Title
^<31>P-NMR法を用いたUW液のラット摘出心低温虚血に対
する影響の検討( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
村川, 眞司
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第916号
Issue Date
1994-07-20
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15356
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 相 川 眞 司(愛知県)
博
士(医学)
乙第
916号
平成
6年
7月
20 日学位規則第4条第2項該当
31p-NMR法を用いたUW液のラット摘出心低温虚血に対する影響の検討
(主査)教授 広 瀬 (副査)教授 恵 良 聖 一 教授 土 肥 修 司論
文
内 容
の 要旨
新しい臓器保存液として開発声れたUniversityofWisconsinsolution(UW液)は,肝鼠腎臓,膵臓移植
の臨附こおいてその有用性が認められ広く用いられるようになったが,心筋保護効果に対する評価は一定してい ない0そこでUW液の低温虚血心に与える効果を従来とは異なった観点から検討するために,低温虚血前後の細 胞質のATPの変動を31P-NMR法にて,細胞全体のATP土を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法にて調掟し, 再海流後の心枚能と対比することにより,ATPの細胞内の異なる分画での変動を検討した。 実験方法 雄性SDラットの摘出心をランゲンドルフ潜流装置に接続,90c皿H20の湾流圧で潜流した。30分間のコントロー ル潜流ののち,10℃のmodifeidKrebs-Henseleit(KH)乳Euro-Collins(EC)軋或いはUW液(UW群)を 3分間注入し,そのまま同液に浸漬,10℃・3分間の低温虚血とし,それぞれをKH群,EC群,UW群とした。 その後1時間の常温再潜流を行った。 実験1:各群の31P-NMR測定を行った。測定にはJEOL社製フーリエ変換NMR装置GX-270を使用,一つのデー タに収集時間は5分間とし・常温濯流中は連続測定,低温虚血時には15分毎に測定た。これよりATPのβ位燐 酸基(β-ATP)・クレアチン燐酸(CrP),無燐酸(Pi)の信号面積を求め,温度変化による測定値の変化を補正, 前値に対する比(%)を求めた。また,細胞内pHの算出は細胞内Piの化学シフトより求めた。 実験2:同様の実験系で心筋のアデニンヌクレオチドをHPLC法にて生化学的に測定した。虚血軋低温虚血60 分,180分,再港流後60分の時点で心筋を採取し,儀燥重量あたりの含量を求めた。 実験3:実験1・2に対応した心饅能の測定を行った0・左室内圧を測定,これより心拍数,左室収縮期圧(PD P)・Maxdp/dt・doubleproduct(DP)を算出した0また,1分毎の冠潜流圭も計測した。測定値はそれぞれ, 虚血前の値に対する比(%)で表した。各群はそれぞれn=5である。 結 果 実験1の結果では・NMR法により観測されるATPは全群とも虚血開始とともに低下するが,UW群では緩や かであり,虚血開始後45分から60分では他の2群に比べ残存圭が有意(P<0.05)に多く残っていた。しかしな がら・虚血180分では,3群とも殆ど観測されない。再潜流後初期にはATPのシグナルは,UW群に多い傾向にあっ たが有意でなく,再潜流後60分にはUW群では他の2群に比べて有意(P<0.01)に高値となった。CrPも虚血開 始後はUW群で最も高く・他の2群に比し有意(KH群に対しP<0.01,EC群に対しP<0.05)に高値であったが, 再潜流60分には3群間に有意差は認めなかった。Piの変動はATP,Crと逆の変動を示していた。 また,10℃虚血中の細胞内pHの低下はUW群で有意(KH群に対しP<0.01,EC群に対しP<0.05)に少なかっ た0また再濯流後もUW群では他の2群に比べ細胞内pHが保たれていた。実験2のHPLC法で測定したATPは虚血60分後では,NMR法と同様にUW群で有意(KH群に対しP<0.05,
49EC群に対しP<0.01)に高かったが,虚血180分後にもATPは消失せず,全群20%以上が残存していた。再潜流6 0分後ではNMR法と同様にUW群で高い傾向を示すが有意差は認めなかった。総アデニンムクレオチド圭でも, 虚血60分ではUW群が他の2群に比べ有意(KH群に対しP<0.01,EC群に対しP<0・05)に高く,再潜流60分で もやはりUW群が多かった。energyChargeには各群間に差は認めなかった。 実験3の再潜流後の心機能ではUW群で再潜流直後にPDP,maX dp/dtが有意に高かった。また,DPは経過 中常にUW群で高い傾向があり,再濯流60分の時点では他の2群に比較して有意(P<0・05)に高い値を示して いた。冠潜流生も同様の傾向を示した。 考 案 NMR法の特徴は組織を非侵襲的に動的な状態で連続的にその代謝状態を測定できる事であり,この方法で測 定されうるATPは細胞質に存在するfreeのATPであり,主にミトコンドリア内膜等に結合し,コンパートメント 化されたATPは観測されないと考えられている。一方,HPLC法では心筋を採取して測定するため,侵襲的であ りかつ連続した測定は行えないが,細胞全休のATPが測定される。そこで,この2つの方法で測定されたATPの 値を比較することで,UW液の心筋保護効果を評価した。 10℃虚血時にはNMRで測定されたATP,つまり細胞質のATPは各群とも3時間以内に枯渇するが,UW群で は特に60分まではその減少が遅く,最も遅れて枯渇する事を示していた。この時HPLC法により測定された細胞 全体のATPにも同様の差が認められ,この時点におけるATPの差は細胞質のATPによる差の可能性が強いと思 われた。しかし細胞質のATPが観測されない虚血180分後にも細胞全休のATPは存在しており,細胞質以外に存 在するATPの虚血中の低下は細胞質のATPより緩徐で,3時間では枯渇しない事を示していた。しかも3群間 にはっきりした差を認めなかった。一方,再潜流60分では,細胞全体でのATP量は各群に有意差を認めないにも かかわらず,細胞質のATPはUW群でKH群,EC群より高くなっていた。これは,再濯流後,KH群,EC群ではA TPはミトコンドリアにとどまったままで,筋収縮に消費される細胞質に少量しか移動していない可能性を示す と考えられた。また,心機能測定の結果もこの代謝面からの評価と矛盾しなかった。すなわちUW群においては, 虚血中の高エネルギー燐酸化合物の保存の面だけではなく,再潜流後もエネルギー代謝が有効に行われていると 考えられ,本研究においてUW液の低温虚血に対する心筋保護効果の有用性が示された。