学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2013 年 07 月 24(水)
報告番号: 乙 第 2054 号 氏名:山下 淳
論文審査
担当者 主査 教授 荻野均 印
副査 教授 勝村俊仁 印
副査 教授 井坂惠一 印 審査論文
題目: Usefulness of functional assessment in the treatment of patients with moderate angiographic paclitaxel-eluting stent restenosis
(パクリタキセル溶出性ステント留置後の造影上の中等度再狭窄を認めた患者の治療 方針決定における機能的評価の有用性)
著者: Jun Yamashita, , Nobuhiro Tanaka, Hiroshi Fujita, Takashi Akasaka , Tadateru Takayama, Yuji Oikawa, Toru Kataoka, Akira Yamashina.
掲載誌:Circulation Journal 77: 1180-1185 (2013) 論文要旨:
本研究は,第一世代薬剤溶出性ステント(DES)留置後の慢性期再狭窄に対し,冠血流予備量比(FFR)に よる冠動脈狭窄の機能評価を行い,再血行再建の適否の決定を行う上での有用性について検討したもの である.冠動脈造影(CAG)において、DES 内およびその端に中等度再狭窄(AHA 分類 75%狭窄)を認めた 42 例(DES 群: 69±8 歳、男/女 30/12)を対象とし,CAG で新規中等度狭窄病変を認めた 42 例(de novo 群: 66±10 歳、男/女 35/7)と FFR 値を比較検討した(患者および病変背景で 2 群間に有意差なし). 結果は,狭窄度では差を認めなかったが(P =0.981), 病変長では DES 群で長い傾向にあった(P =0.054).
一方,FFR 値に関しては, de novo 群を比較し DES 群で有意に高く(P =0.002),CAG 上中等度狭窄を 認める症例においても機能的狭窄度は高くないことが判明した.以上のことから,DES 留置後の中等度 狭窄において,FFR 値による評価上、再狭窄の機能的有意性は高くないことが示唆され,再血行再建の 適否は慎重になされるべきであると結論づけている.
審査過程:
1) 本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施されており、倫理上の疑義はないことを審査した.
2) 冠動脈狭窄の評価法の客観性(複数名評価)についての質問に対し,適切な回答があった.
3) OCT など他の冠動脈狭窄評価法についての質問に対し,評価症例なしとの回答があった.
4) 2 群間の,他の冠動脈病変,心機能面での差に関する質問に対し,差を認めずとの回答があった.
5) 冠動脈形成前後での FFR 値に関する質問に対し,通常は評価せずデータなしとの回答があった.
6) 75 90%の有意狭窄での検討に関する質問に対し,妥当な回答があった.
7) パクリタキセルの安全性に関する質問に対し,適切な回答があった.
8) ステント自体の FFR 値に及ぼす影響に関する質問に対し,適切な回答があった.
9) DES 後再狭窄に関する再血行再建適応の判断材料に関する質問に対し,適切な回答があった.
価値判定:
本研究は,DES 留置後に CAG 上中等度狭窄を認める症例において,de novo 群と比較し FFR 値は有意に 高く、再狭窄の機能的有意性は高くないことを明らかにしてもので,この結果は再血行再建の適否の 判断材料の一助になり得,学位論文としての価値を認める.