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【症例】ステントグラフト内挿術 1 年後にエンドリークによる瘤径の拡大を来し,ステントグラフト再内挿術を施行した腹部大動脈瘤の一例

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19 要  旨:腹部大動脈瘤に対してステントグラフト(SG)内挿術を施行後,エンドリークを 生じ,瘤径の拡大を認めたため,1 年後に再度SG内挿術を施行した症例を経験した.初回 手術は腎動脈以下の腹部大動脈瘤に対して,aorto-aortic 型のSGを内挿したが,外来にて経 過観察中に末梢側のエンドリークを認め,さらに大動脈分岐部直上の拡大を認めたため, 初回手術 1 年後にaortomonoiliac型のSG再内挿術と右外腸骨−左大腿動脈交叉バイパス術を 施行した.SG内挿術は低侵襲であるが,術後長期にわたり合併症の発生する可能性があ り,外来における継続的な経過観察が重要と考えられた.(日血外会誌 13:433–436,2004) はじめに  近年,高齢者の増加に伴い,高齢者の腹部大動脈瘤 症例を手術する機会が増加している.一方,ステント グラフト(SG)内挿術はその低侵襲性から,高齢者や, ハイリスク症例の治療に適しているとされ1∼4),今後そ の適応症例はいっそう増加するものと考えられる.今 回,我々は,1 年前に施行した腹部大動脈瘤に対するス テントグラフト内挿術後にエンドリークを生じ,瘤径 の拡大を認めたため再度ステントグラフト内挿術を行 い,良好な結果を得ることができたので報告する. 症  例  患 者:86歳男性.  主 訴:特になし.  既往歴:虚血性心疾患,発作性上室性頻拍症,高血 圧  現病歴:2001年11月28日最大径 5 cmの腎動脈下腹部

大動脈瘤(Fig. 1A)に対して,aortoaortic SG内挿術を施

■ 症  例

日血外会誌 13:433–436,2004

ステントグラフト内挿術 1 年後にエンドリークによる瘤径の拡大を

来し,ステントグラフト再内挿術を施行した腹部大動脈瘤の一例

海野 直樹  三岡  博  斉藤 孝晶  石丸  啓  犬塚 和徳  中村  達 索引用語:腹部大動脈瘤,ステントグラフト,エンドリーク,再手術 行された.術後のD S A ではエンドリークは認められ ず,術後経過は良好にて第 8 病日に退院した(Fig. 1B). その後,外来で行われた術後 6 ヶ月のfollow up CTにて エンドリークを指摘され(Fig. 2A),また大動脈分岐部 直上の瘤径の拡大傾向を認めたため,2002年10月22日 手術目的にて再入院となった.  入院時現症:身長165cm,体重63kg,血圧150 / 85 mmHg,脈拍72整,腹部正中に径約 5 cmの拍動性腫瘤 を触知した.また右鼠径部には前回SG挿入時の手術瘢 痕を認めた.  腹部CT:腎動脈下腹部大動脈瘤はSG留置により縮小 傾向を示していたが,SG留置末梢側でエンドリークを 認め(Fig.2A),大動脈分岐部直上の瘤径は最大 4 cmに 拡大した.  血管造影:回転DSAにてSG末梢側と大動脈壁との間 でエンドリークが左背側に向かって生じていることが 判明した(Fig. 2B).  手術所見:2002年11月 6 日,全身麻酔下に手術室に てSG再内挿術を行った.術前のDSAにて左総腸骨動脈 に狭窄を認めていたため,SGデリバリーシースは右側 より挿入することとした.まず右鼠径靱帯やや中枢側 で右外腸骨動脈を露出,更に左鼠径部にて左総大腿動 脈を露出した.左上腕動脈を露出し,ここよりガイド 浜松医科大学第二外科(Tel: 053-435-2279) 〒431-3192 静岡県浜松市半田山1-20-1 受付:2003年11月14日 受理:2004年 3 月 4 日

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日血外会誌 13巻 3 号 20 434 ワイヤーを右外腸骨動脈まで通過させ,tug of wire法にてデリバリーシステムを前回留置した SG内へと進めた.術式はaortomonoilliac SG + 右 外腸骨 − 左大腿動脈交叉バイパス術を選択し た.SGは径30mm長さ75mmのZ stentと径20mm 長さ80mmのspiral Z stentをまず5-0ポリプロピ レン糸で連結させ,これに径26mm のwoven polyester graft(UBE graft,宇部興産製)を両方の

stentに縫合固定し,末梢側をややtaperingさせ て自作した.これをMedikit社製20Fイントロデ ユーサーシースに先端格納して,デリバリーし た.前回SGの内側に腎動脈下で重ねるような 形(graft-in-graft)で留置した.左総腸骨動脈を コイルにて塞栓した後,径 8 m m のk n i t t e d Dacron graft(Gelsoft)にて右外腸骨−左大腿動脈 交叉バイパス術を行い,術中DSAにてエンド リークなきことを確認した.手術時間は 4 時間 27分,出血量は620cc,セルセーバーにて自己 血を回収し,返血した.  術後経過:術後 1 日目より歩行,並びに経口 摂取を開始できた.術後のDSAにて中枢,末梢 側ともエンドリークは認めず,左総腸骨動脈も コイルにてしっかり閉塞されていた.また内腸 骨動脈は両側とも開存していた(Fig. 3).特に 合併症もなく第10病日に退院し,現在元気に外 来通院している.退院 6 ヶ月後に撮影したCTではエン ドリークは認められず,大動脈分岐部直上の瘤も縮小 した(Fig. 4). 考  察  1990年代に始まった大動脈瘤に対するSG内挿術は欧 米では現在,腹部大動脈瘤全手術症例の 5 ∼ 7 割に適 応されており,世界中に急速に普及した.とりわけ, SG内挿術の低侵襲性,それに伴う,入院期間の短縮 化,様々な企業製造SGの改良が普及に貢献したものと 考えられる.一方,本邦においては2002年にようやく 保険適用が認められたものの,SGそのものに対する材 料費の保険請求は未だ認められていない.海外の企業 製造SGの輸入並びに使用は一部の施設を除いて困難で あり,現状では各施設で自作のSGを用いて限られた症 例に対して施行されている.そのためSG内挿術の分野 で欧米に大きく遅れをとってしまったことは明らかで あるが,一方,近年欧米諸国でのSG内挿術の中期成績 が次々と報告され,その中で,多数の合併症の出現が 明らかになり,我々はそれらの報告を参考にしてSG内 挿術を施行すべきと考える5,6).それによると,腹部大 動脈瘤に対するSG内挿術の術後経過観察期間中 2 ∼ 3 年以内に 2 次的なインターベンションを必要とする症 例が全手術症例の10∼20%に達することが報告された 6).その原因は持続するエンドリークやSGの遊走,Y字 型SGの脚の血栓閉塞などが主なものであり,このこと はSG留置後長期間にわたって腹部CT撮影や下肢血流の モニタリングなどの継続した経過観察が重要であるこ とを物語っている.今回の症例においても,SG内挿後 1 年以内にエンドリークを生じ,2 次的なSG内挿術を 必要としたが,この症例においては,あるいは初回手 術時のaorto-aortic typeのSGの選択に問題があったかも しれない.すなわち,大動脈分岐部直上の大動脈が通 常よりやや拡大しており,この部位をSGのlanding zone Fig. 2 Endoleak at distal site of stent-graft twelve months after

ini-tial surgery.

A: Follow-up CT scan demonstrated contrast enhancement of aneurysmal sac.

B: DSA showed enlargement of aneurysmal sac above aor-tic bifurcation.

Fig. 1 A: Preoperative DSA

B: Postoperative DSA after aorto-aortic stent-graft deploy-ment

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2004年 4 月 21 海野ほか:ステントグラフト再内挿術を行った腹部大動脈瘤 435 として選んでしまったため,術後同部位の拡大に伴 い,遠位部のエンドリークを生じた可能性がある.ま た血管造影上,SGは初回留置部位よりもやや上方に変 位しているようにも見受けられ,SG留置後の瘤型の変 化に伴うSGの屈曲もエンドリークの原因かもしれな い.したがって,初回手術時にSG末梢側をよりbifurca-tion近くにおけばエンドリークは防げたかもしれない. しかしFaries等は,462例の腹部大動脈瘤症例にaorto-aortic typeのSGを施行し,7 年間の経過観察中に12例の 遠位側のエンドリークが生じたと報告しており7),その 原因として腹部大動脈のbifurcation近傍はSG留置後に拡 張や形態変化を来しやすいためと考察している.その ため腎動脈分岐以下の腹部大動脈瘤症例にaorto-aortic typeのSGは推奨できないと結論している.今回,左総 腸骨動脈に狭窄があること,自作でY字型SG製作の経 験がなかったことから,aortomonoiliac 型のSG内挿術を 選択した.この型のSGはかつては腹部大動脈瘤症例に 盛んに行われていたが,企業製作デバイスの改良に伴 い,現在欧米ではY 字型のS G が主流になってきてい る.しかしaortomonoiliac型のSGは利点として,手技の 容易さ,一側の腸骨動脈の屈曲や,石灰化による狭窄 などの制限を受けないこと,腸骨動脈瘤の合併例にも 適用可能なこと,などから現在でも多くの症例に適用 されている8).実際,欧米からのaortomonoiliac型のSG 内挿術の中期成績の報告をみてみると,その成績は良好 でありまた腹部大動脈瘤破裂症例における本術式によ る救命率は極めて高いことなどが報告されている9∼13) したがって欧米の企業製作SGの入手が困難な本邦にお いて腹部大動脈瘤にSGを行う際には,とくに末梢側 landing zoneが短い場合やbifurcation部の拡張が既に始 まっているような症例,あるいは一側の腸骨動脈の石 灰化高度症例などにおいてはaortomonoiliac SGが標準術 式になり得るのではないかと考える.しかしSGのdura-bilityについては未知の点も多く,本術式を採用するに あたっては,患者への十分なインフォームドコンセン トと,術後外来での綿密なフォローアップを行うこと が重要と思われる.  最後にaortomonoiliac SG では非解剖学的バイパスで あるF-Fバイパスを行い,SG対側の腸骨動脈を閉塞させ るわけだが,F-Fバイパス開存率については,これまで の報告からASOに対するそれと比べ,良好な開存度が 得られていると報告されている14).しかし両下肢への 血流が一側の腸骨動脈に依存するため,同部位の狭窄 を将来生じ,インターベンションによる拡張術やステ ント留置術(IVR)が必要となる可能性がある.そのため 大腿動脈はIVRのルートとして重要であり,それ故交叉 バイパスの中枢吻合は今回の症例のように,鼠径靱帯 より中枢の外腸骨動脈に置くべきではないかと考えて いる.また腸骨動脈を閉塞させる方法としては今回の 症例で用いたコイル塞栓法とoccluder graftによる方法と があるが,両者を比較検討した研究や,またコイルが 末梢側へ遊走して下肢虚血を来したとする合併症報告 などは筆者らが調べた限りでは見あたらない. Fig. 3 Postoperative DSA after secondary aortomonoiliac

stent-graft placement with external iliac-femoral artery cross-over bypass.

Fig. 4 Follow-up CT scan six months after the secondary stent-grafting revealed no endoleak and shrinkage of aneu-rysmal sac.

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日血外会誌 13巻 3 号

22 436

A Case of Secondary Aortomonoiliac Stent-graft Placement for Abdominal Aortic

Aneurysm One Year after Aorto-aortic Stent-graft Placement

We report a case of successful endovascular treatment for abdominal aortic aneurysm with secondary aortomonoiliac stent-garaft placement. An 86-year-old man underwent endovascular aorto-aortic stent-graft placement for abdominal aortic aneurysm. Almost one year after the initial endovascular stent-graft placement, the follow-up CT showed an aneurysmal enlargement at the distal neck and endoleak. The patient was treated by secondary endovascular aortomonoiliac stent-garaft placement with an external iliac-femoral artery crossover bypass. We concluded that aortomonoiliac stent-graft with crossover bypass is recommended for endovascular abdominal aneurysm repair rather than aorto-aortic stent-graft placement. (Jpn. J. Vasc. Surg., 13: 433-436, 2004)

Naoki Unno, Hiroshi Mitsuoka, Takaaki Saito, Kei Ishimaru,

Kazunori Inuzuka and Satoshi Nakamura

Second Department of Surgery, Hamamatsu University School of Medicine Key words: Aortomonoiliac stent-graft, Abdominal aortic aneurysm, Endoleak

結  語  腹部大動脈瘤に対して,aorto-aortic SG内挿術を施行し た 1 年後に,大動脈分岐部の拡大を認め,再度SG内挿術 を施行した症例を報告した.SG内挿術はその適応とデバ イスの選択を充分に検討して行う必要があり,また施行 後の外来での継続的な経過観察が重要と考えられた. 文  献 1) 緑川博文,星野俊一,佐藤晃一,他:ハイリスク腹部 大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を施行した 1 例.日血外会誌,9:653-658,2000. 2) 緑川博文,星野俊一,小川智弘,他:腹部大動脈瘤に 対する従来手術とステントグラフト内挿術の比較検 討.日血外会誌,10:545-551,2001. 3) 島崎太郎,石丸 新,川口 聡,他:腹部大動脈瘤に 対する治療選択―ステントグラフト内挿術導入後の変 化―.日血外会誌,11:623-627,2002.

4) Sicard, G. A., Rubin, B. G., Sanchez, L. A., et al.: Endoluminal graft repair for abdominal aortic aneurysms in high-risk patients and octogenarians. Ann. Surg., 234: 427-437, 2001.

5) Faries, P. L., Won, J., Morrissey, N. J., et al.: Endovascular treatment of failed prior abdominal aortic aneurysm repair. Ann. Vasc. Surg., 17: 43-48, 2003.

6) Laheij, R. J. F., Buth, J., Harris, P. L., et al.: Need for secondary interventions after endovascular repair of ab-dominal aortic aneurysms. Intermediate-term follow-up results of a European collaborative registry (EUROSTAR). Br. J. Surg., 87: 1666-1673, 2000.

7) Faries, P. L., Briggs, V. L., Rhee, J. Y., et al.: Failure of endovascular aortoaortic tube grafts: a plea for preferential use of bifurcated grafts. J. Vasc. Surg., 35: 868-873, 2002. 8) Thompson, M. M., Sayers, R. D., Nasim, A., et al.: Aortomonoiliac endovascular grafting: difficult solutions to difficult aneurysms. J. Endovasc. Surg., 4: 174-181, 1997. 9) Pereira, A. H., Sanvitto, P. C., de Souza, G. G., et al.: Aortomonoiliac stent-grafts for abdominal aortic aneurysm repair: association with iliofemoral crossover grafts.J. Endovasc. Ther., 9: 765-771, 2002.

10) Rehring, T. F., Brewster, D. C., Cambria, R. P., et al.: Utility and reliability of endovascular aortouniiliac with femorofemoral crossover graft for aortoiliac aneurysmal disease. J. Vasc. Surg., 31: 1135-1141, 2000.

11) Moore, W. S., Brewster, D. C. and Bernhard, V. M.: Aorto-uni-iliac endograft for complex aortoiliac aneurysms com-pared with tube/bifurcation endografts: Results of EVT/ Guidant trials. J. Vasc. Surg., 33: S11-20, 2001. 12) Ingle, H., Fishwick, G., Garnham, A., et al.: Long-term

results of endovascular AAA repair using a homemade aortomonoiliac PTFE device. J. Endovasc. Ther., 9: 481-487, 2002.

13) Ohki, T. and Veith, F. J.: Endovascular grafts and other image-guided catheter-based adjuncts to improve the treat-ment of ruptured aortoiliac aneurysms. Ann. Surg., 232: 466-479, 2000.

14) Walker, S. R., Braithwaite, B., Tennant, W. G., et al.: Early complications of femorofemoral crossover bypass grafts after aorta uni-iliac endovascular repair of abdominal aor-tic aneurysms. J. Vasc. Surg., 28: 647-650, 1998.

Fig. 1 A: Preoperative DSA
Fig. 3 Postoperative DSA after secondary aortomonoiliac stent- stent-graft placement with external iliac-femoral artery  cross-over bypass.

参照

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