Title
動物用医薬品ジサイクラニルのマウスにおける肝発がん機
序解明に関する研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
本, 光喜
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第205号
Issue Date
2006-09-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/21388
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氏
名(本籍)
学
位
の 種 類学
位
記 番 号学位授与年月
日学位授与の要件
研究科及び専攻
研究指導を受けた大学
学 位 論 文 題 目審
査 委員
本 光喜(石川県)
博士(獣医)
獣医博甲第205号
平成18年9月15日
学位規則第3条第1項該当
連合獣医学研究科
獣医学専攻
東京農工大学
動物用医薬品ジサイクラニルのマウスにおける肝発
がん機序解明に関する研究
主査東京農工大学
教
授 副査帯広畜産大学
副査 岩 手 大学
副査東京農工大学
副査岐 阜
大学
教
教
教
教
授 授 授 授敏
峯
治 実 昭 国 高修
利森
井 田 田 木 三 松津
下柵
論
文 の 内容
の 要 旨本研究は、「非遺伝毒性発がん物質」と評価されている動物用医薬品であるジサイクラ
ニル(DC)によるマウスにおける肝発がん機序を解明することを目的として実施した。
第一に、DCが非遺伝毒性物質であることを確認するため、近年開発された高精度なin
Vivo遺伝毒性評価法を用い評価した。雄性ddYマウスへ100および200mg/kgのDC懸濁
液を単回経口投与し、コメットアッセイにより、そのマウスの胃、結腸、肝、腎、膜胱、
肺、脳、および骨髄におけるDNA損傷を検索した。さらに、DCの肝に対するイニシエー
ション活性を調べるため、2/3部分間切除(PH)した雄性F344ラットへ75mg/kgのDC 懸濁液を単回経口投与して肝イニシエーションアッセイを実施した。その結果、コメットアッセイでは、検索したマウスのいずれの臓器においてもDCによるDNA損傷は認められ
なかった。また、肝イニシエーションアッセイでは、DCの投与によるラット肝における前腫瘍性病変マーカーである胎盤型glutathione
S-tranSferase(GST-P)の陽性細胞数
あるいは陽性巣面積の有意な増加は認められなかった。以上の結果から、DCは直接的な
invivo遺伝毒性ならびにイニシエーション活性を有さず、その肝発がん機序には非遺伝
毒性的機序が関与することが示唆された。
第二に、マウスにおいて肝に発がん性が認められている用量である1500ppmのDCを
雄性ICRマウスに2週間混餌投与し、\その肝について病理組織学的検索を行うと共に、高
密度cDNAマイクロアレイ(約3200遺伝子)による網羅的な遺伝子発現解析を行い、肝
に対する影響について検索した。その結果、DC投与群の肝臓において、CytOChrome
P450-159-(Cyp)1al、Cypla2、aldehyde dehydrogenase familylsubfamily Al、thi。red。Xin
reductasel(Txnrdl)などの代謝および酸化的ストレスに関連した遺伝子の有意な発現増
強が認められた。次に、DCによるこれらの変化が、実際の肝発がん過程で生じているか否かについて検索するため、マウスニ段階肝発がんモデルを用いた実験を実施した。遺伝
毒性発がん物質であるdimethylnitrosamine(DMN)の単回腹腔内投与によるイニシエー
ション処理後にPHを施したマウスに、1500ppmのDCを7週間混餌投与し、その肝臓に
ついて病理組織学的に検索すると共に、CDNAマイクロアレイおよびreaトtimeRT-PCR法
による遺伝子発現解析を行った。病理組織学的検査では、DMN+DC・PH群の肝において、
DMN+PH群に比べマウス肝の前腫瘍性病変に陽性反応を示す†-glutamyltranspeptidase
(GGT)の陽性細胞の有意な増加が観察された。遺伝子発現解析では、DMN+DC+PH群にお
いて、2週間投与実験で変動が認められたCyplalやTxnrdlなど代謝・酸化的ストレス遺
伝子群の一部に加え、酸化的DNA損傷の修復酵素の遺伝子である8-OXOguanine
DNAglycosylaselがDMN+PH群に比べ有意な発現増強が認められた。以上の結果から、DCに
よる肝発がん機序の一部には、酸化的ストレス、およびこれに起因する二次的な酸化的
DNA損傷が関与している可能性が推察された。
第三に、肝発がん、酸化的ストレス、および酸化的DNA損傷との関連性をさらに明ら
かにするため、DCにより増強された肝発がんの、更に進んだ段階における酸化的ストレ
スの関与を同様のマウスニ段階肝発がんモデルを用いて検索した。すなわち、DMN投与後
にPHを施したマウスへ1500ppmのDCを13および26週間混餌投与した実験を実施した。
その結果、DMN+DC+PH群において、投与開始13ならびに26週目で代謝/酸化的ストレス
に関連した遺伝子群に有意な発現上昇が認められると共に、GGT陽性巣の経時的増加が認
められた。また、これら遺伝子発現解析の検証として、肝組織DNA中の酸化的DNA損傷
マーカーである8-hydroxy-2'-deoxyguanosineレベルを測定した結果、DMN+DC+PH群において投与開始13および26週目で有意な増加が認められ、さらにはDC単独群でも投与開
始26週目において有意な増加が認められた。また、活性酸素種(ROS)産生についてマウ
ス肝ミクロソーム画分を用いたinvitro実験を実施した結果、DC存在下での濃度依存的
なROS産生の増強が認められた。以上の結果から、発がんが認められていた用量のDC投
与は、マウス肝においてDCの代謝系を介したROSが一部関与した酸化的ストレスを生じ
させることが明らかとなり、DCの長期投与により誘発されるマウス肝発がん機序の一部
には、持続的な酸化的ストレスにより生ずる二次的なDNA損傷が関与する可能性が強く示
唆された。
審
査結
果 の 要旨
本研究は、動物用医薬品であるジサイクラニル(DC)の肝発がん機序の解明を目的として、マ ウスおよびラットへのDC単回投与による遺伝毒性を評価したところ、DCには直接的なinvivo遺 伝毒性およびイニシエーション活性が認められなかったため、マウスニ段階肝発がんモデルを用い てDCを短∼長期間投与し、非遺伝毒性による発がん機序について分子病理学的手法を用い経時的 に解析し、その肝発がん機序の一部を明確にした内容である。 第1章では、DCのinvivo遺伝毒性について検討した。マウスへ100および200mgn(gのDC懸 濁液を単回経口投与し、コメットアッセイによりDNA損傷を検索した。さらに、雄性F344ラットへ75mgルgのDC懸濁液を単回経口投与して肝イニシエーションアッセイを実施した結果、マウス における直接的なin vivo遺伝毒性ならびにラットにおけるイニシエーション活性が認められず、 DCの肝発がん機序には非遺伝毒性的機序が関与することが示唆された。 第2章では、発がん用量であるDC(1500ppm)を、マウスへ2週間、マウスニ段階肝発がんモ
デルを用いて7週間それぞれ混餌投与し、肝臓における病理組織学的検索および遺伝子発現廃析を
実施した結果、マウスへの2週間投与では、代謝および酸化的ストレスに関連した遺伝子群の有意 な発現増強が認められた。さらに、DCの7週間投与により前腫瘍性病変マーカーの増加が認めら れたマウス肝発がんモデルでは、2週間投与実験と同様に代謝および酸化的ストレス関連遺伝子群 の一部に発現増強が認められるとともに、酸化的DNA損傷修復酵素遺伝子に発現増強が認められ た。よって、DCによる肝発がん機序の一部には、酸化的ストレスに起因する二次的な酸化的mA 損傷が関与している可能性が推察された。 第3章では、同様のマウスニ段階肝発がんモデルを用いてDC(1500ppm)を長期間(13およ び26週間)混餌投与し、第2章での推察である、肝発がん、酸化的ストレス、および酸化的DNA 損傷との関連性をさらに明らかに検討した。その結果、DC投与による肝の前腫瘍性病変マーカー、 ならびに肝組織DNA中酸化的DNA損傷マーカーの経時的で有意な増加が認められた。また、代謝 /酸化的ストレスに関連した遺伝子群にも有意な発現上昇が認められたが、その発現増強には経時的な変化は認められなかった。さらに、酸化的ストレス原因物質である活性酸素痙(ROS)の産生
についてinvitroで検討した結果、DC存在下でマウス肝ミクロソーム由来ROSの産生増強が認めら れた。以上の結果から、発がん用量のDC投与は、マウス肝においてDCの代謝系を介したROSが 一部関与した酸化的ストレスを生じさせることが明らかとなり、DCにより誘発されるマウス肝発 がん機序の一部には、二次的なDNA損傷を含む酸化的ストレスが関与する可能性が強く示唆され た(第3章)。 以上の実験結果は、化学物質自身が遺伝子傷害性を有さない物質であっても、長期間暴露され ることにより生体内反応を介したROSの産生に伴う二次的な遺伝子傷害が生じる可能性があるこ とを示唆する一例であり、今後の発がん物質の発がん機序解明の一助となり得る有用な研究である と認識された。以上について、審査委貞全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論文
として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1)題 目 著 者 名 Absenceofinvivogenotoxicityandliverinitiationactivityofdicyclanil Moto,M.,Sasaki,YF.,Okamura,M.,Fltiita,M.,Kashida,Y,Machida,N. andMitsum0ri,K. 学術雑誌名:TheJournalofTbxicologicalSciences 巻・号・頁・発行年:28(3):173-179,2003 2)題 目:MolecularPathologicalanalysisonthemechanismoflivercarCinogenesis indicyclanil-treatedmice 著 者 名:Moto,M.,Okamura,M.,Muto,T,Kashida,Y,Machida,N.and Mitsumori,K. 学術雑誌名:恥Ⅹicology 巻・号・頁・発行年:207(3):419-436,2005 3)題 目:PossibleinvoIvementofoxidativestressindicyclanil-induced hepatocarcinogenesisinmice 著 者 名:Moto,M.,Umemura,T.,Okamura,M.,Muguruma,M.,Ito,T.,Jin,M., Kashida,YandMitsumori,K. 学術雑誌名‥ ArchivesofTbxicology 巻・号・貢・発行年:aCCePted28February,2005-161-既発表学術論文 1)題 目:Thirteen-WeekrepeateddosetoxicitystudyofwormwoodurtemL absinLhium)extractinrats 著 者 名:Muto,T,Watanabe,T.,Okamura,M.,Moto,M.,Kashida,Yand 学術雑誌名 巻・号・貢・ 2)題 目 著 者 名 学術雑誌名 巻・号・貢・ 3)題 目 著 者 名 学術雑誌名 巻・号・貢・ 4)題 目