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木場猛夫教授を悼む
教育学部社会科教室主任外山幹夫
本学教育学部社会科西洋哲学・倫理学担当の木場猛夫教授は,病のため,不幸にして去 る平成元年1月31日,58歳を一期として不帰の客となられた。去る2月2日,悲しみのう ちに葬儀が行なわれた。心から哀悼の意を表したい。
先生は昭和5年3月,鹿児島県姶良郡加治木町にお生まれになり,長じて広島文理科大 学哲学科御卒業ののち,昭和47年本学に着任された。
先生の主なる御専門はカント哲学であり,本学にあっても継続的に御研究になられてい たが,この間,昭和55年から翌56年にかけて,西ドイツ,ヨハネス・グーテンベルク大学 に留学のうえ二二を積まれ,帰国後の昭和60年,文学博士の学位を得られた。この30余年 にわたる成果を,『カント道徳思想形成の研究』(風間書房・昭和62年)として公刊された。
これからいよいよ油ののった御研究と,学生の指導が期待されていた矢先,不幸病魔の侵 すところとなり,鬼籍に入られ,洵に残念である。いまだ還暦をもまたずして世を去らね ぼならぬ教授御自身の御無念はいうに及ばず,御家族,さらにわれわれ同学の者としても 痛恨の他はない。
先生は一方において,学生の教育・指導にも極めて御熱心であり,学生からも慕われて おられた。いかにも旧薩摩藩領出身らしい剛直な面を感じさせる信念の人であった。実は 先生はすでに死去される4年半前の昭和59年秋御発病になり,以来身体の不調をかこって おられた。さきに述べた学位の取得や大著の刊行も,この病躯をおして達成されたもので あった。その強い意志の力を感じさせられるものがある。しかし先生は,その中にあって ウィットを兼ね備えて,周囲の者を惹き付けずにはおかない魅力を持っておられた。
個人的なことにわたるが,私自身大学の後輩にあたり,かつまた同じ昭和47年に本学部 社会科に着任した。そのため公私にわたっていろいろ御世話になり,曙懇にさせて頂いた
ものである。共に学生を引率して平戸・島原へと研修旅行に出かけ,共通の問題に頭を痛 めるなど,17年にわたって苦楽を共にした。それだけに同志を失った悲しみは大きい。さ らにまた今後いよいよ発展して行かねばならぬ本学にとっても大きな痛手である。
しかし,今はただ先生の心安らかなる御冥福を祈るばかりである。