時間から精確な周期が求められ,か なり精密な重力加速度を求めることができる.重力加速 度として良く使われる9.8m/s2や980 cm/s2Dの値を 求めるには充分な実験といえる.これらの方法は運動方 程式を解く時に近似式を使っていることもあり,例えば ボルダ振子の場合厳密な式としては振り子の周期と振子 の長さの外に慣性モーメントや振り子の振幅も考慮して 重力加速度を求めなければならない.2)

 これに対し,簡単な原理として自由落下物体の位置の 時間変化から速度を求め,速度の時間変化から重力加速 度を求める方法がある.これには打点タイマーに紙テー プを通す方法やストロボを用いる方法が使われるが精度 はよくない.3⊃3m程の落下距離で測定する時,重力加 速度を1cm/s2程の精確さで求めようとするには1秒間 に数メートルを落下する物体の時間測定となり,1000分 の1秒以上の精確な時計が必要となる.近年電気タイマ ーやフォトトラソジスターを使ったタイマー等の方法に より時間測定の厳密さが増してきたが,それに伴ない重 力加速度を求めるのに空気抵抗を無視し得なくなってき た.逆に空気中の落下加速度の変化から空気の密度や粘 性係数を測定できる可能性も指摘されている.4)またデ

一タ処理を円滑に行なうことのできるマイコンも利用さ れている.5)最近ではビデオを使った方法も提案されて

いる.6}

 著者はメモリータイマーによる自由落下の空気抵抗の 影響を報告したが,7)測定精度を確保するためには時間 測定の厳密さとともに,位置の精度も高くしなければな らない.2〜3mの落下距離の場合精度を上げるために は間隔を広くとる必要が生ずる.落下の通過位置と通過 時刻の測定を使って重力加速度を求める時の精度につい て調べたので報告する.また,落下物体の大きさの影響 についても調べた.

物理学研究室

装置と方法

 ここで使った物体は直径2,54cm,1.27cm,0.715 cmの 3種類の鋼球である.以下,それぞれ大(L),中(M),

小(S)の鋼球と呼ぶことにする.落下させた鋼球は通 路中の8組の豆球光源とフォトトランジスターにより1順 次前縁と後縁の通過が検出され,メモリータイマーに記 憶される.各位置の通過時刻は前縁の通過時刻と後縁の 通過時刻の平均により求められる.この時の時刻の最小 値は0.00001秒である.図1に装置の上半分を示す.通 過時刻の測定位置は全部で8カ所あるが図には5カ所見 えている.最上端は鋼球落下用の電磁石である.電磁石 の強さは各鋼球を止めておくに最小限の力となるよう電 流を調整する.落下する鋼球の各通過位置を測定するに はフォトトランジスターに入る光束を距離測定補助具の 庶光板がさえぎった時にメモリータイマー内の発振音に よって知らせ,この時の補助具の巻尺上での位置を読み 取る.補助具は副尺によりユ0分の1mlまで測定できる.

位置座標の原点は落下のスタート位置での鋼球の中心位

(3)

内田  直

 麟一 轟鍵㌔tt

難辮

 ノ翻 ぴ内

惹雛き灘灘

図1.自由落下実験装置(部分)

置とする.この時位置Yo =0及び時刻to ・=0である.

 メモリータイマーの記録から,落下をはじめてからi 番目(i=1〜8)の位置夕,での時刻ちが求められる.

これよりダイヤグラム法により順次時刻ぢにおける平均 速度Viとt;における平均加速度α,が求まる.ただし,

to=・0でYo=0, t6=0でVo=0とする. n=1,2,…

として,i=ユ〜(8−(n−1))での値は以下によ

り求まる.

 平均速度は

       Pi+ n−1)『.y −1

    Vi=

   ち+〔 −1一 3_1

   ち+〔 _1}+ ゴ_1

ゴ =

       2 である.平均加速度は

       Vi+( −1,『Vi .一 1     α3

ゴ =

t;+1 _1一 ∫_1

t;+1 _1}+t _i

2

(1)

2

である.n=1の時,隣り合うデータの差から速度・加 速度を求めるのであるが,ここでは位置の精度を高める ためn=2とした.またn=3についても調べた.nを 4以上とするには得られる結果の個数が減るので,測定 位置を増す必要がある.(1}②式のnの値は同じ値である 必要はなく,別々な値を設定することができる.

結果と考察

 空気中を自由落下する物体が受ける抵抗でまずあげら れるのが物体の運動の有無にかかわらず働く空気による 浮力である.今,空気の密度ρ,球状物体の半径rとす ると浮力Flは次の式で与えられる.

       4

    F1=一一πr3ρ9      1(3)

       3

ただし,gは真空中の重力加速度である.今,浮力Fl のみが抵抗として働くとして,質量〃2の球状物体が自由 落下する時の運動方程式は次式となる.

     dv     4

    翅冴=mg−  5 π 「3 ・9

∴鍔一9(   4 πr3ρユー  一…−   3  m) 〔4)

この右辺括弧内第2項は浮力による落下加速度への影響 ということになる.これについて調べてみる.

各鋼球の半径(Lは2.54cm, Mは1.27 cm, Sは

0.715cm),質量(Lは66.7g, Mは8.4g, Sは1.6

(4)

g)及び空気の密度ρ(1,205×10−3g/cfi)を代入し て求めてみるとおよそ0.016〜O. 014 %の誤差として影 響が見積れる.ところでζの鋼球はボールベアリソグの 球であるが,材質は同じとみなして密度iOmとすると質量 m=4π r3 Pm/3であり,これを(4)式に代入すると

    劣一9(   ρ1−一  ρm)

となる.つまり大きさにかかわらず,空気の密度との比 で浮力の影響が決まることになる.従って,空気中では なく例えば水中を落下する鋼球の場合とかになるとρに 水の密度を当てはめて,ρ/ρmがO. 1くらいになり,

これを無視すると10%もの誤差となるので浮力を考慮し なければならない.しかし,空気中では浮力の影響がお よそ0.015%程であるということになる.

 次に空気中をゆっくり速度Vで鋼球が自由落下してい る時は,空気の粘性により速度Vに比例した粘性抵抗を 受ける.これはストークスの法則と呼ばれている.空気 の粘性係数ηとすると,粘性抵抗F2は次の式で与えら

れる.8》

    F2=6πrηv       (5)

この粘性抵抗はレイノルズ数(R=ρrv/η)が1に比 べて小さい時に用いられる.各鋼球についてレイノルズ 数Rを調べてみる.速度vは落下後数+cmに達する所で 100cm/sに達し,3m程を落下する時は700 cm/sを 越えてしまう.この点を考慮して,空気の粘性係数η  (1.801×10−4dyn・s/c㎡)として計算してみると, L

の鋼球がv=700cm/sに達する所ではR=5900とな

り,Sの鋼球がv=100 cm/sに達する所で最も小さく π=240程となる.Rの値は102から103に達しているが,

粘性抵抗の影響を調べてみる.そのため,粘性抵抗のみ が働くとして〔5)式から運動方程式は次式となる。

     dv

    Mz77 =Mg −6 nr rp v

   ∴寡一mg(  6πr rp v1−   mg) (6)

ここで,g=980 cm/s2と見積って右辺括弧内第2項 を調べてみる.速度Vが大きい程影響が大きいことから v=700c皿/sとするとLの鋼球では0.0046%, Sの鋼 球では0.054%の影響が生ずる.これを浮力Flの影響 の仕方と比べると直径の小さいSの鋼球の場合は浮力の 影響より粘性抵抗の影響の方が大きいが,Lの鋼球の場 合は浮力の影響を考慮した時でも粘性抵抗が無視し得る

ものとなる.なお,ここでの鋼球の場合にレイノルズ数 Rが1程度になるのはv=10cm/s程度の時で,落下を はじめた直後である.

 落下の速度は,ここでは100・cm/s〜700 cm/s程度 であるが,一般に速度vが速くなるとv2に比例した慣性 抵抗が働く.これをF3とすると次の式で与えられる.

    F3 =mkv2      (7)

ここで々は比例定数で球形物体の場合はk=πr2 p/4 mである.慣性抵抗のみが働くとした場合の運動方程式 は次式となる.

     dv

    m−=mg−mfe v2      dt

    ∴劣一9(1一争   〔8}

ここでも,右辺括弧内第2項の影響を調べてみる.速度 v=700c皿/sの時, Sの鋼球では0.013%程の影響で 粘性抵抗の影響0,054%よりも少なく,浮力の影響の

0.015%程と同じである.Lの鋼球になると0.16%であ るが,この値はSの鋼球に比べて1桁大きい.加速度に 与える誤差が0.16%ということはg=980cm/s2とし て1.6cm/s2の誤差が生ずることになる.

 浮力Fl,粘性抵抗F2,慣性抵抗F3の影響(それぞれ ε1,ε2,ε3とする)についてのグラフを図2に示す.

このグラフから慣性抵抗F3の影響の大きくなるのは直

10

︵硬︶

給bD2

10}2

10−3 O.1

v=700cm/s

v==700cm/s

ε2

vニ350cm/s

 S M1.OL 2. 0

1。gr   (・m)

図2.空気抵抗の影響

(5)

内田  直

径1cm以上の鋼球である。っまり,直径1cm以上の鋼球 の場合は慣性抵抗のみを考慮すればよい.グラフの縦軸 は誤差δ(%)を対数目盛で示しており,横軸は球の半 径 r(cm)を対数目盛で示してある.

 L,M, Sの3種類の鋼球の場合について加速度の変 化を図3に示す.速度・加速度は(1),(2}式でn=2とし た場合である.グラフからL,Mの鋼球については加速 度の時間の2乗に対する変化は比較的滑らかで直線的で あるが,Sの鋼球については変化が急で直線的な変化を 見込むと,重力加速度gの値も小さくなる.

980 ぐ

ぐ970

s

  960

950

識゜「\。〜L

0 0.22 0。42

t2(S2)

M

S

0.62

図3.n=2の時のダイヤグラム法による重力加速度

 今,(7)式で表わされる慣性抵抗F3のみが働くとした 場合の運動方程式(8}式を初期条件t=0でv=O,夕=

0として解くと9}

    .y−一÷1・9{…h(V万の}

となる.tの小さい値に対しては近似式として     ,一⊥9,L色、・,・

      12       2

(9)

(980

\970 ε

  960

950

O O.22 0.42

t2(S2)

0.62

図4.n=3の時のダイヤグラム法による重力加速度

/4mとを比較した.これを表に示す.鋼球の大きさの 違いによるグラフの差が良くでている.Lの鋼球にっい ては々の値は理論値と実験値が良く一致する.Mの鋼球 の場合は実験値が理論値の80%程の値となっている.g の値についてもLの鋼球では良く知られた重力加速度に 近い値となっている.Mの鋼球についても,ほんの少し 小さい値であった.ダイヤグラム法においてn=2とし た時の重力加速度に及ぼす誤差は落下初めで1cm/s2程 であり,最も速くなる所で3cm/s2程である.つまり

0.1〜0.3%程の誤差となる.(2)式だけをn=3とした 場合は当然これより小さな誤差となる.しかし,距離の 測定はかなり慎重に行なう必要がある.

表 重力加速度におよぼす慣性抵抗の影響

鋼直 径質量理論値実験値実験値

王求   2 r(cm)  m(9)  々(cm−i)  々(c血一1)  9(cm/s2)

L    2.54     66.7   2.28×10−52.17×10−5 979.7

ML27 8.44.60×ユO 53.63×10−5978.9 を得る.この解からyを2回微分した加速度を求めると

α=9−kg2 t2

qo)

となる.この式の左辺は時間tを経た所での落下の加速 度αで,gは求めようとしている真空中の重力加速度で

ある.

 ダイヤグラム法において速度は(1)式でn=2から求め,

加速度は②式でn ・=3から求めて誤差を極力小さくした 時のグラフを図4に示す.またこの時の値からao)式と同 形式の実験式を求め,その実験値kと理論値k=πv2ρ

要 約

 ダイヤグラム法という直感的にわかり易いと思われる データの処理を行なうためにメモリータイマーによるデ ータの記録を行なった.自由落下物体にテープをっけて 落下させながら打点による印をつける方法や,ストロボ 写真から求める方法では重力加速度が9.8m/s2である

ことを知らしめる効果があったが,誤差が大きいため,

(6)

重力加速度が979cm/s2なのか980 c皿/s2なのかと言っ たことを論じるには無理があった.他方,単振り子によ る方法は慎重な測定により誤差が1cm/♂程度に小さく することが可能であるが,測定から得られた値よりも,

知識として知っている重力が速度9.8m/s2(又は980 cm/♂)と比較しがちである.

 ダイヤグラム法により重力加速度を求めるのに,距離 と時間測定の精度を高めることによって空気中を自由落 下する物体に働く慣性抵抗の影響を調べることができた.

慣性抵抗についての運動方程式を解くことはむっかしく なるが,測定値からグラフを作成することで,加速度が 変化していくことを知ることができた.このグラフから 実験式を求め重力加速度が得られた.また,物体の大き さの違いによる空気抵抗の違いも示すことができた.

1)国立天文台編,理科年表,丸善(東京)第63冊,

p、地179(1990)

2)例えば重田二郎監修,物理学実験,共立出版(東京)

p.7(1990)

3)例えば藤岡由夫・朝永振一郎監修,物理実験事典,

講談社(東京)p.86(1968)

4)石川俊明:日本物理教育学会誌 29,297(1981)

5)泉谷明:応用物理教育研究会誌 9,44(1984)

6)長島弘幸,増田健二:日本物理教育学会誌38,

 76 (1990)

7)天野卓治,内田直:日本物理教育学会誌 31,208

 (1983)

8)例えば戸田盛和,宮島龍興編,物理学ハンドブック,

 朝倉書店(東京)p.98(1969)

9)原島鮮:質点の力学,裳華房(東京),p.88(1968)

参照

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