雪片の落下速度の測定
梶川正弘
MeasurementofFallingVelocityofSnowFlakes
MasahiroKAJIKAwA
(昭和48年10月3旧受勤
1‐まえがき
固体降水粒子の落下速度は,その成長機構の解明にと って,またレーダーのそれら粒子に対する反射因子を調 べる場合には重要な因子である。雨滴に比較して,固体 降水粒子は,形の複雑さや密度が一定でない事のために 大きさに関して落下速度は一様には定まらずに複雑とな る。
雪の単結晶の落下速度の測定は, Nakayaand Terada(1935)により初めてなされ, さらに最近 Kajikawa(1972a, 1972b)により種々の結晶形につ いて補充されて,ほぼ決着が付いたといえよう。 しかし ながら,落下中の運動状態の研究は,単結晶から付着し 合って雪片を形成する過程にとって重要と思われるが,
現在までのところ明らかにされたとはいい難く,今後に 残された課題である。
雪片(どこでは雪の結晶が二個以上付着し合っている
ものを指す)の落下速度の測定は,多くの研究者により なされてきた。例えば,Magono(1953, 1954) , Langleben(1954),Imaietal.(1955),Litvinov
(1956)およびMagonoandNakamura(1965)な どがあるが, これらを承ると主として雪片を構成する結 晶形の組永合わせの違い,密度の差,地上気温の差によ
り,落下速度は大きく左右されることを示している。従 って,種々の条件での落下速度をきめておくことは,実 際にZ−R関係を調べるときに利用するため必要なこと
と考えられる。この意味から,秋田市において,主に季 節風時に降る雪片の落下速度を測定したので,その結果 を報告する。観測場所は秋田市郊外,期間は, 1973年2f ・ ・ 月6日より3月4日までである。
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2測定方法 loth
雪片の落下速度をきめる因子としては,大きさ,質量 あるいは密度,落下中の形および結晶形の組承合わせが 考えられる。また当然これらの因子相互の関係も深い。
図1 測定系の略図。下部点線枠内は,観 察および写真撮影のガラス窓。
そこで今回は,速度の測定と同時にできるだけこれらの 因子も同時に決めることを目的として,以下に述べる方
法を用いることにした。
図1に測定系の略図を示す。風よけの塔から降り込ん だ雪片は,左方向からストロボ光で照明されて,前方よ り接写される。 この連続写真より発光間隔と倍率がわか れば落下速度は容易に計算される。 また落下中の形も写 真より判別できる。さらに落下した雪片は,下に置かれ た黒いラシャ布の上に採取され,箱外にとり出されて,
別のカメラで大きさをきめる為に接写される。その後こ れは,質量を決めるために融かされて濾紙に吸収され
る。
この濾紙は,水にぬれた部分が色で区別できるように waterblueで処理されている(丸山・浜, 1954,によ る) 。当然どれだけの大きさのスポットが水滴直径ある いは質量でどれだけに相当するかは検定しておく必要が ある。一度に落下する雪片をできるだけ少くするよう に,降り込承量を調節することにより,落下速度を測定
した雪片と受け取った雪片とは確実に対応できる。
図2は, このようにして得られたストロボ写真と接写 写真および濾紙の一例である。ストロボ発光間隔は50分 の1秒,雪片の大きさ1.52cm,落下速度185cm/secで 濾紙のスポットよりこの雪片の融解水滴直径は0.328cm と決定された。ストロボ写真をみると,落下中に振動し ているように見えるが,一方向からの写真では空間運動 を確定できない。雪片を枇成する主な結晶形の決定には
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図2 落下速度決定法の一例。
左,落下中の雪片のストロボ写真発光間 隔1/50sec
右上,対応する雪片の接写写真 右下,融解水滴の大きさをきめる浦紙
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Melted Diqmeter (cm) 図3 落下速度(〃)と融解水滴直径(D)の関係
T≧OCoは,地上気温がOCo以│之の場合で,Tz0。Cはそれが0.C未満の場合を指す。
05
肉眼観察も併用し,さらに地上気温も記録した。
3結 果
レーダーの反射因子をきめる場合に,降水粒子の空間 分布が必要となるので,それには雪片を融かして水滴と した場合の直径(融解直径)と落下速度と.の関係がわか っていなければならない。そこで,図3に測定結果を,融 解直径と落下速度の形に整理した。観測された雪片は構 成結晶の組承合わせにより表1のごとく三種に分けた。
さらに各々を,地上気温0.C以上(0。Cを含む) と0 表1 観測された雪片の分類
。C未満の場合に分けて示した。表1の記号は,Magono andLee(1966)による,主な構成要素の結晶を示す記 号を用いてある.即ち,R3は譲状雪,R2cは雲粒付 立体六花およびRldは雲粒付六花をさしている。図3 にはまたこれらの落下速度の実験式として,R3に対し
"=787D0・750,R2cに対し〃=509D0.667およびR1dに 対しり=394Do.667も記入してある。ここでひは落下速度 (cm/sec)でDは融解直径(cm)である。これら三つ の式の一般形は〃=kDn (k,nは定数)であり, この 形はLangleben(1954)によって提出されたものであ る。 さらに' "=351D0.500および〃=210D0.283は各 /tFujiwara(1957)による雲粒付六花から成る雪片 に対する理論式と,Langleben(1954)による雲粒付 六花から成る雪片に対する実験式である。
同じ資料を大きさ(最大直径)と落下速度について整 理したのが図4である。記号は図3と同様となっている。
この図には,Magono (1953, 1954)によって導かれ た,濡雪片(Wetsnowflake),雲粒付雪片(Rimed snowflake)および雲粒の付かない雪片(Nonrimed snowflake)に対する値が点線で示されている。
|
記号 構成要素としての結晶形
霞状雪を含む雪片。他の結晶は多様。
主に雲粒付立体型結晶からなる雪片,他に 雲粒付六花や放射型も含んでいる。
主に雲粒付六花から成る雪片。他に濃密雲 粒付六花も含んでいる。
R3 R2c
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(cm)
図4落下速度と雪片の大きさの関係
点線は,Magono(1953, 1954)による理論値を指す。
flakeの値は.R2CとR1d全体の平均にほぼ合ってい ると見ることができよう。さらにNonrimedsnow‑
flakeの式の値は,大きさが大きくなる範囲で,ほぼ雪 粒付結晶からなる雪片の落下速度の下限になっている。
図3と図4とを比較すると,同じ種類の雪片の間でも,
大きさによる落下速度のばらつきの方が,融解直径に対 するばらつきよりも大きいことがわかる。これは,雪片 の落下速度は,質量あるいは密度に依存する傾向がつよ いことを示すものと思われる。
4 ゞ考 察
図3と図4から,譲状雪を含んだ雪片は落下速度が最 も大きく,六花からなる雪片は小さいことがわかる。こ れは主として密度の違いによると思われる。また同じ理 由から,いずれの種類の雪片についても,地上気温0.C 以上での測定値が0.C以下でのそれよりも大きくなって いることも理解できよう。この傾向は, これまでの測定 結果(例えば,Magono, 1953,Langleben, 1954な ど)と同じである。図3よりLangleben(1954)によ って導かれた' "=kDnの形は, 今回の測定値につい てもほぼあてはまると考えられる。即ち,R3の雪片に 対しては, "=787Do.750, R2cの雪片に対しては, 〃
=509Do.667およびRldの雪片に対しては, "=394D 0.667の実験式で示すことができよう。ただし, R3と
R2cの場合において,Dが0.2cm以上に大きくなると やや式の値が実測値より大きい方にずれてくる傾向があ る。この事については,Dの大きい部分即ち大きい雪片 の測定資料を多くしてさらに検討しなければならないと 思われる。また,Fujiwara(1957)による,雲粒付六 花からなる雪片に対する理論式' "=351Do、500IX, D の小さい部分では,式の値が大きすぎるが,Dの値が大 きくなると, R2cとRldを含めた雲粒付雪片の平均 値に近くなっている。 Langleben(1954)による雲粒 付六花からなる雪片に対する実験式〃=210Do、283もD の小さい部分以外では, Rldの測定値に近いといえよ
う。
図4によると,R3,R2c,R1dの順に,同大きさ に対し落下速度が小さくなる傾向がはっきり見られる。
また0.C以上での速度の値が0.C以下での値よりも大 きい傾向が読承とれるが, R1dの場合にはあまりはっ きりしていない。Magono(1953, 1954)によると,
雪片を球形と考えたときの落下速度は次の形で与えられ
る。
5 ま と め
秋田市効外で雪片の落下速度を測定し,次のような結 果を得た。
大きさと落下速度との間には,Magono(1953, 1954)によって得られた両者の間の関係式がほぼ成り立 つものと考えられる。また融解直径と落下速度との実験 式は次のようになった。
譲状雪を含む雪片' "=787Do.750 主に雲粒付立体型結晶からなる雪片'"=509Do.667
7
主に雲粒付六花からなる雪片, "=394Do.66 ただし今回の測定では, D=0.2cm以上での測定例 が少ないので,上述の実験式がこの範囲においても成り 立つかどうかは,今後測定例を増やして確かめなければ 断定できないと考えられる。さらに, この結果を利用し て,Z‑R関係の実験式を求めることも今後の課題であ
る。
参考文献 ;
Nakaya, U. andT・Terada, Jr. :J・Fac.Sci.
Hokkaidolmp・Univ.Ser、I, 1, 191‑200(1935)
Kajikawa,M・ :J・Meteor.Soc.Japan, 50, 577‑
583(1972a)
梶川正弘:日本気象学会1972年度秋季大会予稿集, 74 (1972b)
Magono,C・ :Sci・Rep・YokohamaNat・Univ.,
Sec.1,2,18‑40(1953) Magono,C. :Ibid. 3, 33‑40(1954)
Langleben,M.P. :Quart.J.Roy・Met・Soc.,80, 174−181 (1954) ・
Imai, I.,M.Fujiwara, I.IchimuraandY.
Toyama:Pap.Meteor・Geophys., 6, 130‑139(1955)
Litvinov, I.V. , :Izv・Akad・Nauk6SSSR,Geop‑
hysicalSer.7, 853‑856(1956)
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ここで, ぴは雪片の密度, βは空気の密度, γは雪片の 半径,3は重力加速度であり単位はC.G.S.単位を用い る。この式において,Wetsnowflakeでグ=0.025, Rimedsnowflakeでぴ=0.02, Nonrimedsnow flakeでぴ=0.011として計算された落下速度の値が,
図4の点線で示されたものである。これを承ると,Wet snowflakeに対する値は, R2cの0.C以上での測定 値に合っていると見られる。また,Rimedsnow‑
Magono, C.andT・Nakamura:J.Meteor.Soc.
Jap"4W39‑147(1965)#
丸山晴久,浜昊一:夫気, 1了、i8‑22'(1954)" ' .:‑
Magono,C.andC.W.Lee:J・Fac・Sci.HOkkaido
夫恥iv.,Ser.yW;2, 321‑355(1966)
Fujiwara,M. :75thAnniversaryVol・ofthe
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